特許第5651108号(P5651108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5651108
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】食品充填密封容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 7/28 20060101AFI20141211BHJP
   B65D 53/00 20060101ALI20141211BHJP
   B65D 43/06 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   B65B7/28 C
   B65B7/28 A
   B65D53/00 A
   B65D43/06
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-513242(P2011-513242)
(86)(22)【出願日】2010年5月11日
(86)【国際出願番号】JP2010003188
(87)【国際公開番号】WO2010131457
(87)【国際公開日】20101118
【審査請求日】2012年10月31日
(31)【優先権主張番号】特願2009-116563(P2009-116563)
(32)【優先日】2009年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000180298
【氏名又は名称】四国化工機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】井関 健史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅勝
(72)【発明者】
【氏名】久保 昌男
(72)【発明者】
【氏名】増田 智之
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−153807(JP,A)
【文献】 特開昭60−247424(JP,A)
【文献】 特開平03−240667(JP,A)
【文献】 特開2002−019820(JP,A)
【文献】 特開昭58−183407(JP,A)
【文献】 特開平3−14401(JP,A)
【文献】 特開2008−44644(JP,A)
【文献】 特開昭56−95862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 7/00−7/28
B65D43/06
B65D53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製の容器本体に食品を充填した後、熱可塑性樹脂製の容器蓋を超音波シール装置を用いて、容器本体を上下方向に圧縮した状態でヒートシールして密封する、容器蓋の中央部が凹んでおり、容器内が陰圧になっている食品充填密封容器の製造方法であって、前記容器本体に前記容器蓋を載置した際にシール面に容器内外を連通する隙間を形成することができる半球状の凹凸を有する容器本体又は容器蓋を用いることを特徴とする食品充填密封容器の製造方法。
【請求項2】
シール面に凹凸を有しない容器本体及びシール面に凹凸を有する容器蓋を用いることを特徴とする請求項1に記載の食品充填密封容器の製造方法。
【請求項3】
耐熱性樹脂製、金属製又は紙製の容器本体に食品を充填した後、熱可塑性樹脂製の容器蓋を超音波シール装置を用いて、容器本体を上下方向に圧縮した状態でヒートシールして密封する、容器蓋の中央部が凹んでおり、容器内が陰圧になっている食品充填密封容器の製造方法であって、前記容器本体に前記容器蓋を載置した際にシール面に容器内外を連通する隙間を形成することができる半球状の凹凸を有する容器蓋を用いることを特徴とする食品充填密封容器の製造方法。
【請求項4】
シール面に凹凸を有する容器本体又は容器蓋が、シール面に凹凸を有しない容器本体又は容器蓋のシール面に凹凸を形成して作製されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の食品充填密封容器の製造方法。
【請求項5】
シール面に凹凸を有する容器本体又は容器蓋が、容器本体又は容器蓋の成形と同時に凹凸を形成して作製されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の食品充填密封容器の製造方法。
【請求項6】
シール面に凹凸を有する容器蓋が、凹凸を有するシート材を用いて作製されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の食品充填密封容器の製造方法。
【請求項7】
凹凸の高さが、0.05〜1.5mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の食品充填密封容器の製造方法。
【請求項8】
容器蓋のシール面内側の蓋中央部を押圧してヒートシールすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の食品充填密封容器の製造方法。
【請求項9】
超音波シール装置のホーンが加温手段を備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の食品充填密封容器の製造方法。
【請求項10】
超音波シール装置を用いたヒートシールにより容器蓋で密封する熱可塑性樹脂製の容器本体であって、シール面に周方向に間隔をあけて設けられた半球状の突起を有することを特徴とする容器本体。
【請求項11】
突起の高さが、0.05〜1.5mmであることを特徴とする請求項10に記載の容器本体。
【請求項12】
超音波シール装置を用いたヒートシールにより容器本体を密封する熱可塑性樹脂製の容器蓋であって、シール面に半球状の凹凸を有することを特徴とする容器蓋。
【請求項13】
凹凸の高さが、0.05〜1.5mmであることを特徴とする請求項12に記載の容器蓋。
【請求項14】
凹凸を有するシート材を用いて作製されたことを特徴とする請求項12又は13に記載の容器蓋。
【請求項15】
ポリスチレン系樹脂シートを用いて冷間成形により作製された、天板部及びスカート部を備えた保形性を有する蓋であることを特徴とする請求項1214のいずれかに記載の容器蓋。
【請求項16】
ドーム型の蓋であることを特徴とする請求項1214のいずれかに記載の容器蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に食品を充填した後、容器蓋をヒートシールして密封する食品充填密封容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、飲料容器、ヨーグルト容器、ポーション容器、カップ麺等の食品用容器としては、引張り強さ、耐熱性、耐光性、成形性、表面光沢性に優れたスチレンホモポリマー等のいわゆる一般用ポリスチレン系樹脂(GPPS;General Purpose Polystyrene)や、GPPSにSBR、BR等のゴムを配合し、その脆さを改善した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS;High Impact Polystyrene)が多用されている。このようなポリスチレン系樹脂容器の開口部に貼り合わせ密閉するための蓋材として、アルミニウム箔を基材とし、その表面に容器との接着のためのシーラント層等を設けたアルミニウム積層体が使用されている。このようなアルミニウム積層体から蓋の展開形に打ち抜かれた小片のアルミニウム蓋材が、端部が折り返されスカートが付いた形状に成形され、容器の開口部にシールされていた。このようなアルミニウム製蓋は、封かん性に優れ、ピール時の安定性に優れ、容器の開口部に供給されるとき、静電気による付着が少なく枚葉供給性が良好であるため、常用されている。また、アルミニウム製蓋は、周縁部を折り曲げて成形されるスカートが設けられたとき、折り曲げられて変形された形態を維持する性質、いわゆる保形性に優れている。このため、充填された飲料を直接容器から飲用する場合に、容器の開口近傍の口に接触する部分が蓋の端部で被覆された状態が良好に保持され、容器の開口近傍の汚染を防止することができ、衛生上優れている上に、外観上も優れているため、従来から好適に用いられている。
【0003】
しかしながら、昨今、加工食品容器内に異物が混入する事故が多発しており、安全対策が課題となっているが、このようなアルミニウム製蓋を使用した容器においては、製品全体を検査する金属探知機が使用できないため、釘、ホッチキス針、成形品抜き刃の毀れた破片、ボルトやナット、針金、スプリング等の混入するおそれがある金属類の検出ができないという問題がある。また、これらのアルミニウム製蓋を有する容器は、アルミニウム製蓋とポリスチレン等の合成樹脂製容器本体をそれぞれ分別回収する必要があり、リサイクル性に劣るという欠点を有する。
【0004】
このような従来のアルミニウム製蓋の代替として、例えば、高密度ポリエチレンとポリプロピレン系重合体からなる中心層と、この中心層の両側に高密度ポリエチレンからなる被覆層を設けた共押出フィルムの基材の両側に、耐熱性フィルムを積層した積層基材の下面に、シーラント層を設けた積層材料を、所定の形状に打ち抜いてなる蓋材が提案されている(特許文献1参照)。また、本出願人らは、ASTM-D3763に準拠した落錘衝撃試験方法で測定した150μm厚みシートにおける伝播エネルギーが、0.015J以上であるポリスチレン系樹脂シートを、冷間成形することにより得られる保形性を有する密封容器を提案している(特許文献2〜6参照)。
【0005】
他方、容器本体のフランジ上面に突起状ヒートシール線を有する容器や、容器本体のフランジ上面の中心に線状の溝を有する容器を用いて、容器蓋をヒートシールする方法が提案されているが(特許文献7及び8参照)、特許文献7に記載の容器は、内容物が発酵するようなものの場合に容器内外を通気させて完全に密封されることを防止するものであり、特許文献8に記載の容器は、容器外に連通していない溝内に空気を導いてシール不良を防止すると共にアルミ蓋を剥がれ易くするものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−10810号公報
【特許文献2】特開2004−74795号公報
【特許文献3】特開2004−74796号公報
【特許文献4】特開2004−75196号公報
【特許文献5】特開2004−75197号公報
【特許文献6】特開2004−154957号公報
【特許文献7】特開平11−152166号公報
【特許文献8】実用新案登録第3026497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような熱可塑性樹脂製の容器蓋を用いて、含気部分を残して食品を充填した容器本体をヒートシールして密封した食品充填密封容器は、環境変化(温度や気圧の変化)に伴う密封容器内の空気の膨張・収縮により、外観を損なう程度に形状が変形する場合があった。すなわち、ヒートシール時に温められた密封容器内に存在する空気がその後収縮して容器蓋が凹み変形し、また、密封容器が高温下に長時間曝され、或いは大気圧が低下し、密封容器内に存在する空気が膨張して容器蓋が膨らむことがあり、剛性の高い熱可塑性樹脂製の容器蓋では均一な膨らみとならず、うねりや反り返り変形を生じ、外観を損ね、商品価値の低下を生じていた。
【0008】
本発明の課題は、密封シール後に容器内空気の膨張・収縮に起因して容器蓋が変形することがない商品価値の高い食品充填密封容器を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ヒートシール時に容器内の空気が外部に逃げ得る構造の容器本体又は容器蓋、すなわち、シール面に凹凸を有する容器本体又は容器蓋を用いてヒートシールすることにより、ヒートシール時、容器内の空気が外部に排出されて、密封容器内に残存する空気量が減少し、密封容器内空気の膨張・収縮に起因する容器蓋の変形を防止することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、(1)熱可塑性樹脂製の容器本体に食品を充填した後、熱可塑性樹脂製の容器蓋を超音波シール装置を用いて、容器本体を上下方向に圧縮した状態でヒートシールして密封する、容器蓋の中央部が凹んでおり、容器内が陰圧になっている食品充填密封容器の製造方法であって、前記容器本体に前記容器蓋を載置した際にシール面に容器内外を連通する隙間を形成することができる半球状の凹凸を有する容器本体又は容器蓋を用いることを特徴とする食品充填密封容器の製造方法や、(2)シール面に凹凸を有しない容器本体及びシール面に凹凸を有する容器蓋を用いることを特徴とする上記(1)に記載の食品充填密封容器の製造方法や、(3)耐熱性樹脂製、金属製又は紙製の容器本体に食品を充填した後、熱可塑性樹脂製の容器蓋を超音波シール装置を用いて、容器本体を上下方向に圧縮した状態でヒートシールして密封する、容器蓋の中央部が凹んでおり、容器内が陰圧になっている食品充填密封容器の製造方法であって、前記容器本体に前記容器蓋を載置した際にシール面に容器内外を連通する隙間を形成することができる半球状の凹凸を有する容器蓋を用いることを特徴とする食品充填密封容器の製造方法や、(4)シール面に凹凸を有する容器本体又は容器蓋が、シール面に凹凸を有しない容器本体又は容器蓋のシール面に凹凸を形成して作製されたことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の食品充填密封容器の製造方法や、(5)シール面に凹凸を有する容器本体又は容器蓋が、容器本体又は容器蓋の成形と同時に凹凸を形成して作製されたことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の食品充填密封容器の製造方法や、(6)シール面に凹凸を有する容器蓋が、凹凸を有するシート材を用いて作製されたことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の食品充填密封容器の製造方法や、(7)凹凸の高さが、0.05〜1.5mmであることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の食品充填密封容器の製造方法や、(8)容器蓋のシール面内側の蓋中央部を押圧してヒートシールすることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の食品充填密封容器の製造方法や、(9)超音波シール装置のホーンが加温手段を備えていることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の食品充填密封容器の製造方法に関する。
【0011】
また本発明は、(10超音波シール装置を用いたヒートシールにより容器蓋で密封する熱可塑性樹脂製の容器本体であって、シール面に周方向に間隔をあけて設けられた半球状の突起を有することを特徴とする容器本体や、(11)突起の高さが、0.05〜1.5mmであることを特徴とする上記(10)に記載の容器本体に関する。
【0012】
さらに本発明は、(12超音波シール装置を用いたヒートシールにより容器本体を密封する熱可塑性樹脂製の容器蓋であって、シール面に半球状の凹凸を有することを特徴とする容器蓋や、(13)凹凸の高さが、0.05〜1.5mmであることを特徴とする上記(12)に記載の容器蓋や、(14)凹凸を有するシート材を用いて作製されたことを特徴とする上記(12)又は(13)に記載の容器蓋や、(15)ポリスチレン系樹脂シートを用いて冷間成形により作製された、天板部及びスカート部を備えた保形性を有する蓋であることを特徴とする上記(12)〜(14)のいずれかに記載の容器蓋や、(16)ドーム型の蓋であることを特徴とする上記(12)〜(14)のいずれかに記載の容器蓋に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の食品充填密封容器の製造方法によれば、密封シール後も容器蓋が変形することがなく、食品が充填された商品価値の高い密封容器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の食品充填密封容器の製造方法に用いる容器本体及び容器蓋の一例を示す概略図である。
図2】本発明の容器本体のシール面の凹凸のバリエーションを示す図である。
図3】本発明の容器蓋のシール面の凹凸のバリエーションを示す図である。
図4】本発明の食品充填密封容器の製造方法に用いられる超音波シール装置の主要部を示す図である。
図5図4に示される超音波シール装置のホーンの底面図である。
図6図4に示される超音波シール装置のホーンのバリエーションを示す側面図である。
図7】本発明の食品充填密封容器の製造方法の概略説明図である。
図8】実施例及び比較例に係る密封容器の温度上昇による容器蓋の膨らみの程度を示すグラフである。
図9】容器蓋の突起数による、容器蓋の膨らみ抑制効果の影響を示すグラフである。
図10】超音波シール装置のホーンの加温による、容器蓋の膨らみ抑制効果の影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の食品充填密封容器の製造方法としては、熱可塑性樹脂製の容器本体に含気部分を残して食品を充填した後、熱可塑性樹脂製の容器蓋をヒートシールして密封する食品充填密封容器の製造方法であって、シール面に凹凸を有する容器本体又は容器蓋を用いる食品充填密封容器の製造方法であれば特に制限されるものではなく、シール面に凹凸を有する容器本体及び容器蓋を用いてもよい。
【0016】
ここで、シール面の凹凸とは、容器本体に容器蓋を載置した際、凹凸間に容器内外を連通する隙間を形成することができる凹凸をいい、例えば、凹凸を有しないシール面にランダムに又は所定間隔をあけて突起又は窪み(溝)や、シール面自体に円周方向に形成されたうねりをいい、シール性の点から、凹凸を有しないシール面に設けられた突起が好ましい。かかる凹凸は、容器本体に容器蓋を載置した際にシール面間に空気通路が形成される程度の凹凸でよく、突起又は窪みの高さ(深さ)としては、0.05〜1.5mmであることが好ましく、0.1〜0.8mmであることがより好ましく、0.1〜0.6mmであることがさらに好ましい。突起又は窪みの形状としては特に制限されるものではなく、縦断面が半円形、三角形、四角形等の突起又は窪みを例示することができる。シール面にこのような凹凸を設けても熱可塑性樹脂が溶融して凹凸は消失し、商品価値を低下させることはない。なお、容器本体又は容器蓋に窪みを設ける場合は、容器内の空気が外部に排出されるように、容器本体又は容器蓋のシール面半径方向に貫通するように設ける。
【0017】
具体的に、例えば、容器本体のシール面には、半径0.3〜2.0mm程度で高さが0.05〜1.5mmの半円球の突起や、幅0.1〜1.0mm程度で高さが0.05〜1.5mmの半径方向に設けられた線状突起や、幅0.1〜1.0mm程度で高さ(深さ)が0.05〜1.5mmの半径方向に貫通して設けられた線状溝を、複数箇所(例えば4〜16箇所)設けることができる。また、容器蓋の円形のシール面には、半径0.3〜2.0mm程度で高さが0.05〜1.5mmの半円球の突起や、幅0.1〜1.0mm程度で高さが0.05〜1.5mmの半径方向に設けられた線状突起や、幅0.1〜1.0mm程度で高さ(深さ)が0.05〜1.5mmの半径方向に貫通して設けられた線状溝を、複数箇所設けることができる。
【0018】
突起や溝の数は特に制限されるものではないが、数が多くなるほど、シール(溶着)に大きなエネルギーが必要となり、シール時間が長くなって、容器本体及びシール面の間に形成される隙間が長く維持され、より多くの容器内空気が抜けることになることから、4個以上であることが好ましく、8〜32個であることがより好ましい。
【0019】
上記のように、本発明の食品充填密封容器の製造方法においては、シール面に凹凸を有する容器本体及び/又は容器蓋を用いることができるが、シール面に凹凸を有しない容器本体及びシール面に凹凸を有する容器蓋を用いることが好ましい。凹凸を容器本体のシール面に設けた場合でも熱可塑性樹脂が溶融することによってその凹凸はほぼ消失するが、容器蓋側に設けたほうが、容器本体のシール面がより凹凸のない状態に保たれることから、例えば、容器本体に直接口をつけて飲食する際に不快感がなく、飲食時に頻繁に目に入る容器本体の美観が保たれる。なお、シール面に凹凸を有しないとは、シール面に容器内外を連通する隙間を形成することができる凹凸を有しないこと(円周方向に凹凸を有しないこと)をいい、シール面が平坦なもののみならず、前記のような凹凸を有しない限り、例えばシール面が断面円弧状に膨らんだものも含まれる。
【0020】
上記シール面に凹凸を有する熱可塑性樹脂製の容器本体は、例えば、シール面に凹凸を有しない容器本体のシール面に凹凸を形成することにより作製することができ、具体的には、凹凸を有しないシール面に熱可塑性樹脂を溶着して突起を形成する方法や、凹凸を有しないシール面の裏側から押圧してシール面の表側に突起を形成する方法や、凹凸を有しないシール面の一部を削り取ることにより窪みを形成する方法や、表面が凹凸形状の樹脂溶融部材を凹凸を有しないシール面に押圧して凹凸を形成する方法により作製することができる。また、シール面に凹凸を有する容器本体は、容器本体の成形と同時に凹凸を形成することにより作製してもよい。なお、容器本体は、射出成形、ブロー成形等、公知の成形方法を用いて成形することができる。
【0021】
上記シール面に凹凸を有する熱可塑性樹脂製の容器蓋は、例えば、シール面に凹凸を有しない容器蓋のシール面に凹凸を形成することにより作製することができ、具体的には、容器本体同様、凹凸を有しないシール面に熱可塑性樹脂を溶着して突起を形成する方法や、凹凸を有しないシール面の裏側から押圧してシール面の表側に突起を形成する方法や、凹凸を有しないシール面の一部を削り取ることにより窪みを形成する方法や、表面が凹凸形状の樹脂溶融部材を凹凸を有しないシール面に押圧して凹凸を形成する方法により作製することができる。また、シール面に凹凸を有する容器蓋は、容器蓋の成形と同時に凹凸を形成することにより作製してもよく、さらに、シート材を用いて成形する場合は、凹凸を有するシート材を用いることにより作製することができる。
【0022】
本発明における熱可塑性樹脂製の容器本体や熱可塑性樹脂製の容器蓋とは、熱可塑性樹脂を主体とする容器本体や容器蓋をいい、その他、熱可塑性樹脂以外の成分からなる帯電防止層、ガスバリア層、印刷層等を有していてもよい。かかる容器本体及び容器蓋の主成分となる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等、従来公知の熱可塑性樹脂を例示することができる。容器本体及び容器蓋の作製に用いられる熱可塑性樹脂の種類は、それぞれ異なっていてもよいが、同種の樹脂であることがリサイクル性の点から好ましい。具体的に、本発明における熱可塑性樹脂製の容器本体や熱可塑性樹脂製の容器蓋としては、特開2004-74795号公報、特開2004-74796号公報、特開2004-75196号公報、特開2004-75197号公報、特開2004-154957号公報に記載された、ポリスチレン系樹脂からなる容器本体、及びポリスチレン系樹脂シートを用いて冷間成形により作製された、天板部及びスカート部を備えた保形性を有する容器蓋を好適に例示することができる。なお、冷間成形により作製される容器蓋に凹凸を形成する場合には、例えば、特開2004−154957号公報におけるフォーマ及び/又は蓋押戻し用ピストンに凹凸を形成しておき、容器蓋の冷間成形と同時に容器蓋に凹凸を形成することができる。
【0023】
本発明の食品充填密封容器の製造方法におけるヒートシール方法としては、容器本体及び/又は容器蓋の熱可塑性樹脂を熱溶融してシール(熱溶着)する方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、熱板シール法、熱風シール法、高周波シール法、超音波シール法を例示することができ、シール性等の点から、超音波シール法が好ましい。本発明の食品充填密封容器の製造方法においては、容器本体又は容器蓋がシール面に凹凸を有し、容器内の空気が外部に逃げ得るような構造となっているので、このヒートシールと同時に空気を容器外に逃がし、容器内に残存する空気量が減少して、密封後に容器蓋が変形することを防止することができる。
【0024】
また、このヒートシールの際、容器蓋のシール面内側の蓋中央部を押圧してヒートシールすることにより、より多くの空気を容器外に排出することができ、密封後の容器蓋の変形をより確実に防止することができる。具体的には、例えば、ホーンの中央部(容器蓋の中央部に対応)に凸部を有するヒートシール装置を用いてヒートシールを行うことが好ましい。
【0025】
また、超音波シールを行う場合には、加温手段を供えたホーンを用いてシールすることが好ましく、これにより、容器内の空気はホーンの熱により加熱され膨張するので、その膨張した分の空気も容器外に排出することができ、より容器内に残存する空気量を減少させることができる。ホーンの加温手段としては、例えば、ホーンの周囲に配設したリング状のエア噴き付け管を挙げることができる。ホーンの周囲のリング状のエア噴き付け管は、一般的には、ホーンの過熱防止のために設けられるものであるが、本発明の方法においては、これを利用して熱風又は温風を噴き付けることで、本発明の作用効果を増大させることができる。
【0026】
さらに、シールの際には、容器本体を上下方向に圧縮した状態でシールすることが好ましく、その圧縮量としては、例えば、0.3〜3.0mm程度である。すなわち、ヒートシール装置のホーン及び容器載置台(ビン台)で容器本体を上下から押圧して、シール時に容器本体を圧縮することにより、容器内のより多くの空気を排出することが可能となる。
【0027】
本発明の第2の食品充填密封容器の製造方法としては、耐熱性樹脂製、金属製又は紙製の容器本体に食品を充填した後、熱可塑性樹脂製の容器蓋をヒートシールして密封する食品充填密封容器の製造方法であって、シール面に凹凸を有する容器蓋を用いる食品充填密封容器の製造方法であれば特に制限されるものではなく、シール面に凹凸を有する容器蓋やヒートシール方法については、上記第1の製造方法で説明したものと同様である。本発明の第2の食品充填密封容器の製造方法においては、容器本体は、耐熱性樹脂製、金属製又は紙製の容器本体であり、それぞれの材料を主体とする容器である。耐熱性樹脂とは、ヒートシール時の熱により影響を受けない耐熱性を有する樹脂をいい、具体的には、ヒートシール時に軟化溶融しない熱可塑性樹脂や、ヒートシール時に熱分解しない熱硬化性樹脂をいう。具体的に、本発明の第2の食品充填密封容器の製造方法において用いることができる容器本体及び容器蓋としては、特開2005−40096号公報に記載された、アルミニウム容器本体、及び熱可塑性樹脂からなるドーム型の容器蓋を好適に例示することができる。なお、シール性を向上するために、容器本体のシール面には、ヒートシール時に溶融する熱可塑性樹脂の層を設けてもよい。
【0028】
上記本発明の第1及び第2の食品充填密封容器の製造方法により製造された食品充填密封容器は、容器蓋の中央部が凹んでおり、容器内が陰圧になっている。これにより、気圧上昇や温度低下など容器蓋が凹むような環境変化が生じた場合にも、初期状態から著しく容器蓋が凹むことはなく、また、気圧低下や温度上昇など容器蓋が膨らむような環境変化が生じた場合にも、ヘッドスペース内の空気の状態変化は、まず主に圧力上昇を生じ、その後、この圧力が大気圧に等しくなってから体積が著しく増大し、容器蓋が膨らみ始めるので、一定の環境変化までは容器蓋が膨らみを生じることはない。
【0029】
以下、図面を参照しつつ、本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。図1は、本発明の食品充填密封容器の製造方法に用いる容器本体及び容器蓋の一例を示す概略図であり、図2(A)〜(D)は、容器本体のシール面の凹凸のバリエーションを示す図であり、図3(A)〜(B)は、容器蓋のシール面の凹凸のバリエーションを示す図である。また、図4は、本発明の食品充填密封容器の製造方法に用いられる超音波装置の主要部を示す図であり、図5は、図4に示される超音波装置のホーンの底面図であり、図6は、図4に示される超音波装置のホーンのバリエーションを示す側面図であり、図7は、本発明の食品充填密封容器の製造方法の概略説明図である。
【0030】
図1に示すように、本発明の食品充填密封容器の製造方法に用いる容器本体10は、例えば、ポリスチレン系樹脂製であって、胴体部11及びフランジ12を備え、このフランジ12の上面13がシール面となる。また、容器蓋20は、容器本体10同様に、ポリスチレン系樹脂製であって、容器本体10のフランジ12に対応した凸状外周部21を有する天板部22及びスカート部23を備え、前記凸状外周部21の下面24がシール面となる。
【0031】
本発明の食品充填密封容器の製造方法においては、シール面13,24に凹凸を有する容器本体10及び/又は容器蓋20を用いる。例えば、図2に示すように、容器本体10のシール面13には、半球状の突起13a(図2(A))や、シール面の半径方向に延設された縦断面が四角形の直方体状の突起13b(図2(B))や、シール面の半径方向に延設された縦断面が四角形の溝13c(図2(C))や、上下方向のうねり13d(図2(D))が設けられている。また、図3に示すように、容器蓋20のシール面24には、半球状の突起24a(図3(A))や直方体状の突起24b(図3(B))が設けられている。
【0032】
上記のようなシール面に凹凸を有する容器本体10及び容器蓋20をシールして密封容器を製造するには、例えば、図4に示されるような超音波シール装置(詳しくは、WO2002-072426号公報参照)を用いることができる。図4に示すように、超音波シール装置30は、容器載置台31と、載置台31の上方に配置されたホーン32を備えており、容器載置台31には、容器固定手段33が設けられている。図5及び図6に示すように、この超音波シール装置30のホーン32の中央部には凸部34が設けられており、かかる凸部34の形状としては、例えば、容器蓋20との接触部分が平面状のもの34a(図6(A))や、曲面状のもの34b(図6(B))が挙げられる。
【0033】
図7に示すように、超音波シール装置30を用いて容器本体10に容器蓋20をシールするには、まず、超音波シール装置30のホーン32を予め加温しておき(図7(a))、容器蓋20を被せた容器本体10を載置台(ビン台)31に載置した状態で、載置台31を上方に移動させ、ホーン32に当接させて押圧すると共に、ホーン32の周方向の超音波回転振動を作用させることによりシールする(図7(b)(c))。このとき、中央部に凸部を有するホーン32を用いると共に容器本体10がdの高さだけ圧縮され容積が減少するので、その分の空気がシール面の凹凸により形成された隙間から排出される。また、容器内の空気はホーン32の熱により加熱され膨張するので、その膨張した分の空気も排出される。容器載置台31を下降させることにより、容器はビン台圧から開放され、圧縮変形した状態から復元して容積が元に戻るが、空気量が初期よりも少ない状態で密封されているので、容器内は陰圧となりキャップが凹むこととなる(図7(d))。これにより、密封シール後の容器蓋20の変形を防止することができる。なお、ここでビン台圧とは、載置台(ビン台)31が上方に移動することで、容器蓋20を被せた容器本体10がホーン32に当接し、押圧されたときの、容器蓋20及び容器本体10にかかる圧力をいう。
【実施例】
【0034】
〔実施例1〕
ポリスチレン系樹脂からなる容器本体と、ポリスチレン系樹脂シートを用いて冷間成形により作製された、天板部及びスカート部を備えた保形性を有する容器蓋とを用いて、食品充填密封容器を製造した。本発明の実施例に係る容器本体及び容器蓋として、直径約40mmのシール面(フランジ上面)に凹凸を有しない容器本体(断面円弧状のシール面を有する容器本体)、及びシール面に容器本体側に延びる突起を有する容器蓋を用いた。なお、容器蓋には、直径1.4mm高さ0.8mmの半円球状の突起を16個、等間隔に設けた。また、比較例に係る容器本体及び容器蓋として、容器蓋のシール面に突起を設けないこと以外は同一の構成としたものを用いた。
【0035】
実施例及び比較例に係る容器本体・容器蓋を用いて、密封容器(サンプル)を作製した。具体的には、容器本体に3℃の水を投入した後、超音波シール装置(CYSシールテスト装置 ZB−26:四国化工機株式会社製)により容器蓋をシールして、密封されたサンプルを作製した。密封されたサンプルの内圧について調査したところ、実施例及び比較例に係るサンプルの内圧差が約1.25kPaあり、比較例に係る容器では陽圧となっているのに対して、実施例に係る容器では陰圧となっていた。
【0036】
〔試験例1〕容器蓋膨らみ抑制効果の確認
サンプルを室温5℃の低温室で6時間以上保存し、定常状態にした。続いて、サンプルを室温37℃の恒温室に移動・静置し、液温が30℃に達するまで、60分までは15分おきに、60分以降は30分おきに液温とキャップの高さを測定した。キャップの高さの測定には、レーザー変位計(キーエンス製LK−080、分解能0.1μm)を用い、正立させた測定対象サンプルの上から測定した。具体的には、キャップの中心及び中心から10mm離れた周辺部4箇所を測定し、容器口部を基準とした5点の平均の高さをそのサンプルの容器蓋中央部高さとした。その結果を図8に示す。
【0037】
図8より、比較例に係る容器は、液温約18℃達温時に容器蓋の中央部が容器口部高さ以上に膨らんだが、実施例に係る容器は、液温約30℃達温時でも0.9mmの凹みを維持し、容器蓋膨らみ現象の抑制効果があることがわかる。なお、突起の高さが0.1mm及び0.6mmの場合にも、容器蓋膨らみ現象の抑制効果が確認された。
【0038】
〔試験例2〕突起数による容器蓋膨らみ抑制効果への影響
容器蓋の突起数が1個、4個のものについても、試験例1と同様に、容器蓋膨らみ抑制効果を調査した。測定開始時からの容器蓋中央部高さの変位量、すなわち容器蓋中央部膨らみ量を図9に示す。
【0039】
図9より、突起数の多いものほど膨らみ抑制効果が大きいことがわかる。これは、容器蓋をシールする際には、突起を潰して溶着・密封するので、突起数が多いほど、より大きなエネルギーを要し、発振開始から密封完了までの所要時間が長くなり、より多くの空気が抜けるため、膨らみ現象抑制効果が大きくなったと推測できる。
【0040】
〔試験例3〕ホーンの加温による容器蓋膨らみ抑制効果への影響
超音波シール装置のホーンを40℃に加温した場合と、加温しない場合についても、試験例1と同様に、容器蓋膨らみ抑制効果を調査した。その結果を図10に示す。
【0041】
図10に示すように、液温上昇に伴う容器蓋の膨らみは、ホーンを加温しなかったものに比べて、ホーンを加温したものの方が明らかに小さく、ホーンを加温することで、容器蓋膨らみ抑制効果がより大きくなることがわかる。
【符号の説明】
【0042】
10 容器本体
11 胴体部
12 フランジ
13 上面(シール面)
13a 半球状の突起
13b 直方体状の突起
13c 溝
13d うねり
20 容器蓋
21 凸状外周部
22 天板部
23 スカート部
24 下面(シール面)
24a 半球状の突起
24b 直方体状の突起
30 超音波シール装置
31 載置台
32 ホーン
33 容器固定手段
34 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10