(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザーによって元の色とは異なる色に発色する金属及び金属化合物からなる群より選択される少なくとも一方を含むレーザー発色粉末と、前記レーザー発色粉末を構成する材料以外のセラミックスからなるセラミックス粉末とを含むフィラー、及び分散媒を含有し、
前記フィラーは、前記セラミックス粉末100質量部に対して、前記レーザー発色粉末を20〜400質量部含んでなり、
ハニカム構造体の外周面に塗布して外周コート層を形成するために用いられる外周コート材であって、
前記分散媒は、水であり、前記外周コート材中の前記レーザー発色粉末及び前記セラミックス粉末の合計100質量部に対して、当該分散媒を15〜30質量部含む外周コート材。
前記レーザー発色粉末が、前記レーザーによって、前記レーザー発色粉末が存在する領域を、0〜60%の明度となるように発色させるものである請求項1又は2に記載の外周コート材。
前記レーザー発色粉末が、炭化珪素、珪素、チタニア、及び窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種を含む粒子を含有する粉末である請求項1〜3のいずれか一項に記載の外周コート材。
前記セラミックス粉末が、コージェライト、窒化珪素、アルミナ、ムライト、ジルコニア、燐酸ジルコニウム、及びアルミニウムチタネートからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスの粒子を含有する粉末である請求項1〜4のいずれか一項に記載の外周コート材。
多孔質の隔壁を有し、前記隔壁によって複数のセルが区画形成されたハニカム構造体の外周面に、請求項1〜7のいずれか一項に記載の外周コート材を塗布し、塗布した外周コート材を乾燥させて外周コート層を形成する工程を備えた、外周コートハニカム構造体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記したインクによる印刷(印字)では、ハニカム構造体の出荷後等の取り扱いの際に、印刷(印字)が磨耗してしまい、重要な情報を判読できなくなるという問題があった。また、ハニカム構造体の外周コート層に刻印する方法では、刻印に非常に手間が掛かることや、刻印により破損を生じする可能があり、更に、このような刻印の場合には、色による判別ができないため、刻印部分の判別が極めて行い難いという問題があった。
【0009】
また、ハニカム構造体は、上記印字等が行われて完成した後に、触媒塗布や、キャニングの化学的処理、熱処理等を経て自動車に搭載されるため、印刷(印字)の磨耗以外にも、上述した化学的処理や熱処理等にて劣化しない印字(マーキング)方法の開発が要望されている。
【0010】
化学的処理や熱処理に対する耐性を有する印字方法としては、例えば、物品の表面にレーザーを照射して印字を行うレーザーマーキング方法等が挙げられるが、このようなレーザーマーキング方法では、従来のハニカム構造体用の外周コート材では十分な発色が得られないという問題や、外周コート材自体が予め黒色のものであると、レーザーマーキングによる印字とコート層との判別が極めて困難になるという問題があった。
【0011】
また、例えば、引用文献7のマーキング組成物は、マーキングしたい部分に予めマーキング用組成物を塗布する工程が余分に必要であるため、製造コスト、即ち、レーザーマーキングを行うためのコストが増大するという問題があった。また、このマーキング組成物が極めて脆く、且つ接着も悪いために、マーキング組成物の一部が剥れ易く、剥がれ落ちた部分に印字されたマーキングが判読できなくなるという問題もあった。更に、このようなマーキング組成物は、ハニカム構造体の外壁上にある厚みを持って塗布される。こうしてマーキング組成物が塗布されたハニカム構造体は、車載に際して外壁側面から一様に圧縮されてケース内で保持される必要がある。このため、マーキング組成物を十分薄く塗布しないと、塗布の端部で応力が集中し、例えば、ハニカム構造体や上記ケースの破壊を招く懸念もある。そして、このようにマーキング組成物を薄く塗布する必要上、上記マーキング組成物の脆さ、接着の悪さが助長される可能性もある。
【0012】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、レーザーによる良好な発色を可能とするハニカム構造体用の外周コート材、並びに、このような外周コート材によって形成された外周コート層を備え、その外周面にレーザーマーキングが可能な外周コートハニカム構造体及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、レーザーによる発色が生じないコージェライト等の粉末と、レーザーによって元の色とは異なる色に発色する金属及び金属化合物からなる群より選択される少なくとも一方を含む粉末とを、フィラーとして所定の割合で混合して外周コート材を形成することによって、レーザーによって良好な発色が行われ、且つ、発色が行われない部位とのコントラストに優れたものとすることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の外周コート材、並びに、外周コートハニカム構造体及びその製造方法が提供される。
【0014】
[1] レーザーによって元の色とは異なる色に発色する金属及び金属化合物からなる群より選択される少なくとも一方を含むレーザー発色粉末と、前記レーザー発色粉末を構成する材料以外のセラミックスからなるセラミックス粉末とを含むフィラー、及び分散媒を含有し、前記フィラーは、前記セラミックス粉末100質量部に対して、前記レーザー発色粉末を20〜400質量部含んでなり、ハニカム構造体の外周面に塗布して外周コート層を形成するために用いられる外周コート材
であって、前記分散媒は、水であり、前記外周コート材中の前記レーザー発色粉末及び前記セラミックス粉末の合計100質量部に対して、当該分散媒を15〜30質量部含む外周コート材。
【0015】
[2] 前記レーザー発色粉末が、前記レーザーによって黒色の発色を生じるものである前記[1]に記載の外周コート材。
【0016】
[3] 前記レーザー発色粉末が、前記レーザーによって、前記レーザー発色粉末が存在する領域を、0〜60%の明度となるように発色させるものである前記[1]又は[2]に記載の外周コート材。
【0017】
[4] 前記レーザー発色粉末が、炭化珪素、珪素、チタニア、及び窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種を含む粒子を含有する粉末である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の外周コート材。
【0018】
[5] 前記セラミックス粉末が、コージェライト、窒化珪素、アルミナ、ムライト、ジルコニア、燐酸ジルコニウム、及びアルミニウムチタネートからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスの粒子を含有する粉末である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の外周コート材。
【0019】
[6] 無機バインダーとしてコロイダルシリカを含有する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の外周コート材。
【0020】
[7] 前記レーザー発色粉末が、平均粒子径が1.0〜50μmの粒子からなる粉末である前記[1]〜[6]のいずれかに記載の外周コート材。
【0021】
[8] 多孔質の隔壁を有し、前記隔壁によって複数のセルが区画形成されたハニカム構造体と、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の外周コート材が、前記ハニカム構造体の外周面の
全域に塗布されて形成された外周コート層と、を備えた外周コートハニカム構造体
であって、前記外周コート層の厚さは、0.05〜0.8mmである外周コートハニカム構造体。
【0022】
[9] 前記外周コート層の表面に、レーザーによるマーキングが施された前記[8]に記載の外周コートハニカム構造体。
【0023】
[10] 前記外周コート層は、800℃における熱膨張係数が、0.8〜3.2×10
−6/Kである前記[8]又は[9]に記載の外周コートハニカム構造体。
【0024】
[11] 多孔質の隔壁を有し、前記隔壁によって複数のセルが区画形成されたハニカム構造体の外周面に、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の外周コート材を塗布し、塗布した外周コート材を乾燥させて外周コート層を形成する工程を備えた、外周コートハニカム構造体の製造方法。
【0025】
[12] 前記外周コート層に、レーザー光を照射してマーキングを行う工程を更に備えた前記[11]に記載の外周コートハニカム構造体の製造方法。
【0026】
[13] 前記マーキングを行う工程において、CO
2レーザーにより前記外周コート層に前記マーキングを行う前記[12]に記載の外周コートハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明の外周コート材は、ハニカム構造体の外周面に前記外周コート材を塗布して形成した外周コート層に対して、レーザーによって良好な発色(マーキング)を行うことが可能であり、且つ、発色が行われない部位とのコントラストにも優れている。また、本発明の外周コートハニカム構造体は、上記した本発明の外周コート材によって形成された外周コート層を備え、その外周面に良好にレーザーマーキングを行うことが可能である。また、本発明の外周コートハニカム構造体の製造方法によれば、このような外周コートハニカム構造体を簡便に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の外周コート材、並びに、外周コートハニカム構造体及びその製造方法を実施するための形態について具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える外周コート材、並びに、外周コートハニカム構造体及びその製造方法を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0030】
[1]外周コート材:
まず、本発明の外周コート材の一の実施形態について具体的に説明する。本実施形態の外周コート材は、レーザーによって元の色とは異なる色に発色する金属及び金属化合物のうちの少なくとも一方を含むレーザー発色粉末と、「前記レーザー発色粉末を構成する材料(即ち、レーザー発色粉末としての金属及び金属化合物)以外のセラミックス」、からなるセラミックス粉末と、を含むフィラー、及び分散媒を含有する外周コート材である。そして、この外周コート材のフィラーは、セラミックス粉末100質量部に対して、前記レーザー発色粉末を20〜400質量部含んでなるものである。このような本実施形態の外周コート材は、ハニカム構造体の外周面に塗布して、ハニカム構造体の外周コート層を形成するために用いられるコート材である。
【0031】
このような本実施形態の外周コート材は、ハニカム構造体の外周面に塗布して形成した外周コート層に対して、レーザーによって良好な発色(マーキング)を行うことが可能であり、且つ、発色が行われない部位とのコントラストにも優れている。即ち、上述したレーザー発色粉末は、レーザーを照射することによって、凝集により乱反射性を失しない発色する。例えば、レーザー発色粉末としての炭化珪素は、黒色から緑色のような暗色を呈するように発色する。一方、「レーザー発色粉末を構成する材料以外のセラミックス」、からなるセラミックス粉末、具体的には、コージェライト等からなるセラミック粉末は、レーザーを照射しても発色しない。本実施形態の外周コート材は、このようなレーザー発色粉末と、コージェライト等からなるセラミック粉末とを、フィラーとして上記した所定の割合で混合したものであり、レーザー発色粉末に含まれる前記金属や金属化合物粉末の発色により、照射部分(即ち、マーキング部分)の識別が十分に可能で、且つ、本来、白色系の色に近いセラミックス粉末が、外周コート材からなるコート層の地色となるため、レーザー発色粉末が発色したマーキング部分と非照射部との高いコントラストを可能とする。なお、「フィラー」とは、外周コート材によって形成される「外周コート層」の主要部分を構成するための充填剤のことを意味する。
【0032】
従来の外周コート材は、基材(即ち、ハニカム構造体)との熱膨張係数差に着目して、この基材と同じ酸化物のみを含有するフィラーが用いられており、例えば、基材として、コージェライトからなるハニカム構造体に使用する外周コート材としては、フィラーとしてコージェライトの粉末を用いたものが用いられていた。このようなコージェライトの粉末を用いた外周コート材からなる外周コート層は、不定形な細かいセラミック粒子の集合体によって構成されるため、レーザーを照射しても、外周コート材(外周コート層)中の粒子が加熱されて凝集し、その容積が減少することはあっても、レーザーによる発色が行われない。例えば、上記した凝集によって、照射部分が凹み、可視光透過性が幾分か増加し、非照射部分との僅かな差を生じることもあるが、非照射部分との発色によるコントラストが極めて低く、印字(マーキング)を読み取ることは極めて困難である。
【0033】
また、仮に、外周コート材に、フィラーとして炭化珪素のみを用いた場合には、レーザーの照射によって暗色を呈するように発色するが、炭化珪素自体が黒色に近い色合いであるため、非照射部とのコントラストが極めて低く、このような場合にも、印字(マーキング)を読み取ることは極めて困難である。
【0034】
本実施形態の外周コート材は、レーザーによって元の色とは異なる色に発色する金属及び金属化合物からなる群より選択される少なくとも一方を含むレーザー発色粉末が発色した場合に良好なコントラストが得られるように、セラミックス粉末100質量部に対して、前記レーザー発色粉末が20〜400質量部含まれている。例えば、レーザー発色粉末の量が20質量部未満の場合には、レーザーによって発色するレーザー発色粉末の量が少なすぎて、十分な発色を得ることができず、また、レーザー発色粉末の量が400質量部を超えると、基材との熱膨張係数差が大きくなり、耐熱衝撃性が低下する。
【0035】
なお、レーザー発色粉末の量は、セラミックス粉末100質量部に対して、50〜200質量部であることが好ましく、100〜200質量部であることが更に好ましい。このように構成することによって、非照射部とのコントラストをより良好にすることができる。
【0036】
本実施形態の外周コート材に用いられるレーザー発色粉末は、レーザーによって黒色の発色を生じるものであることが好ましい。このようなレーザー発色粉末を用いることにより、コントラストに優れた発色を実現することができる。
【0037】
なお、「レーザーによって黒色の発色を生じる」とは、レーザー発色粉末を構成する上述した金属或いは金属化合物に対して、レーザーマーキング用の光源スペクトルに赤外線領域の波長光を含むレーザー(即ち、赤外線レーザー)を照射した場合に、上記金属或いは金属化合物が存在する領域が、0〜60%の明度となる発色を呈することをいう。即ち、本発明における「黒色の発色」とは、完全な無彩色の黒色のみを意味するのではなく、明度が0〜60%の明度であり、非照射部とのコントラストが良好な程度の黒色に近い発色(暗色の発色)をするものも含まれる。このため、レーザー発色粉末としては、レーザーによって、レーザー発色粉末が存在する領域を、0〜60%の明度となるように発色させるものを好適例として挙げることができる。なお、上記赤外線レーザーは、明度の測定を行う基準としてのレーザーであり、本実施形態の外周コート材に使用されるレーザーの種類を限定するものではない。
【0038】
また、本明細書において、レーザーによる「印字」という場合には、文字による印字に限定されることはなく、文字以外の図形、記号、模様、及び、バーコード等の識別情報などの標識を表示することを意味するものとする。
【0039】
本実施形態の外周コート材に使用されるレーザーによって発色を生じるレーザー発色粉末としては、例えば、炭化珪素、珪素、チタニア、及び窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種の金属又は金属化合物の粒子を含有する粉末を好適に用いることができる。特に、耐熱性の観点から炭化珪素を用いることがより好ましい。また、外周コート層として必要な強度を得るという観点から、前記レーザー発色粉末の平均粒子径(即ち、レーザー発色粉末を構成する「レーザーによって発色を生じる金属或いは金属化合物の粒子」の平均粒子径)は1.0〜50μmであることが好ましく、1.5〜20μmであることが更に好ましい。このような金属或いは金属化合物の粒子からなる粉末は、レーザーの照射により良好に発色する。なお、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法による体積基準の粒子径分布測定によって測定した平均粒子径である。例えば、このような平均粒子径は、堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920(商品名)」によって測定することができる。
【0040】
一方、レーザー発色粉末を構成する材料以外のセラミックス(即ち、レーザーによって元の色とは異なる色に発色する上記金属及び金属化合物以外のセラミックス)からなるセラミックス粉末としては、例えば、コージェライト、窒化珪素、アルミナ、ムライト、ジルコニア、燐酸ジルコニウム、及びアルミニウムチタネートからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスの粒子を含有する粉末を好適に用いることができる。このようなセラミックス粉末は、例えば、外周コート層を形成するためのハニカム構造体の材質に合わせて適宜選択することが好ましい。
【0041】
本実施形態の外周コート材は、上記したフィラーとしてのレーザー発色粉末及びセラミックス粉末が、分散媒によって分散されたスラリーの状態として構成されている。
【0042】
本実施形態の外周コート材に用いられる分散媒については、上記フィラーを分散させることが可能な液体であればよ
いが、本実施形態の外周コート材においては、水
を用い
る。
【0043】
分散媒の量については特に制限はないが、外周コート材を、ハニカム構造体(担体)の外周面に塗布して外周コート層を形成する際に、十分な塗工性及び粘性を有するように調製される量であることが好ましい。具体的には、外周コート材中の上記レーザー発色粉末及びセラミックス粉末の合計100質量部に対して、15〜30質量部であ
り、20〜25質量部であること
が好ましい。
【0044】
また、本実施形態の外周コート材は、無機バインダーとしてコロイダルシリカを更に含有するものであってもよい。このようなコロイダルシリカは、外周コート材の接着剤として機能するものであり、外周コート材によってハニカム構造体の外周に外周コート層を形成した場合に、ハニカム構造体との接着性を良好なものとすることができる。
【0045】
なお、コロイダルシリカは、上記レーザー発色粉末及びセラミックス粉末の合計100質量部に対して、20〜35質量部であることが好ましく、25〜30質量部であることが更に好ましい。このように構成することによって、外周コート材を塗布する際の塗工性及び粘性を良好にすることができ、且つ、形成された外周コート層が衝撃等によりハニカム構造体から剥離しないように確実に接着することができる。
【0046】
コロイダルシリカとしては、例えば、分散しているシリカ粒子の平均粒子径が10〜30nmであることが好ましく、また、15〜25nmであることが更に好ましい。
【0047】
更に、本実施形態の外周コート材は、有機バインダーや粘土等を更に含有してもよい。例えば、有機バインダーとしては、メチルセルロース(以下、「MC」ともいう)、カルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」ともいう)、バイオポリマーを挙げることができ、粘土としては、ベントナイト、モンモリロナイトを挙げることができる。
【0048】
本実施形態の外周コート材は、これまでに説明した、フィラーとしてのレーザー発色粉末とセラミックス粉末、及び必要に応じて、上記コロイダルシリカやその他の添加材を、分散媒とともに混合してスラリー状又はペースト状に調製することによって製造することができる。
【0049】
また、外周コート材は、その粘度が100〜300dPa・sに調製されたものであることが好ましく、150〜250dPa・sに調製されたものであることが更に好ましく、180〜220dPa・sに調製されたものであることが特に好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体の外周面の塗布が容易になる。例えば、粘度が100dPa・s未満では、外周コート材の流動性が高すぎて、外周コート材を塗布した場合に、外周コート材が流れてしまい、十分な厚さの外周コート層を形成することが困難になることがある。特に、外周コート層が薄くなってしまうと、レーザーによって印字した場合に、発色が薄くなってしまうことがある。一方、粘度が300dPa・sを超えると、流動性及び濡れ性が悪化し、塗工性が悪化することがある。また、形成した外周コート層に、クラックの発生や、剥離等の不具合が発生し易くなることもある。
【0050】
このような外周コート材は、ハニカム構造体の外周面の少なくとも一部に塗布し、乾燥或いは乾燥した後に焼成することにより、上記レーザー発色粉末とセラミックス粉末とが主たる成分として構成された外周コート層を形成することができる。
【0051】
[2]外周コートハニカム構造体:
次に、本発明の外周コートハニカム構造体の一の実施形態について詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の外周コートハニカム構造体1は、多孔質の隔壁4を有し、この隔壁4によって複数のセル3が区画形成されたハニカム構造体5と、これまでに説明した、本発明の外周コート材が、ハニカム構造体5の外周面5aの
全域に塗布されて形成された外周コート層6と、を備えた外周コートハニカム構造体1である。
【0052】
このような本実施形態の外周コートハニカム構造体1は、外周コート層6の表面にレーザーによって印字を行うことにより、外周コート材に含有されているレーザー発色粉末が元の色とは異なる色(例えば、暗色)を呈するように発色し、発色した印字(マーキング)部分と、外周コート層6の非照射部との高いコントラストを可能とする。このような印字部分は、その表面が多少磨耗した程度では判読不能になることはなく、また、化学的処理や熱処理に対する耐性を有するものある。このため、外周コートハニカム構造体に対して、触媒塗布や、キャニング等を行ったとしても、レーザーによる印字が劣化せず、継続的に印字部分を判読することができる。
【0053】
このように、本実施形態の外周コートハニカム構造体は、その外周コート層の表面に、レーザーによる、文字、図形、記号、模様、及びバーコード等の識別情報などの標識等のマーキング(印字)が施されたものとして好適に用いることができる。
【0054】
ここで、
図1は、本発明の外周コートハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。なお、
図1に示す外周コートハニカム構造体1においては、ハニカム構造体5の外周面5aの全面に外周コート材が塗布されて外周コート層が形成された場合の例を示しているが、例えば、
参考例として、ハニカム構造体の外周面の一部に外周コート材が塗布されて、外周面の一部に、本発明の外周コート材からなる外周コート層が形成されていてもよい。このように、ハニカム構造体の外周面の一部に外周コート層を形成する場合には、ハニカム構造体の製品情報や識別情報を印字する領域に、本実施形態の外周コート材からなる外周コート層が形成されていることが好ましい。
【0055】
なお、外周コート層の厚さ
は、0.05〜0.8mmであ
り、0.1〜0.5mmであること
が好ましく、0.2〜0.4mmであることが特に好ましい。外周コート層の厚さが0.05mm未満であると、外周コート層が薄くなり過ぎて、外周コートハニカム構造体の機械的強度が低下することがあるとともに、レーザーによって印字(マーキング)を行った場合に、外周コート層中のレーザー発色粉末(即ち、レーザーによって発色を生じる金属及び金属化合物の粉末)の量が少ないために、印字部分が鮮明に発色しないことがある。また、外周コート層の厚さが0.8mmを超えると、外周コート層が過剰に厚くなり、例えば、濾過層や触媒担体として実質的に機能するハニカム構造体の大きさに比して、外周コートハニカム構造体が大きくなり過ぎてしまうことがある。
【0056】
また、外周コート層は、800℃における熱膨張係数が、0.8〜3.2×10
−6/Kであることが好ましく、0.8〜2.8×10
−6/Kであることが更に好ましく、0.8〜2.3×10
−6/Kであることが特に好ましい。このように構成することによって、外周コート層の耐熱衝撃性が良好である。例えば、800℃における熱膨張係数が、3.2×10
−6/K以下であれば、通常の使用条件において基材との熱膨張差が問題にならないほど小さいが、熱膨張係数が3.2×10
−6/Kを超えると、基材との熱膨張差が過大となり熱衝撃による外周コート層の剥離・破壊が発生することとなる。
【0057】
図1に示すように、本実施形態の外周コートハニカム構造体1に用いられるハニカム構造体5は、多孔質の隔壁4を有し、この隔壁4によって複数のセル3が区画形成されたものである。ハニカム構造体の材質については特に制限はないが、多数の細孔を有する多孔質体であることが必要であるため、通常は、コージェライト、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、ムライト、ジルコニア、燐酸ジルコニウム、アルミニウムチタネート、又はチタニア等のセラミックスからなる焼結体、特に、コージェライトからなる焼結体が好適に用いられる。コージェライトからなる焼結体は熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性や機械的強度に優れる点において好ましい。
【0058】
ハニカム構造体のセル形状は特に限定されないが、中心軸に直交する断面において、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形、円形、又は楕円形であることが好ましく、その他不定形であってもよい。
【0059】
また、ハニカム構造体の外形としては、特に限定されないが、円筒形、楕円筒形、四角筒形等の底面多角形の筒形状、底面不定形の筒形状等を挙げることができる。また、ハニカム構造体の大きさは、特に限定されないが、中心軸方向長さが40〜500mmが好ましい。また、例えば、ハニカム構造体の外形が円筒状の場合、その底面の半径が50〜500mmであることが好ましい。
【0060】
ハニカム構造体の隔壁の厚さは、0.20〜0.50mmであることが好ましく、製造の容易さの点で、0.25〜0.45mmであることが更に好ましい。例えば、0.20mmより薄いと、外周コートハニカム構造体の強度が低下することがあり、0.50mmより厚いと、外周コートハニカム構造体をフィルタとして用いた場合に、圧力損失が大きくなることがある。なお、この隔壁の厚さは、軸方向断面を顕微鏡観察する方法で測定した平均値である。
【0061】
また、ハニカム構造体を構成する隔壁の気孔率は、30〜70%であることが好ましく、製造の容易さの点で40〜60%であることが更に好ましい。30%より小さいと、圧力損失が増大することがあり、70%より大きいと、ハニカム構造体が脆くなり欠落し易くなることがある。
【0062】
また、多孔質の隔壁の平均細孔径は、5〜30μmであることが好ましく、10〜25μmであることが更に好ましい。5μmより小さいと、フィルタとして用いた場合に、粒子状物質の堆積が少ない場合でも圧力損失が増大することがあり、30μmより大きいと、ハニカム構造体が脆くなり欠落し易くなることがある。なお、本明細書において、「平均細孔径」、「気孔率」というときには、水銀圧入法により測定した平均細孔径、気孔率を意味するものとする。
【0063】
ハニカム構造体のセル密度も特に制限はないが、47〜140セル/cm
2の範囲であることが好ましく、47〜93セル/cm
2の範囲であることが更に好ましい。
【0064】
このようなハニカム構造体は、セラミック原料を含有する坏土を、一方の端面から他方の端面まで貫通し流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム状に成形して、ハニカム成形体を形成し、このハニカム成形体を、乾燥した後に焼成することによって作製される。そして、このようなハニカム構造体を、本実施形態の外周コートハニカム構造体に用いる場合には、成形又は焼成後に、ハニカム成形体(ハニカム構造体)の外周を研削して所定形状とし、この外周を研削したハニカム構造体に、上記外周コート材を塗布して外周コート層を形成する。なお、本実施形態の外周コートハニカム構造体においては、例えば、ハニカム構造体の外周を研削せずに、外周を有したハニカム構造体を用い、この外周を有するハニカム構造体の外周面(即ち、ハニカム構造体の外周の更に外側)に、更に、上記外周コート材を塗布して、外周コート層を形成してもよい。即ち、前者の場合には、外周コートハニカム構造体の外周面には、本実施形態の外周コート材からなる外周コート層のみが配設されるものであり、一方、後者の場合には、ハニカム構造体の外周面に、更に本実施形態の外周コート材からなる外周コート層が積層された、二層構造の外周壁が形成される。
【0065】
なお、ハニカム構造体は、隔壁が一体的に形成された一体型のハニカム構造体に限定されることはなく、例えば、図示は省略するが、多孔質の隔壁を有し、隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画形成された柱状のハニカムセグメントが、接合材層を介して複数個組み合わされた構造を有するハニカム構造体(以下、「接合型ハニカム構造体」ということがある)であってもよい。
【0066】
また、ハニカム構造体は、複数のセルのうちの所定のセルの一方の開口端部と、残余のセルの他方の開口端部とが、目封止部によって目封止されたものであってもよい。このようなハニカム構造体は、排ガスを浄化するフィルタ(ハニカムフィルタ)として用いることができる。なお、このような目封止部は、外周コート層が形成された後に配設されたものであってもよいし、外周コート層が形成される前の状態、即ち、ハニカム構造体を作製する段階で配設されたものであってもよい。
【0067】
なお、このような目封止部は、従来公知のハニカム構造体の目封止部として用いられるものと同様に構成されたものを用いることができる。
【0068】
また、本実施形態の外周コートハニカム構造体に用いられるハニカム構造体は、隔壁の表面及び隔壁の細孔の内部の少なくとも一方に、触媒が担持されたものであってもよい。このように、本実施形態の外周コートハニカム構造体は、触媒を担持した触媒体や、排ガスを浄化するための触媒を担持した触媒担持フィルタ(例えば、ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、「DPF」ともいう))として構成されたものであってもよい。
【0069】
触媒の種類については特に制限なく、外周コートハニカム構造体の使用目的や用途に応じて適宜選択することができる。例えば、上記DPFとして用いる場合には、排ガス中の煤等を酸化除去するための酸化触媒や、排ガス中に含まれるNO
X等の有害成分を除去するNO
X選択還元触媒(SCR)やNO
X吸蔵還元触媒等を挙げることができる。なお、触媒の担持方法についても特に制限はなく、従来、ハニカム構造体に触媒を担持する担持方法に準じて行うことができる。
【0070】
[3]外周コートハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明の外周コートハニカム構造体の製造方法の一の実施形態について説明する。本実施形態の外周コートハニカム構造体の製造方法は、多孔質の隔壁を有し、隔壁によって複数のセルが区画形成されたハニカム構造体の外周面に、これまでに説明した、本発明の外周コート材を塗布し、塗布した外周コート材を乾燥させて外周コート層を形成する工程を備えた、外周コートハニカム構造体の製造方法である。
【0071】
このように構成することによって、その表面にレーザーによって印字を行った場合に、発色した印字(マーキング)部分と、外周部分(即ち、外周コート層)の非照射部とのコントラストに優れた印字を可能とする外周コートハニカム構造体を簡便に製造することができる。以下、本実施形態の外周コートハニカム構造体の製造方法を工程毎に更に詳細に説明する。
【0072】
[3−1]ハニカム構造体の作製:
まず、本実施形態の外周コートハニカム構造体の製造方法においては、多孔質の隔壁を有し、隔壁によって複数のセルが区画形成されたハニカム構造体を作製する。例えば、コージェライトからなるハニカム構造体を作製する場合には、まず、焼成後にコージェライトとなるように、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ等の成形原料を所定の配合割合で調合し、水を加え、混合・混練することによって坏土を調製する。なお、この坏土には、必要に応じて、バインダー、界面活性剤、及び造孔材等を更に加えてもよい。
【0073】
次に、得られた坏土を、口金を付けた押出成形機を用いて押出成形してハニカム成形体を得、得られたハニカム成形体を乾燥する。
【0074】
次に、ハニカム
成形体を所定の温度で焼成することによって、多孔質の隔壁を有し、この隔壁によって複数のセルが区画形成されたハニカム構造体を作製する。なお、外周コートハニカム構造体として、セルの開口部に目封止部が配設されたものを製造する場合には、ハニカム成形体、或いは、ハニカム構造体を作製した段階で目封止を行ってもよい。
【0075】
例えば、セルの開口部を目封止して目封止部を形成する方法としては、まず、ハニカム構造体(或いは、ハニカム成形体)の一方の端面において、一部のセルの開口部にマスクをし、その端面を、目封止
部を形成するための目封止材が貯留された貯留容器中に浸漬して、マスクをしていないセルに目封止材を挿入し、目封止部を形成する。なお、目封止部を形成するための目封止材は、セラミック原料、界面活性剤、水、焼結助剤等を混合して、必要に応じて気孔率を高めるために造孔材を添加してスラリー状にし、その後、ミキサー等を使用して混練することにより得ることができる。
【0076】
その後、ハニカム構造体の他方の端面において、上記一方の端面においてマスクをしなかったセル(上記一部のセル以外のセル)の開口部にマスクをし、その端面を、上記目封止材が貯留された貯留容器中に浸漬して、マスクをしていないセルに目封止材を挿入し、目封止部を形成する。
【0077】
セルの開口部をマスクする方法について特に制限はないが、例えば、フィルタ用ハニカム構造体の端面全体に粘着性フィルムを貼着し、その粘着性フィルムを部分的に孔開けする方法等を挙げることができる。例えば、フィルタ用ハニカム構造体の端面全体に粘着性フィルムを貼着した後に、目封止部を形成したいセルに相当する部分のみをレーザーにより孔を開ける方法等を好適例として挙げることができる。粘着性フィルムとしては、ポリエステル、ポリエチレン、熱硬化性樹脂等の樹脂からなるフィルムの一方の表面に粘着剤が塗布されたもの等を好適に用いることができる。
【0078】
また、得られたハニカム構造体は、その外周面に外周壁が形成された状態で作製された場合には、その外周面を研削し、外周壁を取り除いた状態とすることが好ましい。このようにして外周壁を取り除いたハニカム構造体の外周に、後の工程にて、外周コート材を塗布して外周コート層を形成する。また、外周面を研削する場合には、外周壁の一部を研削して取り除き、その部分に、外周コート材によって外周コート層を形成してもよい。
【0079】
[3−2]外周コート材の調製:
また、上記したハニカム構造体の作製とは別に、外周コートハニカム構造体の外周コート層を形成するための外周コート材を調製する。外周コート材は、少なくとも、フィラーとしてのレーザーによって元の色とは異なる色に発色する金属及び金属化合物からなる群より選択される少なくとも一方を含むレーザー発色粉末、及び前記レーザー発色粉末を構成する材料以外のセラミックスからなるセラミックス粉末と、分散媒とを、上記フィラーがこれまでに説明した所定の含有割合となるように混合して、スラリー状又はペースト状とすることによって調製することができる。
【0080】
セラミックス粉末としては、上述したハニカム構造体の原料として用いたセラミック材料と同様の材料からなる粉末を好適に用いることができる。例えば、上記したように、ハニカム構造体の原料として、焼成後にコージェライトとなるように配合されたセラミック原料を用いた場合には、外周コート材用のセラミックス粉末として、同様の配合割合に調合された原料を用いることができる。
【0081】
また、前記レーザー発色粉末を構成する粒子としては、例えば、炭化珪素、珪素、チタニア、窒化アルミニウム等を含む粒子を用いることができる。この金属や金属化合物を含む粒子からなる粉末(即ち、レーザー発色粉末)は、セラミックス粉末100質量部に対して、20〜400質量部使用する。これにより、レーザーによる良好な発色が可能となる。
【0082】
このようなセラミックス粉末と、前記レーザー発色粉末とに、分散媒を加えて混合して外周コート材を調製する。分散媒としては、例えば、水を用いることができる。また、分散媒は、外周コート材中のレーザー発色粉末及びセラミックス粉末の合計100質量部に対して、15〜30質量部用いることが好ましい。
【0083】
上記原料を混合して外周コート材を調製する場合には、例えば、2軸回転式の縦型ミキサーを用いて調製することができる。
【0084】
また、外周コート材には、コロイダルシリカ、有機バインダー、粘土等を更に含有させてもよい。なお、有機バインダーは、レーザー発色粉末及びセラミックス粉末の合計100質量部に対して、0.05〜0.5質量部用いることが好ましく、0.1〜0.2質量部用いることが更に好ましい。また、粘土は、レーザー発色粉末及びセラミックス粉末の合計100質量部に対して、0.2〜2.0質量部用いることが好ましく、0.4〜0.8質量部用いることが更に好ましい。
【0085】
[3−3]外周コート層の形成:
先に作製したハニカム構造体の外周面に、外周コート材を塗布し、塗布した外周コート材を乾燥させて、外周コート層を形成する。このように構成することによって、ハニカム構造体の外周面に、レーザーによって良好な印字が可能な外周コート層を備えた外周コートハニカム構造体を製造することができる。
【0086】
外周コート材の塗工方法としては、例えば、ハニカム構造体を回転台の上に載せて回転させ、外周コート材をブレード状の塗布ノズルから吐出させながらハニカム構造体の外周部に沿うように塗布ノズルを押し付けて塗布する方法を挙げることができる。このように構成することによって、外周コート材を均一な厚さで塗布することができる。また、形成した外周コート層の表面粗さが小さくなり、外観に優れ、且つ熱衝撃によって破損し難い外周コート層を形成することができる。
【0087】
なお、ハニカム構造体の外周面が研削されて、外周壁が取り除かれたものの場合には、ハニカム構造体の外周面全体に外周コート材を塗布して外周コート層を形成する。一方、ハニカム構造体の外周面に外周壁が存在する、或いは、一部の外周壁が取り除かれている場合には、部分的に外周コート材を塗布して外周コート層を形成してもよいし、勿論、ハニカム構造体の外周面全域に外周コート材を塗布して外周コート層を形成してもよい。
【0088】
塗布した外周コート材(即ち、未乾燥の外周コート層)を乾燥する方法については特に制限はないが、例えば、乾燥クラック防止の観点から、室温にて24時間以上保持することでコート材中の水分の25%以上を乾燥させた後、電気炉にて600℃で1時間以上保持することで水分及び有機物を除去する方法を好適に用いることができる。
【0089】
また、ハニカム構造体のセルの開口部が予め封止されていない場合には、外周コート層を形成した後に、セルの開口部に目封止を行ってもよい。
【0090】
また、得られた外周コートハニカム構造体は、その外周面にレーザーを照射することによって、外周コート材に含まれるレーザー発色粉末(即ち、レーザーによって元の色とは異なる色に発色する金属及び金属化合物を含む粒子からなる粉末)が発色するため、得られた外周コートハニカム構造体の外周コート層に、レーザー光を照射して、製品情報等を印字(マーキング)してもよい。
【0091】
レーザーによるマーキングの際に使用するレーザー光としては、例えば、炭酸ガス(CO
2)レーザー、YAGレーザー、YVO
4レーザーを好適例として挙げることができる。レーザー光を照射するレーザーの条件については、使用するレーザーの種類に応じて適宜選択することができるが、例えば、CO
2レーザーを用いた場合には、出力15〜25W、スキャンスピード400〜600mm/sでマーキングすることが好ましい。このようにマーキングすることによって、照射部分が、黒色から緑色のような暗色を呈するように発色し、非照射部分との発色によるコントラストが極めて良好なものとなる。
【0092】
また、本実施形態の外周コートハニカム構造体の製造方法においては、外周コートハニカム構造体に触媒を担持する場合には、上記レーザーによる印字を行った後でも、印字部分が劣化することがなく、触媒の担持後でも、上記印字を良好に判読することができる。なお、触媒の担持方法については特に制限はなく、従来のハニカム構造体の製造方法にて行われている触媒担持の方法に準じて行うことができる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0094】
(ハニカム構造体の作製)
焼成後の組成がコージェライトの理論組成(2MgO・2Al
2O
3・5SiO
2)となるように混合したコージェライト原料粉末に、成形助剤、造孔剤、及び水を加え、混合・混練して坏土を調製した。得られた坏土を押出成形し、ハニカム成形体を作製し、このハニカム成形体を乾燥、焼成してハニカム構造体を作製した。
【0095】
なお、得られたハニカム構造体は、その外周面を研削して外周壁を除去した。このハニカム構造体(外周壁を除去する前)は、直径が266.7mmで長さが304.8mmの円柱状で、気孔率が59%、隔壁厚さ0.3mm、セル密度が46.5セル/cm
2である。
【0096】
(実施例1)
セラミック粉末としてのコージェライト原料粉末100質量部と、レーザー発色粉末となる金属炭化物粉末として炭化珪素200質量部と、無機バインダーとしてのコロイダルシリカ76質量部と、分散媒としての水を加えて外周コート材を調製した。なお、水は、外周コート材中のセラミック粉末とレーザー発色粉末(金属炭化物粉末)との合計100質量部に対して、22質量部となる量用いた。また、外周コート材には、セラミック粉末とレーザー発色粉末との合計100質量部に対して、有機バインダーを0.15質量部、粘土を0.9質量部加えた。このように構成された外周コート材の粘度は、200dPa・sであった。
【0097】
なお、有機バインダーは、CMC(カルボキシメチルセルロース)を用いた。また、粘土は、ベントナイトを用いた。
【0098】
このようにして得られた外周コート材を、上記したハニカム構造体の作製にて作製したハニカム構造体の外周面に、その厚さが0.3mmとなるように塗布した後、室温(25℃)で24時間自然乾燥させた後、電気炉にて600℃で1時間熱処理して外周コート層を形成した。なお、この外周コート層の熱膨張係数は、2.3×10
−6/Kである。
【0099】
このようして製造された外周コートハニカム構造体の外周面に、CO
2レーザーマーカーを用いて出力20W、スキャンスピード500mm/sの条件で、2Dバーコードのレーザー印字を行った。このようにしてレーザー印字を行った外周コートハニカム構造体について、外周コート層の耐久性の評価、印字部分のコントラスト評価(印字バーコード読み取り試験)を、以下の方法で行った。結果を表1に示す。
【0100】
(外周コート層の耐久性の評価)
外周コート層の耐久性評価として電気炉スポーリングによる耐熱衝撃性試験を行った。この試験は、所定の温度に加熱した電気炉内にハニカム構造体を投入し、1時間後に室温中に取り出して外周コート材の剥離またはクラックの発生状況を確認するものである。評価は以下の基準で実施した。
良:炉内温度400℃で外周コート層の剥離またはクラック発生なし。
可:炉内温度350℃で外周コート層の剥離またはクラック発生あり、300℃で外周コート材の剥離またはクラック発生なし。
不可:炉内温度300℃で外周コート層の剥離またはクラック発生あり。
【0101】
(印字バーコード読み取り試験)
レーザーによって発色した印字部分と、非照射部分とのコントラストを、ISO/IEC15415に適合したバーコードリーダーを用いた読み取り試験(印字バーコード読み取り試験)で評価した。評価は以下の基準で実施した。なお、下記基準における「読み取りグレード」は、ISO/IEC15415の規格によるものである。
良:コントラストが良好で、印字部分を良好に判読可能(読み取りグレードA)。
可:印字部分の判読が可能(読み取りグレードB〜D)。
不可:印字部分と非照射部分とのコントラストが悪く、判読が困難(読み取りグレードF)。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
(実施例2〜5)
外周コート材に使用する炭化珪素の量を、表1にように変更した以外は、実施例1と同様にして外周コートハニカム構造体を製造した。得られた外周コートハニカム構造体の外周面に、実施例1と同様の方法でレーザー印字を行い、印字部分の耐久性の評価、及び印字バーコード読み取り試験を行った。結果を表1に示す。
【0105】
(実施例6)
外周コート材に使用するレーザー発色粉末として、窒化アルミニウムの粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外周コートハニカム構造体を製造した。得られた外周コートハニカム構造体の外周面に、実施例1と同様の方法でレーザー印字を行い、印字部分の耐久性の評価、及び印字バーコード読み取り試験を行った。結果を表1に示す。
【0106】
(実施例7〜9)
外周コート材を塗布する厚さを、表1にように変更した以外は、実施例1と同様にして外周コートハニカム構造体を製造した。得られた外周コートハニカム構造体の外周面に、実施例1と同様の方法でレーザー印字を行い、印字部分の耐久性の評価、及び印字バーコード読み取り試験を行った。結果を表1に示す。
【0107】
(比較例1)
レーザー発色粉末としてのレーザーによって黒色の発色を生じる金属及び金属化合物の粉末を使用せず、原料粉末としてコージェライト原料粉末のみを用いた以外は、実施例1と同様にして外周コートハニカム構造体を製造した。得られた外周コートハニカム構造体の外周面に、実施例1と同様の方法でレーザー印字を行い、印字部分の耐久性の評価、及び印字バーコード読み取り試験を行った。結果を表2に示す。
【0108】
(比較例2〜4)
外周コート材に使用する炭化珪素の量を、表
2のように変更した以外は、実施例1と同様にして外周コートハニカム構造体を製造した。得られた外周コートハニカム構造体の外周面に、実施例1と同様の方法でレーザー印字を行い、印字部分の耐久性の評価、及び印字バーコード読み取り試験を行った。結果を表2に示す。
【0109】
(比較例5)
コージェライト原料粉末を用いずに、レーザー発色粉末としてのレーザーによって黒色の発色を生じる炭化珪素の粉末を用いた以外は、実施例1と同様にして外周コートハニカム構造体を製造した。なお、レーザー発色粉末の量は、実施例1におけるコージェライト原料粉末100質量部に相当する量を用いた。得られた外周コートハニカム構造体の外周面に、実施例1と同様の方法でレーザー印字を行い、印字部分の耐久性の評価、及び印字バーコード読み取り試験を行った。結果を表2に示す。
【0110】
(結果)
実施例1〜9の外周コートハニカム構造体は、印字バーコード読み取り試験において印字部分の判読が可能なものであった(読み取りランクA〜C(評価は、良又は可))。また、耐久性の評価においては、全て良好な結果(評価は、良又は可)を得ることができた。
【0111】
一方、比較例1及び2の外周コートハニカム構造体は、レーザー発色粉末を含んでいない、或いは、レーザー発色粉末の量が少なすぎて、印字部分の判読が不可能であった。
【0112】
また、比較例3〜5においては、レーザー発色粉末の量が、セラッミク粉末に比して多かったため、基材と外周コート材の熱膨張係数差が大きくなりすぎて、電気炉スポーリング試験において外周コート材の剥離が発生した。