特許第5651279号(P5651279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5651279
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月7日
(54)【発明の名称】子宮内膜症の処置のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/57 20060101AFI20141211BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20141211BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20141211BHJP
【FI】
   A61K31/57
   A61K9/10
   A61P15/00
【請求項の数】21
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2006-525216(P2006-525216)
(86)(22)【出願日】2004年8月27日
(65)【公表番号】特表2007-509032(P2007-509032A)
(43)【公表日】2007年4月12日
(86)【国際出願番号】IB2004003103
(87)【国際公開番号】WO2005020880
(87)【国際公開日】20050310
【審査請求日】2007年8月27日
【審判番号】不服2012-19600(P2012-19600/J1)
【審判請求日】2012年10月5日
(31)【優先権主張番号】60/500,217
(32)【優先日】2003年9月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/526,355
(32)【優先日】2003年12月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506072941
【氏名又は名称】ミスコン トレイディング エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(72)【発明者】
【氏名】ゴビンダラジャン, ミルドゥバシィニ
【合議体】
【審判長】 村上 騎見高
【審判官】 増山 淳子
【審判官】 穴吹 智子
(56)【参考文献】
【文献】 Luigi Fedele et al., Use of a levonorgestrel−releasing intrauterine device in the treatment of rectovaginal endometriosis, 「Fertility and Sterility」, 2001, Vol.75(3), p.485−488
【文献】 Paolo Vercellini et al., Comparison of a levonorgestrel−releasing intrauterine deviceversus expectant management after conservative surgery for symptomatic endometriosis: a pilot study, 「Fertility and Sterility」, 2003/Aug, Vol.80(2), p.305−309
【文献】 W. M. Buckett et al., Endometriosis: critical assessment of current therapies, 「Current Obstetrics & Gynaecology」, 1998, Vol.8, p.204−208
【文献】 Paolo Vercellini et al., Progestogens for endometriosis: forward to the past, 「Human Reproduction Update」, 2003/July, Vol.9(4), p.387−396
【文献】 Pietro Affinito et al., Endometrial hyperplasia: efficacy of a new treatment with a vaginal cream containing natural micronized progesterone, 「Maturitas」, 1995, Vol.20, p.191−198
【文献】 特開平4−273822号公報
【文献】 特表2002−525268号公報
【文献】 特表2002−527380号公報
【文献】 特表2000−503980号公報
【文献】 「メルクマニュアル 第17版 日本語版」,1999, p.1960−1962
【文献】 英国特許第784659号明細書
【文献】 米国特許第4038389号明細書
【文献】 米国特許出願公開第2003/0114430号明細書
【文献】 特表平9−502724号公報
【文献】 特表2001−511773号公報
【文献】 国際公開第02/067991号
【文献】 Koshiro Obata et al., 「Nippon Rinsho」, 2001, Vol.59(9), p.1762−1767
【文献】 星合 昊, 「臨産婦」, 2003, Vol.57(4), p.462−464
【文献】 浅田 弘法ら, 「産婦人科治療」, 2001, Vol.83(4), p.443−450
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/57
A61P15/00
C07J7/00
CAPLUS/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病巣内投与による子宮内膜症の処置のための医薬の製造のための、オイルベースではないプロゲストゲン懸濁液の使用であって、
該懸濁液は10μmより大きい微粉化プロゲストゲン粒子を含み、かつ該プロゲストゲンはプロゲステロン、ゲストデンおよびノルゲスチメートから選択され、
病巣内投与とは、子宮内膜病巣の中へ医薬を直接注入することを意味し、一病巣あたり投与されるプロゲストゲンの量が、0.2〜5gである、使用。
【請求項2】
前記プロゲストゲンがプロゲステロンである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
一病巣あたり投与されるプロゲストゲンの量が、0.2〜5gのプロゲステロンである、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記医薬が、唯一の活性成分として前記プロゲストゲンを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
ロゲステロン、ゲストデンおよびノルゲスチメートから選択されるプロゲストゲンを活性成分として含み、該プロゲストゲンは、イルベースではない懸濁液として処方され、該懸濁液は10μmより大きい微粉化プロゲストゲン粒子を含み、一病巣あたり単回用量として0.2〜5gのプロゲストゲンが病巣内投与されるように用いられる、子宮内膜症の処置のための医薬であって、
病巣内投与とは、子宮内膜病巣の中へ医薬を直接注入することを意味する、医薬。
【請求項6】
懸濁液が、4と7.5との間のpHを有する、請求項5記載の医薬
【請求項7】
懸濁液が、53〜60cPの粘度を有する、請求項5記載の医薬
【請求項8】
前記プロゲストゲンがプロゲステロンである、請求項5に記載の医薬。
【請求項9】
前記プロゲストゲンが10μm〜100μmの粒径を有する、請求項5に記載の医薬。
【請求項10】
前記プロゲストゲンの濃度が、前記処方の1〜50%重量/体積である、請求項5に記載の医薬。
【請求項11】
前記プロゲストゲンが、唯一の活性成分である、請求項に記載の医薬。
【請求項12】
請求項5に記載の医薬;および

を含む、キット。
【請求項13】
前記針は、17〜20ゲージの針である、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記医薬の病巣内投与のための指示書をさらに含む、請求項12または13に記載のキット。
【請求項15】
前記医薬は、単回用量投与用の密閉容器内にある、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
製造物品であって、該物品は、包装材料、単回用量投与のために処方される請求項5に記載の医薬、および該医薬が病巣内投与による子宮内膜症の処置用であることを示すラベルを含む、製造物品。
【請求項17】
病巣内投与が、経膣的に行われる、請求項1に記載の使用。
【請求項18】
前記投与が、内視鏡的に行われるか、観血療法的投与を介して行われる、請求項1に記載の使用。
【請求項19】
投与が開腹術を介する、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記子宮内膜症が、外性子宮内膜症、子宮内膜腫、腺筋症、腺筋腫、子宮仙骨靱帯の腺筋症小結節、および/または子宮仙骨靱帯以外の子宮内膜症小結節である、請求項1に記載の使用。
【請求項21】
懸濁液が4と7.5との間のpHを有し、かつ53〜60cPの粘度を有する、請求項1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、子宮内膜症の処置ならびに関連する障害および状態の処置のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
子宮内膜症(endometriosis)は、非特許文献1において、「機能性子宮内膜組織が子宮腔の外側に存在する良性障害」と定義される。これは、時折、外性子宮内膜症(endometriosis externa)または外性腺筋症(adenomyosis externa)と称される。子宮内膜症組織は、月経周期中のホルモンレベルの変化に応じて子宮内膜症組織を増殖および分化させ得るエストロゲンおよびプロゲストゲンレセプターを含む。子宮内膜症は、通常は、腹部器官(一般に、卵巣、後部子宮広間膜、後部盲嚢および子宮仙骨靱帯(時折、子宮仙骨小結節を形成する))の腹膜表面または漿膜表面に限定される。まれな部位としては、小腸および大腸、尿管、膀胱、膣、外科的瘢痕、胸膜ならびに心膜の漿膜表面が挙げられる。子宮内膜症の臨床的徴候は、骨盤痛、骨盤内腫瘤、月経の変化、および不妊症であり、一方では腸または膀胱の病巣が、排便または排尿中の疼痛、腹部膨満、および月経に伴う直腸出血を生じ得る(ほとんどの子宮内膜移植物が月経中に出血し得る)。卵巣または器構造物の子宮内膜移植物は、子宮内膜腫(卵巣に局在する嚢胞状の塊)または付属器癒着を形成し得る。子宮内膜症は、伝えられるところによれば、活動的に生理のある25歳と44歳との間の女性のうちの10〜15%、および不妊女性の25〜50%に見出される。
【0003】
内性子宮内膜症(internal endometriosis)は、腺筋症または腺筋腫を含む。腺筋症(内性子宮内膜症(endometriosis interna)とも称される)は、子宮の筋組織(子宮筋層)への子宮内膜組織の侵襲である。病巣が全身性である場合、その病巣は腺筋症と呼ばれ、そして病巣が子宮のより小さい領域に局在化する場合、その病巣は腺筋腫と呼ばれる。ほんの少数の患者において、通常は出産年齢の後期に症状が引き起こされる。月経過多および中間期出血が最も一般的な病訴であり、それに続いて疼痛(特に、月経痛)、ならびに膀胱圧および直腸圧である。経口避妊ステロイドおよびGnRHアゴニストもしくはアンタゴニストは、有効であるとは見なされておらず、経口避妊は症状を悪化させ得る。外科手術(筋腫摘出術または子宮摘出術)のみが、治癒的であると見なされている。
【0004】
子宮内膜症に対する処置としては、子宮内膜移植物の増殖および活性を阻止するための卵巣機能の医学的抑制、可能な限り多くの子宮内膜組織の保存的外科的切除、これら2つの処置の組み合わせ、および子宮全摘出(通常は、卵巣およびファローピウス管の除去を伴う)が挙げられる。内科的治療は、例えば、エストロゲン/プロゲストゲン組み合わせ生成物(腹部の腫脹、乳房の圧痛、破綻出血、および深部静脈血栓を含む通常の副作用を伴う)、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニストもしくはアンタゴニスト(例えば、鼻腔内ナファレリンおよび皮下ロイプロリドもしくはデポーロイプロリド)(顔面潮紅、情動不安定、膣の乾燥、および骨の鉱物質除去を含む通常の副作用を伴うが、この処置は、通常は、骨量が減少する危険性があるため、6ヶ月未満に限定される)、アンドロゲン(例えば、経口ダナゾール)(例えば、体重増加、ざ瘡および多毛のような男性化効果を含む通常の副作用、ならびに情動不安定、萎縮性膣炎、肝機能障害および脂質への悪影響を含む他の副作用を伴う)、ならびにプロゲストゲン(例えば、経口メドキシプロゲステロンおよび/または筋肉内メドキシプロゲステロン)(破綻出血、体重増加、情動不安定、抑うつおよび萎縮性膣炎を含む通常の副作用を伴う)を含む、連続的な経口避妊の投与による、エストロゲン抑制を含む。
【0005】
例えば、Lambの特許文献1は、水、硫酸ナトリウム、第四級アンモニウム湿潤剤とグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールとの混合物(必要に応じて、親水性コロイドを含む)中に微粉化されたメドロキシプロゲステロンの200〜600g.L−1の懸濁液を含む、メドロキシプロゲステロン(INNでは、メドロキシプロゲステロンアセテートと称される)の水性非経口処方物を開示する。
【0006】
Labrieの特許文献2は、プロゲストゲンまたはアンドロゲン活性および低い男性化活性を有する他のステロイド誘導体(例えば、メドロキシプロゲステロン)の低用量投与による乳癌および子宮内膜癌、骨粗鬆症および子宮内膜症の処置のための方法を開示する。種々の投与経路が示唆され、皮下デポーが好ましく、50nmol.L−1未満(好ましくは、患者の応答に依存して、1nmol.L−1と10、15もしくは25nmol.L−1との間)の一定の血清濃度を達成することを意図する。
【0007】
Bolognaらの特許文献3は、ビヒクルとして架橋したポリカルボフィルを使用する膣送達によって達成される、比較的低い血清プロゲステロン濃度(例えば、1〜6μg.L−1)を使用する子宮内膜癌の予防のためのプロゲステロン治療の方法を開示する。
【0008】
特許文献4、特許文献5および特許文献6は、各々、細胞増殖性疾患(例えば、癌(子宮内膜癌を含む))を処置するための、ゴルジ装置阻害剤、生体適合性キャリア、および溶媒を含む薬学的処方物を記載する。ゴルジ装置阻害剤は、ブレフェルジンAであり、そして生体適合性キャリアは、キチンまたはキトサンである。上記処方物は、別の活性因子(メドロキシプロゲステロンを含む)を含み得、そして好ましい投与経路は、腫瘍内または病巣内(腫瘍に十分に接近した領域であって、その活性因子が腫瘍自体に対して所望の薬理活性を示す、領域として規定される)であると言われる。
【0009】
特許文献7および特許文献8は、各々、新脈管形成を阻害するが細胞傷害性ではない量で存在するゴルジ装置阻害剤(例えば、特許文献4に記載される因子)、溶媒および薬学的に受容可能なキャリアを含む処方物を開示する。これらは、抗脈管形成治療を必要とする患者を処置するためのものである。
【0010】
特許文献9は、子宮内膜症の処置のための皮下プロゲストゲンの使用を開示する。適切なプロゲストゲンは、メドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、ノルエチステロン、デソゲストレル(desogestrel)およびレボノルゲストレル(levonorgestrel)を含むと言われる。
【0011】
Ragavanらの特許文献10は、薬物(ステロイド(例えば、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲンおよび抗プロゲスチン)が挙げられる)の局所送達のための処方物、特に、微粒子状処方物もしくはナノ粒子状処方物中の微粉化ダナゾールを記載する。これらの処方物は、子宮内膜症、子宮内膜の細菌感染、癌および内分泌状態の処置のために使用され得る。
【特許文献1】米国特許第4,038,389号明細書
【特許文献2】米国特許第5,362,720号明細書
【特許文献3】米国特許第5,543,150号明細書
【特許文献4】国際公開第00/15766号パンフレット
【特許文献5】米国特許第6,287,602号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2002/0012703号明細書
【特許文献7】国際公開第02/28387号パンフレット
【特許文献8】米国特許出願公開第2002/0061303号明細書
【特許文献9】国際公開第00/21511号パンフレット
【特許文献10】米国特許第6,416,778号明細書
【非特許文献1】The Merck Manual、Merck & Co.,Inc.、Whitehouse Station、New Jersey、USA、第17版、第239章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これらの処置のうちで、望ましいほど有効なものはない。従って、子宮内膜症(外性子宮内膜症、子宮内膜腫、腺筋症、腺筋腫、子宮仙骨靱帯の子宮内膜症小結節もしくは腺筋症小結節、および他のところの子宮内膜症小結節(例えば、瘢痕子宮内膜症)を含む)に有効な医学的処置を開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(要旨)
子宮内膜症(外性子宮内膜症、子宮内膜腫、腺筋症、腺筋腫、子宮仙骨靱帯の子宮内膜症小結節もしくは腺筋症小結節、および他のところの子宮内膜症小結節(例えば、瘢痕子宮内膜症)を含む)の処置のための方法が提供される。その方法に従って、プロゲストゲンの有効量が病巣内投与される。
【0014】
従って、子宮内膜症(外性子宮内膜症、子宮内膜腫、腺筋症、腺筋腫、子宮仙骨靱帯の子宮内膜症小結節もしくは腺筋症小結節、および子宮内膜症小結節(例えば、瘢痕子宮内膜症)を含む)が、プロゲストゲンの病巣内投与(経膣投与、内視鏡投与または開腹術を介する観血療法的投与が挙げられるが、これらに限定されない)によって、有効に処置される。そのための組成物もまた、提供される。
【0015】
また、病巣内投与による子宮内膜症(外性子宮内膜症、子宮内膜腫、腺筋症、腺筋腫、子宮仙骨靱帯の子宮内膜症小結節もしくは腺筋症小結節、および他のところの子宮内膜症小結節(例えば、瘢痕子宮内膜症)を含む)の処置のための医薬が提供される。その医薬は、病巣内送達のために処方され、活性成分としてプロゲストゲンを含む。一般に、医薬は、活性成分の懸濁液、特に、オイルベースではない懸濁液である。他の処方物もまた意図される。医薬は、注入部位においてその保持を高め、かつそれに対するいかなる炎症応答も最小限にするように処方される。処方物はまた、病巣内投与による類線維腫の処置のため使用され得る。
【0016】
また、病巣内投与による子宮内膜症(外性子宮内膜症、子宮内膜腫、腺筋症、腺筋腫、子宮仙骨靱帯の子宮内膜症小結節もしくは腺筋症小結節、および他のところの子宮内膜症小結節(例えば、瘢痕子宮内膜症)を含む)の処置のための医薬の調製におけるプロゲストゲンの使用が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(詳細な説明)
(定義)
他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中の全体の開示にわたって参照されるすべての特許、特許出願、公開出願および公報、ウェブサイト上の資料、ならびに他の公開された資料は、他に定義されない限りその全体が参考として援用される。本明細書中で用語について複数の定義が存在する場合、本節のものが優先される。参照が、URLまたは他のそのような識別子もしくはアドレスに対してなされている場合、そのような識別子が変化され得、インターネット上の特定の情報が行き来し得るが、同等な情報が公知であり、例えばインターネットおよび/または適切なデータベースを検索することにより容易にアクセスされ得ることが理解される。それらに対する参照は、そのような情報の利用可能性および公的な普及を証明する。
【0018】
文脈が他に明らかに示さない限り、本願および特許請求の範囲において、単数形は複数形を包含する。従って、1つのプロゲストゲンに対する参照は、2つ以上のプロゲストゲンに対する参照を包含し、1つの賦形剤に対する参照は、2つ以上の賦形剤に対する参照を包含する、などである。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「子宮内膜症」とは、機能性子宮内膜組織が子宮の子宮内膜以外の身体内の位置(すなわち、子宮腔の外側)に存在するかまたは子宮の子宮筋層内に存在する、任意の非悪性障害をいう。本明細書での目的のために、病巣内に子宮筋層組織を示す状態(例えば、腺筋症/腺筋腫)もまた含む。従って、用語「子宮内膜症」は、The Merck Manualで定義されるような「子宮内膜症」を包含し、子宮内膜組織は、子宮腔(子宮仙骨小結節を含む)、子宮内膜種、付属器癒着、および腺筋症の外側に存在し、子宮内膜組織は、子宮の子宮筋層内に存在する。
【0020】
従って、本明細書中で使用される場合、子宮内膜症は、一般に外性子宮内膜症と称される状態(またはThe Merck Manualで定義される子宮内膜症)、子宮内膜腫、腺筋症、腺筋腫、子宮仙骨靱帯の子宮内膜症小結節もしくは腺筋症小結節、および他のところの子宮内膜症小結節(例えば、瘢痕子宮内膜症)、ならびに機能性子宮内膜組織が子宮内膜以外の位置に存在する任意の非悪性障害を含む。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「子宮内膜組織」は、子宮内膜症で見られる子宮内膜組織であり、すなわち、子宮の子宮内膜以外の位置に存在する子宮内膜組織である。子宮筋層組織とは、子宮の筋層における組織をいう。この組織はまた、本明細書中で処置される病巣にも生じる。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「処置」は、以下のうちの1つ以上を包含する:症状の頻度および/または重篤度を低下させること、症状および/またはその根底にある原因の排除、ならびに損傷の改善または治療。従って、子宮内膜症の処置は、例えば、子宮内膜症に罹患する女性が経する疼痛を軽減すること、および/または子宮内膜症の病巣の退行もしくは消失を引き起こすことを包含する。
【0023】
プロゲストゲンの「有効量」は、定義されるような「処置」行うために十分な量を意味する。処置は、望ましい治療効果とともに望ましくない効果(「副作用」)と関連し得、その結果、処方するかまたは処置を実行する開業医は、何が適切な「有効量」に相当するかの決定において、潜在的な利点 対 潜在的なリスクのバランスをとる。また、子宮内膜組織の量は、女性によって異なるので、投与されるべきプロゲストゲンの「有効量」は異なり得る。従って、正確な「有効量」を特定することは不可能である;しかし、本明細書中の開示を考慮して、熟練した開業医は、任意の個々の症例における適切な「有効量」が決定され得ることを判断し得る。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「病巣内投与」は、病理学的領域への投与、または病理学的領域内での投与を意味する。投与は、病巣への注入および/または既存の腔(例えば、子宮内膜腫における腔)への点滴注入によって行われる。本明細書中で提供される子宮内膜症に対する処置に関して、病巣内投与とは、子宮内膜組織またはそのような組織によって形成される嚢胞内での処置(例えば、嚢胞への注入による)をいう。「病巣内投与」はまた、プロゲストゲンが子宮内膜組織に直接作用するような子宮内膜組織に非常に近接する組織への投与を含むが、プロゲストゲンが体循環を通じて子宮内膜組織に作用する、子宮内膜組織から離れた組織への投与は含まない。病巣内投与または病巣内送達としては、経膣投与、内視鏡投与または観血療法的投与(開腹術を介する投与が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0025】
本明細書中で使用される場合、経膣とは、膣を通して行われるすべての手順(薬物送達を含む)をいい、膣内送達および経膣超音波検査法(膣を通じての超音波検査法)が挙げられる。
【0026】
本明細書中で使用される場合、被験体は、処置が意図される任意の哺乳動物、代表的には雌性の哺乳動物を含み、ヒトが挙げられる。被験体はまた、患者とも称される。
【0027】
本明細書中で使用される場合、単回用量投与のために処方されるは、組成物がさらなる改変(例えば、希釈)なしに直接投与され得ることを意味する。
【0028】
本明細書中で使用される場合、組み合わせとは、2つの項目間またはそれ以上の項目の間の関連をいう。
【0029】
本明細書中で使用される場合、組成物とは、任意の混合物をいう。それは溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0030】
本明細書中で使用される場合、流体とは、流動し得る任意の組成物をいう。従って、流体は、半固体、ペースト、溶液、水性混合物、ゲル、ローション、クリームおよび他の組成物の形態である組成物を包含する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、キットは、包装された組み合わせ物であり、必要に応じてその組み合わせ物の使用のための指示書ならびに/またはそのような使用のための他の反応物および成分を含む。
【0032】
(医薬)
上記方法における使用に適切な医薬は、活性成分としてプロゲストゲンを含む。代表的には、医薬は、唯一の活性成分としてプロゲストゲンを含む。医薬のプロゲストゲン含量は、病巣内投与に適切である一定量の医薬において有効量のプロゲストゲンを提供するような量である;例えば、1〜50%重量/体積、例えば、5〜25(例えば、約5〜20%(例えば、10%))重量/体積のプロゲストゲンの濃度。プロゲストゲンは、注入による病巣内投与に適切な粒径まで縮小される。プロゲストゲンが溶液または懸濁液で医薬に投与されるべきである場合、プロゲストゲンは、望ましくは微粉化される、例えば、99重量%が10μm未満の粒径を有し、かつ75重量%が5μm未満の粒径を有するような微粉度まで縮小される。微粉粒子は、任意の適切なサイズ(10μmより大きいサイズを含む)であり、かつ100μmの粒径までであり得る。
【0033】
プロゲストゲンは、例えば、プロゲステロン、デソゲストレル、エトノゲストレル(etonogestrel)、ゲストデン(gestodene)、レボノルゲストレル、メドロキシプロゲステロン、ノルエチステロン、ノルゲスチメート(norgestimate)およびノルゲストレルのうちの1つ以上であり得る。一病巣あたり投与されるプロゲストゲンの量は、代表的には、0.2〜5gのプロゲステロン(例えば、1〜2gのプロゲステロン)に対する活性に相当する。
【0034】
適切な賦形剤は周知であり、水性(もしくは水混和性の)溶媒および非水性溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な非水性溶液医薬は、溶媒を混合し、その溶媒中の残りの賦形剤およびプロゲストゲンを溶解させ、得られる溶液を滅菌して濾過し、そして滅菌容器に充填することによって調製される。
【0035】
既存の注入可能なプロゲストゲン(例えば、プロゲステロン)の調製物は、オイルベースであり、生殖器官組織には注入され得ない。本明細書中で提供される処方物は、オイルベースではなく、その結果、これらの処方物は、オイル調製物に関連する炎症プロセスを回避する。また、局部組織薬物濃度を増加させる微粒子の懸濁液を含む処方物も含まれる。
【0036】
上記医薬のための溶媒としては、水、C2〜6アルカノール、ジオールおよびポリオール(例えば、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール)が挙げられるが、これらに限定されない。賦形剤としては、溶解度エンハンサー(上で言及したアルカノール、ジオールおよびポリオール);緩衝液(例えば、酢酸塩、クエン酸塩およびリン酸塩 酸/塩 の組み合わせ);湿潤剤(界面活性剤)(例えば、第四級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、オクトキシノール、ポリポリソルベート、ポリオキシエチレン化ソルビタンエーテル)、ならびに他のアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤;キレート剤(例えば、エデト酸2ナトリウムおよび他のエデト酸塩);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸ならびにその塩およびエステル、BHA、BHT亜硫酸塩および亜硫酸水素塩、トコフェノールおよびそのエステル);抗菌剤(例えば、クロロブタノール、パラベンならびにその塩およびエステル、チメロサール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムであるが、これらに限定されない);等張剤(tonicifier)(例えば、電解質(例えば、塩化ナトリウム)、単糖類および二糖類(例えば、デキストロース))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
医薬(水性医薬を含む)はまた、増粘剤および懸濁剤(例えば、親水性コロイド(例えば、デキストラン、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコールおよびポビドン)、およびイオン性親水性コロイド(例えば、カルボキシメチルセルロールナトリウム))を含み得る。非水性医薬は、プロゲストゲンを完全に溶解し得る;しかし、そうでない場合には、非水性医薬は、増粘剤および懸濁剤も含み得る。適切な賦形剤およびそれらの処方物に対するさらなる指針は、当業者に公知である(例えば、「Remington:The Science and Practice of Phrmacy」、第20版、A.Gennaro編、Lippincott、Williams & Wilkins、Philadelphia、USAのような標準的な薬学の参考文献を参照のこと)。
【0038】
代表的な懸濁医薬(例えば、水性医薬)は、溶媒を混合し、その溶媒混合物中の残りの賦形剤を溶解させ、得られる溶液を(例えば、滅菌濾過により)滅菌し、すでに滅菌したプロゲストゲンを添加し、得られる懸濁液を製粉および/または混合して均一にし、その懸濁液を(例えば、加熱または濾過により)滅菌し、必要な場合には濾過し、そして滅菌容器(代表的には、1mLと10mLとの間の体積)に充填することによって調製される。その医薬は、直接(単回用量)投与のために処方されても、投与前のキャリア中での希釈のために処方されてもよい。
【0039】
病巣内投与に適切な、任意のプロゲストゲン含有医薬が本明細書中の方法で使用され得るが、特定の医薬もまた本明細書中で提供される。これらの医薬は、約0.2〜5gのプロゲステロンを1〜50%重量/体積の濃度で一病巣に送達するような濃度(例えば、一投薬量あたり1〜2gのプロゲストゲン)でプロゲストゲンを含む懸濁液(代表的には、微粉化懸濁液)として、処方される。本明細書中で提供される例示的な懸濁医薬は、以下の実施例1に記載される。
【0040】
上記医薬は、包装材料、子宮内膜症の処置のための病巣内投与のための単回用量投与のために処方される本発明の医薬、およびその医薬が病巣内投与による子宮内膜症の処置用であることを示すラベルを含む製造物品として包装され得る。
【0041】
上記医薬と1以上の針との組み合わせが提供される。また、本明細書中の方法を実行するためのキットが提供される。このキットは、単回用量投与に十分な医薬組成物を含む1つ以上の容器(例えば、密閉バイアル)、および子宮内膜症の処置のための病巣内注入に適切な1以上の針(例えば、20ゲージの針)を含む。処方物は、例えば、容器(例えば、アンプルまたはバイアル)中に提供され得る。キットは、別々のシリンジおよび針、または前充填(preload)されたシリンジおよび針を含み得る。キットはまた、病巣のサイズならびに他のパラメータに依存して必要とされる処方物の希釈用の滅菌水を含み得る。
【0042】
(処置方法)
本明細書中で提供される子宮内膜症の処置方法は、医薬(特に、オイルベースではない処方物)として処方されるプロゲストゲンの病巣内投与を利用する。投与は、子宮内膜組織またはそのような組織によって形成される嚢胞、あるいはプロゲストゲンが子宮内膜組織に直接作用するような近接する子宮内膜組織を直接取り囲む組織への注入による。
【0043】
代表的には、組織は、例えば、腹腔鏡または超音波により可視化され、プロゲストゲンが、例えば超音波誘導の下での可視化または任意の他の適切な方法による病巣内(嚢胞内)注入により投与される。一病巣/嚢胞あたり約1〜2gmのプロゲストロンの観点から表されるプロゲストゲンの適切な量が、適用され得る。正確な量は、一般的には、パラメータ(例えば、子宮内膜組織塊のサイズ、投与形態、ならびに処置の回数および時間間隔)に依存して、症例ごとに決定される。他のプロゲストゲンについて、その量は、プロゲストロンの量と同等であるべきであり、これは、必要な場合には、インビトロおよび/またはインビボでアッセイされ得る。プロゲストゲンは、異なる国で適用可能なUSP/NF/BP/IPなどのような異なる薬局方のようにアッセイされ得る。
【0044】
(送達)
記載されるように、本明細書中の方法は、病巣への医薬の病巣内送達を利用する。病巣内送達としては、例えば、経膣投与、内視鏡投与または観血療法的投与(開腹術を介する投与を含む)が挙げられる。送達は、例えば、針または針様デバイスを通じて注入によって行われるか、あるいは病巣に(例えば、経膣的に、内視鏡的に、または観血療法的投与(開腹術を介する投与を含む)により)送達され得る、同様に注入可能デバイスまたはシリンジ様デバイスを通じて行われ得る。
【0045】
上記方法を実行することにおいて、送達は、病巣の内容物の吸引と併用され得る。例えば、送達としては、膣内送達および経膣送達が挙げられる。膣内送達/経膣送達のために、超音波プローブが、膣から病巣(例えば、子宮内膜腫および子宮仙骨小結節)への針の送達を誘導するために使用され得る。超音波誘導の下で、針の先端が病巣中に配置され、必要な場合にはその病巣の内容物が吸引され、そして処方物が病巣に注入される。
【0046】
(送達システム)
例示的な送達システムにおいて、17ゲージ〜20ゲージ針が、薬物の注入のために使用され得る。このようなシステムは、病巣内送達(経膣投与、内視鏡投与または観血療法的投与(開腹術を介する投与を含む)が挙げられるが、これらに限定されない)のために使用され得る。子宮内膜腫の処置のために、17ゲージ針または18ゲージ針が、超音波誘導の下で、病巣の密な内容物の吸引および処方物の送達のために使用される。使用される針の長さは、病巣の深さに依存する。薬物を再充填する必要性を取り除く、前充填されたシリンジおよび他の投与システムが使用され得る。
【0047】
以下の実施例は、例示目的のみのために含まれ、本発明の範囲を限定することを意図されない。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
(プロゲステロンを含む懸濁医薬の製造)
無菌条件下かつ約22℃で、ポリエチレングリコール400(100ml)を、攪拌しながら水に溶解させた。得られた溶液に、10gmのカルボキシメチルセルロースナトリウム、0.1gmのメチルパラベン、0.1gmのプロピルパラベン、および1mlのポリソルベート80(Tween80)を、順に攪拌しながら添加した。微粉化したプロゲステロン(40g;滅菌)を添加し、この混合物を均一な懸濁が達成されるまで攪拌した。この懸濁液を、オートクレーブにより滅菌し、次いで、濾過して均一な懸濁液にし、アリコートをバイアルに充填し、このバイアルを無菌条件下で密閉した。最終処方物は、100mg/mLのプロゲステロンを含む白色懸濁液であり、4と7.5との間のpHを有し、53〜60cPの粘度を有し、標準的な17ゲージ〜20ゲージ針を通じて容易に注入可能であった。
【0049】
(実施例2)
(再発性の両側卵巣子宮内膜腫、不妊および重篤な骨盤の疼痛を示す、証明されたグレード4の子宮内膜症ならびに2回の骨盤手術の前歴を有する若年女性)
重篤な骨盤の疼痛、月経困難症および3年間の不妊を訴えていた28歳の女性を観察した。その女性は、同様の不満に関する管理の一年前に腹腔鏡手順を受けていた。グレード4の子宮内膜症、5〜6cmの両側卵巣子宮内膜腫、閉塞性のPOD、卵管周囲癒着および卵巣傍癒着が認められ、その時点で処置した。病巣の残留性のため、その女性は、1日あたりダナゾール 800mgを経口で4ヶ月間始めた。これは、腹腔鏡検査の6ヵ月後に骨盤の再建手術となった。開腹術、両側卵巣嚢胞切除および癒着溶解を行った。その女性は、手術後、排卵誘発と不妊管理との数回の周期を有したが、いずれも成功しなかった。
【0050】
その女性の症状は再発した。超音波評価後の理学的検査により、再発性の子宮内膜症嚢胞(右側の卵巣で4cm、左側の卵巣で5cm)の存在を確認した。
【0051】
超音波誘導の下で、その嚢胞を18ゲージ針で吸引した。25ccのチョコレート色の流体を吸引した。生理食塩水洗浄を行い、実施例1の懸濁液中の2gのプロゲステロンを、各々の嚢胞に注入した。その女性を、疼痛スコア(視覚アナログ)、直接質問および超音波検査により定期的にモニタリングした。12週間目の終わりに、両方の卵巣が、超音波検査で正常になり、その女性は疼痛を有さなくなった。その女性は、過排卵とIUIとの2回の周期を経験した。その女性は、第2の処置周期を考え、妊娠が進んだ。
【0052】
(実施例3)
(症候性のグレード4の子宮内膜症および子宮仙骨腺筋症小結節を有する41歳)
41歳の未経産女性は、数年前に子宮内膜症と診断されていた。その女性は、グレード4の子宮内膜症と診断された1990年に、開腹術を受けた。骨盤の再建手術が、そのときに行われた。その後、その女性は、経口避妊薬、ダナゾールおよびデポーGNRHアナログを用いる医学的処置への試みを繰り返し受けていた。その女性はまた、成功しなかったIVFの試みも受けた。その女性の人生の質として子宮切除に対する要望を示した患者は、重篤な骨盤の疼痛および直腸の疼痛に起因して悩まされていた。
【0053】
理学的検査および超音波評価により、その女性が、右側の卵巣の子宮内膜腫、治療された子宮、左側の卵巣および子宮仙骨の軽度の腺筋症小結節を有することが明らかになった。超音波誘導による子宮内膜腫の吸引を行った。実施例1の懸濁液中の2グラムのプロゲステロンを、その子宮内膜腫に点滴注入し、腺筋症小結節に注入した。その女性は、10日以内に骨盤の疼痛の改善が報告された。以後15ヶ月間のその後の追跡調査来診では、症状の再発は生じなかった。月経困難症、性交疼痛症および骨盤の疼痛に関するその女性の生活の質は著しく改善され、その女性はいかなる侵襲的な手術も要望していない。
【0054】
(実施例4)
(卵巣、膀胱および瘢痕子宮内膜症を有する37歳)
37歳の経産婦女性は、産科的な理由で1987年に子宮下部帝王切開を受けた。その女性は、1995年に瘢痕において病巣塊を示した。その病巣は切除され、瘢痕子宮内膜症であることが証明された。その後2000年に、その女性は、慢性的な骨盤の疼痛および尿の症状を発症した。理学的検査、超音波検査および膀胱鏡検査により、右側の卵巣の子宮内膜腫および瘢痕に近接する膀胱壁における子宮内膜症小結節が明らかになった。
【0055】
子宮内膜腫の吸引および1gのプロゲステロンの嚢胞内点滴注入を行った。膀胱鏡検査を行い、1gのプロゲステロンを膀胱中の各々の小結節に注入した。
【0056】
12ヶ月間を超える追跡調査では、その女性は症状を有さないままであった。骨盤の疼痛および尿の症状に関する生活の質は、良好であった。主要な骨盤手術(すなわち、腹式子宮全摘出、両側卵管卵巣摘除術、膀胱壁切除および再建)は、回避された。
【0057】
(実施例5)
(子宮内膜腫、子宮腺筋症および骨盤の疼痛を有する43歳の閉経前後の女性)
2001年9月に、43歳の経産婦女性は、重篤な骨盤の疼痛、左下部の腹痛および重篤な月経困難症に関する不満を示した。その疼痛は、通常の鎮痛剤および鎮痙薬では軽減されなかった。検査および超音波検査により、子宮腺筋症および左側の卵巣の子宮内膜症が明らかになった。その患者は、腹式子宮全摘出を受けるようにカウンセリングを受けたが、その女性は、保守的な管理を要望し、手術およびその卵巣を失う可能性を回避することを望んだ。
【0058】
子宮内膜腫の経膣吸引を行い、そして実施例1の懸濁液中の2gのプロゲステロンをその腔に注入した。その後、微粉化したプロゲステロンを膣内的に8週間続けた。その患者は、卵巣を保持し、約2年間症状を有さないままであった。
【0059】
改変は当業者に明らかであるので、本発明が、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。