(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源から出射された光の少なくとも一部を被検眼の角膜及び眼底に照射し、角膜からの反射光、眼底からの反射光を干渉光として受光素子により受光する干渉光学系を備え、
前記干渉光学系からの出力信号に基づいて被験者眼の眼軸長データを求める演算手段を備える眼軸長測定装置であって、
干渉光学系の測定光軸は、被験者眼に対して上下左右方向に移動可能であって、被験者眼の角膜頂点からずらした位置に移動可能であり、
前記演算手段は、予め取得された干渉光学系の測定光軸と被験者眼の角膜頂点との上下左右方向におけるアライメントずれ量と、被験者眼の角膜形状データもしくは予め設定された角膜形状データとに基づいて、前記干渉光学系の測定光軸が被験者眼の角膜頂点からずれた位置にて求められた眼軸長データを補正することによって、被験者眼の角膜頂点から被験者眼眼底との交点までの距離を補正後の眼軸長データとして演算することを特徴とする眼軸長測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した装置のように水晶体の混濁部分を回避するべく、測定光束の入射位置を被験者眼の瞳孔上で移動させて測定を行う場合、被験者眼の角膜頂点と測定光軸とのずれが大きくなればなるほど、測定誤差が大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記問題点を鑑み、被験者眼とのアライメントずれがあっても精度よく眼軸長を測定できる眼軸長測定装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
光源から出射された光の少なくとも一部を被験者眼の角膜及び眼底に照射し、角膜からの反射光、眼底からの反射光を干渉光として受光素子により受光する干渉光学系を備え、
前記干渉光学系からの出力信号に基づいて被験者眼の眼軸長データを求める演算手段を備える眼軸長測定装置において、
被験者眼の前眼部を撮影する前眼部撮影手段と、を備え、
前記演算手段は、
前記眼軸長測定時における前記前眼部撮影手段からの撮像信号に基づいて干渉光学系の測定光軸と被験者眼の角膜頂点との上下左右方向におけるアライメントずれ量を計測し、計測結果に基づいて前記眼軸長データを補正する演算手段であって、
前記アライメントずれ量と,被験者眼の角膜形状データもしくは予め設定された角膜形状データとに基づいて、前記干渉光学系の測定光軸が被験者眼の角膜頂点からずれた位置にて求められた眼軸長データを補正することによって、被験者眼の角膜頂点から被験者眼眼底との交点までの距離を補正後の眼軸長データとして演算することを特徴とする。
【0007】
(1)
光源から出射された光の少なくとも一部を被検眼の角膜及び眼底に照射し、角膜からの反射光、眼底からの反射光を干渉光として受光素子により受光する干渉光学系を備え、
前記干渉光学系からの出力信号に基づいて被験者眼の眼軸長データを求める演算手段を備える眼軸長測定装置であって、
干渉光学系の測定光軸は、被験者眼に対して上下左右方向に移動可能であって、被験者眼の角膜頂点からずらした位置に移動可能であり、
前記演算手段は、予め取得された干渉光学系の測定光軸と被験者眼の角膜頂点との上下左右方向におけるアライメントずれ量と、
被験者眼の角膜形状データもしくは予め設定された角膜形状データとに基づいて、前記干渉光学系の測定光軸が被験者眼の角膜頂点からずれた位置にて求められた眼軸長データを補正することによって、被験者眼の角膜頂点から被験者眼眼底との交点までの距離を補正後の眼軸長データとして演算することを特徴とする。
(2)
光源から出射された光の少なくとも一部を被検眼の角膜及び眼底に照射し、角膜からの
反射光、眼底からの反射光を干渉光として受光素子により受光する干渉光学系を備え、
前記干渉光学系からの出力信号に基づいて被験者眼の眼軸長データを求める演算手段を
備える眼軸長測定装置であって、
干渉光学系の測定光軸は、被験者眼に対して上下左右方向に移動可能であって、被験者
眼の角膜頂点からずらした位置に移動可能であり、
予め取得された干渉光学系の測定光軸と被験者眼の角膜頂点との上下左右方向における
アライメントずれ量に基づいて前記眼軸長データを補正する補正手段
と、
被験者眼角膜に対して角膜形状測定用の光を照射し、その反射光を受光して被験者眼の
角膜形状を測定する角膜形状測定手段
と、を備え、
前記補正手段は、
前記角膜形状測定光学系からの受光信号に基づいて被験者眼の角膜形状を計測し、
前記アライメントずれ量及び角膜形状測定の計測結果に基づいて前記眼軸長データを補
正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被験者眼とのアライメントずれがあっても精度よく眼軸長を測定できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係る眼軸長測定装置の外観構成図である。この装置は、いわゆる据え置き型の装置であって、基台1と、基台1に取り付けられた顔支持ユニット2と、基台1上に移動可能に設けられた移動台3と、移動台3に移動可能に設けられ、被験者眼に向けて測定光を照射し、被験者眼の眼軸長を非接触にて光学的に測定するための測定光学系を収納する測定部4と、を備える。測定部4は、移動台3に設けられたXYZ駆動部6により、被験者眼Eに対して左右方向(X方向)、上下方向(Y方向)及び前後方向(Z方向)に移動される。検者によってジョイスティック5が操作されると、移動台3は、図示無き摺動機構により基台1上をX方向及びZ方向に移動される。また、検者によって回転ノブ5aが回転操作されると、測定部4がXYZ駆動部6のY駆動によりY方向に移動される。また、ジョイスティック5の頂部には、測定開始スイッチ5bが設けられている。移動台3には、表示モニタ9が設けられている。
【0010】
図2、
図3は、本実施形態に係る眼軸長測定装置の光学系について説明する図である。測定部4に収納される測定光学系は干渉光学系10を含み、干渉光学系10は、眼底照射光学系100a及び角膜照射光学系200a、眼底受光光学系100b及び角膜受光光学系200b、参照光光学系500、からなる。
【0011】
眼底照射光学系100a及び角膜照射光学系200aは、低コヒーレント長の光束を出射する光源11を有し,光源11から出射した光束の一部を第1測定光(角膜測定光)及び第2測定光(眼底測定光)として被験者眼の角膜と眼底に各々に集光させる。
【0012】
図2(a)に示すように、光源11から出射された光束の一部は、コリメーターレンズ12、ハーフミラー13、集光レンズ14、三角プリズム15、ハーフミラー13、リレーレンズ18、リレーレンズ19、ハーフミラー20、ダイクロイックミラー21、対物レンズ22を経て、被験者眼Eの眼底に照射される。すなわち、コリメーターレンズ12〜対物レンズ22との光路間に配置されたこれらの光学部材は、眼底照射光学系100aとして配置されている。そして、被験者眼Eの眼底からの反射光は、眼底に照射されるまでの眼底測定光の進行方向に対して眼底照射光学系100の対物レンズ22〜集光レンズ14までの光路を逆方向に進行し、ハーフミラー13、集光レンズ24を介して、光ファイバー25の端部25aに入射する。すなわち、対物レンズ22〜光ファイバー25の端部25aとの光路間に配置された光学部材は、眼底受光光学系100bとして配置されている。
【0013】
また、
図2(b)に示すように、光源11から出射された光束の一部は、コリメーターレンズ12、ハーフミラー13、可動三角プリズム23、ハーフミラー13、リレーレンズ18、リレーレンズ19、ハーフミラー20、ダイクロイックミラー21、対物レンズ22を経て、被験者眼Eの角膜付近に照射される。すなわち、コリメーターレンズ12〜対物レンズ22との光路間に配置されたこれらの光学部材は、角膜照射光学系200aとして配置されている。そして、被験者眼Eの角膜からの反射光は、角膜に照射されるまでの角膜測定光の進行方向に対して角膜照射光学系200の対物レンズ12〜可動三角プリズム23までの光路を逆方向に進行し、ハーフミラー13で反射される。その後、集光レンズ24にて集光された後、光ファイバー25の端部25aに入射される。すなわち、対物レンズ22〜光ファイバー25の端部25aとの光路間に配置されたこれらの光学部材は、角膜受光光学系200bとして配置されている。
【0014】
前述の眼底測定光や角膜測定光と合成される参照光を生成する参照光光学系500は、光源側から順に、光源11、コリメータレンズ12、可動三角プリズム23、ハーフミラー13、リレーレンズ18、リレーレンズ19、反射ミラー51、反射ミラー52、リレーレンズ53、参照ミラー54、を含む。なお、矢印A方向に移動する可動三角プリズム23は、駆動部82によって駆動され、参照光の光路長を変化させるために用いられる。なお、本実施形態の光学配置によれば、三角プリズム23の移動に伴い、角膜測定光の光路長と参照光の光路長が同時に変化する。光源11から出射された低コヒーレント光は、ハーフミラー20で透過されるまで角膜照射光学系200と同様の光路を進行する。そして、ハーフミラー20にて透過された光は、ミラー51、ミラー52、リレーレンズ53を経て、参照ミラー54に到達する。参照ミラー54に到達した光は、参照ミラー54にて折り返され、リレーレンズ53、ミラー52、ミラー51を経て、ハーフミラー20を透過する。ハーフミラー20を透過した反射光は、角膜反射光と合成され干渉光とされたのち、角膜受光光学系200bと同様の光路を経て、光ファイバー25の端部25aに入射される。この場合、可動三角プリズム23の位置が変化しても、角膜測定光の全光路長(光源11〜角膜、角膜〜光ファイバ25の端部25a)と参照光の全光路長(光源11〜参照ミラー54、参照ミラー54〜光ファイバ25の端部25a)は干渉が起こりうる範囲でほぼ等しい関係で維持される。
【0015】
また、プリズム23の位置の移動によって参照光の光路長が変化されると、参照光光学系500による参照光の全光路長と,被験者眼の眼軸長によって変動する眼底測定光の全光路長(光源11〜眼底、眼底〜光ファイバ25の端部25a)とが干渉が起こりうる範囲でほぼ等しい関係となるときがある。この場合、参照ミラー54に到達した光は、可動三角プリズム23で折り返されてハーフミラー13で反射される際に、三角プリズム15にて折り返された眼底反射光と合成され干渉光とされたのち、光ファイバー25の端部25aに入射される。
【0016】
図3は本実施形態に係る測定部4が持つ分光光学系の概略構成図である。分光光学系600(スペクトロメータ部)は、コリメータレンズ60、グレーティングミラー(回折格子)61、集光レンズ62、円柱レンズ63、受光素子64にて構成されている。受光素子64は、赤外域に感度を有する一次元素子(ラインセンサ)を用いている。
【0017】
光ファイバー25の端部25aに入射した角膜測定光と参照光による干渉光及び眼底測定光と参照光による干渉光は、光ファイバ25を通じてもう一方の端部25bから出射される。そして、端部25bから出射された2つの干渉光は、コリメータレンズ60にて光束径を広げられた後、グレーティングミラー61にて周波数成分に分光される。周波数成分に分光された干渉光は、集光レンズ62、円柱レンズ63を経て、受光素子64の受光面に集光する。
【0018】
なお、被験者眼の眼軸長を非接触にて光学的に測定する測定光学系としては、これに限るものではなく、光源からの光の一部を測定光として被験者眼眼底に照射するとともに、該光源からの光の一部を参照光として参照面に照射し、該参照光と前記測定光の反射光との合成により得られる干渉光を受光する干渉光学系を含む測定光学系であればよい。例えば、被験者眼の角膜を参照面とし、光源からの光を被験者眼の眼底及び角膜に照射し、被験者眼の眼底及び角膜の反射光の合成により得られる干渉光を受光する干渉光学系を用いて眼軸長を求めるようにしてもよい(例えば、特開2005−348755号公報参照)。
【0019】
図2の説明に戻る。700は被験者眼の前眼部を撮影する観察光学系であり、被験者眼前方から、対物レンズ22、ダイクロイックミラー21、リレーレンズ71、撮像レンズ72、赤外域に感度を有する撮像素子73、を含む。なお、被験者眼Eの瞳位置と撮像素子73は略共役な関係となっている。
【0020】
さらに、眼Eの前眼部の前方には、眼Eの角膜Ecにリング指標を投影するための近赤外光であって光源11とは異なる波長の赤外光を発するリング指標投影光学系46が測定光軸L1を中心に配置されると共に、眼Eの角膜Ecに無限遠指標を投影することにより被験者眼に対する作動距離方向のアライメントずれを検出するための近赤外光を発する作動距離指標投影光学系45が測定光軸L1に対して左右対称に配置されている。なお、リング投影光学系46は、眼Eの前眼部を照明して観察する前眼部観察用照明光としても用いられると共に、角膜形状測定用の指標投影光学系として兼用される。すなわち、撮像素子73にて前眼部像と共に撮像されたリング指標像の形状に基づいて眼Eの角膜形状が測定される。
【0021】
図4は、本実施形態に係る眼科装置の制御系の構成について説明するための概略構成図である。装置全体の制御や測定値の演算等を行う制御部80は、測定部4に備わる各部材の他、前述の観察光学系700によって撮影された前眼部像や測定結果等を表示する表示モニタ9、XYZ駆動部6、測定結果等を記憶するメモリ85、回転ノブ5a、測定開始スイッチ5b、各種設定を行うためのスイッチが配置されたコントロール部86等が接続されている。ここで、メモリ85には、測定部4に設けられた測定光学系からの出力信号に基づく被験者眼の眼軸長データの算出、撮像素子73からの撮像(受光)信号に基づく被験者眼の角膜形状の計測、撮像素子73からの撮像信号に基づく測定光束の光軸と被験者眼との上下左右方向におけるアライメントずれ量の計測、等を行うための演算処理プログラムが格納されている。さらに、演算処理プログラムには、眼軸長測定時のアライメントずれ量及び角膜形状測定の計測結果に基づいて眼軸長データを補正するためのプログラムが含まれている。なお、制御部80は、前述の演算処理プログラムに基づきデータの演算処理等を行う。
【0022】
以上のような構成を備える眼科装置において、その動作について説明する。検者は、被験者の顔を顔支持ユニット2に固定させ、図示なき固視標を固視するよう指示した後、被験者眼Eに対する測定部4のX,Y及びZ方向のアライメントを行う。検者は、モニタ9を観察しながらジョイスティック5及び回転ノブ5aを操作し、二次元撮像素子73に撮像される前眼部像がモニタ9に表示されるようにラフなアライメントを行う。これにより、被験者眼の前眼部が撮像素子73によって撮影され、表示モニタ40上には、前眼部像、レチクルマーク101、リング投影光学系46によって投影されたリング指標像R、作動距離投影光学系45によって投影された無限遠指標像Mなどが表示される(
図5(a)参照)。
【0023】
検者は、表示モニタ40に表示されるリング像Rを見ながらジョイスティック5を操作して、リング像Rとレチクルマーク101が同心円になるように測定部4の位置を上下左右方向に調整する(
図5(b)参照)。その後、リング像Rが最も細くなるように、測定部4の作動距離方向の位置を調整する。そして、アライメントが完了して、検者から測定開始スイッチ5bが押されると、測定が行われる。
【0024】
ここで、制御部80は、撮像素子73からの撮像信号に基づいて被験者眼に対する測定部4のアライメントずれの検出が可能であり、その検出結果に基づいてXYZ駆動部6を駆動させ測定部4を移動させるようにしてもよいし(自動アライメント機能)、XY方向のアライメントずれ情報やZ方向のアライメントずれ情報(
図5のインジケータ参照)をモニタ9上に表示させるようにしてもよい。なお、被験者眼に対する上下左右方向におけるアライメントずれの検出結果は、後述補正処理に用いられる。この場合、制御部80は、リング指標Rの中心座標(撮像素子73に受光されるリング視標像の中心座標)に基づいて被験者眼に対する測定部4の上下左右方向のアライメントずれを求める。また、制御部80は、測定部4が作動距離方向にずれた場合に、前述の無限遠指標Mの間隔がほとんど変化しないのに対して、リング指標の所定経線方向の像間隔が変化するという特性を利用して、被験者眼に対する作動距離方向のアライメントずれを求める(詳しくは、特開平6−46999号参照)。
【0025】
測定開始のトリガ信号に基づき、制御部80は、光源11から低コヒーレント光を出射させると、受光素子64上で干渉縞のスペクトル情報が記録される。そして、そのスペクトル情報が制御部80へと入力され、フーリエ変換を用いて解析することで、被験者眼の深さ方向における眼特性情報が計測可能となる。
【0026】
ここで、被験者眼Eの眼軸長を求める場合、制御部80は、駆動部82を駆動させることにより可動プリズム23を移動させていき、受光素子64に受光されるスペクトル情報に基づいて得られる干渉信号と,プリズム23の移動によって変化される参照光の光路長(光路長可変手段の駆動結果),から被験者眼Eの眼軸長を求める。
【0027】
制御部80は、駆動部82を駆動させることにより可動三角プリズム23を実線で示す基準位置(ここでは角膜照射光学系の光路が最も短くなる位置)から矢印A方向に移動させ、角膜測定光と参照光が通る光学系の光路長を変化させていく。
【0028】
ここで、可動三角プリズム23が矢印方向に移動されることによって参照光の光路長が長くなっていき、眼底測定光の光路長と参照光との光路長との光路差が少なくなると、眼底測定光と参照光との干渉光が発生するようになる。
図6は、角膜測定光と参照光による干渉信号と,眼底測定光と参照光による干渉信号が検出されたときの被験者眼の深さ方向における干渉信号の強度を示す例である。なお、ACは角膜前面からの反射光による干渉信号、PCは角膜後面からの反射光による干渉信号、ARは被験者眼の網膜前面からの反射光による干渉信号であり、PRは被験者眼の網膜後面からの反射光による干渉信号である。
【0029】
ここで、干渉信号ACと干渉信号PRの両方が検出されるときのプリズム23の位置は、被験者眼の眼軸長によって異なる。そこで、制御部80は、プリズム23の移動位置毎にメモリ85に記憶されるスペクトル情報の中から干渉信号ACと干渉信号PRが検出されているスペクトル情報Sを特定する。そして、特定されたスペクトル情報Sが得られたときのプリズム23の位置情報(例えば、プリズム23の基準位置からの移動量(又は駆動部82の駆動量))を求める。さらに、制御部80は、干渉信号ACと干渉信号PRが検出されたときのスペクトル情報Sに基づいて深さ方向における干渉信号ACと干渉信号PRの位置情報を求める。
【0030】
より具体的には、制御部80は、干渉信号ACと干渉信号PRが検出されたスペクトル情報Sに基づいて干渉信号ACから干渉信号PRまでの深さ方向の寸法Laを求める。そして、スペクトル情報Sを取得した際のプリズム23の基準位置からの移動量に基づいて寸法Lbを求める。そして、制御部80は、寸法Laと寸法Lbを足し合わせることにより被験者眼の眼軸長を求める(眼軸長=La+Lb)。
【0031】
また、制御部80は、眼軸長測定時における撮像素子73からの撮像信号に基づいて測定光束の光軸L1と被験者眼との上下左右方向におけるアライメントずれ量を計測することにより、眼軸長測定時におけるアライメントずれ量を取得する。より具体的には、制御部80は、眼軸長測定のトリガ信号が入力されて測定光源が発光されているとき、もしくはその前後に撮像素子73によって撮像された前眼部像に基づいて、撮像素子73の撮像面上における所定のアライメント基準位置(撮像素子73の撮像面における測定光軸L1の位置)とリング指標Rの中心座標との距離(アライメントずれ量)及びずれ方向を検出し、その検出結果をメモリ85に記憶させる。
【0032】
また、制御部80は、上記眼軸長測定の前後に、観察光学系700の撮像素子73によって撮像されたリング指標像Rの形状に基づいて被験者眼の角膜曲率を計測しておく。より具体的には、制御部80は、リング像Rのエッジ座標から中心座標を算出し、所定角度(例えば、1度毎)の経線毎に中心座標からリングまでの距離を算出する。そして、中心座標からリングまでの所定角度の経線毎の距離が得られたら、これらのデータと既知の曲率球から得られ記憶されているデータとを比較して各経線毎の角膜曲率データを得る。これにより、各経線方向毎の角膜曲率を求めることができる。なお、被験者眼の角膜頂点と測定光軸のずれが大きい状態で上記眼軸長測定がされても、角膜曲率の測定は被験者眼の角膜頂点と測定光軸L1を一致させた状態で測定を行うのが好ましい。この場合、角膜曲率測定専用のスイッチを機械的もしくは電気的に設け、眼軸長測定時とは独立したアライメント調整を行った後に、専用のスイッチからのトリガ信号(眼軸長測定開始のトリガ信号とは別)に基づいて角膜曲率を測定するようにしてもよい。
【0033】
以上のようにして各経線毎の被験者眼の角膜曲率が計測されたら、制御部80は、前述のように検出されるアライメントずれの方向に対応する経線方向の角膜曲率データを補正用角膜曲率データrとして得る。
図7は、被験者眼角膜がトーリック面の場合の各経線毎の曲率半径を表す分布図である。ここで、制御部80は、前述のように検出されるアライメントずれ方向が水平方向に対して45度の方向であった場合(図中矢印D参照)、水平方向に対して45度の経線方向における角膜曲率データを補正用データrとして得る。
【0034】
以上のようにして、眼軸長測定データと、眼軸長測定時の被験者眼に対するアライメントずれ量と、補正用の角膜曲率データが得られたら、制御部80は、アライメントずれによる測定誤差を補正するべく、補正処理を行う。
【0035】
図8は、本実施形態に係る補正処理について説明する図である。
図8において、ERは測定時に得られる補正前の眼軸長測定データに対応し、測定光軸L1と角膜Ecとの交点aから被験者眼Eの光軸ESと網膜(眼底)Efとの交点fまでの距離を表す。ELは後述する補正処理によって求める眼軸長測定データに対応し、被験者眼Eの光軸ES上に形成される被験者眼Eの角膜頂点Evから網膜上の交点fまでの距離を表す。また、rは被験者眼Eの角膜曲率半径、Ccは角膜曲率中心、hは前述のように求められるアライメントずれ量に対応し測定光軸L1と被験者眼Eの光軸ESとの上下左右方向における光軸ずれ量を表す。また、θは光軸Esに対する線分aCcの傾斜角を表し、以下の式によって求められる。
【0037】
φは光軸Esに対する線分afの傾斜角を表し、以下の式によって求められる。
【0039】
そして、交点aから光軸ESへ下ろした垂線の交点bと角膜曲率中心Ccとの距離tは、式t=rcosθによって求めることができる。これにより、角膜頂点Evから交点bまでの距離EL1が、式EL1=r−tによって求められる。また、交点bと交点fとの距離EL2は、式EL2=ERcosφによって求めることができる。
【0040】
ここで、上記のように求められるEL1とEL2を足し合わせると、距離ELを求めることができる(EL=EL1+EL2)。すなわち、本実施形態では、アライメントずれ量hと角膜形状データrに基づいて、被験者眼角膜Ecと干渉光学系10との測定光軸L1との交点aより被験者眼光軸ESに垂線を引いた場合の交点bから角膜頂点Evまでの距離EL1を第1の距離として求め、アライメントずれ量hと補正前の眼軸長データERに基づいて、被験者眼角膜Ecと干渉光学系10との測定光軸L1との交点aより被験者眼光軸ESに垂線を引いた場合の交点bから被験者眼の光軸ESと被験者眼眼底との交点fまでの距離を第2の距離EL2として求め、第1の距離EL1と第2の距離EL2を足し合わせることにより被験者眼の角膜頂点から被験者眼の光軸と被験者眼眼底との交点までの距離ELを補正後の眼軸長データとして演算する。
【0041】
すなわち、測定時に求められた眼軸長測定データERを眼軸長測定時におけるアライメントずれ量及び角膜形状測定の計測結果に基づいて補正することにより正しい眼軸長測定データELを求めることができる。したがって、被験者眼の光軸ESと測定光軸L1との間で位置ずれがあっても、測定誤差を解消することができる。これにより、白内障による水晶体の混濁を避けるべく、被験者眼の角膜頂点からずらした位置に測定光軸L1が置かれた状態で測定が行われても、測定誤差の少ない測定結果を得ることができる。また、必ずしも被験者眼に対する位置合わせを厳密に行う必要が無くなるため、アライメントの許容範囲が広がり、被験者眼に対する位置合わせの手間が軽減される。
【0042】
以上のようにして、演算された眼軸長データは、モニタ9、図示無きプリンタによって表示される他、他の機器にデータとして通信される。この場合、角膜上における複数の位置にて測定が行われ補正された眼軸長データが複数得られた場合には、複数のデータから平均して眼軸長値を求めるようにすれば、信頼性の高いデータを得ることができる。
【0043】
なお、以上の説明においては、1つのリング状指標を被験者眼角膜上に投影するような構成とし、交点aから角膜中心Ccまでの距離と、角膜頂点Evから角膜中心Ccまでの距離を1つのリング状指標によって求められた角膜曲率半径rと近似して補正処理を行うようにしたが、これに限るものではない。すなわち、複数のリング状指標を被験者眼角膜上に投影し、経線方向の複数位置での角膜曲率を測定することにより被験者眼の角膜頂点付近から角膜周辺部までの全体的な角膜曲率分布の測定データを得る構成であってもよい。このような測定データが得られれば、交点a付近における角膜曲率に基づいて交点aから角膜中心Ccまでの距離Gが、角膜頂点Ev付近における角膜曲率に基づいて角膜頂点Evから角膜中心Ccまでの距離Hが求められる。この場合、角膜頂点Evから交点bまでの距離EL1は、EL1=H−Gcosθにより求められる。これにより、角膜頂点Evから交点bまでの距離EL1をより正確に求めることができるため、より精度の高い補正が可能となる。なお、以上の説明においては、被験者眼の角膜曲率を求めたが、被験者眼の角膜形状を測定できるものであればよく、被験者眼の光軸ES方向における被験者眼角膜の高さ情報を複数のリング状指標の像位置に基づいて演算し、被験者眼の角膜頂点から交点aまでの光軸ES方向における高低差から距離EL1を求めるようにしてもよい。
【0044】
なお、以上の説明においては、被験者眼の角膜上に指標を投影することにより被験者眼の角膜形状(例えば、角膜曲率)を求めるような構成としたが、これに限るものではなく、被験者眼角膜に対して角膜形状測定用の光を照射し、その反射光を受光して被験者眼の角膜形状を測定する構成であればよい。例えば、被験者眼前眼部をスリット光により光切断しシャインプルーフの原理に基づいて配置された撮影光学系により前眼部断面を得て、得られた前眼部断面画像に基づいて被験者眼の角膜形状を測定するようにしてもよい。また、被験者眼前眼部の断面画像を撮影する前眼部OCT装置を用い、取得された前眼部OCT画像に基づいて被験者眼角膜の角膜形状を測定するようにしてもよい。
【0045】
また、以上の説明においては、被験者眼の角膜形状データを眼軸長データの補正に用いるようにしたが、これに限るものではなく、予め設定された角膜形状データ(例えば、上記補正式において、r=8mmとして設定する)を用いるようにしてもよい。これにより、眼軸長測定時のアライメントずれ量に基づいて眼軸長データを補正することが可能となる。この場合、予め設定された角膜形状データを用いて,補正前の眼軸長測定データとアライメントずれ量の組み合わせに対応する補正値のテーブルを予め作成し、メモリ85に記憶させておくようにしてもよい。
【0046】
また、上記のような角膜形状測定光学系を持つ他の眼科装置によって取得された被験者眼の角膜形状測定データをメモリ85に記憶させておき、眼軸長データの補正の際にメモリ85に記憶された角膜形状測定データを用いるようにしてもよい。また、前述のような眼軸長データを補正するためのプログラムを外部PCのメモリに記憶させ、眼軸長測定光学系と前眼部撮像光学系を有する装置本体から得られる眼軸長データとアライメントずれ量に基づいて眼軸長データの補正を行うようにしてもよい。