(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
牽引装置であって、口腔内へ送達され得る圧迫された形状であることに適合でき、さらに口腔内で圧迫が解かれた形状となって使用可能な作業領域を作ることに適合できる形状順応性構造を有し、前記使用可能な作業領域は口腔内アクセシビリティ(接近性)の向上および口腔内可視性の向上を提供するものであり、
前記順応性構造は、患者の口の口腔の中に挿入するためのフレームであり、
前記フレームは、選択的に、口腔の中に挿入するのを容易にするために圧迫された形状に折り畳むことができると共に、口腔内に配置されたときに拡張した形状に拡張することができ、
前記フレームは、
口腔内の口腔軟組織に支承するように構成され、それによって前記フレームが拡張した形状にあるときに上部歯列弓の歯から頬及び/又は口唇を牽引する上部フレーム要素であって、上部歯列弓の前方の歯に隣接するように構成された前方領域及び上部歯列弓の後方の歯に隣接するように構成された後方領域を有する上部フレーム要素と、
前記フレームが拡張した形状にあるときに、口腔軟組織に支承するように構成されると共に、下部歯列弓の歯から口腔軟組織を牽引するように構成された第2フレーム要素と、を備え、
前記牽引装置は、上部フレーム要素を第2フレーム要素と相互連結する膜を有しておらず、
前記第2フレーム要素は、前記フレームが拡張した形状にあるときに、上唇及び下唇に支承するように構成されると共に、上部歯列弓及び下部歯列弓の歯から上唇及び下唇を牽引するように構成された口唇リングを有する、
牽引装置。
牽引装置であって、口腔内へ送達され得る圧迫された形状であることに適合でき、さらに口腔内で圧迫が解かれた形状となって使用可能な作業領域を作ることに適合できる形状順応性構造を有し、前記使用可能な作業領域は口腔内アクセシビリティ(接近性)の向上および口腔内可視性の向上を提供するものであり、
前記順応性構造は、患者の口の口腔の中に挿入するためのフレームであり、
前記フレームは、選択的に、口腔の中に挿入するのを容易にするために圧迫された形状に折り畳むことができると共に、口腔内に配置されたときに拡張した形状に拡張することができ、
前記フレームは、
口腔内の口腔軟組織に支承するように構成され、それによって前記フレームが拡張した形状にあるときに上部歯列弓の歯から頬及び/又は口唇を牽引する上部フレーム要素であって、上部歯列弓の前方の歯に隣接するように構成された前方領域及び上部歯列弓の後方の歯に隣接するように構成された後方領域を有する上部フレーム要素と、
口腔内の口腔軟組織に支承するように構成され、それによって前記フレームが拡張した形状にあるときに下部歯列弓の歯から頬及び/又は口唇を牽引する下部フレーム要素と、
上部フレーム要素及び下部フレーム要素を相互連結し、前記フレームが拡張した形状にあるときに、上唇及び下唇に支承するように構成されると共に、上部歯列弓及び下部歯列弓の歯から上唇及び下唇を牽引するように構成された、口唇リングと、
を備え、
前記牽引装置は、上部フレーム要素を下部フレーム要素と相互連結する膜を有していない、牽引装置。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】図 1a は口を開け、歯を露出した、口腔の構造を示す口腔の前面図を描き、
図1bは体の解剖学的基本面を示した人体図である。
【
図2】
図2a-2eは患者の口腔内に配置された牽引装置の1実施形態の図であり、
図2aは口腔内に配置された装置の斜視図であり、図 2bは口腔内に配置された牽引装置の側面図であり、
図2c は
図2bの線B-B に沿って見た前記口腔の下方部に配置された牽引装置の一部を示し、
図2d は
図2bの線B-B に沿って見た前記口腔の下方部に配置された牽引装置の一部を、周囲組織構造を含まずに示し、
図2eは
図2bの線B-B に沿って見た前記口腔の頭方向側部分に配置された牽引装置の一部を示し、
図2f は口腔内に配置された前記装置の前方図を示し、
図2g は前記装置の断面図と周囲組織構造を矢状面に沿って示す。
【
図3】
図3a-3dは牽引装置の1実施形態を示し、
図3a は前記装置の遠位端から見た牽引装置の斜視図であり、
図3b は前記牽引装置の平面図であり、
図3c は牽引装置の側面図であり、
図3d は牽引装置の後方図である。
【
図4】
図4a-4dは前記牽引装置から分離した舌および歯肉保護カバーを示す。
図4a は前記装置の遠位端から見た牽引装置の舌および歯肉の保護カバーの斜視図であり、
図4b は前記牽引装置の舌および歯肉保護カバーの平面図であり、
図4c は牽引装置の舌および歯肉保護カバーの側面図であり、
図4d は牽引装置の舌および歯肉の保護カバーの後面図である。
【
図5】
図5a-5dは牽引装置の膜から分離した、牽引装置の上下のアーチをカバーするフレームを示し、
図5aは前記装置の遠位端から見た前記フレームの斜視図であり、
図5b は牽引装置の前記フレームの平面図であり、
図5c は牽引装置の前記フレームの側面図であり、
図5d は前記牽引装置の前記フレームの後面図である。
【
図6】
図6a-6dは前記牽引装置から分離した牽引装置の照明リング部分を示し、
図6a は後方側から見た前記照明リングの斜視図を示し、図 6b は照明リングの平面図を示し、図 6c は分離した照明リングの側面図を示し、図 6d は前記照明リングの後面図を示す。
【
図7】
図7a-7dは舌または歯肉保護構成部品なしの牽引装置の他の実施形態を示し、
図7a は前記装置の遠位端から見た牽引装置を示し、
図7b は前記牽引装置の平面図であり、
図7c は前記牽引装置の側面図であり、
図7d は前記牽引装置の後面図を示す。
【
図8】
図8a-8d は膜でカバーされたフレームを有する牽引装置の他の実施形態を示し、
図8a は分離/牽引装置の斜視図であり、
図8bは分離/牽引装置の平面図を示し、
図8c は分離/牽引装置の側面図を示し、
図8d は分離/牽引装置の後面図を示す。
【
図9】
図9a-9dは牽引装置から分離した牽引装置の隔離膜またはカバーを示しており、面は牽引装置の隔離膜の斜視図であり、
図9bは牽引装置の隔離膜の平面図を示し、
図9c は牽引装置の隔離膜/カバーの側面図を示し、
図9d は牽引装置の隔離膜/カバーの後面図を示す。
【
図10】図 10a-10dは牽引装置から分離した照明リングおよび口唇用および頬用リトラクターの他の実施形態を示しており、図 10a は牽引装置の照明リングの斜視図であり、図 10bは分離された照明リングの平面図を示し、図 10c は分離された照明リングの側面図を示し、図 10d は分離された照明リングの後面図を示す。
【
図11】図 11a-11dはフレキシブルな電気回路膜を有する照明リングの他の実施形態を示しており、図 11a は照明リングの斜視図を示し、図 11bは分離した照明リングの平面図を示し、図 11c は分離した照明リングの側面図を示し、図 11d は分離した照明リングの後面図を示す。
【
図12】
図12a- 12d は舌カバー、口唇および頬用牽引リングを含む牽引装置の分離したフレームの他の実施形態を示しており、図 12a は前記フレームの斜視図を示し、図 12bは分離した前記フレームの平面図を示し、図 12c は分離した前記フレームの側面図を示し、図 12d は分離した前記フレームの後面図を示す。
【
図13】
図13a- 13d は牽引装置の分離したフレームの他の実施形態を示しており、図 13a は前記フレームの斜視図を示し、図 13bは牽引装置の分離した前記フレームの平面図を示し、図 13c は前記フレームの側面を示し、図 13d は分離した前記フレームの後面図を示す。
【
図14】
図14a-14d は他の実施形態の1フレームの分離した図を示しており、
図14a は前記フレームの斜視図を示し、
図14bは前記フレームの平面図を示し、図 14c は前記フレームの側面図を示し、
図14d は前記フレームの後面図を示す。
【
図15】
図15a-15d は1排出構成部品を有する1フレームの他の実施形態を示しており、
図15a は前記フレームの斜視図を示し、
図15bは前記フレームの平面図を示し、
図15c は前記フレームの側面図を示し、
図15d は前記フレームの後面図を示す。
【
図16】
図16a-16d は分離した口唇リングの他の実施形態を示しており、
図16a は遠位側から見た前記口唇リングの斜視図を示し、
図16bは前記口唇リングの平面図を示し、
図16c は前記口唇リングの側面図を示し、
図16d は前記口唇リングの後面図を示す。
【
図18】
図18a-18d は折り畳みに適応できる1フレームの他の実施形態を示しており、
図18a は遠位端から見た前記フレームの斜視図を示し、
図18bは前記フレームの平面図を示し、
図18c は前記フレームの側面図を示し、
図18d は前記フレームの後面図を示す。
【
図19】
図19a-19d は舌カバーのない折り畳み可能な1フレームの他の実施形態を示しており、
図19a は遠位端から見た前記フレームの斜視図を示し、
図19bは前記フレームの平面図を示し、
図19c は前記フレームの側面図を示し、
図19d は前記フレームの後面図を示す。
【
図20】
図20a-20d は折り畳み可能なフレームから分離した頬用リトラクターを示しており、
図20a は前記頬用リトラクターの斜視図を示し、
図20bは前記頬用リトラクターの平面図を示し、
図20c は前記頬用リトラクターの側面図を示し、図 20d は前記頬用リトラクターの後面図を示す。
【
図21】
図21a-21d は、照明と吸引を含む下弓、舌、頬および口唇の周囲組織を牽引するための牽引装置を示しており、
図21a は遠位側から見た前記牽引装置の斜視図を示し、
図21bは上部から見た前記牽引装置を示し、
図21c は前記牽引装置の側面図を示し、
図21d は前記牽引装置の後面図を示す。
【
図22】
図22a-22d は、歯肉プロテクターおよび舌カバー付きフレームを有する牽引装置の他の実施形態を示しており、
図22a は遠位側から見た前記牽引装置の斜視図を示し、図 22bは前記牽引装置の平面図を示し、図 22c は牽引装置の側面図を示し、図 22d は牽引装置の後面図を示す。
【
図23】
図23a-23d は、歯肉プロテクター、舌カバーおよび排出構成部品を有する牽引装置から分離した膜の他の実施形態を示しており、図 23a は遠位側から見た前記牽引装置の斜視図を示し、図 23bは前記牽引装置の平面図を示し、図 23c は前記牽引装置の側面図を示し、図 23d は前記牽引装置の後面図を示す。
【
図24】
図24a-24d は1排出構成部品を有する1フレームの他の実施形態の分離図を示しており、図 24a は遠位端から見た前記フレームの斜視図を示し、図 24bは前記フレームの平面図を示し、図 24c は前記フレームの側面図を示し、図 24d は前記フレームの後面図を示す。
【
図25】
図25a-25d は下部フレーム、歯肉プロテクターおよび照明用口唇リングを有する牽引装置の他の実施形態を示しており、図 25a は遠位端から見た前記牽引装置の斜視図を示し、図 25bは前記フレームの平面図を示し、図 25c は前記フレームの側面図を示し、図 25d は前記フレームの後面図を示す。
【
図26】
図26a-26d は下弓フレームと舌カバーを有する牽引装置の他の実施形態を示し、
図26a は前記牽引装置の斜視図であり、
図26bは前記牽引装置の平面図を示し、
図26c は前記牽引装置の側面図を示し、
図26d は前記牽引装置の後面図を示す。
【
図27】
図27a-27d は上下弓フレームと舌カバーを有する牽引装置の他の実施形態を示し、
図27a は正面から見た前記牽引装置の斜視図であり、
図27bは前記牽引装置の平面図を示し、
図27c は前記牽引装置の側面図を示し、
図27d は上部から見た前記牽引装置の図を示す。
【
図28】
図28a-28dは1排出構成部品を有する分離したフレームの他の実施形態を示しており、
図28aは遠位側から見た前記フレームの斜視図を示し、
図28bは前記フレームの平面図を示し、
図28cは前記フレームの側面図を示し、図 28dは前記フレームの後面図を示す。
【
図29】
図29a-29d は分離した舌カバーを図示しており、図 29a は遠位側から見た前記舌カバーの斜視図を示し、
図29b は前記舌カバーの平面図を示し、
図29c は前記舌カバーの側面図を示し、
図29d は前記舌カバーの後面図を示す。
【
図31】
図31a-31d は分離した上下弓フレームの他の実施形態を示しており、
図31a は前記フレームの斜視図を示し、
図31bはフレームの平面図を示し、
図31c は前記フレームの側面図を示し、
図31d は前記フレームの正面図を示す。
【
図32】
図32a-32d は牽引装置のフレームの他の実施形態を示しており、
図32a は前記フレームの斜視図を示し、
図32bはフレームの平面図を示し、
図32c は前記フレームの側面図を示し、
図32d は前記フレームの正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
装置およびその構成部品の位置や操作に関して身体の解剖学的基本面50 を理解することが本発明の構造化可能性、適応性、および操作性の特徴を理解するために有用である。人体および人体の構造を説明するために解剖学で一般に使用される3つの解剖学的基本面、つまり、横断面52、矢状面 54および冠状面56がある(
図1B参照)。さらに、装置および装置の操作は下方向(尾方)60および/または頭方向62に関連付けるとよりよく理解される。体内に配置された装置は、装置の配置または操作が体の背部または後部の方に向くように背側70(または後方に)に配置できる。あるいは、装置は、装置の配置または操作が体の正面に向くように腹側72 (前方に)配置することができる。本発明の歯牙を隔離するための前記装置、システムおよびキットの種々の実施形態は、1つの解剖学的基本面に対して、あるいは、2つまたはそれ以上の解剖学的基本面に対して構成化可能で可変性であり得る。同様に、種々の構成部品は、患者により異なる口腔のサイズに合わせるために異なったサイズおよび/または形状を組み込むことができる。
【0019】
口腔内の上顎および下顎の歯列弓を隔離するための牽引装置を本明細書において提供する。前記牽引装置は上顎および下顎の歯列弓を隔離することができる。さらに、前記牽引装置は上顎および下顎の歯列弓に隣接する歯肉組織を隔離することができる。歯牙表面を隔離することによって、装置は前記歯牙表面を唾液または他の体液による影響から効果的に隔離できる障壁を作るために使用され得る。歯肉組織の一部を隔離するか、または歯肉組織全体を隔離することができる。本発明は1つ若しくはそれ以上の歯列弓から、または1つ若しくはそれ以上の歯から口腔内の組織を牽引することに適応し、構成される装置を考慮するものである。前記組織を牽引することによって、歯は他の組織、唾液および屑から離され、または隔離されて歯のイメージングなどの歯科処置を実施するのに適切な部位を口腔内に作る。当業者に認識されるように、歯牙は顎骨にはめ込まれているため、標的歯は隣接歯から本来「隔離されている」ものではない。しかし、前記装置では標的歯の治療時に歯科材料の使用によって隣接歯が悪影響を受けないような、標的歯が隣接歯から隔離されるような構成にすることができる。1つ若しくはそれ以上の標的歯の隔離とは、また、治療を行うための手術位置、または部位を作るためにこれらの歯を露出することをも含み得る。1つ若しくはそれ以上の標的歯の隔離には、歯牙表面を唾液または他の体液の影響から効率的に分離できる障壁を作ることをも含み得る。
【0020】
前記装置はさらに、それらが迅速に装着できるように構成される。前記装置は乾燥した作業領域を迅速に達成し、相互交渉を必要とせずに治療時に作業領域の状態を事実上維持することができる。前記装置は数秒間で1歯列弓を隔離することができる。ある実施形態においては、前記装置は約60秒間または1分間未満で装着し、上下歯列弓を隔離することができる。ある実施形態においては、前記装置は、約1分間未満で装着されて上下歯列弓を隔離することができる。ある実施形態においては、前記装置は約20秒間未満で装着し、上下歯列弓を隔離することができる。
【0021】
ある実施形態においては、本発明の装置は、患者の口の中に配置でき、舌を含む組織を牽引して患者の1つ若しくはそれ以上の歯を隔離できる単一ユニットの装具である。舌を牽引する機能によって口腔へのアクセスにかなりの利点が提供される。例えば、装置は上顎歯列のみ、またはその一部を隔離する単一弓、あるいは、下顎歯列のみ、またはその一部を隔離する単一弓であり得る。このような下顎歯列のみ、または上顎歯列のみを隔離する単一弓形装置は、独立的に、または、互いに組み合わせて用いて2つの構成要素の装置を形成し得る。ある実施形態においては、単一の弓形(例えば、下部の弓形)装置は口と舌の他の半分(例えば、上部の歯)を隔離し、および/または開口状態を維持するパドルに連結される。本明細書に記載の装置は口様形状となっているので、前記装置は、約1分間以内、または約20秒間以内に正確に患者の口に挿入され得る。
【0022】
本明細書の装置は1個若しくはそれ以上のリトラクターを含む。リトラクターとは、(上下)口唇、舌および/または(両)頬などの軟組織を歯牙および/または歯槽表面からそらせ、牽引し、または転置するエレメントである。ある実施形態においては、装置は1個のリトラクターを有する。ある実施形態においては、装置は2個のリトラクターを有する。前記舌は、例えば、舌用ワイヤーリトラクターのような開いた舌用リトラクター構造によってそらせることができる。あるいは、前記舌用リトラクターは側面から舌を収容するためのカバーを含むこともできる。舌は、前記舌を制限された空間内に閉じこめ、それによって、口腔内が満たされることを防ぐように前記舌用リトラクター内に完全に閉じこめることができる。さらに、リトラクターは、特に、各リトラクターが(両)頬および/または(上下)口唇の異なった部分を独自に牽引する場合に使用できる。
【0023】
さらに、1本若しくはそれ以上の上歯および/または下歯に対応する1個若しくはそれ以上のアパーチャを提供するように適合させ、構成することができる。下唇を伸ばすか、または突出させ、頬を下歯から離すか、または、少なくとも1本の標的下歯、例えば、1歯のみを下歯用アパーチャから露出するように構成し、適合するように、下歯用アパーチャの隣に下部リトラクターを提供することができる。同様に、1本若しくはそれ以上の上歯に対応するアパーチャの隣に上部リトラクターを配置し、前記リトラクターは、上唇と頬を伸ばすか、突き出させて上歯、あるいは少なくとも1本の標的上歯から離すように配置することができる。上歯および/または下歯は、患者の歯に影響を与えずに、あるいは、歯槽突起または歯肉に強力な接触をせずに、このような歯を受け入れるアパアーチャに挿入することができる。ある実施形態においては、必要に応じて前記装置の1個若しくはそれ以上の部品を取り外す(切削によるなど)ことによってより小さい装置を用いて目標(例えば、歯肉)のさらなる部位を露出できる。
【0024】
前記リトラクターは1本(または複数の)標的歯の周囲作業領域の作成に適切となる様々の寸法を有することができる。したがって、長さ、高さ、曲率、および幅は、患者の口の大きさ、および/または顔の特徴を考慮して調整することができる。例えば、ある実施形態においては、リトラクターがより多くの頬筋を牽引できるように、前記リトラクターが伸びて歯槽弓から離れるにつれて、リトラクターのサイズが大きくなるように構成することができる。ある実施形態においては、下部リトラクターおよび/または上部リトラクターは高さが約1 mm〜約10 cmである。小児、成人および動物用リトラクターは異なった長さ、幅、曲率などを有することができる。
【0025】
上下部リトラクターはリトラクターが相互連結する口の奥に伸びるように適応させ得る。例えば、上下リトラクターは口の左右両方の奥(後部)側で、例えば、最後部に位置する歯の直ぐ後ろに前記装置を完全に装着した状態で、患者が口を開閉できるフレキシブルなブリッジを介して連結することができる。このようなブリッジには、例えば、フレキシビリティまたは剛性を増すことができる1つ若しくはそれ以上の機能を含めることができる。ある実施形態においては、前記ブリッジはその伸縮性を増すヒダ、蛇腹部または畝を有する。ある装置においては、前記ブリッジはリトラクターと異なった素材で作られている。さらに、前記上下のリトラクターは柔軟性のないブリッジによって接続することができ、患者に特定の角度で口を開けたままにさせることができる。ある実施形態においては、前記ブリッジは患者が口を開けたままにするのを補助するように設計されるが、口を閉じることができるフレキシビリティをも提供するように設計する。
【0026】
下部リトラクターの前方部分に接続するフランジまたはブリッジ(「水かき」のような)もまた提供し、前述の水かき部分の上に舌を載せることによって舌が装置を押し退けることを防ぎ得る。
【0027】
口の奥の前記ブリッジは歯の治療時に屑や他の部品などが喉に入るのを防ぐ遮蔽体(シールド)と結合するか、遮蔽体まで伸長することができる。前記遮蔽体は舌用にさらに大きな空間ができるよう近位側湾曲を有することができる。ある実施形態においては、前記遮蔽体の湾曲は、湾曲の頂点が口の中央にくるようになっている。ある実施形態においては、前記遮蔽体はさらに舌収納装置、舌用リトラクター、舌デフレクター、舌サプレッサ、舌エレベータ、舌支持体などとして作用し得る。ある実施形態においては、前記遮蔽体は患者が口を使って呼吸することができるように1アパーチャまたは複数のアパーチャ(網目)を中央に有する。前記アパーチャは患者が口から呼吸することを可能にする。なお、前記アパーチャは患者が舌をアパーチャの中へ、および/またはアパーチャを通して入れることが出来るような大きさとすることができる。また、前記アパーチャを使用して口の奥へアクセスすること、例えば、屑または唾液蓄積を見えるようにすること、並びに高容量吸引へのアクセスを与えることもできる。
【0028】
前記遮蔽体は、口の内側から外側に向かって伸びるU形状のフランジの表面を有する舌用リトラクターとして機能するような構成とする場合もある。前記舌用リトラクターの底面は、口と喉の間に障壁を形成する上から下に伸びる側面を有する内側面を有することができる。前記喉の障壁は治療時に患者が口から呼吸することを可能にする呼吸用アパーチャの下にある。
【0029】
ある実施形態においては、遮蔽体は患者の口を開けた状態に維持するために使用できる。このような遮蔽体は呼吸腔の上に支持機構を有する。前記支持機構は前記呼吸腔の上で上方かつ外側に伸びるU字形状フランジであることができる。前記支持機構は口腔を開いたままにすることに適合する。前記支持機構は、患者が無意識または鎮静状態となるような歯科手術において特に有用である。
【0030】
本発明の装置はまた、唾液排出または吸引/排出エレメントを組み込むことに適応させ、構成することができる。唾液吸引エレメントには、例えば、1つ若しくはそれ以上の吸引インレット、1つ若しくはそれ以上の吸引経路、および1つ若しくはそれ以上の吸引アウトレットが含まれる。吸引経路は口の内側の領域(例えば、舌下の歯槽突起周囲の後方、そして次に前方)から開けた口の近接部位(例えば、前方)へ伸ばすことができる。吸引経路は装置のフレームに統合することができる。例えば、吸引インレットは、装置を装着した時に頬の内側または口の奥に接触する領域とすることができる。ある実施形態においては、複数の吸引インレットの位置を底部の下部リトラクターに合わせている。この吸引インレットは患者の口の正面のアウトレットまたはポートに通じる一本の経路に連結する。吸引経路は装置のフレーム内または装置の外部の吸引インレットから本明細書の装置の近位端または装置の近位(口の外部)にある吸引アウトレットまたはポートまで伸ばすことができる。前記吸引ポ―トは口の奥から唾液を患者の外に引き出すために患者の外部の吸引装置に結合できる。唾液排出または吸引エレメントによって歯の周囲の密封状態が向上される。ある実施形態においては、吸引経路(複数)とアウトレット(複数)は、吸引をかけた時に前記装置がそれ自体を、歯槽突起または上下の歯槽突起にしっかりと付着させるように「シーリングメカニズム(密封機構)」の下側(「組織側」を意味する)に位置づける。吸引を作動させる密封機構はまた、「ウィンドゥシールドワイパーブレード」またはリトラクターエレメント内の吸引経路からなり、シールの組織側(「下側」)に2列のパーフォレーション(穿孔)を設けることができる。前記装置の上部アーチ部分に関しては、シールの上表面にパーフォレーションをつける。吸引を前記吸引経路(1つまたは複数)にかけると、装置の近位端に近い1つまたは複数のポートによって、シールは歯槽突起(1つまたは複数)に付着する。前記吸引によって、また、障壁の作業領域側にある屑や他の汚染物を排出しながら障壁の組織側にある唾液を排出することができる。
【0031】
本明細書の装置はまた照明エレメントをも統合することができる。本発明の他の構成部品と同様に、統合された照明は、それが装置の構成部分品となるように、または、1構成部品が照明器具である単一ユニットを装置が究極的に形成するように、一体化して形成し得る。このような装置は、患者の口に挿入すると点灯する機能のある半透明材から構成される。ある実施形態においては、例えば、装置に埋め込むか、または装置にコーティングを施すかのどちらかが可能なLED 光源、または光ファイバー光源、あるいは、発泡性光源を有する。前記照明装置はまた、外部電源または非外部電源によって電気を供給できるような構成とし得る。光源は装置の側面に沿って、装置の上部に沿って、または装置の底部に沿って、あるいは装置のいたるところに設置することができる。
【0032】
本明細書の装置は伸縮性、かつ幾分堅いワイヤーを用いて製造し、上部および下部リトラクターを形成することができる。前記ワイヤーはシリコンで被包し、次に例えば柔らかい高分子材料で被包化することができる。ある実施形態において、前記ワイヤーはポリマーワイヤーである。あるいは、前記ワイヤーは金属ワイヤーであり得る。ある実施形態においては、前記ワイヤーは柔らかい膜またはコーティングを使用せずにワイヤーだけで使用する。ある実施形態においては、頬と舌を牽引し、シーリング機構を配置するのに必要な力を提供すると同時に、挿入目的と口の形状への順応のために装置の折り畳み可能性を最適化するためにニッケル/チタン合金ワイヤーが前記フレームに使用される。口腔内の熱で金属の特性変化が活性化され、迅速にその設計された形状になり、挿入による侵害をより少なくする。ある実施形態においては、体熱により影響されるこの「ワイヤーフレーム」に、ナイロンまたは他のプラスチック材が使用される。
【0033】
本明細書に記載する装置は、口腔内にある歯牙表面のイメージングまたはスキャニングの補助として特に有用である。前記装置は、より大きい作業領域を作るために使用でき、前記作業領域は目的の歯牙表面と目的の歯牙表面の周囲部位を有する。本明細書に記載の装置は、より大きい作業領域を作って口腔のイメージングを容易にするために使用できる。前記口腔は、放射線機器、例えば、X線を用いてイメージングを行うか、あるいはスキャンニング装置を口腔内により挿入しやすくすることで、歯牙表面をスキャンすることができる。さらに、前記より大きい作業領域は、装置によって作られる乾燥歯牙表面とともに、歯牙表面への粉末の塗布を可能にして歯表面のスキャニングをさらに容易にし、前記粉末は歯牙表面をスキャンする機能を補助する。また前記装置は、最小限の材料で設計を具体化でき、従って口腔内での使用空間がより小さくなるため、口腔内での歯科トレーの適切な配置を確実にすることによって、歯科印象の作製を容易にするためにも使用できる。これによって、歯科トレーの作成に必要な材料およびキットに対する装置と軟組織の両方による妨害はより少なくなる。前記装置によって提供される立証された、よくコントロールされた、全アーチの作業領域を利用して歯科印象を作製する機能は、歯科医に大きな利益を提供するものである。歯科医は歯牙または歯周構造に関連する治療から、装置を取り外さずに、あるいは、完全かつ正確な印象に必要な作業領域を損なうことなく、その部位または全歯列弓の印象の作成に移行することができる。
【0034】
本明細書に記載する他の装置は、c-Flexサーマルプラスチックエラストマー(TPE)、シリコン、遅延型復元性フォーム(SRF)、およびポリプロピレン(PP)を含む(これらに限定されるものではないが)1つ若しくはそれ以上の高分子材料から製造できる。好ましくは、本明細書に記載の装置の製造には透明なポリマーを使用する。前記材料は患者に特別な快適さを与える口内の形状にエンボス加工、または事前成形することができる。前記装置は1つ若しくはそれ以上の素材から構成されるか、または2つ若しくはそれ以上のデュロメータを有する単一素材から構成され得る。ある実施形態においては、第1の素材は歯槽突起の形状に合わせ、1つ若しくはそれ以上の歯の周囲を密封し、他方、第2の素材は(両)頬と舌を牽引する構造を提供し、歯科医にきれいな作業領域を提供し、かつ患者に快適さと安全性を与える。本明細書のどの実施形態においても、素材には挿入と取り外しを容易にするための潤滑剤か、または風味の付いた潤滑剤を選択的に含めることができる。ある実施形態においては、前記装置は個々の患者に適合するように歯科医のオフィスで成形する。ある実施形態においては、歯科医は患者に最適のサイズの装置を選択する補助として、滅菌可能かつ再使用可能な「トライイン」装置を使用して患者の口を測定することができる。全体として、本明細書の装置は異なった口に適合するように異なったサイズに作成できる。ある実施形態においては、本明細書の装置は動物歯科治療に使用され得る。このような装置は治療される動物(例えば、犬、猫、馬など)に合うように適応し得る。装置の密封部分は、あらゆる適切な親水性材料、疎水性材料、またはパテ(例、Van-R可逆性ハイドロコロイド(Dux Dentalから入手可能)およびビニールポリシロキサン(3M Expressから入手可能))から形成できる。
【0035】
本明細書に記載の装置を患者の口に挿入する前は、装置は上下のリトラクターによって作られる円周を有する。前記装置は少なくとも1、2、または3個のアパーチャ(開口部)、例えば、下歯の1つ若しくはそれ以上用に1個、および/または上歯の1つ若しくはそれ以上用に1個、および/または、舌および/または気道用に1個および/または作業領域へのアクセス用に最大の(近位または後方に配置された)アパーチャを有し得る。目標の歯(上歯または下歯の何れか)用のアパーチャは、装置を埋め込み、穴を開けたリッジを通して1つ若しくはそれ以上の目標の歯を突き出させることによって形成できる。ある実施形態においては、第1のアパーチャは、目標の歯の全てを露出または隔離するように設計され、C形状となっており、第2のアパーチャは目標の歯の全てを露出または隔離するように設計されている。第1と第2のアパーチャの外部端は、両口唇と両頬を牽引して全歯列から離すように適合させたリトラクターと隣接する。上下のリトラクターは患者が口を様々な角度で開くことができるようにフレキシブルなブリッジを使用して口の後部で連結している。前記ブリッジはまた、患者の舌の一部を少なくともそこから突き出すことができる十分大きいアパーチャを有するシールド(遮蔽体)に連結される。
【0036】
当業者に認識されるように、前記装置は両方の全歯列弓を完全に隔離することに適合させ、構成することができ、および、口を閉じることを可能にすることに適合させ得る。これによって上下の歯をかみ合わせることができ、歯科医が上下の歯の相互作用(例えば、咬合)を判断することができる。また、全歯列弓を観察できることによって、他の歯を治療するか否かにかかわらず(例えば、歯牙色調の比較など)、他の歯の特徴に基づいて判断ができる。さらに、複数の歯を露出することによって、歯科医は装置を再調整する必要なしに口の異なった部分にある各々の歯を1、 2、 3、 4、 5、 6本等より多い歯を治療することが可能になる。
【0037】
前記装置は乾燥環境を必要とする治療、例えば、補綴の実施(例えば、クラウンや充填処置)または口腔の鋳型の作成などに使用するために適応し、構成される。唾液の欠如は、特にラボで作成される歯牙の補綴物または義歯用に作成される歯牙の印象を採得する場合に歯牙印象の品質に影響を与え得る。本発明の装置は、歯科医が装置を挿入し、患者の口中に残る唾液の吸引を選択的に実施し、または乾燥作業領域を作るための他のステップを実施し、次に、歯に印象材を挿入し、その印象材を除去し、選択的に充填材を挿入することを可能にする。装置は、印象または充填材が患者の喉に落ち込まないように装置を取り外したりすることなく、印象を採得し、充填材を加えることを可能にする。装置は、また、前記装置を口に配置している間中、唾液が歯牙の上に付着することを防ぐのに役立つ。
【0038】
手術の場合、前記装置は、血液、消耗品、埋め込み型部品、インプラント関連部品、または器具が患者の喉に入り込むのを防ぎながら、目的の1つ若しくはそれ以上の歯を隔離するために使用できる。装置は、血液、消耗品、埋め込み型部品、インプラント関連部品、または器具の吸入または飲み込みを効率的に防ぐ障壁を作るのに使用され得る。
【0039】
本明細書に記載の牽引装置は、口腔内へ送達され得る圧迫された形状であることに適応でき、さらに圧迫が解かれた形状となって、使用可能な作業領域を口腔内に作ることに適応できる形状順応性構造を有し、前記使用可能な作業領域は口腔内へのアクセシビリティの向上および口腔内の可視性の向上を提供できる。ある実施形態において、前記順応性構造はフレームである。なお、前記フレームはさらに膜を有し得る。前記フレームはまた、光源を有し得る。前記装置は1分間未満で装着することに適応できる。ある実施形態において、前記装置は1分間未満で作業領域を作ることに適応できる。前記装置は20秒間未満で装着できる。装置はさらに舌用リトラクターを有することができ、前記舌用リトラクターはどちらの歯列弓をも越えずに舌をそらせることに適合できる。舌用リトラクターは制限された空間において舌を収容し、閉じこめることができる。ある実施形態において、前記装置はさらに少なくとも1つの排出エレメントを有し得る。装置は少なくとも1歯列弓の周囲軟組織を牽引することに適応できる。さらに、装置は口腔内で上下の両歯列弓を牽引することに適応できる。装置はまた、症例によっては口腔の歯肉組織の少なくとも一部を隔離するのに使用できる。さらに、装置は、前記装置を通した呼吸を容易にする少なくとも1つのアパーチャ(開口部)を有し得る。装置は歯牙表面のスキャニングを容易にすることができ、前記スキャニングはデジタルスキャンまたは光学式走査の少なくとも1つを含む。さらに、装置は両方の歯列弓を20秒間未満で隔離することに適応できる。ある実施形態においては、装置はさらに、歯牙表面へのアクセスを妨げずに配置することに適応でき、さらに患者に最大の快適さを与えることに適応できる。
【0040】
さらに、本明細書では、患者の口腔内に作業領域を作成することに適応できる形状順応性構造を有する牽引装置を提供し、前記作業領域は、前記装置を使用せずに患者の口腔内に作成される作業領域より少なくとも10%大きいものである。前記装置は口腔内の目的部位へのアクセスを少なくとも10%改善するために使用できる。ある実施態様においては、目的部位は1歯列弓である。あるいは、目的部位は両歯列弓であり得る。前記装置は口腔内の可視性を少なくとも10%向上することに適応できる。前記装置は口腔内に配置された構造物の、体液による汚染を少なくとも10%低下させることに適応できる。前記体液は唾液、血液、または他のあらゆる体液であり得る。ある実施形態においては、装置は、軟組織と口腔へアクセスする器具との間の干渉を少なくとも10%低下させることに適応し得る。順応性構造物はフレームであり得る。ある実施形態において、前記フレームはワイヤーフレームである。ある実施形態においては、装置はさらに膜を有する。さらに、装置は光源を有し得る。前記装置は口腔内にある少なくとも1歯列弓を隔離することに適応できる。前記装置は口腔内の上顎歯列弓および下顎歯列弓を隔離することに適応できる。ある実施形態においては、装置は口腔の歯肉組織の少なくとも1部を隔離することに適応できる。前記装置は歯肉組織全体を隔離するために使用できる。さらに前記装置は1分間未満で装着することに適応できるものである。前記装置はまた、1分間未満で作業領域を作ることに適応できる。ある実施形態においては、装置は20秒間未満で装着できる。さらに、前記装置を装着した後は、前記装置をさらに調整をする必要がない。ある実施形態においては、装置はさらに舌用リトラクターを有し得る。前記舌用リトラクターは制限された空間に舌を収容し、閉じこめることができる。前記舌用リトラクターは第1咬合表面と第2咬合表面の接触を可能にすることに適応できる。舌用リトラクターは少なくとも舌の一面または舌の両面を圧迫することに適応できる。本装置は口腔に吸引をかけることに適応できる。装置は口腔における排出に使用できる。装置を通した呼吸を可能にすることに適応できる少なくとも1アパーチャによって口腔に吸引をかけることに適応できる。装置はまた、20秒間未満で少なくとも1歯列弓を隔離することに適応できる。装置はさらに、歯牙表面へのアクセスを妨げずに配置することに適応でき、さらに患者に最大の快適さを与えることに適応できるものである。
【0041】
さらに、本明細書において、口腔内に送達され得る圧迫された形状であることに適応でき、さらに圧迫が解かれた形状となって少なくとも1歯列弓を唾液および前記歯列弓の周囲軟組織を隔離することに適応できる可鍛性フレームを有する牽引装置を本明細書に提供する。前記可鍛性フレームはワイヤーフレームであり得る。なお、前記可鍛性フレームはさらに膜を有し得る。さらに、装置は光源を有し得る。ある実施形態においては、装置は1分間未満で装着することに適応できるものである。ある実施形態において前記装置は20秒間未満で装着することに適応できるものである。前記装置はまた、1分間未満で作業領域を作ることに適応できる。さらに、本装置は舌用リトラクターを有し得る。前記舌用リトラクターは舌を収容し、閉じこめることができる。前記舌用リトラクターは第1咬合表面と第2咬合表面の接触を可能にすることに適応し得る。本装置はまた、少なくとも1排出エレメントを有し得る。装置は、少なくとも1歯列弓の周囲軟組織を牽引することに適応でき、あるいは、場合によっては、上下歯列弓の周囲軟組織を牽引することに適応することができる。装置は口腔にある歯肉組織の少なくとも一部を隔離するのに適応することができる。ある実施形態においては、装置はさらに前記装置を通して呼吸を可能にする少なくとも1アパーチャを含み得る。装置はさらに、少なくとも1歯牙表面への物質の塗布を容易にすることに適応できる。前記物質は粉末であり得る。ある実施形態において、前記粉末は反射性粉末である。前記粉末は歯牙表面にパターニングを行うのに役立ち得る。装置はまた、20秒間未満で少なくとも1歯列弓を隔離することにも適応できる。装置はまた歯牙表面へのアクセスを妨げずに作業領域を作ることに適応できる。装置はさらに口内に配置して患者に最大の快適さを与えることに適応できる。
【0042】
前述の通り、
図1A は口10を開け、歯を露出20 して 口腔20 を前方72から見て描写しており、
図1Bは人体を図示しており、体の解剖学的基本面を示す。
I.
装置
図2A は、口腔10内に配置した牽引装置200の1実施形態の前方上から見た斜視図を示す。前記装置200は頬または軟組織牽引フレーム202を有し得る。前記装置はさらに少なくとも1口唇を牽引するための口唇リング208 を有し得る。さらに、前記装置は口腔から体液を吸引できる排出構成部品を有し得る。前記排出構成部品は、フレーム202の少なくとも1つのインレット212 を通って口腔10 と、好ましくは体液を通じて連通ができる。
図2Bは口腔10内に配置した牽引装置200の側面図である。フレームは上部フレーム204と下部フレーム206から構成され得る。ある実施形態においては、口腔10 内排出用インレット212 は上部フレーム204 と下部フレーム202に設置することができる。
図2B はまた、口唇リング208 を使用して口唇12、12’をどのように牽引するかを図示する。ある実施形態においては、装置はさらに舌用リトラクター210を有し得る。
図2Cは
図2Bの直線B-B に沿って見た口腔の断面図を示す。
図2C は口腔の下方側の断面図である。
図2C は上部歯列弓42の歯肉の周りに牽引装置200 の上部フレーム204 を配置し、頬組織14 を牽引して歯肉から離している図を示す。
図2Cはまた、口唇リング208 の上部が上唇12をどのように牽引するかを図示する。
図2D は上顎歯列弓の周りに配置された装置と、口唇リング208 の上部を上から見た図で、フレーム全体を周囲軟組織を含まずに示している。
図2Dでは歯肉保護カバー220は上部フレームを覆っている。
図2Eは
図2Bの直線B-B に沿った口腔の断面図を示し、口腔の頭側を示す。
図2Eは装置の下部フレーム206がどのようにして頬組織14’から下歯列弓の歯肉を隔離するかを示す。
図2E は口唇リング208による下唇12’の牽引を示す。
図2E はまた、フレーム内の口腔からの体液排出用インレット212 を示す。
図2F は口腔10内の所定の場所にある装置200 の正面図を示す。
図2F は上部フレーム204 と下部フレーム206 および口唇リング208を示す。下部フレーム206 は吸引用インレット212 を有する。
図2Fは 正面から見た舌用リトラクター210 を有する装置200 を示す。
図2Gは
図2Fの線C-Cに沿って示した装置200 の断面図である。
【0043】
図3A-3Dは分離した牽引装置の一実施形態を図示している。
図3A は装置300の遠位端から見た装置の斜視図を示す。
図3A は上部フレーム304 と下部フレーム306 および口唇リング308を示す。前記下部フレームは口腔の排出用インレット312 を含む。
図3A はまた、さらに照明リング314を有する口唇リング308 を含む装置300 を図示する。
図3A の装置はまた舌用リトラクター310を有する。
図3B は牽引装置300の平面図である。
図3B は歯肉保護カバー320を付けた上部フレーム、口唇リング308の上部、および口唇リング308の照明リング部分に光を与える光源316、 316’を示す。前記光源は、分離した照明の電源、例えば、内蔵型電池か、または、外部電源にプラグで接続するために使用できるコネクターを光源とすることができる。前記光源は口腔を照らすために使用できる。前記照明リングは、発光ダイオード(LED)、光ファイバーワイヤー、電球、蛍光灯または化学発光法による光源、または、他の適切なあらゆる光源を含む(これらに限定されるものではないが)口腔を照らす光を生じる適切な機能を有し得る。前記光源316、316’は外部電源装置に接続できる。あるいは、前記光源は電池を有することができる。
図3C は分離した牽引装置300の側面図を示す。上部フレ―ム304に加えて、下部フレーム306、舌用リトラクター310、口唇リング308、照明リング314および光源316、装置300 はさらに口唇の牽引を提供するためと装置の配置を容易にするためのリップレスト318 を有し得る。
図3Dは装置300 の後面図を示しており、歯肉保護カバー320を付けた上部フレーム304、歯肉保護カバー320を付けた下部フレーム306 、口唇リング308の部分および舌用リトラクター310の後側を示す。
【0044】
図4A-4Dは牽引装置から分離した上顎歯肉保護カバー420 と下顎歯肉保護カバー422 を示す。
図4A は歯肉保護カバー420、422と舌用リトラクター410の斜視図である。インレット412 は下顎歯肉保護カバー422にの中に見える。前記インレット412 は口腔と牽引装置間の連通、好ましくは流体連通を提供することができる。上下顎の歯肉保護カバーは柔軟性がなくても良い。あるいは、前記歯肉プロテクターは柔らかい、成形しやすい膜であり得る。前記歯肉プロテクターは、ゴム、ワックス、フォーム、または、他の適切なあらゆる材料または、その組合せを含む(これらに限定されるものではないが)あらゆる適切な材料から作成され得る。
図4B は牽引装置400の平面図であり、上顎歯肉プロテクター420 と舌用リトラクター410を示す。
図4C は上顎歯肉保護カバー420 および下顎歯肉保護カバー422の両方の歯肉保護カバーの側面図を示す。
図4C はまた舌用リトラクター410を示す。
図4D は牽引装置400の後面図を示しており、上顎歯肉保護カバー420 および下顎歯肉保護カバー422を示す。口腔の排出用インレット412 は下顎歯肉保護カバー422内に見られる。
【0045】
ある実施形態においては、
図5A-5Dに示すように牽引装置500 は1つのフレーム502から成る。前記フレーム502 はさらに、上部フレーム504と下部フレーム506を有することができる。前記フレームは可鍛性のフレームであり得る。それは患者の口腔の形状に適合する形に成形し得る。ある実施形態において、前記フレームはワイヤーフレームである。ある実施形態においては、前記フレームは成形可能なプラスチックまたはワックスから作成される。前記フレームはフレームの作成に適切なあらゆる材料から作成することができる。口腔の排出用インレット512 は下顎歯肉保護カバー506内に見られる。底部フレーム524 にある吸引ポートは下部フレーム506のインレット512 を通って吸引を導入するために使用できる。
図5A はまた舌用リトラクター510を図示する。
図5B は上から見た牽引装置500 の図面であり、最上部フレーム504、底部フレーム506、底部フレームのインレット512 、および舌用リトラクター510を示す。
図5C はフレーム502の側面図を示し、上部フレームおよび底部フレーム504、506それぞれと舌用リトラクター510を示す。
図5D はフレーム502の後面図であり、上部フレーム504、底部フレーム506および底部フレーム506のインレット512 を示す。
【0046】
図6A-6Dは牽引装置から分離された照明リング614 を示す。前記口唇リングは頬および口唇を牽引するために使用できる。
図6A は照明リングの後部斜視図を示す。前記照明リング614は少なくとも1光源616、616’を有することができる。ある実施形態においては、照明リングは口唇リングとともに単一ユニットとすることができる。あるいは、照明リングは必要であれば、口唇リングに接続できる。照明リング614 は少なくとも口腔を照らすことができる1つの開口部625 を有し得る。
図6B は照明リング614 の平面図であり、光源616、616’を示す。
図6C は口唇リング614 の側面図であり、リップレスト618 と光源616を示す。
図6Dは照明リング614の後面図を示す。
図6D は口腔を照らすリップリングのリップレスト618、開口部625、625’と光源616、616’を示す。
【0047】
図7A-7D は牽引装置700の他の実施形態を図示し、前記牽引装置は舌用リトラクターも歯肉保護カバーも有していない。
図7A は、1個のフレーム702、照明リング714を有する口唇リング708からなる最低限の牽引装置700の斜視図を示す。
図7Bは牽引装置700 の平面図であり、上部フレーム704、口腔の排出用インレット712を少なくとも1個有する下部フレーム706を示す。前記装置は複数のインレットを有することもできる。
図7B はまた、照明リング714、リップレスト718および光源716、 716’を有する口唇リング708の平面図を示している。
図7C は牽引装置700 の側面図であり、上部フレーム704、少なくともインレットを1個有する下部フレーム706、口唇リング708、リップレスト718を有する照明リング714および光源716を有する。
図7D は牽引装置700の後面図を示す。
【0048】
図8A-8Dはフレームがカバー 826 で覆われている牽引装置800の他の実施形態を示す。前記フレームカバー826 は柔軟な膜素材であり得る。前記フレームカバーは、ゴム、コーンポリマー、または「グリーン」または環境に優しい適切な材料、あるいは前記材料のいずれかを含む(これらに限定されるものではないが)適切な材料から作成され得る。
図8A は装置全体を覆うカバー826 を有する装置800 の斜視図である。ある実施形態においては、カバーは装置の一部を覆うことができる。前記カバーは患者の口腔の歯牙表面に適合し得る開口部825 を有し得る。ある実施形態において、前記開口部825 はスリットである。ある実施形態においては、前記開口部は歯列弓に類似した形状を有する。図 8B は前記カバー826およびカバー826の開口部825 を示す装置800 の平面図を示す。
図8Cは牽引装置800の側面図を示す。前記カバーは、上下のフレーム間の空間を覆うことなく装置の上下フレームを覆うことができる。あるいは、カバーは
図8Cに示すように上部フレームと下部フレームとの間の空間を覆うことができる。
図8Dは前記装置の後面図を示す。
【0049】
図9A-9Dは牽引装置から分離したカバー926 を示す。
図9A-9Dは分離した上下フレームの両方のカバー926 を示す。
図10A-10Dは牽引装置から分離した照明リング1014 を示す。
図10Aは分離した照明リング1014 の前方斜視図を示し、光源1016、1016’および口腔を照らすのに使用できる照明リング1014 からのアウトプット1015 を示す。前記照明リング1014 はまた
図10Aに示すようにリップレスト1018 を有し得る。
図10Bは照明リング1014の平面図を示す。
図10Cは照明リング1014の側面図を示す。
図10Dは照明リング1014の後面図を示す。照明リング1014 からのアウトプット1015 は、
図10Dに示すように照明リングの上部、照明リングの下部および照明リングの側面に配置し得る。あるいは、照明リング1014 からのアウトプット1015 は、照明リングの上部のみに配置することができる。前記照明のアウトプットは、照明リングの下部のみに配置することができる。前記照明のアウトプットは、照明リングの側面のみに配置することができる。前記照明のアウトプットは一緒に集めるか、または照明のアウトプットは照明リング全体に均一な間隔に配置することができる。前記照明のアウトプットは、電球、LED、光ファイバー、またはそれらのあらゆる組合せ、または他の適切なあらゆる照明のアウトプットを含む(これらに限定されるものではないが)口腔を照らすための適切なアウトプットであり得る。
【0050】
図11A-11D は照明リング1114の他の形態を示すものである。ある実施形態においては、照明リングは
図11A-11Dに示すようにフレキシブルな材料で作成し得る。フレキシブルな材料のため照明リングは回路に損傷を与えずに曲げることができる。
【0051】
図12A-12Dには牽引装置1200の分離したフレームの他の実施形態を図示する。前述のように、本発明のフレーム設計は、スキャニング用パレットエリアに、より良いアクセスを提供できる。上部フレームおよび下部フレームによって、フレームの側面に沿ったスキャン装置の挿入もまた容易になる。組織は、粉末コーティングを歯牙表面に塗布できるように歯から離した状態にすることができる。口のスキャンは中断することなく完全に実施することができる。
図12A は装置1200の後側から見た装置の斜視図を示す。口唇リング1208、上部および下部フレーム1204、1206の各々および、舌用リトラクター1210 が見られる。
図12Bは牽引装置1200の平面図である。
図12Cは前記牽引装置1200の側面図を示す。
図12Dは前記牽引装置の後面図を示す。
【0052】
図13A-13Dは舌用リトラクターなしの牽引装置1300の他の実施形態を示すものである。
図14A-14Dは牽引装置から分離したフレーム1402 を示す。前記フレームは単独で軟組織を牽引するために使用できる。あるいは、前記フレームは他の機能または構成部品、例えば、フレーム用の柔らかいカバー、照明リング、または口唇リングとともに使用できる。
図14Aはフレーム1402の斜視図である。
図14Bはフレームの平面図である。
図14C はフレームの側面図である。
図14Dはフレームの後面図である。
【0053】
図15A-15Dは、
図14A-14Dに示すフレームを排出構成部品と共に示す。
図15A は口唇リング1508を有するフレーム1502、上部フレーム1504 および下部フレーム1506を図示し、前記下部フレームは排出インレット1512を有する。
図15B は上下のフレーム1504、1506の各々、口唇リング1508および底部フレーム1506のインレット1512 の平面図を示す。
図15C は上下のフレーム1504、1506、口唇リング1508および底部フレーム1506に位置するインレット1512 を含む装置1500 のフレーム1502 の側面図を示す。
図15Dは前記牽引装置1500の後面図であり、上下のフレーム1504、1506、口唇リング1508および牽引装置の排出構成部品からのインレット1512 を含む。
【0054】
図16A-16Dは分離した口唇リングの図である。
図16A は口唇リングの後部側からの口唇リング1608 の斜視図である。前記口唇リングは牽引装置のフレームに口唇リング1608を結合するための接続具1609 を有し得る。
図16Bは口唇リング1608の平面図を示す。
図16Cは口唇リング1608の側面図を示し、
図16D はリップリング1608の後面図を示す。
【0055】
図17A-17は舌用リトラクターを分離した図である。前記舌用リトラクターはワイヤー構造であり得る。あるいは、前記舌用リトラクターはワイヤー構造から前方へ一定空間伸びる構造を有し得る。前記舌は舌用リトラクターカバーの下の空間を占めることができる。前記舌用リトラクターは制限された空間内に舌を収容し、閉じこめる役目を果たし、これによって、舌が口腔に充満するのを防ぐことができる。
図17A はまた舌用リトラクター1710の斜視図である。舌用リトラクター1710はワイヤーフレームからなる簡単な構造であり得る。あるいは、舌用リトラクター1710 は舌用リトラクター1710 をすっぽり包むカバー1711 を有することができる。舌用リトラクターは舌の少なくとも1つの側から舌を収容することができる。あるいは、舌用リトラクターは舌の両側から舌を収容することができる。ある実施形態においては、舌用リトラクターは舌全体を閉じこめることができる。前記舌用リトラクターは制限された空間内へ舌を閉じこめることができ、これによって、舌が口腔を満たすことを防ぐことができる。
図17B はまた舌用リトラクター1710の平面図である。
図17C は舌用リトラクター1710の側面図を示す。
図17D は舌用リトラクター1710の後面図を示す。
【0056】
ある実施形態においては、牽引装置は
図18A-18Dに示す実施形態であり得る。牽引装置1800 はさらに牽引装置1800の形状を変更するために使用できるヒンジ1828 を有し得る。ある実施形態においては、前記ヒンジはフレキシブルな材料のヒンジであり得る。
図18Aに示すように、牽引装置1800 は上部フレーム1804、および下部フレーム1806および舌用リトラクター1810を有することができる。上部フレームおよび下部フレーム1804、1806の各々は少なくとも1つの支持体1830によって機械的に連通することができる。前記支持体は上部フレーム1804 を下部フレーム1806の方に折り畳むためのヒンジ1828 を有することができる。前記ヒンジ1828 によって、装置1800 は圧縮が容易になり、より小型の構造となり、口腔内への挿入を容易にできる。ある実施形態においては、ヒンジは側面支持体に取り付けることができる。ある実施形態においては、ヒンジは上部フレーム1804、または下部フレーム1806または上下の両フレーム1804、1806に取り付けることができる。支持体は上下フレーム確実に固定することができる。あるいは、支持体1830 は
図18Aに示すように回転支持体1830 とすることができる。
図18B は牽引装置1800の平面図であり、最上部フレーム1804、底部フレーム1806、舌用リトラクター1810および側面支持体1810を示す。
図18C は牽引装置1800の側面図であり、最上部フレーム1804、底部フレーム1806、舌用リトラクター1810および側面支持体1810およびヒンジ1828を示す。
図18Dは牽引装置1800の後面図を示す。
【0057】
図19A-19Dはヒンジおよび回転支持体を有し、舌用リトラクターを有さない牽引装置の実施形態を示す。
分離した支持体2030、2030’を
図20A-20Dに示す。ある実施形態においては、支持体2030、2030’は少なくとも1個のヒンジ2028、2028’を有する。ある実施形態においては、支持体は複数のヒンジを有する。
図20A は分離した支持体2030、2030’の斜視図を示す。
図20B は分離した支持体2030、2030’の平面図を示す。
図20C はヒンジ2028を有する支持体2030の1つの側面図である。
図20D は2つの分離した支持体2030、2030’およびそれらの各ヒンジ2028、2028’の後面図である。
【0058】
図21A-21Dは、照明リング2114を付けた口唇リング2108 および舌用リトラクター2110を有する下部アーチ牽引装置2100 を図示している。前記舌用リトラクターは上部口蓋と舌領域の下との間に固定する。前記口唇リングはフレームの底部に接続する。排出構成部品がある場合は、口唇リングの上に配置して単一ユニットとする。前記口唇リング2118 はリップレスト2118 および周囲の下部軟組織構造と共に上唇によって正しい位置に保持される。
図21Aに示すように装置は柔らかい膜のカバーで覆われたフレームを有することができる。ある実施形態においては、柔らかい膜のインレット2112 を通して口腔の吸引を行うことができる。
図21B は牽引装置2100の平面図であり、下顎歯肉保護カバー2122を付けた下部フレーム2106 、下部フレーム2106 のインレットおよび下顎歯肉保護カバー2122、および照明リング2114 を有する口唇リング2108 および光源2116、2116’を示す。
図21Cは牽引装置2100の側面図を示す。
図21Dは牽引装置2100の後面図を示す。
【0059】
図22A-22Dは歯肉プロテクター2222 を付けたフレーム2206 を有する牽引装置2200 の他の実施形態を示しており、口唇リングは含まれてない。
図22Aは牽引装置2200の斜視図である。
図22B は牽引装置2200 の平面図であり、下部フレーム2206 に沿ってインレットを有する歯肉プロテクター2222を付けた下部フレームと、舌用リトラクター2210を示す。
図22Cは牽引装置2200の側面図を示す。
図22Dは牽引装置2200の後面図を示す。
【0060】
図 23A-23D は舌用リトラクターの膜またはカバー2311 の構成を図示する。
図23A は装置の後部側から見た舌用リトラクター2310 の斜視図を示す。
図23B はまたカバー2311を付けた舌用リトラクター2311の平面図である。
図23C は舌用リトラクター2310の側面図を示す。
図23D は舌用リトラクターカバー2310の後面図を示す。
【0061】
図24A-24D は下部アーチ牽引装置から分離した下部フレーム2406の図を示す。ある実施形態においては、下部フレームは、口腔の排出用に少なくとも1インレット2412 を有する。
図24A はフレーム2406の斜視図である。
図24Bは下部フレーム2406の平面図である。
図24Cは前記下部フレーム2406の側面図である。
図24Dは前記下部フレーム2406の後面図である。
【0062】
図25A-25Dは下部フレーム牽引装置2500の他の実施形態を示す。
図25A-25Dに示す装置は、一旦口の中に配置すると、底部アーチを所定の位置に保持するてこの力を有しており、これによって、舌によって底部アーチが持ち上げられて位置から外れるのを防ぐことができる。
図25A は下部フレーム牽引装置2500の斜視図である。
図25A に示す牽引装置2500 は上部パレットと舌用リトラクター2510 に依存せずに前記装置2500を安定させる。従って、前記装置は他の装置より侵入性が少なく、さらに口腔のスキャンを容易にすることができる。
図25A はまた歯列弓用開口部2525のある歯肉保護カバー2522 を付けた下部フレーム2506 を有する装置2500 を示す。前記装置はまた、照明リング2514 とリップレスト2518を有する口唇リング2508 を有することができる。
図25Bは牽引装置2500の平面図である。
図25C は牽引装置2500の側面図である。
図25Dは前記装置2500の後面図である。
【0063】
図26A-26Dに下部アーチ牽引装置2600 の他の実施形態を示す。
図26A は歯肉カバー2622を付けた下部フレーム2606 および舌用リトラクター2610を示す。歯列弓用開口部2625 を
図26Aに示す。さらに、吸引ポート2624 によって、牽引装置2600 はフレームまたは歯肉プロテクターまたはその両方にあるインレット2612 の少なくとも1個を通して、口腔の排出を行うための吸引源に接続することができる。
図26Bは牽引装置の平面図であり、吸引ポート2624、 吸引ポート2624と連通、好ましくは流体連通しているインレット2612 、下部フレーム2606 および歯肉保護カバー2622、舌用リトラクター2610、および牽引装置2600の歯列弓用開口部2625 を示す。
図26C は牽引装置2600 の側面図であり、フレーム2606、歯肉保護カバー2622、舌用リトラクター2610、および吸引ポート2624を示す。
図26Dは牽引装置2600の後面図を示す。
【0064】
図27A-27Dは分離した下部アーチ牽引装置2700の他の実施形態を図示する。
図27Aは他の実施形態の口唇リング2708、上部フレーム2704、下部フレーム2706、および舌用リトラクター2710を有する牽引装置2700 を示す。牽引装置2700 はまた、装置の口腔内挿入を補助し、後部平衡位置のサポートを提供する後部平衡位置支持体2732 をも有する。後部平衡位置支持体2732 は、後方軸/前方軸に沿って装置を中心に正しく配置するために頬の裏側に接触して頬の前からの力との釣り合いをとる。
図27B は牽引装置2700 の平面図であり、口唇リング2708、下部フレーム2706、舌用リトラクター2710、および後部支持体2732を図示する。
図27Cは前記牽引装置の側面図であり、口唇リング2708、下部フレーム2706、舌用リトラクター2710、および後部支持体2732を示す。
図27Dは牽引装置2700 の正面図であり、口唇リング2708、下弓フレーム2706、舌用リトラクター2710、および後部支持体2732を図示する。
【0065】
図28A-28D は分離した排出エレメント2834を示す。
図28A は後側から見た排出エレメント2834の斜視図である。排出エレメントは吸引ポート2824によって吸引源と連通できる。排出エレメント2834 は、前記排出エレメント2834 の少なくとも1インレット2812を通して口腔の排出を行うのに使用することができる。ある実施形態においては、
図28Aに示すように複数の排出エレメント2812 を排出エレメントの全長に沿って設置できる。ある実施形態においては、インレット2812 を頬の内側に沿って設置できる。ある実施形態においては、インレット2812 を舌のまわりに設置することができる。インレット2812 は頬および舌の両方に沿って設置できる。
図28Bは排出エレメントの平面図である。
図28Cは排出エレメント2834の側面図を示す。
図28D は排出エレメント2834の後面図を示す。
【0066】
図29A-29Dは分離した舌デフレクションカバー2911を示す。前記舌デフレクションカバーは、歯牙表面のスキャンを容易にするために舌を反らせて作業空間から出すために使用できる。
図29A は後部側から見た舌デフレクションカバー2911 の斜視図を示す。
図29Bは舌デフレクションカバー2911の平面図である。
図29Cは舌デフレクションカバーの側面図を示す。
図29Dは舌デフレクションカバーの後面図を示す。
【0067】
図30A-30D は分離した上部アーチフレーム3004を示す。上部アーチフレーム3004 は下部アーチ牽引装置と併せて使用できる。上部アーチフレーム3004 は口腔内の軟組織上部の牽引を選択的にサポートするために使用できる。
図30A は上部アーチフレーム3004の一実施形態を示す。アーチ支持体は上部アーチフレーム3004 を牽引装置に接続するコネクター3036 を有し得る。上部アーチフレーム3004 は、上部アーチフレーム3004 と下部牽引装置をパチンと合わせて下部牽引装置に接続することができる。あるいは、上部アーチフレーム3004 は、部品をネジで取り付けて下部牽引装置に接続することができる。あるいは、上部アーチフレームは、糊、テープ、輪ゴム、またはそれらのあらゆる組合せを含む(これらに限られるものではないが)適切な接着または、2ユニットを接着するための機構によって、下部牽引装置に接着することができる。
図30B は分離した上部アーチフレーム3004の平面図である。
図30Cは上部アーチフレームの側面図である。
図30D は上部アーチフレームの後面図である。
【0068】
図31A-31Dは分離した、口唇リング3108を含む上部アーチ牽引装置3100 の他の実施形態を図示する。ある実施形態においては、牽引装置は単一のピースである。ある実施形態においては、牽引装置3100は口腔内に挿入する前にピースが組み立てられる2個以上のピースであり得る。前記口唇リングは装置3100の後部端でフレームに接続できる。
図31A は口唇リング3108、上部アーチフレーム3104および舌用リトラクター3110を含む上部アーチ牽引装置3100 の斜視図である。ある実施形態においては、装置3100 はさらに、舌を収容するための舌カバーを有する。
図31B は牽引装置3100の平面図であり、上部アーチフレーム3104 、口唇リング3108、および舌用リトラクター3110を示す。
図31Cは牽引装置3100の側面図を示す。
図31Dは牽引装置3100の正面図を示す。
【0069】
図32A-32Dは牽引装置3200の他の実施形態を示す。この実施形態においては、上部牽引フレーム3204は隙間3238で隔離されている。ある実施形態においては、口唇リングは隙間3238を有することができる。ある実施形態においては、
図32Aに示すように上部フレーム3204 および口唇リング3208 は共に隙間3238を有する。前記装置は舌用リトラクター3210を有することができる。
図32B は隙間3238を有する牽引装置3200 の平面図を示す。
図32Cは牽引装置3200の側面図を示す。
図32D は牽引装置3200の正面図を示す。
II.
方法
さらに本明細書で述べる本発明の使用方法を記載する。本明細書において、口腔内の組織を牽引する方法であって、口腔内へ送達され得る圧迫された形状であることに適応でき、さらに圧迫が解かれた形状となって使用可能な作業領域を口腔内に作ることに適応できる形状順応性構造を有し、前記使用可能な作業領域は口腔内へのアクセシビリティの向上および口腔内の可視性の向上を提供するものである牽引装置を挿入することと、隔離された作業領域を作るために前記牽引装置を口腔内に配置することとを有する方法を提供する。前記配置ステップは1分間未満で行うことができる。ある実施形態において前記配置ステップは20秒間未満で行うことができる。
【0070】
なお他の口腔内の組織を牽引するための方法は、患者の口腔内に作業領域を作ることに適応できる形状順応性構造を有し、前記作業領域が前記装置を使用せずに作成される作業領域より少なくとも10%大きいものである牽引装置を挿入することと、口腔内に隔離された作業領域を作るために前記牽引装置を配置することを有する。
【0071】
本明細書において提供する他の方法は、口腔内へ送達され得る圧迫された形状であることに適応でき、さらに口腔内で圧迫が解かれた形状となって使用可能な作業領域を作ることに適応できる形状順応性構造を有し、前記使用可能な作業領域は口腔内へのアクセシビリティ(接近性)と口腔内での可視性を向上するものである牽引装置を挿入するステップと、口腔内に作業領域をつくるために前記牽引装置を口腔内に配置するステップとを有する口腔モデルの作成を容易にする方法である。ある実施形態においては、前記方法は、さらに牽引装置で口腔を照明するステップを含むことができる。さらに、前記方法は少なくとも1つの乾燥歯牙表面へ粉末を塗布するステップを有し得る。
III.
製品の材質
当業者が認識するように、本明細書に記載の装置、および本明細書内の教示に基づいて発明の範囲で使用できる他の装置設計、およびその構成部品は、技術上周知の種々の素材から作ることができる。前記装置および構成部品の候補素材は当業者には周知であり、例えば、前記の材料並びに、金属(例、ステンレス鋼、形状記憶合金、例えばニッケル、チタニウム合金ニチノール)およびエンジニアリング・プラスチック(例、ポリカーボネート)等の適切な生体適合性素材がある。例えば、JervisのSIM記憶合金素子組み込み医療機器の米国特許第5,190,546号、Flomenblit の高強度の形状記憶合金医療機器の米国特許第5,964,770号を参照のこと。例えば、装置のフレームはチタニウム、コバルト・クロム、ステンレス鋼のような素材で製造することができる。あるいは、フレームを覆うシースまたは外層は、ポリエーテル・エーテルケトン(PEEK)、ポリアリルアミド、ポリエチレン、およびポリスルホンのような生体適合性ポリマーから製造することができる。例えば、JervisのSIM記憶合金素子組み込み医療機器の米国特許第5,190,546号、Flomenblit の高強度の形状記憶合金医療機器の米国特許第5,964,770号を参照のこと。構成部品のいくつか、または全てに適切な他の材料として、例えば、ポリエーテル・エーテルケトン(PEEK)、ポリアリルアミド、ポリエチレン、およびポリスルホンを含む生体適合性ポリマーがある。Flomenblit の高強度の形状記憶合金医療機器の米国特許第5,964,770号。
【0072】
多様な親水性素材、疎水性素材、またはパテも、例えば、密封を形成するために使用できる。このような素材は当業者に公知であり、前述の、例えば、親水性素材またはパテ(例、Dux Dentalから入手可能なVan-R可逆性ハイドロコロイド、3M Expressから入手可能なビニールポリシロキサン)が含まれる。また他の使用できる材料には、例えば、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)ヒドロゲル類、親水性、医療等級フォーム、多糖類、グリコサミノグリカン類もまた含まれ得る。さらなる材料には、シリコン類、熱可塑性エラストマー類(TPE)、熱可塑性ウレタン類(TPU)、ナイロン類および材料、エポキシ類、コーンポリマー類、または他の環境に優しい材料、またはこれらのあらゆる組合せが含まれる。前記材料は、またあらゆる適切な生体適合性材料でありうる。
【0073】
ある実施形態においては、前記装置は異なった特性を有する材料から作成できる。ある実施形態においては、本明細書に記載の装置は、複数の特性に変換する単一特性の膜から作成することができる。前記材料は、例えば、前記材料の分子構造を変えることによる、付加的なプロセスによって重合硬化することができる。ある実施形態においては、前記材料はフレームまたは装置に被せることができる。次に、前記材料を前記材料の材料特性を変化できる工程にかけることができる。ある実施形態においては、前記装置の材料特性は一貫して同じである。あるいは、前記装置は異なった特性を有する材料から構成され得る。例えば、前記装置の材料はある部分においてはより硬いまたは剛性であり、また、他の部分においてはより柔らかくすることができる。前記材料の特性はレーザー光線を使用して変えることができる。あるいは、前記材料の特性は光線を使用して変えることができる。前記材料の特性は温度、pH、レーザー重合硬化、ステレオリソグラフィック・レーザー重合および架橋、製造後光学処理、および製造後化学処理、またはこれらのあらゆる組合せを含む(これらに限定されるものではないが)材料の材料特性を変える適切な方法を用いて変えることができる。
IV.
キット
本発明はまた、1つ若しくはそれ以上の装置からなるキットで、特定の歯科治療に関連した1つ若しくはそれ以上の装置製品を有するキットを考慮している。例えば、現在レーザーは、歯科医術におけるう蝕除去、接着材の切削または硬化、歯牙漂白、および再構築、形態変更、または歯肉組織の除去を含む(これらに限定されるものではないが)種々の適応に使用されている。本明細書の前記装置は、レーザー治療と併用して使用でき、遮蔽体、舌および頬リトラクターとして作用し、口の他の領域がレーザーによる影響を受けないようにすることができる。従って、レーザー治療で使用される化合物は、前記装置並びに機器のアダプター等とともにキットに入れて提供し得る。
【0074】
さらに、装置を正しく配置した状態で上顎歯列弓および/または下顎歯列弓の上にぴったり合い、また各々の歯列弓全体および、周囲の歯槽突起および歯肉の詳細かつ正確な印象を採得するように設計される1つ若しくはそれ以上の相補的自動印象用トレーシステム(複数)またはインプラント固有印象用トレーを有する1つ若しくはそれ以上の装置を有するキット。これによって印象の唾液による汚染を防ぐことができ、印象材が口腔または患者の喉に逸脱することを防ぐことができる。
【0075】
さらに、本明細において口腔内の組織を牽引するためのキットを提供する。本明細書において提供するのは、口腔内組織を牽引するためのキットであって、口腔内へ送達され得る圧迫された形状であることに適応でき、さらに圧迫が解かれた形状となって使用可能な作業領域を口腔内に作ることに適応できる形状順応性構造を有し、前記使用可能な作業領域は口腔内のアクセシビリティの向上および可視性の向上を提供するものである、口腔内を組織牽引するためのキットである。ある実施形態において、前記キットはさらに舌用リトラクターを含む。その上、前記キットはさらに照明リングを含むことができる。なおさらに、前記キットは排出構成部品を含み得る。前記キットはさらに、フレームの上にぴったり合わすことに適応できる膜を有する。ある実施形態においては、キットはさらに歯肉保護カバーを有し得る。前記キットはさらに口唇リングをも有することができる。
【0076】
なお、さらに本明細書において提供するのは、口腔内組織を牽引するためのキットであって、口腔内へ送達され得る圧迫された形状に適応でき、さらに口腔内で圧迫が解かれた形状となって使用可能な作業領域を作ることに適応できる形状順応性構造を有し、前記使用可能な作業領域が口腔内へのアクセシビリティの向上および口腔内での可視性の向上を提供するものである牽引装置と、口腔内の組織牽引が必要な二次的歯科製品のキットとを有する口腔内組織を牽引するためのキットである。ある実施形態においては、キットはさらに照明源を有することができる。その上、前記キットは少なくとも1つのオプティカル・スキャナまたはデジタル・スキャナを有し得る。なお、前記キットはさらに歯牙表面のスキャニングを容易にする粉末を有し得る。ある実施形態においては、前記キットはさらにホワイトニングまたは漂白キットを含むことができる。
【0077】
本発明の好ましい実施形態は本明細書に示し記載したが、このような実施形態は実施例によってのみ提供されることは当業者には明白であろう。本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更および代用物が当業者によって考慮されるであろう。本明細書に記載の発明の実施形態の種々の代替を発明の実施において使用し得ることを理解する必要がある。以下の請求項は発明の範囲を定義するものであり、また、これらの請求の範囲内の方法および構造、並びにその同等物は、本発明の範囲であることを意図するものである。