特許第5649959号(P5649959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5649959
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】セラミック材料
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/10 20060101AFI20141211BHJP
【FI】
   C04B35/10 Z
【請求項の数】9
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2010-504704(P2010-504704)
(86)(22)【出願日】2008年4月25日
(65)【公表番号】特表2010-524832(P2010-524832A)
(43)【公表日】2010年7月22日
(86)【国際出願番号】EP2008055055
(87)【国際公開番号】WO2008132157
(87)【国際公開日】20081106
【審査請求日】2011年3月29日
(31)【優先権主張番号】102007020470.3
(32)【優先日】2007年4月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511004645
【氏名又は名称】セラムテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】CeramTec GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】マインハルト クンツ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター シュレーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ヤシンスキ
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ゾマー
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−097077(JP,A)
【文献】 特表平06−500762(JP,A)
【文献】 特開昭62−260766(JP,A)
【文献】 特開2002−003274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/10−35/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ZrOを24.0〜25.5質量%、Crを0.26〜0.35質量%、Yを0.50〜0.6質量%、SrOを0.70〜0.85質量%、TiOを0〜0.5質量%およびMgOを0〜0.5質量%、ならびに合計して100質量%までのAlを含有していることを特徴とするセラミック原料混合物
【請求項2】
さらに適切な材料からなるウィスカおよび/または繊維または網状の構造体またはメッシュが添加されていることを特徴とする、請求項1記載のセラミック原料混合物
【請求項3】
4点曲げ強度が1000MPa以上であり、
破壊靱性KICが、5.5MPam0.5以上であり、
ワイブル係数が7以上であり、
硬度HV10が、1740以上であり、かつ
密度ED2000が、4.360g/cm以上であることを特徴とする、請求項1または2記載のセラミック原料混合物を焼結することにより得られた焼結成形体。
【請求項4】
酸化ジルコニウムおよびアルミン酸ストロンチウムの成分が、酸化アルミニウムマトリクス中に混合されていることを特徴とする、請求項記載の焼結成形体
【請求項5】
アルミン酸ストロンチウムがフレーク状の微結晶、プレートレットの形で存在していることを特徴とする、請求項3または4項記載の焼結成形体
【請求項6】
焼結成形体を製造するための請求項1または2記載のセラミック原料混合物の使用。
【請求項7】
動荷重の際にエネルギーを吸収することができる部材を製造するための請求項1または2記載のセラミック原料混合物の使用。
【請求項8】
装甲板を製造するための請求項記載のセラミック原料混合物の使用。
【請求項9】
対砲弾用板を製造するための請求項記載のセラミック原料混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック材料、特に勲荷重に適切なセラミック材料に関する。
【0002】
セラミック材料は、多数の応用の可能性を提供する。セラミック材料の組成は、特定の元素および/または元素の化合物を適切に添加することによって、そのつど意図される使用に合わせて調整することができる。酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムはたとえば、単独で、または相互に組み合わされて特に切断工具、触媒用担体または人工機能補完装具へと加工されるセラミック材料である。
【0003】
セラミック材料は脆性があるため、通常は動荷重、特に振動および衝突による動荷重により生じる動荷重には不適切である。
【0004】
本発明の課題は、動荷重のために適切なセラミック材料を提供することである。
【0005】
意外なことに、焼結体中で以下の表に記載する組成の酸化アルミニウム材料は、動荷重の際のエネルギーを吸収することができる材料として適切であることが判明した。従ってこの材料は特に、保護用セラミックとして、つまりエネルギー吸収が必要とされる部材、たとえば装甲板、特に対砲弾用板を製造するために適切である。
【0006】
【表1】
【0007】
相応して合計して100質量%までが酸化アルミニウムである。
【0008】
このような材料の組み合わせの主要な構成成分は酸化アルミニウムである。従って特性を決定する特徴、たとえば硬度、弾性率および熱伝導性は、純粋な酸化アルミニウムの特性と緊密な関わりがある。酸化ジルコニウムおよびアルミン酸ストロンチウムの成分は、酸化アルミニウムマトリックス中に混合されている。原料は有利には高純度で使用する。原料の高い純度によって粒界相の形成はごく僅かな範囲となる。アルミン酸ストロンチウムは特徴的なフレーク状の微結晶、プレートレットを形成し、これらは実質的に強度の向上に貢献する。
【0009】
酸化ジルコニウムおよびアルミン酸ストロンチウムの成分は、破壊靱性の向上に貢献し、この靱性は純粋な酸化アルミニウムの場合よりも約60%高い。これらの強化成分によって強度はほぼ2倍上昇し、同時に損傷許容性、つまり損傷の可能性があっても依然として高い残留強度を維持する部材の特性が向上する。
【0010】
該材料から製造された焼結体の機械的負荷が高い場合に、意外にも、たとえば亀裂の拡大を食い止めるか、または停止するメカニズムが活性化される。この場合に最も重要なメカニズムは、応力に誘発されて酸化ジルコニウムが正方晶相から単斜晶相へと変換されることである。この変換に伴う酸化ジルコニウムの体積の増大は、局所的な圧縮応力の形成をもたらし、これが外部の引張荷重に対抗し、亀裂の成長が妨げられる。
【0011】
内部に組み込まれたプレートレットによって、意外にも亀裂はそらされて、亀裂が拡大する際の付加的なエネルギーが吸収される。
【0012】
本発明による材料の特殊性は、両方のメカニズムが互いに強化しあう結果、破壊靱性の効果的な向上が、単にそれぞれのメカニズムを追加することから予測されるよりも大きいことである。
【0013】
有利な材料組成とこれらの特性は以下に記載されている:
【表2】
【0014】
A1の含有率は、72.65質量%〜74.54質量%となる。原料において不可避的な不純物(<0.05質量%)も考えられるが、その割合は僅かであるために、特に記載されていない。
【0015】
本発明による材料からの焼結成形体の製造は、慣用のセラミック技術を用いて行う。実質的なプロセス工程は以下のとおりである:
a)規定の組成の粉末混合物を水に加え、沈殿を回避するための液化剤を使用する。
【0016】
b)溶解機(高速攪拌機)中で均質化する。
【0017】
c)攪拌ボールミル中で粉砕し、その際、粉末混合物の比表面積が向上される(=粉砕)。
【0018】
d)有機結合剤を添加する。
【0019】
e)噴霧乾燥し、その際、規定された特性を有する流動性の顆粒が生じる。
【0020】
f)該顆粒を水で濡らす。
【0021】
g)軸方向で、またはアイソスタチックに加圧する。
【0022】
h)成形体を切削加工し、その際、焼結収縮を考慮してほぼ最終的な形状を構成する。
【0023】
i)前焼成し、その際、理論密度の約98%に収縮する。依然として残留している残りの気孔を外部から閉鎖する。
【0024】
j)高温および高いガス圧でのホットアイソスタチックプレスにより実質的に完全な最終緻密化を行う。
【0025】
k)いわゆるホワイト焼成(Weissbrand)を行うことにより、ホットアイソスタチックプレスによって生じたセラミック中の酸素イオンの不均一性を均一化する。
【0026】
l)研磨およびポリッシングにより機械加工(ハードマシニング)を行う。
【0027】
m)熱処理をする。
【0028】
本発明による材料からなる焼結成形体の特性は、混合によってさらに増強することができる。たとえば焼結成形体を成形する前に、材料中にウィスカおよび/または繊維を混合するか、または焼結前の状態で網状の構造物またはメッシュを材料に組み込むことが可能である。ウィスカ、繊維またはネットまたはメッシュは、セラミック材料との相互作用によりセラミック材料の特性を低下させることのない材料でなくてはならない。さらに、該材料は焼結の間に、材料が損傷されて変化するものであってはならない。
【0029】
本発明による材料から製造される焼結成形体は、意外にも、特に保護用のセラミックとしての適用のために、それ自体は競合するセラミック材料である酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムのそれぞれの最も良好な特性が一体となっている。硬度、老化安定性、水に対する湿潤特性および高い熱伝導率は、酸化アルミニウムからなる焼結成形体から公知の特性であり、高い強度および高い破壊靱性、つまり高い損傷許容性は、酸化ジルコニウムからなる焼結成形体から公知の特性である。