(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、レンズを精度良く移動制御可能なレンズ保持ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るレンズ保持ユニットは、
レンズを保持するレンズ保持部と、前記レンズ保持部に前記レンズの光軸周回方向に沿って互いに位置をずらして固定される3つ以上のコイルと、を備える可動部と、
前記コイルに対向するように配置されるマグネットと、前記マグネットを固定的に支持するベース部材と、を備える固定部と、
導電性を有する弾性材料からなり、前記コイルと電気的に接続されており、前記可動部を前記固定部に対して移動可能に支持する第1支持部材と、
前記第1支持部材との間に、前記可動部を、前記レンズの光軸方向に挟んで配置されており、導電性を有する弾性材料からなり、前記コイルに電気的に接続されており、前記可動部を前記固定部に対して移動可能に支持する第2支持部材と、を有しており、
前記第1支持部材は、前記固定部に固定される第1固定部取付部と、前記可動部に固定される第1可動部取付部と、前記第1固定部取付部と前記第1可動部取付部とを接続する第1アーム部と、からなる複数の第1導電経路を有し、
前記複数の第1導電経路は、互いに電気的に絶縁されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るレンズ保持ユニットは、レンズの光軸周回方向に沿って互いに位置をずらして固定される3つ以上のコイルを備えるため、レンズを光軸方向に移動させるだけでなく、レンズの光軸を傾かせるチルト方向にレンズを駆動できる。また、第1支持部材が、導電性を有する弾性材料からなり、コイルに電気的に接続されているため、当該第1支持部材を介して、コイルに電力を供給することができる。第1支持部材は、可動部を保持する機能に加えて、可動部に備えられたコイルに給電するための配線としての機能との両方を有するため、上述のレンズ保持ユニットでは、コイルへの配線を別個に設ける必要がない。したがって、本発明に係るレンズ保持ユニットは、構造がシンプルであり、また駆動時において、配線の変形等に伴う予測困難な力を受けることがないため、可動部を精度良く駆動することができる。
【0008】
さらに、第1支持部材は、複数の第1導電経路を有しており、複数の第1導電経路は互いに絶縁されている。したがって、第1支持部材を介して、可動部に備えられるそれぞれのコイルを独立に制御し、チルト動作等を行うことができる。また、本発明に係るレンズ保持ユニットは、第1支持部材と第2支持部材によって、可動部を光軸方向に挟んで保持しているため、可動部をバランス良く高精度に支持することができる。
【0009】
また、第2支持部材も、第1支持部材と同様に、可動部を保持する機能に加えて、可動部に備えられたコイルへの配線としての機能を有する。第1支部材と第2支持部材の両方から給電を行うことによって、コイルへの導電経路を両方の支持部材に分配することができる。したがって、レンズ保持ユニットは、可動部に備えられる3つ以上のコイルを独立に制御可能でありながら、第1および第2支持部材の形状をシンプルにできる。また、これによって、第1および第2支持部材は、支持部材として適正な強度を確保することができる。
【0010】
また、例えば、本発明に係る前記第1支持部材は、前記レンズ保持枠に固定された前記コイルと同数以上の前記第1導電経路を有してもよく、
前記コイルと同数以上の前記第1導電経路は、それぞれの前記コイルに対応するように前記光軸周回方向に沿って互いに位置をずらして配置されていてもよい。
また、例えば、前記コイルの一方の端部は、当該コイルに対応する前記第1供給経路における前記第1固定部取付部または前記第1アーム部に接続されていてもよい。
【0011】
第1導電経路の数を、前記コイルと同数以上とすることによって、第1支持部材から、前記コイルへ独立して給電をおこなうことができる。また、第1導電経路を、コイルに対応するように光軸周回方向に位置をずらして配置することによって、可動部をバランス良く支持し、可動部を高精度に保持することが可能である。
【0012】
また、例えば、本発明に係るレンズ保持ユニットにおいて、前記複数の第1導電経路に含まれるいずれか一つの前記第1導電経路は、
前記第1アーム部と前記第1固定部取付部との接合点である第1アーム固定接合点と、当該第1アーム部と前記第1可動部取付部との接合点である第1アーム可動接合点と、を備えていてもよく、
前記第1アーム固定接合点と、前記第1アーム可動接合点とは、前記光軸周回方向に沿って互いに位置をずらして配置されていてもよく、
前記コイルと前記マグネットによって発生する駆動力が前記可動部に対して作用する作用点は、前記光軸周回方向でみて、前記第1アーム固定接合点と前記第1アーム可動接合点の間に位置してもよい。
【0013】
駆動力が前記可動部に対して作用する作用点を、第1アーム固定接合点と第1アーム可動接合点の間に配置することによって、レンズ保持ユニットは、より少ない力で、レンズを光軸に対して傾かせるチルト動作を行うことができる。これにより、コイルおよびマグネットを小型化し、レンズ保持ユニットを小型化することができる。また、駆動時において、レンズ保持ユニットを構成する各部材および各部材の接合部分等に加わる負荷を軽減し、レンズ保持ユニットの信頼性を向上させることができる。
【0014】
また、例えば、前記第1支持部材は、互いに隣接する前記複数の第1導電経路の間に、前記第1支持部材を構成する前記弾性材料を切断して形成された絶縁部を備えてもよい。第1支持部材を構成する弾性材料を切断して絶縁部を形成することによって、複数の第1導電経路を容易に形成することができる。
【0015】
また、例えば、本発明に係るレンズ保持ユニットにおいて、前記コイルは、前記光軸方向に対して略平行に電流が流れる平行部と、前記光軸方向に対して略垂直に電流が流れる垂直部とを有していてもよく、前記コイルは、前記マグネットに対して、前記垂直部は前記マグネットと対向し、前記平行部は前記マグネットと対向しないように、配置されていてもよい。コイルの垂直部をマグネットに対向させ、平行部を前記マグネットと対向させないことによって、レンズを光軸方向に移動させたり、レンズの光軸を傾けたりするために必要とする駆動力のみを、効率的に得ることができる。
【0016】
また、例えば、前記第2支持部材は、前記固定部に固定される第2固定部取付部と、前記可動部に固定される第2可動部取付部と、前記固定部取付部と前記可動部取付部を接続する第2アーム部と、から成る第2導電経路を有してもよく、
前記第2導電経路は、前記レンズ保持部に固定されたすべての前記コイルに電気的に接続されていてもよい。第2支持部材は、全てのコイルに対して共通の第2導電経路を有していても良く、これにより、第2支持部材の形状を、第1支持部材の形状よりシンプルにすることができる。
【0017】
また、例えば、前記第2支持部材は、前記固定部に固定される第2固定部取付部と、前記可動部に固定される第2可動部取付部と、前記第2固定部取付部と前記可動部取付部とを接続する第2アーム部と、から成る複数の第2導電経路を有し、前記複数の第2導電経路は、互いに電気的に絶縁されていてもよい。第2支持部材が、第1支持部材と同様に、複数の第2導電経路を有することによって、コイルへの導電経路を、第1支持部材と第2支持部材とに略均等に分配することが可能である。これにより、第1支持部材と第2支持部材の形状を略同一とすることができ、可動部をレンズ光軸方向の両側から、バランス良く支持することができる。また、例えば、第1支持部材と第2支持部材とを共通部品として、製造を容易にすることも可能である。
【0018】
また、例えば、前記複数の第1導電経路に含まれるいずれか一つの前記第1導電経路は、前記第1アーム部と前記第1固定部取付部との接合点である第1アーム固定接合点と、当該第1アーム部と前記第1可動部取付部との接合点である第1アーム可動接合点と、を備えていてもよく、
前記第1アーム固定接合点は、前記第1アーム可動接合点に対して、前記光軸周回方向の第1回転方向に位置をずらして配置されていてもよく、
前記複数の第2導電経路に含まれるいずれか一つの前記第2導電経路は、
前記第2アーム部と前記第2固定部取付部との接合点である第2アーム固定接合点と、当該第2アーム部と前記第2可動部取付部との接合点である第2アーム可動接合点と、を備えていてもよく、前記第2アーム固定接合点は、前記第2アーム可動接合点に対して、前記光軸周回方向の前記第1回転方向とは逆方向の第2回転方向に位置をずらして配置されていてもよい。
【0019】
第1アーム固定接合点を前記第1アーム可動接合点に対してずらす方向と、第2アーム固定接合点を第2アーム可動接合点に対してずらす方向とを、互いに反対方向にすることによって、レンズ保持ユニットは、より少ない力で、レンズを光軸に対して傾かせるチルト動作を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係るレンズ保持ユニット10の斜視図である。レンズ保持ユニット10は、固定部20と、固定部20に対して移動可能な可動部18と、可動部18を固定部20に対して移動可能に保持する前方スプリング40および後方スプリング50とを有する。
【0022】
固定部20は、第1マグネット部22と、第2マグネット部24と、第3マグネット部26と、第4マグネット部28と、基部16とを有する。基部16は、中央部に貫通穴(不図示)を有する略正方形の平板形状を有している。第1〜第4マグネット部22〜28は、基部16が有する4つの角部に固定されている。第1〜第4マグネット部22〜28には、磁気異方性を有するマグネット本体部22a〜28a(
図4参照)が備えられており、第1〜第4マグネット部22〜28の周辺に磁場を発生させる。
【0023】
可動部18は、レンズ14と、レンズ14を保持するレンズ保持枠12と、第1コイル32と、第2コイル34と、第3コイル36と、第4コイル38とからなる。レンズ保持枠12は、無底中空の略円筒形状を有している。レンズ14は、レンズ保持枠12に対して、レンズ14のレンズ光軸68(
図2参照)と、レンズ保持枠12を構成する円筒の軸とが、略一致するように固定される。なお、本実施形態に係るレンズ保持枠12において、レンズ14の光軸方向Bに略平行な側面である外周面12aは、第1〜第4コイル32〜38を固定し易いように、8角柱形状を有しているが、レンズ保持枠12の形状はこれに限定されない。
【0024】
レンズ保持枠12の外周面12aには、レンズ14の光軸周回方向Cに沿って、互いに90度ずつ位置をずらして、4つのコイル32〜38が固定される。第1コイル32は、第1マグネット部22に対向するように配置され、第2コイル34は、第2マグネット24に対向するように配置される。また、第3コイル36は、第3マグネット26に対向するように配置され、第4コイル38は、第4マグネット28に対向するように配置される。なお、実施形態の説明においては、
図1または
図2等に示すように、撮影光軸66に沿って、撮像素子60からレンズ14側に向かう方向をZ軸正方向とし、Z軸に直交する方向をX軸方向およびY軸方向として説明を行う。
【0025】
図2は、撮影光軸66に直交する断面でみたレンズ保持ユニット10の断面図である。なお、
図2において、前方スプリング40および後方スプリング50は、図示を省略している。第1マグネット部22は、撮影光軸66側側面に、コイル32の周辺に磁界を発生させるための第1マグネット本体部22aを備える。第2〜第4マグネット部24〜28についても、第1マグネット部22と同様に、第2〜第4マグネット本体部24a〜28aが備えられる。
【0026】
第1マグネット本体部22aと第1コイル32とは、レンズ保持枠12およびレンズ14を移動させるためのボイスコイルモータを構成している。すなわち、第1マグネット本体部22aは、
図2に示すように、第1コイル32の周辺に、第1コイル32を流れる電流の向きに略直交する磁場の向きを有する磁界を発生させる。第1コイル32に電流を流すと、第1コイル32は、第1マグネット本体部22aによって発生された磁界から、レンズ光軸68に略平行な向きの力を受ける。
【0027】
図5(b)は、
図1に備えられる第1コイル32と第1マグネット部22を、Z軸正方向側から見た平面図である。第1コイル32は、第1マグネット部22の着磁部分である第1マグネット本体部22aに対向するように配置されている。第1コイル32と第1マグネット本体部22aとを、互いに近接させて対向するように配置することによって、第1コイル32および第1マグネット部22によって構成されるボイスコイルモータの出力を高めることができる。
【0028】
図5(a)は、第1コイル32を、Z軸に直交する方向から見た平面図である。第1コイル32は、コイル中心33を中心とする空芯コイルである。第1コイル32は、Z軸に略平行な光軸方向Bに対して略平行に電流が流れる平行部76と、光軸方向Bに対して略垂直に電流が流れる垂直部74とを有している。本実施形態に係るボイスコイルモータでは、
図2に示すように、コイル中心33よりZ軸負方向側と、Z軸正方向側とで、第1コイル32を通過する磁場の向きが逆方向になるように、第1マグネット本体部22aを構成している。したがって、第1コイル32と第1マグネット本体部22aとで構成されるボイスコイルモータでは、
図5に示す第1コイル32のうち、主として垂直部74を流れる電流に作用する力を利用して、レンズ14を移動させる。
【0029】
図6(a)および(b)は、
図5(a)および(b)に示す第1コイル32の変形例を示す平面図である。
図6に示す変形例に係る第1コイル78は、
図5に示す第1コイル34より垂直部74aが長い。すなわち、第1コイル78と第1マグネット本体部22aとによって構成されるボイスコイルモータでは、垂直部74aとマグネット本体部22aとが対向し、平行部76aとマグネット本体部22aとは対向しない。
図6に示す変形例に係るボイスコイルモータでは、駆動力を発生させる部分である垂直部74aが大きいため、より大きい駆動力を得ることができる。また、平行部76aがマグネット本体部22aと対向しないため、平行部76aに作用するモーメントを抑制することができ、レンズ14の位置制御の精度を高めることができる。
【0030】
図4は、
図1に示すレンズ保持ユニット10のXY平面による断面図である。第2〜第4マグネット本体部24a〜28dと第2〜第4コイル34〜38についても、第1マグネット本体部22aおよび第1コイル32と同様に、レンズ保持枠12およびレンズ14を移動させるためのボイスコイルモータを構成している。
【0031】
図1および
図4に示すように、レンズ保持ユニット10は、光軸周回方向Cに沿って配置された4つのボイスコイルモータの力によって、レンズ14を移動させることができる。例えば、4つのボイスコイルモータのそれぞれから、略等しい力を受けることによって、
図2に示すように、レンズ14を、レンズ14の光軸方向Bに沿って移動させることができる。
【0032】
すなわち、
図2に示すレンズ保持枠12は、第1コイル32と、第3コイル36から、光軸方向Bに略等しい力を受けている。したがって、レンズ保持枠12に固定されているレンズ14は、レンズ14のレンズ光軸68と、撮影光軸66とが略一致した状態を保ちつつ、撮影光軸66に沿う方向(Z軸方向)に移動する。例えば、
図2に示すように、レンズ14を透過する撮影光64による像を撮像する撮像素子60を有するカメラモジュールであれば、レンズ14をZ軸方向に移動させることによって、フォーカス動作を行うことができる。
【0033】
また、例えば、レンズ保持枠12は、
図1に示す4つのボイスコイルモータのそれぞれから受ける力を制御することによって、
図3に示すように、レンズ14をチルトさせるチルト動作を行うことができる。
【0034】
すなわち、
図2に示すレンズ保持枠12は、第1コイル32と、第3コイル36から、光軸方向Bに沿って、互いに異なる大きさの力を受けている。レンズ保持枠12は、光軸66を挟んで配置される2つのコイル32,36から互いに異なる力を受けるため、レンズ光軸68は、撮影光軸66から傾く。このようにして、レンズ保持ユニット10は、レンズ光軸68を撮影光軸66に対して傾かせるチルト動作を行うことができる。例えば、レンズ保持ユニット10は、チルト動作によって撮像素子60の受光面に形成される像を移動させ、手振れ等によって発生する像ブレを補正する振れ補正動作等を行うことができる。
【0035】
図1に示すように、第1〜第4コイル32〜38を有する可動部18は、前方スプリング40および後方スプリング50によって、第1〜第4マグネット部22〜28を備える固定部20に対して、移動可能に保持される。本実施形態に係る前方スプリング40および後方スプリング50は、導電性を有する弾性材料を用いて構成されている。前方スプリング40および後方スプリング50を構成する弾性材料としては、特に限定されないが、例えば、銅、金、もしくはこれらを含む合金等の金属材料を用いることができる。
【0036】
前方スプリング40は、可動部18のZ軸正方向側に配置されており、後方スプリング50は、可動部18のZ軸負方向側に配置されている。したがって、前方スプリング40および後方スプリング50は、光軸方向Bに可動部18を挟んで配置される。これにより、レンズ保持ユニット10は、レンズ14を有する可動部18を光軸方向Bの両側からバランス良く支持することが可能であり、耐久性および信頼性が高い。なお、
図1には、各部材の説明のために、前方スプリング40が、可動部18および固定部20から分離した状態を表しているが、実際のレンズ保持ユニット10では、前方スプリング40は、可動部18および固定部20のZ軸正方向側の表面に固定される。
【0037】
本実施形態に係る前方スプリング40および後方スプリング50は、可動部18を固定部20に対して支持する支持部材の役割だけでなく、可動部18に備えられる第1〜第4コイル32〜38に対して電力を供給する配線を兼ねている。
【0038】
図7は、レンズ保持ユニット10をZ軸正方向側から見た平面図である。前方スプリング40は、第1コイル32に電気的に接続されている前方第1配線部42と、第2コイル34に電気的に接続されている前方第2配線部44と、第3コイル36に電気的に接続されている前方第3配線部46と、第4コイル38に電気的に接続されている前方第4配線部48とを有する。前方第1〜第4配線部42〜48は、互いに電気的に絶縁されており、それぞれが接続されている第1〜第4コイル32〜38に対して、互いに異なる大きさの電流を流すことができる。
【0039】
したがって、前方スプリング40を備えるレンズ保持ユニット10では、第1コイル32〜第4コイル38に流れる電流の大きさを、それぞれ独立に制御することが可能である。各コイル32〜38に流れる電流の大きさを独立に制御することによって、レンズ保持ユニット10は、各コイル32〜38に互いに異なる力を発生させ、
図3に示すようなチルト動作を行うことができる。また、レンズ保持ユニット10では、前方スプリング40および後方スプリング50が、コイル32〜38への配線を兼ねるため、配線を別個に設ける必要がない。したがって、レンズ保持ユニット10は、構造がシンプルであり、また駆動時において、配線の変形等に伴う予測困難な力を受けることがない。したがって、レンズ保持ユニット10は、可動部18を精度良く駆動することができる。
【0040】
前方スプリング40の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、
図8に示す切断前スプリング82を、固定部20および可動部18に対して固定した後に、切断前スプリング82の一部を切断・除去することによって、製造することができる。切断前スプリング82は、
図8に示すように、リング状の外周枠部86と、リング状であって外周枠部86より小さい内周枠部88とを有している。外周枠部86には、切断後に形成される配線部42〜48を、不図示のボイルコイルモータ制御部に接続するための前方端子部90が設けられている。
【0041】
また、外周枠部86と内周枠部88との間には、外周枠部86と内周枠部88とを、電気的かつ物理的に接続する前方アーム部94が設けられている。前方スプリング40を製造する際、まず、切断前スプリング82の外周枠部86を固定部20(
図7)に固定し、切断前スプリング82の内周枠部88を可動部18(
図7)に固定する。
【0042】
次に、切断前スプリング82の外周枠部86の8カ所および内周枠部88の8カ所を、
図8に示す切断線80に沿って切断する。この場合、切断前スプリング82が、銅などの弾性材料を用いて構成されている場合には、弾性材料をレーザー等で切断することができる。さらに、切断線80の間の弾性材料を除去することによって、絶縁部92を形成する(
図9)。このようにして、互いに隣接する配線部42〜48の間に、絶縁部92を備える前方スプリング40を製造することができる。なお、後方スプリング50についても、前方スプリング40と同様にして、製造することができる。
【0043】
図10は、
図7に示す前方スプリング40の一部である前方第2配線部44を表す平面図である。前方第2配線部44は、固定部20に固定される前方外周取付部96と、可動部18に固定される前方内周取付部98と、前方外周取付部96と前方内周取付部98とを接続する前方アーム部94とを有する。また、前方アーム部94と前方外周取付部96との接合部である前方アーム外周接続部95は、前方アーム部94と前方内周取付部98との接合部である前方アーム内周接続部97に対して、光軸周回方向Cに沿って互いに位置をずらして配置されている。
【0044】
第1実施形態に係る前方スプリング40では、前方アーム外周接続部95は、前方アーム内周接続部97に対して、光軸周回方向Cに沿って、Z軸正方向側からみて時計回りに略90度ずれた位置に配置される。前方アーム外周接続部95と、前方アーム内周接続部97を、光軸周回方向Cに沿って互いに位置をずらして配置することによって、前方アーム部94の長さを長くすることができる。前方アーム部94の長さが長いと、前方アーム部94がより大きく弾性変形できるため、レンズ14の可動範囲を広く確保することができる。
【0045】
図7に示す各コイル32〜38を構成する導体の一方の端部は、各配線部42〜48における前方内周取付部98または前方アーム部94に接続されることが好ましく、前方内周取付部98に接続されることが最も好ましい。各コイル32〜38を構成する導体の一方の端部を、前方内周取付部98または前方アーム部94に接続することによって、コイル32〜38の配線を短くするとともに、前方アーム部94の変形に伴って、コイル32〜38と配線部42〜48との接続部分が変形することを抑制できる。
【0046】
図7に示す前方第1配線部42、前方第3配線部46および前方第4配線部48は、
図10に示す前方第2配線部44と比較して、固定部20および可動部18に対する固定位置が、光軸周回方向Cに沿って移動していることを除き、同様の構成であるため、説明を省略する。
【0047】
図7に示すように、前方スプリング40は、レンズ保持枠12に取り付けられた4つのコイル32〜38に対応するように、4つの配線部42〜48を有している。また、4つのコイル32〜38が、光軸周回方向Cに沿って略90度ずつ位置をずらして配置されているのに対応して、4つの配線部42〜48も、光軸周回方向Cに沿って略90度ずつ位置をずらして配置されている。
【0048】
配線部42〜48の数を、コイル32〜38と同数以上とすることによって、前方スプリング40を介して、コイル32〜38毎に独立した給電をおこなうことができる。これにより、各コイル32〜38に加わる力を独立に制御し、レンズ14を任意の方向にチルトさせることができる。また、配線部42〜48を、コイル32〜38に対応するように光軸周回方向Cに配置することによって、可動部18をバランス良く支持することができる。また、これにより、レンズ保持ユニット10は、可動部18を高精度に保持することが可能である。
【0049】
また、前方スプリング40では、一つの配線部42〜48における前方アーム内周接続部97と、隣接する他の配線部42〜48における前方アーム外周接続部95とが、レンズ14の光軸に直交する方向102に沿って配列されている。このような構成により、前方スプリング40は、前方アーム各配線部42〜48を立体的に交差させることなく、前方アーム部94の長さを長くすることができる。
【0050】
図11は、
図7に示すレンズ保持ユニット10に備えられる後方スプリング50を、Z軸正方向側から見た平面図である。後方スプリング50は、第1コイル32に電気的に接続されている後方第1配線部52と、第2コイル34に電気的に接続されている後方第2配線部54と、第3コイル36に電気的に接続されている後方第3配線部56と、第4コイル38に電気的に接続されている後方第4配線部58とを有する。可動部18に備えられる各コイル32〜38は、各コイル32〜38を構成する導体の一方の端部が、前方第1〜第4配線部42〜48(
図7)に接続されており、他方の端部が、後方第1〜第4配線部52〜58(
図8)に接続されている。
【0051】
後方スプリング50の各配線部52〜58は、
図11に示すように、固定部20に固定される後方外周取付部106と、可動部18に固定される後方内周取付部108と、後方外周取付部106と後方内周取付部108とを接続する後方アーム部104とを有する。後方スプリング50は、後方外周取付部106から突出するように備えられる後方端子部100の形成位置が、前方スプリング40に備えられる前方端子部90と異なる他は、前方スプリング40と同様の形状を有する。
【0052】
後方第1〜第4配線部52〜58は、互いに電気的に絶縁されている。したがって、前方第1〜第4配線部42〜48と、後方第1〜第4配線部52〜58との電位差を制御することによって、第1〜第4コイル32〜38に流れる電流を独立に制御することができる。また、前方スプリング40と後方スプリング50の両方から、コイル32〜38に給電することによって、両方のスプリングに配線経路を分配することができるため、各スプリング40,50の構造を単純にすることができる。また、さらに、形状が略等しい前方スプリング40と後方スプリング59によって、可動部18(
図7)を光軸方向Bに挟んで保持するため、レンズ保持ユニット10は、可動部18をバランス良く支持することができる。
【0053】
第2実施形態
図12は、本発明の第2実施形態に係るレンズ保持ユニットに備えられる後方スプリング110を、Z軸正方向側から見た平面図である。第1実施形態に係るレンズ保持ユニットは、後方スプリング110の形状が、
図11に示す後方スプリング50と異なる他は、第1実施形態に係るレンズ保持ユニット10と同様である。
【0054】
図12に示す後方スプリング110は、第1コイル32に電気的に接続されている後方第1配線部112と、第2コイル34に電気的に接続されている後方第2配線部114と、第3コイル36に電気的に接続されている後方第3配線116と、第4コイル38に電気的に接続されている後方第4配線部118とを有する。また、後方第1〜第4配線部112〜118は、互いに電気的に絶縁されている。
【0055】
後方スプリング110の各配線部112〜118は、
図13に示すように、固定部20(
図7参照)に固定される後方外周取付部126と、可動部18に固定される後方内周取付部128と、後方外周取付部126と後方内周取付部128とを接続する後方アーム部124とを有する。また、後方外周取付部126から外周側に突出するように、後方端子部120が形成されている。なお、後方端子部120は、不図示のボイスコイルモータ制御部に、各配線部112〜118を電気的に接続するための接続端子である。
【0056】
後方スプリング110において、後方アーム部124と後方外周取付部126との接合部である後方アーム外周接続部125は、後方アーム部124と後方内周取付部128との接合部である後方アーム内周接続部127に対して、光軸周回方向Cに沿って互いに位置をずらして配置されている。すなわち、第2実施形態に係る後方スプリング110では、後方アーム外周接続部125は、後方アーム内周接続部127に対して、光軸周回方向Cに沿って、Z軸正方向側からみて反時計回りに略90度ずれた位置に配置される。
【0057】
これに対して、第2実施形態に係る前方スプリング40では、第1実施形態に係る前方スプリング40と同様に、前方アーム外周接続部95が、前方アーム内周接続部97に対して、光軸周回方向Cに沿って、Z軸正方向側からみて時計回りに略90度ずれた位置に配置される(
図10参照)。このように、前方アーム外周接続部95を前方アーム内周接続部97に対してずらす方向(Z軸正方向側から見て光軸周回方向に沿って時計回り)と、後方アーム外周接続部125を後方アーム内周接続部127に対してずらす方向(Z軸正方向側から見て光軸周方向に沿って反時計回り)とを、互いに反対方向にすることによって、第2実施形態に係るレンズ保持ユニットは、より少ない力で、レンズ14を撮影光軸に対して傾かせるチルト動作を行うことができる。
【0058】
また、第2実施形態に係る後方スプリング110は、前方スプリング40(
図7参照)を鏡像反転させた形状を有している。したがって、後方スプリング110は、前方スプリング40に使用した切断前スプリング82(
図8参照)と同様の切断前スプリング82を用いて製造することができる。すなわち、後方スプリング110は、前方スプリング40の製造で用いる切断前スプリング82を、前方スプリング40で用いる際とは裏返しにして用いることによって、製造することができる。これにより、第2実施形態に係るレンズ保持ユニットは、部品点数を減少させ、製造を容易にすることができる。
【0059】
第3実施形態
図14は、本発明の第3実施形態に係るレンズ保持ユニットに備えられる後方スプリング130を、Z軸正方向側から見た平面図である。第3実施形態に係るレンズ保持ユニットは、後方スプリング130の形状が、
図11に示す後方スプリング50と異なる他は、第1実施形態に係るレンズ保持ユニット10と同様である。
【0060】
図14に示す後方スプリング130は、固定部20(
図7参照)に固定される外周枠部136と、可動部18に固定される内周枠部138と、内周枠部138と外周枠部136とを接続する後方アーム部132と、後方端子部140とを有する。後方スプリング130は、第1実施形態に係る後方スプリング50と同様に、可動部18に備えられる第1〜第4コイル32〜38に対して、電気的に接続される。
【0061】
しかし、後方スプリング130は、第1実施形態に係る後方スプリング50とは異なり、絶縁部92を有しないため、全体で一つの導電経路を構成している。後方スプリング130の後方端子部140は、例えば基準電位に保たれるグランド配線部(不図示)等に接続される。
【0062】
このように、第3実施形態に係るレンズ保持ユニットは、後方スプリング130が、可動部18に備えられるコイル32〜38に対して共通の導電経路を有している。第3実施形態に係るレンズ保持ユニットは、第1実施形態に係るレンズ保持ユニット10と同様に、各コイル32〜38に流れる電流を、前方スプリング10の配線部42〜48を介して独立に制御することができる。また、後方スプリング130の形状を、第1実施形態に係るレンズ保持ユニット10より単純にすることができるため、製造が容易である。
【0063】
その他の実施形態
上述の実施形態において、前方および後方スプリングは、金属等の導電性を有する弾性材料のみによって構成されているが、本発明に係る前方スプリングおよび後方スプリングとしてはこれに限定されない。例えば、前方および後方スプリングは、絶縁性を有する弾性材料と、導電性を有する弾性材料を組み合わせて構成されていてもよい。また、上述の実施形態における前方スプリングと後方スプリングの配置は、相互に交換することができる。
【0064】
上述の実施形態に係るレンズ保持ユニットにおいて、可動部18には、4つのコイルが備えられるが、可動部18に備えられるコイルの数は、3つでも良く、5つ以上であってもよい。可動部18が、独立に制御可能な3つ以上のコイルを有することによって、レンズ14を任意の方向にチルト動作させることができる。
【0065】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0066】
第1実施例
第1実施例では、
図7に示す第1実施形態に係るレンズ保持ユニット10において、各コイル32〜38に所定の力を作用させた場合に、レンズ光軸68が撮影光軸66に対してどれだけ傾くかをシミュレートした。第1実施形態に係るレンズ保持ユニット10では、
図7および
図11に示すように、各コイル32〜38は、アーム外周接続部95,105およびアーム内周接続部97,107に対して、光軸周回方向Cに45度回転した位置に配置されている。
【0067】
ここで、第1実施例では、各コイル32〜38とマグネット本体部22a〜28aによって発生する駆動力が、各コイル32〜38のコイル中心が配置される位置において、レンズ保持枠12に作用するという仮定を用いた。すなわち、撮影光軸66に略垂直な方向からの平面図で考えると、
図15において○印146で示す位置において、各コイル32〜38とマグネット本体部22a〜28aによって発生する駆動力が、レンズ保持枠12に作用するという条件で、シミュレーションを行った。また、各コイル32〜34から、レンズ保持枠12に対して、光軸方向Bと略平行な同一方向の力が発生するという条件で、シミュレーションを行った。第1コイル32からは0.01N、第2コイル34からは0.005N、第3コイルからは0.01N、第4コイルからは0.0015Nの駆動力が、レンズ保持枠12に対して作用するという条件で、シミュレーションを行った。結果を表1に示す。
【0068】
第2実施例
第2実施例では、第1実施例に対して、コイル32〜34の配置を変化させて、シミュレーションをおこなった。すなわち、第2実施例では、
図7に示す各コイル32〜38が、アーム外周接続部95,105およびアーム内周接続部97,107に対して、光軸周回方向Cに沿って、時計回りに22.5度回転した位置に配置されているという条件で、シミュレーションを行った。
【0069】
第2実施例の条件では、撮影光軸66に略垂直な方向からの平面図で考えると、
図15において△印144で示す位置において、レンズ保持枠12に駆動力が作用する。その他の条件は、第1実施例と同様である。結果を表1に示す。
【0070】
第3実施例
第3実施例では、
図7に示す各コイル32〜38が、アーム外周接続部95,105およびアーム内周接続部97,107に対して、光軸周回方向Cに沿って、時計回りに67.5度回転した位置に配置されているという条件で、シミュレーションを行った。第3実施例の条件では、撮影光軸66に略垂直な方向からの平面図で考えると、
図15において□印148で示す位置において、レンズ保持枠12に駆動力が作用する。その他の条件は、第1実施例と同様である。結果を表1に示す。
【0071】
第4実施例
第4実施例では、
図7に示す各コイル32〜38が、アーム外周接続部95,105およびアーム内周接続部97,107に対して、光軸周回方向Cで見て略同一の位置に配置されているという条件で、シミュレーションを行った。第4実施例の条件では、撮影光軸66に略垂直な方向からの平面図で考えると、
図15において×印142で示す位置において、レンズ保持枠12に駆動力が作用する。その他の条件は、第1実施例と同様である。結果を表1に示す。
【0072】
第5〜8実施例
第5〜8実施例では、
図12に示す後方スプリング110を備える第2実施形態に係るレンズ保持ユニットにおいて、各コイル32〜38に所定の力を作用させた場合に、レンズ光軸68が撮影光軸66に対してどれだけ傾くかをシミュレートした。後方スプリングの形状を除くその他の条件は、第1〜4実施例と同様である。各コイル32〜38の配置については、第5実施例は第1実施例と、第6実施例は第2実施例と、第7実施例は第3実施例と、第8実施例は第4実施例と、それぞれ同様である。結果を表1に示す。
【0074】
評価
第1〜第4実施例の比較から、第1〜第3実施例における傾き角度が、第4実施形態における傾き角度より大きいことがわかる。すなわち、各コイル32〜38を、アーム外周接続部95,105およびアーム内周接続部97,107に対して、光軸周回方向Cにずらした位置に配置することによって、傾き角度が大きくなることが確認できた。また、駆動力が可動部18に対して作用する作用点を、光軸周回方向Cでみて、アーム外周接続部95,105とアーム内周接続部97,107の間に配置することによって、より少ない力でチルト動作を行うことができることが確認できた。
【0075】
また、各コイル32〜38と、アーム外周接続部95,105およびアーム内周接続部97,107との位置ズレ角度は、22.5度以上67.5度以下とすることが、より少ない力でレンズ14を傾かせる観点から好ましい。これにより、各コイル32〜38をアーム外周接続部95,105およびアーム内周接続部97,107に対して光軸周回方向Cで見て略同一の位置に配置した第4実施例に対して、3.7%以上大きくレンズ14を傾かせることができる。なお、アーム外周接続部95,105およびアーム内周接続部97,107との位置ズレ角度を、略45度とすることが、最も好ましい。また、より少ない力でレンズ14を傾かせることができるレンズ保持ユニットは、レンズ14をチルト動作させる際の消費電力を抑制することができる。また、コイル32〜38およびマグネット本体部22a〜28aを小型化することが可能である。
【0076】
第1〜第4実施例と第5〜第8実施例との比較から、各コイル32〜38の配置条件が同一であれば、第5〜第8実施例における傾き角度が、第1〜4実施形態における傾き角度より大きいことがわかる。したがって、前方アーム外周接続部95を前方内周アーム接続部97に対してずらす方向と、後方アーム外周接続部125を後方アーム内周接続部127に対してずらす方向とを、互いに反対方向にすることによって、より少ない力で、レンズを光軸に対して傾かせられることが確認できた。また、より少ない力でレンズ14を傾かせることができるレンズ保持ユニットは、レンズ14をチルト動作させる際の消費電力を抑制することができる。また、コイル32〜38およびマグネット本体部22a〜28aを小型化することが可能である。