(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図10に、従来の圧力センサ500の断面図を示す。この圧力センサ500は、取付ネジ521、接触部521a、プッシュロッド522、センシング部523、固定ネジ523a、ダイアフラム524、圧力伝達部材525、圧電素子526、上部固定ネジ527、シール部材528、を備えている。なお、図示下側が先端側、図示上側が後端側である。センシング部523は、シール部材528を介して、固定ネジ523aの締め付け力によって接触部521aのみで、取付ネジ521に接触固定されている。プッシュロッド522はダイアフラム524に溶接等の方法で接続されており、その側面は取付ネジ521の内周面に接触しているが固定されてはいない。すなわちプッシュロッド522は、印加圧力に応じて軸方向に移動できる構造となっており、ダイアフラム524に確実に圧力を伝達できる。さらに、センシング部523に構成されたダイアフラム524の内側には、圧力伝達部材525が接触している。圧力伝達部材525のダイアフラム524と反対側には、圧電素子526が位置している。
【0003】
圧力センサ500では、被測定領域内に生じた圧力変動によってプッシュロッド522に印加された圧力は、正確にダイアフラム524に伝達され、さらに圧力伝達部材525によって圧電素子526に伝達される。これにより、プッシュロッド522に加えられた圧力の大きさを検知することができる。
【0004】
図11に、従来の圧力センサ600の断面図を示す。この圧力センサ600は、ケース602と、受圧伝達部材603と、O−リング604と、連結ネジ605と、ケーブル606と、固定部材607と、固定ネジ608と、2枚の圧電素子609、610と、電極板611と、ブッシュ612とを備えている。なお、図示下側が先端側、図示上側が後端側である。各圧電素子609、610を介在させた状態で、連結ネジ605によって、受圧伝達部材603が固定部材607に固定されている。受圧伝達部材603は、上端側が太径部624に形成されるとともに、下端側がケース602の細径孔622より少し小さい径を持つ細径部625に形成された円柱状の部材である。受圧伝達部材603は、ケース602内に上下動自在に収納される。また、O−リング604は、受圧伝達部材603の下端側に形成された周溝626内に填込まれている。O−リング604によって、受圧伝達部材603の細径部625と、ケース602の細径孔622との間の隙間から、被測定領域627側の燃焼ガス等が入り込まないように密封されている。
【0005】
圧力センサ600では、被測定領域627の圧力が上昇すると、受圧伝達部材603が上方に付勢されて、2枚の圧電素子609、610を圧縮する。これによって、各圧電素子609、610は圧縮の応力に比例した電荷を発生し、発生電荷が電極板611を通してケーブル606から外部に出力される。これにより、受圧伝達部材603に加えられた圧力の大きさを検知することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図10に示す圧力センサ500では、プッシュロッド522の外周面と取付ネジ521の内周面との間には、僅かながら隙間が形成されている。そして、プッシュロッド522の先端部がエンジン燃焼室内に備えられている場合には、燃焼によるデポジット(煤)が当該隙間に侵入するおそれがある。この場合、デポジットによって、プッシュロッド522と取付ネジ521とが固着されてしまうことがある。すると、プッシュロッド522の変位が妨げられてしまうため、圧力の検出感度が低下してしまう事態や、圧力の測定をすることができなくなってしまうという事態が発生しうる。
【0008】
また、
図11に示す圧力センサ600では、O−リング604から先端側の領域では、受圧伝達部材603の外周面と細径孔622の内周面との間には、僅かながら隙間が形成されている。すると、デポジット等が当該隙間に侵入した場合には、受圧伝達部材603とケース602とが固着されてしまうことがある。従って、受圧伝達部材603の変位が妨げられてしまうため、圧力の検出感度が低下してしまうなどの事態が発生しうる。
【0009】
本願では、安定して正確な圧力測定を行うことが可能な圧力センサを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書によって開示される圧力センサは、ハウジングと、受圧ピンと、力検知素子と、充填部材を備えている。ハウジングは、その先端面に開口している案内孔を備えている。受圧ピンは、案内孔内に変位可能に配置されている。力検知素子は、ハウジング内部のうち受圧ピンよりもハウジング後端側であって、受圧ピンの後端面と対向する位置に配置されている。充填部材は、受圧ピンおよびハウジングに比してばね定数が小さい部材であり、受圧ピンと案内孔との間に受圧ピンの外周面を取り囲んで配置されている。充填部材の先端面は、ハウジングの先端面または受圧ピンの先端面のうちハウジング後端側に位置している面に対して、同一面内またはハウジング先端側に位置している。
【0011】
この圧力センサでは、圧力が受圧ピンの先端に加えられると、受圧ピンが後端側に変位する。受圧ピンが後端側に変位すると、その変位による圧縮力が受圧ピンと対向する位置にある力検知素子に加えられる。これにより、受圧ピンの先端に加えられた圧力の大きさを、力検知素子によって測定することができる。
【0012】
また、この圧力センサでは、充填部材が、受圧ピンと案内孔との間に、受圧ピンの外周面を取り囲んで配置されている。そして、ハウジングの先端面が受圧ピンの先端面よりもハウジング後端側に位置している場合(すなわち、受圧ピンの先端面がハウジングの先端面に対して飛び出している場合)には、充填部材の先端面は、ハウジングの先端面と同一面内となるか、ハウジングの先端面から突起した状態とされる。また、受圧ピンの先端面がハウジングの先端面よりもハウジング後端側に位置している場合(すなわち、受圧ピンの先端面がハウジングの先端面に対して引っ込んでいる場合)には、充填部材の先端面は、受圧ピンの先端面と同一面内となるか、受圧ピンの先端面から突起した状態とされる。よって、ハウジングの先端面において、受圧ピンの外周面と案内孔の内周面との間に形成されている隙間に、必ず充填部材を配置することができる。これにより、当該隙間に、各種の異物が侵入することを防止することができる。よって、異物によって受圧ピンとハウジングとが固着されてしまう事態を防止できるため、安定して正確な圧力測定を行うことが可能となる。
【0013】
また、充填部材は、受圧ピンおよびハウジングに比してばね定数が小さい部材である。すなわち充填部材は、受圧ピンおよびハウジングよりも弾性変形しやすい特性を有している。すると、受圧ピンの外周面と充填部材との隙間や、充填部材と案内孔の内周面との隙間に異物が侵入し、受圧ピンとハウジングとが充填部材を介して固着した場合においても、充填部材が受圧ピンの軸方向に弾性変形するため、受圧ピンが案内孔内で変位することが妨げられない。すなわち、充填部材が弾性変形することによって、受圧ピンが変位することが担保される。これにより、安定して正確な圧力測定を行うことが可能となる。
【0014】
上記の圧力センサでは、充填部材は、受圧ピンの外周面を取り囲む筒形状を有していてもよい。例えば、液状またはゲル状またはゴム状の部材を、受圧ピンの外周面と案内孔の内周面との間の隙間に充填したり、硬化する場合には、気泡が発生し、この気泡部に各種の異物が侵入するおそれがある。一方、本圧力センサによると、充填部材が受圧ピンの外周面を取り囲む筒形状であるため、充填部材を予め固体で形成しておくことができる。よって、気泡が発生することを防止できるため、充填性の向上を図ることができる。
【0015】
また、充填部材は、受圧ピンの外周面を取り囲んでいるため、受圧ピンの中心軸が案内孔の中心位置からずれてしまうことを防止できる。これにより、充填部材に、受圧ピンを案内孔内に配置する際の位置出し機能を持たせることができる。また充填部材により、受圧ピンの外周面と案内孔の内周面が、直接に接触してしまうことを防止できる。これにより、直接接触により摩擦が増大してしまう事態を防止できるため、受圧ピンの変位をよりスムーズにすることができ、より正確な圧力測定を行うことが可能となる。
【0016】
上記の圧力センサでは、充填部材は、受圧ピンの外周面と案内孔の内周面との間に隙間なく配置されており、受圧ピンが案内孔内で変位することに応じて弾性変形するとされていてもよい。これらの態様によると、受圧ピンは、案内孔との間のシール状態を保持しながら案内孔内を変位することが可能となる。よって、充填部材にシール機能を持たせることができる。これにより、シール機能を有する部材を、ハウジング内に別途配置する必要を無くすことができる。
【0017】
上記の圧力センサでは、受圧ピンの後端側に、受圧ピンの外周面から突起している突起部を備え、充填部材の後端面が突起部に接していてもよい。これらの態様によると、突起部によって、充填部材のハウジングの後端側への移動が規制される。よって、高い圧力が充填部材の先端面にかかる場合においても、充填部材がハウジングの後端側へ移動してしまうことが防止できる。これにより、ハウジングの先端面において、受圧ピンの外周面と案内孔の内周面との間に形成されている隙間に、必ず充填部材が配置されている状態を維持することができる。
【0018】
上記の圧力センサでは、充填部材は、受圧ピンの外周面または案内孔の内周面の少なくとも一部に、膜状に付着して形成されていてもよい。例えば、受圧ピンの外周面または案内孔の内周面に、充填部材をコーティングする形態であってもよい。これにより、液状またはゲル状またはゴム状の部材を用いたり、硬化する場合などに比して、気泡を発生しにくくすることができるため、充填性の向上を図ることができる。また、圧力センサの組み立て時において、受圧ピンの外周面と案内孔の内周面との間の隙間に筒形状の充填部材を挿入する、という工程を省略することができる。これにより、圧力センサの組み立て容易性を、より高めることができる。さらに、受圧ピンの外周面と案内孔の内周面との間の隙間に気泡が生じてしまうような液状またはゲル状またはゴム状の部材を利用したり、硬化させたりすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本願によれば、安定して正確な圧力測定を行うことが可能な圧力センサを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に説明する実施例の主要な特徴を整理しておく。
(特徴1)受圧ピンの先端面に、シール膜が成膜されている。
(特徴2)O−リングが受圧ピンの外周面に配置されている。充填部材の後端面がO−リングに接している。
【0022】
(第1実施例)
図1に、第1実施例の圧力センサ100を示す。圧力センサ100は、ハウジング108、検知部ケース106、密封端子110、力検知素子116、受圧ピン132、充填部材140、シール膜141、等を備えている。なお、図示下側が先端側、図示上側が後端側である。以下の第1〜第3実施例の圧力センサは、エンジンのシリンダ内部に設けられ、その内部の圧力を検知する筒内圧センサ等に有意義に用いることができる。
【0023】
ハウジング108は略筒状に形成されている。ハウジング108は、その先端面108cに開口している案内孔128aが形成されている。案内孔128a内には、円柱状の受圧ピン132が配置されている。また、受圧ピン132は、先端面(受圧面)132cに所定の圧力が加えられると、案内孔128a内を後端側へ向けて数μm程度変位するように配置されている。なお、受圧ピン132は、金属でも良いが、断熱性の高い材料で形成すると、ハウジング内の温度をより減じることができる。材料の例としては、ジルコニアや窒化珪素等が挙げられる。
【0024】
図2に、充填部材140の斜視図を示す。
図2に示すように、充填部材140は中空の筒形状を有している。充填部材140は、受圧ピン132と案内孔128aとの隙間に挿入されることで、受圧ピン132の外周面を取り囲んで配置される。また、充填部材140によって、受圧ピン132と案内孔128aとの隙間が塞がれる。なお、充填部材140の内径D1は、充填部材140内に受圧ピン132を挿入できるように、受圧ピン132の外径との関係で定めればよい。また、充填部材140の外径D2は、案内孔128a内に充填部材140を挿入できるように、案内孔128aの内径との関係で定めればよい。また、充填部材140の厚さt1は、充填部材140の挿入し易さと、充填部材140による気密性とのバランスを考慮して定めればよい。厚さt1を厚くするほど気密性が高くなるが、受圧ピン132と案内孔128aとの隙間に充填部材140を挿入しにくくなる。
【0025】
また、受圧ピン132の先端面132cが、ハウジング108の先端面108cよりも、ハウジング後端側(
図1において上側)に位置している。すなわち、受圧ピン132の先端面132cが、ハウジング108の先端面108cに対して引っ込んでいる。そして充填部材140の先端面140cは、受圧ピン132の先端面132cと同一面内となっている。
【0026】
なお、
図3に示すハウジング108の先端部分の部分拡大図のように、充填部材140の先端面140cは、受圧ピン132の先端面132cに対してハウジング先端側(
図3において下側)に突起していてもよい。なお、
図3では、シール膜141の記載を省略している。
【0027】
充填部材140は、受圧ピン132およびハウジング108に比してばね定数が小さい部材である。すなわち充填部材140は、受圧ピン132およびハウジング108よりも弾性変形しやすい特性を有している。なお、ここで用いている「ばね定数」は、圧縮力に対する変形の場合のヤング率(縦弾性係数)、および、せん断力に対する変形の場合の剛性率(横弾性係数)を含んだ概念である。よって、受圧ピン132およびハウジング108の縦弾性係数に比して、充填部材140の横弾性係数が小さい場合も含まれる。なお、弾性係数が大きくなるほど、部材は力に対して変形しにくくなる。
【0028】
充填部材140の材料は、耐熱性を有する弾性体であることが好ましい。充填部材140の材料の一例としては、ポリイミド系、ポリイミドアミド系、テフロン(登録商標)、エポキシ系、シリコーン系、フッ化物系、などが挙げられる。なお、耐熱性として250℃以上が望ましいため、充填部材140の材料としては、ポリイミド、ポリイミドアミド、テフロンを用いることが好ましい。
【0029】
受圧ピン132の後端面132a側には、受圧ピン132の外周面から突起している突起部132eが形成されている。また、充填部材140の後端面140aが、突起部132eに当接している。これらの態様によると、突起部132eによって、充填部材140のハウジング108の後端側への移動が規制される。よって、高い圧力が充填部材140の先端面140cにかかる場合においても、充填部材140がハウジング108の後端側へ移動してしまうことが防止できる。
【0030】
また、受圧ピン132の先端面132cに、シール膜141を成膜しても良い。これにより、圧力センサ100のシール性をより強化することができる。
【0031】
ハウジング108の内周面および検知部ケース106の外周面には、ねじ切り加工がなされている。検知部ケース106は、ハウジング108にねじ込まれることで固定されている。また、検知部ケース106の内周面および密封端子110の外周面にも、ねじ切り加工がなされている。密封端子110は、検知部ケース106にねじ込まれることで固定されている。
【0032】
力検知素子116は、ハウジング108の内部のうち、受圧ピン132よりも後端側に収容されている。また力検知素子116は、受圧ピン132の後端面132aと対向する位置に配置されている。そして、力検知素子116の頂面116aは、受圧ピン132の後端面132aに接触している。力検知素子116の下面は、密封端子110の先端面110dに取付けられ、固定されている。密封端子110には貫通孔110bが形成されている。この貫通孔110b内には接続線112が伸びている。接続線112は力検知素子116の電極(不図示)に電気的に接続されている。
【0033】
第1実施例の圧力センサ100の組み立て工程を説明する。まず、ハウジング108の後端側から、受圧ピン132を挿入する。次に、検知部ケース106および力検知素子116を、ハウジング108内部にねじ込む。このねじ込みは、力検知素子116の頂面116aと、受圧ピン132の後端面132aが接触するまで行われる。ねじ込みによって、力検知素子116が押圧される。また、ねじ込み工程では、力検知素子116への予荷重の調整が行われる。その後、受圧ピン132と案内孔128aとの隙間に、ハウジング108の先端側から、充填部材140を挿入する。そして必要に応じて、受圧ピン132の先端面132cに、シール膜141を成膜する。シール膜141の成膜は、液状の原材料を滴下、またはゲル状の原材料を塗布することで行われる。その後、圧力センサ100を加熱することで、シール膜141が硬化する。これにより、圧力センサ100が完成する。
【0034】
第1実施例の圧力センサ100の動作を説明する。
図1に示す受圧ピン132の先端面(受圧面)132cに圧力が加えられると(例えばエンジンのシリンダ内や、爆発成形時や花火打上げ時)、受圧ピン132が案内孔128a内を後端側に数μm程度変位する。このとき、案内孔128aと受圧ピン132の隙間に配置されている充填部材140は、受圧ピン132の変位に応じてせん断変形するため、受圧ピン132の変位が妨げられることはない。
【0035】
受圧ピン132が後端側に変位すると、その変位による圧縮力は、力検知素子116に伝達される。力検知素子116に所定の圧縮力が伝達されると、圧電効果やピエゾ抵抗効果によって、圧縮力による歪み量に応じて力検知素子116の発生電荷量や電気抵抗値が変化する。受圧ピン132の先端に加えられた圧力の大きさが所定の範囲内の場合、その圧力の大きさと力検知素子116の電気的な変化量はほぼ比例する。このため、力検知素子116の電気的な変化量を検知することで、力検知素子116に加えられた圧縮力の大きさを精度良く検知できる。このため、受圧ピン132の先端面132cに加えられた圧力の大きさを精度良く検知できる。
【0036】
第1実施例に係る圧力センサ100の効果を説明する。例として、圧力センサ100を、エンジンのシリンダ内部の筒内圧センサに用いる場合を説明する。この場合、受圧ピン132の外周面と案内孔128aの内周面との隙間に、燃焼によるデポジット(煤)が侵入する。すると、デポジットによって受圧ピン132とハウジング108とが固着されてしまい、安定して正確な圧力測定を行うことができなくなる場合がある。
【0037】
そこで、例えば、液状の原材料(例:耐熱性のシリコーン系塗料やポリイミドワニスなど)を当該隙間に充填した上で熱硬化させ、当該隙間を塞ぐ方法がある。しかし、熱硬化によって原材料の体積が減少するため、硬化物内に気泡が発生する。すると、隙間部分には高い圧力がかかるため気泡がつぶれ、硬化物の表面がハウジング108の後端側に押しやられる。よって
図4に示すように、硬化物150の先端面150cが、受圧ピン132の先端面132cから後退してしまう。すなわち、受圧ピン132の先端面132c(受圧面)側から圧力センサを観測した場合に、受圧ピン132と案内孔128aとの間の隙間が、硬化物によって完全に埋められていない状態となってしまう。すると、埋められていない隙間部分にデポジット151が侵入し、受圧ピン132とハウジング108とが固着されてしまう。なお、
図4では、シール膜141の記載を省略している。また、硬化時に体積がほとんど減少しないゲル状の原材料(耐熱のフッ素ゴムやシリコーンゴム等)を充填する場合も、気泡を含まないようにすることは、極めて困難なこととなる。
【0038】
一方、第1実施例に係る圧力センサ100では、
図1に示すように、充填部材140の先端面140cは、受圧ピン132の先端面132cと同一面内に位置している。よって、ハウジング108の先端領域において、受圧ピン132と案内孔128aとの隙間に、必ず充填部材140を配置した状態とすることができる。すなわち、受圧ピン132の先端面132c側から圧力センサ100を観測した場合に、当該隙間が充填部材140によって完全に埋められている状態とすることができる。また、
図2に示すように、充填部材140は、受圧ピン132と案内孔128aとの間の隙間に挿入することが可能な中空の筒形状を有しているため、充填部材を予め固体で形成しておくことができる。よって、液状やゲル状の原材料を用いる場合のように、気泡が発生してしまうことを防止できるため、充填部材140の先端面140cが、受圧ピン132の先端面132cから後退してしまうことを防止できる。よって、隙間が充填部材140によって完全に埋められている状態を確実に維持することができる。以上より、デポジットが受圧ピン132と案内孔128aとの間の隙間に侵入することを防止することができるため、受圧ピン132とハウジング108とが固着されてしまう事態を防止できる。
【0039】
また、圧力センサ100では、充填部材140は、受圧ピン132の外周面と案内孔128aの内周面との間に隙間なく配置されている。そして、受圧ピン132が案内孔128a内で変位することに応じて、充填部材140はせん断変形するため、受圧ピン132の変位は阻害されない。これにより、受圧ピン132は、案内孔128aとの間のシール状態を保持しながら案内孔128a内を変位することが可能となる。よって、充填部材140にシール機能を持たせることができる。これにより、シール機能を有する部材(O−リングやダイアフラム等)を、ハウジング108内に別途配置する必要を無くすことができる。
【0040】
また、
図5に示すように、受圧ピン132の外周面と充填部材140との隙間160や、充填部材140と案内孔128aの内周面との隙間161に、デポジット151が侵入し、受圧ピン132とハウジング108とが充填部材140を介して固着している場合を考える。なお、
図5では、シール膜141の記載を省略している。この場合においても、充填部材140が受圧ピン132の軸方向(
図5の上下方向)にせん断変形するため、受圧ピン132が案内孔128a内で変位することが妨げられない。すなわち、受圧ピン132の変位が、充填部材140がせん断変形することによって担保される。これにより、安定して正確な圧力測定を行うことが可能となる。
【0041】
また、充填部材140は、受圧ピン132の外周面を取り囲んでいるため、受圧ピン132の中心軸が案内孔128aの中心位置からずれてしまうことを防止できる。これにより、充填部材140に、受圧ピン132を案内孔128a内に配置する際の位置出し機能を持たせることができる。
【0042】
また充填部材140により、受圧ピン132の外周面と案内孔128aの内周面が、直接に接触してしまうことを防止できる。これにより、直接接触により摩擦が増大してしまう事態を防止できるため、受圧ピン132の変位をよりスムーズにすることができ、より正確な圧力測定を行うことが可能となる。
【0043】
(第2実施例)
図6に、第2実施例の圧力センサ200を示す。圧力センサ200は、O−リング210を備える。O−リング210は、受圧ピン132の上端側に形成された周溝132f内に填込まれている。O−リング210によって、受圧ピン132と案内孔128aとの間の隙間から、受圧ピン132の先端面132c側の燃焼ガス等が、ハウジング108の内部に入り込まないようにシールされている。また、充填部材140の後端面140bが、O−リング210に当接している。よって、O−リング210によって、充填部材140のハウジング108の後端側への移動が規制される。すなわちO−リング210は、充填部材140の移動規制部としても機能する。なお、圧力センサ200のその他の構成は、第1実施例に示す圧力センサ100(
図1)と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0044】
第2実施例の圧力センサ200によると、充填部材140およびO−リング210の両方によってシールが行われているため、センサの気密性をより高めることが可能となる。
【0045】
(第3実施例)
図7に、第3実施例の圧力センサ300を示す。圧力センサ200は、O−リング310、ダイアフラム311、充填部材340を備える。
図8に、充填部材340の斜視図を示す。
図8に示すように、充填部材340は中空の筒形状を有している。また、充填部材340の一端には、その外周面から突起している突起部340eが形成されている。
【0046】
図7に示すように、充填部材340は、受圧ピン132と案内孔128aとの隙間に挿入されることで、受圧ピン132の外周面を取り囲んで配置されている。また、充填部材340の突起部340eが、ハウジング108の内壁面108aに当接している。O−リング310は、検知部ケース306の先端面306cと、ハウジング108の内壁面108aとによって挟み込まれるように配置されている。ダイアフラム311は、力検知素子116の頂面116aと、受圧ピン132の後端面132aとによって挟み込まれるように配置されている。なお、圧力センサ300のその他の構成は、第1実施例に示す圧力センサ100(
図1)と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0047】
第3実施例の圧力センサ300によると、充填部材340の突起部340eが内壁面108aに当接することで、充填部材340のハウジング108の先端側(
図7の下側)への移動が規制される。よって、充填部材340が、受圧ピン132と案内孔128aとの隙間から、ハウジング108の先端側へ抜けしまう事態を防止することができる。また、充填部材340およびダイアフラム311の両方によってシールが行われているため、センサの気密性をより高めることが可能となる。
【0048】
以上、本願の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0049】
充填部材を、受圧ピン132の外周面と案内孔128aの内周面との隙間に配置する方法には、各種の方法が存在する。例えば、充填部材は、受圧ピン132の外周面、または、案内孔128aの内周面の少なくとも一方に、膜状に付着して形成されていてもよい。すなわち、受圧ピンの外周面または案内孔128aの内周面の少なくとも一方に、充填部材をコーティングする形態であってもよい。これにより、圧力センサの組み立て時において、受圧ピン132の外周面と案内孔128aの内周面との隙間に筒形状の充填部材を挿入する、という工程を省略することができる。よって、圧力センサの組み立て容易性を、より高めることができる。また、コーティングを行う工法では、液状の原材料を隙間に充填する工法に比して、形成過程における充填部材の大気への開放面積が大きいため、充填部材中での気泡の発生を抑えることができる。よって、センサの使用中に、充填部材140の先端面140cが受圧ピン132の先端面132cから後退してしまうことが防止されるため、隙間が充填部材によって完全に埋められている状態を確実に維持することができる。また、充填部材やコーティングを利用することで、受圧ピンの表面や案内孔の内周面の表面粗さが悪化しても、充填部材やコーティング膜が粗面を緩和する効果が得られる。粗面は、前述の気密性、ロッドの中心出し、ロッドと案内孔の接触に関係する。
【0050】
なお、
図9に示すハウジング108の先端部分の部分拡大図のように、受圧ピン132の先端面132cが、ハウジング108の先端面108cよりも、ハウジング先端側(
図9において下側)に位置していてもよい。すなわち、受圧ピン132の先端面132cが、ハウジング108の先端面108cに対して突出していてもよい。この場合は、充填部材140の先端面140cは、ハウジング108の先端面108cと同一面内とされるか、先端面108cよりもハウジング先端側に位置させればよい。これにより、ハウジング108の先端面において、受圧ピン132と案内孔128aとの隙間に、必ず充填部材140を配置することができる。