特許第5651024号(P5651024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5651024
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】物体検知センサ及び噴霧装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 8/12 20060101AFI20141211BHJP
   G01B 11/00 20060101ALN20141211BHJP
【FI】
   G01V9/04 J
   !G01B11/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-6159(P2011-6159)
(22)【出願日】2011年1月14日
(65)【公開番号】特開2012-145545(P2012-145545A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104569
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正夫
(72)【発明者】
【氏名】谷口 慎一
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−066248(JP,A)
【文献】 特開2000−206267(JP,A)
【文献】 特開平04−169824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 8/12
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平方向に向けて配置され且つ当該略水平方向の環境光を受光可能な第1受光部を有しており、物体の接近による前記略水平方向の環境光の変化により受光量が変化し、当該受光量の変化に応じた第1出力信号を出力可能な第1受光素子と、
上方に向けて配置され且つ当該上方の環境光を受光可能な第2受光部を有しており、前記上方の環境光の変化により受光量が変化し、当該受光量の変化に応じた第2出力信号を出力可能な第2受光素子と、
前記第2受光素子の第2出力信号に変化があるか否か又は当該第2出力信号がしきい値以下であるか否かを判定し、この判定の結果、前記第2出力信号に変化がない又は前記第2出力信号がしきい値以下であると判定したとき、前記第1出力信号に基づき物体の接近を検知する物体検知手段とを備えている物体検知センサ。
【請求項2】
請求項1記載の物体検知センサにおいて、
天板及び側板を有する筐体を更に備えており、
前記第1受光素子は、前記第1受光部を前記天板に前記略水平方向に向けて配設されており、
前記第2受光素子は、前記第2受光部前記側板に前記上方に向けて配設されている物体検知センサ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の物体検知センサにおいて、
前記第1受光素子が複数である物体検知センサ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の物体検知センサにおいて、
前記第2受光素子が複数である物体検知センサ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の物体検知センサと、
薬剤を噴霧する噴霧手段とを備えており、
前記物体検知センサの物体検知手段は、物体の接近を検知したときに、前記噴霧手段に薬剤を噴霧させる又は前記噴霧手段に薬剤の噴霧を停止させる噴霧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人などの物体の接近を検知する物体検知センサ及び噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の物体検知センサとしては、同方向に向けて配置された一対の受光素子と、この受光素子の何れか一方の出力信号の変化により手のひらの接近を検知する一方、前記受光素子の双方の出力信号の変化により環境光の変化を検知する物体検知手段と備えたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案出願公告昭41−22148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記物体検知センサは、一対の受光素子の受光量を同一に設定する又は調整する必要があり、当該受光素子の設定又は調整が煩わしいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、受光素子間の受光量の設定又は調整を行う必要がない物体検知センサ及び噴霧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の物体検知センサは、略水平方向に向けて配置され且つ当該略水平方向の環境光を受光可能な第1受光部を有しており、物体の接近による前記略水平方向の環境光の変化により受光量が変化し、当該受光量の変化に応じた第1出力信号を出力可能な第1受光素子と、上方に向けて配置され且つ当該上方の環境光を受光可能な第2受光部を有しており、前記上方の環境光の変化により受光量が変化し、当該受光量の変化に応じた第2出力信号を出力可能な第2受光素子と、前記第2受光素子の第2出力信号に変化があるか否か又は当該第2出力信号がしきい値以下であるか否かを判定し、この判定の結果、前記第2出力信号に変化がない又は前記第2出力信号がしきい値以下であると判定したとき、前記第1出力信号に基づき物体の接近を検知する物体検知手段とを備えている。
【0007】
このような態様の発明による場合、物体検知手段が、第2受光素子の第2出力信号に変化があるか否か又は当該第2出力信号がしきい値以下であるか否か(すなわち、環境光に変化があるか否か)について判定し、環境光に変化がないと判定したときにのみ第1受光素子の第1出力信号に基づき物体の接近を検知するようになっている。よって、本物体検知センサは、環境光の変化を物体の接近であると誤検知する可能性を低減することができる。しかも、第1、第2受光素子は、異なる方向に向けて配置されているので、当該第1、第2受光素子の受光量を同一に設定又は調整する必要がない。よって、本物体検知センサの低コスト化を図ることができる。
第2受光素子が上方に向けて配置されているので、当該第2受光素子が太陽光、月光、屋外照明及び/又は屋内照明等の環境光の変化を検知し易くなる。よって、環境光の検知精度が向上し、その結果、物体の検知精度も向上させることができる。前記第1受光素子が略水平方向に向けて配置されているので、当該第1受光素子の前を通過する人などの物体を検知し易くなる。
【0008】
物体検知センサは、天板及び側板を有する筐体を更に備えた構成とすることが可能である。前記第1受光素子は、前記第1受光部を前記天板に前記略水平方向に向けて配設された構成とすることが可能である。前記第2受光素子は、前記第2受光部を前記側板に前記上方に向けて配設された構成とすることが可能である。
【0010】
前記第1受光素子を複数とすることが可能である。このような態様の発明による場合、複数の第1受光素子により、物体の検知エリアを拡大することができる。
【0011】
前記第2受光素子を複数とすることが可能である。このような態様の発明による場合、複数の第2受光素子により、環境光の検知エリアを拡大することができる。
【0012】
本発明の噴霧装置は、上述した何れかの態様の物体検知センサと、薬剤を噴霧する噴霧手段とを備えている。前記物体検知センサの物体検知手段は、物体の接近を検知したときに、前記噴霧手段に薬剤を噴霧させる又は前記噴霧手段に薬剤の噴霧を停止させるようになっている。このような態様の発明による場合、物体検知センサの物体検知手段が環境光の変化を物体の接近であると誤検知し、噴霧手段に薬剤を誤噴霧させたり、前記噴霧手段に薬剤の噴霧を停止させたりしてしまう可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る物体検知センサの模式的斜視図である。
図2】前記センサの図1中の内部構造を省略した2-2断面図である。
図3】前記センサの回路ブロック図である。
図4】前記センサの使用状態を示す説明図である。
図5】前記センサの物体検知プログラムのフローチャートである。
図6】前記センサの設計変形例を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る物体検知センサについて図1乃至図5を参照しつつ説明する。前記物体検知センサは人P(物体)の接近を検知する人感センサである。前記物体検知センサは、図1乃至図3に示すように、筐体100と、受光素子200a、200b(第1、第2受光素子)と、増幅器310aと、ローパスフィルタ320aと、増幅器330aと、パルス変換器340aと、電圧レギュレータ350aと、減衰器300bと、制御部400とを備えている。以下、前記物体検知センサの各構成部材について詳しく説明する。
【0015】
筐体100は、図1及び図2に示すように、中空の立方体の箱である。この筐体100は、4つの側板と、天板と、底板とを有している。前記側板のうちの一つの側板には受光素子200aが受光部を略水平方向に向けて配設されている。前記天板には受光素子200bが受光部を上方に向けて配設されている。
【0016】
受光素子200aとしては、フォトトランジスタ、フォトダイオード又は照度センサ等を用いている。受光素子200aに人Pが接近すると、受光素子200aの周囲が暗くなる及び/又は後述する環境光が人Pに反射して受光素子200aの周囲が明るくなる(すなわち、受光素子200aの周囲の明暗が変化する。)。本実施の形態では、人Pの接近により受光素子200aの周囲が影になり、暗くなるものとする。周囲が暗くなると、受光素子200aは、受光する光の受光量が変化(減少)し、当該受光量の変化に応じたアナログの電圧信号α(第1出力信号)を出力する。なお、人Pの接近による明暗の変化は微細であるため、電圧信号αの変化も小さくなる。よって、後述の通り電圧信号αに対して2段階の増幅を行い、電圧信号αの変化を明確にしている。
【0017】
電圧信号αは、図4に示すように、増幅器310aにより増幅された後、ローパスフィルタ320aにより商用電源ノイズや高周波外来ノイズが除去される。その後、電圧信号aは、増幅器330aにより増幅された後、パルス変換器340aによりデジタル信号(すなわち、Hi又はLoの矩形波電圧信号)に変換され、制御部400に入力される。本実施の形態では、人Pが接近すると、Loの矩形波電圧信号が制御部400に入力される。なお、電圧レギュレータ350aは、受光素子200a、増幅器310a、ローパスフィルタ320a、増幅器330a及びパルス変換器340aに接続されている。これにより、受光素子200a、増幅器310a、ローパスフィルタ320a、増幅器330a及びパルス変換器340aに略一定の電源電圧が供給される。このため、受光素子200aに供給される電源電圧が一定でないことを起因として受光素子200aの感度が変わることを抑止している。
【0018】
受光素子200bとしては、フォトトランジスタ、フォトダイオード又は照度センサ等を用いている。この受光素子200bは、受光する環境光の変化に応じて受光量が変化し、当該受光量の変化に応じたアナログの電圧信号β(第2出力信号)を減衰器300bに出力する。なお、前記環境光としては、図4に示すように、屋内照明Lの光、窓Wを通じて入射する屋外照明の光や窓Wを通じて入射する太陽光・月光等がある。屋内照明Lの点灯・消灯、屋外照明の点灯・消灯や太陽光・月光の変化等により環境光の明暗が変化する。
【0019】
減衰器300bは、制御部400に制御され、電圧信号βに応じて当該電圧信号βが飽和レベルにならないように減衰している。前記飽和レベルは、環境光が急激に変化する(例えば、日の出や屋内照明Lの点灯)等により電圧信号βが過大な信号レベルとなり、制御部400に対する入力が飽和となる信号レベルのことである。
【0020】
制御部400としてはマイコンを用いている。この制御部400のデジタル入力ポートにはパルス変換器340aが、アナログ入力ポートには減衰器300bが接続されている。制御部400の内部メモリには物体検知プログラム及びしきい値が記載されている。制御部400が図5に示す物体検知プログラムを処理することにより、特許請求の範囲における物体検知手段としての機能を発揮するようになっている。前記しきい値は、本物体検知センサが人Pの接近と誤検知する可能性がある環境光の大きな変化(屋内照明Lの点灯・消灯、屋外照明の点灯・消灯や太陽光・月光の変化等)と、それ以外の環境光の小さな変化との境を示す電圧信号βの値である。
【0021】
以下、上述した物体検知プログラムについて詳しく説明する。まず、物体検知センサの電源がオンにされると、制御部400が物体検知プログラムを処理する。すると、受光素子200aの電圧信号αが増幅器310a、ローパスフィルタ320a、増幅器330a及びパルス変換器340aを通じて制御部400に入力されると共に、受光素子200bの電圧信号βが減衰器300bを通じて制御部400に入力される。このとき、制御部400は、入力される電圧信号βの信号レベルに応じて減衰器300bを制御し、当該電圧信号βが上記飽和レベルにならないように減衰している。
【0022】
すると、制御部400は、電圧信号βの信号レベルが上記内部メモリ上のしきい値以下であるか否かを判定する(s1)。すなわち、環境光が大きく変化したか否かについて判定する。s1の判定の結果、電圧信号βの信号レベルがしきい値以下であり、大きな環境光の変化がないと判定したときには、電圧信号αがLoであるか否かについて判定する(s2)。すなわち、人Pが接近したか否かを判定する。s2の判定の結果、電圧信号αがLoであると判定したときには、人Pの接近であるとして検知する(s3)。一方、電圧信号αがLoでない(すなわち、Hiである)と判定したときには、s1に戻る。また、s1の判定の結果、電圧信号βの信号レベルがしきい値以上であり、環境光に大きな変化があったと判定したときもs1に戻る。なお、s1とs2との順序は、逆にすることが可能である。すなわち、制御部400が、電圧信号αがLoであるか否かについて判定し、この判定の結果、電圧信号αがLoであると判定したときに、電圧信号βの信号レベルが上記内部メモリ上のしきい値以下であるか否かを判定する。この判定の結果、電圧信号βの信号レベルがしきい値以下であり、大きな環境光の変化がないと判定したときに、s3の処理を行うように設計変更することが可能である。
【0023】
以上のような物体検知センサによる場合、上方に向けて配置された受光素子200bの電圧信号βの信号レベルがしきい値以下であるときにのみ、受光素子200aの電圧信号αに基づいて人Pの接近が検知されるようになっている。よって、環境光の変化を物体の接近であると誤検知する可能性を低減することができる。しかも、受光素子200aが略水平方向に向けて配置され、受光素子200bが上方に向けて配置されているので、受光素子200a、200bの受光量を同一に設定又は調整する必要がない。よって、本物体検知センサの低コスト化を図ることができる。
【0024】
また、前記物体検知センサは、人Pが接近したときに、芳香剤等の薬剤を噴霧する噴霧装置に設けることができる。この噴霧装置は、前記物体検知センサと、薬剤をスプレーやファンの回転により噴霧(揮発又は霧化による拡散)する周知の噴霧手段とを備えている。制御部400は、人Pの接近を検知すると、前記噴霧手段に薬剤を噴霧させる又は前記噴霧手段に薬剤の噴霧を停止させるようになっている。よって、環境光の変化により薬剤が誤って噴霧される又は薬剤の噴霧が誤って停止することを抑止することができる。なお、人Pの接近に応じて前記噴霧手段に薬剤の噴霧を停止させる場合には、前記噴霧装置に所定時間毎に薬剤を噴霧させるように構成すると良い。
【0025】
なお、上述した物体検知センサは、上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の範囲において任意に設計変更することが可能である。以下、詳しく述べる。
【0026】
上記実施の形態では、受光素子200aが略水平方向に向けて配置され、受光素子200bが上方に向けて配置されているとしたが、受光素子200a、200bは異なる方向に向けて配置されている限りどのように配置しても良い。また、上記実施の形態では、受光素子200a、200bは一つずつであるとしたが、受光素子200a、200bを複数とすることも可能である。例えば、図6に示すように、2つの受光素子200aを筐体100の異なる側板に設けることにより、物体の検知エリアを広げることができる。また、受光素子200bを複数とすれば、環境光の検知エリアを広げることができる。
【0027】
上記実施の形態では、物体検知手段は、受光素子200aの電圧信号αがLoであるときに人Pが接近したと検知するとしたが、第1受光素子の第1出力信号に基づき物体の接近を検知するようになっている限り任意に設計変更することが可能である。例えば、人Pの接近により受光素子200aの周囲が明るくなる場合には、物体検知手段は電圧信号αがHiであるときに人Pが接近したと検知することも可能である。また、人Pの接近により受光素子200aの周囲が明るくなったり暗くなったりする場合には、物体検知手段は電圧信号αがLo、Hiであるときに人Pが接近したと検知することも可能である。
【0028】
上記実施の形態では、物体検知手段は、電圧信号βの信号レベルがしきい値以下であるか否かにより、環境光に変化があったか否かを判定するとしたが、これに限定されるものではない。例えば、物体検知手段は、電圧信号βに変化があったか否かにより、環境光に変化があったか否かを判定するようにしても構わない。この場合にも、電圧信号βに変化があったと判定したときには、物体検知手段は、第1受光素子の第1出力信号の変化に基づき物体の接近を検知するようになっている。なお、第1、第2出力信号は、電圧信号α、βであるとしたが、第1、第2受光素子の受光量に応じた信号である限りどのようなものを用いても構わない。
【0029】
なお、上記実施の形態では、物体検知センサの各部を構成する素材、形状、寸法及び配置等はその一例を説明したものであって、同様の機能を実現し得る限り任意に設計変更することが可能である。また、上記実施の形態では、本物体検知センサは、人Pの接近を検知する人感センサであるとしたが、人P以外の物体を検知するセンサとして用いることができる。また、上記実施の形態では、本物体検知センサは、噴霧装置に備えられるとしたが、その他の装置に備えることも当然可能である。
【符号の説明】
【0030】
100・・・筐体
200a・・受光素子(第1受光素子)
200b・・受光素子(第2受光素子)
310a・・増幅器
320a・・ローパスフィルタ
330a・・増幅器
340a・・パルス変換器
350a・・電圧レギュレータ
300b・・減衰器
400・・・制御部(物体検知手段)
P・・・・・人
L・・・・・屋内照明
W・・・・・窓
α・・・・・電圧信号(第1出力信号)
β・・・・・電圧信号(第2出力信号)
図1
図2
図3
図4
図5
図6