特許第5650167号(P5650167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5650167
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】可動バンパー
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/38 20060101AFI20141211BHJP
   B60R 19/56 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   B60R19/38 D
   B60R19/56
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-162508(P2012-162508)
(22)【出願日】2012年7月23日
(65)【公開番号】特開2014-19385(P2014-19385A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2014年7月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301036227
【氏名又は名称】有限会社平成自動車
(74)【代理人】
【識別番号】100099092
【弁理士】
【氏名又は名称】野間 明
(72)【発明者】
【氏名】堀内 秀一
【審査官】 鹿角 剛二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−264811(JP,A)
【文献】 特開平08−296412(JP,A)
【文献】 特開平11−247845(JP,A)
【文献】 特開2005−256656(JP,A)
【文献】 特開2011−080511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/38
B60R 19/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車幅方向に一対設けられた車両基体(52)にそれぞれ支持軸(54)を立設し、前記各支持軸(54)にアーム(61)を回動自在に取付け、前記アーム(61)間にバンパー(53)を横架した構成の可動バンパーであって、
前記支持軸(54)が挿通する軸穴(64)を備えた中間軸部材(63)と、前記中間軸部材(63)を軸受けする軸受部材(62)とを有し、
前記軸受部材(62)は前記アーム(61)の基端側に取付けられ、
前記各アーム(61)が車幅方向に傾いたときでも前記回動操作を円滑に行えるように前記中間軸部材(63)はその軸方向両端部を丸めた丸め部(65)を有し、
前記中間軸部材(63)の軸方向の長さを前記軸受部材(62)よりも大きく形成し、前記丸め部(65)の両端部を前記軸受部材(62)から突出させたことを特徴とする可動バンパー。
【請求項2】
請求項1に記載の可動バンパーにおいて、前記車両基体(52)にバンパー取付け用の複数の取付孔(55〜60)が形成された車両に前記可動バンパー(51)を取付ける場合は、前記取付孔(55〜60)の一つの取付孔(55)を利用して前記支持軸(54)を前記車両基体(52)に立設状態にした可動バンパー。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか一つに記載の可動バンパーにおいて、前記丸め部(65)を、断面視において前記両端部側の直径を小さく設定し、前記中央部域に行くに従って徐々に直径が大きくなるように形成し、前記中央部域に円筒形部(66)を残すように構成した可動バンパー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の可動バンパーにおいて、前記支持軸(54)の回動中心から離れた前記アーム(61)の所定位置に手動固定具(1)を取付けてあり、
前記手動固定具(1)は、ピストン軸(3)を備えたピストン(4)と、一端側には前記ピストン軸(3)が貫通する小円開口(5)が開口され、他端側には前記ピストン(4)の前記先端部(4a)が突出する大円開口(6)が開口してあるシリンダ(2)と、前記ピストン(4)を回動させる動作を行うように前記ピストン軸(3)に連結された操作レバー(10)と、前記シリンダ(2)内に収容され前記ピストン(4)の前記先端部(4a)を突出するように付勢する弾性手段(9)と、前記シリンダ(2)の一端側壁(8)に設けられた突起体(16)とを備え、前記突起体(16)は案内面(20)を有しており、
前記案内面(20)は前記操作レバー(10)の前記回動操作を前記ピストン(4)の進退動作に変換するための案内面であり、しかも、前記案内面(20)を前記操作レバー(10)が片当たりにならないような3次元的に捻れた面に形成してあり、
前記操作レバー(10)を操作して前記アーム(61)から前記ピストン(4)の前記先端部(4a)を前記車両基体(52)側へ突出させることよって、前記アーム(61)の突出位置と退避位置を設定するように構成した可動バンパー。
【請求項5】
請求項4に記載の可動バンパーにおいて、前記車両基体(52)に固定される第1固定基板(70)と第2固定基板(71)を有し、
前記第1固定基板(70)は、前記手動固定具(1)の前記ピストンの前記先端部(4a)を前記バンパー(53)の前記突出位置に対応して固定する突出位置固定部(72)を有し、
前記第2固定基板(71)は、前記手動固定具(1)の前記ピストン(4)の前記先端部(4a)を前記バンパー(53)の前記退避位置に対応して固定する退避位置固定部(80)を有し、
前記第2固定基板(71)は前記支持軸(54)回りに回動できるように上部軸孔(78)を備えており、
前記車両基体(52)に前記第1固定基板(70)を固定し、
前記車両基体(52)に前記第2固定基板(71)に固定する際に、前記第2固定基板(71)を前記支持軸(54)回りに回動させて、前記退避位置固定部(80)の位置を設定した後、ボルト等の固定手段によって前記第2固定基板(71)を前記車両基体(52)に固定するように構成した可動バンパー。
【請求項6】
請求項5に記載の可動バンパーにおいて、前記第1固定基板(70)に第1ガイド部(77)を設けるとともに前記第2固定基板(71)に第2ガイド部(82)を設け、それらの第1・第2ガイド部(77・82)は、前記突出位置から前記退避位置までの回動範囲において前記手動固定具(1)の前記ピストン(4)の前記先端部(4a)が前記車両基体(52)側に突出しないようにガイドする可動バンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバンパーの突出位置と退避位置を可変できる可動バンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプ車両には他の車両が突入することを防止する突入防止用のバンパーが設けられている。
従来のバンパーは、所謂固定式バンパーが一般的である。固定式の他にも、作業時に支障となるバンパーを取り外せるようにした脱着式バンパーや、追突可能性を事前に感知予測してバンパーを突出作動させる方式の可動バンパー(下記特許文献1参照)がある。
また、荷台を傾斜する際の荷台とバンパーとの干渉を防止するために、荷台傾斜時にリンク機構と油圧シリンダを介してバンパーを上下に昇降する方式の可動バンパー(下記特許文献2参照)が考案されている。
【0003】
また、本出願人は、手動固定具を用いて突出位置と退避位置を手動で変化させることができる可動バンパーを提案している(下記特許文献3参照)。
上記本出願人に係る発明であれば、作業者の負担を減らして操作性を向上させた可動バンパーを提供することができる。
なお、可動バンパーは車両基体間に支持軸を架け渡し、その支持軸に一対のアームを取り付ける構成が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−291845
【特許文献2】特願平6−247241
【特許文献3】特開2011−80511
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の可動バンパーであれば、支持軸を通す穴を車両基体に開ける必要がある。この穴開け作業は、車両基体に取付けてある各種部材の取り外しが必要になる場合も多い。さらに、穴空け工具による2つの穴の位置決め(芯出し作業)に多くの時間を必要として、結果的にコスト高になる課題があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は上記課題を解決できる可動バンパーを提供することにある。
具体的な目的の一例を示すと、以下の通りである。
(a)従来の構成に比べて、可動バンパーの取付け工数を大幅に減らして採用コストを低減できる可動バンパーを提供する。
(b)低コストで提供できる利点を享受しつつ、可動バンパーの突出位置と退避位置との回動状態を長期間にわたって良好に維持して、バンパー装置の信頼性を向上することができる可動バンパーを提供する。
なお、上記に記載した以外の発明の課題、その解決手段及びその効果は、後述する明細書内の記載において詳しく説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は多面的に表現できるが、例えば、代表的なものを挙げると、次のように構成したものである。なお、下記各発明において、各符号は後述する実施形態との対応関係を分かりやすくするために一例として示したものであり、本発明の各構成要素は、実施形態に記載した符号に係る構成に限定されないことは言うまでもない。
本発明は、車両の車幅方向に一対設けられた車両基体52にそれぞれ支持軸54を立設し、前記各支持軸54にアーム61を回動自在に取付け、前記アーム61間にバンパー53を横架した構成の可動バンパー51であって、
前記支持軸54が挿通する軸穴64を備えた中間軸部材63と、前記中間軸部材63を軸受けする軸受部材62とを有し、
前記軸受部材62は前記アーム61の基端側に取付けられ、
前記各アーム61が車幅方向に傾いたときでも前記回動操作を円滑に行えるように前記中間軸部材63はその軸方向両端部を丸めた丸め部65を有し、
前記中間軸部材63の軸方向の長さを前記軸受部材62よりも大きく形成し、前記丸め部65の両端部を前記軸受部材62から突出させたことを特徴とする(請求項1)。
この構成であれば、新たに可動パンパーを車両基体に取り付ける場合に、一本の支持軸を車両基体に架け渡す必要がないので、穴を開ける際の芯出し作業などの精密な作業を省略でき、手間とコストを低減できる。
また、中間軸部材はその軸方向両端部を丸めた丸め部を有するので、可動アームを取り付けた後、なんらかの原因によって各アームが車幅中心方向、車幅外方向のいずれの方向に傾いても中間軸部材が軸受部材に対して傾くことが可能になり、傾きを吸収することができるので、長期間にわたって安定的にアームの回動操作を円滑に維持することができる。
また、中間軸部材の両端部には軸受部材は存在しないので、最も動きを制限する両端部において、丸め部がアームの傾きを吸収する作用を安定して機能させることができる。
【0007】
本発明は、前記車両基体52にバンパー取付け用の複数の取付孔55〜60が形成された車両に可動バンパー51を取付ける場合は、前記取付孔55〜60の一つの取付孔55を利用して前記支持軸54を前記車両基体52に立設状態にしたことを特徴とする(請求項2)。
この構成であれば、既に形成されたバンパーの取付孔を利用することで、稼働バンパーの取付けに要する手間とコストを大幅に低減することができる。この構成であると、一般に前記取付孔は芯出し精度はある程度確保されており、新しい孔を開ける作業が不要になるので、既に固定式バンパーなどを車両基体に取り付けてある車に、本稼働バンパーを取り替える場合に著しく取付工数を削減できる。
【0008】
本発明は、前記丸め部65を、断面視において前記両端部側の直径を小さく設定し、中央部域に行くに従って徐々に直径が大きくなるように形成し、前記中央部域に円筒形部66を残すように構成したことを特徴とする(請求項3)。
この構成であれば、実際に想定される傾きがアームに生じたときに、アームの動きを最も制限する両端部側を丸めているので、支持軸によってアームが円滑に回動操作されるための丸め部の加工量を減らすことができる。
また、軸方向の中央部域において、円筒形部を残すように形成しているので、両端部を丸めても軸受部材は円筒形部において十分な軸受けの機能を発揮できて、安定した回動操作を実現できる。
【0009】
本発明は、前記支持軸54の回動中心から離れた前記アーム61の所定位置に手動固定具1を取付けてあり、
前記手動固定具1は、ピストン軸3を備えたピストン4と、一端側には前記ピストン軸3が貫通する小円開口5が開口され、他端側には前記ピストン4の前記先端部4aが突出する大円開口6が開口してあるシリンダ2と、前記ピストン4を回動させる動作を行うように前記ピストン軸3に連結された操作レバー10と、前記シリンダ2内に収容され前記ピストン4の前記先端部4aを突出するように付勢する弾性手段9と、前記シリンダ2の一端側壁8に設けられた突起体16とを備え、前記突起体16は案内面20を有しており、
前記案内面20は前記操作レバー10の前記回動操作を前記ピストン4の進退動作に変換するための案内面であり、しかも、前記案内面20を前記操作レバー10が片当たりにならないような3次元的に捻れた面に形成してあり、
前記操作レバー10を操作して前記アーム61から前記ピストン4の前記先端部4aを前記車両基体52側へ突出させることよって、前記アーム61の突出位置と退避位置を設定するように構成したことを特徴とする(請求項)。
【0010】
この構成であれば、アームの固定操作を手動で行なう場合に、安価に操作性を良くできる。
【0011】
本発明は、前記車両基体52に固定される第1固定基板70と第2固定基板71を有し、
前記第1固定基板70は、前記手動固定具1の前記ピストン4の前記先端部4aを前記バンパー53の前記突出位置に対応して固定する突出位置固定部72を有し、
前記第2固定基板71は、前記手動固定具1の前記ピストン4の前記先端部4aを前記バンパー53の前記退避位置に対応して固定する退避位置固定部80を有し、
前記第2固定基板71は前記支持軸54回りに回動できるように上部軸孔78を備えており、
前記車両基体52に前記第1固定基板70を固定し、
前記車両基体52に前記第2固定基板71に固定する際に、前記第2固定基板71を前記支持軸54回りに回動させて、前記退避位置固定部80の位置を設定した後、ボルト等の固定手段によって前記第2固定基板71を前記車両基体52に固定するように構成したことを特徴とする(請求項)。
この構成であれば、車両基体とアームの間に、固定基板を介在させることによって車両基板に対する可動バンパーの突出位置と退避位置を各種状況に対応して個々に設定することが簡単にできる。
また、アームとバンパーの間に接続部材(スペーサ)を設けた場合など、複数種のバンパーの形状に対応して固定基板を好ましい突出位置と退避位置にそれぞれ設定できる。
【0012】
本発明は、前記第1固定基板70に第1ガイド部77を設けるとともに前記第2固定基板71に第2ガイド部82を設け、それらの第1・第2ガイド部77・82は、前記突出位置から前記退避位置までの回動範囲において前記手動固定具1の前記ピストン4の前記先端部4aが前記車両基体52側に突出しないようにガイドすることを特徴とする(請求項)。
この構成であれば、操作者がアームを回動範囲内で回動させる時に、ピストンの前記先端部が突出しないように操作レバーを手前側に引きながらを操作することが不要になり、操作性を向上することができる。
また、本発明において、前記取付孔55〜60の少なくとも3つの取付孔55・58・59を使用して前記第1固定基板70と前記第2固定基板71を前記車両基体52に取付けることもできる
この構成であれば、予め形成された取付孔を利用して2種類の固定基板を取付けることで、取付手間とコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明であれば、従来の可動バンパーの取付け工数を大幅に減らして採用コストを低減できるとともに、低コストで提供できる利点を享受しつつ、可動バンパーの突出位置と退避位置との回動状態を長期間にわたって良好に維持して、バンパー装置の信頼性を向上することができる可動バンパーを提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る本可動バンパーの要部を車両後方側から見た正面図である。
図2】本実施形態に係る可動バンパーを車両幅方向から見た側面図である。
図3】(a)は本実施形態に係るアームの側面図、(b)は本実施形態に係るアームの正面図である。
図4】中間軸部材の拡大縦断面図を示し、中間軸部材の機能を説明するための図である。
図5】(a)〜(d)は各アームの車幅方向の傾きを説明するための図である。
図6】手動固定具の縦断面図である。
図7】ピストンが固定位置にあるときの手動固定具の斜視図である。
図8】ピストンが解除位置にあるときの手動固定具の斜視図である。
図9】ピストンが解除保持位置にあるときの手動固定具の斜視図である。
図10】(a)は第1・第2固定基板を車両基体に取り付けた様子を示す正面図、(b)は第1固定基板の側面図である。
図11】(a)は第2固定基板の正面図、(b)は第1固定基板の正面図である。
図12】車両基体に設けられた取付孔を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1図12は本発明の実施形態を示す可動バンパーを説明するための図である。
図1図2に示すように、本実施形態に係る可動バンパー51は、車両後方に設けられる車両基体52にバンパー53を回動自在に支持されたバンパー装置である。可動バンパー51は、車幅方向H(左右方向)にそれぞれ1つずつ設けられた車両基体52・52に立設された一対の支持軸54・54を有している。
車両基体52に対する支持軸54の取付けは、図12に示すように、法律に規定された複数の取付孔56〜60(現状は6つの孔)の最も好ましい位置の取付孔を支持軸54の取付孔として使用する。本実施形態では、取付孔55を支持軸54の取付孔として使用する場合が示してある。なお、図12において、符号87は車両基体52に取付けられた基台板である。
図3図4に示すように、アーム61の基端側には軸受部材62(図4参照)が設けられ、その軸受部材62には中間軸部材63が嵌入されている。中間軸部材63は支持軸54が挿通される軸穴64(図4参照)を有している。
【0016】
図4に拡大図で示すように、本実施形態に係る中間軸部材63の外周面は、軸方向の両端部を丸めた丸め部65を有している。丸め部65は両端部を旋盤等で切削加工することで行なったり、その他の加工方法で形成されてもよい。なお、図4では分かりやすくするために丸め部65の大きさは誇張して描かれている。
中間軸部材63の軸方向の中央部域には一定直径の円筒形部66が形成されている。丸め部65が形成された両端の直径を最も小さくして中央部域の円筒形部66に向うに従って滑らかに直径が大きくなるように構成されている。
また、軸受部材62の内直径D1と中間軸部材63両端の直径D2の差(X=D1−D2)はアーム61の想定する傾き角度−θ〜θを吸収できるように、その大きさが設定してある。
ア−ム61の傾き角度−θ、θは図5に示すように、車両前後方向Kに対して図5(a)に示すように内方に閉じるように傾いたり、図5(b)に示すように外方に開くように傾く場合や、図5(c)(d)に示すように左右(車幅方向H)の一方に両アーム61が傾く場合がある。
【0017】
図5に示す色々な傾きに対応できるように、車両基体52の内方側の丸め部65と車両基体52の外方側の丸め部65は基本的には同じように設定される。また、2つの丸め部65の長さL1とL3の長さは同じに設定されている。
なお、図4において示すL2は丸め部65のない円筒形部66の長さを示している。この長さL2は想定する最大傾き角度θの場合においても中間軸部材63が軸受部材62内でこじれないように適宜、設定する。
なお、図4で説明した中間軸部材63の周面の構成は、あくまで一例であり、実質的にアーム61の回動操作を円滑に行なうような丸め部65を有しているものであれば、その中間軸部材63の形状や構成は特に限定されない。
【0018】
[手動固定具の構成]
手動固定具1による可動バンパー51の突出位置と退避位置のそれぞれの固定構成について説明する。
図2図3に示すように、可動バンパー51は回動中心である支持軸54から所定距離離れたアーム61上に手動固定具1を固定してある。
アーム61に取り付けられた手動固定具1は、図6図9に示すように、シリンダ2を有してる。また、シリンダ2にピストン軸3を備えたピストン4を挿入している。シリンダ2の一端側(車両外方側)には小円開口5が開口され、他端(車両内方側)には大円開口6(図6参照)が開口してある。この大円開口6をアーム61上において車両基体52側に向けて配設する。
小円開口5を介してピストン軸3がシリンダ2から突出するようにしてある。ピストン軸3とピストン4との接続面である円形段差7(図6参照)とシリンダ2の一端側壁8の間に弾性部材9としてのコイルバネ9が介在させてある。コイルバネ9は操作レバー10によって作業者の力の掛からない時は、ピストン4の先端部4aをコイルバネ9の弾圧力によって大円開口6から所定距離突出させるように機能する。
【0019】
本実施形態では操作レバー10は手で握る把持部11とレバー軸12とを含んで構成してある。
ピストン軸3の先端部4aとレバー軸12の先端部4aには固定部13が設けられる。本実施形態の固定部13は、ピストン軸3の先端部4aに雌ネジ孔を設け、レバー軸12の先端部4aに雄ネジを設けて螺合によって固定する方法が採用してある。但し、螺合以外の他の連結構造を採用しても良い。
また、一端側壁8の操作レバー10側の面で小円開口5の回りに突起体16としての周壁19が設けてある。本実施形態では周壁19はシリンダ2の外周壁2aを延長した壁によって構成してある。周壁19には一対の案内面20・20が設けてある。これらの案内面20・20は操作レバー10のレバー軸12を案内するもので、底位置17から最高高さ位置18までレバー軸12を案内する。
一対の案内面20・20は周壁19の一部を略谷形(略V形)に切り欠くように形成してある。各案内面20は操作レバー10の回動時にレバー軸12が案内面20に片当たりにならないような3次元的に捻れた面に形成してある。
なお、符号30はピストン軸3の軸方向を示し、その軸方向30はアーム61の厚さ方向に設けられる。
【0020】
[固定基板の構成]
次に、車両基体52に可動バンパー51を取付ける工夫について説明する。
図12に示し、前記したように、既にバンパー53が取り付けられている車両基体52には車両後方の上側から順に、上列として第1取付孔55、第2取付孔56、第3取付孔57が設けられ、下列として第4取付孔58、第5取付孔59、第6取付孔60が設けられ、全体として平行四辺形状に配置されている。
本実施形態は、これらの第1取付孔55〜第6取付孔60を利用して可動バンパー51を取り付ける。具体的には、アーム61の突出位置と退避位置の詳細設定を図11に示す第1・第2固定基板70,71側で行なうことで、車両基体52を傷つけることなく、アーム61の回動範囲を設定する。
【0021】
固定基板は第1固定基板70と第2固定基板71から構成されている。
図10(b)に示すように、第1固定基板70は、上部から下部にかけて幅広となる形状であり、上部にスプリング等の弾性手段係止軸67を外方に向けて立設してあり、下部に突出位置固定部72としてのピストン嵌入穴73を有している。
また、第1固定基板70は、上部には嘴状の掛け片74を備えている。第1固定基板70の中央部には第4取付孔58(図12参照)にボルト止めするための位置決め孔75が設けられ、その位置決め孔75と前記掛け片74によって、ピストン嵌入穴73を所定設定位置に位置決めする(図10参照)。
また、第1固定基板70は後述する第2固定基板71を収容する収容部76と、その収容部76の下側に位置する弧形の第1ガイド部77と、突出側ストッパ85を有している。
【0022】
一方、図10(a)に示すように、第2固定基板71も上部から下部にかけて幅広となる形状であり、支持軸54が挿通する上部軸穴78と、支持軸54をその回転中心とする弧形スリット79と、退避位置固定部80としての退避位置固定端81と、第2ガイド部82と、退避側ストッパ86とを備えている。
退避位置固定端81はピストン4の先端部4aを第2固定基板71の厚さで係止するものである。
車両基体52の取付時には、第2固定基板71を支持軸54回りに回動して第5取付孔59(図12参照)に対する弧形スリット79の位置を変化させ、所望の退避位置を設定する。そして、第5取付孔59を通してボルト等の固定手段で第2固定基板71を車両基板52に固定することで、退避位置固定端81の位置を所望の位置に固定する。
【0023】
[本実施形態における作用の説明]
図1図12に示す可動バンパーの動作を説明する。
まず、可動バンパー51は、それぞれの支持軸54に回動自在にアーム61を取付け、それらのアーム61間に横架材で構成されたバンパー53を取り付けることで構成しているので、1本の支持軸54を一対の車両基体52・52間に掛け渡す構成に比べて、2つの穴の芯出し作業を不要とすることができる。
また、図4に示すように、中間軸部材63の両端部域に同じ丸め量、同じ長さの丸め部65を有しているので、図5(a)〜(d)に示す様々な左右のアーム61の傾きに対しても左右の中間軸部材63でその傾きを吸収できるので、長期間にわたって色々な要因によって生じるアーム61の傾きに対して対処できることになる。
さらに、図4に示すように、中間軸部材63の両端は軸受部材62よりも距離dだけ突出しているので、各アームのそれぞれの傾きに対してその影響を低減して、円滑なアームの回動操作を実現できる。
【0024】
次に、固定基板を車両基板52に固定する作業について説明する。
図10に示すように、第2固定基板71の先端円部に第1固定基板70の掛け片74を引っ掛けるとともに、第4取付孔58に立設されたボルトに第1固定基板70の位置決め孔75を通すことによって、ピストン嵌入穴73を突出位置に位置決めする。
また、第2固定基板71の上部軸穴78に支持軸54を通すとともに、第1固定基板70の収容部76内での第1固定基板70の傾きを設定する。具体的には、第5取付孔59から立設されたボルト等にナットなどで止めることによって、弧形スリット79の固定位置を決定する。
【0025】
第1・第2固定基板70・71を取付ける際、アーム61に固着された軸受部材62内に支持軸54を収容する。その後、第1固定基板70の弾性手段係止軸67とアーム61の取付け突起68の間にスプリングなどを掛け渡す。
この構成であれば、車両側の条件によって、図2に示すようにアーム61とバンパー53の間に長さ調節部材である接続部材84を設けた場合であっても固定基板70・71を介して車両基体52にアーム61を取付けることで、最適な突出位置、退避位置を設定して可動バンパー51を取付けることができる。
【0026】
[突出位置と退避位置の切換え操作]
最後に、可動バンパー51を取付けた後、作業者によるバンパーの突出位置と退避位置の切換え操作を説明する。
まず、図10に示すように、バンパー53の突出位置では、第1固定基板70のピストン嵌入穴73に手動固定具1のピストン先端部4aが嵌入しており、バンパーとして機能する状態とすることができる(図10において想像線4a−1で示す)。
次に、バンパーを退避させたい時は、操作レバー10の把持部11を持ち、案内面20にレバー軸12を沿わせた状態で操作レバー10を回動させると、レバー軸12の周面は案内面20にほぼ全面が当接した状態で滑るように案内される。レバー軸12のシリンダ2の軸方向の移動距離に対応して、ピストン4はシリンダ2内を回動しながらコイルバネ9の押圧力に抗してシリンダ2内に引き込まれる。この操作中、作業者は操作レバー10を上に引っ張るという感じはなく、レバー軸12が案内面20上を滑るように移動するので案内面20に沿って操作レバー10を回動させれば大きな力は必要ない。
【0027】
また、操作レバーのレバー軸12が回動しつつ上昇する場合に、案内面20は当接するべきレバー軸12の周面が描く3次元的な捻れ面となるように加工されているので、レバー軸12の周面は片当たりにならず、当接予定の周面のほぼ全面において摺動するので、抵抗も少なく、円滑にピストン4の引き込み動作を行うことができる。
ここで、可動バンパー51の両側の先端部4aがピストン嵌入穴73から出た時に、先端部4aが引き込まれた状態で退避位置側にアーム61を回動操作させると、先端部4aは第1ガイド部77、第2ガイド部82によって、先端部4aが突出することなく、案内される(想像線42−2,4a−3で示す)。そして、第2固定基板71の退避位置固定端81において、先端部4aが突出して退避位置への手動固定具1による位置決め操作が完了する(想像線4a−4で示す)。
この構成であれば、第1ガイド部77、第2ガイド部82によって先端部4aが突出することがないので、アーム61の回動操作を安定して行うことができる。
また、アーム61の回動操作中は、スプリング83によってアーム61は弾性手段係止軸67に引っ張られるので回動操作が安定して滑らかになる。
【0028】
本発明は上記実施形態以外にも本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形を行うことが可能である。
(1)本発明に係る可動バンパーは車両の後方に設ける場合が一般的であるが、車両の他の箇所に配設することを除外するものではない。
(2)必要であれば、図6図9に示した手動固定具以外の公知の手動固定具を採用することも可能である。
(3)予め車両基板52に設けられた取付孔の個数や位置は、法律等によって変わるものであり、本発明は図12に示された取付孔の数及び配置構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0029】
1…手動固定具
2…シリンダ
3…ピストン軸
4…ピストン
4a…ピストンの先端部
5…小円開口
6…大円開口
8…シリンダの一端側壁
9…手動固定具の弾性手段
10…操作レバー
16…突起体
20…案内面
51…可動バンパー
52…車両基体
53…バンパー
54…支持軸
55〜60…取付孔
61…アーム
62…軸受部材
63…中間軸部材
64…軸穴
65…丸め部
66…円筒形部
70…第1固定基板
71…第2固定基板
72…突出位置固定部
77…第1ガイド部
78…上部軸孔
80…退避位置固定部
82…第2ガイド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12