(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
排ガスの流路となる複数のセルを区画形成し、多数の細孔を有する多孔質の隔壁と、前記複数のセルのうち、所定のセルの流入側開口端部を目封止するとともに、残余のセルの流出側開口端部を目封止する目封止部と、からなるハニカム担体を備え、前記残余のセルを形成する隔壁の表面に、前記隔壁の平均細孔径よりも小さい平均細孔径の表面捕集層が形成された表面捕集層付き担体であり、
前記表面捕集層付き担体の中心軸に平行な断面における前記表面捕集層の厚さは、前記流入側開口端部側から前記流出側開口端部側に向かうに従って厚くなっており、
前記隔壁は、その厚さが50.8〜304.8μm、気孔率が50%以上で70%未満、平均細孔径が15〜40μmであり、
前記表面捕集層は、その厚さが10μm以上で100μm未満、気孔率が50%以上で90%未満、平均細孔径が0.1μm以上で10μm未満であり、
セル密度が15.5〜62.0セル/cm2である直噴ガソリンエンジン用の表面捕集層付き担体。
前記表面捕集層は、前記ハニカム担体の流入側開口端部側から、原料微粒子を含む原料ガスを供給して、前記残余のセルを形成する隔壁の表面に前記原料微粒子を堆積させることによって形成されるものである請求項1に記載の表面捕集層付き担体。
コージェライト、アルミニウムチタネート、炭化珪素、サイアロン、ムライト、窒化珪素、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ、及びシリカからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスを含む材料からなる請求項1または2に記載の表面捕集層付き担体。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0020】
[1]表面捕集層付き担体:
図1〜
図3に示す表面捕集層付き担体1は、本発明の表面捕集層付き担体の一実施形態を示しており、表面捕集層付き担体1は、直噴ガソリンエンジン用のものであり、排ガスの流路となる複数のセル3を区画形成し、多数の細孔を有する多孔質の隔壁4と、複数のセル3のうち、所定のセル3aの流入側開口端部を目封止するとともに、残余のセル3bの流出側開口端部を目封止する目封止部10と、からなるハニカム担体11を備え、残余のセル3bを形成する隔壁3の表面に、多数の細孔を有する多孔質であって隔壁3の平均細孔径よりも小さい平均細孔径の表面捕集層15が形成されたものであり、この表面捕集層付き担体1の中心軸に平行な断面における表面捕集層15の厚さは、表面捕集層付き担体1の中央部に比して、流出側開口端部が厚くなっている。そして、隔壁3は、その厚さが50.8〜304.8μm(50.8μm以上で304.8μm以下)、気孔率が50%以上で70%未満、平均細孔径が15〜40μmであり、表面捕集層15は、その厚さが10μm以上で100μm未満、気孔率が50%以上で90%未満、平均細孔径が0.1μm以上で10μm未満であり、セル密度が15.5〜62.0セル/cm
2(15.5セル/cm
2以上で62.0セル/cm
2以下)である。
【0021】
このような表面捕集層付き担体は、上記条件の全てを満たすため、十分な隔壁の強度があり、圧力損失が低く、微粒子状物質の捕集効率が高く、直噴式ガソリンエンジン用のフィルタとして使用することができる。なお、直噴ガソリンエンジンとは、燃料としてガソリンを用い、点火プラグを有する火花点火式の内燃機関(エンジン)であり、かつ、燃料噴射弁によって燃料を直接エンジンシリンダ内へ噴射する燃料供給形態を採るエンジンのことである。また、表面捕集層15の厚さは、表面捕集層付き担体1の中央部に比して、流出側開口端部が厚くなっていればよい。従って、例えば
図3に示すように、排ガスの流路(セル3)が、流入側開口端部から流出側開口端部に向かうに従って次第に狭くなっていてもよいし(即ち、流出側開口端部における開口面積が、流入側開口端部における開口面積よりも小さくてもよいし)、流入側開口端部と流出側開口端部とにおける排ガスの流路(セル)の開口面積が同じであってもよい。
【0022】
図1は、本発明の表面捕集層付き担体の一実施形態を模式的に示す斜視図であり、
図2は、
図1に示す表面捕集層付き担体の、セルの連通方向に沿う断面図である。そして、
図3は、
図2に示す表面捕集層付き担体の一部を拡大して模式的に示す断面図である。
【0023】
本発明の表面捕集層付き担体は、セル密度が、15.5〜62.0セル/cm
2であることが必要であり、15.5〜38.0セル/cm
2であることが好ましい。上記密度が15.5セル/cm
2未満であると、隔壁の強度が不足し、濾過流速が増加し、PMの捕集効率が低下する。一方、62.0セル/cm
2超であると、圧力損失が増加する。ここで、本明細書において、セル密度は、表面捕集層付きの一方の端面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、観察視野に含まれる任意に選択した領域中に存在するセルの数を測定することによって算出した値である。
【0024】
本発明の表面捕集層付き担体は、セルの連通方向に垂直な断面における、隔壁の断面積とセルの開口面積の総和との合計に対する、セルの開口面積の総和の割合(以下、「セル断面開口率」と記す場合がある)が、83〜90%であることが好ましく、86〜88%であることが更に好ましい。上記割合が83%未満であると、圧力損失が増加するおそれがある。一方、90%超であると、隔壁の強度が不足し、濾過流速が増加し、PMの捕集効率が低下するおそれがある。
【0025】
表面捕集層付き担体の、セルの連通方向に垂直な方向に切断した断面の形状は、設置しようとする排気系の内形状に適した形状であることが好ましい。具体的には、円、楕円、長円、台形、三角形、四角形、六角形、左右非対称な異形形状などを挙げることができる。これらの中でも、円、楕円、長円が好ましい。
【0026】
また、セルの、その連通方向に垂直な方向に切断した断面の形状は、例えば、円、楕円、長円、台形、三角形、四角形、六角形、八角形、左右非対称な異形形状などを挙げることができる。これらの中でも、円、六角形、八角形が好ましい。なお、入口側を目封止したセル(出口側に開口したセル)と出口側を目封止したセル(入口側に開口したセル)の大きさを変え(開口面積を異ならせて)、入口側に開口したセルを大きくすることが好ましい。このように入口側に開口したセルの開口面積を大きくすると、表面捕集層付き担体の使用に際し、PMや燃焼ガス中のアッシュ(灰)が、入口側に開口したセルに堆積した場合であっても、上記のように開口面積を大きくしているため、セル内の空隙(空間)に十分な余裕ができる。そのため、上記アッシュが堆積することに起因する圧力損失の増加を低く抑えることが可能であるという利点がある。
【0027】
[1−1]ハニカム担体:
ハニカム担体は、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成し、多数の細孔を有する多孔質の隔壁と、複数のセルのうち、所定のセルの流入側開口端部を目封止するとともに、残余のセルの流出側開口端部を目封止する目封止部と、からなるものであり、コージェライト、アルミニウムチタネート、炭化珪素、サイアロン、ムライト、窒化珪素、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア、アルミナ、及びシリカからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスを含む材料からなるものであることが好ましい。このような材料から構成することによって、耐熱性が確保され、高温の排ガスに曝されても機能を維持することができるという利点がある。なお、隔壁の材料と目封止部の材料は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0028】
[1−1a]隔壁:
隔壁は、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成し、多数の細孔を有する多孔質のものであり、このような隔壁を備えることによって、表面捕集層付き担体の一方の端面から流入した排ガスが、隣り合うセルに流入し、その際に、排ガス中の粒子状物質を捕集することができる。このようにして排ガスを浄化することができる。
【0029】
隔壁の厚さ(リブ厚)は、50.8〜304.8μmであることが必要であり、76.2〜127μmであることが好ましい。上記厚さが50.8μm未満であると、隔壁の強度が不足するとともに、排ガス中の粒子状物質の捕集効率が低下する。一方、304.8μm超であると、圧力損失が増加する。ここで、本明細書において「隔壁の厚さ」は、表面捕集層付き担体の一方の端面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、観察視野に含まれる任意に選択した隔壁(10箇所)について厚さを測定し、平均値として算出した値である。
図2及び
図3中、隔壁4の厚さを符号「T」で示している。
【0030】
隔壁の気孔率は、50%以上で70%未満であることが必要であり、62%以上で70%未満であることが好ましい。上記気孔率が50%未満であると、圧力損失が増加する。一方、70%以上であると、隔壁の強度が低下してしまう。ここで、本明細書において「気孔率」は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0031】
隔壁の平均細孔径は、15〜40μmであることが必要であり、25〜40μmであることが好ましい。上記平均細孔径が15μm未満であると、圧力損失が増加する。一方、40μm超であると、PMの捕集効率が低下する。ここで、本明細書において「平均細孔径」は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0032】
本発明の表面捕集層付き担体は、40〜800℃における、セルの連通方向の熱膨張係数が、1.0×10
−6/℃以下であることが好ましく、表面捕集層付き担体に触媒を担持させた触媒体として使用する場合には、0.8×10
−6/℃以下であることが更に好ましく、0.5×10
−6/℃以下であることが特に好ましい。上記熱膨張係数が1.0×10
−6/℃超であると、高温での使用時に熱応力が発生するため、破損するおそれがある。ここで、本明細書において「熱膨張係数」は、押し棒式熱膨張計法により測定される値である。
【0033】
[1−1b]目封止部:
目封止部は、複数のセルのうち、所定のセルの流入側開口端部を目封止するとともに、残余のセルの流出側開口端部を目封止するものである。このような目封止部を配置することによって、圧力損失が小さく、排ガス中の粒子状物質(PM)の捕集効率が高い表面捕集層付き担体を得ることができる。
【0034】
目封止部は、いずれかの端面でセルを目封止するように形成されている限り、その配置状態は特に限定されるものではないが、例えば、
図1に示す表面捕集層付き担体1のように、目封止部が市松模様となるように配置されることが好ましい。
【0035】
[1−2]表面捕集層:
表面捕集層付き担体は、表面捕集層を備えることによって、排ガス中の粒子状物質を捕集し、粒子状物質が隔壁の細孔内部へ侵入することを阻止することができる。隔壁の細孔内部に粒子状物質が浸入すると、細孔内に粒子状物質が堆積し、その堆積に起因して圧損が生じる可能性があるため、表面捕集層によれば、圧損の上昇を抑制しながら、粒子状物質の良好な燃焼速度を得ることができる。
【0036】
表面捕集層は、残余のセルを形成する隔壁の表面に、隔壁の平均細孔径よりも小さい平均細孔径のものであり、表面捕集層付き担体の中心軸に平行な断面における厚さが、表面捕集層付き担体の中央部に比して、流出側開口端部が厚くなっている。ここで、「表面捕集層付き担体の中央部」とは、
図2に示すように、排ガスが流入する側の端面(流入側開口端面2a)と、排ガスが流出する側の端面(流出側開口端面2b)と、の中間に位置する部分のことである。
【0037】
そして、表面捕集層は、流入側開口端面側から流出側開口端面側に向かうに従って厚くなるように形成されていることが好ましい。
図3は、表面捕集層15が、流入側開口端面2a側から流出側開口端面2b側に向かうに従って厚くなるように形成されている例を示している。このように表面捕集層を形成すると、流入した排ガスが均等に隔壁を通過するため、表面捕集層付き担体の使用可能期間が延びるという利点がある。別言すると、表面捕集層の厚さが均一であると、隔壁を通過する排ガスの流れが、出口近傍(流出側開口端面2b側)に集中してしまうため、出口近傍に担持された触媒が極端に劣化したり、出口近傍が目詰まりしたりするという問題があるが、上記のように表面捕集層を形成すると、排ガスの流れが均等になるため表面捕集層付き担体が有効に利用されるという利点がある。
【0038】
表面捕集層の厚さは、10μm以上で100μm未満であることが必要であり、10〜50μmであることが好ましい。上記厚さが10μm未満であると、スートを表面捕集層により十分に捕捉することができず、捕集効率が低くなり、スートが隔壁細孔内に堆積するために圧損が上昇する。一方、100μm以上であると、排ガスの通過抵抗が増加するため、表面捕集層付き担体の圧損が増加し、エンジン出力が低下するという不具合が生じる。
【0039】
ここで、表面捕集層の厚さは、以下のようにして算出した値である。まず、隔壁断面(研磨面)のうち、表面捕集層と隔壁の両者を含む視野(例えば
図4中の「P」で示す領域)をSEMで撮影し、撮影したSEM写真について、固体部分と空隙部分の輝度の差により2値化処理を行う。次に、
図5に示すように、固体部分17と空隙部分19の境界に内接する円(内接円21)を想定し、これらの内接円21の直径と位置を、表面捕集層側から隔壁側に向かって(
図4に示すX方向に向かって)プロットし、最小二乗近似により3次曲線Kを求める(
図6参照)。次に、この最小二乗近似3次曲線Kと2値化処理画像内の内接円21の最大直径(MAX)と最小直径(MIN)の平均のラインが交差する深さ(表面捕集層深さL)を20視野以上について測定し、測定値の平均値を算出して表面捕集層の厚さとする。
図5は、
図4に示す表面捕集層付き担体の表面捕集層の一部を拡大して模式的に示す断面図であり、固体部分17と空隙部分19の境界に内接する円(内接円21)を描いた状態を示す図である。
図6は、隔壁に垂直な方向の位置(隔壁の厚さ方向の位置)とSEM写真内接円直径(走査型電子顕微鏡写真の2値化処理画像における内接円の直径)の関係を示すグラフである。
【0040】
従って、表面捕集層と隔壁の境界は、SEM写真を輝度の差により2値化処理した後、固体部分と空隙部分の境界に内接する内接円の直径をプロットして最小二乗近似3次曲線を算出したときに、この最小二乗近似3次曲線が、内接円の最大直径と最小直径の平均値のラインと交差する深さ(位置)にあり、表面捕集層は、セルを構成する表面から上記境界までの領域のことである。
【0041】
また、表面捕集層は、流出側開口端部の厚さが、中央部の厚さの1.1〜3倍であることが好ましく、1.1〜1.5倍であることが更に好ましい。上記倍率が1.1倍未満であると、隔壁を通過する排ガスの流れ(排ガス流)の流速分布が不均一化するため、圧損が増加するおそれがある。一方、3倍超であると、出口近傍でのセル流路水力直径が極端に小さくなりすぎてセル流路の圧損が増大化するため、表面捕集層付き担体の圧損が過大になりエンジン出力が低下するおそれがある。ここで、「流出側開口端部の厚さ」とは、最も流出側開口端面に近い部分の厚さであり、「中央部の厚さ」とは、表面捕集層付き担体の長さ方向の中間の厚さ、即ち、両端面の中間の部分の厚さである。
【0042】
表面捕集層は、気孔率が50%以上で90%未満であることが必要であり、80%以上で90%未満であることが好ましい。上記気孔率が50%未満であると、表面捕集層の空隙の排ガス流速が増大するため、PMを捕集した後の圧損が増大してエンジン出力が低下するという不具合が生じる。一方、90%以上であると、表面捕集層の強度が低下するため、高速な排ガスの流れや熱サイクルにより表面捕集層が剥離するという不具合が生じる。
【0043】
ここで、表面捕集層の気孔率は、以下のようにして算出した値である。まず、隔壁断面のSEM画像を1000倍以上の拡大率で撮影し、空隙部と固体部の2値化処理を行う。次に、空隙部と固体部の断面比率を20箇所以上の視野で求め、断面比率の平均値を算出して表面捕集層の気孔率とする。
【0044】
表面捕集層は、平均細孔径が0.1μm以上で10μm未満であることが必要であり、0.5〜3.5μmであることが好ましい。上記平均細孔径が0.1μm未満であると、パーミアビリティーが小さくなり細孔の透過抵抗が急上昇しやすくなるおそれがある。一方、10μm以上であると、捕集性能が低下し、PMエミッションが欧州規制のユーロ6規制値をオーバーするおそれがある。
【0045】
ここで、表面捕集層の平均細孔径は、以下のようにして算出した値である。まず、隔壁断面のSEM画像を1000倍以上の拡大率で撮影し、空隙部と固体部の2値化処理を行う。次に、空隙部内で固体部の輪郭に内接する円(内接円;
図5中、符号21で示す)をランダムな位置で20箇所以上描き、その内接円の直径の平均値を算出して表面捕集層の平均細孔径とする。
【0046】
このような表面捕集層の形成方法としては、例えば、ディッピング法等の従来公知のセラミック膜の形成方法を利用して、セラミックスラリーをハニカム担体の隔壁表面に付着させた後、乾燥、焼成する方法等を挙げることができるが、ハニカム担体の流入側開口端部側から、原料微粒子を含む原料ガスを供給して、残余のセルを形成する隔壁の表面に原料微粒子を堆積させることによって形成することが好ましい。具体的には、粒子径の分布が0.5〜6μmの範囲であり平均粒子径(D50)が2.7μmの原料微粒子を含み、キャリヤー流体が空気などの流体である原料ガスを、毎分0.005〜0.4リットル/cm
2で残余のセル内に供給することで、残余のセルを形成する隔壁の表面に原料微粒子を堆積させて堆積層を形成した後、乾燥、焼成することにより表面捕集層を形成する方法を挙げることができる。このような形成方法であると、簡便に表面捕集層を形成することができる。また、高い気孔率の表面捕集層を形成することができ、表面捕集層としての最適な気孔率を設定しやすくなる。なお、「D50」は、メジアン径のことであり、体積ベース頻度累積が50%となる粒子径のことである。
【0047】
表面捕集層の厚さは、原料ガスの供給流量を上記範囲内で変化させることにより決定することができる。具体的には、供給初期は、供給流量を多くすることによりハニカム担体の内部まで原料微粒子を到達させ、その後、供給流量を少なくし、その後、供給後期は、供給流量を更に少なくしてハニカム担体の流入側開口端部に原料微粒子を堆積させる。このように供給流量を変化させることで、流入側開口端部における表面捕集層の厚さと、流出側開口端部における表面捕集層の厚さとを異ならせることができる。
【0048】
本発明の表面捕集層付き担体は、複数のセグメントからなる複合体であってもよい。具体的には、積層させた複数の表面捕集層付き担体セグメントと、この複数の表面捕集層付き担体セグメントを接合する接合材からなる接合部と、を備えるものであってもよい。接合材としては、従来公知のものを好適に用いることができる。
【0049】
[2]表面捕集層付き担体の製造方法:
本発明の表面捕集層付き担体は、例えば、以下のように製造することができる。まず、坏土用材料としてコージェライト化原料を用意する。コージェライト化原料は、コージェライト結晶の理論組成となるように各成分を配合するため、シリカ源成分、マグネシア源成分、及びアルミナ源成分等を配合する。このうちシリカ源成分としては、石英、溶融シリカを用いることが好ましく、更に、このシリカ源成分の粒径を100〜150μmとすることが好ましい。
【0050】
マグネシア源成分としては、例えば、タルク、マグネサイト等を挙げることができる。これらの中でも、タルクが好ましい。タルクは、コージェライト化原料中37〜43質量%含有させることが好ましい。タルクの粒径(平均粒子径)は、5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることが更に好ましい。また、マグネシア(MgO)源成分は、不純物としてFe
2O
3、CaO、Na
2O、K
2O等を含有していてもよい。
【0051】
アルミナ源成分としては、不純物が少ないという点で、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムの少なくともいずれか一種を含有するものが好ましい。また、コージェライト化原料中、水酸化アルミニウムは10〜30質量%含有させることが好ましく、酸化アルミニウムは0〜20質量%含有させることが好ましい。
【0052】
次に、コージェライト化原料に添加する坏土用材料(添加剤)を用意する。添加剤として、少なくともバインダと造孔材を用いる。そして、バインダと造孔材以外には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。
【0053】
造孔材としては、コージェライトの焼成温度以下において酸素と反応して酸化除去可能な物質、または、コージェライトの焼成温度以下の温度に融点を有する低融点反応物質等を用いることができる。酸化除去可能な物質としては、例えば、樹脂(特に、粒子状の樹脂)、黒鉛(特に、粒子状の黒鉛)等を挙げることができる。低融点反応物質としては、鉄、銅、亜鉛、鉛、アルミニウム、及びニッケルからなる群より選択される少なくとも一種の金属、これらの金属を主成分とする合金(例えば、鉄の場合には炭素鋼や鋳鉄、ステンレス鋼)、または、二種以上を主成分とする合金を用いることができる。これらの中でも、低融点反応物質は、粉粒状または繊維状の鉄合金であることが好ましい。更に、その粒径または繊維径(平均径)は10〜200μmであることが好ましい。低融点反応物質の形状は、球状、巻菱形状、金平糖状等が挙げられ、これらの形状であると、細孔の形状をコントロールすることが容易となるため好ましい。
【0054】
バインダとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。また、分散剤としては、例えば、デキストリン、ポリアルコール等を挙げることができる。また、界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸を挙げることができる。なお、添加剤は、一種単独または二種以上用いることができる。
【0055】
次に、コージェライト化原料100質量部に対して、バインダを3〜8質量部、造孔材を3〜40質量部、分散剤を0.1〜2質量部、水を10〜40質量部の割合で混合し、これら坏土用材料を混練し、坏土を調製する。
【0056】
次に、調製した坏土を、押出成形法、射出成形法、プレス成形法等でハニカム形状に成形し、生のハニカム成形体を得る。連続成形が容易であり、例えばコージェライト結晶を配向させることができることから、押出成形法を採用することが好ましい。押出成形法は、真空土練機、ラム式押出成形機、2軸スクリュー式連続押出成形機等の装置を用いて行うことができる。
【0057】
次に、ハニカム成形体を乾燥させて所定の寸法に調整してハニカム乾燥体を得る。ハニカム成形体の乾燥は、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等で行うことができる。なお、全体を迅速且つ均一に乾燥することができることから、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥または誘電乾燥と、を組み合わせて乾燥を行うことが好ましい。
【0058】
次に、目封止部の原料を用意する。目封止部の材料(目封止用スラリー)は、隔壁(ハニカム乾燥体)と同じ坏土用材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。具体的には、セラミック原料、界面活性剤、及び水を混合し、必要に応じて焼結助剤、造孔材等を添加してスラリー状にし、ミキサー等を使用して混練することにより得ることができる。
【0059】
次に、ハニカム乾燥体の一方の端面のセル開口部の一部にマスクを施し、その端面を、目封止用スラリーが貯留された貯留容器中に浸漬して、マスクをしていないセルに目封止用スラリーを充填する。同様にして、ハニカム乾燥体の他方の端面のセル開口部の一部にマスクを施し、その端面を、目封止用スラリーが貯留された貯留容器中に浸漬して、マスクをしていないセルに目封止用スラリーを充填する。その後、乾燥させ、焼成することによって、ハニカム担体を得る。上記乾の条件は、ハニカム成形体を乾燥させる条件と同様の条件を採用することができる。また、上記焼成の条件は、コージェライト化原料を用いた場合には、通常、大気雰囲気下、1410〜1440℃の温度で3〜15時間とすることができる。
【0060】
次に、ハニカム担体の一方の端部側から、粒子径の分布が0.5〜6μmの範囲であり平均粒子径(D50)が2.7μmのコージェライト原料などの粉末を含むガス状の表面捕集層用原料を毎分0.005〜0.4リットル/cm
2でセル中に吹き込むことによって、浮遊状態の表面捕集層用原料(コージェライト原料などの粉末)を隔壁の表面に堆積させて、隔壁の表面に表面捕集層用原料からなる層(表面層)を形成する。その後、1280〜1330℃で0.5〜3時間の条件で熱処理することにより、表面捕集層用原料を隔壁に融着させて固定し、表面捕集層を形成する。
【0061】
[3]触媒担持表面捕集層付き担体:
本発明の触媒担持表面捕集層付き担体は、上記本発明の表面捕集層付き担体の隔壁の、少なくとも細孔の内表面に触媒が担持されたものである。このような触媒担持表面捕集層付き担体は、圧力損失が低く、微粒子状物質の捕集効率が高く、直噴式ガソリンエンジン用として良好に用いることができる。そして、三元触媒またはNOx吸蔵還元触媒などの触媒のコンバータとして用いることができ、HC,CO,NOxの浄化効率が高く、かつ、圧力損失が少ないというものである。
【0062】
触媒は、表面捕集層の表面及び細孔内表面に担持させることもできる。
【0063】
触媒としては、例えば、三元触媒、NOx吸蔵還元触媒、酸化触媒、金属置換ゼオライトを主成分とするNOx選択還元触媒などを挙げることができ、これらの中でも、三元触媒またはNOx吸蔵還元触媒であることが好ましい。
【0064】
三元触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウムなどの貴金属を含むものを用いることができる。
【0065】
NOx吸蔵還元触媒としては、例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)などを挙げることができる。金属置換ゼオライトを主成分とするNOx選択還元触媒としては、鉄置換ゼオライト、銅置換ゼオライトなどを挙げることができる。
【0066】
本発明の触媒担持表面捕集層付き担体は、触媒以外に、貴金属、触媒助剤、貴金属保持材料などの他の材料を担持させることができる。貴金属としては、例えば、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)などを挙げることができる。なお、これらを組み合わせて用いてもよい。触媒助剤としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、セリアなどを挙げることができる。
【0067】
上記触媒と他の材料の合計の使用量は、50〜200g/Lであることが好ましく、50g/L以上で180g/L未満であることが更に好ましい。上記使用量が50g/L未満であると、触媒内に分散された貴金属が凝集し易くなるため、触媒機能が劣化し浄化性能が悪化するおそれがある。一方、200g/L超であると、隔壁の細孔が閉塞し易くなるため、圧力損失が増加するおそれがある。隔壁内の、触媒の担持量の分布としては、表面捕集層に担持される触媒量をできるかぎり少なくし、隔壁に担持される触媒量の比率(単位体積当りにおける触媒の量(g/L))をできる限り大きくすることが好ましい。特に、表面捕集層には全く触媒が担持されず、隔壁のみに触媒が担持されていることが好ましい。このような構成が好ましい理由は、細孔径が小さい表面捕集層に触媒を担持すると、細孔が閉塞することに起因して圧損が上昇する可能性が高まってしまうからである。なお、隔壁の、表面捕集層が形成されている面(表面)とは反対側の表面に、触媒層(触媒コート層)を形成しても良い。
【0068】
触媒の担持方法は、特に限定されないが、例えば、吸引法等の従来公知の触媒担持方法を採用して、触媒スラリーを隔壁の細孔内などに担持させた後、乾燥、焼成する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
表面捕集層付き担体については、以下の各種評価を行った。
【0071】
[隔壁の厚さ(リブ厚)(μm)]:
表面捕集層付き担体の一方の端面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、観察視野に含まれる任意に選択した隔壁(10箇所)について厚さを測定し、平均値として算出した。
【0072】
[セル密度]:
表面捕集層付きの一方の端面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、観察視野に含まれる任意に選択した領域中に存在するセルの数を測定することによって算出した。
【0073】
[隔壁の気孔率]:
水銀ポロシメータ(島津製作所社製 ポロシメータ 型式9810)を用いて測定した。
【0074】
[隔壁の平均細孔径]:
水銀ポロシメータ(島津製作所社製 ポロシメータ 型式9810)を用いて測定した。
【0075】
[表面捕集層の気孔率]:
SEM画像解析により算出した。具体的には、隔壁断面のSEM画像を1000倍以上の拡大率で撮影し、空隙部と固体部の2値化処理を行い、空隙部と固体部の断面比率を20箇所以上の視野で求め、断面比率の平均値を算出して表面捕集層の気孔率とした。
【0076】
[表面捕集層の平均細孔径]:
SEM画像解析により算出した。具体的には、隔壁断面のSEM画像を1000倍以上の拡大率で撮影し、撮影したSEM写真について、固体部分と空隙部分の輝度の差により2値化処理を行った。その後、
図5に示すように、空隙部分19内で、3つ以上の固体部分17の輪郭(外周縁)に同時に内接する円(内接円21)をランダムな位置で20箇所以上描き、複数の内接円21の直径の平均値を算出して表面捕集層の平均細孔径とした。即ち、本明細書において、内接円は、3点以上で固体部分に接する円のことである。
【0077】
[表面捕集層の厚さ]:
隔壁断面(研磨面)のうち、表面捕集層と隔壁の両者を含む視野(例えば
図4中の「P」で示す領域)をSEMで撮影し、撮影したSEM写真について、固体部分と空隙部分の輝度の差により2値化処理を行う。次に、
図5に示すように、固体部分17と空隙部分19の境界に内接する円(内接円21)を想定し、これらの内接円21の直径と位置を、表面捕集層側から隔壁側に向かって(
図4に示すX方向に向かって)プロットし、最小二乗近似により3次曲線Kを求める(
図6参照)。次に、この最小二乗近似3次曲線Kと2値化処理画像内の内接円21の最大直径(MAX)と最小直径(MIN)の平均のラインが交差する深さ(表面捕集層深さL)を20視野以上について測定した後、平均値を算出して表面捕集層の厚さとした。
【0078】
[PM捕集効率]:
軽油燃料を不完全燃焼させてススを発生させる装置を用い、スス発生量5g/時間、気体(排ガス)流量1.5Nm
3/分の条件で表面捕集層付き担体(または触媒担持表面捕集層付き担体)にススを含む排ガスを流し、初期1分間の上流(表面捕集層付き担体に供給する前)及び下流(表面捕集層付き担体から排出された後)の気体中のスス濃度を測定し、上流の気体中のスス濃度及び下流の気体中のスス濃度の比率(下流の気体中のスス濃度/上流の気体中のスス濃度)を算出してPM捕集効率とした。PM捕集効率が90%以上の場合を合格「○」とし、PM捕集効率が90%未満の場合を不合格「×」とした。
【0079】
[圧力損失]:
表面捕集層付き担体(または触媒担持表面捕集層付き担体)をガスバーナ試験装置に装着し、ガス温度850℃、流量7Nm
3/分の条件で圧損を測定し、圧損が10kPa以下の場合を合格「○」とし、10kPa超の場合を不合格「×」とした。なお、表1,表2中、「圧損」と示す。
【0080】
[強度]:
表面捕集層付き担体(または触媒担持表面捕集層付き担体)に対して静水圧加圧試験を行い、破損に達したときの圧力が0.3MPa以上の場合を合格「○」とし、上記圧力が0.3MPa未満の場合を不合格「×」とした。
【0081】
[総合評価]:
PM捕集効率、圧力損失、及び強度のいずれも合格「○」である場合を合格「○」とし、PM捕集効率、圧力損失、及び度のうち、いずれかに不合格「×」がある場合を不合格「×」とした。
【0082】
次に、触媒担持表面捕集層付き担体については、以下の評価を行った。なお、PM捕集効率、圧損、強度、及び総合評価の各種評価は、表面捕集層付き担体と同様の方法で行った。
【0083】
[ガス浄化率]:
触媒担持表面捕集層付き担体を、車両に搭載された2リットルの直噴ガソリンエンジンの排気マニホルド直下に装着し、車両のシャシダイナモ運転によるエミッション試験を行った。運転モードは、米国規制に準拠したLA−4モード運転とした。そして、比較対象として同一量の触媒をコートした同一外形形状(リブ厚101.6μm、セル密度93.0セル/cm
2、フロースルー型(目封止部無し)、表面捕集層なし)の触媒体を準備し、この触媒体のエミッションと比較して、同等以上の浄化率があれば合格「○」とし、同等未満の浄化率があれば不合格「×」とした。なお、排ガスのエミッションの着目成分としては、HC,CO,NOxの三成分とした。
【0084】
(実施例1)
[目封止ハニカム構造体の作製]
コージェライト化原料として、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用し、コージェライト化原料100質量部に、造孔材を13質量部、分散媒を35質量部、有機バインダを6質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。
【0085】
分散媒として水を使用し、造孔材としては平均粒子径10μmのコークスを使用し、有機バインダとしてはヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。次いで、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、セル形状が四角形で、全体形状が円柱形(円筒形)のハニカム成形体を得た。
【0086】
そして、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、両端面を切断し、所定の寸法に整えてハニカム乾燥体を得た。次に、ハニカム乾燥体の一方の端面のセル開口部に、市松模様状に交互にマスクを施し、マスクを施した側の端部をコージェライト化原料を含有する目封止スラリーに浸漬し、市松模様状に交互に配列された目封止部を形成した。他方の端部については、一方の端部において目封止されたセルについてマスクを施し、上記一方の端部に目封止部を形成したのと同様の方法で目封止部を形成した。その後、熱風乾燥機で乾燥させ、更に、1410〜1440℃で、5時間、焼成することによって、目封止ハニカム構造体(ハニカム担体)を得た。
【0087】
[表面捕集層の形成]
次に、表面捕集層用原料として平均粒子径が2.7μmのコージェライト原料の粉末を準備した。そして、この表面捕集層用原料を、流動層中で空気中に浮遊した状態にさせた。その後、この浮遊状態の表面捕集層用原料を含む空気を、上記得られたハニカム担体の一方の端面側からセル中に流すこと(毎分5リットル/cm
2)によって、浮遊状態の表面捕集層用原料を隔壁の表面に捕集(堆積)させて、隔壁の表面にコージェライト原料の粉末からなる層(表面層)を形成した。なお、この表面層は、排ガスの流出側端部の開口部が目封止されたセルにのみ形成させた。表面層を形成した(堆積させた)コージェライト原料の重さは、目封止ハニカム構造体の体積1リットル当たり7gであった。表面層を形成した後、ハニカム担体を1300℃で1時間熱処理することにより、表面捕集層用原料(コージェライト原料の粉末)を融着させて固定し、表面捕集層を形成した。このようにして、表面捕集層付き担体を得た。得られた表面捕集層付き担体は、直径118mm、長さ124mm、目封止深さ3mmであった。この表面捕集層付き担体について、上述した各種評価を行った。
【0088】
なお、本実施例の表面捕集層付き担体は、リブ厚(隔壁の厚さ)が127.0μm、セル密度が15.5セル/cm
2、隔壁の、気孔率が52%、平均細孔径が17μmであり、表面捕集層の、気孔率が85%、平均細孔径が4μm、出口近傍厚さが50μm、中央厚さが20μmであった。また、PM捕集効率の評価が「○」、圧力損失の評価が「○」、強度の評価が「○」、及び、総合評価が「○」であった。
【0089】
(実施例2〜22、比較例1〜10)
実施例2〜22、比較例1〜10は、表1に示すような各種値となるように変えた以外は実施例1と同じ方法で表面捕集層付き担体を作製し、作製した表面捕集層付き担体について上記各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
(実施例23)
まず、表2に示すような各種値となるように変えた以外は実施例1と同じ方法で表面捕集層付き担体を作製した。その後、作製した表面捕集層付き担体に触媒をコートし、触媒担持表面捕集層付き担体を作製した。
【0092】
具体的には、まず、貴金属として白金(Pt)を含有し、活性アルミナ、及び酸素吸蔵剤としてのセリアを更に含有する触媒スラリーを調製した。なお、白金、活性アルミナ及びセリアの質量比は、白金:活性アルミナ:セリア=1:80:20とした。次に、吸引法により、表面捕集層付き担体の隔壁の内表面及び隔壁細孔の内表面に、調製した上記触媒スラリーによってコート層を形成した。コート層の形成は、表面捕集層付き担体の流出側端部を触媒スラリーに浸漬させた後、流入側端部側から吸引することによって、表面捕集層が形成されていないセルから表面捕集層が形成されたセルに触媒スラリーを流し込む方法を採用した。コート層を形成した後、600℃で加熱乾燥することにより、触媒担持表面捕集層付き担体を作製した。なお、触媒担持表面捕集層付き担体の体積1リットルあたりの貴金属(Pt)の量は2gであった。また、触媒担持表面捕集層付き担体の体積1リットルあたりの触媒スラリーのコート量(乾燥質量)は、表2に示すように150gであった(表2中、「触媒コート量(g/L)」と示す)。
【0093】
なお、本実施例の表面捕集層付き担体は、ガス浄化率がHC「○」、CO「○」、NOx「○」であり、PM捕集効率の評価が「○」、圧力損失の評価が「○」、強度の評価が「○」、及び、総合評価が「○」であった。
【0094】
(実施例24〜44、比較例11〜20)
実施例24〜44、比較例11〜20は、表2に示すような各種値となるように変えて表面捕集層付き担体を作製した後、表2に示す触媒コート量(g/L)となるようにしたこと以外は、実施例23と同じ方法で触媒担持表面捕集層付き担体を作製し、作製した触媒担持表面捕集層付き担体について上記各種評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
表1及び表2から明らかなように、実施例1〜22の表面捕集層付き担体は、比較例1〜10の表面捕集層付き担体に比べて、十分な隔壁の強度があり、圧力損失が低く、微粒子状物質の捕集効率が高く、直噴式ガソリンエンジンに用いることができることが確認できた。また、実施例23〜44の触媒担持表面捕集層付き担体は、比較例11〜20の触媒担持表面捕集層付き担体に比べて、十分な隔壁の強度があり、圧力損失が低く、微粒子状物質の捕集効率が高く、直噴式ガソリンエンジンに用いることができることが確認できた。