【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴によって達成される。
【0006】
従属請求項が、本発明の好都合なさらなる実施例に関する。
【0007】
本発明によれば、工作機械において被加工物を保持するための被加工物保持具が、中央の貫通穴を有している環状本体の形態で提供される。
この環状本体が、材料の除去によって得られた少なくとも1つの弱体化領域と、該弱体化領域に対応付けられ、加圧流体を充てんすることができる少なくとも1つの圧力室とを備えている。
前記少なくとも1つの弱体化領域が、前記環状本体の軸方向および/または半径方向の弾性変形を可能にするような寸法および配置とされている。
「弱体化領域に対応付けられた圧力室」とは、圧力室が、弱体化領域に対して、圧力室を加圧することによって前記環状本体を軸方向および/または半径方向に特定的に弾性変形させることができるようなやり方で配置されていることを意味する。
これは、被加工物を保持する環状本体が最終的にばねのように機能する所定の弱体化領域を有するので、基本的に剛体である環状本体に特定の弾性を付与することを意味する。
このようにして、環状本体の弱体化領域および剛体領域の特別な配置および構成を利用することによって、環状本体(したがって、環状の本体に保持された被加工物)が加圧状態で弾性的に移動する環状の本体の所定の位置決め方向を精密に設定することが可能である。
【0008】
本発明による被加工物保持具は、この種の被加工物保持具のなかで初めて、弱体化領域および対応付けられる圧力室の配置および形状に応じて、被加工物の位置を軸方向の1つの軸、または軸方向および半径方向の2つの軸、あるいは軸方向および2つの直交する半径方向の3つの軸に沿って調節することができる。
弱体化領域を非対称にすることによって、環状本体の傾きまたは枢動を可能にもする。
【0009】
結果として、本発明による被加工物保持具は、刃の摩耗、工具の最初の設定の公差、切断インサートの公差、温度の変動、および被加工物保持具の高さのオフセットの補償を好都合にする。
すなわち、本発明の被加工物保持具は、自動生産において寸法精度を維持するために、機械加工の際に必要な外乱の補償を確実にする。
【0010】
本発明による被加工物保持具のさらなる利点は、加工機の稼働停止時間および切り替え時間を短縮でき、製造コストを下げることができると同時に、最適な製造品質水準を維持できる点にある。
本発明の被加工物保持具は、マイクロメートル範囲の精密な微調整が必要とされる連続生産において好ましく使用される。
【0011】
念のため、前記環状本体が機械加工の際に被加工物を所定の制度で配置および位置決めできるように充分に剛体であるように、少なくとも1つまたは複数の弱体化領域を形成すべきであることをここで指摘しておかなければならない。
すなわち、前記環状本体の少なくとも1つまたは複数の弱体化領域を、工具による被加工物の通常の機械加工時に生じる力が作用したときに決して環状本体に変形が生じることがないように、形成しなければならない。
しかしながら、他方では、このことは、製造公差を補償するために環状本体を所定の仕方で弾性的に変形させるための力を被加工物の機械加工の際に作用する力に比べて、より強くする必要があり、とくには大幅に強くする必要があることを意味する。
これが、環状本体または被加工物保持具の所定の特定的な微調節を実現するために提供すべき油圧制御圧力が100〜300barの間の値にも達する理由である。
【0012】
すでに述べたように、環状本体は、被加工物を取り付けるため、または工具固定システムを収容するための貫通穴を有している。
この目的のため、好ましくは前記中央の貫通穴にスリーブが設けられ、このスリーブが固定手段によって環状本体に着脱可能に取り付けられる。
前記被加工物を前記被加工物保持具に取り付けるために、締め付けボルトを前記スリーブに通すことができる。
さらに、被加工物固定システムを前記環状本体に浮動的に取り付けてもよい。
【0013】
本発明の第1実施例によれば、前記環状本体は、その外周面に2つの弱体化領域を備えており、すなわち第1凹所および該第1凹所から軸方向に離れて位置している第2凹所を備えている。
これら2つの凹所は、リング状で前記環状本体の全周を巡って延びると同時に、溝状に内半径方向の内部に向かって延びている。
これら2つの溝状の凹所に圧力室が対応付けられており、この圧力室が、軸方向について見たときに、前記溝状の第1凹所および溝状の第2凹所の間に配置されている。
第1凹所および第2凹所と同様に、圧力室も、リング状に前記本体の全周を巡って延びる溝状の凹所を構成している。
しかしながら、前記第1凹所および第2凹所と対照的に、前記圧力室(または、第3凹所)は、貫通穴に対して溝状に半径方向の外側に向かって延びている。
さらに、この圧力室(または、第3凹所)は、前記貫通穴に対して液密に封止されている。
弱体化領域および対応付けられた圧力室の特定の位置および設計の結果として、環状の本体が、加圧流体が圧力室に作用するときに専ら軸方向に膨張する。
すなわち、第1の実施例の被加工物保持具は、環状本体へと接続された被加工物を軸方向に微調節することを可能にする。
【0014】
前記第1凹所および第2凹所は、好ましくは、半径方向の深さが異なっている。
これは、より高い弾性を有利に保証するので、被加工物保持具の環状本体における極端なピーク応力を防止する。
【0015】
有利合には、第3凹所は、充てん要素によって貫通穴に対して液密にシールされている。
充てん要素によって第3凹所を液密に封止することは、充てん要素が圧力室のサイズを小さくして必要な流体の量を少なくする単純な手段を構成する点で有利合であることが分かる。
【0016】
本発明の第2実施例においては、環状本体が、4つの弱体化領域を備えており、すなわち環状本体の外周面の2つの正反対に位置する矩形の凹所と、環状本体を貫いて環状本体の周方向に延びている2つの二連S字形切込とを備えている。
2つの矩形凹所および2つの二連S字形切込は、軸方向について見たときに、切込が矩形凹所の高さに配置され、周方向について見たときに、二連S字形切込の各々が2つの正反対に位置する矩形凹所の間に位置するように、配置されている。
圧力室が、2つの矩形凹所にそれぞれ対応付けられている。
これらの圧力室は、半径方向について見たときに、それぞれの矩形凹所と中央の貫通穴との間に位置する凹所の形態で設けられている。
凹所の形態の2つの圧力室の各々に、加圧流体を作用させることができ、半径方向に変位させることができるピストンが収容されている。
ここでは、2つの正反対に位置する矩形凹所に2つの二連S字形切込を組み合わせてなる形態である適切に定められた弱体化領域が、やはり一種のばねを形成し、実際には剛体である環状本体に半径方向に特定程度の弾性を付与する。
結果として、加圧流体が2つのピストンに作用するとき、前記環状本体が、矩形の凹所の表面の法線の方向に、特定の半径方向に変形する。
このようにして、本発明の第2実施例である被加工物保持具は、特定の半径方向について環状本体(したがって、この環状の本体に保持された被加工物)の微調節を可能にする。
【0017】
当然ながら、上述の第1実施例および第2実施例を組み合わせることも考えられる。
その場合、環状の本体が、第1実施例のように形成された環状本体部分を有するとともに、この本体部分から軸方向に離間して、第2実施例のように形成された環状本体部分を有すると考えられる。
結果として得られる環状本体は、軸方向および半径方向の両方について被加工物の特定的な微調節を可能にする。
【0018】
本発明の第3実施例においては、環状本体が、第2実施例においてすでに説明した4つの弱体化領域および対応付けられた2つの圧力室の他に、4つの追加弱体化領域および2つの追加圧力室を有している。
これら4つの追加の弱体化領域および2つの追加圧力室は、設計については第2実施例において上述した弱体化領域および圧力室と同一であるが、それらから軸方向に離され、それらに対して90°回転させられて位置している。
最初の4つの弱体化領域および最初の4つの弱体化領域から90°だけずらされている4つの追加弱体化領域の各々がばねのように機能するため、環状本体が、2つの直交する半径方向に或る程度の弾性を有する。
これは、特定の圧力がピストンに作用するとき、前記環状本体が互いに直交する2つの半径方向に弾性変形できるので、環状本体に保持された被加工物について、互いに直交する特定の2つの半径方向に微調節が可能であることを意味する。
【0019】
念のため、上述した本発明の第2実施例および第3実施例において、用語「弱体化領域」が、正反対に位置する矩形の凹所および環状の本体に(例えば、ワイヤカットEDMによって)二連S字形に形成された切込の両方を指し、上述のばね効果が、これらの特別な弱体化領域の組み合わせの結果であることを指摘しておかなければならない。
【0020】
第3実施例も、当然ながら、第1実施例と組み合わせることが可能であり、得られる環状本体は、第1実施例のように形成された環状の本体部分を有するとともに、この本体部分から軸方向に離間して、第3実施例のように形成された環状本体部分を有する。
結果として、環状本体が、軸方向および互いに直交する2つの特定の半径方向の両方について、被加工物の微調節を可能にする。
【0021】
弱体化領域を非対称な形態で設けることも考えられる。
弱体化領域が非対称に形成される場合、被加工物保持具を前記環状本体の長手軸に対して対称および非対称に配置された傾斜軸または首振り軸を中心にして偏向させることができる。
【0022】
本発明のさらなる利点、特徴、および考えられる応用を図面に示されている実施例と関連づけて、以下の説明から理解することができる。
【0023】
次に、本発明を図面に示した実施例を参照しつつ、さらに詳しく説明する。
【0024】
本明細書、特許請求の範囲、および図面の全体を通して使用されている用語および関連の参照番号は、後述の符号の説明に記載のとおりである。