(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハロブチルエラストマー;少なくとも1種の別のエラストマー;無機充填剤;並びにシランと、ホスフィンと、ヒドロキシル基1つ以上及び塩基性アミン含有官能基を含有する添加剤とを含む少なくとも3成分混合改質剤系を含有するゴムコンパウンドであって、前記シランはアミノシラン、ビニルシラン及び硫黄含有シランよりなる群から選ばれ、前記ホスフィンは式PR10R11R12[式中、R10、R11、R12は直鎖又は分岐鎖か、或いは芳香族基(−C6H5)又は置換芳香族基であってよいC1〜C20アルキレン基で、同じか又は組合わせが可能である。]のホスフィンであり、前記添加剤は一般式:HO−A−NR13R14(式中、R13及びR14は、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアリール基から選ばれ、AはC1〜C20アルキレン基で、直鎖又は分岐鎖であっても、エーテル結合を有しても、或いは更に別のアルコール部分を有してもよい。)を有する化合物である該ゴムコンパウンド。
前記ハロブチルエラストマーが、イソオレフィンと共役ジオレフィンとビニル芳香族モノマーとのハロゲン化三元共重合体を含有する請求項1に記載のゴムコンパウンド。
前記シランが、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−モノサルファン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−ジサルファン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−トリサルファン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−テトラサルファン、3−(トリエトキシシリル)プロパンチオール、又はそれらの混合物を含む請求項6に記載のゴムコンパウンド。
前記ホスフィンが、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、又はそれらの混合物を含む請求項1に記載のゴムコンパウンド。
前記アミノアルコールが、モノエタノールアミン(MEA)、N,N−ジメチルアミノエタノール(DMAE)、ジエタノールアミン(DEA)、ジブチルアミノエタノール(DBAE)、メチルジエタノールアミン(MDEA)、フェニルジエタノールアミン(PDEA)、又はそれらの混合物を含む請求項9に記載のゴムコンパウンド。
ハロブチルエラストマー;少なくとも1種の別のエラストマー;無機充填剤;並びにシランと、ホスフィンと、ヒドロキシル基1つ以上及び塩基性アミン含有官能基を含有する添加剤とを含む少なくとも3成分混合改質剤系;を混合する工程であって、前記シランはアミノシラン、ビニルシラン及び硫黄含有シランよりなる群から選ばれ、前記ホスフィンは式PR10R11R12[式中、R10、R11、R12は直鎖又は分岐鎖か、或いは芳香族基(−C6H5)又は置換芳香族基であってよいC1〜C20アルキレン基で、同じか又は組合わせが可能である。]のホスフィンであり、前記添加剤は一般式:HO−A−NR13R14(式中、R13及びR14は、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアリール基から選ばれ、AはC1〜C20アルキレン基で、直鎖又は分岐鎖であっても、エーテル結合を有しても、或いは更に別のアルコール部分を有してもよい。)を有する化合物である該工程を含むゴムコンパウンドの製造方法。
前記3成分混合改質剤系の3成分が、ハロブチルエラストマーと、少なくとも1種の別のエラストマーと、無機充填剤との予備混合した組み合わせと混合される請求項15に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
ここで使用する語句“ハロブチルエラストマー”とは、塩素化又は臭素化ブチルエラストマーを言う。臭素化ブチルエラストマーが好ましく、本発明では、このようなブロモブチルエラストマーを一例として説明する。しかし、本発明は塩素化ブチルエラストマーの使用まで拡がるものと理解すべきである。
【0017】
本発明で使用するのに好適なハロブチルエラストマーとしては、限定されるものではないが、臭素化ブチルエラストマーがある。このようなエラストマーは、イソオレフィンモノマーとC
4〜C
6共役ジオレフィンコモノマーとの共重合体であるブチルゴムの臭素化により得られる。C
1〜C
4−アルキル置換スチレンのようなアルキル置換ビニル芳香族コモノマーは、追加のコモノマー又は共役ジオレフィンコモノマーの代替品として使用できる。共役ジオレフィンコモノマーの代替品としてビニル芳香族コモノマーを含むハロブチルエラストマーの一例は、ビニル芳香族コモノマーがp−メチルスチレンである臭素化イソブチレンメチルスチレン共重合体(BIMS)である。共役ジオレフィンコモノマーの他にビニル芳香族コモノマーを有するハロブチルエラストマーの一例は、例えば米国特許第6,960,632号(この文献はここに援用する)に開示されたイソブチレンとイソプレンとp−メチルスチレンとの三元共重合体である。
【0018】
炭素原子数が4〜7のイソオレフィンは、本発明で使用するのに好適である。このようなC
4〜C
7イソモノオレフィンの特定例としては、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、4−メチル−1−ペンテン及びそれらの混合物が挙げられる。最も好ましいC
4〜C
7イソモノオレフィンモノマーはイソブチレンである。
好適なC
4〜C
8共役ジオレフィンの例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、4−ブチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、2,3−ジブチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、1,3−ブタジエン及びイソプレンが最も好ましい。イソオレフィン及び共役ジオレフィンモノマーをベースとするポリマーは、1種以上の共役ジエンモノマーを含む共重合体でも、共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーとを含む三元共重合体でもよい。
【0019】
ビニル芳香族モノマーを使用する場合、このモノマーは、使用される他のモノマーと共重合可能でなければならない。一般に、有機アルカリ金属開始剤で重合することが知られている、いずれのビニル芳香族モノマーも使用できる。このようなビニル芳香族モノマーは、通常、炭素原子数8〜20、好ましくは8〜14の範囲のものである。好適なビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、及びp−メチルスチレンを含む各種アルキルスチレン、p−メトキシスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−ビニルトルエン等が挙げられる。アルキル置換ビニル芳香族モノマーが好ましいけれども、スチレンは、1,3−ブタジエン単独との共重合用又は1,3−ブタジエン及びイソプレンとの三元共重合用に好ましい。
【0020】
前述の臭素化ブチルエラストマーの特定例は、ジオレフィン、好ましくはイソプレンから誘導された繰り返し単位を0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、更に好ましくは約1〜2.5重量%(重合体の炭化水素含有量に対し)の範囲及びイソオレフィン、好ましくはイソブチレンから誘導された繰り返し単位を90〜99.9重量%、好ましくは95〜99.5重量%、更に好ましくは97.5〜約99重量%(重合体の炭化水素含有量に対し)の範囲含有するブチルエラストマーをベースとする。臭素化後、臭素化ブチルエラストマーは、臭素を0.1〜9重量%、好ましくは0.5〜3.0重量%、更に好ましくは0.75〜2.3重量%の範囲(ブロモブチル重合体に対し)含有する。通常のブロモブチルエラストマーのDIN(ドイツ工業規格)53523(ML 1+8(125℃で))によるムーニー粘度は25〜60の範囲である。
【0021】
臭素化ブチルエラストマーには、安定剤を添加してよい。好適な安定剤としては、ステアリン酸カルシウム及びエポキシ化大豆油があり、好ましくは、臭素化ブチルゴム100重量部当り0.5〜5重量部(phr)の範囲で使用される。
好適な臭素化ブチルエラストマーの市販品の例としては、LANXESS Corporationから市販されているLANXESS Bromobutyl 2030(BB2030)、LANXESS Bromobutyl 2040(BB2040)及びLANXESS Bromobutyl X2がある。Bayer BB2030は、ムーニー粘度(ML 1+8@125℃)32±4、臭素含有量2.0±0.3重量%、概略分子量450,000g/モルのものである。
【0022】
本発明ではハロブチルエラストマーは、他の1種のエラストマー又は2種以上のエラストマーの混合物と組合わせて使用される。好適なエラストマーとしては、限定されるものではないが、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(ESBR及びSSBRを含むSBR)、ニトリル−ブタジエンゴム(HNBRを含むNBR)及び天然ゴム(エポキシ化NR又はENRを含むNR)のようなジエン系エラストマーが挙げられる。好ましい組合わせは、ハロブチルエラストマー、ブタジエンゴムエラストマー及びスチレン−ブタジエンゴムエラストマーを含有する。
【0023】
本発明ではハロブチルエラストマーは少なくとも1種の無機充填剤で強化される。無機充填剤は単独種の充填剤として、或いは無機充填剤及びカーボンブラックのような非無機充填剤を含む組合わせのような充填剤の組合わせとして供給してよい。好ましい無機充填剤は、例えばシリカ、シリケート、粘土(例えばベントナイト)、石膏、アルミナ、二酸化チタン、タルク等、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0024】
好適な充填剤の別の例は、以下のとおりである。
・例えばシリケート溶液の沈殿、又はハロゲン化珪素の火炎加水分解により製造した高分散シリカで、比表面積(BET比表面積)は5〜1000m
2/g、好ましくは20〜400m
2/g、更に好ましくは100〜250m
2/gの範囲、主な粒度は10〜400nmの範囲である。このシリカは、任意に、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr及びTiのような他の金属の酸化物との混合酸化物として存在してもよい。
・珪酸アルミニウム、及びアルカリ土類金属シリケートのような合成シリケート。
・BET比表面積が20〜400m
2/gで、主な粒度が10〜400nmである、珪酸マグネシウム又は珪酸カルシウム。
・カオリン及びその他の天然産シリカのような天然シリケート。
・ガラスファイバー及びガラスファイバー製品(マット、押出品)又は微小ガラス球。
・酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムのような金属酸化物。
・炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び炭酸亜鉛のような金属炭酸塩。
・金属水酸化物、例えば水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム又はそれらの組合わせ。
【0025】
これらの無機粒子は、表面にヒドロキシル基を有し、粒子を親水性兼疎油性にするので、充填剤粒子とブチルエラストマーとの相互作用を良好にすることは困難である。多くの目的から、好ましい無機物はシリカ、特に高分散性シリカ、例えば珪酸ナトリウムの二酸化炭素沈澱で製造したシリカである。
【0026】
本発明で無機充填剤として使用するのに好適な乾燥非晶質シリカ粒子の平均凝集物粒度は、0.1〜100μの範囲、好ましくは0.5〜50μの範囲、更に好ましくは1.0〜25μの範囲である。凝集物粒子の10容量%未満は、0.5μ未満か、或いは50μを超える粒度が好ましい。好適な非晶質乾燥シリカは、更に通常、DIN(ドイツ工業規格) 66131に従って測定したBET表面積が50〜450m
2/gの範囲であり、DIN 53601に従って測定したDBP吸収量が、150〜400g/100gシリカの範囲であり、またDIN ISO 787/11に従って測定した乾燥減量が、0〜10重量%の範囲である。好適なシリカ充填剤は、PPG Industries Inc.から商品名HiSil 210、HiSil 233及びHiSil 243で得られる。またBayer AGから市販されているVulkasil S及びVulkasil Nや、限定されるものではないが、例えばZeosil 1165MP(Rhodia)及びUltrasil 7005(Degussa)のような高分散性シリカ種等も好適である。
【0027】
また無機充填剤は、以下のような既知の非無機充填剤と組合わせて使用できる。
・カーボンブラック。好適なカーボンブラックは、好ましくはランプブラック法、ファーネスブラック法又はガスブラック法で製造され、BET比表面積は20〜200m
2/gで、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF又はGPFカーボンブラックである。或いは
・ゴムゲル、好ましくはポリブタジエン、ブタジエン/スチレン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体及びポリクロロプレンをベースとするゴムゲル。
非無機充填剤は60phr以下の量で存在してよい。無機充填剤は、充填剤全量に対し、35重量%以上を構成しなければならない。本発明のハロブチルエラストマー組成物を他のエラストマー組成物とブレンドする場合、他の組成物は、無機及び/又は非無機の充填剤を含有してよい。
【0028】
本発明の混合改質剤系の一部として使用される3種の化合物のうちの第一種はシラン化合物を含む。本発明の混合改質剤系に有用なシラン化合物は、好ましくはアミノシラン、ビニルシラン又は硫黄含有シランである。好ましいアミノシランは、WO98/53004として1998年11月26日公開されたPCT国際出願PCT/CA98/00499(この文献はここに援用する)に定義された式I:R
1R
2N−A−SiR
3R
4R
5のアミノシラン並びにその酸付加塩及び第四アンモニウム塩である。
【0029】
式I中、R
1、R
2は直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアリール基から選択され、Aは直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアリール基(架橋基)であり、R
3は直鎖又は分岐鎖のアルコキシ又はアリーロキシ基から選択され、R
4及びR
5は直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアリール基、或いは直鎖又は分岐鎖のアルコキシ又はアリーロキシ基から選択される。
【0030】
式Iの好適なアミノシランとしては、限定されるものではないが以下のものが挙げられる。
3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、
3−アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、
N−(6−アミノへキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、
4−アミノブチルトリエトキシシラン、
4−アミノブチルジメチルメトキシシラン、
3−アミノプロピルビス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、
3−アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、
N−(6−アミノへキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、
4−アミノブチルトリエトキシシラン、及び
(シクロヘキシルアミノメチル)−メチルジエトキシシラン。
追加の官能基を有する好適な代替アミノシランとしては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
N−2−(ビニルベンジルアミノ)−エチル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、
トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン、
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリス(2-エチルヘキソキシ)−シラン、
トリエトキシシリルプロピル−ジエチレントリアミン、
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリス(2−エチルヘキソキシ)−シラン。
【0031】
以上のアミノシラン(式Iのものを含む)は、遊離塩基として、或いはその酸付加体又は第四アンモニウム塩の形態で使用できる。式Iのアミノシランの好適な塩の非限定的例としては、以下のものが挙げられる。
N−オレイル−N−[(3−トリエトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド、
N−3−アミノプロピルメチルジエトキシ−シラン臭酸、
(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリメトキシシラン臭酸、
N−[(3−トリメトキシシリル)プロピル]−N−メチル、
N−N−ジアルキルアンモニウムクロリド、
N−テトラデシル−N,N−ジメチル−N−[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムブロミド、
3[2−N−ベンジルアミノエチル−アミノプロピル]トリメトキシシラン塩酸、
N−オクタデシル−N,N−ジメチル−N−[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムブロミド、
N−[(トリメトキシシリル)プロピル]−N−トリ(n−ブチル)アンモニウムクロリド、
N−オクタデシル−N−[(3−トリエトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド、
N−2−(ビニルベンジルアミノ)エチル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン塩酸、
N−2−(ビニルベンジルアミノ)エチル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン塩酸、及び
N−オレイル−N−[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド。
【0032】
シラン化合物は硫黄含有シラン化合物であってよい。好適な硫黄含有シランとしては、米国特許第4,704,414号、欧州特許出願公開0,670,347 A1及びドイツ特許出願公開4435311 A1(これらの文献はここに援用する)に記載のものが挙げられる。
【0033】
好ましい硫黄含有シランはサルファン部分を有するか、又はサルファン部分含有化合物の混合物を有する。好適な一例は、ビス[3(トリエトキシシリル)プロピル]−モノサルファンとビス[3(トリエトキシシリル)プロピル]ジサルファンとビス[3(トリエトキシシリル)プロピル]トリサルファンとビス[3(トリエトキシシリル)プロピル]テトラサルファンとの混合物、或いはCK Witcoから商品名Si−69
TM(商標)(平均サルファン 3.5)で、CK WitcoからSilquest
TMA−1589で、又はEvonik(以前はDegussa)からSi−75
TM(平均サルファン 2.0)で得られる高級サルファン同族体である。他の好適な一例は、Silquest
TMRC−2で得られるビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]−テトラサルファンである。その他の好適なシラン化合物としては、シリカ表面に結合させるため、嵩張ったエーテル基及びモノエトキシ基と共同で付与されたメルカプト又はチオ官能価を有するものが挙げられる。このような化合物の非限定的例は、Evonik(以前はDegussa)から商品名シラン VP Si363
TMで市販されている3−(トリエトキシシリル)プロパンチオールである。
【0034】
その他の好適な硫黄含有シランとしては、式:R
6R
7R
8SiR
9の化合物が挙げられる。式中、R
6、R
7及びR
8の少なくとも1種、好ましくは2種、最も好ましくは3種はヒドロキシル基又は加水分解可能の基である。R
6、R
7及びR
8基は珪素原子に結合している。R
6基はヒドロキシル又はOC
pH
2p+1(但し、pは1〜10である。炭素鎖は酸素原子で中断されて基、例えば式CH
3OCH
2O−、CH
3OCH
2OCH
2O−、CH
3(OCH
2)
4O−、CH
3OCH
2CH
2O−、C
2H
5OCH
2O−、C
2H
5OCH
2OCH
2O−、又はC
2H
5OCH
2CH
2O−を示してよい。或いはR
8は、フェノキシであってよい。R
7基はR
6と同じでよい。R
7はC
1−10アルキル基、又はC
2−10モノ−又はジ−不飽和アルケニル基であってもよい。更に、R
7は下記R
9基と同じでよい。
【0035】
R
8はR
6と同じであってよいが、R
6、R
7及びR
8は全てがヒドロキシルではないことが好ましい。R
8はC
1−10アルキル、フェニル、C
2−10モノ−又はジ−不飽和アルケニルであってもよい。更に、R
8は下記R
9基と同じでよい。
【0036】
珪素原子に結合したR
9基は、架橋の形成に寄与するか、或いは架橋に関与して、不飽和重合体との架橋反応に関与し得るような基である。R
9は下記構造を有してよい。
−(alk)
e(Ar)
fSi(alk)
g(Ar)
hSiR
6R
7R
8
式中、R
6、R
7及びR
8は前記定義したとおりである。alkは炭素原子数1〜6の2価の直鎖炭化水素基、又は炭素原子数2〜6の分岐鎖炭化水素基である。Arはフェニレン:−C
6H
4-、ビフェニレン:−C
6H
4−C
6H
4−又は−C
6H
4−OC
6H
4−基である。e、f、g及びhは0、1又は2であり、iは2〜8の整数であるが、eとfとの合計は常に1以上であり、gとhとの合計も常に1以上である。或いはR
9は構造:(alk)
e(Ar)
fSH又は(alk)
e(Ar)
fSCN(但し、e、fは前記定義したとおりである)で表すことができる。
【0037】
R
6、R
7及びR
8は、好ましくは全てOCH
3、OC
2H
5又はOC
3H
8基のいずれかであり、最も好ましくは全てがOCH
3又はOC
2H
5である。硫黄含有シランの非限定的例としては、以下のものが挙げられる。
3−オクタノニルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン(シランNXT)、
ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジサルファン、
ビス[2−(トリメトキシシリル)エチル]テトラサルファン、
ビス[2−(トリエトキシシリル)エチル]トリサルファン、
ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ジサルファン、
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、及び
3−メルカプトエチルプロピルメトキシメトキシシラン。
【0038】
本発明の混合改質剤系の一部として使用される3種の化合物のうちの第二種は基本構造:PR
10R
11R
12のホスフィンである。式中、R
10、R
11、R
12は、直鎖又は分岐鎖か、或いは場合により芳香族基(−C
6H
5)又は置換芳香族基であってよい、いずれかのC
1〜C
20アルキレン基で同じか又は組合わせが可能である。好適なホスフィンとしては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリn−ブチルホスフィン及びトリフェニルホスフィンが挙げられる。これらのうち最も好ましいものはトリフェニルホスフィンである。
【0039】
本発明の混合改質剤系の一部として使用される3種の化合物のうちの第三種は、ヒドロキシル基1つ以上及び塩基性アミン含有官能基を有する添加剤を含む。この改質剤は、分岐してよいメチレン橋により分離された、第一アルコール基1つ以上及びアミン基を含有する。このような化合物は一般式:HO−A−NR
13R
14を有する。式中、R
13及びR
14は、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアリール基から選ばれ、AはC
1〜C
20アルキレン基で、直鎖又は分岐鎖であっても、エーテル結合を有しても、或いは更に別のアルコール部分を有してもよい。好ましくは前記2つの官能基間のメチレン基の数は1〜4の範囲とすべきである。このような好ましい添加剤の例としては、モノエタノールアミン(MEA)、N,N−ジメチルアミノエタノール(DMAE)、ジエタノールアミン(DEA)、ジブチルアミノエタノール(DBAE)、メチルジエタノールアミン(MDEA)及びフェニルジエタノールアミン(PDEA)が挙げられる。
【0040】
本発明に使用される3種の改質剤の好ましい組合わせとしては、トリフェニルホスフィン、N,N−ジメチルアミノエタノール及びSi69
TMシランの改質剤;トリフェニルホスフィン、ジブチルアミノエタノール及びSi69
TMシランの改質剤;及びトリフェニルホスフィン、フェニルジエタノールアミン及びSi69
TMシランの改質剤が挙げられる。
【0041】
ハロブチルエラストマーコンパウンドに取り入れる充填剤の量は、広い限定範囲で変化できる。充填剤の量は、エラストマー100部当たり、通常、20〜250重量部、好ましくは30〜100部、更に好ましくは65〜85部の範囲である。無機充填剤(シリカ)を75phr含むコンパウンドの場合、ホスフィン添加剤の量は約0.1〜8.0phrの範囲であり、アミノアルコール添加剤の量は約0.1〜8.0phrの範囲であり、またシランの量は約0.1〜8.0phrの範囲である。
【0042】
更に詳しくは、無機充填剤(シリカ)を75phr含むコンパウンドの場合、混合改質剤系に存在するホスフィン(具体的にはトリフェニルホスフィン)添加剤の量は約0.1〜6.0phr、更に好ましくは約1.0〜4.0phr、なお更に好ましくは約1.5〜2.5phrの範囲である。混合改質剤系に存在するアミノアルコール(具体的にはN、N−ジメチルアミノエタノール)添加剤の量は約0.1〜6.0phr、更に好ましくは約0.5〜3.0phr、なお更に好ましくは約0.8〜2.5phr、最も好ましくは1.0〜2.0phrの範囲である。混合改質剤系中のシラン化合物(具体的にはビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラサルファン含有シラン)の量は約0.1〜15.0phr、更に好ましくは約1.0〜6.0phr、なお更に好ましくは約2.5〜5.5phr、最も好ましくは3.0〜4.5phrの範囲である。混合物中の改質剤の量は、コンパウンド中の無機充填剤(例えばシリカ)の量に従って増加、減少する。例えばコンパウンド中のシリカ量が減少すれば、3種の改質剤の量も減少させる必要がある。同様にシリカ量が増加すれば、3種の改質剤の量も増加させる必要がある。各改質剤種とは異なる化合物を選択すれば、各化合物の最終添加量(phr)は、一般化学構造との分子量差に応じて変化できる。
【0043】
一実施態様では本発明に従って製造したゴムコンパウンドは、以下の特性を所望の組合わせで持つことができる。0℃でのtan δが0.325以上、60℃でのtan δが0.120以下、摩耗容積減量(DIN)が165mm
3以下、かつ破断点引張り値が13.0MPaを超える。他の一実施態様では本発明に従って製造したゴムコンパウンドは、以下の特性を単独で又は所望の組合わせで持つことができる。ムーニー粘度(ML 1+4@100℃)が20〜85、ムーニースコーチ(MS LR@125℃、105分)が>30、MDR硬化(1.7Hz、弧度(arc)1°、160℃、30分、100dNm)が20〜45(MH)又は2〜9(ML)、極限伸びが約150〜約700%、硬度ショアーA2が40〜90点、DIN摩耗(t90+10)が50〜200mm
3、及びtan δ@0℃が0.1〜0.70。更に他の一実施態様では他の一実施態様では本発明に従って製造したゴムコンパウンドは、以下の特性を単独で又は所望の組合わせで持つことができる。ムーニー粘度(ML 1+4@100℃)が56.9〜90.8、好ましくは56.9〜76.0;ムーニースコーチ(MS LR@125℃、105分)が12.4〜>30、好ましくは15.0〜>30;MDR硬化(1.7Hz、弧度1°、160℃、30分、100dNm)が23.9〜32.3(MH)又は3.4〜6.4(ML);極限伸びが178〜367%;硬度ショアーA2が53〜59点;DIN摩耗(t90+10)が83〜135mm
3、好ましくは83〜116mm
3;及びtan δ@0℃が0.32〜0.43。
【0044】
本発明ではエラストマー;充填剤;並びにシラン化合物と、ホスフィンと、ヒドロキシル基1つ以上及び塩基性アミン含有官能基を含有する添加剤とを含む混合改質剤系を、好適には25〜200℃の範囲の温度で一緒に混合する。普通、この混合時間は1時間を超えない。普通、混合は当業者に公知の各種混合機器、例えば2本ロールミルミキサー、Brabenderミキサー又はミニチュア密閉式ミキサー、或いは接線方向又は噛合い型ローター構造を用いた製造規模のミキサーで実施できる。混合改質剤は、エラストマー及び充填剤の配合中、予備混合又は混合できる。特に好ましい混合法は三段階を使用する。この実施態様ではエラストマー及び無機充填剤を、まず混合し、次いで3成分混合改質剤系(予備混合又は現場混合のいずれか)を混合し、続いてブチルゴムの配合に有用な他の試剤を混合する。或いは充填剤及び改質剤の添加は、これら充填剤及び改質剤のエラストマーブレンドへの分散及び取り込みを容易にするため、多数装填サイクルに分割してよい。
【実施例】
【0045】
試験
硬度及び応力歪特性をASTM D−2240要件に従って、A−2型ジュロメーターを用いて測定した。この応力歪データは、ASTM D−412法Aの要件に従って、23℃で得られた。2mm厚の引張りシート(160℃でtc90+5分間硬化)から切断したダイCダンベルを用いた。DIN耐磨耗性は、DIN 53516試験法に従って測定した。DIN磨耗分析用のサンプルボタンを160℃でtc90+10分間硬化した。動的試験片を160℃でt90+5分間硬化した。10Hzの周波数及び0.1%の動歪を用いて−100℃〜+100℃の範囲に亘って測定される動的応答を得るため、GABO Eplexorを用いてサンプルを試験した。ムーニースコーチを、ASTM 1646に従ってAlpha Technologies MV2000を用いて大型ローターにより125℃で測定した。tc90時間を、振動周波数1.7Hz、160℃での弧度1°で合計運転時間30分間用いる可動ダイ流動計(Moving Die Rheometer)(MDR 2000E)でASTM D−5289に従って測定した。硬化は、Alan−Bradleyプログラマブルコントローラーを備えた電気プレスを用いて行った。
【0046】
三段階混合を用いず、標準的な混合法でコンパウンドを製造した。表1に示す処方に従って、接線方向ローターを備えた1.5リットルBR−82 Banbury密閉型ミキサーを用い、第1表に示す配合表に従ってこれらの例を製造した。温度をまず40℃で安定化させた。70rpmにセットしたローター速度で、成分1Aの半分、次いで1B、引続き1Aの半分をミキサーに導入し、次いで0.5分後、1Cを導入した。1.5分後、このミキサーに成分1Dを添加した。3.5分(又は135℃)後、ラム(ram)の清掃(sweep)を行った。5.5分(又は150℃)後、ラムの清掃を行った。合計混合時間6.5分後、コンパウンドを降ろし(dump)、シート状にし(sheeted)、24時間静置した。第二段階中、ローター速度を70rpmにセットしたBR−82 Banbury密閉型ミキサーに段階1マスターバッチの半分を加え、次いで成分2Aを加え、引続き段階1マスターバッチの残りを加えた。3分間(又は165℃)混合後、コンパウンドを降ろし、ミル上でシート状にした。次いで転がり溜り(rolling bank)上に硬化剤3Aを加え、3/4カットを用いて分散し、2本ロールミル上で最小6回両端を接して通過させ(6 endwise passes)精製した。
【0047】
例1〜15
例1〜15は、これら3種の改質剤に対し関係する範囲を示す初期の研究に基づく実験(DOE)のBox−Behnken応答表面デザインの結果である。
シラン、Si69
TM (1.40、2.80及び4.20phr)
N,N−ジメチルアミノエタノール(DMEA)
・ 45、0.90及び1.35phr)
トリフェニルホスフィン(PPh
3)
(1.32、2.65及び3.97phr)
【0048】
当業者は、選択された特定の改質剤の相対モル質量及び反応性を当然考慮して、これら3種の改質剤内で代替改質剤を選択できる。
これらの実験を用いて、関係するトレッド特性に対するこれら改質剤の影響を測定した。これらの例から得られたデータにより、雛型を生み出し、コンパウンド16についての物理試験結果を予測するのに使用した。雛型の選択特性についての結果及び精度を以下に検討する。
【0049】
例1〜15についてのコンパウンド粘度(100℃でのML)は57〜91MUの範囲内で、この値が低いほど、コンパウンドの加工及び取扱いが良好であった。予測雛型のR
2値は0.8408で、例16についての予測値は、実測値の61.8MUに対し、59.5MUであった。コンパウンド粘度に対する最も重要なパラメーターは、コンパウンド処方中のシラン(S)、アミノアルコール(D)及びトリフェニルホスフィン(T)の量である。この研究は、コンパウンドの加工に好適な粘度に到達するには、これら3種の改質剤が全て必要であることを示している。
【0050】
例1〜15についてのコンパウンドスコーチ時間(160℃でのMDR ts2)は0.99〜3.15の範囲内で、この値が高いほど、コンパウンドの加工及び取扱いが良好であった。予測雛型のR
2値は0.8226で、例16についての予測値は、実測値の2.28分に対し、2.35分であった。コンパウンドスコーチ時間に対する最も重要なパラメーターは、コンパウンド処方中のシラン(S)、アミノアルコール(D)及びトリフェニルホスフィン(T)の量である。この研究は、好適なスコーチ安全性に到達するには、3種の改質剤が全て必要であることを示している。
【0051】
例1〜15についてのコンパウンド伸びは150〜369の範囲内で、またトレッドコンパウンドに必要な最小値は約300%であり、この値が高いほど、一般に良好である。予測雛型のR
2値は0.8936で、例16についての予測値は、実測値の302%に対し、327%であった。コンパウンド伸びに対する最も重要なパラメーターは、コンパウンド処方中のシラン(S)、アミノアルコール(D)及びトリフェニルホスフィン(T)の量である。この研究は、これら3種の改質剤の組合わせがトレッド用としてのコンパウンド伸び基準に適合し、全ての改質剤がコンパウンドの極限伸びに影響を与えることを示している。
【0052】
コンパウンド摩耗(容積減量、DIN法を使用)は、ブチル系トレッドコンパウンドにとって重要なパラメーターである。例1〜15についての摩耗減量は、135〜83mm
3の範囲内で、摩耗ゴム量が少ないほど、トレッド用として好ましい。予測雛型のR
2値は0.9326で、例16についての予測値は、実測値の96mm
3に対し、105mm
3であった。耐摩耗性に影響を与える最も重要な変数は、コンパウンド処方中のシラン(S)、アミノアルコール(D)及びトリフェニルホスフィン(T)の量であった。この研究は、耐摩耗性を最大化するには3種の改質剤が全て必要であることを示している。
【0053】
表2は、例1〜15の充填剤入りブチル−SBR−BRエラストマーコンパウンドの選択された温度でのtan δ応答を示す。コンパウンドについて比較的低温(即ち、10℃未満)で測定したtan δ値は、トレッド用としてのトラクション特性に有用な予言者となり得る。一般に0℃では、tan δ値が高いほど、予測される濡れトラクションは良好である。例1〜15についてのtan δ値は0.3265〜0.4260の範囲内で、この値が高いほど、トレッド用として好ましい。予測雛型のR
2値は0.9049で、例16についての予測値は、実測値の0.3818に対し、0.3836であった。0℃付近でのtan δ値に対する最も重要なパラメーターはコンパウンド処方中のシラン(S)の量及びトリフェニルホスフィン(T)の量である。
【0054】
【0055】
【0056】
コンパウンドについて僅かに高い温度(即ち、60℃付近)で測定したtan δ値は、このようなトレッド用コンパウンドの転がり抵抗に有用な予言者となり得る。一般に60℃ではtan δ値が低いほど、予測される転がり抵抗が小さい(また、燃費が向上する)。例1〜15についてのtan δ値は0.0633〜0.1023の範囲内で、また予測雛型のR
2値は0.6164であり、更に例16についての予測値は、実測値の0.0921に対し、0.0856であった。
図1は、選択されたコンパウンドの応力/歪特性を示し、高/中間/高荷重及び低/中間/低荷重対中間荷重(++−)を比較する。
これらの例は、所望の特性バランスを得るには、ブチル系トレッドコンパウンドにとって3つの異なる改質剤種が必要であることを明示している。
【0057】
例17〜27(比較例)
例17〜27は、いずれの単独の改質剤では、3つの改質剤種の混合物により付与された所望特性を有するコンパウンドが得られないことを示す比較例である。このデータは、Si69又はDMAE又はPPh
3改質剤を単独で添加、使用した場合、ブロモブチル系トレッドコンパウンドの特定の特性を向上するかも知れないが、他の特性の大幅な低下という犠牲を払わなければならないことを示している。3種の全ての改質剤の組合わせを同じコンパウンドに用いた場合のみ、最良の特性バランスが得られる。
【0058】
図2のa、b、c、dは充填剤入りブチル−SBR−BRエラストマーコンパウンド(17〜27が選択された)及びトリブレンド(3種の改質剤の混合物)の改質剤荷重、tanδ、引張り及び物理的特性応答を示す。
図2bは、トリブレンドの0℃でのtan δが単一改質剤を単独使用したコンパウンドよりも良好な応答(高い値は濡れトラクション特性の向上を予測する)を与えることを示している。同様に
図2aは、トリブレンドの60℃でのtanδが所望の低い値を与える(60℃での低tan δ値はタイヤの一層良好な転がり抵抗を予測する)ことを示している。また
図2c及び2dは、トリブレンドが前記tanδ値を維持しながら、高い破断点引張り強度伸びの所望の組合わせを与えることを示している。トリブレンドは、3種の改質剤のいずれかを単独使用した場合と比較して、特性の最良の組合わせを与えると共に、バランスしたトラクション特性及び転がり抵抗特性、並びに所望の物理的特性を与えることは明らかである。
【0059】
例28〜34(比較例):DMAE又はPPh
3のいずれかの改質剤種と一緒に添加したSi69
例28〜34のコンパウンド処方を表5に示し、また対応する物理的特性を表6に示す。これらの例において、シランを一定に保持した場合、2種の改質剤の組合わせ用の処方を示す。これらの例は、2成分混合改質剤系中のアミノアルコール(DMAE)又はホスフィン(PPh
3)のいずれかと一緒に添加した通常のシラン改質剤Si69の効果を説明する。
図3のa、b、c、dは、選択された特性に対する2種の改質剤の組合わせの効果を説明する。これらコンパウンドの破断点伸びは受容可能の範囲にある場合、予測される転がり抵抗値(60℃でのtanδ)及び引張り強度は、トリブレンドで得られた転がり抵抗及び引張り応答よりも劣っている。同様に、予測される濡れトラクションは、破断点の引張り及び伸び値について犠牲を払ってのみ、受容可能である。このような事例は、優れたトレッドコンパウンドに必要な、転がり特性以外の他の主要特性について犠牲を払って、転がり抵抗を向上するため、過剰硬化させたコンパウンドに多く見られる。これらの結果は、Si69と他の2種の改質剤のいずれか1種との組合わせが本発明の3成分系に匹敵する特性を生じないことを示している。
【0060】
例35〜40(比較例):Si69又はPPh
3のいずれかの改質剤種と一緒に添加したDMAE
例35〜40のコンパウンド処方を表7に示し、また対応する物理的特性を表8に示す。これらの例において、DMAEを一定に保持した場合、2種の改質剤の組合わせ用の処方を示す。これらの例は、2成分混合改質剤系中の通常のシラン(Si69)又はホスフィン改質剤(PPh
3)のいずれかと一緒に添加したアミノアルコール(DMAE)の効果を説明する。
図4のa、b、c、dは、選択された特性に対する2種の改質剤の組合わせの効果を説明する。トリブレンドは同時に十分な濡れトラクション、破断点引張り及び伸び特性を与えながら、最良の予測転がり抵抗を与える。比較のため、再び繰り返すが、トリブレンドはトレッドコンパウンド用として最良の特性バランスを提供する。これらの結果は、DMAEと他の2種の改質剤のいずれか1種との組合わせが本発明の3成分系に匹敵する特性バランスを生じないことを示している。
【0061】
例41〜46(比較例):Si69又はDMAEのいずれかの改質剤種と一緒に添加したPPh
3
例41〜46のコンパウンド処方を表9に示し、また対応する物理的特性を表10に示す。これらの例において、TPPを一定に保持した場合、2種の改質剤の組合わせ用の処方を示す。これらの例は、2成分混合改質剤系中の通常のシラン(Si69)又はアミノアルコール(DMAE)のいずれかと一緒に添加したホスフィン改質剤(PPh
3)の効果を説明する。
図5のa、b、c、dは、選択された特性に対する2種の改質剤の組合わせの効果を説明する。トリブレンドは、TPP及びDMAEの組合わせと比較すると、一層良好なtanδ及び一層良好な物理的特性を与える。トリブレンドをTPP及びSi69改質剤の組合わせと比較すると、
図5のa、b、c、dに示す特性は同様であるが、2種改質剤ブレンドについての摩耗結果は劣り、幾つかの場合はこれらのサンプルは柔らかすぎて試験できない。これらの結果は、PPh
3と他の2種の改質剤のいずれか1種との組合わせが本発明の3成分系に匹敵する特性バランスを生じないことを示している。
【0062】
これらの例は、試験した改質剤の1成分又は2成分改質剤のいずれかにより、得られるトレッドコンパウンドの所望の特性バランスが適合できないことを示している。3つの全ての改質剤種の組合わせによってのみ、所望の特性を有する優れたブチル系トレッドコンパウンドが得られる。
【0063】
Kanzasによる米国特許第6,960,632及びKanzas等によるRubber Chemistry and Technology,2001 75,155に記載の方法によりブチル三元共重合体を製造した。このベース重合体を標準的方法(ヘキサン中Br
2)を用いて臭素化し、臭素化ブチル三元共重合体を得た。臭素化ブチル三元共重合体の2つのグレードを、5モル%及び8モル%のpMeStにより生成した。
【0064】
NMR微細構造分析により測定した臭化アリル、及び残留1,4イソプレンの量は、商用グレードのBB2030と類似することに注意。
BB2030と、5モル%pMeStブチル三元共重合体(Terp 5、例47)及び8モル%pMeStブチル三元共重合体(Terp 8、例48)との置換を含む処方は、関係する各種物理的特性及び動的トレッド特性に対するブチル系三元共重合体の影響を示すために作製した。
【0065】
例47及び例48についてのコンパウンド粘度(100℃でのML)は49.3及び50.9であった。これらの粘度はコンパウンド27の粘度(55.2)の粘度よりも僅かに低く、この値が低いほど、コンパウンドの加工及び取扱いが一層良好である。例47及び例48についてのコンパウンドスコーチ時間(125℃でのMDR t05)は、コンパウンド27の23.9分に対し、15.3分及び14.1分であった。この値が高いほど、コンパウンドの加工及び取扱いが一層良好である。
【0066】
例47及び例48についてのコンパウンド伸びは、コンパウンド27の351%に対し、261%及び306%であり、トレッドコンパウンドに必要な最大値、約300%を有していた。この値が高いほど、一般に一層良好である。コンパウンド摩耗(容積減量、DIN使用)はブチル系トレッドコンパウンドにとって重要なパラメーターである。例47及び例48についての摩耗減量は、コンパウンド27の149mm
3に対し、137mm
3及び135mm
3であり、摩耗ゴムの量が少ないほど、トレッド用として好ましい。
【0067】
表12は、例47及び例48の充填剤入りブチル−SBR−BRエラストマーコンパウンドの選択された温度でのtan δを示す。コンパウンドについて比較的低温(即ち、10℃未満)で測定したtan δ値は、トレッド用としてのトラクション特性に有用な予言者となり得る。一般に0℃では、tan δ値が高いほど、予測される濡れトラクションは一層良好である。例47及び例48についてのtan δ値は、コンパウンド17の0.366に対し、0.342及び0.400で、この値が高いほど、トレッド用として好ましい。
【0068】
これらの例は、トレッド用に関連する有用な特性バランスを得るために、前記3種の改質剤系が他のブチル系材料(特にブチル三元共重合体)に首尾よく利用できることを示している。実際に、得られるトレッドコンパウンドは、トレッド用として要求される耐摩耗及び加工特性を維持しながら、優れた予測トラクション特性を有する。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】