(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
緯入れ関連装置を制御するための緯入れ制御器と、予め設定された設定回転数に従って製織中に主軸の回転数を制御する主制御器とを備え、該主制御器が製織中に前記主軸の回転数を変更して製織が行われ、糸種に応じた2以上の緯入れ系列を備える多色緯入れ織機としての流体噴射式織機に用いられる緯入れ装置において、
前記主軸の回転数に関する境界値、及び該境界値に対する大小関係に応じて異なるように設定された緯入れ条件としての緯入れ開始タイミングを予め記憶している記憶器と、
製織中に、前記主軸の回転数と前記境界値とを比較して前記境界値に対する大小関係に対応した信号を前記緯入れ制御器に出力する比較器とを備え、
前記緯入れ制御器は、前記比較器からの大小関係に対応した信号の入力を受けて、前記記憶器から対応する緯入れ開始タイミングを選択し、その選択された緯入れ開始タイミングに従って前記緯入れ関連装置を制御するものであり、
前記記憶器は、糸種に応じた複数の前記境界値を予め記憶している
ことを特徴とする流体噴射式織機の緯入れ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した2つの例は、いずれも2種類の運転条件に対応した主軸の回転数と、緯入れ条件とを、1対1の関係で緯入れ制御器に予め記憶させてある。なお、ここで言う「緯入れ条件」とは、噴射流体の圧力や、緯入れ開始タイミング、あるいはこれらの組み合わせのことをいう。
【0006】
ところで、実際の製織においては、製織に際して設定される主軸の回転数は、製織時の環境に起因する緯糸の飛走状態やその織物の生産計画等の状況といった様々な種類の運転条件に対応して変更する場合がある。具体的には、同じ織布を製織する場合において、標準的には主軸の回転数を400r/mに設定して製織が行われるものであっても、上記のような製織時の環境等に応じ、主軸の回転数を420r/mに設定することもあれば、380r/mに設定することもある。従って、織機に対し設定され得る主軸の回転数には、多数の種類が想定される。
【0007】
このように多数の種類が想定される場合に上述した従来技術を採用して、1対1の関係を保つように多数の種類に対応する緯入れ条件を予め緯入れ制御装置に対し記憶させようとすると、その予備設定作業は、非常に煩雑となり、多くの時間と手間を要してしまう。なお、ここで言う「予備設定」とは、緯入れ条件を選択するための機能を有効にするための設定のことをいう。
【0008】
上記実情に基づいてなされた本発明の課題は、主軸の回転数に基づいて緯入れ条件を変更する流体噴射式織機において、緯入れ条件に関する予備設定作業を簡略化することができる緯入れ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
流体噴射式織機の緯入れ装置の発明は、緯入れ関連装置を制御するための緯入れ制御器と、予め設定された設定回転数に従って製織中に主軸の回転数を制御する主制御器とを備え、該主制御器が製織中に前記主軸の回転数を変更して製織が行われる
ものであって、流体噴射式織機のうちの、糸種に応じた2以上の緯入れ系列を備える多色緯入れ織機に用いられるものを前提とする。
【0010】
そして、前記主軸の回転数に関する境界値、及び該境界値に対する大小関係に応じて異なるように設定された緯入れ条件としての緯入れ開始タイミングを予め記憶している記憶器と、製織中に、前記主軸の回転数と前記境界値とを比較して前記境界値に対する大小関係に対応した信号を前記緯入れ制御器に出力する比較器とを備え、前記緯入れ制御器は、前記比較器からの大小関係に対応した信号の入力を受けて、前記記憶器から対応する緯入れ開始タイミングを選択し、その選択された緯入れ開始タイミングに従って前記緯入れ関連装置を制御する
ものであり、前記記憶器は、糸種に応じた複数の前記境界値を予め記憶していることを特徴とする。
なお、前記でいう「緯入れ系列」とは、一般的な織機において、協働で作動することによって1回の緯入れを実現している複数の緯入れ関連装置(測長貯留装置、メインノズル、サブノズル等)が属する組のことをいう。
【0011】
また、前記記憶器は、糸種に応じた異なる前記緯入れ開始タイミングを予め記憶しているものが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の織機の緯入れ装置によれば、緯入れ関連装置を制御するための緯入れ条件に関して予め記憶器に記憶させておく予備設定の入力が、主軸の回転数に関する境界値と境界値に対する大小関係に
応じて異なるようにした緯入れ条件
としての緯入れ開始タイミングであり、従来に比べて少なくて済む。その結果、緯入れ条件に関する予備設定作業は、従来のように主軸の想定される回転数の全てについて対応する緯入れ条件を1対1の関係で予め記憶させる必要が無くなるので、時間と手間が軽減される。
【0013】
より詳しく言えば、従来においては、想定される主軸の回転数毎に緯入れ条件を1対1の関係で設定するということしか考えられていなかった。しかし、本出願の発明者は、主軸の回転数がある程度の範囲(例えば、前後200r/m程度)であれば、同じ
緯入れ開始タイミングであっても許容レベルの緯入れが可能であることを見出し、その考え方に基づき、同じ
緯入れ開始タイミングで対応できる主軸の回転数を範囲として捉えると共に、その範囲の境を境界値として設定し、境界値との大小関係に応じて緯入れ条件を選択するものとした。それ故、その製織のために想定される主軸回転数が多数存在したとしても、予備設定段階で設定される緯入れ条件を大幅に減らすことができ、上記効果が得られるものである。
【0014】
2以上の緯入れ系列を備えた織機において、飛走状態が異なる糸種の緯糸を混在させ併用して製織を行う場合、同じ緯入れ条件では対応できないこともある。そこで、糸種に応じた複数の境界値や境界値に対する大小関係に応じた異なる緯入れ条件
(緯入れ開始タイミング)を記憶器に予め記憶させておくことにより、多種多様な緯糸を使用した織機にも対応可能となるし、その予備設定作業に要する時間と手間の軽減効果が高い。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明を適用した多色緯入れ織機として、流体噴射式(空気噴射式)の多色緯入れ織機の要部を示している。また、以下の説明では、その多色緯入れ織機によって異なる緯糸密度の部分を含む織布28を製織するとともに、その緯糸密度の変更に伴って製織中に主軸41の回転数を変更するもの(例えばタオル織機)を例に挙げて述べる。
【0017】
図1で示す2つの緯入れ系列1、2と緯入れ制御装置46とを備えた緯入れ装置11において、各緯入れ系列1、2で緯入れする緯糸14は、給糸体スタンド12により支持されている給糸体13から引き出され、例えばドラム式の測長貯留装置15の糸巻付けアーム16の内部に導かれ、静止状態のドラム17の外周面で係止ピン18により係止されながら、糸巻付けアーム16の回転運動によりドラム17の外周面に巻き付けられる。これによって、1回の緯入れに必要な長さの緯糸14は、ドラム17の外周面に巻き付けられ、緯糸14の緯入れ時まで貯留されている。
【0018】
測長貯留装置15(糸巻付けアーム16の回転運動及び係止ピン18の進退運動)や、後述の緯入れ用のメインノズル21は、織機制御装置45における緯入れ制御装置46の緯入れ制御器49によって、緯入れパターンに定められた緯糸14の選択順序(緯入れ系列の選択順序)に基づいて動作する。
【0019】
緯入れ開始タイミングで、緯入れ制御器49によって選択された緯糸14に対応する係止ピン18が操作器19に駆動されて、ドラム17の外周面から後退すると、ドラム17の外周に巻き付けられている1回の緯入れに必要な長さの緯糸14は、ドラム17上において解舒可能な状態となる。そして、緯糸14は、ドラム17から緯入れ用のメインノズル21に通されており、メインノズル21の噴射により、ドラム17上から解舒されて緯入れされる。
【0020】
選択された緯糸14に対応するメインノズル21は、設定された緯入れ開始のタイミングで経糸24の開口25へ向けて圧力空気の噴射を開始し、設定された噴射期間に亘って噴射を継続することによって、所定の長さの緯糸14を開口25内に緯入れする。この緯入れ動作によって、緯糸14は、開口25内の緯糸飛走経路に沿って飛走する。なお、圧力空気は、圧力空気源35から供給され、圧力調整器36により緯入れに適切な空気圧に調整されてから、電磁開閉弁37を経てメインノズル21に供給されている。電磁開閉弁37は、緯入れ制御器49の制御によって、緯入れパターンに定められた緯糸選択順序に基づいて動作する。
【0021】
前記のように
図1の緯入れ装置11は2色の緯入れに対応するものであるが、より多色の緯入に対応するものの場合、給糸体13、測長貯留装置15及びメインノズル21等は、多色数(緯糸14の本数)に応じて設置され、緯入れパターンに定められた緯糸選択順序によって緯入れ動作が行われる。
【0022】
緯入れされた緯糸14が開口25内の飛走経路に沿って飛走する過程で、複数グループのサブノズル22は、緯糸14の飛走方向に向けて緯糸飛走経路に圧力空気を一斉噴射又はリレー噴射して、飛走中の緯糸14を緯入れ方向に加勢する。なお、圧力空気は、圧力空気源35から供給され、圧力調整器38によって適切な空気圧に調整されてから各グループに対応する電磁開閉弁39を経て各グループのサブノズル22に供給されている。各電磁開閉弁39は、緯入れ制御器49の制御によって、設定されたタイミングにおいて対応するグループのサブノズル22へ圧力空気を供給し、サブノズル22から圧力空気を噴射させて飛走中の緯糸14を緯入れ方向に加勢する。
【0023】
上述したサブノズル用の圧力調整器38は、圧力調整弁であってもよい。しかし、応答性の面で問題があるため、圧力調整器38は、それぞれが圧力調整弁を有する緯入れ系列1、2の数あるいは切り換えられる圧力値の数等に応じた複数経路の流路を切替弁によって選択的に切り替えるものとすることが好ましい。
【0024】
メインノズル21及び複数グループのサブノズル22の噴射動作により、緯糸14が正常に緯入れされたときに、その緯糸14は、筬27の筬打ち運動によって織布28の織り前29に筬打ちされ、織布28に織り込まれた後、緯入れ側で給糸カッタ30によって切断され、メインノズル21の内部の緯糸14から切り離される。
【0025】
緯入れが正常に行われたか否かは、緯糸フィーラ31によって検出される。緯糸フィーラ31は、反緯入れ側の織布28の織り端部分の近傍位置、及びさらに緯入れ方向に離れた位置の2箇所で緯糸飛走経路に対向して配置された第1のセンサと第2のセンサからの検知信号に基づいて、緯入れが正常に行われたか否かを判断する。
【0026】
織布28の織り端部分の近傍位置における第1のセンサは、正常に緯入れされた緯糸14の到達し得る位置に設けられており、そこで正常に緯入れされた緯糸14の先端を検知する。この検知は、緯糸14の正常な到達時期(設定された検知期間)内において第1のセンサに発生する検知信号のレベルと基準信号レベルとを比較することによって行われる。従って、第1のセンサによれば、緯入れされたにもかかわらず第1のセンサの位置へ緯糸14の先端が到達しない緯入れ不良(ショートピック、ベントピック等)が検出される。なお、検知期間は、通常、主軸41の回転角上で設定される。
【0027】
前記の検知期間において、第1のセンサは、緯糸14の到達を検出したときに、それに応じた出力信号を発生する。そのとき、緯糸フィーラ31は、第1のセンサからの出力信号に基づき、正常な緯入れに対応する糸信号S1を発生し、この糸信号S1を織機制御装置45における主制御器47に送る。主制御器47は、正常な緯入れに対応する糸信号S1の存在を条件として織機の運転(製織)を継続させる。
【0028】
前記の検知期間において、糸信号S1が発生しなかったとき、つまり緯入れ不良が発生していて、第1のセンサが緯糸14の到達を検出できなかったとき、緯糸フィーラ31は、緯入れの異常と判断して、緯止め信号(「第1の緯止め信号」ともいう。)S2を出力し、この緯止め信号S2を主制御器47に送る。そして、主制御器47は、緯止め信号S2を受けると、直ちに停止制御を実行し、織機を主軸41の所定の角度で停止させる。
【0029】
第1のセンサよりもさらに緯入れ方向に離れた位置における第2のセンサは、正常に緯入れされた緯糸14が到達しない位置で緯糸飛走経路に対向し、緯糸14の吹き切れやロングピックといった緯入れ不良を検知するために設けられる。この検出は、検知期間内において緯糸14の異常な到達時期(到達角度)で第2のセンサに発生する検知信号のレベルと基準信号のレベルとを比較することによって行われる。
【0030】
なお、検知期間は、通常、主軸41の回転角上で設定される。この検知期間において、緯糸フィーラ31は、第2のセンサからの出力信号を入力したときに、緯入れの異常と判断して、緯止め信号(「第2の緯止め信号」ともいう。)S3を発生し、この緯止め信号S3を主制御器47に送る。主制御器47は、第2の緯止め信号S3を受けると、第1の緯止め信号S2を受けたときと同様に、織機を主軸41の所定の角度で直ちに停止させる。
【0031】
主軸41の回転角度θの検出のために、主軸41に角度検出器(エンコーダ)43が連結されている。製織中にエンコーダ43は、主軸41の回転角度θの信号を発生し、これを織機制御装置45の主制御器47及び緯入れ制御装置46の比較器48、並びに開口制御装置44に送り込んでいる。
【0032】
開口制御装置44は、製織条件として緯糸密度の他、緯入れパターン、開口パターンなどが設定器52を介して予め設定される。そして、開口制御装置44は、設定された緯糸密度に応じた密度信号S4を、主制御器47に出力する。また、開口制御装置44は、上述したエンコーダからの回転角度θの信号によって1製織サイクル(開口パターンの1リピート)毎にサイクル数をカウントする。そして、開口制御装置44は、サイクル数のカウント値に応じて、設定された緯入れパターンに従い、選択される緯入れ系列に対応する選択信号(糸種選択信号)S5を緯入れ制御装置46の比較器48及び緯入れ制御器49に対し出力する。
【0033】
織機制御装置45は、織機の主軸41の回転に同期した状態で織機を制御することや、その他の必要な制御を行うために、主制御器47と緯入れ制御装置46とから構成されている。
【0034】
主制御器47は、製織中においては、設定器52によって設定された2種類の設定回転数に従って主軸41の回転を制御する。設定回転数は、開口制御装置44に設定された製織条件における緯糸密度に対応させて設定される。主制御器47は、開口制御装置44からの設定緯糸密度に応じた密度信号S4の入力を受け、その密度信号S4に対応する設定回転数を選択し、それに従って主軸41(原動モータ42)の回転を制御する。また、主制御器47は、密度信号S4に基づいて巻取装置(図示せず)の駆動を制御し、これによって製織される織布28の緯糸密度が変更される。さらに、主制御器47は、主軸41の回転の制御に伴い、選択された設定回転数に応じた信号(主軸41の回転数信号S6)を比較器48に対し出力する。
【0035】
緯入れ制御装置46は、比較器48、緯入れ制御器49及び記憶器51を備えている。以下、各構成要素について詳述する。
【0036】
記憶器51には、予備設定の段階において作業者により設定器52を介して設定がなされ、主軸41の回転数に関する境界値と境界値に対する大小関係に対応した2種類の緯入れ条件とがそれぞれ記憶されている。本実施例では、各緯入れ系列は、同じ緯入れ条件で緯入れ動作を行うものとする。従って、境界値及び緯入れ条件は、各緯入れ系列1、2に共通のものが使用される。
【0037】
比較器48は、主制御器47からの主軸41の回転数信号S6の入力を受けて、その回転数信号S6を、記憶器51に予め記憶されている境界値と比較する。この比較は、製織中の1製織サイクル毎に、1サイクル中の所定のタイミング(例えば主軸41の回転角0°)で行われるものとする。そして比較した上で、比較器48は、境界値に対する大小関係に応じた切換信号S7を緯入れ制御器49に出力する。
【0038】
緯入れ制御器49は、比較器48からの切換信号S7の入力を受けて、記憶器51に予め記憶されている2種類の緯入れ条件の中から切換信号S7に対応する緯入れ条件を選択する。また、緯入れ制御器49は、選択した緯入れ条件に従って開口制御装置44からの糸種選択信号S5に対応する緯入れ系列を制御する。具体的には、例えば、緯入れ条件は、緯入れ開始タイミング(係止ピン18を後退させる操作器19の駆動タイミング(緯糸解舒タイミング)、メインノズル21の流体の噴射開始タイミングなど)とする。そして、その緯入れ条件に従って、糸種選択信号S5に対応する緯入れ系列の測長貯留装置15、メインノズル21、サブノズル22等の動作を主軸41の適切な回転角度θのもとに制御し、対応する緯入れ系列によって選択された緯糸14の緯入れ動作を実行させる。
【0039】
前述のように、「緯入れ系列」とは、1回の緯入れを協働で実現するために作動する複数の緯入れ関連装置が属する組をいう。また、「緯入れ関連装置」とは、給糸体13から引き出された緯糸14の緯入れに関与する装置であり、給糸体13よりも下流側に存在する装置をいう。その緯糸関連装置には、測長貯留装置15、メインノズル21、サブノズル22が含まれる。但し、これらのうちサブノズル22は、各緯入れ系列1、2において共通に用いられる。
【0040】
上述した織機制御装置45は、機能別のブロックの組み合わせとして構成されている。かかる織機制御装置45は、各ブロックからなる装置を組み合わせて実現しても良いし、コンピュータに所定のソフトウェアをインストールし、そのソフトウェアを実行させることによって、コンピュータの入出力手段、記憶手段、演算制御手段及びソフトウェアが協働した各ブロックを構成し、それらブロックにより実現することも可能である。
【0041】
また、開口制御装置44、主制御器47及び記憶器51に対して、緯入れ条件を含む製織条件のデータ等を設定するために、例えばタッチパネル式やキーボード等の設定器52が通信可能に設けられている。
【0042】
上述した緯入れ制御装置46に対して予備設定の段階において、境界値及び切り換えられる緯入れ条件が設定される。この予備設定は、その織機を使用する製織工場においてその織機で想定される製織を考慮し、その製織工場の作業者によって行われるか、または、織機メーカ側において、緯入れ制御装置46のシステムとして事前に設定されて記憶されて提供されるものであっても良い。
【0043】
予備設定段階において設定される境界値及び緯入れ条件は次のように求められる。例えば、その織機で想定される製織における実用レベルでの主軸41の最高回転数が800r/m程度とする。その場合において、最高回転数800r/mで許容レベルの緯入れが可能な緯入れ条件を試織によって求める。具体的には、最高回転数800r/mに対しより近い主軸41の回転数に適した緯入れ条件を試せば、最高回転数800r/mでも充分に許容レベルの緯入れが可能であるが、その場合はより低い回転数に充分には対応できないため、さらに低い回転数に適した緯入れ条件を順次試していき、最高回転数800r/mでも許容レベルの緯入れが可能な緯入れ条件のうち最も低い回転数に適した緯入れ条件を求める。なお、許容レベルの緯入れとは、製織に最適な緯入れを含むことは勿論、織布として要求される最低限の品質を担保することのできる、緯入れをいう。
【0044】
次いで、そのようにして求められた緯入れ条件について、どの程度の低い回転数で許容レベルの緯入れが可能かを試し、主軸41の回転数の下限値(最低回転数)を求める。そして、その求められた最低回転数がその緯入れ条件による許容レベルの緯入れが可能な主軸41の回転数の下限値となるため、その最低回転数を境界値に定めると共に、その緯入れ条件を境界値以上の高い回転数(回転数≧境界値)に対応する緯入れ条件と定める。
【0045】
次に、その境界値よりも低い回転数(回転数<境界値)に対応する緯入れ条件を定める。例えば、上記で求められた境界値が回転数500r/mであったとし、且つ、その織機における製織で想定される最も低い回転数が300r/mであるとすると、その500〜300r/mの回転数の範囲で許容レベルの緯入れが可能な緯入れ条件を上記と同様にして求める。
【0046】
そして、以上のようにして求められた境界値及び緯入れ条件を設定器52に入力することによって、境界値を記憶器51の所定領域に設定して記憶させると共に、各緯入れ条件を境界値との大小関係(≧、<)に対応させて記憶器51の他の所定領域に設定して記憶させる。
【0047】
以上のように本発明によれば、予備設定の段階において、同じ緯入れ条件で許容レベルの緯入れが可能な主軸41の回転数の範囲を1つの群として定め、1群毎に1つの緯入れ条件を設定するようにしたため、設定すべき緯入れ条件の数が大幅に減少し、予備設定作業が簡素化される。つまり、従来のようにその織機の製織で想定される主軸41の多種類の回転数の各々に1対1の関係で対応させた緯入れ条件を設定する必要がなくなる。
【0048】
本発明は上記実施例に限定されない。例えば、上記実施例では、主軸41の回転数の群を、1つの境界値に対する上下2つのみとしたが、その織機の製織で想定される主軸41の回転数の範囲が広い場合、(言い換えると、主軸41の最高回転数が高い場合)、1つの境界値では対応できないこともある。即ち、主軸41の回転数が広範囲である場合、この広範囲の回転数を2つの群で分けると、1つの群の範囲も広くなるため、その群の全範囲を同じ緯入れ条件で緯入れすると、全範囲のうち、許容範囲の緯入れができない範囲ができることもある。このような場合には、境界値を複数設け、想定される主軸41の回転数の範囲を3以上の群に分けるようにしても良い。なお、この場合でも、緯入れ条件の選択は、各境界値との大小関係に応じて行われる。
【0049】
また、上記実施例では、比較器48で境界値と比較する主軸41の回転数を、設定回転数(密度信号S4に基づいて主制御器47が選択した回転数信号S6)としているが、これに代えて、検出された実際の回転数としても良い。
【0050】
さらに、上記実施例では、比較器48が、回転数信号S6の入力を受けて主軸41の回転数と境界値とを比較しているが、これに限らない。即ち、上記実施例のように密度信号S4と主軸41の回転数とを対応させて設定してある場合には、比較器48が密度信号S4の入力を受けて、記憶器51の対応する主軸41の回転数を判別するとともに、境界値と前記判別した主軸41の回転数とを比較し、境界値に対する大小関係に対応した信号を緯入れ制御器49に出力するものであっても良い。
【0051】
また、上記実施例では、緯入れされる糸種に関係無く、主軸41の回転数が同じ場合には、各緯入れ系列1、2を同じ緯入れ条件に従って制御して緯入れを行うものとしたが、例えば、その織機で想定される製織で使用され得る複数種の緯糸14が同じ緯入れ条件で緯入れした場合に緯糸14の飛走状態が大きく異なるものを含むときは、糸種毎に緯入れ条件及び/又は境界値を設定するのが好ましい。但し、必ずしも糸種毎に異なる設定にするとは限らず、同じ緯入れ条件で緯入れされる複数の緯糸14を1つのグループとし、全ての緯糸14を複数のグループに分け、グループ毎に緯入れ条件等を設定しても良い。そして、製織において、そのような同じ緯入れ条件で飛走状態の異なる他種類の緯糸14が併用される場合には、開口制御装置44からの緯入れ系列の選択信号(糸種選択信号S5)が比較器48及び緯入れ制御器49に入力されるものとすればよい。そして、比較器48が緯入れ系列の選択信号に基づいて対応する糸種に応じた境界値を選択し、その境界値によって比較動作を行い、緯入れ制御器49が比較器48による大小関係の判定結果と糸種の選択信号とに基づき、対応する緯入れ条件を選択するものとすればよい。
【0052】
さらに、上記実施例において前提とした製織中に主軸41の回転数が変更される織機について、例えば、一般的なタオル織機のように、主軸41の高低2種類の回転数に標準的なものが存在する場合は、その標準的な回転数を基準に境界値を定めても良い。具体的には、上記した主軸41の高低2種類の回転数が600r/mと400r/mの場合には、600r/mに適した緯入れ条件で許容レベルの緯入れが可能な主軸41の回転数の範囲と、400r/mに適した緯入れ条件で許容レベルの緯入れが可能な主軸41の回転数の範囲とから境界値を定めるようにしても良い。