【実施例】
【0056】
以下に本発明の実施例を記載する。ただし本発明はこれらに制限されない。各物性の測定方法は以下の通りである。
【0057】
(1)IR測定:
PERKIN−ELMER製 Spectrum One(商品名)を用い、以下の条件で反射法にて測定した。
・波長範囲:4000〜400cm
−1
・積算回数:16回
・分解能:4cm
−1【0058】
(2)GPC分析:
以下の条件で測定した。
・使用カラム:shodex Ashahipak GF−7M HQ(商品名)
・溶離液:0.1M NaCl水溶液
・カラム温度:40℃
・流量:1ml/min
・検出器:RI
・分子量校正曲線の作成:
プルランの分子量標準品としてShodex STANDARD(商品名) P−5(Mp=5900)、P−10(Mp=9600)、P−20(Mp=21100)、P−50(Mp=47100)を用いて分子量校正曲線を作成した。
【0059】
(3)融点測定:
BUCHI社製融点測定器B−545型を用い、目視にて測定を行った。
【0060】
(4)流動開始温度の測定:
島津製作所製キャピラリーレオメーター CFT−500D(商品名)を用いて、サンプルポリマー0.8gを加熱体にて40℃で5分間予熱し、その後3℃/分にて昇温させながら100Kgfの加重をピストンに加え、溶融ポリマーが流出し始めた温度を流動開始温度とした。ただし200℃を上限とした。
【0061】
(5)YI値測定:
日本電色工業株式会社製分光色彩計SE−2000を用い、ポリアスパラギン酸塩の5%水溶液を透過測定用セルに入れ、3回の測定値の平均よりYI値を算出した。
【0062】
(6)重合粘度の測定(攪拌トルク値の測定):
東京理科機械製の攪拌モーターEYELA MAZELA Z(商品名)を用い、重合中の粘度変化を攪拌トルク値で表した。
【0063】
<実施例1:マレアミド酸のトリエチルアミン塩の製造>
温度計、還流冷却管、機械攪拌機、滴下ロートを備えた500ml4口フラスコを用いて、窒素雰囲気下、トルエン200g中にマレアミド酸115gを懸濁させ、この懸濁液を攪拌しながら室温でトリエチルアミン102gを加えた。次いで60℃まで加熱し、その温度を2時間保持し、その後冷却した。ロータリーエバポレーターを用いて冷却後の反応マスからトルエンを減圧下で留去し、さらさらの白色粉体188gを得た。
【0064】
この白色粉体に対してIR測定を行い、マレアミド酸のトリエチルアミン塩が生成していることを確認した。そのIRチャートを
図1に示す。またNMR測定を行い、1H−NMRの積分比からトリエチルアミン塩化率が75%であることを確認した。そのデータを以下に示し、NMRチャートを
図2に示す。
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz) δ1.51(t,6.76H,J=7.2Hz),2.99(q,4.46H,J=7.2Hz),5.82(d,1H,J=13.2Hz),6.15(d,1H,J=13.2Hz),7.39(bs,1H),9.84(bs,1H)
【0065】
<実施例2:マレアミド酸のトリエチルアミン塩の重合によるポリアスパラギン酸ナトリウムの製造(溶媒使用の例)>
温度計、還流冷却管、機械攪拌機、滴下ロートを備えた500ml4口フラスコを用いて、窒素雰囲気下、実施例1で得たマレアミド酸のトリエチルアミン塩80gとキシレン53gを仕込み、攪拌しながら120℃まで温度を上げ、その温度で8.5時間重合させた。重合前は白色スラリー状態であったが、重合反応が進むと溶融塩を経て赤褐色の溶融ポリマーが生成した。この重合反応中、ポリマーは固結することなく攪拌機によって攪拌されていた。次いで、30gの水を添加して60℃まで温度を下げ、さらに50%NaOH水41gを添加して60〜80℃で処理を行った。ポリマーが完全に水に溶解したのを確認した後、攪拌を止めて静置し、2相分離させた。
【0066】
2相分離液からトリエチルアミンを含むキシレン相を除き、55質量%のポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。このポリアスパラギン酸ナトリウムの重量平均分子量(Mw)は12000であった。
【0067】
<実施例3:マレアミド酸のトリエチルアミン塩の重合によるポリアスパラギン酸前駆体ポリマーの製造>
磁気攪拌子を備えた100mlの試験管に、マレアミド酸3g、キシレン3gおよびトリエチルアミン2.68g(100モル%/マレアミド酸)を仕込み、窒素雰囲気下、攪拌しながら加熱した。加熱途中でマレアミド酸がトリエチルアミン塩となって溶融したのを確認した後、100℃で12時間重合させた。重合中、ポリマーは溶融状態であった。このポリマー溶融液からキシレンをデカント分離して室温まで冷却し、赤橙色のガラス状ポリマーを得た。
【0068】
この赤橙色のガラス状ポリマーに対してIR測定を行い、ポリコハク酸イミド構造とポリアスパラギン酸の3級アミン塩の構造を持つポリアスパラギン酸前駆体ポリマーが生成していることを確認した。そのIRチャートを
図3に示す。また、このポリマーのNaOH水溶液処理後のMwは10895であった。
【0069】
<実施例4〜8:マレアミド酸のトリエチルアミン塩の重合によるポリアスパラギン酸前駆体ポリマーの製造(トリエチルアミン量の影響)>
磁気攪拌子を備えた100mlの試験管各々に、マレアミド酸10gを仕込み、トリエチルアミンをそれぞれ15、30、50、75、100モル%/マレアミド酸と量を変えて添加し、窒素雰囲気下、攪拌しながら加熱した。120℃で6時間重合させてそれぞれポリアスパラギン酸前駆体ポリマーを得た。各々の重合条件、重合時の状態、および各種物性値を表1にまとめて示す。また、
図4〜8に実施例4〜8で得たポリマーのIRチャートをそれぞれ示す。
【0070】
<比較例1:マレアミド酸の重合によるポリコハク酸イミドの製造>
トリエチルアミンを添加せず、また重合温度を130℃としたこと以外は、実施例4の方法と同じ条件で行ったところ、ポリコハク酸イミドを得た。重合条件、重合時の状態および得られたポリコハク酸イミドの各種物性値を表1にまとめて示す。また、
図9にポリコハク酸イミドのIRチャートを示す。
【0071】
<実施例9:マレアミド酸のトリエチルアミン塩の重合によるポリアスパラギン酸ナトリウムの製造(無溶媒法の例)>
島津製作所製キャピラリーレオメーター CFT−500D(商品名)を用いて、実施例1で得たマレアミド酸のトリエチルアミン塩の粉体0.82gをシリンダー内に仕込み、130℃で2時間加熱し、ピストンで押出し溶融状態の赤橙色のポリマーを得た。これを10%NaOH水で処理し、5質量%のポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。このポリアスパラギン酸ナトリウムのMwは9000であった。
【0072】
<比較例2:マレアミド酸の重合によるポリアスパラギン酸ナトリウムの製造(無溶媒法)>
原料をマレアミド酸に変更したこと以外は、実施例9の方法と同様に行ったところ、重合後ポリマーはストランド状で得られた。また、NaOH水溶液処理後のポリアスパラギン酸ナトリウムのMwは4800であった。
【0073】
<実施例10:マレアミド酸のトリエチルアミン塩の重合によるポリアスパラギン酸ナトリウムの製造>
温度計、還流冷却管、機械攪拌機、滴下ロートを備えた500ml4口フラスコを用い、窒素雰囲気下、マレアミド酸60gとキシレン53gを仕込み、攪拌しながら加熱し、50℃でトリエチルアミン15.9g(30モル%/マレアミド酸)を添加し造塩した。さらに120℃まで温度を上げ、その温度で7時間重合させたところ、白色スラリー液から、溶融塩を経て赤褐色の溶融ポリマーが生成した。重合中、ポリマーは固結することなく攪拌機によって攪拌されていた。次いで、29gの水を添加し60℃まで温度を下げ、その後50%NaOH水41gを添加して60〜80℃で処理を行った。ポリマーが完全に水に溶解したのを確認した後、攪拌を止めて静置し2相分離させた。分液によりトリエチルアミンを含むキシレン相を除き、55質量%のポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。このポリアスパラギン酸ナトリウムのMwは11700であった。
【0074】
<比較例3:マレアミド酸の重合によるポリアスパラギン酸ナトリウムの製造(溶媒使用の例)>
温度計、還流冷却管、機械攪拌機、滴下ロートを備えた300ml4口フラスコを用い、窒素雰囲気下、マレアミド酸40gとキシレン40gを仕込み、攪拌しながら130℃まで温度を上げた。その温度で4.5時間重合させたところ、白色スラリー液から、赤橙色フォーム状重合物が生成し始め、重合1.5時間で固結して攪拌が止まった。そのまま3時間重合させたが固結状態は解消されなかった。冷却後、得られたフォーム状固体を粉砕し、NaOH水溶液で処理し、分液でキシレンを除き55質量%のポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。このポリアスパラギン酸ナトリウムのMwは9500であった。
【0075】
<実施例11および12:マレアミド酸のトリエチルアミン塩の重合によるポリアスパラギン酸ナトリウムの製造(3級アミン塩の含有量)>
添加するトリエチルアミンの量をそれぞれ26g(50モル%/マレアミド酸)および40g(75モル%/マレアミド酸)に変えたこと以外は、実施例10と同様にしてポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。重合時のポリマーの状態、攪拌機の状態、および分子量を、実施例10および比較例3と合わせて表2に示す。
【0076】
<実施例13:マレアミド酸のトリエチルアミン塩の重合によるポリアスパラギン酸ナトリウムの製造(高分子量の例)>
磁気攪拌子を備えた100mlの試験管に、マレアミド酸2gとトリエチルアミン0.88g(50モル%/マレアミド酸)を仕込み、窒素雰囲気下、攪拌しながら加熱した。加熱途中でマレアミド酸がトリエチルアミン塩となって溶融したのを確認した後、140℃で4時間重合させた。重合中ポリマーは溶融状態であった。これをNaOH水溶液で処理し、キシレン抽出でトリエチルアミンを除き、5質量%のポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。このポリアスパラギン酸ナトリウムのMwは14600であった。
【0077】
<実施例14〜18:マレアミド酸の各種3級アミン塩の重合によるポリアスパラギン酸ナトリウムの製造>
磁気攪拌子を備えた100mlの試験管に、キシレン3g、マレアミド酸3gおよび15モル%の各種3級アミンン仕込み、窒素雰囲気下、攪拌しながら100℃で6時間重合させた。これをNaOH水溶液で処理しポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。使用した3級アミンの種類、pK値、ポリマーの分子量を表3に示す。
【0078】
<比較例4:マレアミド酸の重合によるポリアスパラギン酸ナトリウムの製造>
3級アミンを使用しなかったこと以外は、実施例14と同様に行ったところ、マレアミド酸は重合せず原料回収であった。結果を表3に示す。
【0079】
<実施例19および20:マレアミド酸のトリエチルアミン塩の重合によるポリアスパラギン酸ナトリウムの製造(色相の比較)>
磁気攪拌子を備えた100mlの試験管に、キシレン3g、マレアミド酸3gおよび15モル%のトリエチルアミンを仕込み、窒素雰囲気下、攪拌しながら90℃で15時間、または100℃で12時間で重合させた。これをNaOH水溶液で処理し、ポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。このポリアスパラギン酸ナトリウムのMw、および5%水溶液のYI値を表4に示す。
【0080】
<比較例5:マレアミド酸の重合によるポリアスパラギン酸ナトリウムの製造(色相の比較)>
トリエチルアミンを使用せず、かつ130℃で12時間重合させたこと以外は、実施例19と同様にしてポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。このポリアスパラギン酸ナトリウムのMwおよび5%水溶液のYI値を表4に示す。
【0081】
<実施例21:マレアミド酸のトリエチルアミン塩の重合によるポリアスパラギン酸ナトリウムの製造(重合中の水の添加)>
温度計、還流冷却管、機械攪拌機、滴下ロートを備えた500ml4口フラスコを用い、窒素雰囲気下、マレアミド酸60gとキシレン53gを仕込み、攪拌しながら加熱し、80℃でトリエチルアミン26g(50モル%/マレアミド酸)を添加し造塩した。さらに120℃まで温度を上げて重合反応を開始した。この時点で白色スラリーから溶融塩状態に変化しており、機械攪拌機の攪拌トルク値は0.05N・mであった。さらに、重合の進行とともに赤橙色の溶融ポリマーが生成して粘度の上昇がみられ、重合開始から2時間の時点で、攪拌トルク値が0.15N・mまで上昇した。そこで、水6.6g(マレアミド酸に対して70モル%)を添加したところ粘度が下がり、トルク値は0.05N・mまで低下した。その後6時間重合させたが、トルク値は0.1N・mを超えなかった。次いで、29gの水を添加し60℃まで温度を下げ、その後50%NaOH水41gを添加して60〜80℃で処理を行った。ポリマーが完全に水に溶解したのを確認した後、攪拌を止めて静置し2相分離させた。分液によりトリエチルアミンを含むキシレン相を除き、55質量%のポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液を得た。このポリアスパラギン酸ナトリウムのMwは9342であった。
【0082】
<実施例22:マレアミド酸のトリエチルアミン塩の重合によるポリアスパラギン酸ナトリウムの製造(重合前の水添加)>
水の添加を、重合前のマレアミド酸をトリエチルアミンで造塩した時点で実施した以外は実施例21と同様に行ったところ、重合中攪拌トルク値は0.1N・mを超えなかった。得られたポリアスパラギン酸ナトリウムのMwは8875であった。
【0083】
<実施例23:マレアミド酸のトリエチルアミン塩の重合によるポリアスパラギン酸ナトリウムの製造(水の分割添加)>
実施例21において、水を攪拌トルクが0.1N・mとなった時点でマレアミド酸に対して10モル%ずつ添加する方法に変えた以外は同様に行ったところ、重合開始から8時間で5回水を添加し、重合中攪拌トルク値は0.1N・mを超えなかった。得られたポリアスパラギン酸ナトリウムのMwは10839であった。
【0084】
<実施例24:マレアミド酸のトリエチルアミン塩の重合によるポリアスパラギン酸ナトリウムの製造(重合中ジメチルホルムアミドの添加)>
実施例21において、水の代わりにジメチルホルムアミド6.6g(マレアミド酸に対して18モル%)を攪拌トルク値が0.15N・mになった時点で添加したところ、トルク値は0.14と僅かに下がった。さらにジメチルホルムアミド19.1g(マレアミド酸に対して52モル%)を追加で添加したところ、粘度が下がりトルク値は0.05N・mまで低下した。その後6時間で重合させたが、トルク値は0.1N・mを超えなかった。得られたポリアスパラギン酸ナトリウムのMwは9454であった。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】