(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱板の加熱面は、該加熱面全体として平面視で中央部分が前記枠材側に向けて突となる球面状の凸面が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱板加熱による熱成形装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の熱成形装置では、以下のような問題があった。
すなわち、従来の熱板によるシート加熱では、
図9(b)のように、加熱後にシート91を加熱面90から剥離させると、シート表面全体に加熱面に設けられる真空穴92の吸引穴跡(
図9に示す符号91a)が転写してしまう。そのため、シートの透明度や輝度が低下して意匠性及び商品価値が損なわれるという問題があった。
【0006】
また、従来の熱板は、加熱面の全面にわたって複数の真空穴が設けられており、シートを加熱面に吸着させる際に、それら全ての真空穴より同時にエアーを真空吸引することで、シート全面を同時に加熱面に吸着させる構成となっている。しかし、エアーが完全に抜けない状態のまま真空穴を軟化されたシートによって塞いでしまうおそれがある。
そのため、エアーの逃げ場がなくなってしまい、加熱面とシートとの間にエアー溜まりが発生し、シートにエアー溜まりによるアバタが生じて輝度を低下させるうえ、シートに加熱むらが生じるという問題があり、その点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、加熱によるシート軟化時のエアー溜まりの発生を抑制することで、シートの特性である透明度や輝度を極力低下させずに成形することができる熱板加熱による熱成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る熱板加熱による熱成形装置では、熱成形対象となる基材の収容領域を有する枠材と、
平面視で四角形状の加熱面
、及び外周縁
から前記枠材側に向けて突出する枠部を有し、該枠部が該枠材の枠縁部に対して当接可能とした熱板と、を備え、前記枠材の枠縁部と前記熱板の外周縁との間にシートを配置させ、該シートを熱成形して金型賦形または前記基材に接着させる熱板加熱による熱成形装置であって、 前記熱板
には、前記加熱面
における前記枠部とのコーナー部であって、平面視で前記熱板の外周部に開口する真空穴が設けられ、前記シートの前記加熱面に対する吸着前において、前記シートと前記加熱面との間の少なくとも一部に隙間を有することを特徴としている。
【0009】
本発明では、枠材の枠縁部と熱板の外周縁との間にシートを配置させ、真空穴を使用して吸引することで熱板にシートが吸着されて所定温度に加熱される。その後、熱板とシートとの間を大気開放し又は加圧し、シートを挟んだ上下の空間に圧力差を生じさせることで、加熱により軟化したシートが熱板の加熱面から剥離し、基材側へ向けて移動することにより基材の表面に押し付けられて金型賦形または基材接着される。
この場合、熱板の真空穴の開口が加熱面の外周
部の位置であるので、その開口部分で吸引されるシートの吸引部分の位置が成形品(基材)の意匠を妨げない位置とすることが可能となる。そのため、シート表面に真空穴の吸引穴跡が転写されても、そのシート上の吸引穴跡が金型賦形又は基材接着された熱成形品の意匠面にならず、成形品の透明度や輝度の低下を抑えた成形が可能となる。
【0010】
また、本発明の熱成形装置では、シートの加熱面に対する吸着前において、シートと加熱面との間の少なくとも一部に隙間を有し、且つ熱板の真空穴が加熱面の外周
部の位置に設けられているので、この真空穴を使用して吸引したときに、加熱面とシートとの間のエアーが加熱面の外周
部側に向けて流れて真空穴より吸い込まれる。すなわち、真空穴が加熱面の外周
部の位置のみに配置され、加熱面の中央部分に配置されていないので、例えば真空穴が加熱面の外周
部全周にわたって均等に設けられている場合に、シートが加熱面の中心部分から外周
部側に向かうに従い漸次、放射状に吸着させることができる。
そのため、従来のようにエアーの逃げ場が無くなることによるエアー溜まりの発生を抑制することができ、シート全面にわたって均一に加熱することができ、加熱むらの無い状態で軟化させることができる。
したがって、加熱により軟化したシートに生じるエアー溜まりに伴うアバタを低減することができ、金型賦形又は基材接着された熱成形品の意匠性が損なわれず、品質が低下するのを抑えることができる。
【0011】
また、本発明に係る熱板加熱による熱成形装置では、前記熱板の加熱面は、粗さ加工が施されていることが好ましい。
【0012】
本発明では、シートの透明度や輝度を低下させない程度で、且つ加熱面とシートとの間にエアー溜まりが生じない程度の適度な粗さ加工を加熱面に施すことで、加熱面に付着したシートの間にその粗さの凹凸による微細な流通部が形成される。そのため、吸引時にその流通部を通じて加熱面とシートとの間のエアーが真空穴に吸い込まれるため、シートが加熱面に吸着した後でもエアーを吸引することが可能となり、より確実にエアーを逃がすことができる。さらに、加熱面に粗さ加工を施すことで、粗さの微細な凹凸により軟化したシートを加熱面から離し易くなる利点がある。
【0013】
また、本発明に係る熱板加熱による熱成形装置では、前記熱板の加熱面には、耐熱性と離型性を有する表面処理が全面にわたって施されていることが好ましい。
【0014】
本発明では、シートが加熱により軟化して加熱面に密着していても、加熱面が全面にわたって耐熱性、且つ離型性を有するので、加熱後に真空穴による吸引を停止したときに、シートを加熱面から直ぐに且つ均一に剥離させることができる。そのため、加熱面から剥離したシート全体を均一に、且つ同時に基材に向けて移動させることができ、基材に対するシートの位置ずれを抑えて金型賦形又は基材接着を行うことができ、成形品の品質の低下を防ぐことができる。
【0015】
また、本発明に係る熱板加熱による熱成形方法では、前記熱板の加熱面は、該加熱面全体として平面視で中央部分が前記枠材側に向けて突となる球面状の凸面が形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明では、熱板の加熱面が球面状の凸面となっているので、加熱面の外周部に設けられる真空穴で吸引した際に、加熱面とシートとの間のエアーがその凸面に沿って真空穴側に移動し易くなり、エアー溜まりの発生をより確実に防ぐことができる。
また、この場合には、凸面の曲率を利用してシートが線膨張により伸び、その伸びによって余った部分が加熱面の外周側に形成されるシートとの隙間に逃げて加熱面に吸着されるため、エアー溜まりの無い状態で加熱することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の熱板加熱による熱成形装置によれば、加熱によるシート軟化時のエアー溜まりの発生を抑制することで、シートの特性である透明度や輝度を極力低下させずに成形することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態による熱板加熱による熱成形装置について、図面に基づいて説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態による熱板加熱による熱成形装置1は、基材10にシート4を接着する被覆成形に用いられる。
熱成形装置1は、基材10を収容可能な空間(収容領域R)を有する下枠2と、この下枠2の枠上縁部2aに対して当接可能な当接面3aを有する熱板3と、を備えている。下枠2と熱板3との間に樹脂製のシート4を配置させ、そのシート4を加熱して基材10に接着させる熱成形を行う構成となっている。ここで、基材10は、シート4の接着により熱成型品となり、熱成形装置1において、基材治具11によって保持されている。
なお、熱成形装置1としては、被覆成形に限らずに、シートを金型形状に成形する真空成形や圧空形成など熱成形全般の工法が適用対象とされる。
【0021】
下枠2と熱板3とは上下に配置されており、熱板3は下枠2に対して上側に配置されている。
下枠2は、金属製の部材からなり、平面視で四角形状をなす周壁部21で囲われた前記収容領域Rを有し、底部22の周壁部21側には収容領域Rに連通する多数の下枠側通気孔23、23、…が形成されている。これら下枠側通気孔23は、真空ポンプ51を備えた真空タンク5に接続されている。成形時には、真空ポンプ51を駆動させて真空吸引することで収容領域Rを減圧することができる。
下枠2は、枠上縁部2aと熱板3の当接面3aとの間でシート4の外周部4aを挟持して固定することが可能となっている。つまり、下枠2と熱板3との間にシート4を挟持した状態において、シート4を挟んだ上下の下枠2側の収容領域Rと、熱板3側の空間(後述する隙間S)とがシート4によって隔離されている。
なお、下枠2は、床上をスライド可能な架台(図示省略)に設けられており、シート4の供給位置と熱板3の下側の成形位置との間で進退可能となっている。
【0022】
熱板3は、下方から見た平面視で外周縁に枠部31を有し、その枠部31の下面が前記当接面3aとなり、この当接面3aよりも上側に凹んだ位置に滑らかな平面状をなす加熱面3bを有している。そして、熱板3は、下枠2に対して近接離反するように上下方向に移動可能に設けられ、下方に移動させたときに当接面3aが下枠2の枠上縁部2aに密接して配置される。
ここで、加熱面3bの凹み寸法、すなわち当接面3aと加熱面3bとの高さ寸法は、例えば1〜10mmとされる。この高さ寸法は、上述したように下枠2の枠上縁部2aと熱板3の当接面3aとの間に挟持されたシート4の上方に、加熱面3bとの間に形成される隙間Sに相当する。
【0023】
熱板3は、上面側に複数のヒーター(図示省略)が設けられ、加熱面3bの温度として、例えば一般的な熱可塑性シートの軟化温度範囲で80〜250℃に加熱される。
また、熱板3には、
図2及び
図3に示すように、加熱面3bの枠部31寄りの位置に熱板側通気孔32(真空穴)が複数設けられている。熱板側通気孔32は、穴開け加工により熱板3に形成され、下方から見た平面視で四角形状の加熱面3bの四隅の角部と各辺の中央部の計8箇所に設けられ、それぞれ加熱面3bに開口している。
これら熱板側通気孔32は、加熱面3bで真空吸引する真空ポンプ51を備えた真空タンク5と、コンプレッサ61による圧縮空気を貯める加圧タンク6とに接続されている。真空タンク5を設けることにより、減圧ロスを小さくすることができる。
【0024】
なお、真空ポンプ51及び真空タンク5は、下枠側通気孔23に接続される真空ポンプと共通したものを使用することができる。このような減圧・加圧手段を設けることで、熱成形時には、真空状態に維持された真空タンク5を開放して下枠2側から真空吸引したり、加圧タンク6より圧縮空気を供給して加熱面3bから収容領域R側に向けて加圧することが可能な構成となっている。
ここで、真空タンク5を設けずに、真空ポンプ51の駆動によって直接吸引させることで真空度を高めるようにしてもよい。
【0025】
熱板3の加熱面3bは、耐熱性と離型性を兼ねた表面処理と表面粗さ加工が施されている。表面粗さ加工として、周知のシボ加工などを採用することができる。例えば、シボ加工を有し、加熱面3bの平滑度が低い場合の粗さは、10μm以下とされる。なお、比較として、シボ加工が無く、加熱面3bの平滑度(輝度)が高い場合の粗さは、0.5μm以下とされる。
【0026】
また、加熱面3bの表面処理として、例えばテフロン(登録商標)加工、フッ素加工、離型剤、粉末などが挙げられる。
【0027】
基材10の表面に接着されるシート4は、外周部4aが下枠2の枠上縁部2aと熱板3の当接面3aとの間に挟持され、水平状態で固定される。シート4の基材10側(下面4b)が接着層となっており、下面4bと基材10との間には隙間を有した状態となっている。なお、基材10と熱板3(シート4)との間の隙間は、例えば5mm程度あれば成形可能であり、この隙間を小さくすることにより下枠2の凹部(収容領域R)を最小限にすることができる。
【0028】
そして、熱成形装置1は、下枠2と熱板3とをシート4を挟んで密接させた状態で、熱板3によって吸着・加熱し、これらの動作開始から所定時間後に熱板3による吸着動作を停止し、熱板3とシート4との間を大気開放又は加圧する制御が行われることになる。
【0029】
次に、上述した熱成形装置1を用いて基材10にシート4を被覆接着する熱成形方法について図面に基づいて説明する。
先ず、
図1に示すように、収容領域Rの基材治具11に基材10がセットされた下枠2の枠上縁部2aに対してシート4を載せた状態で設け、熱板3を下降させて当接面3aで枠上縁部2aとの間でシート4を挟持する。すなわち、下枠2の枠上縁部2aに収容領域Rの開口を塞ぐようにしてシート4を配置させた後、熱板3の枠部31を枠上縁部2aに対してシート4を介在させた状態で当接するまで熱板3を下方に移動させる。このとき、シート4は、熱板3の加熱面3bに対して全面にわたって一定の隙間をあけて配置され、その外周部4aが下枠2と熱板3とによって挟持された状態で保持される。
【0030】
続いて、
図4に示すように、真空タンク5を開放して熱板側通気孔32を介して真空吸引(矢印P1方向)することにより、熱板3とシート4との間の隙間Sを減圧し、熱板3の加熱面3bにシート4を吸着させて加熱する。このとき、熱板側通気孔32は、
図3に示すように加熱面3bの外周部、すなわち枠部31とのコーナー部に配置されているので、隙間S内のエアーは、減圧により加熱面3bの外周部に向かって流れ熱板側通気孔32から逃げることになる。そのため、シート4は、
図5(a)に示すように、平面視で加熱面3bの中心側から外周側に向けて吸着され、
図5(b)に示すように、最後に加熱面3bの外周部分(熱板側通気孔32の開口部32a)にシート4の外周部4aが吸着される。
なお、シート4の加熱面3bへの吸着時には、加圧タンク6を開放して下枠2の下枠側通気孔23を介して収容領域R(シート4の下側の空間)を加圧するようにしてもよく、これによりシート4の吸着を促進することができる。
【0031】
そして、
図6に示すように、シート4の加熱中の適宜なタイミングで、下枠2側に接続する真空タンク5を開放して熱板側通気孔32を介してシート4が下方に移動する方向(矢印P2方向)へ真空吸引し、シート4の下側の収容領域Rのエアーを矢印E2方向に吸引して減圧し、高真空度状態にする。
【0032】
次に、熱板3に吸着されたシート4が所定温度に加熱された後に、真空吸引を止め熱板3とシート4との間の減圧動作を停止して大気開放することで、シート4を挟んだ上下の空間に圧力差を生じさせる。これにより、加熱により軟化したシート4が熱板3の加熱面3bから剥離し、下枠2の基材10側(矢印E2方向)に向けて移動して基材10の表面に押し付けられて接着し、成形品が完成する。
【0033】
ここで、基材10に接着したシート4において、熱板側通気孔32の開口部32aが当たる部分(吸引部分4A)が外周部に位置し、成形品の意匠面を妨げない位置となる。
図6では、吸引部分4Aが、下枠側通気孔23の開口部23aから外周部4aの間に位置し、カットされる部分となっている。
【0034】
その後、熱板3を上方へ移動させるとともに、下枠2を横移動させて熱板3の下方位置より移動させ、収容領域R内の成形品(基材10)を取り出すことで、一連の成形動作が完了する。
このように成形される本実施の形態の熱成形装置1では、基材10を自動供給することによって、ロールシートによる連続成形の対応が可能となる。
【0035】
なお、シート4の加熱後は、大気開放だけではなく、加圧タンク6を開放して熱板側通気孔32を介して下枠2側へ向けて加圧するようにしてもよい。つまり、
図4に示す熱板側通気孔3に接続される真空タンク5を加圧タンク6に切り替え、熱板側通気孔32より圧縮空気を噴出させて加圧することで、基材10に対するシート4の押付け力(接着力)を大きくすることができる。
【0036】
次に、上述した熱成形装置1の作用について、図面に基づいて説明する。
本実施の形態では、
図1に示すように、熱板3の熱板側通気孔32の開口部32aが加熱面3bの外周
部の位置であるので、その開口部分で吸引されるシート4の吸引部分の位置が成形品の意匠を妨げない位置となる。そのため、シート表面に熱板側通気孔32の吸引穴跡4Aが転写されても、そのシート4上の吸引穴跡4Aが熱成形品の意匠面にならず、成形品の透明度や輝度の低下を抑えた成形が可能となる。
【0037】
また、本実施の形態の熱成形装置1では、シート4の熱板3の加熱面3bに対する吸着前において、シート4と加熱面3bとの間に隙間Sを有し、且つ熱板側通気孔32が加熱面3bの枠部31寄りの位置に設けられているので、この熱板側通気孔32を使用して吸引したときに、加熱面3bとシート4との間のエアーが加熱面3bの外周
部側に向けて流れて熱板側通気孔32より吸い込まれる(
図5(a)、(b)参照)。すなわち、熱板側通気孔32が加熱面3bの外周
部の位置のみに配置され、加熱面3bの中央部分に配置されていないので、本実施の形態のように熱板側通気孔32が加熱面3bの外周
部全周にわたって均等に設けられている場合に、シート4が加熱面3bの中心部分から外周
部側に向かうに従い漸次、放射状に吸着させることができる。そのため、従来のようにエアーの逃げ場が無くなることによるエアー溜まりの発生を抑制することができ、シート4全面にわたって均一に加熱することができ、加熱むらの無い状態で軟化させることができる。
したがって、加熱により軟化したシート4に生じるエアー溜まりに伴うアバタを低減することができ、基材接着された熱成形品の意匠性が損なわれず、品質が低下するのを抑えることができる。
【0038】
また、本実施の形態では、シート4の透明度や輝度を低下させない程度で、且つ加熱面3bとシート4との間にエアー溜まりが生じない程度の適度な粗さ加工を加熱面3bに施すことで、加熱面3bに付着したシート4の間にその粗さの凹凸による微細な流通部が形成される。そのため、吸引時にその流通部を通じて加熱面3bとシート4との間のエアーが熱板側通気孔32に吸い込まれるため、シート4が加熱面3bに吸着した後でもエアーを吸引することが可能となり、より確実にエアーを逃がすことができる。さらに、加熱面3bに粗さ加工を施すことで、粗さの微細な凹凸により軟化したシート4を加熱面3bから離し易くなる利点がある。
【0039】
また、本実施の形態では、シート4が加熱により軟化して熱板3の加熱面3bに密着していても、加熱面3bが全面にわたって耐熱性、且つ離型性を有するので、加熱後に熱板側通気孔32による吸引を停止したときに、シート4を加熱面3bから直ぐに且つ均一に剥離させることができる。そのため、加熱面3bから剥離したシート4全体を均一に、且つ同時に基材10に向けて移動させることができ、基材10に対するシート4の位置ずれを抑えて接着を行うことができ、成形品の品質の低下を防ぐことができる。
【0040】
上述のように本実施の形態による熱板加熱による熱成形装置では、加熱によるシート軟化時のエアー溜まりの発生を抑制することで、シート4の特性である透明度や輝度を極力低下させずに成形することができる効果を奏する。
【0041】
以上、本発明による熱板加熱による熱成形装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では、熱板3の加熱面3bが平面形状であるが、これに限定されることはなく、
図7及び
図8に示すように、加熱面全体として平面視で中央部分が下枠側に向けて突となる球面状の凸面が形成された加熱面3bであってもよい。
【0042】
例えば、
図7(a)、(b)に示す第1変形例による熱成形装置の熱板3Aは、凸面状の加熱面3bの中央部分が枠部31の当接面3aよりも下方に突出している。つまり、下枠2と熱板3Aに挟持されたシート4は、熱板側通気孔32による真空吸引を行う吸着前の状態でも一部(平面視で中央部分4c)が加熱面3bに接した状態となっている。そのため、シート4と加熱面3bとの間の隙間Sは、シート4の外周部のみとなっている。
また、
図8(a)、(b)に示す第2変形例による熱成形装置の熱板3Bは、シート4の加熱面3bに対する吸着前において、シート4と凸面状の加熱面3bとの間に一定の隙間Sを有している。
【0043】
これら第1変形例及び第2変形例の場合には、熱板3A、3Bの加熱面3bが球面状の凸面となっているので、加熱面3bの外周部に設けられる熱板側通気孔32で吸引した際に、加熱面3bとシート4との間のエアーがその凸面に沿って熱板側通気孔32側に移動し易くなり、エアー溜まりの発生をより確実に防ぐことができる。
また、この場合には、凸面の曲率を利用してシート4が線膨張により伸び、その伸びによって余った部分が加熱面3bの外周側に形成されるシート4との隙間に逃げて加熱面3bに吸着されるため、エアー溜まりの無い状態で加熱することができる。
なお、この場合の凸面の曲率半径は、任意に設定することが可能であるが、エアーの流れが良好となることから、大きいほど好ましい。
【0044】
また、本実施の形態では、熱板側通気孔32の位置は、加熱面3bにおける枠部31とのコーナー部に開口部32aが位置する構成としているが、この位置、数量に限定されることはない。要は、加熱面3bの枠部31寄りの位置に開口する真空穴が設けられていれば良いのであって、平面視で前記コーナー部よりも中央寄りにずれた位置であってもかまわないし、その位置であれば数量に限定されることもない。
さらに、本実施の形態では熱板側通気孔32を穴開け加工により設けたものとしているが、これに制限されることはなく、例えば加熱面3bの外周部に沿うスリット状に形成される真空穴であってもかまわない。
【0045】
さらにまた、本実施の形態では、熱板3の加熱面3bに粗さ加工、及び耐熱性と離型性を有する表面処理を施した構成としているが、これらを省略することも可能であるし、粗さ加工及び表面処理のいずれか一方のみであっても良い。
【0046】
また、本実施の形態の熱成形装置では、上側に熱板3を配置し、下側に下枠2を配置した構成としているが、このような形態に限らず、上下を逆にして下側に熱板を配置する装置であっても良い。
【0047】
また、本実施の形態では基材10の表面にシート4を接着する場合を適用対象とし、下枠2の収容領域Rに基材10を収容しているが、これに制限されることはない。具体的には、基材10と下枠2とが一体的に設けられた金型を適用対象とした金型賦形を適用対象とすることも可能である。この金型賦形の場合には、加熱したシートが金型形状に成形される。
また、本発明において、基材に対するシートの「接着」とは、本実施の形態のようにシート自体を基材10に接着する貼り合わせ成形の場合のみならず、転写トリムレスによりシート最上層のキャリアフィルムを剥離させて加飾層のみを基材に転写させる場合も含んでいる。
【0048】
また、本実施の形態では、熱板3の上側にヒーターを設けているが、この形態に限定されることはなく、熱板3の内部にヒーターを埋め込む構造であってもかまわない。
【0049】
さらにまた、本実施の形態では、下枠2の下枠側通気孔23の位置を底部22の周壁部21側としているが、この位置に制限されることはない。例えば、上述した金型の場合には、金型を形成する凹凸部の凹部に連通する位置に通気孔を設けるようにしてもかまわない。
また、本実施の形態による下枠2、熱板3の形状、大きさ、シート4の固定手段などの構成は、任意に設定することができる。
【0050】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【解決手段】熱成形対象となる基材10の収容領域を有する下枠2と、加熱面3bの外周縁を下枠2の枠上縁部2aに対して当接可能とした熱板3とを備え、下枠2の枠上縁部2aと熱板3の外周縁との間にシート4を配置させ、シート4を熱成形して基材10に接着させる熱板加熱による熱成形装置であって、熱板3は、加熱面3bの外周縁寄りの位置に開口する熱板側通気孔32が設けられ、シート4の加熱面3bに対する吸着前において、シート4と加熱面3bとの間に一定の隙間Sを有する構成の熱成形装置1を提供する。