特許第5650908号(P5650908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5650908樹脂組成物及びその樹脂組成物を用いて得られる樹脂付銅箔
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5650908
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びその樹脂組成物を用いて得られる樹脂付銅箔
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/56 20060101AFI20141211BHJP
   C08G 59/30 20060101ALI20141211BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20141211BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   C08G59/56
   C08G59/30
   B32B15/08 U
   H05K1/03 610L
【請求項の数】14
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2009-520611(P2009-520611)
(86)(22)【出願日】2008年6月25日
(86)【国際出願番号】JP2008061529
(87)【国際公開番号】WO2009001850
(87)【国際公開日】20081231
【審査請求日】2011年5月17日
(31)【優先権主張番号】特願2007-166869(P2007-166869)
(32)【優先日】2007年6月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】松島 敏文
(72)【発明者】
【氏名】松永 哲広
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−193188(JP,A)
【文献】 特開2005−213352(JP,A)
【文献】 特開2001−181593(JP,A)
【文献】 特開2007−099956(JP,A)
【文献】 特開2006−328214(JP,A)
【文献】 特開2005−132925(JP,A)
【文献】 特開平11−186724(JP,A)
【文献】 特開平11−186723(JP,A)
【文献】 特開平11−279258(JP,A)
【文献】 特開2005−314449(JP,A)
【文献】 特開2002−128867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00− 59/72
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板の絶縁層を形成するために用いる樹脂組成物であって、以下のA成分〜F成分の各成分を、以下の範囲の含有量(樹脂組成物重量を100重量部としたときの重量部として記載)で含むことを特徴とするプリント配線板製造用の樹脂組成物。
A成分: エポキシ当量が200以下で、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上を3重量部〜20重量部。
B成分: エポキシ樹脂の硬化反応に寄与する水酸基又はカルボキシル基のうち少なくとも1つ以上の架橋可能な官能基を有する線状ポリマーを3重量部〜30重量部。
C成分: 架橋剤を3重量部〜10重量部(但し、A成分がB成分の架橋剤として機能する場合には0重量部〜10重量部)。
D成分: 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン又は2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンを5重量部〜20重量部。
E成分: 臭素化エポキシ樹脂を当該臭素化エポキシ樹脂由来の臭素原子が樹脂組成物重量を100重量%としたとき12重量%〜18重量%の範囲で含有するように定めた重量部。
F成分: トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種以上を3重量部〜20重量部。
【請求項2】
プリント配線板の絶縁層を形成するために用いる樹脂組成物であって、以下のA成分〜F成分の各成分を、以下の範囲の含有量(樹脂組成物重量を100重量部としたときの重量部として記載)で含むことを特徴とするプリント配線板製造用の樹脂組成物。
A成分: エポキシ当量が200以下で、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上を3重量部〜20重量部。
B成分: エポキシ樹脂の硬化反応に寄与する水酸基またはカルボキシル基のうち少なくとも1つ以上の架橋可能な官能基を有する線状ポリマーを3重量部〜30重量部。
C成分: 架橋剤を3重量部〜10重量部(但し、A成分がB成分の架橋剤として機能する場合には0重量部〜10重量部)。
D成分: 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン又は2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンを5重量部〜20重量部。
E成分: リン含有エポキシ樹脂を当該リン含有エポキシ樹脂由来のリン原子が樹脂組成物重量を100重量%としたとき0.5重量%〜3.0重量%の範囲で含有するように定めた重量部。
F成分: トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種以上を3重量部〜20重量部。
【請求項3】
前記E成分であるリン含有エポキシ樹脂は、分子内に2以上のエポキシ基を備える9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド誘導体である請求項2に記載のプリント配線板製造用の樹脂組成物。
【請求項4】
前記B成分である架橋可能な官能基を有する線状ポリマーは、ポリビニルアセタール樹脂又はポリアミドイミド樹脂を用いる請求項1〜請求項3のいずれかに記載のプリント配線板製造用の樹脂組成物。
【請求項5】
前記C成分である架橋剤は、ウレタン系樹脂を用いる請求項1〜請求項4のいずれかに記載のプリント配線板製造用の樹脂組成物。
【請求項6】
F成分の多官能エポキシ樹脂としてオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を添加した請求項1〜請求項5のいずれかに記載のプリント配線板製造用の樹脂組成物。
【請求項7】
G成分として硬化促進剤を添加した請求項1〜請求項6のいずれかに記載のプリント配線板製造用の樹脂組成物。
【請求項8】
銅箔の片面に半硬化樹脂層を備えた樹脂付銅箔において、
当該半硬化樹脂層は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて、5μm〜100μmの平均厚さとして形成したことを特徴とするプリント配線板製造用の樹脂付銅箔。
【請求項9】
前記銅箔は、その半硬化樹脂層の形成面が表面粗さ(Rzjis)が3.0μm以下の低粗度表面を備えるものを用いる請求項8に記載のプリント配線板製造用の樹脂付銅箔。
【請求項10】
前記銅箔の半硬化樹脂層を形成する表面にシランカップリング処理層を備える請求項8又は請求項9に記載のプリント配線板製造用の樹脂付銅箔。
【請求項11】
2枚の前記樹脂付銅箔の1種を用いて、それぞれの樹脂付銅箔の樹脂面同士を合わせて当接させ、圧力20kgf/cm、温度180℃×1時間の条件で熱間プレス成形を行い銅張積層板とし、当該銅張積層板の両面にある銅箔層をエッチング除去して樹脂フィルムとし、この樹脂フィルムを動的粘弾性測定装置(DMA)で動的粘弾性を測定して得られる30℃における貯蔵弾性率が、3.0GPa未満となる半硬化樹脂層を備える請求項8〜請求項10のいずれかに記載のプリント配線板製造用の樹脂付銅箔。
【請求項12】
請求項8〜請求項11のいずれかに記載のプリント配線板製造用の樹脂付銅箔の製造方法であって、
以下の工程a、工程bの手順で樹脂層の形成に用いる樹脂ワニスを調製し、当該樹脂ワニスを銅箔の表面に塗布し、乾燥させることで5μm〜100μmの平均厚さの半硬化樹脂膜を形成して樹脂付銅箔とすることを特徴とするプリント配線板製造用の樹脂付銅箔の製造方法。
工程a: 前記A成分、B成分、C成分(A成分がB成分の架橋剤として機能する場合には省略可)、D成分、E成分、F成分、G成分の内、A成分〜F成分を必須成分とした樹脂組成物の重量を100重量%としたとき、E成分由来の臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲又はリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲で含有するように各成分を混合して樹脂組成物とする。
工程b: 前記樹脂組成物を、有機溶剤を用いて溶解し、樹脂固形分量が25重量%〜50重量%の樹脂ワニスとする。
【請求項13】
前記工程aの樹脂組成物に、G成分として硬化促進剤を添加する請求項12に記載のプリント配線板製造用の樹脂付銅箔の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて絶縁層を構成したことを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願に係る発明は、プリント配線板の絶縁層構成用の樹脂組成物及び樹脂付銅箔並びに樹脂付銅箔の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂付銅箔は、プリント配線板製造の分野で、種々の使用目的の下で用いられてきた。例えば、特許文献1には、周辺の銅箔が露出した余白部があるように樹脂を銅箔の表面に形成した樹脂付銅箔を採用して、樹脂付銅箔の裏面での打痕の発生を防止することが開示され。樹脂付銅箔の形態をプレス加工時の打痕の防止に用いている。
【0003】
また、特許文献2には、ビルドアッププリント配線板でビルドアップ層を形成するため樹脂付銅箔をコア層に積層する製造方法において、積層時コア層IVH近傍の銅箔凹みを抑え、レジスト用ドライフィルムの密着性が良好で気泡の発生が無く、結果として精細パターンが精度良く得ることを目的として、コア層IVHに樹脂付銅箔の樹脂層の樹脂成分を流入させ、影響の無い凹みに抑えるために、必要な厚さの銅箔の樹脂付銅箔を用いることが開示されている。
【0004】
その他、樹脂付銅箔は、その樹脂層に、骨格材を用いないため耐マイグレーション性に優れ、ガラスクロスを骨格材として用いたプリプレグと異なりクロス目が基板表面に浮き出すのを防止する用途等に用いられてきた。例えば、特許文献3には、高電圧で使用しても絶縁劣化の虞れが無く、しかもコストアップが充分に抑制できるようにしたプリント配線板等の提供を目的として、ガラス繊維基板材と配線層及び配線パターンの間に、ガラス繊維を含んでいない絶縁膜を設け、配線層及び配線パターンがガラス繊維基板材内にあるガラス繊維に接触することがないようにするにあたり、前記ガラス繊維を含まない絶縁膜が、絶縁樹脂付銅箔の絶縁樹脂部分で形成され、前記配線パターンが形成された銅箔層が、この絶縁樹脂付銅箔の銅箔部分で形成されていることを特徴とするプリント配線板を採用することが開示されている。この結果、耐マイグレーション性が向上し、絶縁層と配線層及び配線パターンの接着強度が向上し、高い信頼性と長寿命化を得ることができるとしている。
【0005】
以上のことから理解できるように、樹脂付銅箔は、プリント配線板の形状起因の欠点を補う用途で使用されてきた。ところが近年は、その樹脂付銅箔を構成する銅箔のロープロファイル化が要求されてきた。即ち、銅箔の樹脂層を形成する側の銅箔の表面粗さの低い製品が望まれてきた。銅箔をエッチング加工して回路を形成する際のエッチング精度を向上させ、ファインピッチ回路の形成を容易に出来るからである。また、高周波信号の伝送を行う場合に、伝送ロスの少ないプリント配線板を提供できるからである。
【0006】
このような要求に対して、銅箔の張り合わせ面に粗化処理を施していない無粗化銅箔の使用が行われるようになってきた。当初、この無粗化銅箔は、FR−4グレードのプリプレグ等の絶縁層構成材料に対して、加熱を行いプレス加工して張り合わせられ銅張積層板に加工して用いられていた。このような一般的な方法で銅張積層板を製造すると、無粗化銅箔とプリプレグ等の絶縁層構成材料との間での密着安定性に関しての問題があった。
【0007】
そこで、特許文献4に開示しているように、無粗化銅箔を樹脂付き銅箔の形で用いることが提唱されてきた。この特許文献4には、粗化銅箔を用いた場合と匹敵する引き剥し強さと、エッチング処理後に銅粒子が樹脂中に残らない回路形成に優れた銅張積層板用銅箔の提供を目的として、無粗化銅箔に2層以上の接着層を設けてなる銅張積層板用銅箔において、前記接着層の1層目がポリビニルアセタール樹脂100重量部にエポキシ樹脂 1〜50未満重量部を含有することを特徴とする銅張積層板用銅箔が開示されている。
【0008】
また、樹脂付銅箔に対しては、その樹脂層に対する難燃化の要求も行われてきた。この要求に応えるため、本件出願人は、好適な樹脂付銅箔として、特許文献5に開示の発明を提案した。この特許文献5では、ハロゲン元素を含まず、且つ高い難燃性を有し、優れた耐水性、耐熱性、および基材と銅箔との間の良好な引き剥がし強さを有する樹脂付き銅箔を提供することを目的として、窒素が5〜25重量%であるエポキシ樹脂硬化剤を含むエポキシ系樹脂と、熱硬化性を有するマレイミド化合物とを含み、ハロゲン元素を含有しない組成を有するものであることを特徴とする樹脂化合物を樹脂付銅箔の樹脂層構成用に用いた。
【0009】
更に、特許文献6には、エッチング残やハローイング現象の原因となる銅箔の粗化処理を行わなくても銅箔表面に強固に密着し、銅箔と基材との高い接着性が図られ、かつ取扱いに優れた接着剤および接着剤付き銅箔が開示されている。この特許文献6に言う接着剤は、樹脂成分総量に対してエポキシ樹脂40〜70重量%、ポリビニルアセタール樹脂20〜50重量%、メラミン樹脂またはウレタン樹脂0.1〜20重量%を含有し、該エポキシ樹脂の5〜80重量%がゴム変成エポキシ樹脂であることを特徴とするものである。
【0010】
【特許文献1】特開平11−348177号公報
【特許文献2】特開2001−24324号公報
【特許文献3】特開2001−244589号公報
【特許文献4】特開平11−10794号公報
【特許文献5】特開2002−179772号公報
【特許文献6】特開平08−193188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献4に開示の発明では、無粗化銅箔に2層以上の接着層を設ける必要があり、第1層の樹脂層を形成し、更に第2層の樹脂層を形成するため樹脂層の製造工程が長くなり、生産コストが上昇すると共に、生産性が低くなる。
【0012】
また、上記特許文献5に開示の発明では、銅箔の樹脂層の形成面の粗度が低くなると、硬化した樹脂層と銅箔との間の引き剥がし強さが不十分となり、ファインピッチ回路形成用の銅張積層板への使用には不満が残るものであり、より一層の引き剥がし強さの向上および低粗度銅箔の使用可能な樹脂組成物が望まれてきた。
【0013】
更に、近年は、無粗化銅箔を用いることが一般化しており、樹脂付銅箔の銅箔としても利用されている。係る場合、無粗化銅箔と樹脂層との引き剥がし強さで0.6kgf/cm以上あれば使用可能と言われてきたが、より一層の絶縁樹脂基材との密着性の向上が望まれている。この観点からのみ考えれば、上述の特許文献6に開示の樹脂組成は、粗化処理を行っていない銅箔表面でも強固に密着し、銅箔と基材との高い接着性が図られる接着剤及び接着剤付き銅箔が開示されている。ところが、特許文献6に開示の接着剤として用いる樹脂組成物は難燃性が劣るため、プリント配線板用としての使用が困難であった。
【0014】
以上のことから、本件発明は、この密着性向上の要求に応え、且つ、難燃性、耐吸湿性等の諸特性に優れた硬化樹脂層の形成が可能な樹脂組成物及び樹脂付銅箔の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、上述のような問題点を解決することのできる樹脂組成物に想到した。以下、この本件発明の概要に関して述べる。
【0016】
本件発明に係る樹脂組成物:本件発明に係るプリント配線板製造用の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するために用いる樹脂組成物であって、以下のA成分〜F成分の各成分を、以下の範囲の含有量(樹脂組成物重量を100重量部としたときの重量部として記載)で含むことを特徴とする。
【0017】
A成分: エポキシ当量が200以下で、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上を3重量部〜20重量部。
B成分: エポキシ樹脂の硬化反応に寄与する水酸基又はカルボキシル基のうち少なくとも1つ以上の架橋可能な官能基を有する線状ポリマーを3重量部〜30重量部。
C成分: 架橋剤を3重量部〜10重量部(但し、A成分がB成分の架橋剤として機能する場合には0重量部〜10重量部)。
D成分: 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン又は2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンを5重量部〜20重量部。
E成分: 臭素化エポキシ樹脂を当該臭素化エポキシ樹脂由来の臭素原子が樹脂組成物重量を100重量%としたとき12重量%〜18重量%の範囲で含有するように定めた重量部。
F成分: トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種以上を3重量部〜20重量部。
【0018】
若しくは、
A成分: エポキシ当量が200以下で、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上を3重量部〜20重量部。
B成分: エポキシ樹脂の硬化反応に寄与する水酸基またはカルボキシル基のうち少なくとも1つ以上の架橋可能な官能基を有する線状ポリマーを3重量部〜30重量部。
C成分: 架橋剤を3重量部〜10重量部(但し、A成分がB成分の架橋剤として機能する場合には0重量部〜10重量部)。
D成分: 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン又は2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンを5重量部〜20重量部。
E成分: リン含有エポキシ樹脂を当該リン含有エポキシ樹脂由来のリン原子が樹脂組成物重量を100重量%としたとき0.5重量%〜3.0重量%の範囲で含有するように定めた重量部。
F成分: トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種以上を3重量部〜20重量部。
【0019】
上述の前記E成分であるリン含有エポキシ樹脂は、分子内に2以上のエポキシ基を備える9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド誘導体であることが好ましい。
【0020】
本件発明に係るプリント配線板製造用の樹脂組成物は、前記B成分である架橋可能な官能基を有する線状ポリマーにポリビニルアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂を用いることが好ましい。
【0021】
本件発明に係るプリント配線板製造用の樹脂組成物は、前記C成分である架橋剤にウレタン系樹脂を用いることが好ましい。
【0022】
本件発明に係るプリント配線板製造用の樹脂組成物は、F成分の多官能エポキシ樹脂としてオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
また、本件発明に係るプリント配線板製造用の樹脂組成物は、G成分として硬化促進剤を添加することも好ましい。
【0024】
本件発明に係る樹脂付銅箔の製造方法: 本件出願に係る樹脂付銅箔の製造方法において、以下の工程a、工程bの手順で樹脂層の形成に用いる樹脂ワニスを調製し、当該樹脂ワニスを銅箔の表面に塗布し、乾燥させることで平均厚さ5μm〜100μmの半硬化樹脂膜として樹脂付銅箔とすることを特徴とするプリント配線板製造用の樹脂付銅箔の製造方法である。
【0025】
工程a: 前記A成分、B成分、C成分(A成分がB成分の架橋剤として機能する場合には省略可)、D成分、E成分、F成分、G成分の内、A成分〜F成分を必須成分とした樹脂組成物の重量を100重量%としたとき、E成分由来の臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲又はリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲で含有するように各成分を混合して樹脂組成物とする。
工程b: 前記樹脂組成物を、有機溶剤を用いて溶解し、樹脂固形分量が25重量%〜50重量%の樹脂ワニスとする。
【0026】
そして、前記工程aの樹脂組成物に、G成分として硬化促進剤を添加することも好ましい。
【0027】
そして、ここで用いる前記銅箔は、その半硬化樹脂層の形成面が表面粗さ(Rzjis)が3.0μm以下の低粗度表面を備えるものを用いることが好ましい。
【0028】
また、前記銅箔の半硬化樹脂層を形成する表面にシランカップリング処理層を備えることが好ましい。
【0029】
本件発明に係るプリント配線板: 本件出願に係るプリント配線板は、上述の樹脂組成物を用いて絶縁層を構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
本件出願に係る樹脂組成物は、上述のA成分、B成分、C成分(A成分がB成分の架橋剤として機能する場合には省略可)、D成分、E成分、F成分、G成分の内、A成分〜F成分を必須成分とし、G成分を必要に応じて添加した組成を備える。そして、このときの各成分として、特性の成分及び適正な配合量を採用する。特に、D成分である4,4’−ジアミノジフェニルスルホン又は2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンを用いる点に特徴を有する。このような樹脂組成を採用することにより、無粗化銅箔とこの樹脂組成物とで構成した樹脂層とは、プレスして硬化させると、当該無粗化銅箔と硬化樹脂層との間で、引き剥がし強さとして0.8kgf/cm以上のレベルに密着性が向上し、同時に難燃性、耐吸湿性等の諸特性に優れた硬化樹脂層が得られる。従って、本件発明に係る樹脂組成物を用いて、銅箔の表面に半硬化樹脂層を形成した樹脂付銅箔を製造すると、ファインピッチ回路の形成に用いる低粗度の銅箔の使用が積極的に可能で、高品質の樹脂付き銅箔を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本件発明を実施するための最良の形態に関して、項目毎に述べることとする。
【0032】
<樹脂組成物の形態>
本件出願に係る樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層構成用に用いるものであり、銅箔との密着性に優れ、硬化した後の硬化樹脂層は難燃性、耐吸湿性等の諸特性に優れたものになる。以下、本件出願に係る樹脂組成物で形成した絶縁樹脂層と銅箔との密着性を中心に述べる。そして、この樹脂組成物は、以下のA成分〜F成分の各成分を含むことを特徴とする。以下、各成分ごとに説明する。
【0033】
A成分: このA成分は、所謂ビスフェノール系エポキシ樹脂である。そして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることが好ましい。ここで、ビスフェノール系エポキシ樹脂を選択使用しているのは、25℃で液状のエポキシ樹脂で取り扱いが容易であり、半硬化状態の樹脂層を備える樹脂付銅箔を製造すると、樹脂付銅箔のソリ(カール現象)の抑制効果が顕著に得られるからである。また、硬化後の樹脂膜と銅箔との良好な密着性を得る事ができるからである。なお、液状エポキシが高純度の場合には、過冷を受けると常温に戻しても結晶化状態が維持され、外観上は固形に見えるものもある。この場合には、液状に戻して使用することが可能であるため。ここで言う液状エポキシ樹脂に含めて考える。更に、ここで25℃という温度を明記したのは、室温付近でという意味を明確にするためである。
【0034】
そして、エポキシ当量が200以下の場合には、25℃の温度で液体状態を維持できるので樹脂組成物の調製が容易で、樹脂付銅箔を製造したときのカール現象の抑制にも寄与できる。ここで、エポキシ当量の下限値を明記していないが、ビスフェノールF型の最小単位のエポキシ当量が最も小さいことを考えれば、下限値は150程度である。なお、ここで言うエポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)である。更に、上述のビスフェノール系エポキシ樹脂であれば、1種を単独で用いても、2種以上を混合で用いても構わない。しかも、2種以上を混合して用いる場合には、その混合比に関しても特段の限定はない。
【0035】
このビスフェノール系エポキシ樹脂は、本件発明で言う樹脂組成物を100重量部としたとき、3重量部〜20重量部の配合割合で用いられる。当該エポキシ樹脂が3重量部未満の場合には、硬化後の硬化樹脂層が脆くなり樹脂割れを生じやすくなる。一方、20重量部を越えると、室温で半硬化状態の樹脂面に粘着性を生じるためハンドリング性に欠け、汚染性も大きくなるため好ましくない。
【0036】
B成分: このB成分は、架橋可能な官能基を有する線状ポリマーである。ここで、架橋可能な官能基を有する線状ポリマーは、水酸基、カルボキシル基等のエポキシ樹脂の硬化反応に寄与する官能基を備えるものである。そして、この架橋可能な官能基を有する線状ポリマーは、沸点が50℃〜200℃の温度の有機溶剤に可溶であることが好ましい。ここで言う官能基を有する線状ポリマーとして、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が使用できる。中でも、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂の使用が好ましい。樹脂ワニスに加工したときの粘度調整が容易だからである。
【0037】
この架橋可能な官能基を有する線状ポリマーは、樹脂組成物を100重量部としたとき、3重量部〜30重量部の配合割合で用いる。当該線状ポリマーが3重量部未満の場合には、熱間プレス時に樹脂流れが大きくなり、絶縁樹脂層の厚さ制御が困難になる。この結果、製造した銅張積層板の端部から樹脂粉の発生が多く見られるようになり、粉塵発生防止の観点から好ましくない。一方、30重量部を超えると、樹脂流れが小さくなるが、製造した銅張積層板の絶縁層内にボイド等の欠陥を生じやすくなる。
【0038】
また、ここで言う沸点が50℃〜200℃の温度の有機溶剤に可溶であることが望ましいとしているが、ここで言う有機溶剤とは、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ等の群から選ばれる1種の単独溶剤又は2種以上の混合溶剤である。沸点が50℃未満の場合には、加熱による溶剤の気散が著しく、樹脂ワニスの状態から半硬化樹脂とする場合に、良好な半硬化状態の樹脂層が得にくくなる。一方、沸点が200℃を超える場合には、半硬化状態での残留溶剤量が多くなり、通常要求される揮発速度を満足せず、工業生産性を満足しない。
【0039】
C成分: このC成分は、B成分と架橋反応を起こさせるための架橋剤である。この架橋剤には、ウレタン系樹脂を使用することが好ましい。この架橋剤を添加する場合には、A成分とB成分との混合量に応じて添加されるものであり、本来厳密にその配合割合を明記する必要性はないものと考える。しかしながら、樹脂組成物を100重量部としたとき、10重量部以下の配合割合で用いる事が好ましい。10重量部を超えて、ウレタン系樹脂であるC成分が存在すると、半硬化状態での樹脂層の耐吸湿性が劣化し、硬化後の樹脂層が脆くなるからである。一方、このC成分を3重量部未満の配合割合で用いると、上記A成分とB成分との混合量を考慮すると、架橋剤としての効果を十分に発揮しなくなる。従って、3重量部以上配合することが好ましい。
【0040】
しかし、C成分を省略することが出来る場合もあり、C成分は必須の成分ではない。即ち、A成分がB成分の架橋剤として機能する場合には、C成分の添加を省略することができる。より具体的に言えば、ポリアミドイミド樹脂はエポキシ樹脂と架橋する性質があり、B成分にポリアミドイミド樹脂を用いる場合には、ポリアミドイミドのアミンの部分がエポキシ樹脂と架橋するため架橋剤の添加が不要になる場合がある。そして、A成分がB成分の架橋剤として機能していても、反応に十分な量のB成分が存在しない場合には、C成分を併用することも可能である。係る場合には、C成分の添加量は、樹脂組成物を100重量部としたとき、0重量部〜10重量部の範囲で用いることが出来る。この範囲であれば、半硬化状態での樹脂層の耐吸湿性、硬化後の樹脂層のフレキシビリティ等の特性に悪影響を与えないからである。また、より好ましくは、A成分がB成分の架橋剤として機能する場合のC成分を、0重量部〜3重量部未満の配合割合で用いる。上述のA成分及びB成分の配合量から判断して、C成分が3重量部を超えても顕著な樹脂特性の向上は得られないからである。
【0041】
D成分: このD成分は、エポキシ樹脂硬化剤であり、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン又は2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンを用いる。本件発明に係る樹脂組成物では、半硬化状態の樹脂層の無粗化銅箔の張り合わせ面への密着性、内層回路を備えた内層コア材へ当該樹脂付銅箔の樹脂層を張り合わせる際の硬化した樹脂表面及び内層回路表面への密着性を向上させるという観点から、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン又は2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンを選択的に用いる事が重要である。なお、エポキシ樹脂に対するエポキシ樹脂硬化剤の添加量は、反応当量からの計算量又は実験上得られる最適量を採用することが好ましい。本件発明に係る樹脂組成物を100重量部として、このエポキシ樹脂硬化剤を5重量部〜20重量部の範囲で含有する。エポキシ樹脂硬化剤が5重量部未満の場合には、上記エポキシ樹脂の最低限量を用いても十分に硬化した樹脂層が得られにくくなる。一方、20重量部を超えてエポキシ樹脂硬化剤を添加すると、硬化剤としての量が過剰になり、且つ、硬化速度が速すぎて脆い硬化樹脂層となる。
【0042】
E成分: このE成分は、難燃性エポキシ樹脂であり、ハロゲン系の難燃性エポキシ樹脂及びハロゲンフリー系の難燃性エポキシ樹脂の双方の使用が可能である。以下、これらを分別して説明する。
【0043】
ハロゲン系の難燃性エポキシ樹脂としては、所謂臭素化エポキシ樹脂を用いることが好ましい。臭素化エポキシ樹脂とは、エポキシ骨格の中に臭素を含んだエポキシ樹脂の総称するものである。そして、本件出願に係る樹脂組成物の臭素原子含有量を、樹脂組成物重量を100重量%としたとき、E成分由来の臭素原子が12重量%〜18重量%の範囲となるようにすることができる臭素化エポキシ樹脂であれば、いずれの使用も可能である。特に、分子内に2以上のエポキシ基を備えるテトラブロモビスフェノールA又はそのテトラブロモビスフェノールAの誘導体として得られるエポキシ樹脂を用いることが好ましい。臭素化エポキシ樹脂の中でも、半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、硬化した後においても、難燃性効果が高く、得られる樹脂硬化物の機械物性が向上するため好ましい。参考のために、テトラブロモビスフェノールAの構造式を、化1として例示しておく。そして、化2には、テトラブロモビスフェノールAからの誘導体として得られるビスフェノール系臭素化エポキシ樹脂の構造式を例示する。
【0044】
【化1】
【0045】
【化2】
【0046】
また、E成分の臭素化エポキシ樹脂として、化3に示す構造式を備える化合物も好ましい。化2に示すビスフェノール系臭素化エポキシ樹脂と同様に、半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に高い難燃性の付与が可能であるため好ましい。
【0047】
【化3】
【0048】
そして、本件出願に係る樹脂組成物を構成するE成分は、1種類の臭素化エポキシ樹脂を単独で用いても、2種類以上の臭素化エポキシ樹脂を混合して用いても構わない。但し、E成分の総量を考慮して、樹脂組成物重量を100重量%としたとき、E成分由来の臭素原子が12重量%〜18重量%の範囲となるように添加量を定める。
【0049】
ここで臭素化エポキシ樹脂を用いる場合の樹脂組成物は、樹脂組成物重量を100重量%としたとき、E成分由来の臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲で含有するとしているのは、硬化後の樹脂層としての難燃性を確保する観点からである。当該臭素原子の含有量が12重量%未満の場合には、良好な難燃性を得ることが出来難くなる。一方、当該臭素原子の含有量が18重量%を超えて含有させても、硬化後の樹脂層の難燃性が向上せず、資源の無駄となる。臭素化エポキシ樹脂は、その種類によりエポキシ骨格内に含有する臭素原子量が異なるため、上述のように臭素原子の含有量を記載して、E成分の添加量に代えた。
【0050】
次に、ハロゲンフリー系の難燃性エポキシ樹脂としては、所謂リン含有エポキシ樹脂を用いることが好ましい。リン含有エポキシ樹脂とは、エポキシ骨格の中にリンを含んだエポキシ樹脂の総称である。そして、本件出願に係る樹脂組成物のリン原子含有量を、樹脂組成物重量を100重量%としたとき、E成分由来のリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲とできるリン含有エポキシ樹脂であれば、いずれの使用も可能である。しかしながら、分子内に2以上のエポキシ基を備える9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド誘導体であるリン含有エポキシ樹脂を用いることが、半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に難燃性効果が高いため好ましい。参考のために、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドの構造式を化4に示す。
【0051】
【化4】
【0052】
そして、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド誘導体であるリン含有エポキシ樹脂を具体的に例示すると、化5に示す構造式を備える化合物の使用が好ましい。半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に難燃性効果が高いため好ましい。
【0053】
【化5】
【0054】
また、E成分のリン含有エポキシ樹脂として、化6に示す構造式を備える化合物も好ましい。化5に示すリン含有エポキシ樹脂と同様に、半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に高い難燃性の付与が可能であるため好ましい。
【0055】
【化6】
【0056】
更に、E成分のリン含有エポキシ樹脂として、化7に示す構造式を備える化合物も好ましい。化5及び化6に示すリン含有エポキシ樹脂と同様に、半硬化状態での樹脂品質の安定性に優れ、同時に高い難燃性の付与が可能であるため好ましい。
【0057】
【化7】
【0058】
この9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドからの誘導体として得られるエポキシ樹脂は、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドにナフトキノンやハイドロキノンを反応させて、化8(HCA−NQ)又は化9(HCA−HQ)に示す化合物とした後に、そのOH基の部分にエポキシ樹脂を反応させてリン含有エポキシ樹脂としたものが挙げられる。
【0059】
【化8】
【0060】
【化9】
【0061】
ここでリン含有エポキシ樹脂を用いる場合の樹脂組成物は、E成分としてのリン含有エポキシ樹脂の1種類を単独で用いても、2種類以上のリン含有エポキシ樹脂を混合して用いても構わない。但し、E成分としてのリン含有エポキシ樹脂の総量を考慮して、樹脂組成物重量を100重量%としたとき、E成分由来のリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲となるように添加量を定める。リン含有エポキシ樹脂は、その種類によりエポキシ骨格内に含有するリン原子量が異なるため、上述のようにリン原子の含有量を記載して、E成分の添加量に代えた。
【0062】
F成分: このF成分は、多官能エポキシ樹脂である。ここで言う多官能エポキシ樹脂とは、例えば、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等である。そして、このF成分に関しては、樹脂組成物を100重量部としたとき、3重量部〜20重量部の配合割合で用いる。F成分が3重量部未満の場合には、耐熱特性を向上させ難い。一方、F成分が20重量部を超えた場合、硬化樹脂が脆くなる。
【0063】
以上に述べてきたA成分〜F成分で構成される樹脂組成物は、ハロゲン系の難燃性樹脂組成物とハロゲンフリー系の難燃性樹脂組成物とに分別できる。以下、これらを具体的組成として示しておく。
【0064】
本件発明に係るプリント配線板製造用のハロゲン系の難燃性樹脂組成物は、樹脂組成物重量を100重量部としたとき、A成分が3重量部〜20重量部、B成分が3重量部〜30重量部、C成分が3重量部〜10重量部(A成分がB成分の架橋剤として機能する場合には0重量部〜10重量部とする事も出来る。)、D成分が5重量部〜20重量部、F成分が3重量部〜20重量部であり、E成分由来の臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲で含有するようにE成分の添加量を定めたものである。
【0065】
そして、本件発明に係るプリント配線板製造用のハロゲンフリー系の難燃性樹脂組成物は、樹脂組成物重量を100重量部としたとき、A成分が3重量部〜20重量部、B成分が3重量部〜30重量部、C成分が3重量部〜10重量部(A成分がB成分の架橋剤として機能する場合には0重量部〜10重量部とする事も出来る。)、D成分が5重量部〜20重量部、F成分が3重量部〜20重量部であり、E成分由来のリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲で含有するようにE成分の添加量を定めたものである。
【0066】
更に、本件発明に係るプリント配線板製造用の樹脂組成物は、G成分として硬化促進剤を添加することも好ましい。従って、このG成分は、任意の添加成分である。そして、単に樹脂硬化を促進するだけであれば、硬化促進剤として機能するあらゆる化合物の使用が可能であるが、一般的な熱プレス条件を用いて、本樹脂系を硬化させるのにスムーズに進行させるという観点から、イミダゾール系の硬化促進剤である2−メチルイミダゾール又は2−エチル−4−メチルイミダゾールを用いることが好ましい。
【0067】
以上、本件発明に係るプリント配線板製造用の樹脂組成物に関して述べてきたが、本件発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない限りにおいて、他の成分の添加、追加配合が可能であることを、念のために明記しておく。
【0068】
<樹脂付銅箔の形態>
本件出願に係るプリント配線板製造用の樹脂付銅箔は、銅箔の片面に半硬化状態の樹脂層を備えたものである。そして、この樹脂層を上述の樹脂組成物を用いて、平均厚さ5μm〜100μmの半硬化樹脂膜として形成したものである。このように上述の樹脂組成物を用いて形成した樹脂層は、銅箔との密着性に優れ、耐熱特性にも優れる。
【0069】
ここで、当該樹脂層の平均厚さが5μm未満の場合には、内層回路を備える内層コア材の外層に対し、当該樹脂付銅箔を張り合わせるときに、内層回路の形成する凹凸形状との張り合わせが不可能になる。一方、当該樹脂層の平均厚さが100μmを超えるものとしても問題はないが、塗布して厚い樹脂膜を形成することは困難で生産性に欠ける。しかも、樹脂層を厚くすれば、プリプレグと比較して差異の無いものとなり、樹脂付銅箔の形態の製品を採用する意義が没却する。
【0070】
そして、銅箔には、電解法又は圧延法等の、その製造方法には拘泥せず、あらゆる製造方法の使用が可能である。そして、その厚さに関しても、特段の限定はない。また、この銅箔の樹脂層を形成する面には、粗化処理を必ずしも施す必要はない。上記樹脂組成物は、無粗化の銅箔を用いての樹脂付銅箔の製造に好適だからである。従って、粗化処理があれば、銅箔と樹脂層との密着性は向上するが、銅箔の表面に粗化処理を施さなくても問題がない。無粗化の銅箔の張り合わせ面は、平坦な表面であるため、ファインピッチ回路の形成能が向上する。更に、当該銅箔の表面には、防錆処理を施しても構わない。防錆処理に関しては、公知の亜鉛、亜鉛系合金等を用いた無機防錆、又は、ベンゾイミダゾール、トリアゾール等の有機単分子被膜による有機防錆等を採用することが可能である。更に、当該銅箔の樹脂層を形成する最表面には、シランカップリング処理層を備えることが好ましい。
【0071】
そして、ここで用いる前記銅箔の半硬化樹脂層の形成面が表面粗さを数値をもって表せば、Rzjisの値が3.0μm以下の低粗度表面を備えるものを用いることが好ましい。Rzjisの値が3.0μm以下になると、エッチングファクターに優れたファインピッチ回路の形成能が飛躍的に高まるからである。
【0072】
また、特に粗化処理していない銅箔の場合、その張り合わせ面と樹脂層との濡れ性を改善し、基材樹脂にプレス加工したときの密着性を向上させるため、その張り合わせ面にシランカップリング剤層を設けることがより好ましい。例えば、銅箔の粗化を行わずに、防錆処理を施し、シランカップリング剤処理に、エポキシ官能性シランカップリング剤、オレフィン官能性シラン、アクリル官能性シラン、アミノ官能性シランカップリング剤又はメルカプト官能性シランカップリング剤等種々のものを用いることが可能であり、用途に応じて好適なシランカップリング剤を選択使用することで、引き剥がし強度が一層向上する。
【0073】
ここで用いることの出来るシランカップリング剤を、より具体的に明示しておくことにする。プリント配線板用にプリプレグのガラスクロスに用いられると同様のカップリング剤を中心にビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4−グリシジルブチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)プトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を用いることが可能である。
【0074】
このシランカップリング剤層の形成は、一般的に用いられる浸漬法、シャワーリング法、噴霧法等、特に方法は限定されない。工程設計に合わせて、最も均一に銅箔とシランカップリング剤を含んだ溶液とを接触させ吸着させることのできる方法を任意に採用すれば良いのである。これらのシランカップリング剤は、溶媒として25℃レベルの水に0.5〜10g/lとなるように溶解させる。シランカップリング剤は、銅箔の表面に突きだしたOH基と縮合結合することにより、被膜を形成するのであり、いたずらに濃い濃度の溶液を用いても、その効果が著しく増大することはない。従って、本来は、工程の処理速度等に応じて決められるべきものである。但し、0.5g/lを下回る場合は、シランカップリング剤の吸着速度が遅く、一般的な商業ベースの採算に合わず、吸着も不均一なものとなる。また、10g/lを超える濃度であっても、特に吸着速度が速くなることもなく不経済となる。
【0075】
以上に述べてきた樹脂付銅箔の半硬化樹脂層は、硬化反応後に、以下のようにして測定した場合に、3.0GPa未満の貯蔵弾性率を備え、低弾性特性を備えることが好ましい。このときの貯蔵弾性率とは、2枚の同種の樹脂付銅箔を用いて、それぞれの樹脂付銅箔の樹脂面同士を合わせて当接させ、所定の条件で熱間プレス成形を行い銅張積層板とし、当該銅張積層板の両面にある銅箔層をエッチング除去して樹脂フィルムとし、この樹脂フィルムを動的粘弾性測定装置(DMA)にて動的粘弾性を測定して得た、30℃における貯蔵弾性率である。ここでの熱間プレス条件に関しては、実施例の中で後述する。この貯蔵弾性率が3.0GPa未満となると、硬化した樹脂層が良好なフレキシビリティと弾性特性を備える。その結果、本件発明に係る樹脂付銅箔を用いて製造したプリント配線板は、電子製品等に組み込まれた後に、当該製品の意図せぬ落下による衝撃、輸送中の振動を受けた場合等でも、硬化した樹脂層へのクラックが発生し難く、電子部品及び回路の損傷が起こりにくく、耐衝撃性及び耐振動性に優れる製品となる。
【0076】
<樹脂付銅箔の製造方法の形態>
本件出願に係る樹脂付銅箔の製造方法は、最初に以下の工程a、工程bの手順で樹脂ワニスを調製する。
【0077】
工程aでは、前記A成分、B成分、C成分(A成分がB成分の架橋剤として機能する場合には省略可)、D成分、E成分、F成分、G成分の内、A成分〜F成分を必須成分とした樹脂組成物の重量を100重量%としたとき、E成分由来の臭素原子を12重量%〜18重量%の範囲又はリン原子を0.5重量%〜3.0重量%の範囲で含有するように各成分を混合して樹脂組成物とする。このときの各成分の混合順序、混合手段等に特段の限定は無い。従って、公知のあらゆる混合手法を採用することが可能である。そして、これらの各成分に関しては、既に述べているので、ここでの説明は省略する。
【0078】
また、前記工程aでは、必要に応じて適当量のG成分(硬化促進剤)を混合使用することも好ましい。ここで言う硬化促進剤は、イミダゾール系の硬化促進剤である2−メチルイミダゾールを用いる。硬化促進剤は、銅張積層板製造の熱間プレス条件等の生産条件を考慮して、製造者が任意に選択的に添加量を定めるべきものだが、敢えて記載するならば、本件発明に係る樹脂組成物100重量部に対して、G成分を0.1重量部〜1.5重量部程度となる。G成分が0.1重量部未満の場合には、硬化速度を促進し得ず、添加する意義が無いからである。一方、G成分を1.5重量部を超えた場合、硬化が促進されすぎて、半硬化状態で安定した品質で長期間保存することが困難になる。
【0079】
工程bでは、前記樹脂組成物を、有機溶剤を用いて溶解し、樹脂固形分量が25重量%〜50重量%の樹脂ワニスとする。このときの有機溶剤には、上述のように沸点が50℃〜200℃の範囲にある溶剤であることが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ等の群から選ばれる1種の単独溶剤又は2種以上の混合溶剤を用いることが好ましい。上述と同様の理由からである。そして、ここで樹脂固形分量を25重量%〜50重量%の樹脂ワニスとする。なお、樹脂固形分とは、樹脂ワニスを加熱して揮発分を除去したときに残留する固形分のことである。ここに示した樹脂固形分量の範囲が、銅箔の表面に塗布したときに、最も膜厚を精度の良いものに制御できる範囲である。樹脂固形分が25重量%未満の場合には、粘度が低すぎて、銅箔表面への塗布直後に流れて膜厚均一性を確保しにくい。これに対して、樹脂固形分が50重量%を越えると、粘度が高くなり、銅箔表面への薄膜形成が困難となる。なお、ここに具体的に挙げた溶剤以外でも、本件発明で用いるすべての樹脂成分を溶解することの出来るものであれば使用が可能である。
【0080】
以上のようにして得られる樹脂ワニスを、銅箔の片面に塗布する場合には、特に塗布方法に関しては限定されない。しかし、目的とする厚さ分を精度良く塗布しなければならないことを考えれば、形成する膜厚に応じた塗布方法、塗布装置を適宜選択使用すればよい。また、銅箔の表面に樹脂皮膜を形成した後の乾燥は、樹脂溶液の性質に応じて半硬化状態とすることのできる加熱条件を適宜採用すればよい。そして、この乾燥後に平均厚さ5μm〜100μmの半硬化樹脂層となり、本件発明に係る樹脂付銅箔となる。
【0081】
プリント配線板の形態: 本件出願に係るプリント配線板は、上述の樹脂組成物を用いて絶縁層を構成したことを特徴とするものである。即ち、本件発明に係る樹脂組成物を樹脂ワニスとして、この樹脂ワニスを用いて樹脂付銅箔を製造する。そして、この樹脂付銅箔を用いて、内層コア配線板に張り合わせて多層化した銅張積層板として、多層プリント配線板に加工することができる。また、本件発明に係る樹脂組成物を樹脂ワニスとして、この樹脂ワニスをガラスクロス、ガラス不織布等の骨格材に含浸させプリプレグとして、公知の方法で銅張積層板を製造し、プリント配線板に加工することもできる。即ち、上記樹脂組成物を用いることで、公知のあらゆる製造方法でプリント配線板の製造が可能になる。なお、本件発明に言うプリント配線板とは、所謂片面板、両面板、3層以上の多層板を含むものである。以下、実施例に関して説明する。
【実施例1】
【0082】
この実施例では、以下に述べる樹脂組成物を調製し、樹脂ワニスとして、この樹脂ワニスを用いて樹脂付銅箔を製造し、評価を行った。
【0083】
樹脂組成物の調製:以下のA成分〜F成分を混合して、樹脂組成物を100重量%としたときの臭素原子の割合が15.1重量%である樹脂組成物を得て、更にG成分を加えハロゲン系の樹脂組成物を調製した。ここでは、E成分である難燃性エポキシ樹脂として、2種類の臭素化エポキシ樹脂を用いている。また、G成分の配合量は、A成分〜F成分を混合した樹脂組成物を100重量部として、これに対する添加量を表す。
【0084】
A成分: 25℃で液状でエポキシ当量が188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エポトートYD−128、東都化成社製)/15重量部
B成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとしてのポリビニルアセタール樹脂(商品名:デンカブチラール5000A、電気化学工業社製)/10重量部
C成分: 架橋剤としてのウレタン樹脂(商品名:コロネートAPステーブル、日本ポリウレタン工業社製)/4重量部
D成分: 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(商品名:セイカキュアS、和歌山精化工業株式会社)/15重量部
E成分: 難燃性エポキシ樹脂としての臭素化エポキシ樹脂1(商品名:エピクロン1121N−80M、大日本インキ化学工業社製)/30重量部
難燃性エポキシ樹脂としての臭素化エポキシ樹脂2(商品名:BREN−304、日本化薬社製)/20重量部
F成分: 多官能エポキシ樹脂としてのオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:エピクロンN−680、大日本インキ化学工業社製)/6重量部
G成分: 硬化促進剤として2−メチルイミダゾール(商品名:2MZ、四国化成工業社製)/0.4重量部
【0085】
樹脂ワニスの調製: 上記組成の樹脂組成物を、メチルエチルケトンとジメチルホルムアミドとの混合溶剤(混合比(体積比):メチルエチルケトン/ジメチルホルムアミド=1/1)に溶解し、樹脂固形分量35重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0086】
樹脂付銅箔の製造: 上述の樹脂ワニスを、公称厚さ18μm(Rz=2.8μm)の電解銅箔の粗化面に均一に塗布し、風乾後、140℃×5分間の加熱処理を行い、半硬化状態の樹脂層を備えた樹脂付銅箔を得た。このときの樹脂層の平均厚さは85μmとした。以下、評価内容の詳細に関して述べる。
【0087】
密着性評価: 当該樹脂付銅箔の樹脂層を、100μm厚さのFR−4グレードのプリプレグの表面に当接させ、圧力20kgf/cm、温度180℃×1時間の熱間プレス成形を行い銅張積層板を製造した。そして、この銅張積層板を、ワークサイズにカッティングして、エッチング法で10mm幅の引き剥がし強さ測定用の直線回路を形成した。その後、その試験用の直線回路を用いて、引き剥がし強さを測定した。その結果を、後述する比較例1との対比が可能なように表1に示す。
【0088】
硬化樹脂としての弾性率測定: 当該樹脂付銅箔を2枚用いて、それぞれの樹脂付銅箔の樹脂面同士を合わせて当接させ、圧力20kgf/cm、温度180℃×1時間の条件で熱間プレス成形を行い銅張積層板を製造した。その後、この銅張積層板の両面にある銅箔層をエッチングして溶解除去することで、樹脂フィルムを得た。そして、この樹脂フィルムを用いて、動的粘弾性測定装置(DMA)にて動的粘弾性を測定し、30℃における貯蔵弾性率(ヤング率と称する場合もある。以下、単に「弾性率」と称する。)を求めた。
【実施例2】
【0089】
この実施例では、以下に述べる樹脂組成物を調製し、樹脂ワニスとして、この樹脂ワニスを用いて樹脂付銅箔を製造し、評価を行った。
【0090】
樹脂組成物の調製:以下のA成分〜F成分を混合して、樹脂組成物を100重量%としたときの臭素原子の割合が15.3重量%である樹脂組成物を得て、更にG成分を加えハロゲン系の樹脂組成物を調製した。ここでは、E成分である難燃性エポキシ樹脂として、2種類の臭素化エポキシ樹脂を用いている。また、G成分の配合量は、A成分〜F成分を混合した樹脂組成物を100重量部として、これに対する添加量を表す。
【0091】
A成分: 25℃で液状でエポキシ当量が188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エポトートYD−128、東都化成社製)/15重量部
B成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとしてのポリビニルアセタール樹脂(商品名:デンカブチラール5000A、電気化学工業社製)/10重量部
C成分: 架橋剤としてのウレタン樹脂(商品名:コロネートAPステーブル、日本ポリウレタン工業社製)/4重量部
D成分: 2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(商品名:BAPP、和歌山精化工業株式会社)/24重量部
E成分: 難燃性エポキシ樹脂としての臭素化エポキシ樹脂1(商品名:エピクロン1121N−80M、大日本インキ化学工業社製)/10重量部
難燃性エポキシ樹脂としての臭素化エポキシ樹脂2(商品名:BREN−304、日本化薬社製)/30重量部
F成分: 多官能エポキシ樹脂としてのオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:エピクロンN−680、大日本インキ化学工業社製)/7重量部
G成分: 硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(商品名:2E4MZ、四国化成工業社製)/0.2重量部
【0092】
以下、実施例1と同様に、樹脂ワニスを調製し、樹脂付銅箔を製造し、当該樹脂付銅箔を用いて銅張積層板を製造した。そして、この銅張積層板を、ワークサイズにカッティングして、引き剥がし強さ測定用の直線回路を形成した。その後、その試験用の直線回路を用いて、引き剥がし強さを測定した。その結果を、後述する比較例1との対比が可能なように表1に示す。
【実施例3】
【0093】
この実施例では、以下に述べる樹脂組成物を調製し、樹脂ワニスとして、この樹脂ワニスを用いて樹脂付銅箔を製造し、評価を行った。
【0094】
樹脂組成物の調製:以下のA成分〜F成分を混合して、樹脂組成物を100重量%としたときのリン原子の割合が1.0重量%である樹脂組成物を得て、更にG成分を加えハロゲンフリー系の樹脂組成物を調製した。ここでは、E成分である難燃性エポキシ樹脂として、以下に述べる合成方法で得られたリン含有エポキシ樹脂を用いている。また、G成分の配合量は、A成分〜F成分を混合した樹脂組成物を100重量部として、これに対する添加量を表す。
【0095】
リン含有エポキシ樹脂の合成: ここでは、特開平11−279258の合成例6を参考にして、リン含有エポキシ樹脂(E成分)を次のようにして合成した。即ち、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、141重量部の9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(三光社製商品名HCA)と300重量部のエチルセロソルブとを入れ、加熱して溶解した。その後、96.3重量部の1,4−ナフトキノン(試薬)を反応熱による昇温に注意しながら分割投入した。このとき、1,4−ナフトキノンと9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドとのモル比は、[1,4−ナフトキノン]/「9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド」=0.93であった。反応後、262.7重量部のエポトート YDPN−638 (東都化成社製フェノールノボラック型エポキシ樹脂)及び409.6重量部のYDF−170(東都化成社製ビスフェノールF型エポキシ樹脂)を入れ、窒素ガスを導入しつつ攪拌を行い、120℃まで加熱を行って溶解した。そして、0.24重量部のトリフェニルホスフィンを添加して130℃×4時間の反応を行わせた。このとき得られたリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は327.0g/eq、リン含有率は2.0重量%であった。ここで得られたリン含有エポキシ樹脂を用いて、以下の樹脂組成物を
調製した。
【0096】
A成分: 25℃で液状でエポキシ当量が188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エポトートYD−128、東都化成社製)/15重量部
B成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとしてのポリビニルアセタール樹脂(商品名:デンカブチラール5000A、電気化学工業社製)/10重量部
C成分: 架橋剤としてのウレタン樹脂(商品名:コロネートAPステーブル、日本ポリウレタン工業社製)/4重量部
D成分: 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(商品名:セイカキュアS、和歌山精化工業株式会社)/16重量部
E成分: 難燃性エポキシ樹脂として、上記の方法で合成したリン含有エポキシ樹脂/50重量部
F成分: 多官能エポキシ樹脂としてのオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:エピクロンN−680、大日本インキ化学工業社製)/5重量部
G成分: 硬化促進剤として2−メチルイミダゾール(商品名:2MZ、四国化成工業社製)/0.4重量部
【0097】
以下、実施例1と同様に、樹脂ワニスを調製し、樹脂付銅箔を製造し、当該樹脂付銅箔を用いて銅張積層板を製造した。そして、この銅張積層板を、ワークサイズにカッティングして、引き剥がし強さ測定用の直線回路を形成した。その後、その試験用の直線回路を用いて、引き剥がし強さを測定した。その結果を、後述する比較例2との対比が可能なように表2に示す。
【実施例4】
【0098】
この実施例では、以下に述べる樹脂組成物を調製し、樹脂ワニスとして、この樹脂ワニスを用いて樹脂付銅箔を製造し、評価を行った。
【0099】
樹脂組成物の調製:以下のA成分〜F成分を混合して、樹脂組成物を100重量%としたときのリン原子の割合が1.0重量%である樹脂組成物を得て、更にG成分を加えハロゲンフリー系の樹脂組成物を調製した。ここでは、B成分の架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとして、以下に述べる方法で合成したポリアミドイミド樹脂を用いた。従って、ポリアミドイミド樹脂はA成分のエポキシ樹脂と架橋するため、C成分(架橋剤)を省略した。更に、E成分である難燃性エポキシ樹脂として、実施例3に述べた合成方法で得られたリン含有エポキシ樹脂を用いている。また、G成分の配合量は、A成分〜F成分を混合した樹脂組成物を100重量部として、これに対する添加量を表す。
【0100】
この実施例で用いたポリアミドイミド樹脂は、以下の方法で製造した。即ち、反応容器に、192gの無水トリメリット酸、211gのo−トリジンジイソシアネート、50gの4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、365gのN−メチル−2−ピロリドン(蒸留されたもの)を入れて混合し、更に1LのN,N−ジメチルアセトアミドを入れて混合し、窒素雰囲気下で攪拌しながら、70℃で約2時間、さらに100℃で約3時間反応させた。その後、N,N−ジメチルアセトアミドを1L加え、約2時間かけて160℃まで昇温し、さらに160℃で約1時間攪拌して反応を停止することで、ポリアミドイミド溶液を得た。このポリアミドイミド溶液を用いて、以下の樹脂組成を採用した。
【0101】
A成分: 25℃で液状でエポキシ当量が188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エポトートYD−128、東都化成社製)/15重量部
B成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとして、上述のポリアミドイミド樹脂/15重量部
D成分: 4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(商品名:セイカキュアS、和歌山精化工業株式会社)/16重量部
E成分: 難燃性エポキシ樹脂として、実施例3と同様に合成したリン含有エポキシ樹脂/50重量部
F成分: 多官能エポキシ樹脂としてのオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:エピクロンN−680、大日本インキ化学工業社製)/4重量部
G成分: 硬化促進剤として2−メチルイミダゾール(商品名:2MZ、四国化成工業社製)/0.4重量部
【0102】
以下、実施例1と同様に、樹脂ワニスを調製し、樹脂付銅箔を製造し、当該樹脂付銅箔を用いて銅張積層板を製造した。そして、この銅張積層板を、ワークサイズにカッティングして、引き剥がし強さ測定用の直線回路を形成した。その後、その試験用の直線回路を用いて、引き剥がし強さを測定した。その結果を、後述する比較例2との対比が可能なように表2に示す。
【実施例5】
【0103】
この実施例では、以下に述べる樹脂組成物を調製し、樹脂ワニスとして、この樹脂ワニスを用いて樹脂付銅箔を製造し、評価を行った。なお、この実施例5の樹脂組成は、A成分がB成分の架橋剤として機能する場合に相当するため、C成分を用いない樹脂組成を採用している。
【0104】
樹脂組成物の調製:以下のA成分〜F成分(C成分を除く)を混合して、樹脂組成物を100重量%としたときのリン原子の割合が1.0重量%である樹脂組成物を得て、更にG成分を加えハロゲンフリー系の樹脂組成物を調製した。ここでは、B成分の架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとして、実施例4で述べた方法で合成したポリアミドイミド樹脂を用いた。従って、ポリアミドイミド樹脂はA成分のエポキシ樹脂と架橋するため、C成分(架橋剤)を省略した。更に、E成分である難燃性エポキシ樹脂として、実施例3に述べた合成方法で得られたリン含有エポキシ樹脂を用いている。また、G成分の配合量は、A成分〜F成分を混合した樹脂組成物を100重量部として、これに対する添加量を表す。
【0105】
A成分: 25℃で液状でエポキシ当量が165のビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:エポトートYDF−170、東都化成社製)/10重量部
B成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとして、実施例4で合成したポリアミドイミド樹脂/14重量部
D成分: 2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(商品名:BAPP、和歌山精化工業株式会社)/22重量部
E成分: 難燃性エポキシ樹脂として、実施例3で合成したリン含有エポキシ樹脂/50重量部
F成分: 多官能エポキシ樹脂としてのオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:エピクロンN−680、大日本インキ化学工業社製)/4重量部
G成分: 硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(商品名:2E4MZ、四国化成工業社製)/0.2重量部
【0106】
以下、実施例1と同様に、樹脂ワニスを調製し、樹脂付銅箔を製造し、当該樹脂付銅箔を用いて銅張積層板を製造した。そして、この銅張積層板を、ワークサイズにカッティングして、引き剥がし強さ測定用の直線回路を形成した。その後、その試験用の直線回路を用いて、引き剥がし強さを測定した。その結果を、後述する比較例との対比が可能なように表に示す。
【比較例】
【0107】
[比較例1]
この比較例1は、ハロゲン系樹脂組成物を用いた上記実施例1及び実施例2との対比を行うためのものである。従って、実施例1で用いる樹脂組成物の組成が異なるのみであり、その他の樹脂ワニス調製、樹脂付銅箔の製造、当該樹脂付銅箔を用いた銅張積層板製造は同様である。従って、異なる樹脂組成物の組成に関してのみ述べる。
【0108】
成分: 25℃で液状でエポキシ当量が188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エポトートYD−128、東都化成社製)/15重量部
成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとしてのポリビニルアセタール樹脂(商品名:デンカブチラール5000A、電気化学工業社製)/10重量部
成分: 架橋剤としてのウレタン樹脂(商品名:コロネートAPステーブル、日本ポリウレタン工業社製)/4重量部
成分: エポキシ樹脂硬化剤としてのノボラック型フェノール樹脂(商品名:フェノライトTD−2131、大日本インキ化学工業社製)/24重量部
成分: 臭素化エポキシ樹脂1(商品名:エピクロン1121N−80M、大日本インキ化学工業社製)/10重量部
臭素化エポキシ樹脂2(商品名:BREN−304、日本化薬社製)/30重量部
成分: 多官能エポキシ樹脂としてのオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:エピクロンN−680、大日本インキ化学工業社製)/7重量部
成分: 硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(商品名:2E4MZ、四国化成工業社製)/0.2重量部
【0109】
以下、実施例1と同様に、樹脂ワニスを調製し、樹脂付銅箔を製造し、当該樹脂付銅箔を用いて銅張積層板を製造した。そして、この銅張積層板を、ワークサイズにカッティングして、引き剥がし強さ測定用の直線回路を形成した。その後、その試験用の直線回路を用いて、引き剥がし強さを測定した。その結果を、上記実施例1及び実施例2との対比が可能なように表1に示す。
【0110】
【表1】

[比較例2]
この比較例2は、ハロゲンフリー系樹脂組成物を用いた上記実施例3〜実施例5との対比を行うためのものである。従って、実施例3で用いる樹脂組成物の組成が異なるのみであり、その他の樹脂ワニス調製、樹脂付銅箔の製造、当該樹脂付銅箔を用いた銅張積層板製造は同様である。従って、異なる樹脂組成物の組成に関してのみ述べる。
【0111】
A成分: 25℃で液状でエポキシ当量が188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エポトートYD−128、東都化成社製)/15重量部
B成分: 架橋可能な官能基を有する線状ポリマーとしてのポリビニルアセタール樹脂(商品名:デンカブチラール5000A、電気化学工業社製)/10重量部
C成分: 架橋剤としてのウレタン樹脂(商品名:コロネートAPステーブル、日本ポリウレタン工業社製)/4重量部
D成分: エポキシ樹脂硬化剤(25%ジメチルホルムアミド溶液として調製したジシアンジアミド(試薬)/4重量部(固形分換算)
E成分: 実施例3と同様の方法で合成したリン含有エポキシ樹脂/50重量部
F成分: 多官能エポキシ樹脂としてのオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:エピクロンN−680、大日本インキ化学工業社製)/17重量部
G成分: 硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(商品名:2E4MZ、四国化成工業社製)/0.2重量部
【0112】
以下、実施例1と同様に、樹脂ワニスを調製し、樹脂付銅箔を製造し、当該樹脂付銅箔を用いて銅張積層板を製造した。そして、この銅張積層板を、ワークサイズにカッティングして、引き剥がし強さ測定用の直線回路を形成した。その後、その試験用の直線回路を用いて、引き剥がし強さを測定した。その結果を、上記実施例3〜実施例5との対比が可能なように表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
<実施例と比較例との対比>
ハロゲン系樹脂組成物を用いた実施例1及び実施例2と比較例1とを対比すると、表1から明らかなように、実施例1及び実施例2の場合には、引き剥がし強さが0.9kgf/cmを超えており、粗化処理を施した銅箔を用いた場合と比べても、遜色のない密着性を示すことが分かる。これに対して、比較例1の場合には、引き剥がし強さが0.4kgf/cmであり、実用上要求される密着性を満足しないことが理解できる。
【0115】
また、同様にハロゲンフリー系樹脂組成物を用いた実施例3〜実施例5と比較例2とを対比すると、表2から明らかなように、実施例3の引き剥がし強さが0.8kgf/cm、実施例4の引き剥がし強さが1.0kgf/cm、実施例5の引き剥がし強さが1.0kgf/cmであり、粗化処理を施した銅箔を用いた場合と比べても、遜色のない密着性を示すことが分かる。これに対して、比較例2の場合には、引き剥がし強さが0.5kgf/cmであり、実施例と比べて明らかに劣る。
【0116】
更に、実施例1〜実施例5、比較例1、比較例2の樹脂組成物で構成した絶縁樹脂層の弾性率(ヤング率)を対比する。これらの弾性率を表3に示す。
【0117】
【表3】
【0118】
この表3から理解できるように、実施例1〜実施例5の弾性率は、2.6GPa〜2.8GPaの範囲にあり、弾性率が3.0GPa未満となっている。これに対し、比較例1及び比較例2の弾性率は3.0GPa以上となっている。従って、比較例に比べ、実施例の樹脂組成物で構成した絶縁樹脂層は低弾性であることが理解できる。このような低弾性という性能を備える絶縁樹脂層を備えるプリント配線板は、耐衝撃性に優れる。従って、このプリント配線板は、電子製品等に組み込んだ後でも、当該製品の意図せぬ落下等で衝撃を受けても、電子部品及び回路の損傷が少なく耐衝撃性に優れる事になる。
【0119】
以上のことから理解できるように、本件発明に係る樹脂組成物の組成範囲に入る場合には、銅箔と硬化した難燃性を備える樹脂層とが良好な密着性を示し、本件発明に係る技術思想の概念を逸脱した組成の場合には、銅箔と硬化した樹脂層との間での良好な密着性が得られないことが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本件発明に係る樹脂組成物は、難燃性を備えると共に、そこに張り合わせる銅箔との間での良好な密着性を備える。従って、銅張積層板及びプリント配線板の絶縁層構成材料として好適である。しかも、このときの銅箔は、無粗化の銅箔であっても十分に使用可能である。従って、エッチングファクターに優れたファインピッチ回路を形成するための銅張積層板の製造に好適である。しかも、この樹脂組成物を用いて、銅箔の表面に樹脂層を構成することで、良好な品質の樹脂付銅箔の提供が可能となる。従って、この樹脂付銅箔を用いることで、耐マイグレーション性に優れ、ファインピッチ回路を備え、高い信頼性を備える高品質のビルドアッププリント配線板等の提供も可能になる。