(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マスターバッチを冷却する中間工程を工程a)とb)の間に加えることにより、前記マスターバッチを100℃よりも低い温度に冷却する、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
前記不飽和ジエンエラストマーを、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーのブレンドによって形成される群から選択する、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従う方法を実施するために使用することのできる配合用押出機の例を示す。
【
図2】半径断面における、本発明に従う方法を使用して製造したセルフシーリング組成物を使用したタイヤの例を示す。
【0012】
I. 発明の詳細な説明
本説明においては、他に明確に断らない限り、示す百分率(%)は、全て質量%である。
さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、“a”よりも大きい値から“b”よりも小さい値に至る値の範囲を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、限界値“a”から限界値“b”に至る値の範囲を意味する、即ち、厳格な限定値“a”および“b”を含む。
I‐1. 本発明方法
従って、本発明に従う方法は、少なくとも下記の工程:
a) 先ず、少なくとも1種のジエンエラストマーと30phrよりも多い含有量を有する炭化水素樹脂とを含むマスターバッチを、これらの各成分を、ミキサー内で、上記炭化水素樹脂の軟化点よりも高い“高温配合温度”または“第1温度”と称する温度において或いはこの温度までの温度で配合することによって製造する工程;および、
b) その後、少なくとも1種の架橋系を、製造された上記マスターバッチ中に、全てを、同じミキサーまたは異なるミキサー内で、100℃よりも低く保った“第2温度”と称する温度において或いはこの温度までの温度で配合することによって混入して、セルフシーリング組成物を得る工程;
を有することを特徴とし、且つ、
更に−20℃よりも低いガラス転移温度(T
gと略記する)を有する液体可塑剤が60phrよりも少ない量で上記マスターバッチおよび/または上記組成物中に混入されることを特徴とする(phrは、固形ゴムまたはエラストマーの100質量部当りの質量部を意味する)。
上記第1および第2温度は、勿論、上記マスターバッチおよびセルフシーリング組成物それぞれの温度であり、これらの温度は、その場で測定可能な温度であり、ミキサー自体の設定温度ではない。
【0013】
用語“マスターバッチ”とは、この場合、定義によれば、少なくとも1種のジエンエラストマーと上記30phrよりも多い炭化水素樹脂を含むコンパウンド、即ち、即使用可能な最終セルフシーリング組成物用のプレカーサーコンパウンドを意味するものと理解すべきである。
【0014】
上記液体可塑剤は、本発明方法の工程のいずれか1つの工程における任意の時点で全部または一部を混入してよく、特に、マスターバッチ自体の製造中に(この場合、上記炭化水素樹脂の上記ジエンエラストマー中への混入前、混入中または混入後に)、“高温”(即ち、樹脂の軟化点よりも高い温度で)、低めの温度で同様にして、或いは、例えば、マスターバッチの製造後に(この場合、架橋系の添加前、添加中または添加後に)混入してもよい。
【0015】
好ましくは、上記液体可塑剤は、マスターバッチ自体の製造中の工程a)において、この場合、より好ましくは、上記炭化水素樹脂を導入するのと同時または導入した後に少なくとも1部導入する。1つの特に有利な実施態様によれば、上記炭化水素樹脂と上記液体可塑剤は、上記ジエンエラストマー中に混入する前に、一緒にブレンドしていてもよい。
【0016】
必要に応じて、各種添加剤をこのマスターバッチに混入し得るが、これら添加剤が、マスターバッチにおいて適切であるか(例えば、安定剤、着色剤、UV安定剤、酸化防止剤等)、或いはそのマスターバッチの使用をもくろむ最終セルフシーリング組成物において適切であるかによる。
【0017】
上記マスターバッチは、任意の配合用器具を使用して、特に、ブレードミキサー、2本ロール開放ミキサー、押出機、またはマスターバッチの各種成分を十分に混合または混錬してこれらの成分が緊密に混合されている均質コンパウンドを得ることができる任意のミキサー内で製造することができる。好ましいのは、スクリューピッチが一定であっても一定でなくてもよい、知られているとおりに、配合中のコンパウンド(ジエンエラストマーと樹脂)中に大量の剪断を導入することのできる配合用スクリュー押出機を使用することである。
【0018】
初期段階においては、即ち、エラストマーと接触する前では、上記可塑化用炭化水素樹脂は、固形状態または液体状態であり得る。ジエンエラストマー(固形である)の熱可塑性炭化水素樹脂との接触中は、上記炭化水素樹脂は、固形状態であり得、或いは、より好ましい実施態様によれば、既に液体状態であり得る。これを実施するためには、必要とすることの全てが、上記樹脂をその軟化点よりも高い温度に加熱することである。
【0019】
使用する炭化水素樹脂のタイプに応じて、上記高温配合温度は、典型的には70℃よりも高く、好ましくは80℃よりも高く、例えば、100℃と150℃の間である。
上記マスターバッチの最適な配合においては、上記炭化水素樹脂は、好ましくは、液体状態で加圧下のミキサー内に注入する。もう1つの好ましい実施態様によれば、エラストマーと混合するまたはしないにかかわらず、上記高温配合工程a)は、酸素を避けて実施する。
【0020】
架橋系を混入する工程b)は、それ自体、100℃よりも低く、好ましくは80℃よりも低く保った温度においてまたはそのような最高温度(第2温度)にまで実施する。
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、上記第2温度は、上記樹脂の軟化点よりも低く保つ。従って、使用する炭化水素樹脂のタイプに応じて、工程b)の配合温度は、好ましくは50℃よりも低く、より好ましくは20℃と40℃の間(例えば、20℃と30℃の間)である。
【0021】
必要に応じて、マスターバッチを冷却する中間工程を、上記工程a)とb)の間に加えて、その温度を100℃よりも低い、好ましくは80℃よりも低い、特に樹脂の軟化点よりも低い値にする;この工程は、架橋系を、前以って製造したマスターバッチに導入する前に実施する。
【0022】
I‐2. 上記セルフシーリング組成物の配合
従って、本発明の方法に従って製造することのできるセルフシーリング材料または組成物は、少なくとも1種のジエンエラストマー、可塑剤(23℃で固形)としての30phrよりも多い炭化水素樹脂、−20℃よりも低いT
gを有する60phrよりも少ない含有量の液体可塑剤および架橋系を含むエラストマー組成物である。各種の任意構成成分としての添加剤は別にして、上記組成物は、小画分の補強用充填剤を含み得或いは含み得ない。上記セルフシーリング材料または組成物の配合を、以下でさらに詳細に説明する。
【0023】
a) ジエンエラストマー
知られている通り、ジエンエラストマーは、2つのカテゴリー、即ち、飽和および不飽和に分類し得る。この場合、不飽和タイプのジエンエラストマー、即ち、定義によれば、共役ジエンモノマーから少なくとも一部得られ、30モル%よりも多い共役ジエンに由来する繰返し単位含有量を有するジエンエラストマーを使用することが好ましい。液体タイプのジエンエラストマーと比較して、本発明組成物のジエンエラストマーは、定義すれば、固体である。典型的には、その数平均分子量 (M
n)は、100000g/モルと5000000g/モルの間、さらに詳細には200000g/モルと4000000g/モルの間である。
【0024】
さらに好ましくは、上記(好ましくは不飽和の)ジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー(例えば、ブタジエン‐スチレン即ちSBR)、イソプレンコポリマーおよびそのようなエラストマーのブレンドによって形成される群から選択する。
さらにより好ましくは、本発明の組成物の不飽和ジエンエラストマーは、好ましくは、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエン‐イソプレンコポリマー(BIR)、スチレン‐イソプレンコポリマー(SIR)、スチレン‐ブタジエン‐イソプレンコポリマー(SBIR)およびこれらエラストマーのブレンドによって形成される群から選ばれるイソプレンエラストマーである。好ましくは、このイソプレンエラストマーは、天然ゴムまたは合成シス‐1,4‐ポリイソプレンである。
【0025】
上記不飽和ジエンエラストマー、特に、天然ゴムのようなイソプレンエラストマーは、エラストマーマトリックスの全てを、或いは、上記マトリックスが1種以上の他のジエンエラストマーまたは例えば熱可塑性タイプの非ジエンエラストマーを含む場合、上記マトリックスの質量による主要量(好ましくは50%よりも多く、さらに好ましくは70%よりも多くを含む)を構成し得る。換言すれば、また、好ましくは、本発明の組成物においては、不飽和(固形の)ジエンエラストマー、特に、天然ゴムのようなイソプレンエラストマーの含有量は、50phrよりも多く、より好ましくは70phrよりも多い。さらにより好ましくは、不飽和ジエンエラストマー、特に、天然ゴムのようなイソプレンエラストマーのこの含有量は、80phrよりも多い。
【0026】
1つの特定の実施態様によれば、上記不飽和ジエンエラストマーは、特に天然ゴムのようなイソプレンジエンエラストマーである場合、本発明のセルフシーリング組成物中に存在する唯一のエラストマーである。しかしながら、このイソプレンエラストマーも、他の可能性ある実施態様によれば、小質量含有量の他の(固形)エラストマーと組合せ得る;これらの他のエラストマーは、不飽和ジエンエラストマー(例えば、BRまたはSBR)、または飽和でさえのジエンエラストマー(例えば、ブチル)、或いはジエンエラストマー以外のエラストマー、例えば、熱可塑性スチレン(TPS)エラストマーのいずれかであり、例えば、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)、スチレン/イソブチレン/スチレン(SIBS)、スチレン/エチレン‐ブチレン/スチレン(SEBS)、スチレン/エチレン‐プロピレン/スチレン(SEPS)、スチレン/エチレン‐エチレン‐プロピレン/スチレン(SEEPS)ブロックコポリマーおよびこれらのコポリマーのブレンドによって形成される群から選ばれる。
【0027】
b) 炭化水素樹脂
用語“樹脂”は、本出願においては、当業者にとっては既知であるように、定義すれば、オイルのような液体可塑剤化合物とは対照的に、室温(23℃)で固体である熱可塑性化合物に対して使用される。
【0028】
炭化水素樹脂は、炭素と水素を本質的にベースとする当業者にとって周知のポリマーであり、特に、ポリマーマトリックス中で可塑剤または粘着付与剤として使用し得る。炭化水素樹脂は、使用する含有量において、真の希釈剤として作用するように、意図するポリマー組成物と本来混和性(即ち、相溶性)である。炭化水素樹脂は、例えば、R. Mildenberg、M. ZanderおよびG. Collin (New York, VCH, 1997, ISBN 3‐527‐28617‐9)による“Hydrocarbon Resins”と題した著作物に記載されており、その第5章は、炭化水素樹脂の特にゴムタイヤの用途に当てられている(5.5. "Rubber Tires and Mechanical Goods")。炭化水素樹脂は、脂肪族、脂環式、芳香族、水素化芳香族であり得、或いは脂肪族/芳香族タイプ、即ち、脂肪族および/または芳香族モノマーをベースとし得る。炭化水素樹脂は、石油系(その場合、石油樹脂としても知られている)または石油系でない天然または合成樹脂であり得る。
【0029】
炭化水素樹脂のガラス転移温度(T
g)は、好ましくは0℃よりも高く、特に20℃よりも高い(通常は、30℃と95℃の間)。
また、知られているとおり、これらの炭化水素樹脂は、これらの樹脂が加熱したときに軟化し、従って、成形することができる点で、熱可塑性樹脂とも称し得る。また、炭化水素樹脂は、軟化点または軟化温度(この温度において、例えば粉末形の生成物は膠質となる)によっても定義し得る。このデータは、概してかなり不十分に定義されている樹脂の融点と置き換わる傾向にある。炭化水素樹脂の軟化点は、一般に、T
gよりも約50〜60℃高い。
本発明の組成物においては、上記樹脂の軟化点は、好ましくは40℃よりも高く(特に40℃と140℃との間)、より好ましくは50℃よりも高い(特に50℃と135℃の間)。
【0030】
上記樹脂は、30phrと90phrの間の質量による量で使用する。30phrよりも低いと、パンク防止性能が、組成物の過剰の剛性のために、不十分であることが判明している。90phrよりも高いと、上記材料は、不十分な機械的強度を有し、しかも、その性能が高温(典型的には60℃よりも高い)において劣化するというリスクを伴う。これらの全ての理由により、上記樹脂の含有量は、好ましくは40phrと80phrの間、さらに好ましくは少なくとも45phrに等しく、特に45〜75phrの範囲内である。
【0031】
本発明の好ましい実施態様によれば、炭化水素樹脂は、下記の特徴の少なくとも任意の1つ、より好ましくは全てを有する:
・25℃よりも高いT
g;
・50℃よりも高い(特に50℃と135℃の間の)軟化点;
・400g/モルと2000g/モルの間の数平均分子量(M
n);および、
・3よりも低い多分散性指数(I
p) (I
p = M
w/M
n、式中、M
wは質量平均分子量であること思い起こされたい)。
【0032】
さらに好ましくは、この炭化水素樹脂は、下記の特徴の少なくとも任意の1つ、より好ましくは全てを有する:
・25℃と100℃の間(特に30℃と90℃の間)のT
g;
・60℃よりも高い、特に60℃と135℃の間の軟化点;
・500g/モルと1500g/モルの間の数平均分子量M
n;および、
・2よりも低い多分散性指数I
p。
【0033】
T
gは、規格ASTM D3418 (1999年)に従って測定する。軟化点は、規格ISO4625 (“RingおよびBall”の方法)に従って測定する。マクロ構造(M
w、M
nおよびI
p)は、立体排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定する:テトラヒドロフラン溶媒;35℃の温度;1g/lの濃度;1ml/分の流量;注入前に0.45μmの有孔度フィルターにより濾過した溶液;ポリスチレン標準を使用するムーア(Moore)較正;直列の3本WATERSカラムセット(STYRAGEL HR4E、HR1およびHR0.5);示差屈折計(WATERS2410)検出およびその関連操作ソフトウェア(WATERS EMPOWER)。
【0034】
そのような炭化水素樹脂の例としては、シクロペンタジエン(CPDと略記する)またはジシクロペンタジエン(DCPDと略記する)のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C
5留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C
9留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂およびこれらの樹脂のブレンドによって形成される群から選ばれる炭化水素樹脂を挙げることができる。上記のコポリマー樹脂のうちでは、さらに詳細には、(D)CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンコポリマー樹脂、(D)CPD/C
5留分コポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、テルペン/フェノール樹脂、C
5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、およびこれらの樹脂のブレンドによって形成される群から選ばれるコポリマーを挙げることができる。用語“テルペン”は、この場合、知られている通り、アルファ‐ピネンモノマー、ベータ‐ピネンモノマーおよびリモネンモノマーを包含する。好ましくは、リモネンモノマーを使用する;この化合物は、知られている通り、3種の可能性ある異性体の形を取り得る:L‐リモネン(左旋性鏡像体)、D‐リモネン(右旋性鏡像体)或いはジペンテン(右旋性鏡像体と左旋性鏡像体のラセミ体混合物)。適切なビニル芳香族モノマーは、例えば、スチレン;アルファ‐メチルスチレン;オルソ‐、メタ‐およびパラ‐メチルスチレン;ビニルトルエン;パラ‐tert‐ブチルスチレン;メトキシスチレン類;クロロスチレン類;ヒドロキシスチレン類;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンおよびC
9留分(または、より一般的にはC
8〜C
10留分)に由来する任意のビニル芳香族モノマーである。
【0035】
さら詳細には、(D)CPDホモポリマー樹脂、(D)CPD/スチレンコポリマー樹脂、ポリリモネン樹脂、リモネン/スチレンコポリマー樹脂、リモネン/(D)CPDコポリマー樹脂、C
5留分/スチレンコポリマー樹脂、C
5留分/C
9留分コポリマー樹脂、およびこれらの樹脂のブレンドによって形成された群から選ばれる樹脂を挙げることができる。
【0036】
上記樹脂は、全て当業者にとって周知であり、例えば、ポリリモネン樹脂の場合は、DRT社から品名“Dercolyte”として販売されている樹脂;C
5留分/スチレン樹脂またはC
5留分/C
9留分樹脂に関しては、Neville Chemical Company社から品名“Super Nevtac”として販売されている、またはKolon社から品名“Hikorez”として販売されている樹脂;或いは、Struktol社から品名“40 MS”または“60 NS”として、またはExxon Mobil社から品名“Escorez”(芳香族および/または脂肪族樹脂のブレンド)として販売されている樹脂が商業的に入手可能である。
【0037】
c) 液体可塑剤
本発明のセルフシーリング組成物は、60phrよりも少ない(換言すれば、0phrと60phrの間の)含有量でもって、“低T
g”可塑剤と称する23℃で液体である可塑剤をさらに含み、この可塑剤の機能は、特に、上記ジエンエラストマーと炭化水素樹脂を希釈することによってマトリックスを軟質化させることであり、特に“低温”セルフシーリング性能 (即ち、典型的には0℃よりも低い温度における性能)を改良することである。そのT
gは、定義すれば、−20℃よりも低く、好ましくは−40℃よりも低い。
【0038】
芳香族性または非芳香族性いずれかの任意の液体エラストマーまたは任意の増量剤オイル、即ち、より一般的にはエラストマー、特にジエンエラストマーに対するその可塑化特性について知られている任意の液体可塑剤を使用し得る。周囲温度(23℃)において、これらの可塑剤またはオイル類は、比較的粘稠であり、特にその性質からして室温で固体である炭化水素樹脂と対比して液体(即ち、注釈すれば、最終的にその容器の形に適合する能力を有する物質)である。
【0039】
特に適するのは、例えば、上述した特許文献US 4 913 209号、US 5 085 942号およびUS 5 295 525号に記載されているような、例えば、液体BR、液体SBR、液体IRまたは解重合天然ゴムの形の、典型的には300と90 000の間、より一般的には400と50 000の間の低数平均分子量(M
n)を有する液体エラストマーである。また、そのような液体エラストマーと下記で説明するようなオイル類とのブレンドも使用することができる。
【0040】
また、オイル増量剤、特に、ポリオレフィンオイル(即ち、オレフィン、モノオレフィンまたはジオレフィンの重合から得られるオイル);パラフィン系オイル、ナフテン系オイル(低または高粘度を有し、水素化または非水素化の);芳香族またはDAE (留出物芳香族系抽出物(distillate aromatic extract))オイル、MES (中度抽出溶媒和物(medium extracted solvate))オイル、TDAE(処理留出物芳香族系抽出物(treated distillate aromatic extract))オイル、鉱油、植物油(およびそのオリゴマー、例えば、ナタネ油、ダイズ油またはヒマワリ油)およびこれらオイル類の混合物から形成される群から選ばれるオイル増量剤も適している。
【0041】
1つの特定の実施態様によれば、ポリブテンタイプのオイル、例えば、特にポリイソブチレン(PIB)オイルを使用し得る;このオイルは、試験した他のオイル類、特に、通常のパラフィン系オイルと比較して、性質の優れた妥協点を示す。例えば、PIBオイルは、特に、Univar社から品名“Dynapak Poly”(例えば“Dynapak Poly 190”)として、BASF社から品名“Glissopal”(例えば“Glissopal 1000”)または“Oppanol”(例えば、“Oppanol B12”)として市販されている;パラフィン系オイルは、例えば、Exxon社から品名“Telura 618”として或いはRepsol社から品名“Extensol 51”として市販されている。
【0042】
また、液体可塑剤としては、エーテル、エステル、ホスフェートおよびスルホネート可塑剤、特に、エステルおよびホスフェートから選ばれる可塑剤が適している。好ましいホスフェート可塑剤としては、12個と30個の間の炭素原子を含むホスフェート可塑剤、例えば、リン酸トリオクチルリンを挙げることができる。好ましいエステル可塑剤としては、特に、トリメリテート、ピロメリテート、フタレート、1,2‐シクロヘキサンジカルボキシレート、アジペート、アゼレート、セバケート、グリセリントリエステルおよびこれらの化合物の混合物によって形成される群から選ばれる化合物を挙げることができる。上記トリエステルのうちでは、好ましいグリセリントリエステルとして、不飽和C
18脂肪酸、即ち、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびこれらの酸の混合物によって形成された群から選ばれる脂肪酸を主として(50質量%よりも多く、より好ましくは80質量%よりも多くにおいて)含むグリセリントリエステルを挙げることができる。さらに好ましくは、合成起原または天然起原(この場合は、例えば、ヒマワリまたはナタネ油)のいずれであれ、使用する脂肪酸は、50質量%よりも多くの、さらにより好ましくは80質量%よりも多くのオレイン酸を含む。高含有量のオレイン酸を含むそのようなトリエステル(トリオレート)は、タイヤトレッドにおける可塑剤として周知である;例えば、そのようなトリエステルは、特許出願WO 02/088238号(またはUS 2004/0127617号)に記載されている。
【0043】
上記液体可塑剤の数平均分子量(M
n)は、好ましくは400 g/モルと25 000g/モルの間、さらにより好ましくは800 g/モルと10 000g/モルの間である。過度に低いM
n値においては、可塑剤が組成物の外に移行するリスクが存在し、一方、過度に高いM
n値は、この組成物においては硬質になり過ぎる結果となり得る。1000g/モルと4000g/モルの間のM
n値が、意図する用途、特に、空気式タイヤにおける使用において優れた妥協点となることが判明している。
【0044】
液体可塑剤の数平均分子量(M
n)は、SECにより、既知の方法で測定する;試験標本を、先ず、約1g/lの濃度でもってテトラヒドロフラン中に溶解し、その後、溶液を、注入前に、0.45μmの有孔度を有するフィルターで濾過する。装置は、WATERS Allianceクロマトグラフである。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は1ml/分であり、系の温度は35℃であり、分析時間は30分である。商品名STYRAGEL HT6Eを有する2本のWATERSカラムセットを使用する。ポリマー試験標本溶液の注入容量は、100μlである。検出器は、WATERS 2410示差屈折計であり;クロマトグラフデータを処理するその関連ソフトウェアは、WATERS MILLENNIUMシステムである。算出した平均分子量を、ポリスチレン標準によって得た較正曲線と対比する。
【0045】
要するに、上記液体可塑剤は、好ましくは、液体エラストマー、ポリオレフィンオイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、DAEオイル、MESオイル、TDAEオイル、鉱油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤およびこれらの化合物の混合物から形成される群から選択する。より好ましくは、上記液体可塑剤は、液体エラストマー、ポリオレフィンオイル、植物油およびこれらの化合物の混合物から形成される群から選択する。
【0046】
当業者であれば、以下の説明および実施態様に照らして、上記セルフシーリン組成物の特定の使用条件、特に、使用することを意図するインフレータブル物品の使用に応じて液体可塑剤の量を調整することは可能であろう。
【0047】
好ましくは、上記液体可塑剤含有量は、5phr〜40phrの範囲内、より好ましくは10phr〜30phrの範囲内である。上記の最低値よりも低いと、上記エラストマー組成物は、ある種の用途において高過ぎる剛性を有するリスクに至り、一方、推奨する最高値よりも高いと、上記組成物が不十分な凝集力を有し且つセルフシーリング特性を悪化させるリスクが存在する。
【0048】
d) 架橋系
上記セルフシーリング組成物は、上記ジエンエラストマーを架橋するための系をさらに含み、この架橋系は、好ましくは、イオウをベースとする架橋系、換言すれば、いわゆる“加硫”系である。
好ましくは、上記イオウ系の加硫系は、加硫活性化剤として、グアニジン誘導体、即ち、置換グアニジンを含む。置換グアニジンは、当業者にとっては周知であり(例えば、WO 00/05300号参照)、挙げることのできる非限定的な例としては、N,N'‐ジフェニルグアニジン(DPGと略記する)、トリフェニルグアニジンおよびジ‐o‐トリルグアニジンがある。好ましくは、DPGを使用する。
【0049】
この加硫系においては、最適なセルフシーリング性能を得るために、イオウ含有量は、好ましくは0.1phrと1.5phrの間、特に0.2phrと1.2phrの間(例えば、0.2phrと1.0phrの間)であり;グアニジン誘導体の含有量は、それ自体で、0phrと1.5phrの間、特に0phrと1.0phrの間(特に、0.2〜0.5phrの範囲内)である。
【0050】
上記の系は、加硫促進剤が存在する必要はない。従って、好ましい実施態様によれば、上記組成物は、そのような促進剤を含有しないか、或いは、せいぜい1phr未満、より好ましくは0.5phr未満の促進剤を含有し得る。そのような促進剤を使用する場合、例としては、イオウの存在下にジエンエラストマーを加硫するための加硫促進剤として作用し得る任意の化合物(一次または二次促進剤)、特に、チアゾールタイプおよびその誘導体の促進剤、チウラムタイプ促進剤およびジチオカルバミン酸亜鉛を挙げることができる。
もう1つの有利な実施態様によれば、上記加硫系は、亜鉛または酸化亜鉛(これらは加硫活性化剤として知られている)を含有しなくてもよい。
【0051】
本発明のもう1つの可能性ある実施態様によれば、イオウ供与体をイオウ自体の代りに使用し得る。イオウ供与体は、当業者にとって周知である。典型的には、そのようなイオウ供与体の量は、好ましくは0.5phrと10phrの間、より好ましくは1phrと5phrの間であるように調整して、上記の好ましい等価イオウ含有量(即ち、0.1phrと1.5phrの間、特に0.2phrと1.2phrの間のイオウ)を得るようにする。
【0052】
硬化後、上述したような加硫系は、上記組成物に十分な固着力を与えるが、上記組成物を真に加硫させない:当業者にとって既知の通常の膨潤方法を使用して測定することができるその架橋量は、事実上、検出閾値に近い。
【0053】
e) 充填剤
本発明の方法に従って製造した組成物は、充填していないまたはほんの極めて僅かにしか充填していない、即ち、0〜30phr未満の充填剤を含有するという本質的特徴を有する。
用語“充填剤”とは、本明細書においては、補強用である(典型的には、好ましくは500nm未満、特に20nmと200nmの間の質量平均粒度を有するナノ粒子)或いは非補強用または不活性である(典型的には、1μmよりも大きい、例えば、2μmと200μmの間の質量平均粒度を有するマイクロ粒子)のいずれかの任意のタイプの充填剤を意味することを理解されたい。
【0054】
これらの充填剤は、補強用であるまたは補強用ではないのいずれであっても、本質的には、最終組成物に寸法安定性、即ち、必要とする最低の機械的一体性を付与するためのみである。充填剤が、エラストマー、特に、天然ゴムのようなイソプレンエラストマーに対して補強性であることが分っている場合は、上記組成物においては、幾分少なめの充填剤量を使用することが好ましい。
多過ぎる、特に、30phrよりも多い量は、もはや、最低限必要とする可撓性、変形性およびクリープ特性を達成することを不可能にする。これらの理由により、上記セルフシーリング組成物は、好ましくは0〜20phr未満、より好ましくは0〜10phr未満の充填剤を含有する。
【0055】
補強用充填剤として当業者に知られている充填剤の例としては、特に、カーボンブラックナノ粒子もしくは補強用無機充填剤、またはこれら2つのタイプの充填剤のブレンドを挙げることができる。
例えば、カーボンブラックとしては、タイヤにおいて一般的に使用される全てのカーボンブラック類、特に、HAF、ISAFまたはSAFタイプのブラック類(これらはタイヤ級ブラック類と称している)が適している。そのようなブラック類のうちでは、さらに詳細には、以下を挙げることができる:例えば、ブラック類N326、N330、N347、N375、N683またはN772のような300、600または700シリーズのカーボンブラック類(ASTM級)。適切な補強用無機充填剤は、特に、シリカ(SiO
2)タイプの鉱質充填剤、特に、450m
2/g未満、好ましくは30〜400m
2/gのBET表面積を有する沈降または焼成シリカである。
【0056】
非補強用または不活性充填剤として当業者に知られている充填剤の例としては、特に、以下を挙げることができる:天然炭酸カルシウム(チョーク)または合成炭酸カルシウム、合成または天然ケイ酸塩(例えば、カオリン、タルクまたは雲母)、粉砕シリカ、酸化チタン、アルミナまたはアルミノケイ酸塩のマイクロ粒子。層状充填剤の例としては、特に、グラファイト粒子を挙げることができる。着色用充填剤または着色充填剤は、上記組成物を所望の色合に応じて着色するのに有利に使用し得る。
【0057】
充填剤の物理的状態は、重要ではない;充填剤は、粉末、ミクロスフィア、顆粒またはビーズ、或いは任意の他の適切な濃密形の形状であり得る。勿論、用語“充填剤”は、種々の補強用および/または非補強用充填剤の混合物も意味することを理解されたい。
当業者であれば、本説明に照らして、上記セルフシーリング組成物の配合を如何にして調整して所望の特性レベルを達成し且つその配合を想定する特定の用途に適応化するかは、承知していることであろう。
【0058】
本発明の1つの特定の有利な実施態様によれば、充填剤が本発明の組成物中に存在する場合、その含有量は、好ましくは5phr未満(即ち、0phrと5phrの間)、特に2phr未満(即ち、0phrと2phrの間)である。そのような含有量は、本発明の製造方法にとって特に好ましいとともに、本発明のセルフシーリング組成物に優れたセルフシーリング性能を依然として付与していることが判明している。さらに好ましくは、0.5phrと2phrの間の含有量を、特に充填剤がカーボンブラックである場合は使用する。
【0059】
カーボンブラックのような充填剤を使用する場合、この充填剤は、工程a)において、即ち、上記不飽和ジエンエラストマーおよび炭化水素樹脂と同時に、或いは、工程b)において、即ち、架橋系と同時に導入し得る。極めて少割合の、好ましくは0.5phrと2phrの間のカーボンブラックは、上記組成物の配合と製造を、さらにまた、上記組成物の最終押出加工性をさらに改良することが判明している。
【0060】
f) 他の可能性ある添加剤
上記のベース構成成分は、それら自体で、上記セルフシーリング組成物が、上記セルフシーリング組成物を使用するインフレータブル物品に対するそのパンク防止機能を完全に満たすのに十分である。しかしながら、例えば、UV安定剤、酸化防止剤またはオゾン劣化防止剤、各種他の安定剤のような保護剤;および、上記セルフシーリング組成物を着色するのに有利に使用することのできる着色剤のような種々の他の添加剤を、典型的には少量で(好ましくは20phr未満、より好ましくは15phr未満の含有量でもって)添加し得る。上述したエラストマーとは別に、上記セルフシーリング組成物は、不飽和ジエンエラストマーと対比してこの場合も少質量画分として、例えば、不飽和ジエンエラストマーと相溶性の熱可塑性ポリマーのようなエラストマー以外のポリマーも含有し得る。
【0061】
II. 本発明の典型的な実施態様
II‐1. 上記セルフシーリング組成物の製造
1例として、マスターバッチの製造における工程a)は、好ましくは、
図1において概略的に示しているような配合用スクリュー押出機内で実施する。
【0062】
図1は、押出スクリュー(11) (例えば、シングルスクリュー)、ジエンエラストマー(固形物)用の第1定量ポンプ(12)、並びに樹脂(固形物または液体)および液体可塑剤用の少なくとも1基の第2定量ポンプ(13)を本質的に含む配合用スクリュー押出機(10)を示す。炭化水素樹脂と液体可塑剤は、炭化水素樹脂および液体可塑剤を既に前以って混合している場合は、例えば1基の定量ポンプによって導入し得、或いは炭化水素樹脂と液体可塑剤は、それぞれ、第2ポンプと第3ポンプによって別個に導入してもよい(第3ポンプは、図面を単純化するために
図1には示していない)。上記定量ポンプ(12、13)は、材料の計量および初期特性、計量機能(エラストマー、樹脂および液体可塑剤のための)の配合機能からの切り離しを常に制御してより良好なプロセス制御をもたらしながら、圧力を上昇させるのにも使用する。
【0063】
上記押出スクリューによって押し進められる生産物は、スクリュー回転によってもたらされる極めて高い剪断下に緊密に配合され、そのようにしてミキサーを通って、例えば、“チョッパー・ホモジナイザー(chopper‐homogenizer)”と称する部分(14)まで前進し、このゾーンの後、そのようにして得られた最終マスターバッチ(15)は、矢印方向(F)に進行し、最後に、生成物を所望寸法に押出加工するためのダイ(16)によって押出される。
【0064】
そのように押出加工されて、即使用可能なマスターバッチは、その後、架橋系および任意構成成分としての充填剤を導入するための、例えば、2本ロール開放ミルタイプの開放ミキサーに移し、冷却する;該開放ミキサー内の温度は、100℃よりも低く、好ましくは80℃よりも低く、さら好ましくは上記樹脂の軟化点よりも低く保つ。有利には、上記開放ミルのロールを、例えば、循環水によって40℃よりも低い、好ましくは30℃よりも低い温度に冷却して、上記組成物のミキサー壁へのあり得る望ましくない粘着を回避する。
【0065】
押出装置(10)によるマスターバッチ生産物を直接形成させて、上記開放ミキサーへの輸送および/または上記開放ミキサー内への導入を容易にすることは可能である。また、2本ロール開放ミルに連続供給することも可能である。
上述した好ましい方法および特定の装置によって、セルフシーリング組成物は、満足し得る工業的条件下に、組成物のミキサー壁への望ましくない粘着によって器具を汚染するリスクを犯すことなく製造することが可能である。
【0066】
II‐2. 上記セルフシーリング組成物のパンク防止層としての使用
本発明の方法に従って製造したセルフシーリング組成物または材料は、固形である弾力性のコンパウンドであり、特に、その特定の配合により、極めて高い可撓性と変形性に特徴を有する。上記セルフシーリング組成物または材料は、任意のタイプの“インフレータブル”物品、即ち、定義によれば、空気によって膨張させたときにその使用可能な形状を有する任意の物品におけるパンク防止層として使用し得る。
挙げることのできるそのようなインフレータブル物品の例としては、ゴムボートおよびバルーン、またはゲームもしくはスポーツにおいて使用するボール類がある。
【0067】
上記セルフシーリング組成物は、ゴム製のインフレータブル物品、最終製品または半製品における、特に、二輪車タイプ、乗用車または産業用車両のような自動車用或いは自転車のような非自動車用のタイヤにおける、より詳細には、極めて高速で走行する傾向を有する乗用車用のタイヤまたは特に高内部温度条件下に走行および作動する傾向を有する重量貨物車両のような産業用車両用のタイヤにおけるパンク防止層として使用するのに特に良好に適している。
そのようなパンク防止層は、好ましくは、インフレータブル物品の内壁上に置いて内壁を完全にまたは少なくとも部分的に覆っている;しかしながら、そのような層は、インフレータブル物品の内部構造体に完全に一体化させてもよい。
【0068】
本明細書において説明するセルフシーリング組成物は、そのようなセルフシーリング層を有していないタイヤと比較して、極めて広いタイヤ操作温度範囲に亘って、転がり抵抗性に関する悪影響を実際に示さないという利点を有する。通常のセルフシーリング組成物と比較して、上記セルフシーリング組成物は、穿孔を塞ぐ速度を、特に穿孔物を後の段階で取除いたときに極めて顕著に改良する。
【0069】
1例として、添付図面2は、本発明に従うタイヤの半径断面を極めて略図的に示している(特定縮尺に準じていない)。
このタイヤ20は、クラウン補強材、即ち、ベルト25によって補強されたクラウン21、2つの側壁22および2つのビード23を有し、これらのビード23の各々は、ビードワイヤー24によって補強されている。クラウン21は、トレッド(この略図には示していない)が取付けられている。カーカス補強材26は、各ビード23内の2本のビードワイヤー24の周りに巻付けられており、この補強材26の上返し27は、例えば、タイヤ20の外側に向って位置しており、この場合、タイヤリム28上に取付けて示している。カーカス補強材26は、それ自体知られている通り、コード、いわゆる“ラジアル”コード、例えば、繊維または金属コードによって補強されている少なくとも1枚のプライからなる、即ち、これらのコードは、実際上、互いに平行に配置されて一方のビードから他方のビードに延びて円周正中面(2つのビード23の中間に位置しクラウン補強材25の中央を通るタイヤの回転軸に対して垂直の面)と80°と90°の間の角度をなしている。
【0070】
タイヤ20は、その内壁が、2つの層(30a、30b)を含む多層ラミネート(30)を含み、このラミネートが、その第1層(30a)のためにセルフシーリング性であり、その第2層(30b)、例えばブチルゴムをベースとする層のために気密性であることに特徴を有する。2つの層(30a、30b)は、上記タイヤの実質的に内壁全体を覆い、一方の側壁から他方の側壁に、上記タイヤが装着位置にあるときの少なくともリムガターのレベルまで延びている。上記ラミネートを、セルフシーリング第1層(30a)が、他の層(30b)に対して上記タイヤの半径方向の最外部であるような形で配置する。換言すれば、セルフシーリング層(30a)は、タイヤ20の内部空洞29の側面上の気密層(30b)を覆っている。
【0071】
この例においては、層30b (0.7〜0.8mmの厚さを有する)は、ブチルゴムをベースとし、“内部ライナー”用の通常の配合を有する;この内部ライナーは、通常、通常のタイヤにおいて、カーカス補強材をタイヤの内部空間からの空気の拡散から保護することを意図する上記タイヤの半径内面を形成している。従って、この気密層30bは、タイヤ20を膨張させ圧力下に保つのを可能にしている。そのシーリング特性は、比較的遅い圧力低下速度を担保するのを可能にしており、タイヤの膨張を、正常な操作状態において、十分な時間、通常は数週間または数ヶ月間保つのを可能にしている。層30a自体は、本発明に従う方法を使用して製造したセルフシーリング組成物からなり、上記3つの本質的構成成分、即ち、天然ゴム(100phr)、約50phrの炭化水素樹脂(約90℃の軟化点を有するExxon Mobil社からの“Escorez 2101”)および約15phrの液体ポリブタジエン(約5200のM
nを有するSartomer Cray Valley社からの“Ricon 154”)を含む。
【0072】
より正確には、上記セルフシーリング組成物は、
図2(既に上記で説明している)に略図的に示すようにしてシングルスクリュー(40L/D)押出機を使用し製造した。3種類のベース構成成分(NR、樹脂および液体可塑剤)を、上記樹脂の軟化点よりも高い温度(約100℃と130℃の間)で配合した。使用した押出機は、2種の異なる供給口 (ホッパー) (NR用の1つ、約130℃〜140℃の温度で前以って一緒に混合した樹脂と液体可塑剤用の他の1つ)および樹脂/液体可塑剤ブレンド用の加圧液体注入ポンプ(約100〜110℃の温度で注入する)を有していた。エラストマー、樹脂および液体可塑剤をそのように緊密に配合した場合、組成物の望ましくない粘着は極めて有意に低減されていることが判明した。
【0073】
上記押出機は、上記マスターバッチを所望寸法に押出加工し、他の構成成分、即ち、イオウ(例えば0.5phrまたは1.2phr)とDPG(例えば0.3phr)をベースとする加硫系およびカーボンブラック(1phrの含有量を有するN772)の、+30℃よりも低く維持した低温(ロールを循環水で冷却することにより)での最終混入のための2本ロール開放ミル内に入れるためのダイを備えていた。
従って、層30bとタイヤの空洞29との間に置かれた層30aは、タイヤに、偶発的穿孔による圧力減に対する有効な保護を、これらの穿孔を自動的にシーリングすることによって付与している。
【0074】
試用においては、乗用車タイプの205/55R16サイズを有するMichelin社“Energy 3”ブランドのタイヤを試験した。タイヤの内壁(気密層30bを既に含む)を、3mmの厚さを有する上記のセルフシーリング層(30a)で被覆し、その後、各タイヤを加硫した。
装着し、膨張させたときのタイヤの1本に、8個の直径5mmの開孔を、ポンチを使用して、一方ではトレッドとクラウンブロックを貫通して、他方では側壁を貫通して生じさせ、ポンチは直ぐに取除いた。
予期に反して、このタイヤは、回転を止めるまで1500kmよりも長い距離を、圧力を低下させることなく400kgの公称荷重下の回転ドラム上での150km/時の回転に耐えていた。
【0075】
もう1本のタイヤにおいて、試験を同じ方法で実施したが、今度は、開孔事物を1週間その場に放置した。同じ優れた結果が得られた。
セルフシーリング組成物を有してなく、また、上記と同じ条件下においては、そのようにして開孔させたタイヤは、1分未満でその圧力を喪失し、回転するのに完全に不適切となった
【0076】
他の耐久試験を、上述のタイヤと同一であるが、750kmを150km/時の速度で走行させ、今回はポンチ(punch)をその穿孔内に残存させた本発明に従うタイヤにおいて実施した。ポンチを取除いた後(或いは回転の結果としてポンチが排出した後)、本発明のこれらのタイヤは、上記と同じ条件(移動距離:1500km、速度:150km/時、公称荷重:400kg)において、回転ドラム上での回転に圧力低下なしに耐えていた。