(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
反射性金属膜は、アルミニウム、マグネシウムおよびこれらの合金の中から選ばれる下部金属膜と、インジウム−錫酸化物またはインジウム−亜鉛酸化物からなる上部金属膜とを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック基板。
前記ポリイミドフィルムは、フィルム厚さ50〜100μmを基準として熱機械分析法によって50〜250℃の範囲で測定した平均線膨張係数(CTE)が50.0ppm/℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック基板。
保護層は、厚さ50〜100μmを基準として熱機械分析法によって50〜250℃の範囲で測定した平均線膨張係数(CTE)が50.0ppm/℃以下、黄色度が15以下のポリイミド層であることを特徴とする、請求項14に記載のプラスチック基板。
保護層は、厚さ50〜100μmを基準としてUV分光光度計で透過度を測定したとき、380〜780nmにおける平均透過度が85%以上のポリイミド層であることを特徴とする、請求項14に記載のプラスチック基板。
保護層は、厚さ50〜100μmを基準としてUV分光光度計で透過度を測定したとき、550nmにおける透過度が88%以上、420nmにおける透過度が70%以上のポリイミド層であることを特徴とする、請求項14に記載のプラスチック基板。
化学的耐性層は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリシラザン(Polysilazane)およびポリイミド系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の樹脂層を含むことを特徴とする、請求項19に記載のプラスチック基板。
【背景技術】
【0002】
電子ペーパー表示素子および液晶表示装置だけでなく、大部分の液晶表示装置は、従来から上、下部基板としてガラス基板を使用してきたが、軽量化を実現するために上、下ガラス基板の厚さが益々減少しつつある。ところが、現在は、基板の厚さが限界に達しているにも拘らず、満足すべき軽量を得ることが難しいから、基板の素材を変えるための研究開発努力をしている。その一環として、ガラス基板の代わりにガラスより軽量のプラスチック基板を使用する技術が提案された。
【0003】
しかし、プラスチック基板は、アレイパターン形成工程やカラーフィルター形成工程などを行うとき、大きな熱的・化学的・機械的損傷を被って、液晶表示装置の画質特性を低下させるおそれがある。
通常、プラスチック基板を含む液晶表示素子の一例を
図1の(a)に簡略に示したが、具体的には、プラスチックで形成された上部および下部基板1と、前記上部および下部基板上に素子の駆動電圧を印加し、透明電極で形成された上部および下部電極11と、前記上部基板と前記下部基板との間隔を一定に維持し、二層構造を有する隔壁140と、前記隔壁粒子によって形成されたセルに注入された帯電粒子又は液晶層150とを含んでなることができる。この際、上部基板として用いられるプラスチック絶縁基板の外側面に形成される偏光板、並びに下部基板の外側面に形成される反射板および透過型基板を含んでもよく、上部プラスチック絶縁基板には単位画素を限定するようにブラックマトリックスが形成されてもよく、ブラックマトリックスで取り囲まれた空間にはカラーフィルターが備えられてもよい。一方、下部基板には単位画素別にスイッチング素子と画素電極が備えられてもよい。
【0004】
別の平板ディスプレイ装置の一例として、有機EL素子の断面図を
図1の(b)および(c)に示したが、これも基板1上に透明電極110または反射型電極113が形成された構造を持つ。
プラスチック基板を導入することにより、素子の薄型化および軽量化は実現されたが、最終適用製品の画質特性低下を抑制しながらもより様々な機能を集積化して素子の薄型化および軽量化を実現しようとする努力が依然として求められている。
【0005】
一方、反射型の液晶表示装置では、外光を反射して照度を得るから、外光を拡散反射させるための反射材を備えている。反射材を備える形態によって、反射材を基板の液晶層側と反対側の面に形成する外部付着反射材方式と、反射材を基板の液晶層側の面に形成する内部付着反射材方式がある。
外部付着反射材方式では、反射材が基板の液晶層側と反対側の面に形成されるので、外部から入射された光は反射材で拡散反射され、反射された光は基板を透過してから液晶層を透過して表示画面から外部へ出射される。この際、反射光が基板の厚さに影響されるので視差が生じ、これにより液晶表示される画像が二重になり、或いは色表示が混色になるなどの画像ボケが発生する。
【0006】
一方、内部付着反射材方式では、反射材が基板の液晶層側の面に形成されるので、外部から入射された光は反射材で拡散反射され、この反射された光は基板を透過せず液晶層を透過して表示画面から外部へ出射される。この場合、反射材と液晶層とが互いに近接しており、反射光が基板の厚さに影響されないため、視差が生じなくて画像ボケが発生しなくなる。
【0007】
基板がプラスチック基板の場合、すなわちフィルムを使用した場合には、厚さをガラスより薄くすることができるので、その分だけ視差は殆ど発生しない。ところが、カラーフィルターを備えた場合、1つの画素が3分の1サイズのカラードットに分割されるので、反射光が単色からなる場合より他のドットを通過し易くなり、フィルムの厚さの影響を無視することができなくなる。
【0008】
したがって、基板としてフィルムを使用した場合にも、特にカラー化された液晶表示装置では、内部付着反射材方式で反射材を構成する必要性が生じる。
ところが、内部付着反射材方式の液晶表示装置は、構造が複雑であって製造が困難になるおそれがある。特に、基板としてフィルムを使用する場合、フィルムは熱または湿度の影響により伸縮を起こし易く、材料または製造工程の条件が制限される。このために、基板としてフィルムを使用した内部付着反射材方式の液晶表示装置を設計の要求に応えて低費用且つ高収率で製造することが可能な製造方法が要望されている。
【0009】
また、従来の反射型または半透過型液晶表示装置の反射材の製造方法は、フォトマスクを使用したフォトリソグラフィーによって、レジスト膜などの樹脂の表面に凸凹を形成し、この凸凹面上に光を反射し易い金属膜を形成して反射材を形成する方法が提案されている。
樹脂の表面に凸凹を形成する別の方法としては、微細な粒子を分散させた樹脂によって凸凹を形成する方法(特開平4−267220号公報)、2つの異なる成分からなる樹脂の硬化時の相分離を用いて凸凹を形成する方法(特開平12−193807号公報)、および光熱硬化型樹脂材料の硬化時の内部応力を制御して凸凹を形成する方法(特開平12−171792号公報)などが知られている。
【0010】
ところが、基材としてフィルムを用いた内部付着反射材方式の液晶表示装置の電極基材をフィルム上に反射材などを直接形成して製造する場合には、次の問題がある。反射材は、外光を拡散反射する機能が必要であるため、表面に凸凹を備えている。この凸凹は、液晶層の面を凸凹にすることにより形成されるため、液晶の駆動に悪影響を及ぼすおそれがある。このため、特に高度の平坦化を行う技術が必要となり、費用が上昇し、収率が低下する可能性がある。また、反射材からなる金属膜を形成した後、透明電極などの形成工程における薬品処理で、先に形成した反射材がダメージを被るおそれがある。また、基材としてフィルムを用いるため、熱または湿度の影響によりフィルムに伸縮が発生し易く、反射材および透明電極などの材料または製造条件が制限されるので、設計の要求に応じる液晶表示装置を製造することが困難になる。しかも、光源として、バックライトまたは外光による反射光を全て使用することが可能な半透過型液晶表示装置の電極基材を、フィルム上に反射材などを直接形成して製造する場合、前述した問題がさらに深化するおそれがある。
【0011】
反射材を内部に形成した場合、まず、プラスチックフィルム上の全面に金属膜からなる反射材を形成した後、その後の工程で形成される透明電極の画素からなる部分に対応する金属膜からなる反射材部分のうち、その画素からなる部分の面積より小さい面積を、バックライトが透過し得るように、金属膜からなる反射材を精密に除去する必要がある。
その後、反射材の上に透明電極を形成するとき、その金属膜からなる反射材を除去した部分に、透明電極の画素からなる部分が重なるように、透明電極からなるITOを成膜し、そのITO上にレジスト膜を形成して精度よく位置合わせを行った後、レジスト膜を露光、現像し、ITOを除去して透明電極のパターンを形成する必要がある。すなわち、この場合、高度の位置合わせ技術が要求される。
【0012】
ところが、プラスチックからなるフィルムは、例えば、水洗処理を行うだけで伸長が発生し、それを乾燥させると、逆に収縮が発生する。また、これらの伸縮は直ちに安定せず、安定するまで長時間がかかる。すなわち、フィルムが1回収縮すると、フィルム上に形成されたパターンの寸法は長時間伸長が発生するから、上述したような位置合わせに関連する再現性を得ることが困難である。
【0013】
したがって、フィルム上に反射材や透明電極などを直接形成することにより、半透過型の液晶表示装置を製造することは困難である。
また、従来の反射(半透過)型液晶表示装置の反射材の製造方法では、次の問題がある。
フォトリソグラフィーによってレジスト膜などの樹脂の表面に凸凹を形成する方法は、反射材の凸凹のパターンを、平面方向に単純に反復するパターンにすれば、反射材が回折格子として作用するので、液晶表示画面を観察したとき、虹色に発色し、或いは配線やブラックマトリクスなどの他の反復パターンとの位置関係の微妙な差により、いわゆるモアレ(moire)縞が見えるなど表示上の不良が発生するおそれがある。このため、凸凹のパターンを形成するためのフォトマスクの設計において、通常の画素パターンなどの単純な反復パターンを使用することができず、煩雑で困難な設計を行う必要がある。このように、通常のフォトリソグラフィーによって、適正の拡散能を有する反射材を形成することは容易ではない。
【0014】
また、特開平4−267220号公報に開示された方法は樹脂中にその樹脂とは異なる材料の粒子を分散させることであり、特開平12−193807号公報に開示された方法は2つの異なる樹脂の硬化時の相分離を利用したことであり、特開平12−171792号公報に開示された方法は樹脂の表面側の一部を硬化し、その内部が未硬化となるように露光または焼成を行って凸凹を形成することである。このような従来の反射材の製造方法によって、反射材を膜厚50〜20μmのプラスチックフィルム上に直接形成する場合、樹脂硬化時の応力によってプラスチックフィルムに反りが発生し易い。
【0015】
また、前述した製造方法で製造された反射材は、それぞれ樹脂と粒子との界面または相分離した界面を境界として実質的に屈折率が異なる材料で構成される。反射材の凸凹面が電極基材の液晶層側と反対側の面に形成される場合、偏光板に偏光された入射光が、液晶層を介して反射材の屈折率が異なる材料の界面を透過してから金属膜によって反射される。
【0016】
この際、偏光された入射光および金属膜で散乱した反射光が屈折率の異なる材料の界面で屈折することに起因して光の偏光度が低下する偏光消滅効果が発生し易い。これにより、上述したように置された反射材を液晶表示装置に適用した場合、液晶表示画面のコントラスト比が低下するなどの問題が発生し易い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、導電性を向上させ、自体的に補助電極の役割を行うことが可能なプラスチック基板を提供することを目的とする。
本発明は、導電性を向上させ、自体的に補助電極の役割を行うことができるうえ、後面から入射する光の透過度を阻害しないプラスチック基板を提供することを目的とする
本発明は、金属膜を含みながらも、ベンディングの際に亀裂が発生しないプラスチック基板を提供することを目的とする
本発明は、電極を外部から保護しながらも、導電性がより向上した透明電極フィルムを提供することを目的とする。
本発明は、金属膜上に導電性物質の含まれた有機保護層をコーティングして硬化させる方法で保護層または電極層を導入することにより、既存の透明電極であるITOの蒸着工程で発生する高温によるフィルムの寸法変化を防止することが可能なプラスチック基板を提供することを目的とする。
本発明は、高光透過性を用いて高コントラスト比の鮮明な画質を有するプラスチック基板を用いた電子ペーパー表示装置および液晶表示装置を提供することを目的とする。
本発明は、前述したようなプラスチック基板を下部基板として含むことにより軽量化された電子ペーパー、液晶表示装置素子および有機発光素子を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一具現例では、プラスチックフィルム、反射性および/または導電性金属膜、および導電性物質の分散した樹脂層を含んでなる、プラスチック基板を提供する。
本発明の一具現例に係るプラスチック基板において、金属膜は、アルミニウム、チタニウム、銀、白金、マグネシウム、タングステン、パラジウムおよびその合金、インジウム−錫酸化物(ITO)、およびインジウム−亜鉛酸化物(IZO)の中から選ばれる単一層または多層の反射性金属膜であってもよい。好ましい一具現例に係るプラスチック基板において、反射性金属膜は、アルミニウム、マグネシウムおよびこれらの合金の中から選ばれるものであってもよい。他の一具現例に係るプラスチック基板において、反射性金属膜は、アルミニウム、マグネシウムおよびこれらの合金の中から選ばれる下部金属膜と、インジウム−錫酸化物またはインジウム−亜鉛酸化物からなる上部金属膜とを含んでなってもよい。
【0019】
本発明の一具現例に係るプラスチック基板において、反射性金属膜は、厚さが10〜1,000nmであってもよく、好ましくは厚さが50〜300nmである。
本発明の他の一具現例に係るプラスチック基板において、金属膜は、マグネシウム、バリウム、金、アルミニウム、チタニウム、銀、白金、タンタリウム、パラジウム、これらの合金および酸化物、インジウム−錫酸化物、およびインジウム−亜鉛酸化物よりなる群から選ばれる導電性金属膜であってもよい。
【0020】
本発明の一具現例に係るプラスチック基板において、導電性金属膜はインジウム−錫酸化物またはインジウム−亜鉛酸化物であってもよい。
具体的な一具現例において、導電性金属膜はマグネシウム、バリウムおよび金の中から選ばれる単独またはこれらの酸化物からなってもよく、他の一例として、導電性金属膜はインジウム−錫酸化物からなってもよい。
【0021】
本発明の一具現例に係るプラスチック基板において、導電性金属膜は、厚さが1〜300nmであってもよい。
本発明の一具現例に係るプラスチック基板において、導電性金属膜は、厚さが1〜100nmであってもよい。好ましくは、導電性金属膜は、厚さが1〜50nmである。
本発明の一具現例に係るプラスチック基板において、金属膜は、ガス遮断膜または水分遮断膜であってもよい。
【0022】
本発明の一具現例に係るプラスチック基板において、プラスチックフィルムはポリイミド系フィルムであってもよい。
本発明の一具現例に係るプラスチック基板において、プラスチックフィルムは、フィルム厚さ50〜100μmを基準として熱機械分析法によって50〜250℃の範囲で測定した平均線膨張係数(CTE)が50.0ppm/℃以下、黄色度が15以下のポリイミドフィルムであってもよい。
【0023】
本発明の一具現例に係るプラスチック基板において、プラスチックフィルムは、フィルム厚さ50〜100μmを基準としてUV分光光度計で色座標を測定したとき、L値が90以上、a値が5以下、b値が5以下のポリイミドフィルムであってもよい。
本発明の一具現例に係るプラスチック基板は、金属膜上に形成される保護層をさらに含んでもよい。この際、保護層は、厚さ50〜100μmを基準として熱機械分析法によって50〜250℃の範囲で測定した平均線膨張係数(CTE)が50.0ppm/℃以下、黄色度が15以下のポリイミド層であってもよい。また、保護層は、厚さ50〜100μmを基準としてUV分光光度計で透過度を測定したとき、380〜780nmにおける平均透過度が85%以上のポリイミド層であってもよい。別の一例として、保護層は、厚さ50〜100μmを基準としてUV分光光度計で透過度を測定したとき、550nmにおける透過度が88%以上、420nmにおける透過度が70%以上のポリイミド層であってもよい。
【0024】
本発明の一具現例に係るプラスチック基板において、導電性物質は炭素ナノチューブまたはインジウム−錫酸化物粉末であってもよい。
本発明の一具現例に係るプラスチック基板において、導電性物質が分散した樹脂層は、導電性物質の分散したポリイミドワニスから形成されてもよい。
具体的な一具現例において、導電性物質が分散した樹脂層は、ポリイミド樹脂の固形分含量100重量部に対して0.001〜1重量部の炭素ナノチューブを含有するポリイミドワニスから形成されてもよい。
【0025】
具体的な一具現例において、導電性物質が分散した樹脂層は、ポリイミド樹脂の固形分含量100重量部に対して2〜100重量部のインジウム−錫酸化物粉末を含有するポリイミドワニスから形成されてもよい。
この際、インジウム−錫酸化物粉末は、酸化インジウム80〜95重量%と酸化錫5〜20重量%を含有してもよい。
【0026】
本発明の一具現例に係るプラスチック基板において、導電性物質が分散した樹脂層は、厚さが10nm〜25μmであってもよい。
本発明の他の一具現例に係るプラスチック基板は、プラスチックフィルムの少なくとも一面に化学的耐性層を含むものであってもよい。この際、化学的耐性層はアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリシラザンおよびポリイミド系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の樹脂層であってもよい。
【0027】
本発明の他の一具現例に係るプラスチック基板は、プラスチックフィルムの下部または金属膜の下部に形成される無機物層を含んでもよい。
この際、無機物層は、SiNx、AlxOyおよびSiOxの中から選択される少なくとも1種の無機物を含む単一層または多層のものであってもよい。
本発明の他の一具現例に係るプラスチック基板は、導電性物質の分散した樹脂層の上部または下部面に形成される金属酸化膜層を含んでもよい。
【0028】
この際、金属酸化膜層はAgOからなる層であってもよい。
本発明の一具現例に係るプラスチック基板は、波長500nmの光透過度が50%以上であってもよい。また、表面抵抗が2.5×10
6Ω/sq.以下であってもよい。
本発明の他の一具現例では、プラスチックフィルムと;プラスチックフィルム上に形成され、所定のパターンを有するインジウム−錫酸化物またはインジウム−亜鉛酸化物薄膜と;インジウム−錫酸化物またはインジウム−亜鉛酸化物の薄膜上に形成される、導電性物質が分散した樹脂層とを含んでなる、透明電極フィルムを提供する。この際、導電性物質は炭素ナノチューブまたはインジウム−錫酸化物粉末であってもよい。
【0029】
本発明の一具現例において、透明電極フィルムは、波長500nmの光透過度が50%以上であってもよい。
本発明の一具現例において、透明電極フィルムは、表面抵抗が700Ω/sq.以下であってもよい。
本発明の例示的な一具現例では、前記具現例に係るプラスチック基板を下部基板として含む、透過型電子ペーパー素子を提供する。
【0030】
本発明の他の例示的な一具現例では、前記具現例に係るプラスチック基板を下部基板として含む、ディスプレイ装置素子を提供する。
本発明の他の例示的な一具現例では、前記具現例に係るプラスチック基板を下部基板として含む、有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一具現例に係るプラスチック基板は、導電性が向上するうえ、透過度の阻害がなく、金属膜によるフィルムの亀裂発生などがない基板である。
また、本発明の一具現例に係るプラスチック基板は、反射性金属膜を備えることにより、これを内部付着反射材方式の形態で適用すると、例えば液晶表示装置の外部から入射した光がプラスチックフィルム上に形成された金属膜から拡散反射され、反射された光がプラスチックフィルムを透過しないため、視差が生じ難くなって画像ボケのない鮮明な画像を得ることができ、外部の空気または水分だけでなく、フィルム自体に含有される空気または水分を金属膜が遮断することができるため、特にプラスチックフィルムの液晶層側の面にガスバリア層を形成する必要がないので、さらに費用を減らし且つ収率を向上させることができる。
【0032】
このような本発明の一具現例に係るプラスチック基板は、電子ペーパー表示素子および液晶表示装置などの下部基板として有用であり、これを下部基板として含むことにより当該表示素子の軽量化を可能にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、電子ペーパー表示素子およびディスプレイ装置などに用いられるプラスチック基板に関する。一具現例によれば、プラスチック基板は、透過型電子ペーパー表示素子およびディスプレイ装置などにおいて、透過機能および電極機能を行うことができる。
本発明の一具現例に係るプラスチック基板の一例を
図2に示す。
図2を参照すると、プラスチック基板は、プラスチックフィルム100と、前記プラスチックフィルム上に配置され、導電性機能を有する金属膜110と、金属膜の表面上に形成される、導電性物質が分散した樹脂層120とを含んでなる。後述する他の一具現例に係るプラスチック基板の場合、導電性機能を有する金属膜110は、反射性を有する金属膜、または導電性および反射性を有する金属膜である。
【0035】
プラスチックフィルム100上に直接蒸着を介して金属膜を形成する場合、またはフィルム上に薄膜トランジスタTFTをのせる工程(TFT ARRAY)を行う場合などの後続工程において、フィルムは熱または湿度の影響により伸縮を引き起こすおそれがある。これにより、後続工程の条件が制限されるか、或いは後続の層または部材とのアラインメント(alignment)が取れないか、或いはフィルムが水平(平坦化)性を維持しないため、反り現象が発生するおそれがあるので、プラスチック基板を構成するプラスチックフィルム100は、ガラス転移温度が250℃以上で線膨張係数が小さいほど有利であり、具体的にはフィルム厚さ50〜100μmを基準として熱機械分析法(Thermomechanical Analyzer)によって50〜250℃の範囲で測定した平均線膨張係数(CTE)が50.0ppm/℃以下、好ましくは35.0ppm/℃以下の高耐熱性フィルムであることが有利でありうる。その一例としては、ポリイミドフィルムを挙げることができるが、これに限定されない。
【0036】
また、透過性の面からみて、無色透明なプラスチックフィルム、具体的にはフィルム厚さ50〜100μmを基準として黄色度15以下のポリイミドフィルムが好ましい。また、フィルム厚さ50〜100μmを基準としてUV分光光度計で透過度を測定したとき、380〜780における平均透過度が85%以上のポリイミドフィルムをプラスチックフィルムとして用いることができる。このような透過性を満足する場合、透過型電子ペーパーおよび液晶表示装置用のプラスチック基材として使用可能である。しかも、プラスチックフィルムはフィルム厚さ50〜100μmを基準としてUV分光光度計で透過度を測定したとき、550nmにおける透過度が88%以上、420nmにおける透過度が70%以上のポリイミドフィルムであってもよい。
【0037】
また、透明性を向上させて透過性を高めるという側面からみて、ポリイミドフィルムは、フィルム厚さ50〜100μmを基準としてUV分光光度計で色座標を測定したとき、L値が90以上、a値が5以下、b値が5以下のポリイミドフィルムであってもよい。
このようなポリイミドフィルムは、芳香族ジアンヒドリドとジアミンとを重合してポリアミド酸を得た後、これをイミド化して得ることができる。この際、芳香族ジアンヒドリドの例としては、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6−FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸ジアンヒドリド(TDA)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸ジアンヒドリド)(HBDA)、ピロメリット酸ジアンヒドリド(PMDA)、ジフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BPDA)、およびオキシジフタル酸ジアンヒドリド(ODPA)の中から選ばれた少なくとも1種を挙げることができるが、これに限定されない。
【0038】
芳香族ジアミンの例としては、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−フェニル]プロパン(6HMDA)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(3,3’−TFDB)、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(3−アミノフェニル)スルホン(3DDS)、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(4DDS)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−133)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−134)、2,2’−ビス[3(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3−BDAF)、2,2’−ビス−[4(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4−BDAF)、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(3,3’−6F)、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(4,4’−6F)、およびオキシジアニリン(ODA)の中から選ばれた少なくとも1種を挙げることができるが、これに限定されない。
【0039】
このような単量体を用いてポリイミドフィルムを製造する方法は、特に限定されるものではなく、その一例としては、芳香族ジアミンと芳香族ジアンヒドリドを第1溶媒の下で重合してポリアミド酸溶液を収得し、収得されたポリアミド酸溶液をイミド化した後、イミド化した溶液を第2溶媒に投入し、濾過および乾燥させてポリイミド樹脂の固形分を収得し、収得されたポリイミド樹脂固形分を第1溶媒に溶解させたポリイミド溶液を製膜工程を介してフィルム化することができる。この際、第2溶媒は第1溶媒より極性が低いものであってもよい。具体的に、第1溶媒はm−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジエチルアセテートの中から選択された少なくとも1種であり、第2溶媒は水、アルコール類、エーテル類およびケトン類の中から選択された少なくとも1種であってもよい。
一方、プラスチックフィルム上に金属膜を形成させるにおいて、均一な厚さの金属膜を形成させるためには、プラスチックフィルムの表面平滑度は2μm以下、好ましくは0.001〜0.04μmであってもよい。
【0040】
このようなプラスチックフィルム上に導電性の金属膜110(以下、「導電性金属膜」という)を形成するので、透過性を考慮するときは、導電性金属膜が1〜300nmの厚さを有することが、透過度などの光学特性の低下を抑制することにおいて有利であり、特に導電性金属膜が1〜100nmの厚さを有することが、金属膜による透過度などの光学特性が低下することなくプラスチックフィルム基板の線膨張係数を低めることにおいて有利である。導電性金属膜の厚さがこれより厚くなると、導電性は増加するが、プラスチックフィルムのベンディングの際に亀裂が発生するおそれがある。
【0041】
この際、導電性金属膜としては、マグネシウム、バリウム、金、アルミニウム、チタニウム、銀、白金、タンタリウム、パラジウム、これらの合金および酸化物、インジウム−錫酸化物(ITO、Indium-Tin-Oxide)、またはインジウム−亜鉛酸化物(IZO、Indium-Zinc-Oxide)からなる膜を挙げることができるが、これに限定されない。金属または金属の合金からなる場合、金属酸化物からなる場合に比べて厚さによる透過度の影響が大きいおそれがあるので、金属または金属の合金からなる場合、好ましい金属膜の厚さは1〜50nmであってもよい。
【0042】
このような導電性金属膜を含む場合、透過度を阻害することなく、電気導電性を向上させ、ひいては導電性金属膜が電極としての機能を行うことができる。特に、このような点において、導電性金属膜はITOまたはIZO膜であってもよい。
このような導電性金属膜は、導電性の面からみても有利であり、ガス遮断性および/または水分遮断性を発現することにより、プラスチックフィルムがガスまたは水分によって変形することを抑制する機能も行うことができる。
【0043】
プラスチックフィルム上への導電性金属膜の形成には、スパッタリング、イオン蒸着、電気メッキまたは化学蒸着方式などを用いることができ、特にこれに限定されない。
本発明の一具現例によれば、プラスチックフィルムとして高耐熱性フィルムを使用するので、既存のプラスチック基材に比べて導電性金属膜の形成工程条件が殆ど限定されない。
【0044】
本発明の一具現例に係るプラスチック基板は、このような導電性金属膜110上に、導電性物質が分散した樹脂層120、具体的には、炭素ナノチューブまたはITO粉末が分散した樹脂層をさらに形成するので、炭素ナノチューブまたはITO粉末が分散した樹脂層は導電性をより向上させ、追加的な電極層としても機能することができる。炭素ナノチューブまたはITO粉末が分散した樹脂層は、炭素ナノチューブまたはITO粉末を含む透明ワニスを塗布して得られる層であってもよく、透明ポリイミドワニスに炭素ナノチューブまたはITO粉末を分散させて塗布することにより形成された層であってもよい。
【0045】
この際、ディスプレイ用電極フィルムの表面抵抗および光透過度の面からみて、ポリイミドワニス中の炭素ナノチューブは、ワニス中の樹脂固形分含量100重量部に対して0.001〜1重量部で含有できる。
一方、炭素ナノチューブは、その種類に限定があるのではなく、単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)、二重壁炭素ナノチューブ(DWCNT)、多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)、および炭素ナノチューブの表面が化学的または物理的処理を介して改質された改質−炭素ナノチューブなどであってもよい。
【0046】
また、ワニス中における炭素ナノチューブの分散方法は、特に制限があるのではなく、例えば超音波分散、3本ロール分散、ホモジナイザーまたはニーダー(Kneader)、ミル−ブレンダー(Mill-Blender)、ボールミルなどの物理的分散と化学的処理によってワニスの単量体との化学結合などによってワニス内に炭素ナノチューブを分散させることができる。この際、CNTの投入はワニスの重合の際にIn−situにて行い、或いはワニスの重合後にブレンディング方法で行うことができ、CNTの適切な分散のために分散剤や乳化剤などの添加物などを使用する方法などを挙げることができる。
【0047】
炭素ナノチューブが分散した樹脂層の形成には、スピンコーティング法、ドクターブレード(doctor blade)などのキャスティング法などを用いることができ、これに限定されない。
特に、金属薄膜を介して透過度に阻害されない光が、炭素ナノチューブ特有の構造により透過性に格別な阻害を受けることなく導電性を向上させることができるという点において、炭素ナノチューブが分散した樹脂層を金属膜上に形成することが好ましい。
【0048】
炭素ナノチューブと共に、或いはその代わりにITO粉末を使用する場合、その含量はワニス中の樹脂固形分含量100重量部に対して2〜100重量部であってもよい。
ITO粉末を添加する場合の電気的特性は、インジウム−錫混合酸化物の含量によっても調節可能であり、インジウム−錫混合酸化物自体における酸化インジウムと酸化錫の含量を調節することによっても調節可能である。インジウム−錫混合酸化物(ITO)は、好ましくは酸化インジウム(In
2O
3)80〜95重量%と酸化錫(SnO
2)5〜20重量%を含有してもよい。インジウム−錫混合酸化物は、粉末状であってもよく、そのサイズは使用される物質および反応条件によるが、平均最小直径が30〜70nmであり、平均最大直径が60〜120nmであることが好ましい。
【0049】
インジウム−錫混合酸化物を含むワニスの製造方法は、特に限定されるのではないが、インジウム−錫混合酸化物をポリアミド酸溶液に分散させることができ、ポリアミド酸の固形分含量100重量部に対してインジウム−錫混合酸化物(ITO)2〜100重量部となるように含むことが、導電性の発現またはフィルムの軟性を維持するためには有利でありうる。
【0050】
インジウム−錫混合酸化物をポリアミド酸溶液中に添加する方法は、特に限定されないが、例えば、重合前または重合中のポリアミド酸溶液に添加する方法、ポリアミド酸重合完了の後にインジウム−錫混合酸化物を混練する方法、インジウム−錫混合酸化物を含む分散液を準備してこれをポリアミド酸溶液に混合する方法などを挙げることができる。この際、インジウム−錫混合酸化物の分散性は、分散溶液の酸−塩基性および粘度などに影響されるうえ、導電性および可視光線透過度の均一性に影響を与えるから、分散工程を十分に行わなければならない。好ましい分散方法としては、3本ロール、超音波分散器、ホモジナイザー(Homogenizer)またはボールミルなどがある。
【0051】
このようにCNTまたはITO粉末が分散した樹脂層を形成するにおいて、10nm〜25μmの厚さとすることが、ディスプレイの透過度などといった光学特性の低下抑制の面からみて有利でありうる。
このように基板がプラスチックで形成されながら透過板および透明電極基板の役割を果たすことができるので、液晶表示装置が軽量化できる。
【0052】
本発明の他の一具現例に係るプラスチック基板は、導電性物質が分散した樹脂層120の上部または下部に金属酸化膜層を形成することも可能であるが、酸化膜は、透過度を向上させ、且つガスおよび水分を遮断するバリア層としても機能することができる。その具体的な一例として、酸化膜は、酸化銀(AgO)からなる膜であってもよい。これを
図3および
図4に示す。
図3は導電性物質が分散した樹脂層120の上部に酸化膜111を形成したプラスチック基板の一例を示し、
図4は導電性物質が分散した樹脂層120の下部に酸化膜111を形成したプラスチック基板の一例を示す。
【0053】
酸化膜111を形成する場合、その厚さは特に限定があるのではないが、樹脂層との接着性、酸化膜の厚さの均一度、および基板ベンディング時の亀裂防止の面からみて、約10nm〜300nmが有利でありうる。
本発明の別の一具現例に係るプラスチック基板は、基板および電極への溶剤浸透を防止するための層をさらに含んでもよい。本発明では、このような層を化学的耐性層と命名する。
【0054】
化学的耐性層を形成したプラスチック基板の一例を
図5〜
図8に示す。
図5および
図8の場合はプラスチックフィルム100の下部に化学的耐性層102を形成した一例を示し、
図6はプラスチックフィルム100の上部および下部に化学的耐性層102を形成した一例を示し、
図7はプラスチックフィルム100の上部にのみ化学的耐性層102を形成した一例を示す。
【0055】
化学的耐性層102の形成に使用される組成としては、透明性を阻害することなく、ディスプレイ製造工程上で洗浄溶剤および有機溶剤に対する不溶性および基材フィルムとの接着性が良好な条件を満足する組成であれば、格別に限定があるのではなく、具体的な一例としてはアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリシラザン(polysilazane)、およびポリイミド系樹脂の中から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含む層であってもよい。
【0056】
プラスチックフィルム100の下部に化学的耐性層102を形成することは、プラスチックフィルムの外部からの溶剤浸透を防止することができ、プラスチックフィルム100の上部に化学的耐性層120を形成することは、溶剤浸透防止の機能だけでなく、プラスチックフィルム100上への導電性金属膜110の形成に役に立つことができる。
化学的耐性層102の形成方法は、格別に限定があるのではないが、例えばスピンコーティング、キャスティング、ロールコーティング、含浸などの方法を用いることができる。
【0057】
化学的耐性層102の厚さは、限定されないが、10nm〜500nmとすることが、厚さの均一度および透過度などの光学特性を阻害しないという側面では有利でありうる。
本発明の別の一具現例に係るプラスチック基板は、金属膜を形成した後、保護層(平坦化層)をさらに形成することができ、その一例を
図8に示す。保護層103は、反射性金属膜を保護し反射性金属膜の表面を平滑にする機能を行い、かつ後続的に導電性物質が分散した樹脂層120の形成を容易にし、プラスチック基板の反り発生を防止することができるという側面では有利でありうる。このような側面からみて、保護層は反射性金属膜を介して反射された光の透過を阻害することなく絶縁性を有することが有利でありうる。
【0058】
このような点において、プラスチックフィルムとして例示されたポリイミドフィルムなどのポリイミド樹脂層で保護層を形成することができる。例えば、保護層は可視光線透過度が85%以上の無色透明な樹脂層であることが有利である。
保護層103の厚さは、反射性金属膜110により不均一になった面を平坦化することができる程度であれば十分であり、その限定があるのではないが、金属膜層との接着力および有機発光層の蒸着容易性を考慮に入れ、10nm〜500nmであってもよい。
【0059】
本発明の別の一具現例に係るプラスチック基板は、無機物層を備えることができる。プラスチック基板は、プラスチックフィルム100からなってもよく、フィルムはそれ自体が空気や水分などを含有し、また通気性または透湿性が高いため、外気またはフィルム自体から液晶層または有機発光素子層へ空気や水分などが浸透して気泡が発生し、或いは水分および酸素によって液晶および有機発光素子などが酸化して表示装置の寿命減少および劣化が発生するおそれがある。このために、プラスチック基板の内面または外面に単層または多層として無機物層を形成してガスおよび水分を遮断するバリア層として用いることができる。すなわち、外部から流入する空気または水分だけでなく、フィルム自体に含有された空気または水分も遮断することができる。
【0060】
その一例を
図9および
図10に示す。
図9はプラスチックフィルム100の下部に無機物層101を形成した一例を示し、
図10はプラスチックフィルム100の下部、および導電性物質が分散した樹脂層120の下面にそれぞれ無機物層101を形成した場合を示す。
勿論、上述したようにこのような無機物層なしでも導電性金属膜110や酸化膜111なども水分およびガスバリア層として有用でありうるが、より十分な水分およびガスバリア性を与えるための一具現例として無機物層101をさらに備えてもよい。
【0061】
無機物層101の形成にはSiOx、SiNx、AlxOy系の酸化物などを使用することができ、その形成方法には、限定があるのではないが、低温成膜法、高温成膜法、PECVDなどの公知の無機物蒸着方法を用いることができる。無機物層101の厚さは、特に限定されないが、金属膜層、有機物層および液晶層の酸化防止のためにガスおよび水分の透過度を低め且つ有機発光層の蒸着を容易にするため、10nm〜300nm程度であってもよい。また、無機物層は、平坦化層と共に2〜4層の多層として形成することもできる。
【0062】
こうして得られた本発明の具現例に係るプラスチック基板は、電子ペーパー表示素子およびディスプレイ装置素子などの基板として有用であり、これを下部基板として使用する場合、後面から入射した光の透過度を阻害することなく電気導電性は向上し、これにより明るい画像を実現することができる。
また、プラスチック基板の場合、導電性金属膜を形成して電極として用いるためには、プラスチックフィルム上に蒸着される導電性金属膜の厚さが厚くなり、これによりプラスチック基板のベンディングの際にプラスチック基板と金属層間の柔軟性の差による剥離、および金属層の亀裂を生じさせて電極の機能に損失を与えることができる。ところが、本発明の一具現例に係るプラスチック基板の場合、導電性金属膜と共に、導電性物質の分散した樹脂層を導入することにより、導電性金属膜の厚さをより薄くすることができ、プラスチックフィルム、フィルム上の導電性金属膜、および導電性金属膜上にのせる導電性物質の分散した樹脂層の樹脂により、ベンディングの際に発生する寸法安定性の差による導電性金属膜の剥離および亀裂を減少させることができるので、既存の導電性金属膜の単一電極層に比べてディスプレイおよび基板のベンディングに対する耐剥離性および耐均一性を向上させることができる。
【0063】
本発明の一具現例に係るプラスチック基板は、ディスプレイ用であって、好ましくは表面抵抗が2.5×10
6Ω/sq.以下であり、500nm波長の光透過度が50%以上である。
本発明の一具現例に係るプラスチック基板を下部基板として適用した平板ディスプレイ装置素子のうち液晶ディスプレイ装置素子の一例を
図11に示し、これを有機EL素子の基板として適用した一例を
図12および
図13に示すが、これに限定されるのではなく、特に
図13は透過型有機EL素子を示す。
【0064】
一方、このようなプラスチック基板は、透明電極フィルムとして有用でありうるが、この場合は特に導電性金属膜がITOまたはIZO薄膜であってもよい。
有機EL素子の製作の際には、Ag、Mg、BaまたはCaの含まれた導電性金属膜から電極層を形成して、Agの含まれた透明電極はアノードとして用い、CaまたはMgの含まれた透明電極はカソードとして用いることもできる。
【0065】
透明電極の断面の一例は、
図2に示したプラスチック基板において導電性金属膜110がフォトリソグラフィーおよびエッチングによってストライプ形状をするものであり、ストライプ形状の導電性金属膜110上に導電性物質の分散した樹脂層120が形成された以外は同様であるので、特に透明電極の一例を示さない。
透明電極フィルムに製造する場合、プラスチックフィルム上に導電性金属膜110を形成した後、フォトリソグラフィーおよびエッチングによって導電性金属膜をパターニングしてストライプ形状の金属膜を形成する。このように形成されたストライプ形状の金属膜は、透明電極としての役割をする。形成された金属電極上に導電性物質の分散した樹脂層を上述の方法で形成する。その後、加熱、硬化すると、透明電極フィルムを得ることができる。
【0066】
こうして得られる透明電極フィルムは、入射した光の透過度を阻害することなく導電性は向上し、これにより明るい画像を実現することができ、特に炭素ナノチューブのみから構成された電極フィルムに比べても高い光透過性を示すので、明るい画像の実現ができるという側面で有利である。
本発明の一具現例に係る透明電極フィルムは、電極として有用であるためには表面抵抗が700Ω/sq.以下であり、波長500nmの光透過度が50%以上であることが好ましい。
【0067】
本発明の他の一具現例に係るプラスチック基板は、
図2に示した構造を有することができ、但し、導電性金属膜を反射性の金属膜110で代替することができる。
反射性を考慮するとき、金属膜は、厚膜に形成されることが有利であるが、好ましくは10〜1000nmの厚さを有する。
反射性の機能に比べて透過性を向上させようとする場合、例えば透過型電子ペーパーおよび液晶表示装置素子に用いられる場合であれば、金属膜は、薄膜に形成されることが有利であるので、金属膜による透過度などの光学特性が低下することなく、プラスチックフィルム基板の表面に蒸着された金属膜により線膨張係数を低めるためには50〜300nmの厚さを有することが好ましい。
【0068】
金属膜の厚さがあまり厚くなると、反射性または導電性は増加するが、プラスチックフィルムのベンディングの際に亀裂が発生するおそれがある。
この際、金属膜としては、アルミニウム、チタニウム、銀、白金、マグネシウム、タンタリウムおよびパラジウムの中から選ばれた単独またはこれらの合金、或いはITO(Indium-Tin-Oxide)またはIZO(Indium-Zinc-Oxide)を含む膜からなる膜であってもよい。
【0069】
このような反射性金属膜を含む場合、透過度を阻害することなく、導電性を向上させ、ひいては反射性金属膜が電極としての機能を果たすことができる。特に、このような点において、反射性金属膜はITOたはIZO薄膜をアルミニウムまたはその合金、或いはマグネシウムまたはその合金からなる反射性金属膜の上部に含むものであってもよい。
このような反射性金属膜は、導電性の側面でも有利であり、ガス遮断性および/または水分遮断性を発現することにより、プラスチックフィルムがガスまたは水分によって変形することを抑制する機能も行うことができる。
【0070】
プラスチックフィルム上への反射性金属膜の形成は、スパッタリング、イオン蒸着、電気メッキまたは化学蒸着方式などを用いることができ、これに格別に限定があるのではない。
本発明の一具現例によれば、上述したようにプラスチックフィルムとして高耐熱性フィルムを使用するので、既存のプラスチック基材に比べて反射性金属膜の形成工程条件が殆ど限定されない。
【0071】
このようにプラスチックフィルム上に反射性の金属膜が形成された場合、これを内部付着反射材方式の形態で適用すると、例えば液晶表示装置の外部から入射した光がプラスチックフィルム上に形成された金属膜で拡散反射され、反射された光がプラスチックフィルムを透過しないため、視差が生じ難くなって画像ボケのない鮮明な画像を得ることができる。
【0072】
プラスチックフィルム上への金属膜の形成は、上述したようにスパッタリング、イオン蒸着、電気メッキまたは化学蒸着方式などを用いることができ、これに特に限定があるのではない。
反射性金属膜を含む本発明の一具現例に係るプラスチック基板の場合も、上述したように金属酸化膜層、化学的耐性層、無機物層などを含むことができる。
【0073】
こうして得られた本発明の一具現例に係る反射性金属膜を含むプラスチック基板は、電子ペーパー表示装置および平板ディスプレイ装置素子などの基板として有用であり、反射性金属膜なしで下部基板として使用する場合には、後面から入射した光の透過度を阻害することなく導電性は向上し、これにより透過型ディスプレイにおいて明るい画像を実現することができる。
【0074】
このように基板がプラスチックからなることにより反射板および透明電極基板の役割を行うことができるので、液晶表示装置が軽量化できる。
本発明の一具現例に係る反射性金属膜を含むプラスチック基板は、内部光源を有することなく、外部からの光を反射させて画像を実現する反射型電子ペーパーおよび液晶表示装置などの下部基板として有用である。
【0075】
もし金属膜をパターニング化する場合であれば、半透過型電子ペーパーおよび液晶表示装置などの下部基板としても有用であるので、その一例として、透明電極の画素部の周縁部に対応する部分には反射材からなる金属膜が残るようにパターンを形成し、画素部の中心部には金属膜の除去された部分が画素部の面積より小さくなるように(例えば画素部面積の10〜20%程度)位置を合わせた状態に形成させる。
【0076】
このようにパターン工程を追加してプラスチック基板を半透過型液晶表示装置にも使用することができる。すなわち、光源としてバックライトを使用する場合には、画素部に対応する反射材部分のうち、金属膜が存在しない部分(ウィンドウ)を光が透過することにより、画像を表示することができる。また、光源として外光を使用する場合には、画素部に対応する反射材部分のうち、金属膜が存在する部分で外光が反射されて画像を表示することができる。
【0077】
また、プラスチック基板の場合、反射性金属膜を形成して電極として用いるためには、プラスチックフィルム上に蒸着される反射性金属膜の厚さが厚くなり、これによりプラスチック基板のベンディングの際にプラスチック基板と金属層間の柔軟性の差による剥離および金属層の亀裂を生じさせて電極の機能に損失を与えるおそれがある。ところが、本発明の一具現例に係るプラスチック基板の場合、反射性金属膜と共に、導電性物質が分散した樹脂層を導入することにより、反射性金属膜の厚さをより薄くすることができ、プラスチックフィルム、フィルム上の反射性金属膜、および反射性金属膜上にのせる導電性物質の分散した樹脂層の樹脂により、ベンディングの際に発生する寸法安定性の差による反射性金属膜の剥離および亀裂を減少させることができるので、既存の反射性金属膜の単一電極層に比べてディスプレイおよび基板のベンディングに対する耐剥離性および耐均一性を向上させることができる。
【0078】
一方、本発明によってプラスチックフィルム、金属膜、保護層および透明電極層を含むプラスチック基板を製造する方法には、格別に限定があるのではなく、その一例としては、プラスチックフィルムのためのポリイミド前駆体溶液を準備する工程と、前記前駆体溶液中の前駆体の一部を少なくとも部分的に閉環、縮合、架橋または重合することにより、部分的に硬化した中間体を含有する溶液を製造する工程と、部分的に硬化した中間体を含有する溶液に基づいて塗布液を製造する工程と、塗布液を被塗物上に塗布する工程と、塗布液を加熱して完全に硬化させることにより、プラスチックフィルムを収得する工程と、前記樹脂を用いて金属膜の表面平坦化のための保護層(平坦化層)を形成する工程と、金属膜の表面上に導電性物質を含む樹脂層を形成して透明電極層とする工程とを含むことができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。ところが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<プラスチックフィルムの製造>
製造例1
まず、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)、ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BPDA)および2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6−FDA)をジメチルアセトアミド中で公知の方法にて縮合することにより、ポリイミド前駆体溶液(固形分20%)を得た。この反応過程を下記反応式1に示した。
(反応式1)
【0080】
【化1】
その後、このポリイミド前駆体溶液300gを前記公知の工程によって化学硬化剤として無水酢酸(SAMCHUN社)およびピリジン(SAMCHUN社)をそれぞれ2〜4当量添加した後、ポリアミド酸溶液を20〜180℃範囲内の温度で1〜10℃/min速度で昇温させながら2〜10時間加熱してポリアミド酸溶液を一部イミド化して硬化させることにより、部分的にイミド化した(部分的に硬化した)中間体を含有する溶液を製造した。
【0081】
下記反応式2は、ポリイミドの前駆体を加熱してポリイミド膜を得る過程を示したもので、本発明の実施形態では、前駆体溶液を完全にイミド化させてポリイミドにするのではなく、前駆体のうち、所定の比率分だけをイミド化させたものを用いるようにした。
(反応式2)
【0082】
【化2】
さらに具体的に説明すると、ポリイミド前駆体溶液を所定の条件で加熱攪拌することにより、ポリイミド前駆体のアミド基の水素原子とカルボキシル基との間で脱水閉環することにより、下記化学式1に示すように、反応式2に示すように反応による中間体部の形体Bおよびイミド部の形体Cが生成される。また、分子鎖の中には脱水が完全に起こっていない形体A(ポリイミド前駆体部)も存在する。
【0083】
すなわち、ポリイミド前駆体が部分的にイミド化した分子鎖の中には、下記化学式1に示すように、形体A(ポリイミド前駆体部)、形体B(中間体部)および形体C(イミド部)の構造が混在している。
【0084】
[化学式1]
【化3】
したがって、前記構造が混在しているイミド化溶液30gを水300gに投入して沈澱させ、沈澱した固形分を濾過および粉砕工程を経て微細粉末化した後、80〜100℃の真空乾燥オーブンで2〜6時間乾燥させることにより、約8gの樹脂固形分粉末を得た。前記の工程を経ながら、[形体A]のポリイミド前駆体部は[形体B]または[形体C]に転換し、この樹脂固形分を重合溶媒としてのDMAcまたはDMF32gに溶解させて20wt%のポリイミド溶液を得た。これを40〜400℃の温度範囲で1〜10℃/minの速度で昇温させながら2〜8時間加熱して厚さ50μmおよび100μmのポリイミドフィルムを得た。
このポリイミド前駆体が部分的にイミド化した状態を反応式で表示すると、反応式3のとおりである。
(反応式3)
【0085】
【化4】
例えば、前述した条件の下で、前駆体の45〜50%程度がイミド化して硬化する。前駆体の一部がイミド化するイミド化率は、加熱温度や時間などを変更することにより容易に調節することができ、30〜90%程度とすることが好ましい。
また、このポリイミド前駆体の一部をイミド化させる工程では、ポリイミド前駆体が脱水閉環してイミド化するときに水が発生し、この水がポリイミド前駆体のアミドの加水分解または分子鎖の切断などを起こして安定性を低下させるおそれがあるので、前記ポリイミド前駆体溶液の加熱の際にトルエンまたはキシレンなどを用いた共沸(azeotropic)反応を追加し或いは前述した脱水剤の揮発によって除去する。
【0086】
次に、塗布液を製造する工程の一例について説明する。まず、部分的に硬化した中間体をポリイミド前駆体の製造の際に使用した溶剤に溶液100重量部、ポリイミド前駆体20〜30重量部の割合で均一塗布液を製造する。
しかる後に、前記樹脂溶液をガラスまたはSUSなどのフィルム製膜用被塗布板にスピンコーティングまたはドクターブレードを用いてキャスティングした後、前述した高温乾燥工程を介して厚さ50μmのフィルムを製膜した。この際、製膜されたフィルムはフィルム片面の垂直/水平軸を基準としていずれか一面のみが延伸する工程を経ないことにより、フィルム全体面において同一の屈折率で形成された。
【0087】
製造例2
反応器として攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた100mLの3口丸底フラスコに窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)34.1904gを充填した後、反応器の温度を0°に低め、しかる後に、6−HMDA4.1051g(0.01mol)を溶解してこの溶液を0℃に維持した。ここに6−FDA4.4425g(0.01mol)を添加し、1時間攪拌して6−FDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であった。その後、溶液を常温に放置して8時間攪拌した。この際、23℃における溶液粘度2400cpsのポリアミド酸溶液を得た。
【0088】
反応が終了した後、得られたポリアミド酸溶液をガラス板でドクターブレードを用いて厚さ500μm〜1000μmにキャスティングした後、真空オーブンを用いて40℃で1時間、60℃で2時間乾燥させてセルフスタンディングフィルム(Self standing film)を得た後、高温のファーネスオーブンを用いて5℃/minの昇温速度にて80℃で3時間、100℃で1時間、200℃で1時間、300℃で30分間加熱することにより、厚さ50μmのポリイミドフィルムを得た。
【0089】
製造例3
製造例2でN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)32.2438gに6−HMDA2.87357g(0.007mol)を溶解させた後、4−DDS0.7449g(0.003mol)を投入して完全に溶解させ、しかる後に、6−FDA4.4425g(0.01mol)を添加し、1時間攪拌して6−FDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であった。その後、溶液を常温に放置して8時間攪拌した。この際、23℃における溶液粘度が2300cpsのポリアミド酸溶液を得た。
【0090】
その後、製造例2と同一の方法でポリイミドフィルムを製造した。
製造例4
製造例2でN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)32.4623gに6−HMDA4.1051g(0.01mol)を溶解させ、6−FDA3.1097g(0.007mol)を投入した後、TDA0.90078g(0.003mol)を投入して1時間攪拌することにより、6−FDAおよびTDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であった。その後、溶液を常温に放置して8時間攪拌した。この際、23℃における溶液粘度が2200cpsのポリアミド酸溶液を得た。
【0091】
その後、製造例2と同一の方法でポリイミドフィルムを製造した。
製造例5
製造例2でN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)29.4632gにAPB−133 2.9233g(0.01mol)を溶解させ、6−FDA 4.4425g(0.01mol)を投入した後、1時間攪拌して6−FDAを完全に溶解させた。この際、固形分の濃度は20重量%であった。その後、溶液を常温に放置して8時間攪拌した。この際、23℃における溶液粘度が1200cpsのポリアミド酸溶液を得た。
【0092】
その後、製造例2と同一の方法でポリイミドフィルムを製造した。
製造例1〜5から得られたポリイミドフィルムに対して物性を次のように測定して、下記表1に示した。
(1)透過度および色座標
製造されたフィルムをUV分光計(Varian社、Cary100)を用いて可視光線透過度を測定した。
【0093】
また、製造されたフィルムの色座標をUV分光計(Varian社、Cary100)を用いてASTM E 1347−06規格に準拠して測定し、光源(Illuminant)はCIE D65による測定値を基準とした。
(2)黄色度
ASTM E313規格に準拠して黄色度を測定した。
【0094】
(3)線膨張係数(CTE)
TMA(TA Instrument社、Q400)を用いてTMA法に基づいて50〜250℃での平均線膨張係数を測定した。
【0095】
【表1】
【0096】
実施例1〜10および比較例1〜7(プラスチック基板の製造の例)
製造例1〜5から得られたそれぞれのプラスチックフィルム(厚さ50μm)上に、導電性金属を蒸着して導電性金属膜を形成させ、ここに炭素ナノチューブ(SWNT、CNI社)を透明ポリイミド樹脂の固形分100重量部に対して0.001〜1重量部で分散させたポリイミドワニス(この際、ポリイミド組成は製造例1〜製造例5から得られるポリアミド酸組成を使用)をキャスティングまたはスプレーなどの方法で薄膜に塗布することにより、炭素ナノチューブの分散した樹脂層を形成した。別の発明の具現例では、前記で製造されたCNTが分散した樹脂層を形成するにおいて、ポリイミド樹脂の固形分含量100重量部に対して5〜25重量部のITO粉末を追加混合分散させて樹脂層を形成した(実施例9〜10)。
【0097】
具体的な金属膜層の種類および厚さ、炭素ナノチューブまたはITO粉末が分散した樹脂層中の炭素ナノチューブまたはITO粉末の含量および厚さなどは、下記表2に示した。
【0098】
【表2】
【0099】
実験例1
実施例1〜10および比較例1〜7から得られたプラスチック基板に対して次のように評価し、その結果を表3に示した。
(1)光学特性
製造されたプラスチック基板に対してUV分光計(Varian社、Cary100)を用いて可視光線透過度を測定した。
【0100】
下記表3の結果より、比較例を参照すると、表面抵抗の減少のためにCNT含量を増やした場合、透過度の急激な減少が見える。これにより、CNTのみを使用する電極の場合、ディスプレイから要求する表面抵抗を達成することができないことが分かる。
このため、本発明の具現例によって導電性金属膜上にCNT透明電極を形成する場合、既存のCNTからなる電極に比べてCNTの必要量が減少して低い表面抵抗を示しながらも、70%以上の高い光透過性を有するから、ディスプレイ用透明電極への使用が可能であることが分かる。
【0101】
また、CNTのみを用いた透明電極の場合、CNTの分散程度によって電極表面上の抵抗における有意差が多く影響を受け、これは分散を始めとした製造工程上の難しさを引き起こすおそれがある反面、本発明の具現によって製造された透明電極の場合、金属層により一定の電極機能を基本的に行うことができるので、これはディスプレイ製作において電極機能の損失による画像美具現の可能性を減少させる効果を持つことができる。
【0102】
(2)表面抵抗
表面抵抗の測定は、高抵抗計(Hiresta−UP MCT−HT450(Mitsuibishi Chemical Corporation)、測定範囲:10×10
5〜10×10
15)および低抵抗計(CMT−SR 2000N(Advanced Instrument Technology;AIT社)、4−Point Probe System、測定範囲:10×10
3〜10×10
15)を用いて、10回測定して平均値を求めた。
【0103】
下記表3の結果より、本発明の一具現例に係る透明電極の場合、同じCNTの量を基準とするとき、CNT層のみを有する透明電極(比較例5〜7)に比べてさらに低い表面抵抗の実現が可能であることが分かる。したがって、CNTのみの透明電極に比べて透過度に優れた透明電極の実現が可能であることが分かる。
(3)プラスチック基板の亀裂発生の有無
プラスチック基板の場合、導電性金属膜を形成して電極として用いるためにはプラスチックフィルム上に蒸着される導電性金属膜の厚さが厚くなり、これによりプラスチック基板のベンディングの際にプラスチック基板と金属層間の柔軟性の差による剥離および金属層の亀裂を起こして電極の機能に損失を与えるおそれがある。ところが、本発明の一具現例に係るプラスチック基板の場合、導電性金属膜と共に、導電性物質が分散した樹脂層を導入することにより、導電性金属膜の厚さをより薄くすることができ、プラスチックフィルム、フィルム上の導電性金属膜、および導電性金属膜上にのせる導電性物質の分散した樹脂層の樹脂により、ベンディングの際に発生する寸法安定性の差による導電性金属膜の剥離および亀裂に対する問題点を減少させることができるので、既存の導電性金属膜の単一電極層に比べてディスプレイおよび基板のベンディングに対する耐剥離性および耐均一性が向上できる。
【0104】
これに関連しては、具体的な評価結果を表3に記載しない。
(4)ガスおよび水分遮断特性
−酸素透過度(OTR)
Mocon Oxytran 1000を用いてASTM D−39859に準拠して23℃、0%RHで10回測定して平均値を求めた。
【0105】
−水分透過度(WVTR)
Mocon Aquatran Model1を用いてASTM F−1249に準拠して38℃、90%RHで10回測定して平均値を求めた。
フィルムは、それ自体が空気や水分などを含有し、通気性または透湿性が高いため、外気またはフィルムから液晶層または有機発光素子層へ空気や水分などが浸入して気泡が発生し、或いは水分および酸素によって液晶および有機発光素子などが酸化して表示装置の寿命減少および劣化が発生するおそれがある。その解決方案として、基板として使用するフィルムの内面または/および外面に単層無機物層または有機層/無機物層の多層を形成してガスおよび水分を遮断するバリア層を形成することができる。すなわち、外気の空気または水分だけでなく、フィルム自体に含有される空気または水分も遮断することができる。
【0106】
ところが、本発明のプラスチック基板に含まれる導電性金属膜は、基板となるプラスチックフィルムの上部に形成されて電極の役割だけでなく、ガスバリア層の役割を行って表示素子の製作費用を減らすことができ、且つ寿命を向上させることができることを表3の酸素透過率および水分透過率の結果から確認することができる。
【0107】
【表3】
【0108】
実施例11〜23および比較例8〜14(透明電極フィルムの製造の例)
製造例1〜5から得られたそれぞれのプラスチックフィルム上に、ITO蒸着膜またはIZO蒸着膜を形成させた後、フォトリソグラフィーおよびエッチングによってITO蒸着層またはIZO蒸着層をパターニングしてストライプ形状の透明電極を形成した。
ITOまたはIZO透明電極上に炭素ナノチューブ(SWNT、CNI社)を透明ポリイミド樹脂固形分の0.001〜1重量%で分散させたポリイミドワニス(この際、ポリイミド組成は製造例1〜製造例5から得られるポリアミド酸組成を使用)をキャスティングまたはスプレーなどの方法で薄膜に塗布することにより、炭素ナノチューブの分散した樹脂層を形成した。別の発明の具現例では、前記で製造されたCNTが分散した樹脂層を形成するにおいて、ポリイミド樹脂の固形分含量100重量部に対して5〜25重量部のITO粉末を追加混合分散させて樹脂層を形成した(実施例20および21)。
【0109】
具体的なITOまたはIXO蒸着膜の厚さ、炭素ナノチューブが分散した樹脂層の炭素ナノチューブ含量、ITO粉末含量および厚さなどは、下記表4に示す。
【0110】
【表4】
【0111】
実験例2
実施例11〜23および比較例8〜14から得られた透明電極フィルムに対して次のように評価し、その結果を下記表5に示した。
(1)光学特性
製造された透明電極フィルムに対してUV分光計(Varian社、Cary100)を用いて可視光線透過度を測定した。
【0112】
表5の結果から分かるように、ITOまたはIZO蒸着層の蒸着厚さが厚くなるにつれて表面抵抗が減少し、透過度が上昇する。しかし、ITO層(またはIZO層)の厚さが200〜300nm以上に厚くなる場合、電極フィルムを曲げると、ITO層(またはIZO層)とプラスチックフィルム間の剥離およびITO層(IZO層)の亀裂を誘発して性能が阻害され、厚いITOを有する電極の場合、ベンディング自体が難しくなり或いは基板の柔軟性が極めて小さくなり、本発明の目的の一つである柔軟性(Flexibility)は減少するおそれがある。
【0113】
よって、本発明の具現例によってITO層(またはIZO層)上に導電性物質分散樹脂層を形成する場合、ITO層(またはIZO層)のみを有する透明電極フィルムに比べて同じ表面抵抗の実現に必要なITO層(またはIZO層)の厚さを減少させることができる。この際、導電性物質分散樹脂層の導電性物質の量が極小量であっても、ITO層(またはIZO層)の存在により、実現しようとする表面抵抗に到達することができるので、導電性物質分散樹脂層の形成による透過度の阻害が極めて小さく、導電性物質分散樹脂層も高透過性の無色樹脂なので、ITO層(またはIZO層)のみからなる厚膜に比べて類似な水準の透過度を示すことができる。また、後述するように、本発明の具現例によって導電性物質分散樹脂層を含む透明電極フィルムはITO層(またはIZO層)の剥離および亀裂に対する補正機能も可能にする。
【0114】
(2)表面抵抗
表面抵抗の測定は、高抵抗計(Hiresta−UP MCT−HT450(Mitsuibishi Chemical Corporation)、測定範囲:10×10
5〜10×10
15)および低抵抗計(CMT−SR 2000N(Advanced Instrument Technology;AIT社)、4−point Probe System、測定範囲:10×10
−3〜10×10
5)を用いて10回測定することにより、平均値を求めた。
【0115】
下記表5に示すように、本発明の具現例に係る透明電極の場合、同じCNTの量を基準とするとき、CNTのみの透明電極に比べてさらに低い表面抵抗の実現が可能である。したがって、CNTのみの透明電極に比べて透過度に優れた透明電極の実現が可能である。
(3)ITOベンディング
表5の結果によれば、ITOの蒸着厚さが厚くなるにつれて、表面抵抗が減少し且つ透過度が上昇することが分かる。ところが、ITO層の厚さ増加に伴い、電極フィルムを曲げると、ITO層に亀裂を誘発することにより性能が阻害されるため、厚いITOを有する電極の場合、ベンディング自体が難しいか、或いは基板の柔軟性が極めて小さくなって可撓性(Flexibility)は減少するおそれがある。ところが、本発明の一具現例によってITO蒸着層(またはIZO蒸着層)上に導電性物質の分散した樹脂層を含む場合、相対的に必要な表面抵抗および光透過度を達成するためのITO層の厚さが厚くなり、既存構造の電極フィルムに比べて透明電極の柔軟性が増加するうえ、導電性物質の分散した樹脂層の樹脂によりITO層(またはIZO層)は上/下から柔軟な高分子樹脂で保護されて既存のITO電極に比べて曲げによる亀裂の発生率が減少することが分かる。
【0116】
上述したように、本発明の一具現例によれば、電気伝導度に優れるうえ、厚さを薄くしても透過度を優秀にすることができ、既存のCNT或いはITOからなる単層の透明電極に比べて低価の材料で薄膜および優れた透過性の透明電極を得ることができる。
また、Ag、Mg、Baなどは金属であるので、能動マトリクス(Active Matrix)パネル製作の際にTFTなどの素子との接合部分でオーム接触(ohmic contact)を容易にすることができ、有機EL素子の製作の際には、仕事関数の高いAgが含まれた透明電極はアノードとして用い、CaまたはMgの含まれた透明電極はカソードとして用いることができるという利点がある。
【0117】
【表5】
【0118】
参考実施例1〜6および比較試料
製造例1〜5から得られたそれぞれのプラスチックフィルム(厚さ50μm)上に、下記表6のような反射性金属を蒸着して反射性金属膜を形成させ、形成された金属膜に対する反射度を測定した。
次に、反射特性の評価に使用した反射材の構造について説明する。
【0119】
まず、プラスチック基板上に、前述した製造方法によって、表面に金属膜を形成し、この金属膜上に透明プラスチック保護層または透明プラスチック樹脂を用いた電極層を形成することにより、プラスチック基板およびその上に形成された金属膜を含んでなるプラスチック基板を製造し、これを評価試料とした。
本反射特性の評価は、プラスチック基板において金属膜が反射型液晶表示装置の構造で透明保護層または透明電極層の下方に形成されることにより、外部光が液晶表示装置の前面部を介して透明保護層または透明電極層のポリイミド膜を透過した後、金属膜で拡散反射されるようにした。
【0120】
次に、反射材の輝度の測定に使用した測定計について説明する。
その一例を
図14に示す。反射板の形成されたプラスチック基板上の一定位置に輝度計を配置し、反射板の側面側に光源を配置した。光源から放出される入射光と反射光で形成される角度を入射角度(θ)として定義し、この光源は入射角度(θ)を可変させることを可能とするために、所定の位置へ移動することができるようになっている。光源として白色光を使用し、偏光フィルムは使用しない測定計を用いた。次いで、入射角度(θ)を7.4°〜35.6°の範囲に変更しながら光源から白色光を放出し、金属膜で反射された光の輝度を輝度計によって測定することにより、輝度の入射角度(θ)の依存性を調べた。
【0121】
また、セラミックタイプの標準白色拡散板を準備し、前述したような測定方法で標準白色拡散板で反射した光の輝度の入射角度(θ)の依存性を測定し、それを光反射輝度の基準値とした。
その後、プラスチック基板から得られた輝度値を標準白色拡散板の輝度値で割り、これに100をかけた値を求めた。すなわち、標準白色拡散板の輝度を100としたときのプラスチック基板の相対輝度値を求めた。
【0122】
その結果は下記表6のとおりである。
【0123】
【表6】
【0124】
前記表6の結果より、金属膜の形成によるプラスチック基板における反射特性の評価結果について説明すると、入射角度(θ)が7.4°、17.7°、22.3°のときは比較試料と反射光の輝度とがほぼ同等であるが、標準白色拡散板に対しては2.2〜4.4倍程度の輝度が得られた。
このように、本発明の実施形態に係る反射材の製造方法で製造されたプラスチック基板は、大部分の光の入射角度で標準白色拡散板より高い輝度が得られると同時に、入射角度(θ)の大きい入射光、すなわち金属膜の側面側における入射光の反射輝度を比較試料より高くすることが分かる。
【0125】
または、この評価がプラスチック基板において金属膜上に透明電極層を形成したものの状態、すなわち入射光がポリイミド膜を透過して拡散反射される構造と評価したにも係らず、標準白色拡散板より高い光反射輝度が得られるので、ポリイミド膜は透明性が高いため、このような構造でも何の問題もないことを確認することができた。
また、金属膜側から光を照らした形態においても、本評価結果と同等以上の反射特性を有することは言うまでもない。
【0126】
また、本発明のプラスチック基板は、ポリイミド膜の全体にわたって屈折率が同一であるから、入射光がポリイミド膜を透過して拡散反射されるように配置される場合にも、光の偏光消滅効果の発生が少ない反射材とすることができる。
すなわち、特に明記してはいないが、前述した測定計において光源側と輝度計側に互いに偏光軸が平行な偏光フィルムを配置した場合の輝度(La)と、光源側と輝度計側に互いに偏光軸が垂直な偏光フィルムを配置した場合の輝度(Lb)を測定し、La/Lb値(コントラスト比)を算出すると、樹脂内で屈折率が異なる従来の反射材より大きいLa/Lb値を得ることができる。これは本発明に係るプラスチック基板が偏光消滅効果発生の少ない反射材であることを意味する。