(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フロントウィンドウの下側に位置するフロントパネルと左右のドアパネルとの間にそれぞれコーナーパネルを配設し、キャビンを構成する車体パネルの一部を上記コーナーパネルにより隠蔽したキャブオーバー型車両において、
少なくとも上記左右何れかのコーナーパネルに、上記フロントパネルの表面と上記ドアパネルの表面とを連続させる面よりも車両前方側に向けて膨出する膨出部を形成して、該コーナーパネルの膨出部と上記車体パネルとの間に収容空間を画成し、該収容空間内に外部から情報を取得する情報取得装置を配設し、前記膨出部は、さらに車両最前端よりも後方に位置することを特徴とするキャブオーバー型車両。
上記車体パネルの箇所に、上記取付部と共に上記情報取得装置と上記電動格納ユニットとに共通する貫通孔を貫設し、該貫通孔を介して上記情報取得装置または電動格納ユニットの信号線を車室内に引き込み可能としたことを特徴する請求項5記載のキャブオーバー型車両。
【背景技術】
【0002】
この種の情報取得装置は運転者の運転操作を支援する運転支援システムなどに備えられており、例えばナビゲーション装置のGPSアンテナ、車両の外部を撮像するCCDカメラなどの撮像装置、車両の前方の物体を検知するミリ波レーダーなどのレーダー装置などを挙げることができる。
例えばGPSアンテナは衛星からGPS信号を受信し、このGPS信号に基づきナビゲーション装置により自車位置が特定されて目的地までの経路案内などに利用される。また撮像装置は、運転者にとって死角になる自車の左斜め前方且つ斜め下方、または右斜め前方且つ斜め下方の領域を撮像し、その撮像画像が運転支援のために車室内のディスプレイなどに表示される。またレーダー装置は自車の前方を走行中の先行車などを検知し、その検知情報から算出された相対距離や相対速度などに基づき車間距離が不適切と判断された場合には、必要に応じて警報や自動ブレーキが実行される。
【0003】
以上の情報取得装置は、本来の性能を最大限に発揮させるために適切な位置に設置する必要がある。例えばGPSアンテナでは良好な受信感度(即ち衛星の捕捉数)を確保するために、その上方が車体を構成する部材により遮られない位置が望ましい。キャブオーバー型のトラックではフロントウィンドウの傾斜が少ないため、車室内のインストルメントパネル上にGPSアンテナを設置すると、GPSアンテナの直上が鋼板製のルーフで遮られて受信感度が低下してしまう。
【0004】
そこで、一般的にGPSアンテナを車両のルーフ上に設置するケースが多いが、この場合にはGPSアンテナが外部に露出するため、第三者による悪戯に対して無防備になってしまう。また、GPSアンテナからの信号線を車室内に引き込むためにルーフに孔を貫設することから、防水対策を施したとしても経年変化による車室内への雨漏りの虞が生じる。
GPSアンテナの設置構造としては、例えば特許文献1に記載された技術を挙げることができる。当該特許文献1の技術では、車両の金属製のルーフの一部に開口部を形成して合成樹脂製の外装材で覆い、外装材の車室内側にGPSアンテナを設置している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術ではGPSアンテナの受信感度や悪戯防止の点では問題ないが、車両のルーフに開口部を形成しているため、たとえ外装材で閉塞したとしても雨漏りの問題を完全に解消することはできない。また、ルーフの一部を切り抜いて外装材を配設する作業は手間がかかるため、必然的に製造コストを高騰させるという新たな不具合も発生する。
【0007】
以上はGPSアンテナについて述べたが、撮像装置やレーダー装置についても同様であり、本来の性能を最大限に発揮させるために適切な位置への設置を要する一方、これとは別に悪戯防止や雨漏り防止についても配慮する必要があり、全ての要件を満足する最適な設置位置を見出せないのが現状である。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、本来の性能を最大限に発揮でき、且つ悪戯防止や雨漏り防止などの要件も満たすことができる最適な位置に情報取得装置を設置することができるキャブオーバー型車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、フロントウィンドウの下側に位置するフロントパネルと左右のドアパネルとの間にそれぞれコーナーパネルを配設し、キャビンを構成する車体パネルの一部をコーナーパネルにより隠蔽したキャブオーバー型車両において、少なくとも左右何れかのコーナーパネルに、フロントパネルの表面とドアパネルの表面とを連続させる面よりも車両前方側に向けて膨出する膨出部を形成して、コーナーパネルの膨出部と車体パネルとの間に収容空間を画成し、収容空間内に外部から情報を取得する情報取得装置を配設したものであ
り、膨出部を、さらに車両最前端よりも後方に位置することとしたものである。
【0009】
請求項
2の発明は、請求項
1において、情報取得装置を、衛星からのGPS情報を受信するGPSアンテナとしたものである。
請求項
3の発明は、請求項
1において、情報取得装置を、車両の外部を撮像する撮像装置としたものである。
請求項
4の発明は、請求項
1において、情報取得装置を、車両の前方の物体を検知するレーダー装置としたものである。
【0010】
請求項
5の発明は
、フロントウィンドウの下側に位置するフロントパネルと左右のドアパネルとの間にそれぞれコーナーパネルを配設し、キャビンを構成する車体パネルの一部をコーナーパネルにより隠蔽したキャブオーバー型車両において、少なくとも左右何れかのコーナーパネルに、フロントパネルの表面とドアパネルの表面とを連続させる面よりも車両前方側に向けて膨出する膨出部を形成して、コーナーパネルの膨出部と車体パネルとの間に収容空間を画成し、収容空間内に外部から情報を取得する情報取得装置を配設し、コーナーパネルにより隠蔽される車体パネルの箇所に、情報取得装置とミラーの電動格納ユニットとに共通する取付部を設け、収容空間内に情報取得装置と電動格納ユニットの何れかを選択的に配設して取付部に固定可能としたものである。
請求項
6の発明は、請求項
5において、車体パネルの箇所に、取付部と共に情報取得装置と電動格納ユニットとに共通する貫通孔を貫設し、貫通孔を介して情報取得装置または電動格納ユニットの信号線を車室内に引き込み可能としたものである。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように請求項1の発明のキャブオーバー型車両によれば、フロントパネルとドアパネルとの間に配設したコーナーパネルに、フロントパネルの表面とドアパネルの表面とを連続させる面よりも車両前方側に向けて膨出する膨出部を形成して、この膨出部と車体パネルとの間に画成された収容空間内に情報取得装置を配設した。
【0012】
従って、情報取得装置はコーナーパネルを介して外部の情報を容易に取得でき、その本来の機能を最大限に発揮させることができる。また、情報取得装置の信号線を車室内に引き込む箇所はコーナーパネルに覆われて雨滴が直接当たらないため、例えば雨滴が直接衝突するルーフに情報取得装置を設置した場合に比較して雨漏りの可能性を低減することができる。さらにコーナーパネルに隠蔽された情報取得装置は、ルーフに設置した場合のような第三者による悪戯の対象にならないため、悪戯による被害を未然に防止することができる。
【0013】
請求項2の発明のキャブオーバー型車両によれば、請求項1に加えて、情報取得装置を衛星からのGPS情報を受信するGPSアンテナとした。
GPSアンテナがコーナーパネル内に配設されることにより、例えば車室内に配設した場合に比較してGPSアンテナがより前方に位置し、上方のルーフにより遮られる領域が減少することから良好な受信感度を確保することができる。
【0014】
請求項3の発明のキャブオーバー型車両によれば、請求項1に加えて、情報取得装置を車両の外部を撮像する撮像装置とした。
コーナーパネルを介して撮像装置により車両の外部を容易に撮像できる。特にコーナーパネルは運転者の死角に最も近い位置に配設されるため、車体パネルに遮られて死角となる領域を的確に撮像してディスプレイなどに表示することができる。
【0015】
請求項4の発明のキャブオーバー型車両によれば、請求項1に加えて、情報取得装置を車両の前方の物体を検知するレーダー装置とした。
コーナーパネルを介してレーダー装置により車両の前方の物体を容易に検知できる。特に一組のレーダー装置をキャビンの前面の左右両側に離間配置する場合には、灯火類などを避けてレーダー装置の設置場所を確保する必要があるが、左右のコーナーパネル内を利用することにより、周辺部材に影響を及ぼすことなく適切位置にレーダー装置を配設することができる。
【0016】
請求項5の発明のキャブオーバー型車両によれば、請求項1乃至4に加えて、車体パネルに設けた情報取得装置とミラーの電動格納ユニットとの取付部を共通化し、情報取得装置と電動格納ユニットの何れかを選択的に固定可能とした。
例えば車両の仕向地に応じて情報取得装置と電動格納ユニットとを選択的に収容空間内に配設する場合であっても、それに応じて車体側に専用の取付部を設ける必要がなくなり、例えば必要に応じてコーナーパネルだけ専用品を用いて対応できる。よって、車両製造時の作業工程を簡略化でき、ひいては車両の製造コストを低減することができる。
【0017】
請求項6の発明のキャブオーバー型車両によれば、請求項5に加えて、取付部と同様に情報取得装置と電動格納ユニットの信号線を車室内に引き込むための貫通孔も共通化した。
従って、情報取得装置と電動格納ユニットとに応じて、車体側に専用の貫通孔を設ける必要がなくなり、車両製造時の作業工程を一層簡略化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をキャブオーバー型トラックにおけるGPSアンテナの設置構造に具体化した一実施形態を説明する。
図1は本実施形態のGPSアンテナの設置構造が適用されるキャブオーバー型トラックのキャビンを示す斜視図である。
車両のキャビン1は全体としてボックス状をなすように鋼板製の車体パネルで構成され、図示しない車体フレームの前部に設置されている。キャビン1に開口形成された開口部1a,1bにはフロントウィンドウ2やサイドミラー3を備えた左右のドアパネル4などの外装部材が取り付けられ、キャビン1の車室内にはインストルメントパネルや運転席などが配設されている。
【0020】
キャビン1前面のフロントウィンドウ2の下側において車体パネルはフロントパネル5を形成し、フロントパネル5の下側にはフロントグリル6が装着されている。フロントグリル6の左右には灯火類7が設置され、これらのフロントグリル6及び灯火類7の下側にはフロントバンパ8が取り付けられている。
図2は
図1中のA箇所に相当するGPSアンテナの配設状態を示す斜視図、
図3は同じくGPSアンテナの配設状態を示す分解斜視図である。
【0021】
フロントパネル5と左右のドアパネル4との間には合成樹脂製のコーナーパネル11がそれぞれ装着されている。なお、コーナーパネル11はビスにより装着してもよいし、ラッチによる掛止を用いて装着してもよい。また、コーナーパネル11の材料として、合成樹脂のほか、SMC(Sheet Molding Compound)等の繊維強化プラスチックを用いてもよい。コーナーパネル11により隠蔽される車体パネルの箇所は、隣接するフロントパネル5やドアパネル4の表面に対してコーナーパネル11の厚み相当分だけ凹設されており、これによりコーナーパネル11の装着時には、フロントパネル5及びドアパネル4の表面に対してコーナーパネル11の表面がほぼ面一となる。
【0022】
但し、コーナーパネル11の上部には膨出部12が形成され、この膨出部12の箇所では、フロントパネル5の表面とドアパネル4の表面とを連続させる面(即ち、上記面一となる面)よりもコーナーパネル11の表面が車体前方に向けて膨出している。この膨出部12の形成により、コーナーパネル11の膨出部12の箇所とその内側の車体パネルとの間には収容空間13が画成されている。
また、このようにコーナーパネル11の膨出部12は前方に向けて膨出しているが、車両の最前端に相当するフロントバンパ8の前面よりは車両後方に位置している。これにより、車長を延長することなく膨出部12を形成できるので、車両全体の設計を調整することなく膨出部12を形成するコーナーパネル11を容易に車両に搭載できる。
左右のコーナーパネル11は左右対称の同一構成であり、車体パネルへの取付についても共通する。但し、右側のコーナーパネル11が意匠的な機能を果たすだけであるのに対し、左側のコーナーパネル11内の収容空間13はGPSアンテナの設置にも利用されており、以下、その詳細を説明する。
【0023】
左側のコーナーパネル11の収容空間13内において、車体パネルにはGPSアンテナ14(情報取得装置)を取り付けるための取付部が設けられている。取付部は車体パネル上に上下及び左右に離間配置された計4つのネジ孔15であり、図示はしないが、車体パネルに貫設した孔の裏面側にナットを溶接して各ネジ孔15が構成されている。
GPSアンテナ14は収容空間13内に配設された上で、これらのネジ孔15に対してブラケット16を介して取り付けられている。なお、ブラケット16を用いることなくGPSアンテナ14を車体パネルに直接取り付けてもよいし、ネジ孔15以外の取付部を設けてもよい。
【0024】
ブラケット16は鋼板を折曲形成して製作され、GPSアンテナ14が載置・固定される載置面16a、その載置面16aの左右両端から上方に折曲された左右一対の連結面16b、両連結面16bの後端から左方及び右方に折曲された左右一対の取付面16cから構成されている。左右の取付面16cにはそれぞれ上下一対のビス孔16dが形成され(
図3に3箇所を示す)、これらのビス孔16dを介して車体パネルの各ネジ孔15に前方よりビス17を螺合させることにより、ブラケット16が車体パネルに取り付けられている。
【0025】
GPSアンテナ14はブラケット16の載置面16a上に載せられて図示しないビスで固定され、その信号線14aは車体パネルに貫設された貫通孔18を介して車室内に引き込まれて図示しないナビゲーション装置に接続されている。なお、貫通孔18と信号線14aとの間はパッキン19により防水されている。
一方、本実施形態のキャブオーバー型トラックでは、左側のコーナーパネル11内にGPSアンテナ14に代えてサイドミラー21の電動格納ユニット22を配設できるように構成されている。そのためにGPSアンテナ14と同じく、電動格納ユニット22も車体パネルのネジ孔15に対して取付可能に構成されている。なお、左側のコーナーパネル11内に電動格納ユニット22を配設する場合には、左側のドアパネル4に設けられたサイドミラー3が廃止される。また、右側のコーナーパネル11内にも電動格納ユニット22を配設してもよい。
【0026】
図4は電動格納ユニット22の配設状態を示す
図2に対応する斜視図である。電動格納ユニット22の左右両側にはフランジ部22aが形成され、図示はしないが両フランジ部22aには上記GPSアンテナ14のブラケット16と同一配置でビス孔が貫設されている。これらのビス孔を介して、ビス17により電動格納ユニット22が車体パネルのネジ孔15に固定される。
電動格納ユニット22の信号線22bは車体パネルの貫通孔18を介して車室内に引き込まれ、サイドミラー21を格納操作するための図示しない格納スイッチ及び電源に接続されている。
【0027】
電動格納ユニット22の上面からはステー23が突出し、ステー23はコーナーパネル11の上面に貫設されたステー孔11aを介して外部に延設されてクランク状に屈曲し、ステー23の上端にサイドミラー21が固定されている。なお、サイドミラー21に加えて足下視認用のサイドアンダーミラーを設けてもよい。
電動格納ユニット22にはモータ及びギヤ機構が内蔵され、モータの駆動によりギヤ機構を介してステー23と共にサイドミラー21が水平方向に回転駆動されるようになっている。車庫入れなどのようにサイドミラー21が周囲の障害物に干渉する虞がある場合に格納スイッチが操作され、その操作に応じて電動格納ユニット22によりサイドミラー21が通常角度から
図4中に矢印で示す前方に回転し、これにより障害物との干渉によるサイドミラー21の破損が防止される。
【0028】
左側のコーナーパネル11内に何れの装置を配設するかは、例えば車両の仕向地に応じて決定する。日本ではサイドアンダーミラーの装備が法規で義務付けられているため、左側のコーナーパネル11内に電動格納ユニット22を配設し、サイドミラー21と共にサイドアンダーミラーを備え付ければよい。
これに対して例えばブラジルでは、車両が盗難されたときに追跡できるように、自動的に自車位置を発信する追尾システムを車両に搭載することが法規で義務付けられており、必然的にGPS信号を受信するためのGPSアンテナ14の装備が必須となる。そこで、ブラジル向けの車両では左側のコーナーパネル11内にGPSアンテナ14を配設すればよい。また、顧客の希望に応じて、GPSアンテナ14と電動格納ユニット22との何れを搭載するかを選択するようにしてもよい。
【0029】
次に、以上のように構成されたキャブオーバー型車両におけるGPSアンテナ14の設置構造による作用を説明する。
周知のようにGPSアンテナ14は衛星からGPS信号を受信し、このGPS信号に基づきナビゲーション装置により自車位置が特定されて、例えば目的地までの経路案内などの運転支援が車室内の図示しないディスプレイやスピーカによって行われる。
GPSアンテナ14が本来の機能を発揮するには良好なGPS信号の受信感度が確保されている必要があり、そのためにはGPSアンテナ14の上方が車体を構成する部材、例えばキャビン1のルーフ部分などに遮られない必要がある。特に[背景技術]でも述べたようにフロントウィンドウ2の傾斜が少ないキャブオーバー型車両では、車室内のインストルメントパネル上にGPSアンテナ14を設置すると、金属製のルーフに遮られてGPSアンテナ14の受信感度が低下してしまう。
【0030】
本実施形態では、車両外部のコーナーパネル11内にGPSアンテナ14が配設されているため、インストルメントパネル上に設置した場合に比較してGPSアンテナ14がより前方に位置し、上方のルーフにより遮られる領域が減少する。結果として衛星の捕捉数が増加して良好な受信感度を確保でき、GPSアンテナ14の性能を最大限に発揮させることができる。
【0031】
また、雨天において雨滴が直接衝突するルーフにGPSアンテナを設置した場合には、その信号線の車室内への引き込みにより雨漏りの虞が生じ、この点は、ルーフの開口部を外装材で覆う特許文献1の技術でも同様である。本実施形態ではコーナーパネル11内にGPSアンテナ14が配設されるため、その信号線14aを車室内に引き込むための貫通孔18の箇所に雨滴が直接当たらない。よって、GPSアンテナ14の設置に起因して車室内に雨漏りが生じる可能性を大幅に低減することができる。
【0032】
また、当然であるがコーナーパネル11に隠蔽されたGPSアンテナ14は、ルーフに設置した場合のように第三者による悪戯の対象にもならない。特に上記したブラジル向けの車両では追尾システムが搭載されるが、GPSアンテナ14がルーフに設置されている場合には、当該追尾システムの機能を認識している犯人によりGPSアンテナ14が破壊されて追跡不能に陥ることもあり得る。コーナーパネル11内にGPSアンテナ14を配設することにより、このような悪意に対しても被害を未然に回避することができる。
【0033】
一方、本実施形態では左側のコーナーパネル11内の車体パネルに、取付部としてGPSアンテナ14と電動格納ユニット22とで共通するネジ孔15を設けると共に、信号線14a,22bの引込みのための貫通孔18も共通化している。
従って、車両の仕向地に応じてGPSアンテナ14と電動格納ユニット22とを選択的に搭載する場合であっても、それに応じて車両(キャビン1)側に専用のネジ孔15及び貫通孔18を設ける必要がなくなり、コーナーパネル11のみ専用品(ステー孔11aの有無)を用いるだけで対応できる。よって、車両製造時の作業工程を簡略化でき、ひいては車両の製造コストを低減できるという効果も得られる。
【0034】
ところで、コーナーパネル11内に配設される情報取得装置は上記したGPSアンテナ14に限るものではなく、例えば車両の外部を撮像するCCDカメラなどの撮像装置、或いは車両の前方の物体を検知するミリ波レーダーなどのレーダー装置も存在する。本実施形態では、これらの撮像装置及びレーダー装置もGPSアンテナ14に代えてコーナーパネル11内に配設可能であり、これらの例を以下に順次説明する。
【0035】
図5は撮像装置の配設状態を示す
図2に対応する斜視図であり、同図に基づき、まず撮像装置の設置構造について説明する。
GPSアンテナ14の場合と同じく、撮像装置31も左側のコーナーパネル11の膨出部12により形成された収容空間13内に配設され、ブラケット16により車体パネルに取り付けられる。そして、撮像装置31の信号線31aは車体パネルの貫通孔18を介して車室内に引き込まれ、図示しないディスプレイに接続される。
ブラケット16の基本構成はGPSアンテナ14用のものと同様であり、車体パネルに取付部として設けられた共通するネジ孔15に対してビス17により取り付けられる。コーナーパネル11の膨出部12には撮像装置31と対応する位置にレンズ孔11bが貫設され、このレンズ孔11bを介して撮像装置31による撮像が行われる。
【0036】
図6は車両正面より見た運転者の視界と撮像装置31の撮像領域とを示す説明図、
図7は同じく車両左側面より見た運転者の視界と撮像装置31の撮像領域とを示す説明図である。
撮像装置31が載置・固定されるブラケット16の載置面16aは、撮像装置31を所定の撮像方向に指向させるために角度設定されている。
具体的には、
図6,7に示すように運転者の左斜め前方への視界は、略水平方向には良好であるものの、図中に矢印で示す斜め下方にはキャビン1を構成する車体パネルによりほとんど遮られてしまう。この運転者にとって死角となる領域を撮像装置31により撮像すべく、撮像装置31を矢印で示す左斜め前方且つ斜め下方に指向させるようにブラケット16の載置面16aの角度が設定されている。撮像画像は信号線31aを経てディスプレイに入力され、車両の走行中にディスプレイ上に撮像画像が表示される。
【0037】
以上のように構成されたキャブオーバー型トラックにおいて、撮像装置31は運転者の死角となる領域を的確に撮像することが要求される。コーナーパネル11は運転者の死角に最も近い位置に設置されているため、車体パネルに遮られて死角となる領域を撮像装置31により的確に撮像することができる。しかも、このように撮像領域が的確であるだけでなく、撮像装置31をコーナーパネル11内に配設することにより、撮像方向についても最適化できる。
【0038】
即ち、運転者がディスプレイ上で撮像画像を確認する場合、たとえ死角となる領域が表示されていても、実際に着座位置から運転者が肉眼で視認した光景と異なる角度から撮像された画像の場合には、その画像中に表示された状況を運転者が直感的に把握できない。
図6,7に示すように、運転者の左斜め前方且つ斜め下方への視界は、コーナーパネル11の位置に相当する車体パネルにより遮られて死角を形成している。このため、コーナーパネル11内に配設された撮像装置31は、図中に矢印で示す運転者の視線上に位置することになり、且つ上記のように運転者の視線方向(左斜め前方且つ斜め下方)に指向している。このため、必然的に運転者が肉眼で視認した光景と同様の角度で死角となる領域が撮像装置31により撮像される。
【0039】
結果としてディスプレイ上には運転者が肉眼で視認した光景と同様の撮像画像が表示され、運転者は画像中に表示された状況、例えば障害物の有無などを直感的に把握することができる。以上のようにコーナーパネル11内に撮像装置31を配設することにより、その性能を最大限に発揮させることができる。
なお、この例では左側のコーナーパネル11のみに撮像装置31を配設したが、右側のコーナーパネル11内にも撮像装置31を配設してもよい。図示はしないが、右側の撮像装置31は運転者の右方の死角、即ち右斜め前方且つ斜め下方の領域を撮像するように角度設定される。よって、上記した左側の撮像装置31と同じく、運転者が肉眼で視認した光景と同様の角度で死角となる領域を撮像して表示でき、運転者が直感的に状況を把握可能となる。
【0040】
次に、レーダー装置の設置構造について説明する。
図8は左側のレーダー装置の配設状態を示す
図2に対応する斜視図である。
この例では、一組のレーダー装置41をキャビン1の前面の左右両側に離間配置し、両レーダー装置41からの検知信号に基づき車両前方の物体を認識する原理を採っている。キャビン1前面の左右位置には法規に基づき灯火類7などの設置が義務付けられている。このため、灯火類7などを避けてレーダー装置41の設置場所を確保する必要があると共に、レーダー装置41の特性上、高所への設置は検知機能の低下の要因になる。
【0041】
キャビン1の前面の左右両側にはコーナーパネル11が位置し、高さに関してもレーダー装置41の正常な検知機能を維持可能な範囲内となる。そこで、左右のコーナーパネル11内にレーダー装置41を配設している。
レーダー装置41の具体的な配設状態は上記したGPSアンテナ14や撮像装置31と同様である。左右のコーナーパネル11の収容空間13内にレーダー装置41が配設され、ブラケット16により車体パネルに取り付けられる。レーダー装置41の信号線41aは車体パネルの貫通孔18を介して車室内に引き込まれ、図示しない車間距離制御用の制御回路やディスプレイに接続される。
【0042】
ブラケット16は、車体パネルに取付部として設けられた共通するネジ部15に対してビス17により取り付けられる。コーナーパネル11の膨出部12にはレーダー装置41と対応する位置にグリル11cが形成され、このグリル11cを介してレーダー装置41から車両前方に対する電波の送受信が行われる。
例えば、レーダー装置41は自車の前方を走行中の先行車などを検知し、その検知情報に基づき制御回路により相対距離や相対速度などが算出され、車間距離が不適切と判断された場合には必要に応じてディスプレイ上での警報や自動ブレーキが実行される。
【0043】
以上のようにレーダー装置41の設置場所として左右のコーナーパネル11内を利用することにより、灯火類7などの周辺部材に影響を及ぼすことなく左右のレーダー装置41をそれぞれ適切位置に配設でき、その本来の性能を最大限に発揮させることができる。
なお、周知のように、この種の車間距離制御にはレーダー装置41に代えて撮像装置を利用する手法も存在する。当該手法では、キャビン1前面に左右に撮像装置を離間配置して、それぞれの撮像装置により撮像された画像を解析することで車間距離などを割り出して車間距離制御に利用している。このような場合でも左右の撮像装置を左右のコーナーパネル11内に配設すれば、上記レーダー装置41と同様の作用効果が得られる。
【0044】
一方、重複する説明はしないが、GPSアンテナ14の場合と同じく撮像装置31とレーダー装置41との何れにおいても、その設置に起因する雨漏りの可能性を大幅に低減できると共に、第三者による悪戯を未然に防止することができる。さらに、車体パネルのネジ孔15及び貫通孔18をGPSアンテナ14や電動格納ユニット22との間で共通化している。このため、これらの装置14,22に代えて撮像装置31或いはレーダー装置41を選択的にコーナーパネル11内に配設する場合であっても、車体側に専用のネジ孔15や貫通孔18を設ける必要は一切ない。よって、車両製造時の作業工程の簡略化、ひいては製造コスト低減を達成することができる。
【0045】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態ではトラックに適用し、そのキャビン1に設けたコーナーパネル11に膨出部12を形成して収容空間13を画成し、その収容空間13内にサイドミラー21の電動格納ユニット22、GPSアンテナ14、撮像装置31及びレーダー装置41を選択的に配設可能に構成したが、これに限ることはない。
【0046】
例えばキャブオーバー型車両としてバスに具体化してもよいし、或いは何れかの装置を省略したり、新たに別の装置を配設可能としたりしてもよい。さらに、コーナーパネル11内に複数の装置を選択的に配設可能とせずに、予め定めた特定の装置、例えばGPSアンテナ14だけをコーナーパネル11内に配設するようにしてもよい。この場合でも、GPSアンテナ14を最適位置に設置して最大限の性能を発揮させることができる。
また上記実施形態では、電動格納ユニット22やGPSアンテナ14の間でネジ孔15及び貫通孔18を共通化したが、必ずしも共通化する必要はなく、コーナーパネル内に配設する装置に応じて車体パネルにネジ孔15及び貫通孔18を設けるようにしてもよい。