(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5650105
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】貫通案内端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/74 20060101AFI20141211BHJP
H01R 9/22 20060101ALI20141211BHJP
H01R 4/48 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
H01R13/74 Z
H01R9/22
H01R4/48 A
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-509879(P2011-509879)
(86)(22)【出願日】2009年5月13日
(65)【公表番号】特表2011-521417(P2011-521417A)
(43)【公表日】2011年7月21日
(86)【国際出願番号】EP2009003394
(87)【国際公開番号】WO2009141084
(87)【国際公開日】20091126
【審査請求日】2012年5月11日
(31)【優先権主張番号】102008024366.3
(32)【優先日】2008年5月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594070612
【氏名又は名称】フェニックス コンタクト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Phoenix Contact GmbH & Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ライプケ
【審査官】
山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許発明第03613681(DE,C1)
【文献】
特開平10−012294(JP,A)
【文献】
実開平07−029755(JP,U)
【文献】
特開2006−093149(JP,A)
【文献】
特開2004−087500(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第19801260(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/74
H01R 4/48
H01R 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁(2)を通して電気的な線路を貫通案内するための貫通案内端子であって、
第1の端子ケーシング(3)及び第2の端子ケーシング(4)を備えており、前記第1の端子ケーシング(3)は、一方の側から、前記壁(2)に形成された開口部に近づけられ、かつ前記第2の端子ケーシング(4)は、他方の側から、前記開口部に近づけられ、かつ前記両方の端子ケーシングは、前記開口部を介して、該両方の端子ケーシング間に前記壁(2)を介在させた状態で互いに結合されるようになっており、
前記第1の端子ケーシング(3)内に配置された少なくとも1つの第1の線路接続部材(5)、及び前記第2の端子ケーシング(4)内に配置された少なくとも1つの第2の線路接続部材(6)を備えており、
かつ電流条片(7)を備えており、該電流条片を介して、前記第1の線路接続部材(5)と前記第2の線路接続部材(6)とは、前記第1の端子ケーシング(3)と前記第2の端子ケーシング(4)とを互いに結合している場合に、互いに導電接続されている形式のものにおいて、
前記第1の線路接続部材(5)は、脚形ばね(8)及び金属部分(9)を有しており、前記脚形ばね(8)は、締め付け脚部(10)と接触脚部(11)とを有しており、前記締め付け脚部(10)と前記金属部分(9)とは、接続すべき第1の電気的な導体(12)のためのばね力式締め付け接続部を形成しており、
前記第2の線路接続部材(6)は、同様に、脚形ばね(13)及び金属部分(14)を有しており、前記脚形ばね(13)は、締め付け脚部(15)と接触脚部(16)とを有しており、前記締め付け脚部(15)と前記金属部分(14)とは、接続すべき第2の電気的な導体(17)のためのばね力式締め付け接続部を形成しており、
前記電流条片(7)は、前記第1の端子ケーシング(3)内に配置されていて、該電流条片の第1の端部(18)でもって、前記第1の線路接続部材(5)の前記金属部分(9)に導電接続されており、かつ
前記電流条片(7)の第2の端部(19)は、前記第1の端子ケーシング(3)と前記第2の端子ケーシング(4)とを互いに結合する場合に、前記第2の線路接続部材(6)の前記接触脚部(16)により接触されるようになっていることを特徴とする、貫通案内端子。
【請求項2】
前記第2の線路接続部材(6)の前記脚形ばね(13)の前記接触脚部(16)の自由な端部(20)は、前記電流条片(7)から離れる方向に折り曲げられていて、前記電流条片(7)の前記第2の端部(19)のための挿入補助手段を形成している請求項1に記載の貫通案内端子。
【請求項3】
前記第2の線路接続部材(6)の前記金属部分(14)は、相対する2つの接点壁(21,22)と、該接点壁(21,22)を互いに結合する1つの背面部(23)とを有しており、第1の前記接点壁(21)は、前記脚形ばね(13)の前記締め付け脚部(15)と一緒に、接続すべき前記導体(17)のためのばね力式締め付け接続部を形成しており、第2の前記接点壁(22)は、前記脚形ばね(13)の前記接触脚部(16)と一緒に、前記電流条片(7)の前記第2の端部(19)のためのばね力式締め付け接続部を形成している請求項1又は2に記載の貫通案内端子。
【請求項4】
前記第2の線路接続部材(6)の前記脚形ばね(13)の前記接触脚部(16)の自由な端部(20)は、前記第2の線路接続部材(6)の前記金属部分(14)の前記第2の接点壁(22)と一緒に、前記電流条片(7)の前記第2の端部(19)のための漏斗状挿入口部を形成している請求項2又は3に記載の貫通案内端子。
【請求項5】
前記第1の線路接続部材(5)の前記金属部分(9)は、扁平な電流ビームとして形成されており、該電流ビームに導体差し込み貫通開口部(29)が形成されており、該導体差し込み貫通開口部は、導体差し込み方向に延びる開口部つば(30)を有しており、前記第1の線路接続部材(5)の前記脚形ばね(8)の前記締め付け脚部(10)の端部は、前記導体差し込み貫通開口部(29)内に入り込んでいて、前記脚形ばね(8)の前記締め付け脚部(10)が、前記開口部つば(30)の内壁と一緒に、接続すべき前記導体(12)のためのばね力式締め付け接続部を形成している請求項1から4のいずれか1項に記載の貫通案内端子。
【請求項6】
前記第1の線路接続部材(5)の前記脚形ばね(8)の前記接触脚部(11)の端部は、前記脚形ばね(8)を前記導体差し込み貫通開口部(29)内に保持するために、該導体差し込み貫通開口部(29)内に入り込んでいる請求項5に記載の貫通案内端子。
【請求項7】
前記第1の線路接続部材(5)の前記脚形ばね(8)の前記接触脚部(11)は、側方へ突出する接触肩部(34)を有しており、該接触肩部は、前記導体差し込み貫通開口部(29)の縁部に当接している請求項6に記載の貫通案内端子。
【請求項8】
前記電流条片(7)は、前記第1の線路接続部材(5)の前記金属部分(9)に固着されている請求項1から7のいずれか1項に記載の貫通案内端子。
【請求項9】
前記電流条片(7)と前記第1の線路接続部材(5)の前記金属部分(9)との間の解離可能な結合が、前記電流条片(7)の前記第1の端部(18)と前記脚形ばね(8)の前記締め付け脚部(10)若しくは前記接触脚部(11)との間のばね力式締め付け接続部によって行われている請求項1から7のいずれか1項に記載の貫通案内端子。
【請求項10】
前記第1の線路接続部材の金属部分は、相対する2つの接点壁と、該接点壁を互いに結合する1つの背面部とを有しており、第1の前記接点壁は、前記脚形ばねの前記締め付け脚部と一緒に、接続すべき前記導体のためのばね力式締め付け接続部を形成しており、第2の前記接点壁は、前記脚形ばねの前記接触脚部と一緒に、前記電流条片の前記第1の端部のためのばね力式締め付け接続部を形成している請求項9に記載の貫通案内端子。
【請求項11】
前記第1の端子ケーシング(3)と前記第2の端子ケーシング(4)とは、該第1の端子ケーシング(3)と該第2の端子ケーシング(4)とを互いに係止するために、相互に対向して配設された係止要素(37,38)を有している請求項1から10のいずれか1項に記載の貫通案内端子。
【請求項12】
前記第1の端子ケーシング(3)と前記第2の端子ケーシング(4)とは、相互に対向して配設された回動防止要素(39,40)を有している請求項1から11のいずれか1項に記載の貫通案内端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの壁を通して電気的な線路若しくは通路を貫通案内するための貫通案内端子であって、貫通案内端子は第1の端子ケーシング及び第2の端子ケーシングを備え、第1の端子ケーシングは、一方の側から、かつ第2の端子ケーシング4は、他方の側から、壁に形成された開口部に近づけられて、開口部を介して、両方の端子ケーシング間に壁を介在させた状態で互いに結合されるようになっており、第1の端子ケーシング内に配置された少なくとも1つの第1の線路接続部材、及び第2の端子ケーシング内に配置された少なくとも1つの第2の線路接続部材を備え、かつ電流条片を備え、電流条片を介して、第1の線路接続部材と第2の線路接続部材とは、第1の端子ケーシングと第2の端子ケーシングとを互いに結合している場合に、互いに導電接続されている形式のものに関する。
【0002】
工場における接続技術により必要とされるように、電流は、壁、特に工場用の電気機器のケーシング壁、例えばパワーエレクトロニクスの機器の壁を通して導かれねばならない。このために用いられる貫通案内端子は、壁貫通形案内端子とも呼ばれ、原理的には以前より実際に知られている。貫通案内端子は、電子機器の内部の導体と外部の導体との間の確実かつ容易な接続を可能にするものでなければならない。実際に知られていて指接触防止式の絶縁ケーシングを有する貫通案内端子は、ケーシング壁の開口部及び貫通部における配置及び取り付けのために、種々の手段を用いて開口部及び貫通部内に組み込まれるようになっている。
【0003】
原理的には2つのタイプの貫通案内端子がある。一体構造式の貫通案内端子は、壁の相応に大きな開口部内へ、ストッパーに当接するまで押し込まれて、別個に形成された若しくは端子ケーシングに形成された係止要素を用いて開口部内に固定されるようになっており、二部構造式の貫通案内端子は2つの端子半部から成っており、両方の端子半部は、相互の嵌合により互いに結合されるようになっていて、組み付けられた状態では、大部分で壁の互いに異なる側に位置していて、両方の端子半部間に壁を受容している。
【0004】
二部構造式の1つの貫通案内端子が、独国特許出願公開第3613681C1号明細書により公知であり、これは本発明の先行技術である。約20年前から製造並びに市販されている該公知の貫通案内端子は、外部線路接続部材としても内部線路接続部材としてもねじ接続部材を有している。組み付けに際して、一方の端子半部のねじ接続部材に固着された電流条片が、他方の端子半部のねじ接続部材の開かれた接続室内に挿入されるようになっており、このような構成により、両方の端子半部若しくは両方のねじ接続部材間の電気的な接続のために追加的な接触も追加的な組み付け工程も不要になっている。該公知の貫通案内端子は実際に特に大電流用貫通案内端子として信頼して用いられているものの、両方のねじ接続部材への導体の接続は、ねじ接続の接続原理に基づき時間を必要としている。
【0005】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の貫通案内端子を改良して、貫通案内端子の簡単な組み付けに加えて、線路接続部材への導体の簡単な接続を可能にすることである。
【0006】
前記課題を解決するために、本発明によれば、第1の線路接続部材も、第2の線路接続部材も、それぞれ脚形ばね及び金属部分を有しており、各脚形ばねは、それぞれ締め付け脚部及び接触脚部を有しており、各締め付け脚部と各金属部分とは、それぞれ、接続すべき電気的な導体のためのばね力式締め付け接続部を形成している。両方の線路接続部材間の電気的な接続は、電流レールとも呼ばれる電流条片が、第1の端子ケーシング内に配置されていて、電流条片の第1の端部でもって、第1の線路接続部材の金属部分に導電接続されており、かつ電流条片の第2の端部が、第1の端子ケーシングと第2の端子ケーシングとを互いに結合した場合に、第2の線路接続部材の前記接触脚部により接触されるようになっていることによって達成される。
【0007】
本発明に係る貫通案内端子は、公知の貫通案内端子に対して、まず、両方の線路接続部材がねじを用いたねじ式接続技術に基づいてではない、脚形ばねを用いた脚形ばね式接続技術に基づいて形成されていることにより異なっている。このような構成により、絶縁被覆の除去された接続すべき頑丈な導体、若しくは導体スリーブ又はケーブルエンドスリーブを備える接続すべき導体が、該導体を、端子ケーシングに設けられた導体挿入開口部から線路接続部材内に差し込むことにより、簡単に貫通案内端子に接続されるようになっており、差し込みに際して、接続すべき導体は、脚形ばねの締め付け脚部によって金属部分に押し付けられて、電気的に接触される。このように、頑丈な導体若しくは導体スリーブ又はケーブルエンドスリーブを備える導体は、工具を用いることなしに、直接に貫通案内端子に電気的に接続され、つまり、ねじ式接続技術における締め付けねじの時間のかかるねじ込みが省略されている。
【0008】
独国特許出願公開第3613681C1号明細書により公知の、ねじ接続部材を有する貫通案内端子においては、両方の端子半部間の結合に際して、一方のねじ接続部材に結合された電流条片が、他方の端子半部のねじ接続部材の開かれた接続室内に差し込まれ、次いで、第2のねじ締め付け部の締め付けねじのねじ回しに際して、接続すべき電気的な導体が、接続室内へ差し込まれた電流条片に引き付けられる。本発明に係る貫通案内端子においても両方の端子ケーシング間の結合に際して、両方の線路接続部材間の、電流条片を介した電気的な接続を自動的に達成するために、電流条片の、第2の線路接続部材の金属部分とは導電接続されていない端部が、第1の端子ケーシングと第2の端子ケーシングとを互いに結合した場合に、第2の線路接続部材の締め付けばねの接触脚部により接触されるようになっている。このような構成により、第2の線路接続部材の締め付けばねの接触脚部は、金属部分と一緒に、電流条片の第2の端部のためのばね力式締め付け接続部を成している。
【0009】
本発明に係る貫通案内端子の有利な形態では、第2の線路接続部材の脚形ばねの接触脚部の自由な端部は、電流条片から離れる方向に折り曲げられていて、これにより電流条片の第2の端部のための挿入補助手段を形成している。このような構成により、両方の端子ケーシング間の結合に際して、電流条片の第2の端部は、接触脚部の折り曲げられた端部を経て、接触脚部と金属部分の、接触脚部に対応する領域との間のばね力式締め付け接続部内に容易に挿入されるようになっている。
【0010】
本発明の有利な形態によれば、金属部分は、相対する2つの接点壁と、該接点壁を互いに結合する1つの背面部若しくはウエブとを有しており、一方(第1)の接点壁は、脚形ばねの締め付け脚部と一緒に、接続すべき導体のためのばね力式締め付け接続部を形成しており、他方(第2)の接点壁は、脚形ばねの接触脚部と一緒に、電流条片の1つの端部のためのばね力式締め付け接続部を形成している。このように形成された金属部分は、第1の線路接続部材にも、第2の線路接続部材にも用いられるものである。
【0011】
前述のように形成された金属部分を第2の線路接続部材に用いる場合には、第2の接点壁は、脚形ばねの接触脚部と一緒に、第1の端子ケーシング内に配置されている電流条片の第2の端部のためのばね力式締め付け接続部を形成しており、電流条片はその第1の端部でもって、第1の導線接続部材の金属部分と導電接続されている。このように構成された第2の線路接続部材において、脚形ばねの接触脚部の自由な端部は、金属部分の第2の接点壁と一緒に、電流条片の第2の端部のための漏斗状挿入口部(挿入案内漏斗)を形成するように、折り曲げられている。このような構成により、両方の端子ケーシングの相互の結合に際して、電流条片の第2の端部は、漏斗状挿入口部内に捕らえられるようになっており、その結果、電流条片の端部が、脚形ばねの接触脚部と第2の接点壁との間のばね力式締め付け接続部内に簡単に押し込まれる。
【0012】
前に述べてあるように、第1の導線接続部材の金属部分も、相対する2つの接点壁と、該接点壁を互いに結合する1つの背面部とを有していてよい。しかしながら、別の有利な形態によれば、第1の線路接続部材の金属部分は、扁平な電流ビームとして形成されており、該電流ビームに導体差し込み貫通開口部が形成されており、該導体差し込み貫通開口部は、導体差し込み方向に延びる開口部つばを有している。このような構成において、脚形ばねは次のように配置され、つまり、脚形ばねの締め付け脚部の端部は、導体差し込み貫通開口部内に入り込んでいて、脚形ばねの締め付け脚部が、開口部つばの内壁と一緒に、接続すべき導体のためのばね力式締め付け接続部を形成している。導体差し込み貫通開口部及び開口部つばを有する扁平な電流ビームとして形成された金属部分は、少ない材料でかつ簡単に製造できるものである。このような金属部分は、更に、極めて小さい寸法で形成できるので、全体的にコンパクトな貫通案内端子を実現することができる。
【0013】
扁平な電流ビームから形成される金属部分の有利な形態では、脚形ばねは、脚形ばねの接触脚部の端部を、金属部分の導体差し込み貫通開口部内に差し込んで、脚形ばねを導体差し込み貫通開口部内に保持することにより、金属部分に取り付けられている。これとは異なる形態においては、導体差し込み貫通開口部から離間して電流ビームに別の開口部が形成されており、開口部内に、脚形ばねの接触脚部を差し込んで取り付けられるようになっている。
【0014】
導体差し込み貫通開口部内における脚形ばねのロック若しくは保持を更に改良するために、有利な形態によれば、脚形ばねの接触脚部は、側方へ突出する接触肩部を有しており、該接触肩部は、脚形ばねと金属部分とが組み立てられた状態では導体差し込み貫通開口部の縁部に接触若しくは当接している。このような構成により、脚形ばねと金属部分とは予め一緒に組み立てられ、その結果、ユニットとして端子ケーシング内に簡単に組み込まれるようになっている。脚形ばねの付加的なロックが、端子ケーシング内に適切に形成された保持用突起部によって行われるようになっていてよい。
【0015】
原理的には、電流条片は、個別の構成部品として形成されていてよく、或いは第1の線路接続部材の金属部分に一体に結合されていてもよい。電流条片と金属部分とを一体に構成することは、第1の線路接続部材の金属部分を扁平な電流ビームとして形成する場合に、特に簡単に実施されるものである。これに対して電流条片を個別の構成部品として形成する場合には、第1の線路接続部材の金属部分への電流条片の結合は、有利には、電流条片の第1の端部と脚形ばねの締め付け脚部若しくは接触脚部との間のばね力式締め付け接続部によって行われるようになっている。電流条片と第1の線路接続部材の金属部分との間の解離可能な結合は、金属部分が、相対する2つの接点壁と、該接点壁を互いに結合する1つの背面部とを有して形成されることにより、簡単に実施されるものである。このような形態において、第2の接点壁は、接触脚部と一緒に電流条片の第1の端部のためのばね力式締め付け接続部を形成している。
【0016】
両方の端子ケーシング間の機械的な結合若しくは固定は、有利な形態では、第1の端子ケーシングと第2の端子ケーシングとが、該各端子ケーシングに設けられていて互いに相対する各係止要素を有し、特に該各端子ケーシングに成形されていて互いにかみ合う各歯列を有しており、第1の端子ケーシングと第2の端子ケーシングとが、該端子ケーシング間に壁を受容した状態で、係止要素若しくは歯列を介して互いに係止されることにより、保証されるようになっている。
【0017】
別の有利な形態では、第1の端子ケーシングと第2の端子ケーシングとは、該両方の端子ケーシング間の相対回動の防止のために、つまり位置決めのために、該各端子ケーシングに設けられていて互いに相対する各回動防止要素を有し、例えば一方の端子ケーシングに設けられた孔若しくは他方の端子ケーシングに設けられたピンを有しており、ピンは、両方の端子ケーシング間の結合に際して孔に係合するようになっている。
【0018】
次に、本発明を図示の有利な実施の形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る貫通案内端子の両方の端子半部を、まだ互いに結合されていない状態で示す図である。
【
図2】
図1に示す貫通案内端子を、組み付けられた状態で示す図である。
【
図4】本発明に係る貫通案内端子の両方の線路接続部材を示す図である。
【
図5】第2の線路接続部材の脚形ばねと金属部分とを、まだ組み付けられていない状態で示す図である。
【0020】
図1〜
図3は、
図3にのみ図示してある壁2を通して電気的な線路を貫通案内するための本発明の実施の形態に係る貫通案内端子1を示しており、壁2は、例えば電機機器の壁である。貫通案内端子1は二部構造形式で形成され、つまり、第1の端子ケーシング3と第2の端子ケーシング4とを有している。第1の端子ケーシング3は、一方の側から、例えば機器外側から壁2に当て付けられ、かつ第2の端子ケーシング4は、他方の側から、例えば機器内側から壁2に取り付けられるようになっており、これにより、両方の端子ケーシング3,4は、相互に係止された状態では、該両方の端子ケーシング間に壁2を介在させて、該壁2の互いに相対する各側に配置されている。
【0021】
第1の端子ケーシング3の内部には第1の線路接続部材5が配置されており、第2の端子ケーシング4の内部には第2の線路接続部材6が配置されており、第1の線路接続部材5は、機器の外部に位置しているので、外部線路接続部材と呼ばれ、第2の線路接続部材6は、機器の内部に位置しているので、内部線路接続部材と呼ばれるものである。両方の線路接続部材5,6間の電気的な接続のために、第1の端子ケーシング3内に電流条片7が配置されていて、第1の線路接続部材5と電流が流れるように接続され、つまり導電接続されている。
【0022】
特に
図4から見て取れるように、第1の線路接続部材5は脚形ばね8及び金属部分9を有しており、脚形ばね8は、ほぼU字形に形成されていて、締め付け脚部10及び接触脚部11を有している。脚形ばね8と金属部分9とは互いに次のように配置され、つまり、脚形ばね8の締め付け脚部10と金属部分9とが、一緒に、
図3に示してある電気的な導体12のためのばね力式締め付け接続部を形成している。第2の線路接続部材6も、脚形ばね13及び金属部分14を有しており、第2の線路接続部材6の脚形ばね13も、締め付け脚部15及び接触脚部16を有しており、締め付け脚部15は、金属部分14と一緒に、
図2及び
図3に示してある電気的な導体17のためのばね力式締め付け接続部を形成している。
【0023】
両方の線路接続部材5,6間の電気的な接続のために設けられた電流条片7の第1の端部18は、電流条片7が金属部分9と一体的に形成されていることにより、第1の線路接続部材5の金属部分9と導電接続されている。両方の端子ケーシング3,4が相互に係止されている場合には、電流条片7の第2の端部19は、
図2〜
図4から見て取れるように、第2の線路接続部材6の接触脚部16と接触している。つまり、接触脚部16は、金属部分14と一緒に、電流条片7の第2の端部19のためのばね力式締め付け接続部を形成している。電流条片7の第2の端部19が、両方の端子ケーシング3,4を相互に嵌装する際に、後ろ側から、つまり、接続すべき導体17の挿入方向とは逆の方向に、閉じられているばね力式締め付け接続部内に容易に差し込まれるようにするために、接触脚部16の自由な端部20は、電流条片7から離れる方向へ折り曲げられている。このような構成により、自由な端部20は、電流条片7の第2の端部19の挿入の際の挿入補助手段を成している。
【0024】
本発明の図示の実施の形態に係る貫通案内端子1において、第2の線路接続部材6の金属部分14は、相対して位置する2つの接点壁21,22を有しており、両方の接点壁21,22は1つの背面部23によって互いに結合されている。脚形ばね13と金属部分14とは互いに次のように配置されており、つまり、締め付け脚部15は、第1の接点壁21と一緒に、接続すべき導体17のためのばね力式締め付け接続部を形成しており、接触脚部16は、第2の接点壁22と一緒に、電流条片7の第2の端部19のためのばね力式締め付け接続部を形成している。
【0025】
導体スリーブ24を備えている導体17を締め付け部位に挿入するために、端子ケーシング4には導体挿入開口部25が形成されている。締め付け部位への電気的な導体17の挿入を容易にするために、若しくは、接続されている電気的な導体17を必要に応じて締め付け部位から再び抜き取るために、端子ケーシング4には、操作工具27の挿入、例えばねじ回しの先端部の挿入のための操作開口部26が形成されている。操作工具27を用いて、脚形ばね13の締め付け脚部15が押され、これによって、脚形ばね13が開放され、その結果、電気的な導体17が容易に締め付け部位内へ差し込まれ、若しくは締め付け部位から引き抜かれるようになっている。締め付け脚部15には、屈曲部28が形成されており、該屈曲部は、操作工具27の、締め付け脚部15に沿った滑り移動を防止するために、操作工具27の先端のための係合部として用いられている。
【0026】
第2の線路接続部材6の金属部分14とは異なり、第1の線路接続部材5の金属部分9は、扁平な電流ビームとして形成されており、該電流ビームには、導体差し込み貫通開口部29が形成されており、該導体差し込み貫通開口部は、導体の差し込み方向に延びる開口部つば30を備えている。締め付け脚部10の端部は、導体差し込み貫通開口部29内に入り込んでいて、開口部つば30の対応する内壁と一緒に、接続すべき導体12のためのばね力式締め付け接続部を形成している。第2の端子ケーシング4と同様に、第1の端子ケーシング3も、接続すべき導体12のための導体挿入開口部31及び、操作工具33のための操作開口部32を有している。該実施の形態においても、操作開口部32内に差し込まれた操作工具33を用いて、脚形ばね8の締め付け脚部10が変位させられ、その結果、電気的な導体12が容易に導体差し込み貫通開口部29内に差し込まれ、若しくは接続されている導体12が端子ケーシング3から容易に引き抜かれるようになっている。
【0027】
脚形ばね8は、接触脚部11の端部が、同様に導体差し込み貫通開口部29内に差し込まれることにより、金属部分9に取り付けられている。更に、接触脚部11は、側方へ突出する接触肩部34を有しており、該接触肩部は、組み立てられた状態では導体差し込み貫通開口部29の縁部に接触している。端子ケーシング3内には、脚形ばね8の位置決め及び保持のための保持ピン35が追加的に設けられている。端子ケーシング4内にも、脚形ばね13の位置決め及び保持のための相応の保持ピン36が設けられている。
【0028】
両方の端子ケーシング3,4間の機械的な結合は、相対して配設された係止要素37,38を用いて行われるようになっており、該係止要素は、図示の有利な実施の形態では、相互にかみ合う歯列として形成されている。歯列は、プラスチックから成る端子ケーシング3,4の固有の弾性に基づき、両方の端子ケーシング3,4を互いに入れ子式に嵌め合わせるだけで、相互にかみ合い、その結果、両方の端子ケーシング3,4の確実でかつ永続的な結合が達成されるようになっている。
図2から見て取れるように、電流条片7は、両方の端子ケーシング3,4の互いに嵌め合わされた状態では、第2の端子ケーシング4に一体成形された箱形の係止要素38を貫通していて、従って必然的に該係止要素38により完全に絶縁された状態で取り囲まれており、このような構成により、電流条片7の著しく良好な絶縁が、壁2の開口部の領域でも達成されるようになっている。
【0029】
壁2に対する両方の端子ケーシング3,4の規定された位置を保証するために、第1の端子ケーシング3及び第2の端子ケーシング4は、該各端子ケーシングに対応配置された回動防止要素39,40を有している。図示の実施の形態によれば、回動防止要素は、第1の端子ケーシング3において孔として形成されており、かつ第2の端子ケーシング4においてピンとして形成されており、ピンが孔内に差し込まれるようになっている。図示の実施の形態において、第1の導体12の接続方向は、第2の導体17の接続方向に対してほぼ垂直である。しかしながら、両方の導体12,17の接続方向は、互いに平行に、若しくは互いに逆向きに配置されていてよく、また、両方の導体12,17の接続方向は、
壁2の面の垂線に対して垂直に若しくは平行に延びていてよいものである。
【符号の説明】
【0030】
1 貫通案内端子、 2 壁、 3,4 端子ケーシング、 5,6 線路接続部材、 7 電流条片、 8 脚形ばね、 9 金属部分、 10 締め付け脚部、 11 接触脚部、 12 導体、 13 脚形ばね、 14 金属部分、 15 締め付け脚部、 16 接触脚部、 17 導体、 18,19,20 端部、 21,22 接点壁、 23 背面部、 24 導体スリーブ、 25 導体挿入開口部、 26 操作開口部、 27 操作工具、 28 屈曲部、 29 導体差し込み貫通開口部、 30 開口部つば、 31 導体挿入開口部、 32 操作開口部、 33 操作工具、 34 接触肩部、 35,36 保持ピン、 37,38 係止要素、 39,40 回動防止要素