特許第5650151号(P5650151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5650151
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】オゾン水の溶存オゾン濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/33 20060101AFI20141211BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   G01N21/33
   G01N21/27 F
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-70042(P2012-70042)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-200276(P2013-200276A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIシバウラ
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】浦野 崇
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−296179(JP,A)
【文献】 特開2001−255271(JP,A)
【文献】 特開2008−207056(JP,A)
【文献】 特開2011−094970(JP,A)
【文献】 特開2004−324190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01、21/17−21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水にオゾンガスを注入してオゾン水を生成する際に、当該オゾン水の紫外線透過量の変化に基づいてオゾン水の溶存オゾン濃度を測定する方法であって、
前記原水に対して前記オゾンガスを注入する前に前記原水の紫外線透過量を所定時間毎に取得する注入前透過量取得工程と、
前記注入前透過量取得工程にて取得された前記原水の紫外線透過量を原点光量として設定する原点設定工程と、
前記原水に前記オゾンガスを注入する注入工程と、
前記オゾンガス注入開始後に前記オゾン水の紫外線透過量を所定時間毎に取得する注入開始後透過量取得工程と、
前記注入開始後透過量取得工程にて取得された前記オゾン水の紫外線透過量が、原点設定工程にて設定された原点光量よりも小さいかどうかを判定する判定工程と、
前記判定工程にて前記オゾン水の紫外線透過量が、原点設定工程にて設定された原点光量よりも小さくないと判定された場合に、当該オゾン水の紫外線透過量を原点光量として再設定する原点再設定工程と、を有することを特徴とするオゾン水の溶存オゾン濃度測定方法。
【請求項2】
前記注入開始後透過量取得工程では、前記オゾンガス注入開始後に前記オゾン水の紫外線透過量を所定時間毎に検出するとともに、過去所定時間に検出された前記オゾン水の紫外線透過量の平均値を取得することを特徴とする請求項1に記載のオゾン水の溶存オゾン濃度測定方法。
【請求項3】
前記注入前透過量取得工程では、前記原水に対して前記オゾンガスを注入する前に前記原水の紫外線透過量を所定時間毎に検出するとともに、過去所定時間に検出された前記原水の紫外線透過量の平均値を取得し、当該原水の紫外線透過量の平均値と、当該原水の紫外線透過量の平均値と同様にして取得される前記過去所定時間の直前に取得した前記原水の紫外線透過量の平均値とを比較し、その差が規定値内の場合に、当該原水の紫外線透過量の平均値を前記オゾンガスを注入する前の前記原水の紫外線透過量とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のオゾン水の溶存オゾン濃度測定方法。
【請求項4】
前記判定工程にて前記オゾン水の紫外線透過量が、原点設定工程にて設定された原点光量よりも小さいと判定された場合に、前記オゾン水の溶存オゾン濃度が所定の目標濃度に達したかどうかを判定する目標濃度判定工程を、さらに有することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のオゾン水の溶存オゾン濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン水の溶存オゾン濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に開示されるように、オゾン水を用いて種々の殺菌対象物を殺菌する殺菌洗浄装置に関する技術は公知である。このようなオゾン水を用いた殺菌洗浄装置では、原料水(以下、原水という)にオゾンガスを注入することで、オゾン水が生成される。
【0003】
また、このようなオゾン水を用いた殺菌洗浄装置では、オゾン水の溶存オゾン濃度を測定するために紫外線吸光法による溶存オゾン濃度計(特許文献1においては、オゾン水モニタ)が設けられている。当該溶存オゾン濃度計は、オゾンが紫外線を吸光する性質を利用して、オゾン水を透過する紫外線の光量の減少比率によりオゾン水の溶存オゾン濃度を測定するものである。すなわち、オゾン水を用いた殺菌洗浄装置等で用いられている従来の溶存オゾン濃度測定方法では、図11に示すように、オゾンが存在しない原水通水時の紫外線透過量とオゾンガス注入開始後のオゾン水の紫外線透過量のそれぞれを測定し、その比を求めて、溶存オゾン濃度を算出する。具体的には、先ず、オゾンガスが注入される前の原水の紫外線透過量を測定することで、溶存オゾン濃度を算出する際の基準となる溶存オゾン濃度の原点(溶存オゾン濃度が0mg/Lとなる点)を決定する。すなわち、オゾンが存在しない原水通水時の紫外線透過量をオゾン水の溶存オゾン濃度が0mg/L(原点)となる原点光量として決定する。続いて、原点光量決定後、原水にオゾンガスを注入してオゾン水を生成する際に、決定された原点光量を基準としてオゾン水による紫外線透過量の減少比率を測定し、当該減少比率によりオゾン水の溶存オゾン濃度が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−068095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、原水にオゾンとの反応により紫外線透過量が変化する物質が含まれている場合、上記原点光量決定後に、オゾン水を生成するために原水にオゾンガスを注入すると、当該物質の影響で紫外線透過量が一時的に増加する方向に変動してしまい、正確な溶存オゾン濃度測定ができない。具体的には、通常、水に対するオゾン処理では、水の汚れの原因となる不純物質がオゾンにより脱色され、水の透明度が上がり紫外線透過量が増加する方向に変動する(図12(a)の矢印Aで示す部分)。この紫外線透過量の変動を、図12(b)に示すように、溶存オゾン濃度に換算した結果、紫外線透過量が変動する場合とは逆に溶存オゾン濃度が減少する方向に振れていくことになる(図12(b)の矢印Bで示す部分)。そして、さらに、オゾンガスを注入すると、当該物質との反応が終了した時点から、溶存オゾン濃度が上昇(紫外線透過量の場合は低下)してくることになる(図12(b)の矢印Cで示す部分)。当該物質による影響を考慮せずにオゾンガス注入前の原水の紫外線透過量を原点光量として決定し、オゾンガス注入後のオゾン水の溶存オゾン濃度を測定すると、本来の溶存溶存オゾン濃度よりも低い値として測定されてしまい、正確にオゾン水の溶存オゾン濃度を測定することができない。
【0006】
そこで、本発明は、原水にオゾンとの反応により紫外線透過量が変化する物質が含まれる場合でも、紫外線透過量によりオゾン水の溶存オゾン濃度を正確に測定することができるオゾン水の溶存オゾン濃度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、
原水にオゾンガスを注入してオゾン水を生成する際に、当該オゾン水の紫外線透過量の変化に基づいてオゾン水の溶存オゾン濃度を測定する方法であって、
前記原水に対して前記オゾンガスを注入する前に前記原水の紫外線透過量を所定時間毎に取得する注入前透過量取得工程と、
前記注入前透過量取得工程にて取得された前記原水の紫外線透過量を原点光量として設定する原点設定工程と、
前記原水に前記オゾンガスを注入する注入工程と、
前記オゾンガス注入開始後に前記オゾン水の紫外線透過量を所定時間毎に取得する注入開始後透過量取得工程と、
前記注入開始後透過量取得工程にて取得された前記オゾン水の紫外線透過量が、原点設定工程にて設定された原点光量よりも小さいかどうかを判定する判定工程と、
前記判定工程にて前記オゾン水の紫外線透過量が、原点設定工程にて設定された原点光量よりも小さくないと判定された場合に、当該オゾン水の紫外線透過量を原点光量として再設定する原点再設定工程と、を有するものである。
【0009】
請求項2においては、
前記注入開始後透過量取得工程では、前記オゾンガス注入開始後に前記オゾン水の紫外線透過量を所定時間毎に検出するとともに、過去所定時間に検出された前記オゾン水の紫外線透過量の平均値を取得するものである。
【0010】
請求項3においては、
前記注入前透過量取得工程では、前記原水に対して前記オゾンガスを注入する前に前記原水の紫外線透過量を所定時間毎に検出するとともに、過去所定時間に検出された前記原水の紫外線透過量の平均値を取得し、当該原水の紫外線透過量の平均値と、当該原水の紫外線透過量の平均値と同様にして取得される前記過去所定時間の直前に取得した前記原水の紫外線透過量の平均値とを比較し、その差が規定値内の場合に、当該原水の紫外線透過量の平均値を前記オゾンガスを注入する前の前記原水の紫外線透過量とするものである。
【0011】
請求項4においては、
前記判定工程にて前記オゾン水の紫外線透過量が、原点設定工程にて設定された原点光量よりも小さいと判定された場合に、前記オゾン水の溶存オゾン濃度が所定の目標濃度に達したかどうかを判定する目標濃度判定工程を、さらに有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、原水にオゾンとの反応により紫外線透過量が変化する物質が含まれている場合でも、オゾン水の溶存オゾン濃度を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】オゾン水濃度計を備えたオゾン水による内視鏡殺菌装置の前面図。
図2】同じくオゾン水による内視鏡殺菌装置の平面図。
図3】同じくオゾン水による内視鏡殺菌装置の右側面図。
図4】同じくオゾン水による内視鏡殺菌装置の背面図。
図5】オゾン水濃度計を備えたオゾン水による内視鏡殺菌装置の内部の構成を示す前面図。
図6】同じくオゾン水による内視鏡殺菌装置の内部の構成を示す右側面図。
図7】オゾン水による内視鏡殺菌装置内に配置したオゾン水濃度計の側面図。
図8】本発明の一実施形態に係るオゾン水の溶存オゾン濃度測定方法のフローを示す図。
図9】同じくオゾン水の溶存オゾン濃度測定方法を説明するための説明図であり、(a)は紫外線透過量の経時変化を示す図、(b)は溶存オゾン濃度の経時変化を示す図。
図10】オゾン水の溶存オゾン濃度測定方法を実施するための装置の別の例であるオゾン殺菌装置の構成を示す模式図。
図11】従来の溶存オゾン濃度測定方法を説明するための説明図であり、(a)は紫外線透過量の経時変化を示す図、(b)は溶存オゾン濃度の経時変化を示す図。
図12】従来の溶存オゾン濃度測定方法の問題点を説明するための説明図であり、(a)は紫外線透過量の経時変化を示す図、(b)は溶存オゾン濃度の経時変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
先ず、本発明の実施形態に係るオゾン水の溶存オゾン濃度測定方法を実施するための装置の一例としてオゾン水による内視鏡殺菌装置の構成を図1から図5を用いて説明する。
【0015】
オゾン水による内視鏡殺菌装置は、オゾン水を満たした殺菌槽(2)の内部に、消毒対象物品である内視鏡(10)を浸漬して、オゾン水により内視鏡(10)の内部に至るまで、殺菌消毒するものである。本体は、外装(1)を有しており、該外装(1)は、前板(1a)と側板(1b・1b)と背板(1c)と蓋体(3)等により構成されている。蓋体(3)は、内視鏡(10)を支持した状態のトレーを出し入れする際に開閉する部分であり、殺菌処理中は、該蓋体(3)が開くことのないように、蓋ロック機構によりロックしている。該外装(1)の内側に殺菌槽(2)が構成されており、トレーに設置された状態の内視鏡(10)を、殺菌槽(2)内に浸漬して、殺菌処理を行う。
【0016】
オゾン水による内視鏡殺菌装置の上面には、蓋体(3)の他に、開閉不可能な部分に、タッチパネル(4)と水流確認窓(5)が設けられている。該タッチパネル(4)は、タッチパネル操作盤と状態表示用の液晶表示盤を兼用しており、該タッチパネル(4)に表示された操作内容を、タッチすることにより、殺菌消毒の操作が実行され、また現在の作業の進行状態が表示される構成となっている。また、水流確認窓(5)は、殺菌処理中に水が正常に流れていることを確認する為の窓であり、配置されたパイプの内部において水流が流れているかを、目視により確認することが出来る構成となっている。
【0017】
図4に示す如く、(7)は電源スイッチである。(9)は電源インレットであり、電源を入力する端子である。
【0018】
外装(1)の背面部分に給水口(6)が設けられており、水道から水道水が、オゾン水を生成するために用いる原水として、供給されるように構成されている。外装(1)の背面には、更に排水口(12)が設けられており、殺菌処理後の水を排出すべく構成している。(13)は、オゾン水による内視鏡殺菌装置の移動を可能とするキャスタである。
【0019】
次に、図4から図6において、オゾン水による内視鏡殺菌装置の内部の詳細について説明する。
【0020】
殺菌槽(2)の内部には、内視鏡接続口(14)が設けられている。該内視鏡接続口(14)に、殺菌用チューブ(50)を介して、内視鏡(10)を取り付ける。オゾン水は、該内視鏡接続口(14)から、殺菌用チューブ(50)を介して、内視鏡(10)のチャンネル内に噴出されるように構成している。
【0021】
本体内には、オゾン水による内視鏡殺菌装置の為にオゾンガスを生成するオゾンガス生成ユニットが配置されている。該オゾンガス生成ユニットの内部には、オゾンガスを生成する為のオゾナイザが内包されている。酸素ボンベの酸素ガスがオゾンガス生成ユニットへ酸素供給口(41)から供給されて、オゾンガスが該酸素ガスからオゾナイザにより生成される。該生成されたオゾンガスが本体内のオゾン水生成ユニットにおいて原水に注入されて、オゾン水が生成される。
【0022】
オゾン水生成ユニットにおいて生成されたオゾン水は、本体内の内視鏡殺菌ユニットから、内視鏡接続口(14)を介して、内視鏡(10)のチャンネルの内部に流し込まれる。本体内の中段には、水供給ポンプ(37)が設けられている。該水供給ポンプ(37)により、オゾン水生成ユニットと、オゾン水濃度計(29)と、内視鏡殺菌ユニットへ送水が行われる。
【0023】
オゾン水濃度計(29)は、オゾン水生成ユニットで生成されるオゾン水の溶存オゾン濃度を検出するための溶存オゾン濃度計である。
【0024】
また、本体内の下段に、オゾン分解ユニットが設けられている。該オゾン分解ユニットは、殺菌槽(2)内においてオゾン水から分離したオゾンガスを安全な酸素ガスに分解して、外部に排出する為の装置である。
【0025】
このような構成において、図6に示す如く、水供給ポンプ(37)によりオゾン水生成ユニットからオゾン水供給経路を介して送られるオゾン水の一部を連続的にサンプリングして、処理中のオゾン水の溶存オゾン濃度を検出し続ける為のオゾン水濃度計(29)が、本体内の上段に配置されている。図7に示す如く、該オゾン水濃度計(29)は、UV光源部(57)とUV受光部(58)とオゾン水注入口(59)とオゾン水排出口(60)とエア排出口(67)とから構成されている。オゾン水濃度計(29)及び水供給ポンプ(37)は、図示せぬ制御手段に接続されている。制御手段は、予め記憶しているオゾン水濃度計(29)の測定処理プログラム及び後述するオゾン水の溶存オゾン濃度測定方法に係る所定の制御プログラムを実行することができる。制御手段は、オゾン水濃度計(29)と水供給ポンプ(37)を制御して、サンプリングした原水又はオゾン水をオゾン水注入口(59)に供給して、UV光源部(57)からのUV(紫外線)をオゾン水に照射して、UV受光部(58)により受光し、このUV光の減衰度により、オゾン水の溶存オゾン濃度を決定する。すなわち、制御手段は、UV受光部(58)により検出される、原水通水時の紫外線透過量と当該原水にオゾンガスを注入することで生成されるオゾン水の紫外線透過量との比に基づいて溶存オゾン濃度を算出する。
【0026】
しかし、オゾン水を生成する際に用いる原水にオゾンとの反応により紫外線透過量が変化する物質が含まれている場合、オゾン水濃度計(29)による測定時に、本来の溶存オゾン濃度よりも低い値として測定されてしまい、オゾン水の溶存オゾン濃度を正確に測定することができない。故に、当該物質を含むような場合においても、正確に溶存オゾン濃度を測定することができるようにする必要がある。以下においては、当該物質を含むような場合においても、オゾン水濃度計(29)を制御して、オゾン水の溶存オゾン濃度を正確に測定することができるオゾン水の溶存オゾン濃度測定方法を説明する。
【0027】
次に、オゾン水の溶存オゾン濃度測定方法について図8及び図9を用いて説明する。
オゾン水の溶存オゾン濃度測定方法は、原水にオゾンガスを注入してオゾン水を生成する際に、当該オゾン水の紫外線透過量の変化に基づいてオゾン水の溶存オゾン濃度を測定する方法であって、図8に示すように、注入前透過量取得工程S10と、原点C0設定工程S20と、オゾンガス注入開始工程S30と、注入開始後透過量取得工程S40と、判定工程S50と、原点C0再設定工程S60と、目標濃度判定工程S70とを主に有する。
【0028】
注入前透過量取得工程S10は、原水に対してオゾンガスを注入する前に原水の紫外線透過量(以下、原水透過光量Caともいう)を所定時間毎に取得する工程である。すなわち、注入前透過量取得工程S10では、オゾン水生成ユニットにより原水に対してオゾンガスが注入される前に、オゾン水濃度計(29)により、UV光源部(57)からUV光(紫外光)を原水に照射して、当該原水を透過したUV光をUV受光部(58)により受光し、このUV光の透過光量として原水透過光量Caが取得される。
【0029】
具体的には、注入前透過量取得工程S10では、原水に対してオゾンガスを注入する前に原水の紫外線透過量を所定時間毎(本実施形態では、0.2秒毎)に検出するとともに、過去所定時間(本実施形態では、5.0秒間)に検出された原水の紫外線透過量の平均値Cbを取得し、当該原水の紫外線透過量の平均値Cbと、当該原水の紫外線透過量の平均値Cbと同様にして取得される前記過去所定時間(本実施形態では、5.0秒間)の直前に取得した原水の紫外線透過量の平均値(5秒前に取得された平均値Cb)とを比較し、その差が規定値内の場合に、当該原水の紫外線透過量の平均値Cbを前記オゾンガスを注入する前の原水の紫外線透過量である原水透過光量Caとする。すなわち、本実施形態では、5.0秒間の原水の紫外線透過量の平均値Cbを取得し、当該平均値Cbと、当該平均値Cbの5.0秒前に取得された原水の紫外線透過量の平均値Cbとを比較し、その差が規定値内であれば当該平均値Cbを原水透過光量Caとする。
ここで、上記規定値を設定する理由は、原水中に泡等が存在することにより、紫外線透過が不安定となる状態で測定された原水の紫外線透過量を原水透過光量Caとして採用しないためである。上記規定値内にならない場合は、規定値内になるまで継続して平均値Cbを取得する。
【0030】
原点C0設定工程S20は、注入前透過量取得工程S10にて取得された前記原水の紫外線透過量である原水透過光量Caをオゾン水の溶存オゾン濃度が0mg/L(原点)となる原点光量C0として設定する工程である。
【0031】
オゾンガス注入開始工程S30は、原水にオゾンガスを注入する工程である。すなわち、オゾンガス注入開始工程S30では、オゾナイザにより生成されたオゾンガスがオゾン水生成ユニットにより原水に注入されて、オゾン水が生成される。
【0032】
注入開始後透過量取得工程S40は、前記オゾンガス注入開始後にオゾン水の紫外線透過量(注入開始後透過光量C。以下、透過光量Cともいう)を所定時間毎に取得する工程である。すなわち、注入開始後透過量取得工程S40では、オゾン水生成ユニットにより原水に対してオゾンガスが注入開始された後、オゾン水濃度計(29)により、UV光源部(57)からUV光(紫外光)をオゾン水に照射して、当該オゾン水を透過したUV光をUV受光部(58)により受光し、このUV光の透過光量である紫外線透過量が所定時間毎に取得される。
【0033】
具体的には、前記注入開始後透過量取得工程S40では、前記オゾンガス注入開始後にオゾン水の紫外線透過量を所定時間毎(本実施形態では、0.2秒毎)に検出するとともに、過去所定時間(本実施形態では、1.0秒間)に検出されたオゾン水の紫外線透過量の平均値を求め、当該平均値を透過光量Cとして取得する。
【0034】
判定工程S50は、注入開始後透過量取得工程S40にて取得されたオゾン水の紫外線透過量である透過光量Cが、原点C0設定工程S20にて設定された原点光量C0よりも小さいかどうかを判定する工程である。判定工程S50において、原点C0設定工程S20にて設定された原点光量C0に対して、オゾンガス注入開始後に取得された透過光量Cが小さいと判定された場合(S50の判定がYESの場合)は、目標濃度判定工程S70に移行する。一方、判定工程S50において、原点C0設定工程S20にて設定された原点光量C0に対して、オゾンガス注入開始後に取得された透過光量Cが小さくないと判定された場合(S50の判定がNOの場合)は、原点C0再設定工程S60に移行する。
【0035】
原点C0再設定工程S60は、判定工程S50にて前記オゾン水の紫外線透過量である透過光量Cが、原点C0設定工程S20にて設定された原点光量C0よりも小さくないと判定された場合に、当該オゾン水の紫外線透過量である透過光量Cをオゾン水の溶存オゾン濃度が0mg/L(原点)となる原点光量C0として再設定する工程である。その後、オゾン水に継続してオゾンガスを注入し(S80)、注入開始後透過量取得工程S40に戻る。
【0036】
目標濃度判定工程S70は、判定工程S50にて前記オゾン水の紫外線透過量である透過光量Cが、原点C0設定工程S20にて設定された原点光量C0よりも小さいと判定された場合に、オゾン水の溶存オゾン濃度が所定の目標濃度に達したかどうかを判定する工程である。目標濃度判定工程S70において、オゾン水の溶存オゾン濃度が所定の目標濃度に達したと判定された場合(S70の判定がYESの場合)は、オゾンガスを注入停止し(S90)、その後注入開始後透過量取得工程S40に戻る。一方、オゾン水の溶存オゾン濃度が所定の目標濃度に達していないと判定された場合(S70の判定がNOの場合)は、オゾン水にオゾンガスを継続して注入し(S100)、注入開始後透過量取得工程S40に戻る。
【0037】
図9は、本発明の一実施形態に係るオゾン水の溶存オゾン濃度測定方法を説明するための説明図であり、(a)は紫外線透過量の経時変化を示す図、(b)は溶存オゾン濃度の経時変化を示す図である。
【0038】
図9に示すように、原水にオゾンとの反応により紫外線透過量が変化する物質が含まれている場合、オゾン水を生成するために原水にオゾンガスを注入すると、当該物質の影響で紫外線透過量が増加する方向に変動する。これに対処するため、上述したオゾン水の溶存オゾン濃度測定方法では、原水透過光量Ca(図9(a)に示す初期の原水光量)の代わりにオゾンガス注入後に取得された透過光量Cの最大値(図9(a)の矢印Aで示す部分)を修正原水光量として設定するものである。そして、図9(a)で示す透過光量Cを、図9(b)に示すように、溶存オゾン濃度に換算した結果、原水透過光量Caを原点光量C0として用いた場合では溶存オゾン濃度が小さく算出される(図9(b)に示す「修正前の濃度」)が、修正原水光量として透過光量Cの最大値を原点光量C0として用いた場合では当該物質による溶存オゾン濃度の減少分も考慮されるため、正確な溶存オゾン濃度(図9(b)に示す「修正後の濃度」)を測定することができる。また、このように、当該物質の影響により透過光量Cが設定された原点光量C0より小さくなる場合、オゾンガス注入後に取得された透過光量Cの最大値を自動的に原点光量C0として用いることができるように、制御手段に図8に示すフローに基づいて作製した制御プログラム(透過光量Cの最大値を算出するプログラムも含む)を記憶させ、制御手段が当該制御プルグラムを実行できるようにすればよい。
【0039】
次に、本発明の実施形態に係るオゾン水の溶存オゾン濃度測定方法を実施するための装置の別の例としてオゾン水によるオゾン殺菌装置の構成を図10を用いて説明する。
【0040】
図10に示すように、殺菌槽(300)は、殺菌対象物が収容される殺菌槽であって、当該殺菌槽(300)にオゾン水製造装置(310)、オゾン水濃度測定器(360)及び排オゾンガス分解器(330)が接続される。オゾン水製造装置(310)は、当該オゾン水製造装置(310)から殺菌槽(300)にオゾン水を供給できるようになっており、当該殺菌槽(300)にオゾン水を供給することで殺菌槽(300)内の殺菌対象物を殺菌することができる。
なお、オゾン水濃度測定器(360)は、上述したオゾン水濃度計(29)と同様に紫外線透過光量によりオゾン水の溶存オゾン水濃度を測定することができる。
【0041】
殺菌槽(300)内に供給されたオゾン水は、水ポンプ(320)で排水され、殺菌槽(300)に溜まったオゾンは、排オゾンガス分解器(330)を介してブロア(340)を介して排気することができる。当該排オゾンガス分解器(330)では、オゾンが分解されてブロア(340)ヘ排出されるようになっている。
【0042】
殺菌槽(300)には、オゾン水濃度測定器(360)が設けられ、そのオゾン水濃度測定器(360)の検出値が、電気信号として制御回路(370)に入力され、その制御回路(370)で、オゾン水濃度・時間の積(CT値)が一定となるように制御することができる。例えば、オゾン水濃度測定器(360)で溶存オゾン濃度を測定し、制御回路(370)の演算回路(380)とタイマー回路(390)で溶存オゾン水濃度を積分してその積分値(CT)が所定になったときに殺菌を停止するようにすることができる。
【0043】
具体的には、制御回路(370)は、演算回路(380)とタイマー回路(390)からなり、演算回路(380)が、オゾン水濃度測定器(360)から出力された溶存オゾン水濃度(C)の電気信号を、タイマー回路(390)から出力される時間(T)で積分して積分値(CT)を演算し、その値が予め殺菌対象物毎に定めた値になったとき、殺菌工程を停止するように制御することができる。
【0044】
この際、制御回路(370)は、ブロア(340)、オゾン水製造装置(310)、水ポンプ(320)を制御してオゾン水供給量、排水量、排オゾンガス量を制御する。
【0045】
またオゾン水濃度測定器(360)の代わりに液相オゾンCT値検出器で、CT値を直接検出し制御回路(370)がそのCT値が所定に達したときに殺菌を停止するようにしてもよい。
【0046】
このような構成されたオゾン水によるオゾン殺菌装置では、上述したオゾン水による内視鏡殺菌装置と同様に原水通水時の紫外線透過量と当該原水にオゾンガスを注入することで生成されるオゾン水の紫外線透過量との比に基づいて溶存オゾン濃度が算出される。
【0047】
しかし、オゾン水を生成する際に用いる原水にオゾンとの反応により紫外線透過量が変化する物質が含まれている場合、オゾン水濃度測定器(360)による測定時に、本来の溶存オゾン濃度よりも低い値として測定されてしまい、オゾン水の溶存オゾン濃度を正確に測定することができない。故に、当該物質を含むような場合においても、正確に溶存オゾン濃度を測定することができるようにする必要がある。そこで、このオゾン殺菌装置においても、上記オゾン水の溶存オゾン濃度測定方法を用いることで、当該物質を含むような場合においても、オゾン水濃度測定器(360)を制御して、オゾン水の溶存オゾン濃度を正確に測定することができる。
【0048】
以上の如く、本実施形態に係るオゾン水の溶存オゾン濃度測定方法によれば、原水にオゾンとの反応により紫外線透過量が変化する物質が含まれている場合でも、当該物質に影響されることなく、オゾン水の溶存オゾン濃度を正確に測定することができる。本明細書で説明したように、当該物質を含む場合、原点光量を修正しないと、本来の溶存オゾン濃度よりも低い値としてオゾン水の溶存オゾン濃度が測定されてしまうため、溶存オゾン濃度を所定の目標濃度に保つ際に、過剰のオゾンガスを注入することになる。しかし、本実施形態の如く、当該物質を含む場合、原点光量を適宜修正することで、このような過剰のオゾンガスを注入することを防止できる。過剰なオゾンガスの注入を防止できれば、オゾンガス生成によるエネルギーの過剰消費、設定よりも高い溶存オゾン濃度による部材の劣化、オゾン分解ユニットが有する触媒等のオゾン分解機能の早期劣化なども抑制することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 外装
2 殺菌槽
3 蓋体
4 タッチパネル
5 水流確認窓
6 給水口
10 内視鏡
14 内視鏡接続口
29 オゾン水濃度計
37 水供給ポンプ
50 殺菌用チューブ
57 UV光源部
58 UV受光部
59 オゾン水注入口
67 エア排出口
図1
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