(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
気体が注入されるチューブと、上記チューブの外面に設けられた発泡材からなる中間層と、上記中間層の外面に設けられた複数の表皮パネルと、隣り合う上記表皮パネルの間の少なくとも一部に上記中間層の一部を突出させてなる突条部と、上記表皮パネルと上記中間層との間に上記表皮パネルと上記中間層とのそれぞれに接着して設けられて上記表皮パネルを構成する材料よりも柔らかくかつ上記中間層を構成する発泡材よりも発泡倍率の高い発泡材からなるクッション材とを備え、当該クッション材が中間層よりも低硬度になったことを特徴とするボール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バスケットボールやハンドボール等では、使用者がボールを手で掴むことがあり、このときの掴み易さ、即ち、使用者の指がボールに食い込み易いことが要求される。
【0006】
また、特許文献1のボールでは、上記したように中間層の一部が隣り合う表皮パネルの間から突条部として外面に露出しているので、この突条部がボールの使用時における衝撃力や摩擦力を直接受けることになる。従って、突条部は損傷し易いものであり、ボールの耐久性を考えると突条部を強度の高い材料で構成する必要がある。
【0007】
ところが、突条部が中間層の一部であるため、突条部の強度を高めると、中間層の強度も高くなる。中間層の強度を高めると中間層が硬くなりがちであり、指がボールに食い込み難くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、隣り合う表皮パネルの間に中間層の一部を突出させて突条部を形成するようにしたボールにおいて、ボールの耐久性を損なうことなく、表面の触感を柔らかくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、気体が注入されるチューブと、上記チューブの外面に設けられた発泡材からなる中間層と、上記中間層の外面に設けられた複数の表皮パネルと、隣り合う上記表皮パネルの間の少なくとも一部に上記中間層の一部を突出させてなる突条部と、上記表皮パネルと上記中間層との間に上記表皮パネルと上記中間層とのそれぞれに接着して設けられて上記表皮パネルを構成する材料よりも柔らかくかつ上記中間層を構成する発泡材よりも発泡倍率の高い発泡材からなるクッション材とを備え
、当該クッション材が中間層よりも低硬度になったことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、表皮パネルとチューブとの間に設けられたクッション層をチューブ側の発泡材からなる中間層と表皮パネル側の発泡材からなるクッション材との2層に分けて、表皮パネル側のクッション材
がチューブ側の中間層の発泡率よりも発泡率を高く
かつ中間層よりも低硬度になったことにより、ボールの表面の触感を柔らかくするこができる。本発明にあっては、クッション材が表皮パネルに埋め込まれれば、クッション材が表皮パネルの表面の側に接近して変形しやすくなり、ボールが掴みやすくなる。また、本発明にあっては、クッション材が中間層に埋め込まれれば、クッション材が中間層から剥がれ難くなり、ボールの耐久性が向上する。
【0022】
第4の発明によれば、クッション材を中間層に埋め込むことでクッション材が中間層から剥がれ難くなる。これにより、ボールの耐久性をより一層向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るボール1を示すものである。このボール1は、バスケットボールであり、
図2に示すように、球形のチューブ2と、チューブ2の外面を覆うように設けられた補強層3と、補強層3の外面を覆うように設けられた発泡層(中間層)4と、発泡層4の外面を覆うように設けられた複数の表皮パネル5,5,…と、各表皮パネル及び発泡層4の間に設けられたクッション材7とを備えている。
【0026】
チューブ2は、例えば、ブチルゴム又はラテックスゴム等の空気非透過性を有する弾性材料で構成されており、周知の構造のゴム製バルブ(図示せず)を有している。このバルブは、補強層3、発泡層4及び表皮パネル5を貫通してボール1の外面に露出している。バルブを介してチューブ2内に圧縮空気が注入されるようになっている。バルブの構造は上記に限定されるものではない。
【0027】
補強層3は、チューブ2の全体に略均一に巻き付けられた糸で構成されている。糸としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、綿素材ものが挙げられる。補強層3は、糸の代わりに、布等で構成することもできるし、糸と布を組み合わせて構成することもできる。
【0028】
発泡層4は、発泡ゴムで構成されている。発泡層4の硬さは発泡倍率により変更することが可能であり、その発泡倍率は、発泡剤の混合量等により任意に調節できる。この実施形態では、発泡層4の硬さは、50以上70以下(JIS S 6050)となるように設定されている。また、発泡層4の厚みは、0.5mm以上2.0mm以下に設定されている。尚、発泡層4の厚みは、この範囲となるように製造するのであるが、製造上の避けられないばらつきもあるので、一部に発泡層4が無い場合(発泡層4の厚みが0mm)や、発泡層4の一部の厚みが3.0mm程度の場合もある。
【0029】
尚、発泡層4は、例えば、天然ゴムを発泡させたもの、合成ゴムを発泡させたもの、各種樹脂(例えばポリウレタン)を発泡させたものであってもよい。
【0030】
隣り合う表皮パネル5,5の縁部同士は互いに所定寸法だけ離れている。発泡層4には、隣り合う表皮パネル5,5の間を埋めるように両表皮パネル5,5の間へ突出する突条部4aが一体成形されている。突条部4aは、表皮パネル5の縁部に沿って延びており、その突出方向先端面が表皮パネル5の外面と共にボール1の最外面を構成している。突条部4aの突出高さは1mm以上2mm以下に設定されている。また、突条部4aの幅は、1mm以上2mm以下に設定されている。
【0031】
クッション材7は、発泡ゴムで構成されている。クッション材7の硬さは、発泡層4の硬さと同様に、発泡倍率により変更することが可能である。この実施形態では、クッション材7の硬さは、50以下(JIS S 6050)の範囲で設定されており、発泡層4よりも低硬度となるように設定するのが好ましい。尚、クッション材7の硬さの下限は、例えば20以上(JIS S 6050)が好ましい。
【0032】
また、クッション材7の硬さは、表皮パネル5の硬さよりも柔らかくなっている。クッション材7としては、発泡ゴム以外にも、例えば、不織布、ゲル状部材、上記硬度範囲のゴム等であってもよい。尚、クッション材7の硬さは、表皮パネル5の硬さよりも柔らかければよく、硬度の上限としては80(JIS S 6050)以下が好ましい。
【0033】
クッション材7の大きさは、表皮パネル5の大きさよりも小さく設定されている。また、クッション材7の厚みは、1mm以上2mm以下に設定されている。
【0034】
クッション材7は、表皮パネル5の裏側に埋め込まれた状態となっている。すなわち、表皮パネル5の裏面には、クッション材7が嵌る凹部5aが形成されている。凹部5aの深さは、クッション材7の厚みと略同じになっている。クッション材7の表面は、表皮パネル5の凹部5a内面に接着されている。また、クッション材7の裏面には、布材8が貼り付けられている。
【0035】
尚、クッション材7は、例えば、天然ゴムを発泡させたもの、合成ゴムを発泡させたもの、各種樹脂(例えばポリウレタン)を発泡させたものであってもよい。
【0036】
表皮パネル5の裏面の凹部5aよりも外周部分は、発泡層4の突条部4aの周りに接着されている。表皮パネル5の側面5bは、突条部4aの側面に接着されている。
【0037】
図3に示すように、表皮パネル5は、吸水性を有する天然皮革10を有している。天然皮革10の表面には、小さな凸部10a及び凹部10bが多数形成されている。これら凸部10a及び凹部10bは滑り止めのためのものである。天然皮革10の裏面は、略平坦に形成されている。尚、天然皮革10の代わりに合成皮革を用いてもよい。
【0038】
天然皮革10の表面には、塗料による第1コーティング層11と第2コーティング層12とが設けられている。第1コーティング層11は、天然皮革10の表面全体に設けられている。この第1コーティング層11によって天然皮革10の表面全体を覆うことで天然皮革10の表面にある傷等を隠すことが可能になる。
【0039】
一方、第2コーティング層12は、第1コーティング層11とは異なる色である。この第2コーティング層12は、第1コーティング層11の表面において天然皮革10の凹部10bに対応する部分にのみ設けられている。これにより、凸部10aと凹部10bとの色が異なることになる。
【0040】
また、第2コーティング層12は第1コーティング層11と一体化するので、第2コーティング層12が設けられた部分の塗膜の合計の厚さはそれ以外の部分に比べて厚くなる。
【0041】
表皮パネル5の第1コーティング層11には、複数のひび割れ部11a,11aが設けられている。ひび割れ部11aは、第1コーティング層11における第2コーティング層12の周縁部に沿って形成されている。このひび割れ部11aは、使用者の汗を通すものである。
【0042】
次に、上記のように構成されたボール1の製造要領について説明する。まず、チューブ2の外面に周知の方法によって糸を巻き、補強層3を構成する。その後、発泡層4を成形する成形型(図示せず)にチューブ2を入れ、その成形型の成形面と補強層3との間に発泡材料を供給し、発泡させる。これにより、
図4に示すように突条部4aを有する発泡層4が補強層3の周りに形成される。
【0043】
一方、
図3に示すように、天然皮革10の表面に塗装を施して第1コーティング層11を形成した後、別の色の塗装を凹部10bに対応する部分に施して第2コーティング層12を形成する。塗料が乾燥した後、第1コーティング層11にひびが入る程度に強い振動を表皮パネル5に与える。これにより、第1コーティング層11における第2コーティング層12周りにひびが入ってひび割れ部11aが形成される。
【0044】
尚、ひび割れ部11aを形成する場合には、例えば、表皮パネル5を曲げてもよいし、叩いてもよいし、押し潰すように圧力を加えてもよい。
【0045】
図5(a)に示すように、表皮パネル5の裏面に、予め板状に成形されたクッション材7を貼り付ける。その後、表皮パネル5及びクッション材7の下側の周縁部を斜めにそぎ落とす。これにより、
図5(b)に示すように、表皮パネル5の側面5bの下側に、傾斜面5cが形成され、また、クッション材7の下面の周囲に傾斜面7aが形成される。さらに、クッション材7の下面には、布材8を貼り付ける。表皮パネル5の側面5bの上下方向(肉厚方向)の寸法Aは、0.5mm以上に設定されている。表皮パネル5の傾斜面5cの寸法Bは、0.5mm以上に設定されている。クッション材7の傾斜面7aの寸法Cは、0.5mm以上に設定されている。
【0046】
その後、表皮パネル5及びクッション材7を発泡層4に貼り付けていく。このとき、
図2に示すように、表皮パネル5の側面5bを突条部4aの側面に貼り付け、傾斜面5cを発泡層4の突条部4aの基端部の周りに貼り付ける。さらに、クッション材7を発泡層4に貼り付ける。これにより、表皮パネル5の周縁部は、凹部5aが形成されるように曲げられる。
【0047】
尚、表皮パネル5を貼り付ける際に位置ずれを起こすことが考えられるが、この場合には、表皮パネル5及びクッション材7を発泡層4から一旦剥いで位置合わせをした後、再度貼り付ければよい。クッション材7を剥ぐ際には、布材8がクッション材7を補強する効果を有しているので、クッション材7の損傷が抑制される。
【0048】
上記のようにして得られたボール1は、発泡層4の発泡倍率を低くして強度を高めているので、突条部4aの強度も高まる。これにより、ボール1の使用時に突条部4aに衝撃力や摩擦力が直接作用した場合に突条部4aの損傷が抑制される。
【0049】
そして、表皮パネル5と発泡層4との間に、表皮パネル5を構成する材料よりも柔らかい材料からなるクッション材7を設けたので、ボール1の表面の触感が柔らかくなる。
【0050】
また、表皮パネル5の第1コーティング層11にひび割れ部11aを設けたので、使用者の手の汗がひび割れ部11aを通って天然皮革10に吸収される。これにより、汗によるスリップを防止できる。
【0051】
以上説明したように、この実施形態1にかかるボール1によれば、表皮パネル5と発泡層4との間にクッション材7を設けたので、発泡層4を強度の高いものにして突条部4aの損傷を抑制する場合にボール1の表面の触感を柔らかくできる。
【0052】
また、クッション材7の発泡倍率を発泡層4の発泡倍率よりも高くしたので、ボールの1表面が確実に柔らかくなり、触感を向上させることができる。
【0053】
また、クッション材7を表皮パネル5に埋め込むようにしたので、クッション材7と表皮パネル5の表面とを接近させることができる。これにより、ボール1の表面の触感をより一層柔らかくすることができる。
【0054】
また、
図6に示す変形例のように、第2コーティング層12を、第1コーティング層11における凸部10aに対応する部位に形成してもよい。この場合も、表皮パネル5に振動を与えると、第1コーティング層11の第2コーティング層12周りにひび割れ部11aが形成されることになる。
【0055】
また、クッション材7が発泡層4に埋め込まれていないので、ボール1の外面から力を受けた際に、クッション材7が変形しやすくなる。これにより、ボール1の触感が柔らかくなるとともに、指がボール1に食い込みやすくなって掴みやすくなる。
【0056】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2にかかるボール1の一部断面図である。実施形態2のボール1は、クッション材7を表皮パネル5に埋め込んでいない点で実施形態1のものと異なっている。以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0057】
すなわち、実施形態2の表皮パネル5の裏面は略平坦に形成されている。一方、発泡層4には、クッション材7が嵌る凹部4bが形成されている。クッション材7の裏面及び側面は凹部4bの内面に接着されている。また、クッション材7の表面には表皮パネル5が接着されている。
【0058】
実施形態2のボール1を製造する場合には、
図8に示すような成形型50を使用することができる。この成形型50の成形面50aには、突条部4aを成形するための溝部50bが形成されている。成形型50を使用してボール1を製造する場合には、型開き状態の成形型50の成形面50aにクッション材7を載置しておく。そして、成形型50の内部に補強層3が形成されたチューブ2を置き、その後、型締めして内部で発泡材料を発泡させる。これにより、クッション材7が埋め込まれた発泡層4が得られる。そして、表皮パネル5を貼り付けていく。
【0059】
以上説明したように、この実施形態2にかかるボール1によれば、表皮パネル5と発泡層4との間にクッション材7を設けたので、発泡層4を強度の高いものにして突条部4aの損傷を抑制する場合にボール1の表面の触感を柔らかくできる。
【0060】
また、クッション材7を発泡層5に埋め込むことでクッション材7が発泡層5から剥がれ難くなる。これにより、ボール1の耐久性をより一層向上できる。
【0061】
尚、上記実施形態1、2では、本発明をバスケットボールに適用した場合について説明したが、これに限らず、本発明はハンドボール等の手で扱うボールに適用することが可能である。
【0062】
また、上記実施形態1、2では、本発明の中間層を発泡層4で構成しているが、ソリッド材で構成してもよい。また、クッション材7についてもソリッド材で構成してもよい。
【0063】
また、上記実施形態1、2では、天然皮革10に第1コーティング層11及び第2コーティング層12を設けているが、これに限らず、コーティング層を1層のみにしてもよい。
【0064】
また、天然皮革10のコーティング層は3層以上であってもよい。
また、
図9に示す変形例のように、ボール1の一部の隣り合う表皮パネル5,5の縁部同士を直接接合してもよい。すなわち、この
図9の変形例では、隣り合う表皮パネル5,5の間の全てに突条部4aが存在しているのではなく、一部に存在している。
【0065】
また、
図10に示す変形例のように、コーティング層11に多数の貫通穴30を形成してもよい。この貫通穴30が水分透過部であり、ボール1の表面に付着した汗は貫通穴30を透過して天然皮革10に吸収される。貫通穴30の径は、0.01mm以上0.10mm以下が好ましい。その理由は、貫通穴30の径が0.01mmよりも小さくなると汗の透過性が悪化し、一方、0.10mmよりも大きくなるとボール1の外観見栄えが悪化し、また、埃等の異物が貫通穴30に侵入し易くなるからである。尚、製造上のばらつきにより、一部の貫通穴30の径が0.01mmよりも小さくなることや、0.10mmよりも大きくなることもある。貫通穴30は、例えば多数の針を用いて形成することができる。
【0066】
貫通穴30の形成位置は、
図10(a)に示すように、表皮パネル5の平面視で、縦方向及び横方向にそれぞれ直線状に並ぶように形成してもよいし、同図(b)に示すように、横方向は直線状に並び、縦方向はジグザグに並ぶように形成してもよい。
【0067】
図10(a)の場合、(b)の場合において、貫通穴30のピッチP(隣り合う貫通穴30,30の中心間距離)は、1.0mm以上10mm以下が好ましい。理由は、貫通穴30のピッチPが1.0mmよりも小さくなると貫通穴30が密になり過ぎてコーティング層11が剥がれやすくなり、一方、貫通穴30のピッチPが10mmよりも大きくなるとボール1の表面に付着した汗を表皮パネル5に素早く吸収させるのが困難になるからである。
【0068】
また、
図11に示すように、表皮パネル5は合成皮革からなるものであってもよい。この場合、表皮パネル5の表面には多数の気孔31が開口している。汗は、コーティング層11に形成されたひび割れ部や貫通穴(共に図示せず)を通過して気孔31内に吸収されることになる。符号32は不織布と樹脂とが混在した部分を示している。尚、合成皮革の構造は
図11に示すものに限られず、例えば、全体が発泡樹脂と不織布層とで構成されたものであってもよい。