【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の可動バンパーであれば、支持軸を通す穴を車両基体に開ける必要がある。この穴開け作業は、車両基体に取付けてある各種部材の取り外しが必要になる場合も多い。さらに、穴空け工具による2つの穴の位置決め(芯出し作業)に多くの時間を必要として、結果的にコスト高になる課題があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は上記課題を解決できる可動バンパーを提供することにある。
具体的な目的の一例を示すと、以下の通りである。
(a)従来の構成に比べて、可動バンパーの取付け工数を大幅に減らして採用コストを低減できる可動バンパーを提供する。
(b)低コストで提供できる利点を享受しつつ、可動バンパーの突出位置と退避位置との回動状態を長期間にわたって良好に維持して、バンパー装置の信頼性を向上することができる可動バンパーを提供する。
なお、上記に記載した以外の発明の課題、その解決手段及びその効果は、後述する明細書内の記載において詳しく説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は多面的に表現できるが、例えば、代表的なものを挙げると、次のように構成したものである。なお、下記各発明において、各符号は後述する実施形態との対応関係を分かりやすくするために一例として示したものであり、本発明の各構成要素は、実施形態に記載した符号に係る構成に限定されないことは言うまでもない。
本発明は、車両の車幅方向に一対設けられた車両基体52にそれぞれ支持軸54を立設し、前記各支持軸54にアーム61を回動自在に取付け、前記アーム61間にバンパー53を横架した構成の可動バンパー51であって、
前記支持軸54が挿通する軸穴64を備えた中間軸部材63と、前記中間軸部材63を軸受けする軸受部材62とを有し、
前記軸受部材62は前記アーム61の基端側に取付けられ、
前記各アーム61が車幅方向に傾いたときでも前記回動操作を円滑に行えるように前記中間軸部材63はその軸方向両端部を丸めた丸め部65を有
し、
前記中間軸部材63の軸方向の長さを前記軸受部材62よりも大きく形成し、前記丸め部65の両端部を前記軸受部材62から突出させたことを特徴とする(請求項1)。
この構成であれば、新たに可動パンパーを車両基体に取り付ける場合に、一本の支持軸を車両基体に架け渡す必要がないので、穴を開ける際の芯出し作業などの精密な作業を省略でき、手間とコストを低減できる。
また、中間軸部材はその軸方向両端部を丸めた丸め部を有するので、可動アームを取り付けた後、なんらかの原因によって各アームが車幅中心方向、車幅外方向のいずれの方向に傾いても中間軸部材が軸受部材に対して傾くことが可能になり、傾きを吸収することができるので、長期間にわたって安定的にアームの回動操作を円滑に維持することができる。
また、中間軸部材の両端部には軸受部材は存在しないので、最も動きを制限する両端部において、丸め部がアームの傾きを吸収する作用を安定して機能させることができる。
【0007】
本発明は、前記車両基体52にバンパー取付け用の複数の取付孔55〜60が形成された車両に可動バンパー51を取付ける場合は、前記取付孔55〜60の一つの取付孔55を利用して前記支持軸54を前記車両基体52に立設状態にしたことを特徴とする(請求項2)。
この構成であれば、既に形成されたバンパーの取付孔を利用することで、稼働バンパーの取付けに要する手間とコストを大幅に低減することができる。この構成であると、一般に前記取付孔は芯出し精度はある程度確保されており、新しい孔を開ける作業が不要になるので、既に固定式バンパーなどを車両基体に取り付けてある車に、本稼働バンパーを取り替える場合に著しく取付工数を削減できる。
【0008】
本発明は、前記丸め部65を、断面視において前記両端部側の直径を小さく設定し、中央部域に行くに従って徐々に直径が大きくなるように形成し、前記中央部域に円筒形部66を残すように構成したことを特徴とする(請求項3)。
この構成であれば、実際に想定される傾きがアームに生じたときに、アームの動きを最も制限する両端部側を丸めているので、支持軸によってアームが円滑に回動操作されるための丸め部の加工量を減らすことができる。
また、軸方向の中央部域において、円筒形部を残すように形成しているので、両端部を丸めても軸受部材は円筒形部において十分な軸受けの機能を発揮できて、安定した回動操作を実現できる。
【0009】
本発明は、前記支持軸54の回動中心から離れた前記アーム61の所定位置に手動固定具1を取付けてあり、
前記手動固定具1は、ピストン軸3を備えたピストン4と、一端側には前記ピストン軸3が貫通する小円開口5が開口され、他端側には前記ピストン4の前記先端部4aが突出する大円開口6が開口してあるシリンダ2と、前記ピストン4を回動させる動作を行うように前記ピストン軸3に連結された操作レバー10と、前記シリンダ2内に収容され前記ピストン4の前記先端部4aを突出するように付勢する弾性手段9と、前記シリンダ2の一端側壁8に設けられた突起体16とを備え、前記突起体16は案内面20を有しており、
前記案内面20は前記操作レバー10の前記回動操作を前記ピストン4の進退動作に変換するための案内面であり、しかも、前記案内面20を前記操作レバー10が片当たりにならないような3次元的に捻れた面に形成してあり、
前記操作レバー10を操作して前記アーム61から前記ピストン4の前記先端部4aを前記車両基体52側へ突出させることよって、前記アーム61の突出位置と退避位置を設定するように構成したことを特徴とする(請求項
4)。
【0010】
この構成であれば、アームの固定操作を手動で行なう場合に、安価に操作性を良くできる。
【0011】
本発明は、前記車両基体52に固定される第1固定基板70と第2固定基板71を有し、
前記第1固定基板70は、前記手動固定具1の前記ピストン4の前記先端部4aを前記バンパー53の前記突出位置に対応して固定する突出位置固定部72を有し、
前記第2固定基板71は、前記手動固定具1の前記ピストン4の前記先端部4aを前記バンパー53の前記退避位置に対応して固定する退避位置固定部80を有し、
前記第2固定基板71は前記支持軸54回りに回動できるように上部軸孔78を備えており、
前記車両基体52に前記第1固定基板70を固定し、
前記車両基体52に前記第2固定基板71に固定する際に、前記第2固定基板71を前記支持軸54回りに回動させて、前記退避位置固定部80の位置を設定した後、ボルト等の固定手段によって前記第2固定基板71を前記車両基体52に固定するように構成したことを特徴とする(請求項
5)。
この構成であれば、車両基体とアームの間に、固定基板を介在させることによって車両基板に対する可動バンパーの突出位置と退避位置を各種状況に対応して個々に設定することが簡単にできる。
また、アームとバンパーの間に接続部材(スペーサ)を設けた場合など、複数種のバンパーの形状に対応して固定基板を好ましい突出位置と退避位置にそれぞれ設定できる。
【0012】
本発明は、前記第1固定基板70に第1ガイド部77を設けるとともに前記第2固定基板71に第2ガイド部82を設け、それらの第1・第2ガイド部77・82は、前記突出位置から前記退避位置までの回動範囲において前記手動固定具1の前記ピストン4の前記先端部4aが前記車両基体52側に突出しないようにガイドすることを特徴とする(請求項
6)。
この構成であれば、操作者がアームを回動範囲内で回動させる時に、ピストンの前記先端部が突出しないように操作レバーを手前側に引きながらを操作することが不要になり、操作性を向上することができる。
また、本発明において、前記取付孔55〜60の少なくとも3つの取付孔55・58・59を使用して前記第1固定基板70と前記第2固定基板71を前記車両基体52に取付ける
こともできる。
この構成であれば、予め形成された取付孔を利用して2種類の固定基板を取付けることで、取付手間とコストを低減することができる。