【実施例】
【0045】
(実施例1)
2、6−ジ−sec−ブチルフェノールの立体異性カルバメートのHPLC分離を介する式(I)の化合物の立体異性体の分離
【化3】
【0046】
R-(+)-1-フェニル-エチル)-カルバミン酸 2,6-ジ-sec-ブチルフェニルエステル(1)の合成:
2,6-ジ-sec-ブチルフェノール(2.06 g,10 mmol)、R-(+) 1-フェニルエチルイソシアネート(1.47 g,10 mmol)、及び4-(ジメチルアミノ)ピリジン(0.06 g,0.5 mmol)の混合物を、10mlの乾燥ピリジン中で終夜100℃で加熱した。反応混合物を蒸発させ、得られた残渣を酢酸エチル(75 ml)及び1M HCl水溶液(100 ml)で処理した。有機相を1M HCl水溶液(2x100 mL)、塩水(100 ml)で2回洗浄し、無水MgSO4上で終夜乾燥させた。溶媒を蒸発させることにより、
カルバメート(1)(3 g,85%)を得た。
R-(+)-1-フェニル-エチル)-カルバミン酸2,6-ジ-sec-ブチルフェニルエステル(1b)のジアステレオマーの分離:
HPLCシリカゲルカラム(250x41.5mm)、溶媒Si-60A 10mm上でHPLC分離を実施した。勾配:ヘキサン-酢酸エチル0-10%、72分間;流速50ml/分;負荷10mlヘキサン中1gの(1)。カルバメートの所望の異性体(1b)を含む画分を回収し、蒸発させた(0.18 g,72%)。
【0047】
キラルクロマトグラフィーによる光学純度の分析:
2,6-ジ-sec-ブチルフェノールの分析を、CHIRALCEL OD-Hカラム(4.6 x 250 mm)上で実施した。定組成モード(isocratic mode)、移動相=n-ヘキサン、流速=1ml/分で20分、検出270nmであった。サンプルはヘキサンに溶解させた。カルバメートは予めジオキサン、1M NaOH水溶液の1:1混合物中、100℃で1−2分間加水分解して2,6-ジ-sec-ブチルフェノールとした。2,6-ジ-sec-ブチルフェノールをエーテルで抽出した。エーテル相を蒸発させ、残りの油分をn-ヘキサンに溶解させた。
(-)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノール(2)の合成:
R-(+)-1-フェニル-エチル)-カルバミン酸(-)-2,6-ジ-sec-ブチルフェニルエステル(1b)(4.1 g,11.6 mmol)を、ジオキサンと1MのNaOH水溶液の1:1混合物100mlに溶解させた。反応混合物を70°Cで15分間攪拌した。揮発分を減圧で除去し、約50-70mlの容量とした。pHは1MのHClで3-4に調節した。フェノールをエーテル(3x50ml)で抽出し、1M HCl、塩水で洗浄し、無水MgSO4上で終夜乾燥させた。蒸発により、粗い黄色オイル(2.4g、約100%)を得た。真空蒸留をを実施した(120-125°C/約5mm)(2.1g, 89%)。旋光性:a20D = -14.11°(c=2。ペンタン)。
【0048】
(実施例2)
2,6-ジ-sec-ブチルフェノールの直接分離
2,6-ジ-sec-ブチルフェノールの立体異性体混合物の分離を、キラルHPLCによって行った。2,6-ジ-sec-ブチルフェノール(1mg/ml、HPLCグレードのn-ヘキサン中)を、キラルHPLCカラ(Daicel,Inc., CHIRALCEL OD-H 20x250mm、5um)に注入した。分離は、移動相としてHPLCグレードのn-ヘキサンを用い、室温で10ml/分の流速で定組成勾配を用いて実施した。ピーク検出は270mmであった。2,6-ジ-sec-ブチルフェノールは、1:2:1の比率で3つのピークを示し、それらは、エナンチオマー1(所望の立体異性体)、(メソ)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノール、及びエナンチオマー2に対応する。分離されたエナンチオマー1(1mg/ml)をHPLCグレードのn-ヘキサンに溶解し、キラルHPLCカラム(Daicel,Inc., CHIRALCEL OD-H 4.6x250mm, 5um)に注入し、移動相としてHPLSグレードのn-ヘキサンを用い、室温で0.7ml/分の流速で、定組成勾配で走らせた。ピーク検出は270 mmであった。17.1分の遅延時間を示し、>%99の異性体純度であった。旋光性:a20D =-11.91oであった。エナンチオマー1と同様の分析手法に従い、エナンチオマー2は、19.6分の遅延時間、及び>%95の異性体純度を示し、(メソ)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノールは、18.8分の遅延時間、及び>%96の異性体純度を示した。
【0049】
(実施例3)
処方
以下は、治療に使用するための式(I)の化合物を含有する代表的な剤形を例証するものである。
【表1】
【0050】
(実施例4)
処方
以下は、治療に使用するための式(I)の化合物を含有する代表的な剤形を例証するものである。
【表2】
【0051】
(実施例5)
カルバメートジアステレオマーを分離するためのクロマトグラフィーを用いた(R,R)-ジ-sec-ブチルフェノールの調製
a)(R)-(+)-1-フェニル-エチル)-カルバミン酸-2,6-ジ-sec-ブチルフェニルエステル
ジ-sec-ブチルフェノール(Acros & AK Scientificから入手可能) (5グラム(g),21.1ミリモル(mmol))を、5ミリリットル(ml or mL)のトルエンを用いたロタバップ(rotavap)(55oC,48torr)上で共沸的に乾燥させ、次いでマグネチックスターラー、還流冷却器、熱電対及び窒素(N
2)注入口を備えた100mlの三ツ口フラスコに導入した。トルエン(10ml)及び4-ジメチルアミノピリジン(0.085g,0.7mmol)を添加した。(R)-(+)-1-フェニルエチルイソシアネート(3.5g, 3.65ml, 23.63mmol)を最後に導入した。得られた透明な黄色混合物をN2下、加熱マントルを用いて90oCで加熱し、攪拌して当該温度を維持したまま、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)による反応の指向を監視した。HPLCでの判定による反応終了(18-24時間(h))の後、反応混合物をロタバップ(50-55oC/45-50torr)上で濃縮し、半固体(約9.4g)を得た。それを熱2-プロパノール(18ml)に溶解した。溶液を、室温に戻し、純粋な(R)-(+)-1-フェニル-エチル)-カルバミン酸-2,6-ジ-sec-ブチルフェニルエステルを撒き、冷蔵庫(4oC)に24-36h配置して、緩やかな結晶化を起こさせた。析出した黄色固体を濾過し、濾過器上で1−2h冷却乾燥させた。生成物の最初の収分を秤量し2.8g(37.5%収率)、HPLC分析により95を越える(>)面積パーセント(area percent)(A%)の純度であることがわかった。母液をロタバップで初期容量の約2/3間で濃縮し(4mlの2-プロパノールを留去)、次いで、0-5oCで6-8h冷却した。生成物の第2の収分を濾過し、濾過器上で冷却乾燥して、さらに2.6g(34.9%収率)の生成物を得た。それはHPLCにより約88のA%であった。
【0052】
b)(R,R,R)-1-フェニルエチルカルバミン酸-2,6-ジ-sec-ブチルフェニルエステル
ダイオードアレイ検出器及び0.46cm IDx25cm長の10 mm KROMASIL シリカカラムに適合させた迅速(Agilent)HPLCシステムに、10mlのヘキサン/酢酸エチル(98:2)に溶解させた714mgのラセミR-(+)-1-フェニル-エチル)-カルバミン酸-2,6-ジ-sec-ブチルフェニルエステルを充填し、71.4g/lのフィード溶液を得た。サンプルを、ヘキサン/酢酸エチル(98:2)で、25℃において2ml/分で溶離させた。(R,R,R)-1-フェニルエチルカルバミン酸-2,6-ジ-sec-ブチルフェニルエステルを含む画分を回収し、<55℃で減圧下蒸留した。最も高い負荷において、(R,R,R)-立体異性体が、98.7%ジアステレオマー過剰(de)の純度で回収され、全収率は53%であった。
【0053】
c)(R,R)-ジ-sec-ブチルフェノール
マグネチックスターラー、還流冷却器、熱電対及びN
2注入口を備えた100ml三ツ口フラスコに、テトラヒドロフラン(THF)(9ml)、(R,R,R)-1-フェニルエチルカルバミン酸 2,6-ジ-sec-ブチルフェニルエステル(1g, 2.8mmol)、及び1.0M 水酸化ナトリウム(11.4ml, 11.4mmol)を添加した。得られた透明混合物をN2下、55-60oCで加熱マントルを用いて加熱し、攪拌して当該温度を維持したままHPLCによる反応の進行を監視した。HPLCによる判定で反応が終了(6-8h)した後、反応混合物を15℃に冷却し、濾過により析出した尿素を除去した。濾過したケーキを冷THF(5ml)で洗浄した。濾過物と洗浄液を合体させ、3.0Mの塩酸(HCl) (3.5ml)でpH2−3に酸性化した。10分間(min)攪拌した後、エーテル(10ml)を添加し、次いで得られた混合物を15分間勢いよく攪拌し、その後、相分離させた。有機相を3.0M HCl (3ml)、塩水(5ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させ、濾過により乾燥剤を除去し、次いでロタバップで濃縮して半固体黄色残渣を得て、それをメチルtert-ブチルエステル(MTBE)(3ml)とともに15分間攪拌してから濾過した。濾過したケーキをMTBE(2ml)で洗浄した。濾過物と洗浄液を合体させ、次いでロタバップで濃縮して表題化合物を黄色オイルとして得た(0.6g, 100%粗収率)。それはHPLCにより93 A%を越える純度であった。1H NMR (DMSO-d6)は、その構造と一致していた。
【0054】
(実施例5a)
カルバメートジアステレオマーを分離するためのクロマトグラフィーを用いた(S,S)-ジ-sec-ブチルフェノールの調製
a)2,6-ジ-sec-ブチルフェノールベンゾイルエステル
ジ-sec-ブチルフェノール(Acros & AK Scientificから入手可能)をロタバップでトルエンを用いて乾燥させ(5℃,48torr)、次いでマグネチックスターラー、還流冷却器、熱電対及びN
2注入口を備えた100ミリリットル(ml又はmL)の三ツ口フラスコに導入した。トルエン及び4-ジメチルアミノピリジンを添加し、次いで塩化ベンゾイルを添加した。得られた混合物をN2下90℃で加熱マントルを用いて加熱し、攪拌して当該温度を維持したまま高速液体クロマトグラフィ(HPLC)による反応の進行を監視した。HPLCによる判定で反応が終了した後、反応混合物をロタバップ(50-55℃/45-50torr)で濃縮して半固体を得た。
【0055】
b)(S,S)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノールベンゾイルエステル
ダイオードアレイ検出器及び0.46cm IDx25cm長の10 mm KROMASIL シリカカラムに適合させた迅速(Agilent)HPLCシステムに、ヘキサン/酢酸エチル(98:2)に溶解させた2,6-ジ-sec-ブチルフェノールベンゾイルエステルを充填し、フィード溶液を得た。サンプルを、ヘキサン/酢酸エチル(98:2)で、25℃において溶離させた。(S,S)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノールベンゾイルエステルを含む画分を回収し、<55℃で減圧下蒸留して、希薄オイルを得た。
【0056】
c)(S,S)-ジ-sec-ブチルフェノール
マグネチックスターラー、還流冷却器、熱電対及びN
2注入口を備えた100ml三ツ口フラスコに、テトラヒドロフラン(THF)(9ml)、(S,S)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノールエステル(1g, 2.8mmol)、及び1.0M 水酸化ナトリウム(11.4ml, 11.4mmol)を添加した。得られた混合物をN2下、55-60oCで加熱マントルを用いて加熱し、攪拌して当該温度を維持したままHPLCによる反応の進行を監視した。HPLCによる判定で反応が終了(6-8h)した後、反応混合物を15℃に冷却し、濾過により析出した尿素を除去した。濾過したケーキを冷THF(5ml)で洗浄した。濾過物と洗浄液を合体させ、3.0Mの塩酸(HCl) (3.5ml)でpH2−3に酸性化した。10分間攪拌した後、エーテルを添加し、次いで得られた混合物を15分間勢いよく攪拌し、その後、相分離させた。有機相を3.0M HCl(3ml)、塩水(5ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させ、濾過により乾燥剤を除去し、次いでロタバップで濃縮して残渣を得て、それをメチルtert-ブチルエステル(MTBE)とともに15分間攪拌してから濾過した。濾過したケーキをMTBEで洗浄した。濾過物と洗浄液を合体させ、次いでロタバップで濃縮して表題化合物を得た。
【0057】
生物学的テスト
(R、R)−ジ−sec−ブチルフェノールの薬理学的プロファイルを、以下の実施例中に記載のテストにおいてプロポフォールとの比較で評価した。これらの実施例では、(R、R)−ジ−sec−ブチルフェノールを化合物1と呼ぶ。
【0058】
(実施例6)
ラット海馬脳スライスアッセイ
化合物1とプロポフォールの、g-アミノ酪酸レセプターサブタイプA(GABA
Aレセプター) におけるアゴニストの活動を促進する能力を試験し、ラット海馬脳スライス電気生理学的アッセイにおいて比較した。
実施例5に記載したように調製した化合物1及びプロポフォールは、各々5種類の濃度:0.1、1、3、10及び30マイクロモル(μM)で試験した。各々DMSO中の、100ミリモル(mM)のプロポフォール及び100mMの化合物1のストック溶液を、食塩水で希釈して各濃度とし、30μMのサンプルは0.03%のDMSOを含有するが、0.1%までのDMSOを含有する溶液は脳スライスアッセイに対して有意な影響を与えなかった。EC50及びEC20の値は、Casasola等、2002、Epilepsy Research 47, 257に記載されたものと類似の手法で、以下に述べる修正を施した方法を用いて測定した。
【0059】
ラット海馬スライスは次のようにして調製した:雄のWistarラット(100-125g)をイソフルレンで麻酔して頭部を切り落とし、即座に脳を取り出し、回収し、ブロックし、ビブラトーム(vibratome)(OTS-4000, Electron Microscope Sciences)で400ミクロン(μm)の透明な切片に切り出した。スライスを加温(33℃)し、組織記録チャンバーに浸し、修正した人工脳脊髄液(120mM 塩化ナトリウム、3.5mM 塩化カリウム、2.5mM 塩化カルシウム、1.3mM 塩化マグネシウム、1.25mM リン酸ナトリウム、26mM 炭酸ナトリウム、10mM グルコース、95%酸素で飽和、pH7.4)を2.5-3ml/分で浸し込むませた。海馬スライスを記録チャンバーで少なくとも1時間平衡させた。
【0060】
電気生理学的試験は次の用に実施した:ガラスロッド電極(1-2μm 先端径)を3Mの塩化ナトリウム(NaCl)に浸し、海馬スライスのCA1ピラミッド型細胞層に配置した。25μM同心バイポーラー刺激電極(SNE-100, Rhodes Medical Supply)をCA1領域の基底法線状膜(stratum radiatum)に配置して、シェーファー 側副/交連経路(collateral/commissural pathway)を刺激した。CA1ピラミッド型細胞の集団反応を、アキソプローブ(Axoprobe)-1A(Axon Instruments, Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で記録した。pCLAMP 8.2 (Axon Instruments)を、データ取得に使用し、Clampfit (Axon Instruments)を分析に使用した。刺激は、Grass S11刺激装置(Grass Medical Instruments)からの単一の方形波パルス(0.3 ミリセカンド(msec)持続時間)からなり、実験時間中20秒間隔で与えられた。刺激強度は、最大値の80−90%の反応を惹起するように調節した。各刺激からの集団反応のピークからピークまでの大きさは、細胞興奮性のインジケータとして測定した。
【0061】
化合物1とプロポフォールは、各々ムシモール(muscimol)(2μM)のEC20で存在し、各々浸し込まれ、対応する海馬スライスの修正人工脳脊髄液中で最低から最高の濃度まで変化した。各濃度での効果は、化合物1又はプロポフォールの適用から4〜7分後に測定したが、その時点で反応は安定していた。ムシモール(10μM)を、化棒物1又はプロポフォール適用後に適用し、製剤の感度が、化合物1又はプロポフォールがCA1集団スパイクの十分な阻害を生じなかったか否か(<90%阻害)を立証した。GABAA レセプターチャンネルアンタゴニストであるピクロトキシン(picrotoxin)(50μM)を記録の最後に適用し、反応がGABAA レセプターによって仲介されていることを確認した。
【0062】
Clampfit及びExcel(Microsoft)を用いてデータを取得及び分析し、平均及び個別の値として報告した。集団効果(%)の程度は、ムシモール(EC20)と、化合物1又はプロポフォールの共適用の前(コントロール)及び後のCA1集団スパイクの大きさを測定することによって得た (差は、コントロールに対して規格化し、100を乗じてパーセント効果として得た)。
データは、化合物1が、ラット海馬脳スライスにおけるGABAA レセプターのアゴニストの活動の潜在的な促進剤であることを示し、EC50は2.5μMであった。プロポフォールのEC50は4.8μMであった。即ち、化合物1は、海馬脳スライスアッセイにおいてプロポフォールと同様の挙動を示し、GABAA レセプターにおけるムシモール仲介反応を十分に促進した。
【0063】
(実施例7)
標的特異性試験
化合物1及びプロポフォールの、種々の生物学的標的との相互作用をする能力を試験して比較した。
実施例5に記載した用に調製した化合物1、及びプロポフォールの薬理学的プロファイリングを、Cerep,Inc.(Redmond, WA, USA) により、彼らの、「多様性プロファイル」71レセプター類の表得淳プロファイル(59ペプチド、非ペプチド、又は核レセプター;7イオンチャンネル;5アミントランスポーター)及び16酵素において実施した。化合物1及びプロポフォールは、各々治療的関連濃度である10μMで試験した。
【0064】
結果は、試験した71レセプター及び16酵素について、化合物1がプロポフォールと同様に挙動することを示した。例えば、化合物1とプロポフォールは、各々、ラット大脳皮質から単離した塩化物チャンネルにおいてピクロトキシニン(ピクロトキシンの活性化合物)結合を測定するアッセイにおいて最大の効果(コントロール結合の30%阻害以上)を示した。このg-アミノ酪酸(GABA)リガンドがゲートする イオンチャンネルは、プロポフォールに関する活性の中心的標的である。さらに、化合物1及びプロポフォールは、試験した16酵素の内の1つのみホスホジエステラーゼ2(PDE2)に、コントロール結合の20%阻害以上を示した。アルファ2、NMDA、PCP、ベンゾジアゼピン又はオピオイドレセプターについては、有意な効果は観察されなかった。
【0065】
(実施例8)
注射時の痛み−水相濃度
プロポフォール投与時によくみられる問題である注射痛は、脂質エマルションの水相中に存在するプロポフォールにより引き起こされると考えられる(例えば、Klement Wら、1991、Br J Anaesth、67、281ページを参照)。いくつかの試験により、プロポフォールの水相濃度をDIPRIVANの水相中のプロポフォールの量と比較して低くしたとき、注射時の痛みが著しく減少することが報告されている(例えば、Doenicke AWら、1996、Anesth Analg、82、472ページ;Ueki Rら、2007、J Anesth、21、325ページを参照)。
脂質エマルション製剤の水相中の化合物1の濃度(水相濃度)を定量した。この水相濃度を、同じ製剤形態で製剤されたプロポフォールのものおよびDIPRIVAN(登録商標)(AstraZeneca、Wilmington、DE、USA)のものと比較した。
【0066】
実施例4に従い、化合物1の1パーセント(1%)製剤を製剤した(化合物1は実施例5に記載の要領で調製されている)。1%プロポフォール製剤を同様の様式で製剤した。DIPRIVAN(1%プロポフォールの注射用エマルション)は、AstraZenecaから購入したままの状態で使用した。
Teagarden DLら、1988、Pharmaceutical Research、5、482ページにより記載された限外濾過法を用いて、化合物1およびプロポフォールの水相濃度を定量した。手短に言えば、化合物1の1%製剤0.4mlの試料4つ、1%プロポフォール製剤0.4mlの試料4つ、およびDIPRIVANの0.4試料2つをUltrafree(登録商標)−MC微量遠心フィルター(Millipore、Billerica、MA)中に置き、15分間5000rpmの微量遠心分離により、脂質相から水相を分離した。内部参照標準としてチモールを用いた、化合物1およびプロポフォールの検量線に対する液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析(LC/MS/MS)により、それぞれの水相中の化合物1およびプロポフォールの濃度を定量化した(分析はAlturas Analytics,Inc.、Moscow、IDにより実施)。
【0067】
化合物1の1%製剤中の化合物1の水相濃度は、0.38±0.02μg/mlであった。1%プロポフォール製剤中のプロポフォールの水相濃度は、6.28±0.41μg/mlであった。DIPRIVAN中のプロポフォールの水相濃度は、4.1μg/mlであった。
これらの結果から、まったく同様の製剤中のプロポフォールの水相濃度と比較して化合物1の水相濃度は94%低下しており、DIPRIVAN中のプロポフォールの水相濃度と比較して化合物1の水相濃度は91%低下していることが実証された。
【0068】
(実施例9)
薬物動態学的試験
化合物1の薬力学的効果を評価し、当該効果をプロポフォールの効果と比較するために、飼いならされたブタにおいて薬物動態学的(PK:Pharmacokinetic)試験を行った。
実施例5に記載の要領で調製し実施例4に従って製剤した化合物1の1%製剤を、1分当たり0.380mg/kgで20分(総用量7.6mg/kg)の静脈内(IV)注入により、6匹のブタに投与し、1分当たり0.456mg/kgで(総用量9.12mg/kg)、1匹のブタに投与した。化合物1の血漿濃度を同様のプロトコールにより得られた既存のプロポフォールのデータと比較した(このプロトコールでは、化合物1と同じ様式で製剤した1%プロポフォール製剤を、1分当たり0.750mg/kgで10分(総用量7.5mg/kg)のIV注入により、5匹のブタに投与した)。
【0069】
この試験のデータは、化合物1はブタモデルにおいてプロポフォールと同様の薬物動態プロファイルを呈することを示すものであった。化合物1およびプロポフォールのデータは、3コンパートメント・モデルにより最もよく説明された。化合物1のクリアランスは、プロポフォールと同様、肝臓の推定血流速度を超えた。化合物1は、さらに、ヒトにおけるプロポフォールのものと同様の代謝経路も、ブタにおいて呈した。すなわち、4位がヒドロキシル化されると1位においてグルクロン酸化が生じ、次いでグルクロニドとスルフェートとのコンジュゲートが生じる。イヌにおける用量漸増試験により、化合物1およびプロポフォールについては、ウォッシュアウト時に同様の血漿濃度が示されたが、このことから、当該種においてもクリアランス速度は同様であることが示唆された。
【0070】
(実施例10)
ラットにおける麻酔効果
化合物1のボーラスIV注射の麻酔用量応答を、プロポフォールとの比較で、ラットにおいて試験した。
認可された全身麻酔の齧歯動物モデル(Hill−Venning Cら、1996、Neuropharmacology、35、1209ページ;Lingamaneni Rら、2001、Anesthesiology、94、1050ページを参照)を使用して、正向反射消失(LORR:Loss of Righting Reflex)および回復時間(正向反射の回復からラットがスチール枠を握ったり登ったり正常に歩き回ることができるようになるまでの時間間隔)により示されるものとして、麻酔の発現および持続時間の測定を行った。さらに、LORRを達成する最小用量および最大耐量(MTD)も測定した。
【0071】
実施例5に記載の用量で調製し実施例4に従って製剤した化合物1の1%製剤またはDIPRIVANを、2.5ml/分のボーラスIV注射により、下記用量の投与に要する時間をかけて、用量群当たり6匹のオスのSprague−Dawleyラット(200〜300g)に投与した。50%のラットに正向反射を消失させるのに要する用量(HD50)および7分の麻酔をもたらすのに要する用量(HD7分)を定量することにより、相対効力を評価した。試験した用量の範囲は、化合物1については1.9、2.3、3.0、7.0、13.7、14.0および15.2mg/kg、DIPRIVANについては3.5、4.0、7.0および14.0mg/kgであった。
【0072】
結果は、化合物1のボーラスIV投与はラットにおいて用量依存的な麻酔の持続時間をもたらしたことを示した。それぞれの薬剤を、化合物1については3mg/kg以上の用量、プロポフォールについては7.0mg/kg以上の用量で投与した場合、LORRの開始は、15秒未満であった。化合物1は、3mg/kg以上のすべての用量でLORRを生じさせた。プロポフォールは、3.5mg/kgでテストしたラット6匹のうち4匹においてLORRを生じさせなかったが、それ以外の試験したすべての用量では事実、LORRを生じさせた。表1は、化合物1およびプロポフォールについてHD50、HD7分、MTDおよび治療指数(TI;本明細書においては、MTD対HD7分の比率と定義)の結果を比較したものである。DIPRIVANを14mg/kg投与すると、1匹のラットが死亡した。化合物1を21mg/kg投与すると、3匹のラットが死亡した。回復時間は、用量にはほとんど関係ないことが示された。
【0073】
表1.ラットにボーラスIVで投与された化合物1及びプロポフォールのHD50、HD7min、MTD及びTIの結果の比較
【表3】
【0074】
まとめると、化合物1は、プロポフォールより低い用量で効力を示し、さらには、プロポフォールと比較してより高いMTDおよび向上したTIも示した。
このテストでは、実施例2に従って調製した(S、S)−2.6−ジ−sec−ブチルフェノールも、2、3、4、5、6、28、35、42、49および56mg/kgの用量で評価した。表1aは、この化合物についてのHD50、HD7分、MTDおよびTIの結果を示すものである。(S、S)−2,6−ジ−sec−ブチルフェノールを49mg/kg投与すると、ラット6匹のうち1匹が死亡した。
【0075】
表1a. ラットにボーラスIVで投与された(S)−(+)−2−sec−ブチル−6−イソプロピルフェノールのHD50、HD7min、MTD及びTIの結果
【表4】
【0076】
別の試験において、ラットに7mg/kgの1%のクレマホア(cremaphor)の化合物1又はプロポフォール、(S,S)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノール又は(メソ)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノール(実施例1に記載のように調製)を、同じ要領及び処方で投与した。結果を表1bに示す。
クレマホアで処方した21mg/kgの1% (メソ)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノールを投与した6匹のラットの内1匹は死亡した。しかし、残りの5匹は34分の麻酔状態を示した。
【0077】
表1b.化合物1、プロポフォール、(S,S)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノール及び(メソ)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノールをボーラスIVにより7mg/kg投与したラットに関する麻酔期間(睡眠時間)の比較
【表5】
【0078】
要するに、(S,S)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノールの能力はプロポフォールと同様であった。 (メソ)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノールはプロポフォールに比較して向上していた。いずれの立体異性体も、プロポフォールに比較して向上したMTD及び治療指数を示した。
【0079】
(実施例11)
ビーグル犬における麻酔効果および血行力学的効果
化合物1のボーラスIV投与の麻酔効果および血行力学的効果をプロポフォールとの比較で実証するために、イヌにおいて用量漸増試験を行った。
この試験のエンドポイントは、麻酔の導入、持続時間、深度および質、ならびに、化合物1またはプロポフォールのボーラスIV投与の血行力学的効果についての用量関係であった。実施例5に記載の用量で調製し実施例4に従って製剤した化合物1の1%製剤と、同じ様式で製剤した1%プロポフォール製剤とを使用した。
【0080】
二波長指数(BIS)を用いて、麻酔深度の脳波(EEG)測定値を測定したが、BISは、麻酔薬が脳に及ぼす効果を測定し鎮静または麻酔のレベルの変化を追跡するために用いられるいくつかのシステムのうちの1つである。BISは、EEGのデータを分析する数学アルゴリズムであり、出力は、100(完全に意識がある)から0(等電のEEG)までの単一の数である。他の評価には、鎮静スコア、臨床観察、血圧、心電図(ECG)および酸素飽和が含まれた。
ビーグル犬(オス、2〜4歳、8〜10kg)に血管アクセス・ポートを埋め込んだ。埋込み手術の時点で、イヌの頭の毛を刈り、EEG電極設置のために印を付け、BOTOX(登録商標)(Allergan,Inc.、Irvine、CA、ボツリヌス毒素A型を精製した神経毒複合体)を注射した。すなわち、額を通した5回の筋肉内(IM)注射の形で、イヌ1匹当たり合計40単位を投与した。この注射は、筋肉の動き、および、BIS信号による筋電図(EMG)の干渉を抑制することを意図したものであった。
【0081】
この試験は、クロスオーバー計画であった。各イヌには、化合物1またはプロポフォールの、漸増するボーラスIV投薬(60秒かけて注射)を2から4回、少なくとも30分(またはイヌが目覚めるまで)離して実施し、MTDが達成されるまでこれを続けた。MTDは、平均動脈血圧(MAP)を50%または水銀50ミリメートル(mmHgまたはmm Hg)未満まで下げた用量として定義した。すべての動物は、酸素補給、および、必要に応じて、無呼吸の4分後に補助換気を受けた。
睫毛反射の有無、眉間の叩打ちまたは聴覚刺激、足先をつまむことに対する応答および呼吸の有無を評価することにより、麻酔深度を定量した。各サインが存在する場合を1、各サインが存在しない場合を0として評点を付けた。これにより、投薬間の30分にわたる複数の時点における累積鎮静スコアの計算が可能になった(5=目覚めている、0=無呼吸/深い麻酔)。導入のスムーズさ、筋緊張の質的評価および不随意運動の存在を書き留めることにより、麻酔の質を評価した。不随意運動のエピソード出現(例えば覚醒中に)については、各用量についての観察期間を通して存在するまたはしないとして評点を付けた。2元ANOVAを用い、次いで時間および用量の効果の多重比較のためのボンフェローニ補正を用いたt検定を実施することで、BISおよび血行力学的効果を分析した。
【0082】
A.麻酔効果
前投薬していない自発呼吸するビーグル(1投薬当たり5〜30mg/kg、化合物1の投薬についてイヌ3〜6匹、プロポフォールの投薬についてイヌ1〜5匹においてボーラスIVにより投与された化合物1およびプロポフォールが用量依存的な麻酔を達成する能力を表2に示す。プロポフォールを15mg/kg投与されたイヌ3匹のうち2匹は、15mg/kgでMTDに達した。したがって、30mg/kgプロポフォール投薬は1匹のイヌのみに行った。
【0083】
表2.イヌへのボーラスIV投与後の化合物1およびプロポフォールについての、用量依存的な麻酔の持続時間(睡眠時間)
【表6】
【0084】
データは、さらに、化合物1およびプロポフォールのすべての用量において、麻酔が1分以内に導入されたことも示した。睡眠時間により測定した麻酔の持続時間は、化合物1およびプロポフォールの大半の用量において同様であった。累積鎮静スコアは、プロポフォールおよび化合物1の両方について5mg/kg超と、およそ等効力の麻酔深度を示した。化合物1を10mg/kgで、またはプロポフォールを10mg/kgもしくは15mg/kgで投与されたイヌのBIS値間には有意差はなかった。化合物1は、15mg/kg以上の用量ではBISに対する効果が大きくなったが、これらの用量は非常に高く、臨床的に適切でない可能性がある。化合物1の麻酔の質(導入のスムーズさ、筋緊張の質的評価、不随意運動の存在)は、プロポフォールと同様であった。
この試験では、実施例2に従って作製した(S、S)−2,6−ジ−sec−ブチルフェノールも評価した。表2aは、この化合物についての用量依存的な麻酔の持続時間(睡眠時間)を示すものである。
【0085】
表2a.イヌへのボーラスIV投与後の(S、S)−2,6−ジ−sec−ブチルフェノールおよびプロポフォールについての用量依存的な麻酔の持続時間(睡眠時間)
【表7】
【0086】
データは、(S,S)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノール及び(メソ)2,6-ジ-sec-ブチルフェノールについての全ての容量で、1分以内に麻酔が誘導された事も示している。睡眠時間によって測定した麻酔の持続時間は、(S,S)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノールについてはプロポフォールと同様であり、(メソ)2,6-ジ-sec-ブチルフェノールではより長くなった。(S,S)-2,6-ジ-sec-ブチルフェノールでの麻酔の質は、プロポフォールと同じであったが、(メソ) 2,6-ジ-sec-ブチルフェノールについては劣っていた。
【0087】
B.血行力学的効果:血圧
平均動脈圧(MAP)などの血行力学的データを、ベースライン、1、2、4、8、15、20および30分時点で記録した。化合物1を、5、10、15および30mg/kgで、それぞれ6、4、3および3匹のイヌに投与した。プロポフォールを、同じ用量でそれぞれ3、5、5および1匹のイヌに投与した。30mg/kgプロポフォールは1匹のイヌのみに投与したが、その理由は、2匹の動物において15mg/kgでMTD基準に達したからであった。2元ANOVAを用い、次いで多重比較のためのボンフェローニ補正を用いたt検定を実施することで、データを分析した。
データの比較により、プロポフォールは、化合物1が及ぼすより著しく大きい効果をMAPに及ぼしたことが示された。表3は、平均動脈圧%(MAP%)の、ベースラインから、10、15または30mg/kgの化合物1のボーラスIV投与の4分後の変化を同じ用量のプロポフォールにより達成されたMAP%の変化と比較してある例を提供するものである。
【0088】
表3.ベースラインから、化合物1またはプロポフォールのボーラスIV投与の4分後のMAP%の変化として測定した用量依存的な平均動脈圧変化
【表8】
*2匹のイヌがすでに15mg/kgプロポフォールでMTD基準に到達していたことを考慮して、30mg/kgプロポフォールでは1匹のイヌのみをテストした。
【0089】
この試験では、実施例2に従って作製した(S、S)−2,6−ジ−sec−ブチルフェノールも評価した。データの比較により、プロポフォールは、(S、S)−2,6−ジ−sec−ブチルフェノールが及ぼしたより著しく大きい効果をMAPに及ぼしたことが示された。表3aは、ベースラインから4分時点でのMAP%の変化を比較してある例を提供するものである。
表3a.ベースラインから、(S、S)−2,6−ジ−sec−ブチルフェノール及び(メソ)−2,6−ジ−sec−ブチルフェノールのイヌへのボーラスIV投与の4分後のMAP%の変化として測定した用量依存的な平均動脈圧変化
【表9】
【0090】
(実施例12)
雑種犬における麻酔及び血流力学的効果
この実験は、慢性的に化合物1又はプロポフォールを投与した雑種犬における全身静脈内麻酔の効果を比較した。評価は、血圧、及び心拍出量等の血流力学的能力パラメータ、並びに臨床化学的パラメータ及びEEG分析を含む。
【0091】
実施例5に記載したように調製され、実施例4に従って処方された1%化合物1製剤、及びDIPRIVAN(1%プロポフォール注射可能エマルジョン)を、成熟した(少なくとも9月齢;約 20-40kg)の雑種犬で比較した。
イヌにおいて、7mg/kgのDIPRIVANをIV投与することにより全身麻酔を誘導し、当該イヌの期間にチューブを装着して機械的に呼吸させた。酸素中の2.2%呼吸終期セボフルランを用いて全身麻酔を維持した。左側5番目の肋間腔において開胸術を実施し、ヘパリン充填カテーテルを近位下行胸大動脈(P50圧力トランスデューサ Gould, Oxnard, CA)、及び右及び左心房に配置してIVアクセスを与えた。超音波遷移時間流動プローブ(T108, Transonic Systems, Ithaca, NY) を、遠位下行胸大動脈周辺に配した。20kHzのドップラー流動プローブ(Model HDP-20-3.5, Triton Surgical Technologies, San Diego, CA)を、前方近位冠状動脈周辺に配した。6MHzソノミクロメータ結晶(Hartley, Houston, TX)を、心内膜下に埋め込んだ。高品質マイクロマノメータ(P7, Konigsberg Instruments, Pasadena, CA)を、左心室に挿入した。水圧血管閉塞器(In Vivo Metric Systems, Healdsburg, CA)を、胸下大静脈周辺に配した。器具類は外部に配置し、胸壁を層で閉じ、気胸を空にした。イヌを実験前最短7日で回復させ、回復期間中にスリングに立たせて慣れさせた。
【0092】
イヌを終夜絶食させた。意識のあるイヌをスリングに配し、針電極を挿入してLead II ECGを記録した。頭皮電極を配して、EEG (MP150, Biopac Systems, Goleta, CA)を記録した(3つのバイポーラー記録構造であり、それは前頭部、側頭部、頭頂部、及び後頭部領域でサンプリングされる)。次いで、イヌに500mlの正常食塩水ボーラスを与え、次いで正常食塩水のIV注入を、3ml/kg/hr(イヌ1匹当たり60-120ml/hr)で、実験の期間中注入した。イヌを30分間安定化させた。実験の間にEEGを連続記録した。動脈血液ガス及び臨床化学測定は、pH、pO2、sO2、pCO2、tCO2、炭酸塩、カリウム、ナトリウム、及び過剰塩基を含み、血液ガス及び化学分析器(ABL-505, Radiometer, Copenhagen)を用いて、血液抜き取り後即座に測定した。血液臨床化学測定は、アルブミン、アルブミン/グロブリン比率、アルカリホスファターゼ、ALT(SGPT)、AST(SGOT)、重炭酸塩、直接ビリルビン、BUN、BUN/クレアチニン比率、カルシウム、塩化物、コレステロール、CK、クレアチニン、グロブリン、グルコース、リン酸、カリウム、ナトリウム、ナトリウム/カリウム比率、及び全蛋白を含む。安定化に続いて、EEG、血行動態、ECG、及び血液ガスのベースライン測定を記録した。PK及び臨床化学のために血液サンプルを取り出し、圧力容量ループを作成してデータを記録した。
【0093】
ベースライン測定の直後に、イヌに4mg/kg(イヌ1匹)又は5mg/kg(イヌ6匹)に、化合物1のIVボーラス用量又は7mg/kgのプロポフォール(イヌ7匹)のIVボーラス用量を1分間与え、全身麻酔を誘導した。誘導後、イヌの気管にチューブを装着し、窒素中50%酸素を用いて続く吸入及び回復期間に渡って機械的に呼吸させた。ボーラス用量の集結後最初の4分間で、化合物1ボーラスを受けたイヌに、0.25、0.5、1.0及び2.0 mg/kg/minの速度で化合物1を段階重複的に、15分のIV注入を4回投与し、同様のプロトコールをプロポフォールボーラス受容イヌに対しても用いたが、プロポフォールは表示した速度及び時間に注入した。MAPを連続的に監視し、任意の時点でMAPが50mmHgを下回った場合、又は心臓速度が1分当たり200拍を越えた場合は、投与を中止した。1匹のイヌについては1.0 mg/kg/minの化合物1注入期間の終点で、 他の2匹のイヌについては2.0mg/kg/minの化合物1注入期間の終点で投与を中止した。各々15分の注入の終点で、EEG、血行動態、ECG、及び血液ガスの測定を記録し、PKのために血液サンプルを取り出し、圧力容量ループを作成し、データを記録した。投与後、イヌを回復させた。臨床観察の主観的解釈が全身麻酔から十分に回復したことを示したときに、換気を中止し、気管からチューブを取り外した。気管チューブ取り外しの時間を記録した。最後の注入の終点の30分後に、EEG、血行動態、ECG、及び血液ガスの測定を記録し、PKのために血液サンプルを取り出し、圧力容量ループを作成し、データを記録した。イヌ血清における化合物1及びプロポフォールの濃度、及び5種類の代謝物(1酸化物(oxidative)、3グルタチオン−接合物、及び1硫酸塩−接合物)を、液体クロマトグラフィ(LC)及びタンデムマススペクトル(MS/MS)(Alturas Analyticsで実施)を用いて見積もった。
【0094】
結果は、静脈血液ガス及び臨床化学データは安定していることを示した。EEG分析は、用量関連的な鎮静−睡眠効果を示したが、発作又は前発作活性の証拠は示さなかった。麻酔から回復した全てのイヌは、化合物1又はプロポフォールのいずれを投与した場合も、類似の速度を示した。化合物1及びグルクロニド代謝物は、1位及び4位の両方で血清中に検出された。血清濃度は薬物投与レジメと一致した。
【0095】
このモデルでは、治療関連用量において、EEG結果は、プロポフォールよりも大きな化合物1の麻酔促進効果を示した。MAPと心臓速度の結果では、化合物1とプロポフォールに統計的に有意な相違はなかった。プロポフォール処理イヌにおける心拍出量は、ベースラインより有意に低下したが、化合物1処理イヌでは、心拍出量において統計的に有意な低下は見られなかった。
【0096】
(実施例13)
ブタにおける麻酔効果および血行力学的効果
実施例5に記載の要領で調製し実施例4に従って製剤した化合物1の1%製剤、またはDIPRIVAN(1%プロポフォール注射用エマルション)をIV注入した、麻酔をかけられ換気されているブタにおいて、化合物1およびプロポフォールの麻酔効果および血行力学的効果を比較した。評価には、BIS、薬物動態、血圧、ECG、心拍数、心拍出量、体温および酸素飽和を用いての麻酔深度のEEG測定値が含まれた。
実験は、商業的に農場で飼育された両性のブタ(平均体重33.6kg)に対して実施した。イソフルランを用いて麻酔を導入した。耳静脈から血管内へのアクセスを得た。各ブタには、挿管し機械的に換気を行った。舌の上に配置した連続式のパルス酸素濃度計を用いて、組織への酸素供給をモニターした。酸素、二酸化炭素および強力な吸入薬剤濃度を測定する吸気/呼気分析器を用いて、換気をモニターした。換気装置の設定は、安定した状態を維持するために必要に応じて調節した。
【0097】
イソフルラン、および、パンクロニウムの注入(10mg/時間)を用いて、継続的な麻酔レベルが達成された。試験期間を通してECGをモニターした。カニューレを挿入した左大腿動脈を通して動脈血圧をモニターした。MAP、収縮期および拡張期の動脈圧および心拍数を5秒毎に収集した。心拍出量および血液温度の熱希釈測定用に、内部の頚静脈に肺動脈カテーテルをカニューレ挿入した。体温は37℃に維持した。EEGモニター用の器具配置は、前頭〜後頭領域にわたり粘着性の電極アレイを用いて達成した(Aspect Medical、Norwood、MA、USA)。
【0098】
実験デザインには、30分の安定化期間、次いで化合物1(1分当たり0.6mg/kg×20分)またはプロポフォール(1分当たり0.750mg/kg×10分)のIV注入が含まれた。それぞれの注入に180分のウォッシュアウト期間が続いた。薬物動態分析用の血液力学的測定値および血液試料を、注入前、化合物1またはプロポフォールの注入中に2分毎、およびウォッシュアウト期間中は頻繁に得た。化合物1およびプロポフォールの注入の時間および速度は、注入期間中にBISが最大に低下(<10)するように予め決めておいた。pH、pO2、pCO2、グルコース、カリウムおよび乳酸を定量するための動脈血試料は、化合物1またはプロポフォールの注入前のベースライン時点、注入中、および、注入後1時間毎に測定した。
各群について代謝及び血行力学的パラメータを複数の点で不対両側t試験を用いて比較した。複数の比較を補償し、タイプI過誤の可能性を0.05以下に維持するため、0.025未満のP値を有意とした。
【0099】
A.麻酔効果
化合物1およびプロポフォールは、1分当たり384μg/kgの化合物1を14.7±3.8分、1分当たり750μg/kgのプロポフォールを9.4±1.9分、それぞれIV注入した場合に、BISが最大に抑制(<10)された。EEGに及ぼす効果は可逆的であり、60分以内にベースラインに戻った。最大薬物動態学的効果(Emax)に達するのに必要な化合物1の曲線(AUC)下の面積は、プロポフォールより有意に小さかった(各々、51.5±15.5対108.7±24.3μg−分/mL)。結論として、データは、化合物1はプロポフォールよりよく効くことを示した。
【0100】
B.血行力学的効果
化合物1(1分当たり0.384mg/kg、ブタ5匹)およびプロポフォール(1分当たり0.750mg/kg、ブタ6匹)のIV注入およびウォッシュアウトを通して、平均動脈圧および心拍数を周期的に測定した。結果をそれぞれ
図1および2に示す。
図3は、化合物1により生成される心拍出量をプロポフォールと比較している。化合物1を注入したブタの動脈血ガス試料を採取し、血液ガスおよび血清化学値について分析した。平均値を表4に示す。
表4.動脈血液ガス及び血清化学平均値
【表10】
【0101】
ベースラインでのMAPおよびHR値は、化合物1とプロポフォールとの間で差がなかった。両方の化合物ともMAPは低下したが、プロポフォール(66±4)は、化合物1(106±3)より著しく大きくMAPが低下した(p<0.001)。プロポフォールについて測定した最低HR(88±6bpm)は、化合物1について測定した最低HR(129±6bpm)より著しく低かった(p<0.5)。化合物1またはプロポフォールの注入の中止後は、HRおよびMAPは両方ともベースラインに戻った。プロポフォールと比較した場合、化合物1による心拍出量の低下に有意な差はなかった。
表4は、全ての血液ガス及び血清化学値は正常範囲内であることを示し、化合物1は、代謝性アシドーシス又は乳酸塩増加などの有意な代謝変化を生じさせなかった。
【0102】
(実施例14)
制吐活性
フェレットにおける制吐の可能性について化合物1をテストし、プロポフォールのものと比較した。
頚静脈中に血管アクセス・ポートを設置された体重1.0〜1.5kgのオスの臭腺除去済みのフェレットを、制御された温度下での12/12時間の明/暗サイクル、食餌および水は自由に与えられる、という条件で収容した。各試験日には、投薬の1時間前にフェレットに食餌を与えた。投薬前に速やかに食餌および水を片付けた。実施例2に記載の要領で調製し実施例5に従って製剤した化合物1の1%製剤またはDIPRIVANを、IV注入によりフェレットに投与した;Wynn RLら、1993、Eur J Pharmacol、241、42 re DIPRIVAN administration in ferretsを参照。化合物1またはDIPRIVANの投与後、動物を清潔な透明のケージ(蓋付き)中に置き、投与された具体的な処置について知らされていない観察者による45分間の観察期間のために無拘束状態で放置した。
【0103】
フェレットにおける催吐は、胃腸管から固体または液体の物質が経口的に排出されること(すなわち嘔吐)または物質の通過を伴わない動作(すなわち催吐)のいずれかを伴う律動的な腹部の収縮が特徴である。催吐および/または嘔吐のエピソードは、催吐および/または嘔吐の間の間隔が5秒を超えたとき、別のエピソードとみなした。
以下のように、1薬剤当たり6匹のフェレットにおいて化合物1またはプロポフォールの催吐促進活性を試験した:イソフルラン吸入によりフェレットに麻酔をかけた。1分当たり1mg/kgを15分間のIV注入により、化合物1またはプロポフォールを投与した。注入終了後、フェレットを継続的に45分間観察し、嘔吐および催吐の回数を数えた。
【0104】
以下のように、1薬剤当たり6匹のフェレットにおいて化合物1またはプロポフォールの制吐活性を試験した:イソフルランでフェレットに麻酔をかけ、1分当たり1mg/kgでの15分のIV注入により化合物1またはプロポフォールを投与した。注入終了後、0.5mg/kgの硫酸モルヒネを皮下投与し、上述の要領でフェレットを45分間モニターした。さらなる6匹のフェレットには、0.5mg/kgの硫酸モルヒネのみを皮下投与した。
硫酸モルヒネ(0.5mg/kg)単独では、フェレットにおいて催吐が促進され、嘔吐15回および催吐157回のエピソードが発生した。化合物1は、単独投与の際は嘔吐または催吐のエピソードを一切生じさせなかった。モルヒネの存在下で化合物1を投与されたフェレットは、嘔吐1回および催吐47回を呈した。プロポフォールおよび硫酸モルヒネを投与されたフェレットは、嘔吐3回および催吐47回を呈した。したがって、化合物1およびプロポフォールは両方とも、モルヒネの存在下での嘔吐および催吐の発生頻度を低下させた。
【0105】
すべての刊行物、特許および特許文書は、参照により個々に組み込まれる場合と同様に、参照により本明細書に組み込まれる。多様な具体的で好ましい実施形態および手法を参照しながら本発明を記載してきた。しかしながら、本発明の精神および範囲内に留まりながら多くの変形および改変が成される可能性があることは理解されるべきである。