特許第5650149号(P5650149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5650149
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】部品移載装置および部品移載方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20141211BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   H05K13/04 Z
   H05K13/08 Q
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-61914(P2012-61914)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-197262(P2013-197262A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2013年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮介
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−071830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
H05K 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着ノズルにより真空吸着される部品を撮像部で撮像して前記部品の吸着状態を確認した後、前記部品を吸着する前記吸着ノズルを部品搭載位置の上方位置に移動させ、前記部品搭載位置の上方位置から前記吸着ノズルを下降させて前記部品を前記部品搭載位置に移載する部品移載装置において、
入力される電源電圧の低下により前記吸着ノズルに与えられる真空圧が低下するのを検知する検知部と、
前記撮像部により吸着状態が撮像された前記部品を真空吸着する前記吸着ノズルが前記部品搭載位置の上方位置に移動するまでの間に前記検知部により真空圧の低下が検知されると、前記吸着ノズルを前記撮像部に移動させて前記部品を再度撮像して前記部品の吸着状態を再確認した上で前記吸着ノズルを前記部品搭載位置の上方位置に移動させる制御部と
を備え
前記制御部は、前記吸着ノズルの下降中に前記検知部により真空圧の低下が検知されたとしても、前記吸着ノズルの下降を継続させて前記部品搭載位置への前記部品の移載を行うことを特徴とする部品移載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部品移載装置であって、
前記検知部は電源電圧を監視して電源電圧の低下を検知する検知回路である部品移載装置。
【請求項3】
請求項1に記載の部品移載装置であって、
前記検知部は真空圧の供給源から前記吸着ノズルに至る供給経路上に設けられて真空圧を検知する圧力センサである部品移載装置。
【請求項4】
吸着ノズルにより真空吸着される部品を撮像部で撮像して前記部品の吸着状態を確認した後、前記部品を吸着する前記吸着ノズルを部品搭載位置の上方位置に移動させ、前記部品搭載位置の上方位置から前記吸着ノズルを下降させて前記部品を前記部品搭載位置に移載する部品移載方法であって、
前記撮像部により吸着状態が撮像された前記部品を真空吸着する前記吸着ノズルが前記部品搭載位置の上方位置に移動するまでの間、前記部品移載装置に入力される電源電圧の低下により前記吸着ノズルに与えられる真空圧が低下するのを監視する工程と、
真空圧の低下が検知されると、前記吸着ノズルを前記撮像部に移動させて前記部品を再度撮像して前記部品の吸着状態を再確認する工程と、
再確認された前記部品を真空吸着する前記吸着ノズルを前記部品搭載位置の上方位置に移動させる工程と
前記吸着ノズルを下降させて前記部品を前記部品搭載位置に移載する工程と
を備え、
前記吸着ノズルを下降させて前記部品を前記部品搭載位置に移載する工程では、前記吸着ノズルの下降中に真空圧の低下が検知されたとしても、前記吸着ノズルの下降を継続させて前記部品搭載位置への前記部品の移載を行うことを特徴とする部品移載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸着ノズルにより真空吸着される部品を撮像した後、当該吸着ノズルを部品搭載位置の上方位置に移動させ、部品搭載位置に部品を移載する部品移載装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品などの部品をハンドリングする部品移載装置として、例えば表面実装機(部品実装装置)やICハンドラー等が従来から数多く提供されている。例えば表面実装機では、テープやトレイなどの部品収容部に収容された電子部品を吸着ノズルの下方端部で吸着し、その吸着ノズルを基板の部品搭載位置の上方位置まで移動させた後、部品搭載位置に向けて降下させることによって、電子部品が基板上面に着地されて基板の部品搭載位置に搭載される。また、ICハンドラーでは、トレイ(部品収容部)に収容された電子部品を吸着ノズルの下方端部で吸着し、その吸着ノズルを検査用ソケット内の部品搭載位置に向けて降下させることによって、電子部品が検査用ソケットに着地されて部品搭載位置に搭載される。
【0003】
このように構成された装置は、工場から供給される電源、例えば200[V]の交流電源と接続されており、停電の影響は不可避である。そこで、電源電圧を監視し、停電時にバックアップ電源により装置を駆動させて、停電発生時に実装を行っていた部品の実装動作を完了させた後で実装動作を停止させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−363506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、停電発生時において実装動作を完了させるためには大容量のバックアップ電源を準備しておく必要があり、現実的な対応策とは言えない。また、停電の多くは、瞬間的な停電(いわゆる「瞬停」と称される)もしくは電圧の瞬間的な低下(いわゆる「瞬低」と称される)であり、その度に装置を停止させることは生産性を考慮すると必ずしも妥当であるとは言えない。特に電源事情が不安定な工場で上記装置を使用する場合、生産性の低下は免れない。
【0006】
その一方で、瞬停や瞬低(以下、これらを総称して「電源電圧の低下」という)が発生しているにも関わらず、これを無視して通常動作を継続することは不適切である。その主たる理由のひとつが電源電圧の低下による真空圧の低下である。すなわち、表面実装機やICハンドラー等の部品移載装置では、吸着ノズルが部品を真空吸着した状態で部品搭載位置の上方位置に移動させられる。そして、この移動中に電源電圧の低下が発生し、吸着ノズルに与えられる真空圧が低下すると、吸着ノズルによる部品の吸着姿勢が変化することがある。特に、吸着ノズルが移動している際には、真空圧の低下により真空吸着力が弱まると、吸着姿勢の変化が生じやすく、このような変化が生じたまま部品搭載位置に移載すると、移載ずれや部品落下などが発生することがある。例えば表面実装機では、移載ずれは、実装ずれの主要因の一つであるのみならず、部品落下による未実装や誤実装を引き起こす要因ともなり、信頼性の低下を引き起こす。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、信頼性を確保しながら高い生産性で部品を移載する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、吸着ノズルにより真空吸着される部品を撮像部で撮像して部品の吸着状態を確認した後、部品を吸着する吸着ノズルを部品搭載位置の上方位置に移動させ、部品搭載位置の上方位置から吸着ノズルを下降させて部品を部品搭載位置に移載する部品移載装置および部品移載方法であって、上記目的を達成するために、次のように構成している。すなわち、この発明にかかる部品移載装置は、入力される電源電圧の低下により吸着ノズルに与えられる真空圧が低下するのを検知する検知部と、撮像部により吸着状態が撮像された部品を真空吸着する吸着ノズルが部品搭載位置の上方位置に移動するまでの間に検知部により真空圧の低下が検知されると、吸着ノズルを撮像部に移動させて部品を再度撮像して部品の吸着状態を再確認した上で吸着ノズルを部品搭載位置の上方位置に移動させる制御部とを備え、制御部は、吸着ノズルの下降中に検知部により真空圧の低下が検知されたとしても、吸着ノズルの下降を継続させて部品搭載位置への部品の移載を行うことを特徴としている。また、この発明にかかる部品移載方法は、撮像部により吸着状態が撮像された部品を真空吸着する吸着ノズルが部品搭載位置の上方位置に移動するまでの間、部品移載装置に入力される電源電圧の低下により吸着ノズルに与えられる真空圧が低下するのを監視する工程と、真空圧の低下が検知されると、吸着ノズルを撮像部に移動させて部品を再度撮像して部品の吸着状態を再確認する工程と、再確認された部品を真空吸着する吸着ノズルを部品搭載位置の上方位置に移動させる工程と、吸着ノズルを下降させて部品を部品搭載位置に移載する工程とを備え、吸着ノズルを下降させて部品を部品搭載位置に移載する工程では、吸着ノズルの下降中に真空圧の低下が検知されたとしても、吸着ノズルの下降を継続させて部品搭載位置への部品の移載を行うことを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、部品移載装置に入力される電源電圧の低下が発生した場合であっても、装置を停止させるのではなく、その時点で吸着ノズルが撮像部に移動させられて部品の吸着状態が再度撮像される。これによって、電源電圧の低下時に吸着ノズルによる部品の吸着状態が変化したか否かを正確に判断することができる。そして、吸着状態に変化がない、あるいは許容範囲内に収まっており、部品の吸着状態が再確認された後、当該吸着ノズルが部品搭載位置の上方位置に移動させられ、移載動作が継続される。これによって、信頼性を確保しながら生産性を向上させることが可能となっている。
【0010】
ここで、電源電圧の低下により吸着ノズルに与えられる真空圧が低下したことを検知する機能を有する検知部としては、例えば電源電圧を監視して電源電圧の低下を検知する検知回路で構成してもよい。また、吸着ノズルは真空圧の供給源からの供給を受けて部品を吸着するため、供給源から吸着ノズルに至る供給経路上に圧力センサを設け、これの圧力センサを上記検知部として機能させてもよい。このように検知部を設けることで真空圧の低下を的確に検知し、その検知結果に基づいて迅速な対応を講じることが可能となる。
【0011】
なお、上記した発明にかかる部品移載装置および部品移載方法では、部品搭載位置の上方位置から吸着ノズルを下降させて部品を部品搭載位置に移載しており、この吸着ノズルの下降中に電源電圧の低下が発生することがある。この場合、部品を再度撮像して吸着状態を再確認してもよい。ただし、これを行うと下降中の吸着ノズルを停止させた直後に上昇させることになり、この移動方向の反転時に発生する衝撃で部品が吸着ノズルから離れ易くなる。したがって、吸着ノズルの下降中に検知部により真空圧の低下が検知されたとしても、吸着ノズルの下降を継続させて部品搭載位置への部品の移載を行うのが合理的である。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、部品搭載位置の上方位置への吸着ノズルの移動中に電源電圧の低下による真空圧の低下が発生した際には吸着ノズルを撮像部に移動させて部品を再度撮像して部品の吸着状態を再確認した上で当該吸着ノズルを部品搭載位置の上方位置に移動させている。このため、高い信頼性を確保しつつ生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかる部品移載装置の第1実施形態である部品実装装置の概略構成を示す平面図である。
図2図2は、図1に示す部品実装装置の部分正面図である。
図3図1の部品実装装置が備える実装ヘッドのノズル近傍を示す部分側面図である。
図4図1に示す部品実装装置の主要な電気的構成を示すブロック図である。
図5】停電検知部の構成および動作を示す図である。
図6図1で実行される部品実装の動作を模式的に示す図である。
図7図1で実行される部品実装の動作を模式的に示す図である。
図8図1に示す装置で実行される停電割り込み処理を示すフローチャートである。
図9図1に示す装置で実行される瞬停時での装置各部の動作を示す図である。
図10図1に示す装置による部品実装処理を示すフローチャートである。
図11図1に示す装置による部品吸着処理を示すフローチャートである。
図12図1に示す装置による部品装着処理を示すフローチャートである。
図13】本発明にかかる部品移載装置の第2実施形態における部品実装動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明にかかる部品移載装置の第1実施形態である部品実装装置の概略構成を示す平面図である。また、図2は、図1に示す部品実装装置の部分正面図である。また、図3は、図1の部品実装装置が備える実装ヘッドのノズル近傍を示す部分側面図である。さらに、図4は、図1に示す部品実装装置の主要な電気的構成を示すブロック図である。なお、図1ないし図3では、各図の方向関係を明確にするために、XYZ直角座標軸が示されている。
【0015】
この部品実装装置1では、基台11上に基板搬送機構2が配置されており、基板Sを所定の搬送方向Xに搬送可能となっている。より詳しくは、基板搬送機構2は、基台11上において基板Sを図1の右側から左側へ搬送する一対のコンベア21、21を有している。そして、コンベア21、21は制御ユニット8の駆動制御部82からの動作指令に応じて作動することで、基板Sを搬入し、所定の実装作業位置(同図に示す基板Sの位置)で停止させ、図略の保持装置で基板Sを固定し保持する。そして、部品供給部4から供給される電子部品Pがヘッドユニット6に具備された実装ヘッド61により基板Sに移載される。また、基板Sに搭載すべき部品Pの全部を基板Sに搭載し終えると、基板搬送機構2は基板Sを搬出する。なお、基台11上には、部品認識カメラ7が配設されている。この部品認識カメラ7は、照明部およびCCD(Charge Coupled Device)カメラなどから構成されており、ヘッドユニット6の各実装ヘッド61の吸着ノズル611に吸着保持された部品Pをその下側から撮像する。このため、その撮像画像に基づき吸着ノズル611による部品Pの吸着状態を検査することが可能となっている。
【0016】
このように構成された基板搬送機構2の前方側(+Y軸方向側)および後方側(−Y軸方向側)には、部品供給部4が配置されている。これらの部品供給部4は多数のテープフィーダ41を備えている。また、各テープフィーダ41には、部品Pを収納・保持したテープを巻回したリール(図示省略)が配置されており、部品Pをヘッドユニット6に供給可能となっている。すなわち、各テープには、集積回路(IC)、トランジスタ、コンデンサ等の小片状のチップ部品Pが所定間隔おきに収納、保持されている。そして、テープフィーダ41がリールからテープをヘッドユニット6側に送り出すことによって該テープ内の部品Pが間欠的に部品吸着位置に繰り出され、その結果、ヘッドユニット6の実装ヘッド61に装着された吸着ノズル611によって部品Pのピックアップが可能となる。
【0017】
このヘッドユニット6は部品Pを実装ヘッド61の吸着ノズル611により吸着保持したまま基板Sに搬送するとともに、ユーザより指示された部品搭載位置に移載するものである。そして、前方側でX軸方向に一列に配列された6個の実装ヘッド61Fと、後方側でX軸方向に一列に配列された6個の実装ヘッド61Rとの合計12個の実装ヘッド61を有している。すなわち、図1および図2に示すように、ヘッドユニット6では、鉛直方向Zに延設された実装ヘッド61Fが6本、X軸方向(基板搬送機構2による基板Sの搬送方向)に等ピッチで列状に設けられている。また、実装ヘッド61Fに対して後方側(−Y軸方向側)にも、前列と同様に構成された後列が設けられている。なお、本実施形態では、実装ヘッド61Fと実装ヘッド61RとはX軸方向に半ピッチずれて配置されており、図1に示すように平面視でジグザグ状に配置されている。このため、Y軸方向から見ると、図2に示すように12本の実装ヘッド61は互いに重なり合うことなくX軸方向に一列に並んでいる。
【0018】
また、図3に示すように、各実装ヘッド61の先端部に装着された吸着ノズル611は圧力切替機構62を介して真空供給源、正圧源、及び大気のいずれかに連通可能とされており、制御ユニット8が圧力切替機構62をコントロールすることで吸着ノズル611に与える圧力を切り替え可能となっている。この実施形態では、真空吸引源として真空ポンプVPを有しており、圧力切替機構62の吸着バルブ(図示省略)を開成することで吸着ノズル611に真空圧を与えて該吸着ノズル611の下方端部(先端部)で部品Pの上面を吸着して部品を吸着保持する。また、圧力切替機構62の装着バルブ(図示省略)を開成することで吸着ノズル611へ正圧源からの正圧を与えて実装ヘッド61による部品Pの吸着保持を解除するとともに、正圧により部品Pを瞬時に基板Sに搭載する。そして、電子部品の搭載後、吸着ノズル611は大気開放とされる。このようにヘッドユニット6では制御ユニット8による真空吸着力及び正圧供給の制御により部品Pの着脱が可能となっている。
【0019】
また、本実施形態では、真空ポンプVPから圧力切替機構62に延びる配管に圧力センサ621が取り付けられており、圧力切替機構62に供給される真空圧を検知し、その検知結果を制御ユニット8に出力する。これによって、真空圧の変動を常時モニターして真空圧の低下を検知可能となっている。なお、本実施形態では、圧力切替機構62の近傍に圧力センサ621を配置しているが、圧力切替機構62に内蔵させてもよい。また、実装ヘッド61毎に圧力センサ621を設けるように構成してもよい。
【0020】
各実装ヘッド61はヘッドユニット6に対して図略のノズル昇降駆動機構により昇降(Z軸方向の移動)可能に、かつ図略のノズル回転駆動機構によりノズル中心軸回りに回転(図2および図3のR方向の回転)可能となっている。これらの駆動機構のうちノズル昇降駆動機構は吸着もしくは装着を行う時の下降位置(下降端)と、搬送を行う時の上昇位置(上昇端)との間で実装ヘッド61を昇降させるものである。一方、ノズル回転駆動機構は吸着ノズル611を必要に応じて回転させるための機構であり、回転駆動により部品Pを搭載時における所定のR軸方向に位置させることが可能となっている。なお、これらの駆動機構については、それぞれZ軸サーボモータ72、R軸サーボモータ73および所定の動力伝達機構で構成されており、制御ユニット8の駆動制御部82によりZ軸サーボモータ72およびR軸サーボモータ73を駆動制御することで各実装ヘッド61がZ方向およびR方向に移動させられる。
【0021】
また、ヘッドユニット6は、これらの実装ヘッド61で吸着された部品Pを部品供給部4と基板Sとの間で搬送して基板Sに実装するため、基台11の所定範囲にわたりX軸方向及びY軸方向(X軸及びZ軸方向と直交する方向)に移動可能となっている。すなわち、ヘッドユニット6は、X軸方向に延びる実装ヘッド支持部材63に対してX軸に沿って移動可能に支持されている。また、実装ヘッド支持部材63は、両端部がY軸方向の固定レール64に支持され、この固定レール64に沿ってY軸方向に移動可能になっている。そして、このヘッドユニット6は、X軸サーボモータ65によりボールねじ66を介してX軸方向に駆動され、実装ヘッド支持部材63はY軸サーボモータ67によりボールねじ68を介してY軸方向へ駆動される。このようにヘッドユニット6は実装ヘッド61に吸着された部品Pを部品供給部4から目的位置まで搬送可能となっている。
【0022】
さらに、ヘッドユニット6は、部品検査カメラ91を具備する。この部品検査カメラ91は、照明部およびCCDカメラなどから構成されており、基板Sに搭載された各電子部品の搭載状態を検査するために用いられる。具体的には、駆動制御部82がヘッドユニット6を適宜移動させることで、部品Pの搭載位置の上方に部品検査カメラ91を移動させる。そして、この状態で部品検査カメラ91の撮像した部品Pの画像が画像処理部84に転送される。画像処理部84は、転送されてきた部品Pの画像から、部品Pの吸着状態の良否を判定する。
【0023】
また、部品実装装置1には、作業者とのインターフェースとして機能するディスプレイ92および報知器93を備える。ディスプレイ92は、部品実装装置1の動作状態を表示する機能のほか、タッチパネルで構成されて作業者からの入力を受け付ける入力端末としての機能も有する。また、報知器93は、部品実装装置1で発生したエラー(異常)を作業者に報知するものであり、光によって報知する非常灯、ブザー音によって報知する非常ブザーあるいはこれらの組み合わせによって構成される。なお、これらディスプレイ92および報知器93に対する入出力の制御は、制御ユニット8の入出力制御部88によって実行される。
【0024】
ちなみに、部品実装装置1で発生し得るエラーは多種であるが、本実施形態では、特に電源電圧の低下による真空圧の低下によって吸着ノズル611が部品Pを吸着している状態が変化するという吸着状態変動エラーに着目している。つまり、「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、吸着状態変動エラーは実装ずれ、未実装や誤実装の原因となる。そこで、本実施形態では、停電検知部3を設けて電源電圧の低下を常時監視している。
【0025】
図5は停電検知部を示す図であり、同図(a)は停電検知部の構成を示すブロックであり、同図(b)は、電源電圧の供給が長時間にわたって停止される停電時の動作を示す図であり、同図(c)は瞬低時の動作を示す図であり、同図(d)は瞬停時の動作を示す図である。この停電検知部3は、フォトカップラ回路31、コンパレータ回路32および電圧低下判定回路33を有している。フォトカップラ回路31の一次側が部品実装装置1を設置した工場に設けられる200[V]の交流電源PSと接続されており、交流電源PSの電圧変化を反映した信号SG1を二次側よりコンパレータ回路32に出力する。こうしてフォトカップラ回路31により電圧変換された信号SG1を受けたコンパレータ回路32は比較電圧値(電圧低下判定の閾値となる電圧値)と比較し、その比較結果を2値で示す交流電源信号SG2を電圧低下判定回路33に出力する。この電圧低下判定回路33は、交流電源信号SG2の周期を計測する。電源電圧の低下が発生していない間においては例えば50[Hz]の交流電源PSを利用している場合には、交流電源信号SG2の周期は20[ms]の周期である。一方、交流電源PSの電圧が低下すると、交流電源信号SG2はLレベルのまま変化せず交流電源信号SG2に波形が現れない。そこで、電圧低下判定回路33は、交流電源信号SG2が一定時間T[ms](本実施形態ではT=20[ms])以上の間、波形が現れない場合、電圧低下判定回路33は、停電等が発生したと判定して出力信号SG3のレベルをLレベルからHレベルに切り替えて電源電圧の低下を入出力制御部88を介して主制御部85に報知する。
【0026】
このように構成された部品実装装置1全体の動作は、主制御部85によって統括的にコントロールされる。つまり、この主制御部85は、記憶部86に記憶されているプログラムやデータに基づいてバス87を介して制御ユニット8の各部と互いに信号のやり取りを行って、装置1全体を制御する。すなわち、記憶部86に記憶された生産用のプログラム861(生産プログラム)が主制御部85によって読み出される。そして、主制御部85がこのプログラム861に従って制御ユニット8の各部を制御することで、搬入されてくる基板Sに対して順番に部品実装が実行されて、実装基板が生産される。
【0027】
図6および図7図1で実行される部品実装の動作を模式的に示す図であり、図6はヘッドユニット6で1つの部品を吸着保持し、当該部品を基板に実装する動作を示し、図7はヘッドユニット6で2つの部品を吸着保持し、これらの部品を順番に基板に実装する動作を示している。また、図6(a)および図7(a)は通常動作(電源電圧の低下を検知していない間の動作)を示す一方、図6(b)および図7(b)は、電源電圧の低下を検知した時の動作)を示している。
【0028】
通常動作は、図6(a)および図7(a)に示すように、次の基本動作A〜Jを1シーケンスとするものであり、当該シーケンスを繰り返して基板Sに複数の部品Pを実装する動作である。基本動作A〜Jは、それぞれ
・部品認識A:部品認識カメラ7により吸着ノズル611に吸着保持される部品Pを撮像し、部品Pの吸着状態を確認する動作、
・装着点への移動B(B1、B2、…):部品Pの吸着状態が良好であると確認されたヘッドユニット6を当該部品Pを実装する部品搭載位置の上方位置まで移動させる動作、なお、ヘッドユニット6が複数の部品Pを吸着保持している場合には、図7に示すように、各装着点の上方位置に順番に移動する、
・Z軸下降C:実装ヘッド61をZ軸方向に下降させて当該実装ヘッド61で吸着保持されている部品Pを装着点に移動させる動作、
・部品装着D:実装ヘッド61による部品Pの吸着保持を解除するとともに、正圧供給により部品Pを基板Sに搭載する動作、
・Z軸上昇E:部品搭載後の実装ヘッド61をZ軸方向に上昇させる動作、
・吸着点への移動F:次に実装する部品Pが収納されたテープフィーダ41の上方位置にヘッドユニット6を移動させる動作、
・Z軸下降G:次回実装部品Pに向けて実装ヘッド61をZ軸方向に下降させて吸着ノズル611を次回実装部品Pに当接させる動作、
・部品吸着I:吸着ノズル611を真空吸引して次回実装部品Pを吸着保持する動作、
・Z軸上昇H:次回実装部品Pを吸着保持した実装ヘッド61をZ軸方向に上昇させる動作、
・部品認識カメラへの移動J:ヘッドユニット6を部品認識カメラ7の上方位置に移動させる動作、
である。
【0029】
そして、通常動作中、特に装着点への移動Bを実行している間に停電検知部3から出力される信号SG3に基づいて制御ユニット8の主制御部85が図6(b)や図7(b)に示すように装置各部を制御する。すなわち、電源電圧の低下が検知される(動作X1)と、次の装着点に向かって移動しているヘッドユニット6を部品認識カメラ7の上方位置に移動させる(動作X2)。これは、当該ヘッドユニット6に吸着保持されている次回実装部品Pについては既に吸着状態が確認されているが、電源電圧の低下により真空ポンプVPの真空圧が低下して吸着ノズル611による部品Pの吸着姿勢が変化することがあることを考慮したものである。そこで、部品認識カメラ7により吸着ノズル611に吸着保持される部品Pを再度撮像し、部品Pの吸着状態を再確認する(動作X3)。ここで、部品Pの吸着状態が良好であると確認すると、ヘッドユニット6で吸着保持している部品Pの装着点にヘッドユニット6を移動させる(動作B′)。なお、図7(b)に示すように、2番目に部品Pを実装する点、つまり第2装着点にヘッドユニット6を移動させている途中で電源電圧の低下が検知される(動作X1)と、上記と同様に、動作X2および動作X3を行った後で、第2装着点にヘッドユニット6を移動させる(動作B2′)。
【0030】
これが本実施形態の特徴的な動作であり、予めプログラム861に組み込まれている。以下、図8ないし図12を参照しつつ上記プログラム861にしたがった部品実装動作(部品移載動作)について説明する。
【0031】
図8図1に示す装置で実行される停電割り込み処理を示すフローチャートである。また、図9図1に示す装置で実行される瞬停時での装置各部の動作を示す図である。この部品実装装置1では、制御ユニット8の主制御部85が停電検知部3から出力される停電検知信号SG3に基づいて停電、瞬低または瞬停の発生を監視する。そして、停電、瞬低または瞬停が発生すると、交流電源PSの電源電圧が低下し、停電検知信号SG3はLレベルからHレベルに変化する(図9では瞬停に伴うレベル変化を示している)。このレベル変化に基づいて主制御部85は停電などの発生を検知する(ステップS1)。それに応じて主制御部85は検知フラグを「0」から「1」に切り替える(ステップS2)とともに、交流電源PSの電源電圧が元の電圧(本実施形態では200[V])に戻るまでの時間を計測するために、復電確認タイマーを一度リセットした後、タイマーカウントを開始する(ステップS3)。
【0032】
このタイマーカウントの値が所定の判定時間t[ms](本実施形態ではt=200[ms])を超えた時点(ステップS4)で、主制御部85は停電検知信号SG3のレベルに基づいて交流電源PSの電源電圧が元の電圧値に戻っている、いわゆる復電されているか否かを判定する(ステップS5)。つまり、検知フラグを立ててから200[ms]を超えて電圧低下が継続されている場合、主制御部85は、今回の電源電圧の低下が停電であると判定し(ステップS6)、処理モードを予め決められた停電処理に切り替える(ステップS7)。その停電処理の一環として、ヘッドユニット6はX軸方向およびY軸方向に退避させられ(ステップS8)、その後、X軸方向およびY軸方向への移動が停止される(ステップS9)。
【0033】
一方、検知フラグを立ててから200[ms]以下の間に電源電圧が元の200[V]に戻っている場合、瞬低または瞬停が発生したと主制御部85は判定する(ステップS10)。例えば図9に示すような電源電圧の変動が発生した場合、電源電圧の低下検知動作X1が実行される間に真空ポンプVPの真空圧が一時的に弱まり、吸着ノズル611による部品Pの吸着状態が変化する可能性がある。そこで、本実施形態では、電源電圧の低下検知動作X1に続いて、部品認識リトライ(部品認識カメラ7への移動動作X2+再部品認識動作X3)を実行した後、図9に示すように通常動作に戻る。このような一連の動作(ステップS1〜S11)を連続的に繰り返しながら、制御ユニット8の主制御部85は検知フラグを参照しながら装置各部を図10図12に示すように制御する。
【0034】
図10図1に示す装置による部品実装処理を示すフローチャートであり、図11図1に示す装置による部品吸着処理を示すフローチャートであり、図12図1に示す装置による部品装着処理を示すフローチャートである。この部品実装処理では、部品吸着処理が実行されてヘッドユニット6に1または複数の部品Pが吸着保持される(ステップS21)。すなわち、主制御部85は部品吸着を行う実装ヘッド61を特定するためのカウント値nを初期値「1」に設定する(ステップS211)。なお、ヘッドユニット6が部品供給部4から1個または複数個の部品Pを吸着し、部品認識を経て基板Sに実装するシーケンス毎に、カウント値nの最大値は変化する。つまり、1回のシーケンスでm個(m≧1)の部品Pを基板Sに実装する場合のカウント値nの最大値は「m」である。
【0035】
そして、ステップS212で主制御部85は、吸着すべき部品Pが収納されたテープフィーダ41の上方位置にカウント値nに対応する実装ヘッド(以下、単に「第nヘッド」という)を移動させる(ステップS212)。それに続いて、主制御部85は圧力切替機構62の吸着バルブ(図示省略)を開いて第nヘッド61の吸着ノズル611への真空圧の供給を開始し(ステップS213)、そのまま第nヘッド61をZ軸方向に下降させる(S214)。これにより、所望の部品Pが第nヘッド61に吸着される(ステップS215)。そして、部品吸着の確認後に、主制御部85はZ軸サーボモータ72を制御して部品吸着したまま第nヘッド61をZ軸方向に上昇させる(S216)。
【0036】
こうして第nヘッド61による部品吸着が完了すると、ステップS217でカウント値nが最大値となっているか否かを判定する、つまり当該シーケンスで吸着すべき部品の全部を吸着したか否かを判定し(ステップS217)、未吸着の部品Pが残っている場合には、カウント値nを「1」だけインクリメントした後(ステップS218)、ステップS212に戻って一連の動作(ステップS212〜S217)を繰り返す。
【0037】
図10に戻って説明を続ける。部品吸着処理(ステップS21)により所望の部品Pがヘッドユニット6により吸着されると、主制御部85はヘッドユニット6を部品認識カメラ7の上方位置に移動させ(ステップS22:動作J)、また検知フラグを「0」にリセットする(ステップS23)。そして、主制御部85は部品認識カメラ7から転送されてくる部品Pの画像から、部品Pの吸着状態が良好であることを確認する(ステップS24:動作A)。それに続いて、主制御部85は検知フラグが「1」となっているか否かを判定する(ステップS25)。この判定ステップは部品認識(ステップS24)を行っている間に電源電圧の低下(瞬低や瞬停)が発生したか否かを判定する目的で行われる。そして、部品認識中に電源電圧の低下が発生した際にはステップS22に戻って上記処理(ステップS22〜S24)を再度繰り返す。
【0038】
一方、部品認識中において電源電圧の低下が認められない場合には、主制御部85はカウント値nを初期値「1」に設定した後(ステップS26)、第nヘッド61で吸着保持される部品Pが装着される装着点の上方位置に向けてヘッドユニット6の移動を開始する(ステップS27)。そして、上記した装着点に到達するまでの間、主制御部85は検知フラグが「1」となっているか否かを監視する(ステップS28、S29)。この装着点への移動動作(動作B、B1、B2)中に電源電圧の低下が発生してステップS28で「YES」と主制御部85が判定すると、装着点の上方位置への移動を中止し、ステップS22に戻って上記処理(ステップS22〜S29)を再度繰り返す。
【0039】
また、第nヘッド61が、当該第nヘッド61で吸着している部品の装着点の上方位置に到達すると、この時点においても上記ステップS25やステップS28と同様にして電源電圧の低下(瞬低や瞬停)が発生したか否かを主制御部85が判定する(ステップS30)。このステップS30で「YES」と判定される、つまり電源電圧の低下が発生した際にはステップS22に戻って上記処理(ステップS22〜S29)を再度繰り返す。一方、この時点においても電源電圧の低下が発生していないことを確認すると、主制御部85は第nヘッドで吸着している部品Pを基板Sの装着点に装着する(ステップS31)。
【0040】
この部品装着処理では、図12に示すように、主制御部85はZ軸方向での第nヘッド61の下降を開始させ(ステップS311)、Z軸方向における下降端に到達する(ステップS312)と、圧力切替機構62の吸着バルブ(図示省略)を閉じて当該第nヘッド61の吸着ノズル611への真空圧の供給を停止する(ステップS313)。それに続いて、主制御部85は圧力切替機構62の装着バルブ(図示省略)を開いて当該吸着ノズル611に対して正圧を供給する(ステップS314)。これによって、吸着ノズル611により搬送されてきた部品Pが基板Sの所望位置に装着され、当該部品Pの実装が完了する(ステップS315)。なお、こうして空となった第nヘッド61を主制御部85はZ軸方向に上昇させた後(ステップS316)、上記装着バルブを閉成する(ステップS317)。
【0041】
また、第nヘッド61による部品Pの装着が完了すると、ステップS32で主制御部85は上記部品吸着処理(ステップS21)でヘッドユニット6に吸着保持された部品Pの全部について部品実装が完了したか否かを判定し、未実装の部品Pが残っている間、カウント値nを「1」だけインクリメントした後、ステップS27に戻って上記一連の動作(ステップS27〜S32)を繰り返す。一方、全部品Pの実装が完了する、つまり当該シーケンスが完了すると、ステップS21に戻って次のシーケンスを開始する。
【0042】
以上のように、本実施形態では、部品実装装置1に入力される交流電源PSの電源電圧が低下した場合であっても、一定時間(上記実施形態では、200[ms]以下)が経過するまでの間に復電される場合、つまり瞬低や瞬停などが発生したとしても、部品実装装置1を継続して作動させている。ただし、瞬低や瞬停などの電源電圧の低下が発生した場合には、その時点で装着点の上方位置への移動を中断し、ヘッドユニット6の部品認識カメラ7の上方位置への移動(動作X2)および再部品認識(動作X3)を実行している。つまり、電源電圧の低下時に吸着ノズル611による部品Pの吸着状態が変化していない、あるいはその変化量が許容範囲内に収まっていることが再確認された上で、装着点への移動を再開させている。これによって、高い信頼性を維持しつつ生産性が向上される。
【0043】
また、本実施形態では、停電検知部3が交流電源PSの電源電圧を監視して電源電圧の低下を検知するように構成しているため、電圧低下により真空ポンプVPの真空圧が低下するのを迅速に、かつ的確に検知することができ、その検知結果に基づいて適切かつ迅速な対応を講じることが可能となっている。
【0044】
なお、上記実施形態では、装着点の上方位置から実装ヘッド61を下降させる動作中においては、電源電圧の低下が発生したとしても、その下降動作を中断し、部品認識リトライ(部品認識カメラ7への移動動作X2+再部品認識動作X3)を実行していない。その理由は次のとおりである。下降中の実装ヘッド61を部品認識カメラ7の上方位置に移動させるためには、単に実装ヘッド61の下降を停止するに止まらず、実装ヘッド61を上昇させる必要があるが、その昇降切替時に部品Pが吸着ノズル611から離れ易くなる。したがって、実装ヘッド61の下降中に電源電圧の低下が検知されたとしても、実装ヘッド61の下降を継続させて装着点への部品Pの移載を優先するのが合理的な対応策であると言える。
【0045】
このように本実施形態では、装着点が本発明の「部品搭載位置」に相当している。また、部品認識カメラ7が本発明の「撮像部」として機能し、その部品認識カメラ7で撮像された画像に基づいて吸着ノズル611での部品Pの吸着状態を確認する制御ユニット8の主制御部85が発明の「制御部」として機能している。また、停電検知部3が本発明の「検知回路」に相当し、本発明の「検知部」として機能している。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、交流電源PSの電源電圧を監視して電源電圧の低下を検知し、これによって真空ポンプVPの真空圧が低下していることを検知しているが、真空圧の低下を検知する検知部はこれに限定されるものではなく、例えば圧力センサ621により真空圧の低下を直接的に検知するように構成してもよい。この場合、図8の停電割り込み処理は不要であり、部品実装処理も第1実施形態と一部異なる。以下、図13を参照しつつ第2実施形態における部品実装処理について説明する。
【0047】
図13は本発明にかかる部品移載装置の第2実施形態における部品実装動作を示すフローチャートである。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、停電割り込み処理により発生する検知フラグに基づいて真空圧の低下を判定する(ステップS25、S28、S30)代わりに、圧力センサ621による計測結果に基づいて真空圧の低下を判定している(ステップS25′、S28′、S30′)点である。このように圧力センサ621の計測結果を利用する場合、第1実施形態と同様に電源電圧の低下(瞬低や瞬停など)に起因して部品Pの吸着状態が変化する可能性を見い出すことができるのみなず、その他の原因、例えば配管や弁などで構成される真空圧の供給系の故障などについて対応することができる。また、圧力センサ621を本発明の「検知部」として機能させる場合、次のような態様を採用することができる。つまり、各実装ヘッド61に圧力センサ621を設けてもよく、この場合、実装ヘッド61毎に圧力センサ621の計測結果に基づいて部品Pの吸着状態の変化を検知することができる。また、各圧力センサ621による計測結果に基づいて吸着状態が変化した可能性を有する部品Pについてのみ再部品認識動作X3を行うことが可能となり、処理時間の短縮を図ることができる。
【0048】
また、図1に示す部品実装装置1では、1台のヘッドユニット6により部品実装動作を行っているが、ヘッドユニット6を複数台設け、これらにより部品実装を行う部品実装装置に対しても本発明を適用することができる。特に、各ヘッドユニット6に圧力センサ621を本発明の「検知部」として設けることで、ヘッドユニット6毎に再部品認識を実行することができ、処理時間の短縮を図ることができる。
【0049】
さらに、上記実施形態では、部品移載装置として機能する部品実装装置1に対して本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、ICハンドラー等の部品移載装置全般に対しても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…部品実装装置
3…停電検知部(検知部)
6…ヘッドユニット
7…部品認識カメラ(撮像部)
8…制御ユニット(制御部)
31…フォトカップラ回路
32…コンパレータ回路
33…電圧低下判定回路
61…実装ヘッド
85…主制御部(制御部)
611…吸着ノズル
621…圧力センサ(検知部)
P…部品
VP…真空ポンプ(真空供給源)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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