【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の詳細な説明
一つの側面において、本発明は、界面活性剤を調製するための方法に向けられる。この方法は、樹脂を選択することを含み、ここで、樹脂は、モノマーの重合残基含んでなり、そしてモノマーは、不飽和炭化水素であるか、又はそれを含む。選択された樹脂は、α,β−不飽和カルボン酸、又はその酸無水物或いはそのエステルと反応して、本明細書中で付加体とも呼ばれる、カルボニル含有樹脂を与える。次いで付加体は、カルボキシル反応性ポリ(アルキレンオキシド)、例えば、ヒドロキシル−又はアミン−末端のポリ(アルキレンオキシド)と反応して、或いはin situでポリ(アルキレンオキシド)を生じるようにアルキレンオキシドと反応して、本発明の界面活性剤を与える。その構造にもよるが、界面活性剤は、リン酸化又は硫酸化によって化学的に改質することができる。
【0016】
本発明の方法において使用される樹脂は、全て又は一部が、炭化水素モノマーから調製される。一つの例示的な態様において、炭化水素はテルペンであり、そして得られる樹脂は、例えば、ポリテルペン樹脂(即ち、単独の炭化水素モノマーとしてのテルペンから調製された樹脂)、テルペン炭化水素樹脂(即ち、テルペン、並びに非テルペン炭化水素モノマー(類)から調製された樹脂)、及びテルペンフェノール樹脂(即ち、テルペン及びフェノール化合物から調製された樹脂)であることができ、ここでこれらの樹脂は、本明細書中で集合的に“テルペン樹脂”と呼ばれる。一つの態様において、樹脂は、テルペン炭化水素樹脂、例えば、テルペンビニル芳香族樹脂である。もう一つの態様において、樹脂は、テルペンフェノール樹脂である。なおもう一つの態様において、樹脂は、ポリテルペン樹脂である。
【0017】
本発明の方法において使用することができるテルペン樹脂は、全て又は一部が、不飽和テルペンC10炭化水素(即ち、10個の炭素を含有するテルペン)から調製されたいずれもの樹脂を含み、ここで例示的なテルペンは、非限定的に、δ−2−カレン、δ−3−カレン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、β−フェランドレン、α−ピネン、β−ピネン、α−テルピネン、γ−テルピネン、及びテルピノレンを含む。
【0018】
一つの側面において、選択されたテルペン樹脂は、少なくとも一部、α−ピネンから調製される。もう一つの側面において、選択されたテルペン樹脂は、少なくとも一部、β−ピネンから調製される。もう一つの側面において、選択されたテルペン樹脂は、少なくとも一部、リモネンから調製される。もう一つの側面において、選択されたテルペン樹脂は、少なくとも一部、カレンから調製される。これらのテルペンのそれぞれは、各種の商業的供給者、例えば、Aldrich Chemical(Milwaukee,WI)、Arizona Chemical Company(Jacksonville,Florida)、Millennium Specialty Chemicals(Jacksonville,Florida)、International Flavors and Fragrances(以前はJacksonville,FloridaのBush Boake Allen)、又はDRT(Les Derives Resiniques et Terpeniques of Dax,France)から、
或いはα−ピネンのジペンテンへの、又はδ−カレンのδ−2−カレンへの異性化のような転換、或いはβ−ピネンのミルセンへの熱分解によって入手することができる。α−ピネン、β−ピネン、δ−3−カレン及びジペンテンは、しばしば最終的に樹木、特に松の木から得られる。リモネンは、柑橘加工工業から入手することができる。
【0019】
一つの側面において、樹脂は、テルペンのカチオン性重合反応の生成物であることができ、例えば、これは、樹脂級β−ピネンモノマー、リモネンモノマー、又はこれら二つのモノマーの混合物のカチオン性重合反応によって調製することができる。テルペンのカチオン性重合は、テルペンをルイス酸触媒で処理することによって達成することができる。更に具体的には、使用することができる触媒は、塩化アルミニウム(AlCl
3)及び三
フッ化ホウ素(BF
3)並びにこれらの誘導体(例えば、そのエーテラート又は他の溶媒
和された形態);並びに酸性白土、ハロゲン化アンチモン、塩酸及び硫酸のような強プロトン酸、並びに四塩化チタンを含む。触媒は、当業者にとっていずれもの既知の多くの方法によって樹脂から除去することができる。このようにして製造されたテルペン樹脂は、高温の処理に更にかけられて、溶媒を蒸留して除去し、そして共産物を除去し、そしてこれによって樹脂の所望の軟化点を達成することができる。
【0020】
テルペン樹脂をそれから調製するために好ましいテルペンは、β−ピネンである。β−ピネンモノマーは、製紙工業の副産物である粗製硫酸ターペンチンの蒸留によって普通に得られる。樹脂級のβ−ピネンは、一般的に約80重量%がβ−ピネンであり、残りのほとんどはα−ピネンである。90重量%より大きいβ−ピネンである、いわゆるその芳香族化学級のような高純度級のβ−ピネンも、テルペン樹脂を調製するために使用することができる。β−ピネン樹脂の製造に向けた開示については、例えば米国特許4,487,901号を参照されたい。樹脂は、更にα−ピネンからも調製することができる(例えば、米国特許第4,113,653号及び4.057,682号を参照されたい)。
【0021】
他の好ましいテルペンは、リモネン及びジペンテンである。リモネンは、柑橘工業の副産物として得ることができる。α−ピネン(即ち、ラセミのリモネン)の熱分解又は接触分解によって得られるジペンテンも、更にテルペン樹脂の調製において使用することができる。
【0022】
テルペン樹脂は、上記のテルペンからの残基に加えて、各種の非テルペン不飽和化合物、特に不飽和炭化水素、例えば、オレフィン及びジオレフィンの残基を含んでなることができる。これらの例は、非限定的に:イソブチレン、ジイソブチレン、1−アルケン(例えば、1−オクタデセン)、2−アルケン、三置換アルケン、ビニルシクロヘキサン、並びに石油留出油の水蒸気分解から得られるピペリレン及びジシクロペンタジエンの流れ(stream)を含む。後者の流れは、一般的にピペリレン、イソプレン、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、シクロペンテン、非環式ペンテン、シクロペンタジエン、及びジシクロペンタジエンを含む。β−ピネン及び各種の不飽和炭化水素から製造された樹脂に向けた開示については、例えば米国特許第6,121,392号及び3,959,238号を参照されたい。
【0023】
例示的なテルペン−炭化水素樹脂は、65ないし35重量パーセントのジシクロペンタジエンから誘導された重合単位、及び35ないし65重量パーセントのβ−ピネンから誘導された重合単位を含有する。一つの側面において、重合反応出発物質中のジシクロペンタジエンとベータ−ピネンのモル比は、約1:2ないし約2:1の範囲である。ジシクロペンタジエン及びβ−ピネン間の重合反応は、熱的(即ち、触媒が使用されない)であるか、又は触媒される(即ち、触媒、例えば、酸触媒の存在中で行われる)ことができる。使用することができる酸触媒の例は、H
2SO
4、HCl、H
3PO
4のようなブルンステッド酸及びルイス酸型触媒;BF
3、BCl
3、AlCl
3、AlBr
3、SnCl
4、ZnC
l
2、SbCl
3のような金属ハロゲン化物、並びにこれらのエーテラートを含む。触媒された重合法において、触媒の量は、重合される反応物の全重量に基づいて約0.1ないし約20重量%の触媒の範囲であることができる。重合反応は、未希釈で(溶媒なしで)反応物の融点で、又はその上で行うことができ、或いは溶媒の存在中で行うことができる。反応圧力は、変化することができ、そして約1気圧ないし約100気圧の範囲であり、約2気圧ないし約10気圧の圧力が好ましい。反応温度は、約0−100℃の範囲であることができる。約1−8時間の反応時間が一般的に十分であって、約550ないし約55,000の所望する分子量(重量平均分子量)分布、及び約100ないし約170℃の範囲の軟化点が達成される。他のリモネンを含有する炭化水素樹脂は、米国特許第6,357,499号及び6,228,944号に記載されているものを含む。
【0024】
本発明の先に開示した方法において使用できる適したテルペン樹脂は、制約されるものではないが、Arizona Chemical Company(Jacksonville,Florida)によって販売されている、SYLVARES(登録商標)テルペン樹脂M−1115、B−115、7100、7115、7125、1085、1100、1115、1125、及びA−25と呼ばれる商業的に入手可能なテルペン樹脂を含む。
【0025】
本発明の先に開示した方法のために使用することができるテルペン−ビニル芳香族樹脂(芳香族改質テルペン樹脂としても知られる)は、適当な溶媒中で、先に記述したテルペンのいずれかをビニル芳香族モノマーと共に使用して、酸で触媒された重合によって調製することができる。AlCl
3及びBF
3又はこれらの誘導体を含むルイス酸触媒を使用することができる。酸性白土、ハロゲン化アンチモン、塩酸及び硫酸のような強プロトン酸、並びに四塩化チタンも更に使用することができる。使用することができるビニル芳香族モノマーは、非限定的に:スチレン、インデン、メチルスチレン、及びパラ−アルキルスチレンを含み、これらの混合物を含む。これらの樹脂は、ヨウ素で、又は他の脱色法によって後処理することができる。本発明の先に開示した方法において使用するために適したテルペン−ビニル芳香族樹脂のいくつかの具体的な例は、Arizona Chemical Company(Jacksonville,Florida)によって販売されている、SYLVARES(登録商標)ZT 105LT、及び5100樹脂と呼ばれる製品である。
【0026】
本発明の先に開示した方法のために使用することができるテルペン−フェノール樹脂(“テルペン−フェノール樹脂”)は、適した溶媒中の先に記述したテルペンのいずれかとフェノール及び/又はその誘導体との、酸で触媒された重合によって調製することができる。この化学反応は、当技術において公知である。例えば、米国特許第5,723,566号及び5,844,063号を参照されたい。制約されるものではないが、三フッ化ホウ素及び誘導体又はその複合体を含むルイス酸、並びに先に列挙したもののような強プロトン酸を使用することができる。テルペンフェノール樹脂のフェノール部分は、例えば、フェノール自体、又は例えばモノアルキル置換フェノールを含む一置換されたフェノール、ジアルキル置換フェノールを含む二置換されたフェノール、トリアルキル置換フェノールを含む三置換されたフェノール、及び環に接続されたヒドロキシル置換基を有するナフタレン化合物のような置換されたフェノールであることができる。
【0027】
テルペン−フェノール樹脂を調製するためにテルペンに加えて使用することができる非テルペンオレフィン及びジオレフィンは、テルペン樹脂のために上記で列挙したものを含む。例えば、以下の非テルペンオレフィン及びジオレフィンの残基は、テルペン−フェノール樹脂中に存在することができる:スチレン、インデン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、一つ又はそれより多いアルキル基を持つジビニルベンゼンのようなビニル芳香族、イソブチレン、ジイソブチレン、1−アルケン、2−アルケン、三置換アルケン、
ビニルシクロヘキサン、ピペリレン、イソプレン、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、シクロペンテン、非環式ペンテン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、及びアルキル芳香族スチレン。
【0028】
本発明の先に開示した方法において使用するために適したテルペン−フェノール樹脂のいくつかの具体的な例は、Arizona Chemical Company(Jacksonville,Florida)によって販売されている、SYLVARES(登録商標)TP 300、2040、2040HM、2019、7042及び3523樹脂と呼ばれる商業的製品である。
【0029】
本発明の界面活性剤の調製において有用ないくつかの炭化水素樹脂は、テルペン由来の残基をわずか有するか、又は有しないことができる。例えば、C5不飽和炭化水素を、適した炭化水素樹脂を調製するために使用することができる。このような樹脂は、石油留出油の水蒸気分解によって得られるピペリレンの流れのカチオン性重合によって調製することができる。これらの流れの組成は、非常に変わりやすいが、これらは、一般的にcis−及びtrans−ピペリレン、イソプレン、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、シクロペンテン、非環式ペンタン、シクロペンタジエン及びジシクロペンタジエンを含む。
【0030】
オレフィン系モノマーは、このような流れ中に存在するC5不飽和炭化水素と相互反応することができる。例は、イソブチレン及びジイソブチレンのような1−アルケン、スチレンのようなビニル芳香族モノマー、上述したようなもののようなテルペン、並びにこれらの混合物を含む。更に、2−メチル−2−ブテンのようなオレフィンも、既にその中に存在する対応するオレフィンの量を増加するために、このような流れに加えることができる。使用することができる触媒は、AlCl
3、BF
3及びこれらの誘導体のようなルイス酸を含む。
【0031】
本発明による界面活性剤を調製するために使用することができるもう一つの種類の炭化水素樹脂は、ジシクロペンタジエン(その異性体及び誘導体を含む)に富んだ流れの熱重合を使用して調製される。更に、これらのモノマーは、先に列挙したもののようなビニル芳香族モノマー、並びに上述したもののような純粋なスチレン又は純粋なアルキルスチレンの混合物と熱共重合することができる。炭化水素樹脂は、調製されたままで使用することができ、或いは部分的に又は完全に水素化することができる。然しながら、完全に又は実質的に水素化された炭化水素樹脂は、これらを、付加体を形成するために反応させることが更に困難であり得るために好ましくない。本発明の一つの側面において、炭化水素樹脂は、不飽和を含有、即ち、炭素−炭素二重及び/又は三重結合を含有する。本発明のもう一つの側面において、炭化水素樹脂は、α,β−不飽和カルボン酸又は酸無水物或いはエステルとの反応に先だって水素化処理を受けない。
【0032】
先に記載したテルペン、テルペン−フェノール、テルペン−ビニル芳香族及び炭化水素樹脂を調製するために使用することができるいくつかの方法は、Kirk−Othmer
Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,Volume 13,pp.717−743,John Wiley & Sons,New York,NY中に記載されている。
【0033】
選択された炭化水素樹脂は、α,β−不飽和カルボン酸、又は酸無水物或いはそのエステルと反応して、本明細書中で付加体とも呼ばれるカルボニル含有樹脂を与える。本明細書中で使用される場合、“α,β−不飽和カルボン酸”は、(R
1)(R
2)C=C(R
3
)−C(=O)−OHの構造を有する化合物を指し、ここでそれぞれのR
1、R
2及びR
3
は、水素、ハロゲン及び有機基から選択される。従って、α,β−不飽和カルボン酸は、
少なくとも一つの二重結合を隣接する炭素原子間に有し、ここにおいて少なくとも一つのこれらの炭素原子はカルボキシル基に結合している。用語“α,β−不飽和カルボン酸無水物”は、単純にその酸無水物を指し、これは、混成酸無水物(即ち、二つの異なったカルボン酸から形成)であることができ、又は対称型酸無水物(即ち、同一構造を有する二つの分子から形成)であることができ、或いは分子内環状無水物(即ち、一つの分子が二つのカルボン酸基を有し、そしてこれらの二つの基がいっしょに反応して、酸無水物、例えば、無水マレイン酸を形成)であることができる。
【0034】
熱縮合法を使用して不飽和酸及び酸無水物を樹脂にグラフトすることは、例えば、米国特許第3,379,663号及び3,953,407号中に記載されている。遊離基グラフトも、更に米国特許第3,279,925号;3,005,800号;及び3,161,620号中で開示されている。これらの方法のいずれかを、本発明の方法における付加体を調製するために使用することができる。グラフト反応は、溶媒を伴わず、170℃ないし240℃の範囲の温度で行うことができる。別の方法として、溶媒を使用することができる。過剰の未反応の酸又は酸無水物は、例えば、蒸留によって除去することができる。反応時間は、2−24時間で変化することができる。
【0035】
本発明の方法の一つの特別な態様において、α,β−不飽和カルボン酸はマレイン酸であり、そしてα,β−不飽和カルボン酸無水物は無水マレイン酸である。付加体形成反応に使用することができる他のα,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物は、非限定的に、フマル酸、シトラコン酸及びイタコン酸及びこれらの対応する酸無水物を含む。更に、α,β−不飽和カルボン酸のエステルを、付加体形成反応に使用することができる。一般的に、α,β−不飽和カルボン酸及び樹脂の全重量に基づいて、約1−30重量%のα,β−不飽和カルボン酸が樹脂と反応させられる。例えば、無水マレイン酸が付加体形成反応に使用される場合、約1−30部の無水マレイン酸が、100部の樹脂と反応させられる。本発明の各種の側面において、α,β−不飽和カルボン酸又は酸無水物或いはそのエステルからの残基は、付加体の重量の少なくとも3重量%、又は少なくとも4重量%、又は少なくとも5重量%、又は少なくとも6重量%、又は少なくとも7重量%を構成する。α,β−不飽和カルボン酸又は酸無水物或いはそのエステルからの残基が、付加体の重量の約3−4より少ない重量%を構成する場合、その後に形成される界面活性剤は、界面活性剤として機能するために十分な親水性の特質を有することができない。従って、各種の更なる側面において、付加体中に存在するα,β−不飽和カルボン酸又は酸無水物或いはそのエステルからの残基は、付加体の重量の3−30重量%、又は3−25重量%、又は3−20重量%、又は3−15重量%、又は3−10重量%、又は4−25重量%、又は4−20重量%、又は4−15重量%、又は4−10重量%、又は5−25重量%、又は5−20重量%、又は5−15重量%、又は5−10重量%を構成し、それぞれのパーセントの値は、付加体の全重量に基づく。このような重量測定は、出発物質の炭化水素樹脂の重量を測定し、そして次いで生成物の付加体を秤量することによって行うことができる。差は、α,β−不飽和カルボン酸又は酸無水物或いはそのエステルからの残基によって寄与された重量に起因する。この差が小さすぎる場合、付加体は所望する界面活性剤としての特質を有しない。
【0036】
好ましい態様において、テルペン樹脂は、無水マレイン酸と反応して、付加体を与え、そしてこの付加体は、ポリ(アルキレンオキシド)基を組込むように反応させられる。例えば、付加体は、アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシドと反応し、そしてこれによってポリ(アルキレンオキシド)を直接付加体上に形成することができる。別の方法として、ポリ(アルキレンオキシド)を別個に形成し、そして次いで付加体と反応させることができる。アルキレンオキシドをカルボン酸基と反応させ、酸を対応するポリ(アルキレンオキシド)エステルに転換するための方法、及びポリ(アルキレンオキシド)をカルボン酸基と反応させるための方法は、両方とも当技術において公知である。
【0037】
例えば、本発明の一つの側面において、付加体は、その後、反応性のポリアルキレンポリオール又はアルキレンオキシド(集合的にPAO)と反応させて、界面活性剤を得ることができる。付加体が、α,β−不飽和カルボン酸又はその酸無水物を使用して調製される場合、ヒドロキシル末端PAOとの反応は、エステル化反応である。α,β−不飽和カルボン酸又は酸無水物のエステルが付加体を調製するために使用される場合、ヒドロキシル末端PAOとの反応は、トランスエステル化反応である。
【0038】
本明細書中で使用される場合、PAOは、本質的に反復性のアルキレンエーテル基を含有する1,000ないし20,000の範囲の分子量を有する直鎖ポリマー(“鎖状ポリマー”)を指す。アルキレンエーテル基は、−R−O−によって表され、ここで“R”は、C
1−C
6アルキレン基を表し、そして“O”は、酸素を表し、ここでPAOは、反復性の−R−O−基を有し、(−R−O−)
nと示され、ここでRは、それぞれの存在におい
て独立に選択される。好ましいアルキレン基は、C
2アルキレン基、即ち、エチレン基で
ある。PAOは、少なくとも一つのカルボキシ反応性基、例えばヒドロキシル又はアミノ基を有する。一つの側面において、PAOは二つのカルボキシル反応性基を有し、好ましい態様において、これらのカルボキシ反応性基の両方は、ヒドロキシル基である。二つ又はそれより多い異なったPAOを、付加体と反応させることができ、ここでこれらのPAOは、各種の点で、例えば、組成的に、一つのPAOは、もう一つのPAOより多いエチレンオキシド残基を含有することができ、あるいは一つのPAOは、もう一つのPAOより大きい平均分子量(数平均又は重量平均のいずれか)を有することができる分子量によって、異なっていることができる。
【0039】
一つの具体的な態様において、PAOは、ポリエチレングリコール(本明細書中で以下“PEG”)である。関連する態様において、PEGの分子量は、1,000ないし20,000の範囲である。PEGの分子量は、もう一つの関連する態様において、2,000ないし8,000の範囲である。好ましい態様において、PAOは、二つのヒドロキシル基を有し、その一つは付加体と反応し、そしてその他方は、以下で検討される更なる官能基改質のために利用可能である。
【0040】
付加体と反応するPAOの量は、付加体中に存在するカルボキシル基の当量当り約0.8ないし1.8当量の範囲のヒドロキシルであることができる。付加体がPAOと反応する温度は、約240℃ないし290℃の範囲である。240℃ないし265℃のより狭い温度範囲を代わりに使用することができる。一つの態様において、付加体及びPAO間の反応は、25又はそれより小さい酸価が達成されるまで行われ、一方もう一つの態様において、反応は、5より小さい酸価が達成されるまで行われる。従って、一つの側面において、界面活性剤は、25より小さい酸価を有し、一方もう一つの側面において、界面活性剤は、5より小さい酸価を有する。もう一つの側面において、界面活性剤は、5ないし25の範囲内の酸価を有する。
【0041】
更に、必要ではないが、上記のPAO及び樹脂付加体間のエステル化反応のために、触媒を使用することができる。使用することができる触媒は、非限定的に、リン酸、次亜リン酸及び硫酸のような酸;アルキルスルホン酸及びアリールスルホン酸;並びにI族及びII族元素(アルカリ及びアルカリ土類)の酸化物、水酸化物及び炭酸塩を含む。
【0042】
本発明は、もう一つの代表的な態様において、付加体を形成し、そしてこの付加体を、先に記載したようにPAOと反応させ、そして次いで界面活性剤をリン酸化又は硫酸化によって改質して、官能化された界面活性剤を得ること含んでなる界面活性剤を調製するための方法に向けられる。好ましい態様において、付加体及びPAO間の反応は、付加体の骨格にグラフトされたPEG鎖のような複数のポリアルキレンポリオール鎖を有する界面
活性剤の分子を与える。多くの複数の鎖は、ヒドロキシル基で終結している。従って、ヒドロキシル基の部位において、鎖を官能化して、そこに与えられたペンダントの官能基にもよるが、異なった特性を有する界面活性剤を得ることができる。
【0043】
硫酸化によって界面活性剤にペンダントの官能基を与えることは、三酸化硫黄(SO
3
)、発煙硫酸、又は硫酸アセチルを使用して達成することができる。界面活性剤の骨格又はそこからペンダントなポリアルキレンポリオール鎖中に存在する二重結合がある場合、スルホン酸塩の形成も更に可能である。ヒドロキシル末端の鎖のリン酸化によって界面活性剤にペンダントの官能基を与えることは、非限定的に、五酸化リン(P
2O
5)、三塩化リン(PCl
3)、ポリリン酸、及びオキシ塩化リン(POCl
3)を含む反応物質を使用して達成することができる。
【0044】
従って、各種の側面において、本発明は、樹脂を、α,β−不飽和カルボン酸又はエステル或いは酸無水物と反応させて、これによって付加体を形成し;所望により付加体をポリ(アルキレンオキシド)(PAO)と反応させて、界面活性剤を得て;そして所望により界面活性剤を硫酸化又はリン酸化条件下で処理して、改質された界面活性剤を得ることによって調製される界面活性剤に向けられる。
【0045】
本発明の一つの側面において、界面活性剤は、界面活性剤として使用される前に単離され、即ち、これは、水と混合される前に単離及び/又は精製される。従って、本発明は、一つの側面として、室内温度及び圧力で無水である界面活性剤を提供する。次いでこの単離された界面活性剤を、他の組成物、例えば、粘着性付与剤樹脂に加えて、粘着性付与剤樹脂の水性分散物を得ることができる。従って一つの側面において、それぞれ室内温度及び圧力で、単離された形態の付加体が提供され、一方もう一つの側面において、界面活性剤は、単離された形態で提供される。一つの側面において、“単離された形態”は、水を含まないことを意味する。
【0046】
本発明は、なお更なる態様において、本明細書中に記載されてとおりの界面活性剤及び粘着性付与剤樹脂を含んでなる組成物、並びにこれらの二つの成分を含んでなる水性分散物に向けられる。本明細書中で使用される場合、“粘着性付与剤樹脂(tackifier resin)”は、粘着性製剤の粘着特性を向上する樹脂を指す。このような粘着特性は、非限定的に、粘着性、剥離耐性及び表面湿潤化の容易さを含む。適した粘着性付与剤樹脂は、先に記載したテルペン、テルペン−炭化水素、テルペン−フェノール、及び炭化水素樹脂を含む。もう一つの適した粘着性付与剤樹脂は、ロジンエステル粘着性付与剤樹脂である。
【0047】
開示された界面活性剤及び粘着性付与剤樹脂を含んでなる本発明の組成物は、粘着性付与剤樹脂を溶融し、次いで界面活性剤を加え、そしてこれを樹脂と共に撹拌によって混合することによって調製することができる。界面活性剤/粘着性付与剤樹脂の水性分散物は、それと混合された界面活性剤を有する溶融した粘着性付与剤樹脂に熱水を加えることによって調製することができる。熱水は、まず油中水乳剤を形成するために加えることができる。次いで更なる水を加えて、水中油乳剤への反転の近くまで持っていき、そして次いで所望する固体含有率を有する水性分散物を得る。次いで乳剤は、50℃又はそれより低い温度まで冷却され、そして必要な場合、殺生物剤が加えられる。
【0048】
本発明の開示された組成物及び水性分散物中に存在する粘着性付与剤樹脂/界面活性剤の組合せのいくつかの具体的な例は以下を含む:(1)ロジンエステル粘着性付与剤樹脂/テルペン−ビニル芳香族樹脂−MA−PEG界面活性剤;(2)ロジンエステル粘着性付与剤樹脂/テルペン−フェノール樹脂−MA−PEG界面活性剤;(3)ロジンエステル粘着性付与剤樹脂/ビニル芳香族改質炭化水素樹脂−MA−PEG;(4)テルペン粘
着性付与剤樹脂/テルペン樹脂−MA−PEG界面活性剤;(5)テルペン粘着性付与剤樹脂/炭化水素樹脂−MA−PEG界面活性剤;(6)テルペン−ビニル芳香族粘着性付与剤樹脂/テルペン−ビニル芳香族樹脂−MA−PEG界面活性剤;(7)テルペン−ビニル芳香族粘着性付与剤樹脂/ビニル芳香族改質炭化水素樹脂−MA−PEG界面活性剤;(8)テルペン−フェノール粘着性付与剤樹脂/テルペン−フェノール樹脂−MA−PEG界面活性剤;(9)炭化水素粘着性付与剤樹脂/テルペン−MA−PEG;(10)炭化水素粘着性付与剤樹脂/炭化水素樹脂−MA−PEG界面活性剤;(11)芳香族改質炭化水素粘着性付与剤樹脂/テルペン−ビニル芳香族樹脂−MA−PEG界面活性剤;(12)芳香族改質炭化水素粘着性付与剤樹脂/ビニル芳香族改質炭化水素樹脂−MA−PEG界面活性剤。それぞれのこれらの組合せは、本発明の別個の側面であり、ここで無水マレイン酸を示す“MA”は、示された樹脂と反応して、付加体を形成し、そしてポリエチレングリコール分子を示すPEGは、示された付加体と反応する。それぞれのこれらの別個の側面において、先に記載したような基準、例えば、酸価、重量パーセントで測定された付加の程度、PEGの分子量、等は、本発明の生成物及び方法を更に特徴付けるために使用することができる。
【0049】
水性粘着剤中で使用するために適している例示的な水性分散物は、50−60%又は55−60%の範囲の固体含有率、4−9又は6−8の範囲のpH;8000cpsより低い又は1500cpsより低い或いは1000cpsより低い粘度(ブルックフィールド#5/20rpm又は#3/50rpm);2μmより小さい又は1μmより小さい粒子の大きさ;並びに給送、調製操作、等に関連する工業的スクリーニング試験を通過するために十分な機械的安定性を有することができる。更に、本発明の水性分散物は、開示した界面活性剤に加えて、アニオン性、非イオン性又は高分子であることができる共活性剤を含んでなることができる。
【0050】
本発明は、もう一つの側面において、粘着性付与剤樹脂、ポリマーラテックス、水、及び:樹脂をα,β−不飽和カルボン酸又はエステル或いは酸無水物と反応させて、それによって付加体を形成し;所望により付加体をポリ(アルキレンオキシド)(PAO)と反応させて、界面活性剤を得て;所望により界面活性剤を硫酸化又はリン酸化条件下で処理して、改質された界面活性剤を得ることによって調製された、少なくとも一つの界面活性剤、を含んでなる粘着性組成物を指向する。
【0051】
粘着性組成物は、本発明の水性粘着性付与剤分散物を、天然又は合成ポリマーラテックス或いはラテックスの配合物と、当業者にとって公知の技術によって配合することによって調製することができる。適したポリマーラテックスは、天然ゴム又は合成エラストマーの水性懸濁液を含む。後者のエラストマーのポリマーは、非限定的に、2−エチルヘキシルアクリレートから誘導されたアクリル酸ポリマー、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、メタクリル酸、及びアクリル酸;ポリスチレン、スチレン−ブタジエンコポリマー;エチレン酢酸ビニルのような酢酸ビニルから誘導されたポリマー;ポリクロロプレン;アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーを含む。
【0052】
更なる側面において、本発明は、粘着剤支持体として働く基質の表面に開示された粘着性組成物の層を形成し、そして層を乾燥することによって調製される、感圧粘着性オーバーレイに向けられる。本明細書中で使用される場合、用語“オーバーレイ”は、その表面(“第1の表面”)の少なくとも一部に粘着性物質の層を有し、そしてこれによってもう一つの基質の表面(“第2の表面”)に、第1及び第2の表面を圧力下で接触させることによって、粘着的に適用されるように適合されたいずれもの基質を指す。
【0053】
水性粘着剤の商業的生産の実質的な部分は、ラベル、テープ、装飾的アップリケ、等のような粘着性オーバーレイのための感圧粘着剤(PSA)の製造のために使用される。粘
着剤支持体として働く適した基質は、例えば、紙、プラスチック、金属又は泡状物のような不織材料を使用して調製することができ;或いは織られた綿又は織られた合成ポリマーのような織られた材料を使用して調製することができる。後者のいくつかの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、及びポリアミドである。
【0054】
以下の実施例は、例示の目的のために提供され、制約するものではない。