(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、フレキシブルプリント基板(以下、FPC)は、高密度実装が進み、それにともなって、ポリイミドなどの材質によって形成された保護層すなわちカバーレイの他に感光性レジスト(Photo sensitive resist、PSR)による保護層を形成する構成がある。このような感光性レジストによる保護層は、露光、現像およびエッチングの各工程により形成されるため、開口精度が向上し、より高密度な実装が可能になるので、特に部品実装面に用いられることが多い。
【0003】
しかしながら、カバーレイを構成するポリイミドなどの材質と感光性レジストとでは、熱履歴による熱膨張率(Coefficient of thermal expansion、CTE)が異なるため、熱膨張率が大きい感光性レジストによる保護層が形成されている面側へと反りが発生する。特に、FPCはフレキシブル性が求められるため、薄型化の傾向にあるため、反りがより発生しやすくなっている。
【0004】
そして、このようにFPCが反っている場合、例えば液晶表示素子である液晶パネル(Liquid crystal display、LCD)に対して、異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film、ACF)などを用いた熱圧着などによりFPCを接続してLCDモジュールを構成する場合、認識位置合わせができないという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、第1の実施形態の構成を
図1ないし
図3を参照して説明する。
【0010】
図3(a)および
図3(b)において、11は平面表示装置としての液晶表示装置であるLCDモジュールを示し、このLCDモジュール11は、平面表示素子としての液晶表示素子である液晶パネル(LCD)12と、この液晶パネル12に対して接続されるフレキシブルプリント基板13(以下、FPC13という)とを備えている。
【0011】
液晶パネル12は、第1の基板としての長方形状のアレイ基板15と、第2の基板としての長方形状の対向基板16と、これらアレイ基板15と対向基板16との間に介在される光変調層としての液晶層17とを有している。そして、液晶パネル12は、アレイ基板15と対向基板16とが互いに対向配置されてスペーサなどを介して間隙を保持した状態で貼り合わせられ、液晶層17に対応する領域に、図示しない複数の画素がマトリクス状に形成された表示領域を備えている。また、アレイ基板15は、対向基板16と略等しい幅寸法で、かつ、この対向基板16よりも大きい長手寸法に形成されており、長手方向の一端側と幅方向の両側とが対向基板16と位置合わせされている。このため、液晶パネル12は、長手方向の他端側に突出するアレイ基板15の一主面上に、配線領域18が形成されている。そして、この配線領域18には、各画素を駆動するドライバ19などが実装されているとともに、このドライバ19などを含む液晶パネル12側の回路部と電気的に接続された図示しない配線端子が幅方向に所定のピッチで離間されて複数形成されている。
【0012】
また、FPC13は、配線端子と電気的および物理的に接続されて液晶パネル12側の回路部(ドライバ19など)と外部回路とを電気的に接続する部分であり、例えば四角形状に形成された両面配線領域である本体部21と、この本体部21の一端側に連続する片面配線領域である連続部22と、この連続部22の一端側に連続する外部接続端子部(OLB端子部)23と、本体部21の他端側から突出する接続部24とを有している。
【0013】
また、本体部21は、
図1および
図2(a)、
図2(b)に示すように、ベースフィルム25と、このベースフィルム25の一主面25a側に設けられた第1導電層26と、この第1導電層26を覆う第1保護層27と、ベースフィルム25の他主面25b側に設けられた第2導電層28と、この第2導電層28を覆う第2保護層29とを備え、例えば122.5μm程度の厚みに形成されている。そして、ベースフィルム25の一主面25a側(第1導電層26および第1保護層27側)が、FPC13の配線面となっており、ベースフィルム25の他主面25b側(第2導電層28および第2保護層29側)が、FPC13の部品実装面となっている。
【0014】
ベースフィルム25は、例えばポリイミドなどの絶縁性を有する合成樹脂により薄膜状、例えば、25μm程度の厚みに形成されている。
【0015】
また、第1導電層26は、ベースフィルム25の一主面25aを覆う第1導電膜としての第1銅箔26aと、この第1銅箔26aを覆う第2導電膜としての第1スルーホールめっき26bとを有している。
【0016】
第1銅箔26aおよび第1スルーホールめっき26bは、例えばそれぞれ銅(Cu)などの導電性を有する部材により薄膜状に形成されている。第1銅箔26aは、例えば12μm程度の厚み、第1スルーホールめっき26bは、例えば8μm程度の厚みに形成されている。
【0017】
また、第1保護層27は、第1導電層26を覆って保護するものであり、第1スルーホールめっき26bを覆う第1保護膜としての第1カバーレイ27aと、この第1カバーレイ27aを覆う第2保護膜としての第1感光性レジスト膜27bとを一体に有している。
【0018】
第1カバーレイ27aは、例えばポリイミドなどの、感光性レジストよりも熱膨張率(Coefficient of thermal expansion、CTE)が小さく(例えば熱膨張率16〜22程度)、かつ、絶縁性を有する合成樹脂などの部材により薄膜状、例えば12.5μm程度の厚みに形成されている。また、この第1カバーレイ27aは、第1接着層31を介して第1導電層26の第1スルーホールめっき26bに接着されている。ここで、第1接着層31は、例えば25μm程度の厚みに形成されている。
【0019】
また、第1感光性レジスト膜27bは、例えば熱膨張率32程度の感光性レジスト(Photo sensitive resist、PSR)によって薄膜状、例えば20±5μm程度の厚みに形成され、例えば塗布、露光、現像およびエッチングの各工程によって形成されている。
【0020】
ここで、第1カバーレイ27aは、本体部21の一端側、すなわち外部接続端子部23側を覆っており、第1感光性レジスト膜27bは、本体部21の他端側、すなわち接続部24側を覆っている。また、第1カバーレイ27aと第1感光性レジスト膜27bとは、互いに同面積に形成されている。なお、以下、同面積とは、完全に同じ面積の他に、実質的に同じ面積の意味を含むものとする。さらに、これら第1カバーレイ27aおよび第1感光性レジスト膜27bは、互いに隣接して形成され、例えば本体部21の左右両側に亘って連続している。
【0021】
一方、第2導電層28は、ベースフィルム25の他主面25bを覆う第3導電膜としての第2銅箔28aと、この第2銅箔28aを覆う第4導電膜としての第2スルーホールめっき28bとを有している。そして、この第2導電層28(の第2スルーホールめっき28b)には、図示しない導電部を介して部品33(
図3)が実装されている。この導電部は、第2保護層29の一部に形成された図示しない開口部に形成されており、例えば1〜6μm程度の厚みを有する薄膜状の第1導電体膜であるニッケルめっき、および、例えば0.03〜0.19μm程度の厚みを有する薄膜状でニッケルめっきを覆う第2導電体膜である金めっきを有している。
【0022】
第2銅箔28aおよび第2スルーホールめっき28bは、例えばそれぞれ銅などの導電性を有する部材により薄膜状に形成されている。第2銅箔28aは、例えば12μm程度の厚み、第2スルーホールめっき28bは、例えば8μm程度の厚みに形成されている。
【0023】
また、第2保護層29は、第2導電層28を覆って保護するものであり、第2スルーホールめっき28bを覆う第3保護膜としての第2カバーレイ29aと、この第2カバーレイ29aを覆う第4保護膜としての第2感光性レジスト膜29bとを一体に有している。さらに、この第2保護層29は、第1保護層27と同面積に形成されている。
【0024】
第2カバーレイ29aは、例えばポリイミドなどの、感光性レジストよりも熱膨張率が小さく(例えば熱膨張率16〜22程度)、かつ、絶縁性を有する、第1カバーレイ27aと同じ合成樹脂などの部材により薄膜状、例えば12.5μm程度の厚みに形成されている。また、この第2カバーレイ29aは、第2接着層35を介して第2導電層28の第2スルーホールめっき28bに接着されている。ここで、第2接着層35は、例えば25μm程度の厚みに形成されている。また、この第2カバーレイ29aは、第1カバーレイ27aおよび第1感光性レジスト膜27bと同面積に形成されている。
【0025】
また、第2感光性レジスト膜29bは、例えば熱膨張率32程度の、第1感光性レジスト膜27bと同じ感光性レジストによって薄膜状、例えば20±5μm程度の厚みに形成され、例えば塗布、露光、現像およびエッチングの各工程によって形成されている。さらに、この第2感光性レジスト膜29bは、第1カバーレイ27a、第1感光性レジスト膜27bおよび第2カバーレイ29aと同面積に形成されている。
【0026】
ここで、第2カバーレイ29aは、本体部21の他端側、すなわち接続部24側を覆っており、第2感光性レジスト膜29bは、本体部21の一端側、すなわち外部接続端子部23側を覆っている。さらに、これら第2カバーレイ29aおよび第2感光性レジスト膜29bは、互いに隣接して形成され、例えば本体部21の左右両側に亘って連続している。また、第2カバーレイ29aと第2感光性レジスト膜29bとは、互いに同面積に形成されている。
【0027】
したがって、第1保護層27と第2保護層29とは、平面視でLCDモジュール11(
図3)の長手方向に互いに対称に配置されている。すなわち、第1保護層27の第1カバーレイ27aの背面側に第2保護層29の第2感光性レジスト膜29bが位置し、第1保護層27の第1感光性レジスト膜27bの背面側に第2保護層29の第2カバーレイ29aが位置している。また、第1保護層27と第2保護層29とのそれぞれの熱膨張率は、全体としては互いに等しくなっている。すなわち、第1保護層27と第2保護層29とをそれぞれ1つの層とみた場合の熱膨張率は互いに等しい。
【0028】
また、連続部22は、本体部21を構成するベースフィルム25、第1導電層26(第1銅箔26aおよび第1スルーホールめっき26b)、および、第1保護層27が延びて形成され、例えば82.5μm程度の厚みとなっている。
【0029】
また、外部接続端子部23は、本体部21を構成するベースフィルム25と第1導電層26(第1銅箔26aおよび第1スルーホールめっき26b)とが連続部22からさらに延びて、この第1導電層26に対して、導電性を有する図示しない複数の端子が電気的に接続されて形成され、この端子の厚みを除き例えば45μm程度の厚みに形成されている。
【0030】
各端子は、第1導電層26(の第1スルーホールめっき26b)を覆ってこの第1導電層26に電気的に接続される例えば第1端子部導電膜としてのニッケルめっきと、このニッケルめっきを覆う第2端子部導電膜としての金めっきとを有しており、第1保護層27により覆われずにFPC13の一主面側に露出している。また、これら端子は、幅方向に所定のピッチで離間されて形成されている。そして、これら端子は、例えば図示しない異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film、ACF)により、配線領域18(
図3)の配線端子と電気的および物理的に接続される。
【0031】
さらに、接続部24は、本体部21を構成するベースフィルム25と第1導電層26(第1銅箔26aおよび第1スルーホールめっき26b)とが延びて、この第1導電層26に対して、導電性を有する図示しない複数の接続端子が電気的に接続されて形成され、この接続端子の厚みを除き例えば45μm程度の厚みとなっている。また、この接続部24には、ベースフィルム25の他主面25bに、補強層としての補強部40が接続端子の背面側に位置して形成されている。
【0032】
各接続端子は、例えば第1導電層26(の第1スルーホールめっき26b)を覆ってこの第1導電層26に電気的に接続される例えば第1接続端子部導電膜としてのニッケルめっきと、このニッケルめっきを覆う第2接続端子部導電膜としての金めっきとを有しており、接続部24の本体部21と反対側の端部に位置し、第1保護層27により覆われずに露出している。また、これら接続端子は、幅方向に所定のピッチで離間されて形成されている。そして、これら接続端子は、外部回路の図示しないコネクタなどに対して挿入されて電気的および物理的に接続される。
【0033】
また、補強部40は、例えばポリイミドなどの絶縁性を有する合成樹脂などの部材により薄膜状、例えば75μm程度の厚みに形成されている。
【0034】
そして、上記第1の実施形態のFPC13は、
図1ないし
図3に示すように、外部接続端子部23の各端子を液晶パネル12の配線領域18の各配線端子とそれぞれ位置合わせした状態で、異方性導電フィルムを介してFPC13を液晶パネル12に対して熱圧着することにより、端子と配線端子とが互いに電気的および物理的に接続され、液晶パネル12と一体的に接続される。さらに、このFPC13は、接続部24の各接続端子をコネクタなどに挿入することにより、外部回路に対して電気的に接続される。
【0035】
このように、上記第1の実施形態によれば、第1保護層27を、絶縁性を有する材質により第1導電層26の一部を覆う第1カバーレイ27aと、感光性レジストにより第1導電層26の他部を覆う第1感光性レジスト膜27bとにより構成するとともに、第2保護層29を、第1カバーレイ27aと同じ材質によりこの第1カバーレイ27aと同面積で第2導電層28の一部を覆う第2カバーレイ29aと、第1感光性レジスト膜27bと同じ感光性レジストにより第2導電層28の他部を第1感光性レジスト膜27bと同面積で覆う第2感光性レジスト膜29bとにより構成することで、FPC13の一主面側と他主面側との熱膨張率を容易に等しくできる。
【0036】
また、第1カバーレイ27a、第1感光性レジスト膜27b、第2カバーレイ29aおよび第2感光性レジスト膜29bをそれぞれ同面積とし、かつ、第1カバーレイ27aの背面側に第2感光性レジスト膜29bを配置し、第1感光性レジスト膜27bの背面側に第2カバーレイ29aを配置することにより、FPC13の一主面側と他主面側との熱膨張率を、全体に亘ってより均一化できる。
【0037】
なお、上記第1の実施形態において、
図4(a)および
図4(b)に示す第2の実施の形態のように、第1保護層27の第1カバーレイ27aを幅方向の一側に形成するとともに第1感光性レジスト膜27bを幅方向の他側に形成し、第2保護層29の第2カバーレイ29aを幅方向の他側に形成するとともに第2感光性レジスト膜29bを幅方向の一側に形成して、すなわち、第1保護層27と第2保護層29とを平面視で幅方向に互いに対称に配置してもよい。この場合にも、第1カバーレイ27aと第2カバーレイ29aとの面積を等しくするとともに、第1感光性レジスト膜27bと第2感光性レジスト膜29bとの面積を等しくすることで、第1保護層27と第2保護層29との熱膨張率を全体として互いに等しくすることにより、上記第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0038】
次に、第3の実施形態を
図5を参照して説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0039】
この第3の実施形態は、上記各実施形態の第1保護層27および第2保護層29に代えて、第1導電層26(の第1スルーホールめっき26b)を覆って、第1保護層45および第2保護層46を備えるものである。
【0040】
第1保護層45は、本体部21全体において第1導電層26を覆って保護するものであり、第1スルーホールめっき26bを覆う第1被覆膜としてのカバーレイ45aと、このカバーレイ45aを覆う第2被覆膜としてのレジスト膜45bとを一体に有している。
【0041】
カバーレイ45aは、例えばポリイミドなどの絶縁性を有する合成樹脂などの部材により薄膜状、例えば12.5μm程度の厚みに形成されている。また、このカバーレイ45aは、接着層48を介して第1導電層26の第1スルーホールめっき26bに接着されている。ここで、接着層48は、例えば25μm程度の厚みに形成されている。
【0042】
また、レジスト膜45bは、例えば薄膜フィルム状に形成され、カバーレイ45aの一主面に貼り付けられて固定されている。
【0043】
また、第2保護層46は、本体部21全体において第2導電層28を覆って保護するものであり、例えば感光性レジストを用いて薄膜状、例えば20±5μm程度の厚みに形成され、例えば塗布、露光、現像およびエッチングの各工程によって形成されている。さらに、この第2保護層46は、第1保護層45と同面積に形成されている。
【0044】
また、第1保護層45と第2保護層46との熱膨張率は、全体としては互いに等しくなっている。すなわち、第1保護層45のカバーレイ45aの熱膨張率とレジスト膜45bの熱膨張率との和は、第2保護層46の熱膨張率と等しく設定されている。
【0045】
そして、上記第3の実施形態によれば、第1保護層45を、絶縁性を有し第2保護層46を形成する感光性レジストよりも熱膨張率が小さい材質により、第1導電層26を覆うカバーレイ45aを形成するとともに、このカバーレイ45aとの熱膨張率の和が第2保護層46の熱膨張率と等しくなるようにレジスト膜45bをカバーレイ45aを覆って貼り付けることにより、FPC13の一主面側と他主面側との熱膨張率を容易に等しくできる。
【0046】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、ベースフィルム25の一主面25a側の第1導電層26を保護する第1保護層27,45と、ベースフィルム25の他主面25b側の第2導電層28を保護する第2保護層29,46との全体として互いの熱膨張率を等しくすることにより、FPC13の一主面側と他主面側との熱履歴による熱膨張率の相違に起因するFPC13の反りを抑制できる。
【0047】
また、第1保護層27および第2保護層29、あるいは第2保護層46は、露光、現像およびエッチングなどの工程により感光性レジストを用いて少なくとも一部を形成するので、例えば±0.1mm程度に誤差を抑制した高精度に形成することが可能になる。したがって、第1カバーレイ27aおよび第2カバーレイ29a、あるいはカバーレイ45aなどと比較して(第1接着層31および第2接着層35、あるいは接着層48のはみ出しを含めると例えば±0.3m程度の誤差)、精度を向上でき、高密度実装に対応できる。
【0048】
特に、LCDモジュール11に用い異方性導電フィルムなどを用いて液晶パネル12にFPC13を熱圧着して接続する場合、熱履歴による反りがFPC13に発生しにくいので、液晶パネル12側の配線端子とFPC13側の端子との位置合わせが容易になり、これらの接続の作業性をより向上できる。
【0049】
なお、上記各実施形態において、FPC13は、LCDモジュール11だけでなく、例えばタッチパネル用基板など、他の任意の機器に用いることができる。
【0050】
また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。