(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・軽量化はめざましい発展を遂げており、それに伴い、電子機器に用いられる電池の小型化・大容量化の要求も高まっている。リチウムイオン二次電池に代表される二次電池は、軽量でエネルギー密度が大きいことから、小型電子機器を初めとして、自動車あるいは住宅の電源としての活用が検討されている。中でも近年注目されているリチウムイオン二次電池の電極の作製においては、通常、結着剤としてポリマーバインダーが用いられ、活物質(正極活物質および負極構成材)をポリマーバインダーに配合して電池電極用組成物を調製し、その電極用組成物を集電体上に塗布、乾燥することにより、活物質を集電体に結着させている。ポリマーバインダーには、活物質との接着性、集電体との接着性、電解液である極性溶媒に対する耐性、電気化学的な環境下での安定性が求められる。
【0003】
従来から、このようなポリマーバインダーにポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマーが用いられている。しかし、フッ素系ポリマーは、有機溶媒に溶解する必要があるところ、集電体に電池電極用組成物を塗布、乾燥するときに有機溶媒が揮散するという不具合がある。また、結着力が劣るため、十分な結着力を得るためにポリマーバインダーを多量に配合する必要があり、二次電池の導電性が阻害されるという不具合がある。
【0004】
そのため、上記不具合を改良すべく、として、非フッ素系ポリマーの水分散体を用いた電池電極用組成物が、種々提案されている。
例えば、特開2003−217573号公報(特許文献1)では、特定水溶性高分子と最低造膜温度を規定した水分散エマルジョン樹脂をポリマーバインダーとした特定の粘性特性をもつ電池電極用組成物を用いることで、サイクル性、保存特性、安全性に優れた二次電池を得ることが提案されている。
【0005】
また、特開2003−308841号公報(特許文献2)では、特定水溶性高分子と粒子径及びガラス転移温度を規定した水分散エマルジョン樹脂を、ポリマーバインダーとして用いることで、放電特性、充放電サイクル耐性、安全性に優れた二次電池を得ることが提案されている。
また、特開平04−342966号公報(特許文献3)では、カルボキシメチルセルロースとスチレンブタジエンゴムをポリマーバインダーとして用いることで、充放電サイクル寿命に優れ、かつ高い容量維持率を持つ非水溶媒二次電池を得ることが提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の電池電極用組成物は、平均分子量5000〜12000のポリアクリル酸またはポリアクリル酸塩(A)と、数平均粒子径が50〜300nmであるカルボキシ変性共重合体ラテックスであって、かつ該共重合体ラテックスの重量平均粒子径と数平均粒子径の比(重量平均粒子径/数平均粒子径)が1.05以上であることを特徴としているバインダー(B)を含有する。
【0013】
本発明の電池電極用組成物に使用するポリアクリル酸またはポリアクリル酸塩(A)の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができ、特に好ましくはリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩である。
【0014】
上記ポリアクリル酸またはポリアクリル酸塩(A)の分子量が5000未満では電池電極用組成物の粘度が低くなりすぎ、集電体への塗工性が悪化する。一方、分子量が12000を越えると、組成物の粘度が経時で上昇し、塗工作業性が悪化したり、得られる電極塗工層の結着力が低下する傾向がある。
【0015】
本発明の電池電極用組成物に使用するバインダー(B)は、数平均粒子径が50〜300nmであるカルボキシ変性共重合体ラテックスであって、かつ該共重合体ラテックスの重量平均粒子径と数平均粒子径の比(重量平均粒子径/数平均粒子径)が1.05以上である。該カルボキシ変性共重合体ラテックスは、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を必須成分とし、これと共重合可能な他の単量体を共重合して得られるものである。
【0016】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)などが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、アクリル酸、フマル酸、イタコン酸が挙げられる。
【0017】
エチレン系不飽和カルボン酸単量体の共重合比率は0.1〜10重量%であることが好ましい。
エチレン系不飽和カルボン酸単量体が0.1重量%未満では、共重合体ラテックス自身および電池電極用組成物の安定性が劣る可能性があり、また10重量%を超えると共重合体ラテックスの粘度が高くなり、共重合体ラテックス自身の取り扱い上の問題を生じる可能性があるため好ましくない。さらに好ましくは0.5〜7重量%である。
【0018】
これと共重合可能な他の単量体としては、脂肪族共役ジエン系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、アルケニル芳香族単量体、シアン化ビニル系単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド系単量体等が挙げられ、これらは、1種または2種以上用いることができる。
【0019】
脂肪族共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、1,3−ブタジエンが挙げられる。
【0020】
不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなど、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなど、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、例えば、ジメチルマレエート、ジエチルマレエートなど、炭素数1〜4のアルキル基を有するマレイン酸アルキルエステル、例えば、ジメチルイタコネートなど、炭素数1〜4のアルキル基を有するイタコン酸アルキルエステル、例えば、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレートなど、炭素数1〜4のアルキル基を有するフマル酸アルキルエステルなどが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、より好ましくは、メチルメタクリレートが挙げられる。
【0021】
アルケニル芳香族単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼンなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0022】
シアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。
【0023】
ヒドロキシアルキル基含有不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、2−ヒドロキシエチルアクリレートが挙げられる。
【0024】
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、アクリルアミド、メタクリルアミドが挙げられる。
さらに、上記各単量体の他に、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのラジカル重合可能な単量体を用いることもできる。
【0025】
そして、単量体組成物を水中で乳化重合することにより、共重合体ラテックスを得る。
単量体組成物を乳化重合する際には、乳化剤、重合開始剤、還元剤、連鎖移動剤、酸化還元触媒、炭化水素系溶剤、電解質、重合促進剤、キレート剤等を使用することができる。
乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤あるいはポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型等のノニオン性界面活性剤が挙げられ、これらを1種又は2種以上使用することができる。特に、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩が好ましい。
乳化剤は、特に限定されないが、単量体組成物100重量部に対して、例えば、0.05〜8重量部、好ましくは、0.1〜5重量部の割合で配合される。
【0026】
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であって、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性重合開始剤、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどの油溶性重合開始剤が挙げられる。好ましくは、水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムが挙げられ、油溶性重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0027】
還元剤としては、硫酸第一鉄、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩など、さらに、例えば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類およびその塩、例えば、デキストロース、サッカロースなどの還元糖類、例えば、ジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。好ましくは、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、が挙げられる。
【0028】
連鎖移動剤としては、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタンなどの炭素数6〜18のアルキル基を有するアルキルメルカプタン、例えば、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン化合物、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラム化合物、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノールなどのフェノール化合物、例えば、アリルアルコールなどのアリル化合物、例えば、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素化合物、例えば、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミドなどのビニルエーテル、さらに、ターピノレン、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、n−オクチルメルカプタンやt−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。これらの連鎖移動剤の量は特に限定されないが、例えば、単量体100重量部に対して0〜5重量部、好ましくは、0.05〜3重量部の割合にて使用される。
【0029】
また、乳化重合において、必要により、炭化水素系溶剤として、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素、例えば、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などを使用することができる。特に、沸点が適度に低く、重合終了後に水蒸気蒸留などによって回収、再利用しやすいシクロヘキセンやトルエンが、環境負荷の観点から好適である。
【0030】
また、その他の助剤として、必要により、例えば、老化防止剤、防腐剤、分散剤、増粘剤などを使用することができる。
また、重合方法としては、特に限定されず、バッチ重合、セミバッチ重合、シード重合などを用いることができる。また、各種成分の添加方法についても特に制限されるものではなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、パワーフィード法などを用いることができる。本発明においては、これらのうち、共重合体ラテックスを2段階以上、好ましくは3段階の多段重合にて乳化重合することが好ましい。
【0031】
上記共重合体ラテックスの数平均粒子径は50〜300nmであり、かつ、該共重合体ラテックスの重量平均粒子径と数平均粒子径の比(重量平均粒子径/数平均粒子径)が1.05以上であることが必要である。
数平均粒子径が50nm未満では、ラテックス粒子のコロイド安定性が劣り、電池電極用組成物作製時に凝集物が発生し問題である。数平均粒子径が300nmを超えると、活物質との結着性が劣り活物質の脱落が発生し、電池特性の低下につながる。
該共重合体ラテックスの重量平均粒子径と数平均粒子径の比(重量平均粒子径/数平均粒子径)が1.05未満では、電池電極用組成物の粘度の経時変化が大きく、集電体へ塗工する際の塗工適性が低下したり、得られる電極塗工層の結着力が低下する。好ましくは、1.05以上3.0未満である。
【0032】
該共重合体ラテックスの数平均粒子径が50〜300nmであり、かつ、該共重合体ラテックスの重量平均粒子径と数平均粒子径の比(重量平均粒子径/数平均粒子径)を1.05以上にするための方法は特に限定されないが、例えば、乳化共重合中に乳化剤を分割添加、連続添加、後添加する方法、または、乳化共重合中にシード粒子を分割添加、連続添加、後添加する方法、または乳化共重合中に媒体に溶解するエチレン系不飽和カルボン酸単量体等を分割添加、連続添加、後添加する方法、さらには、乳化共重合中に重合温度を変化させること等により可能である。また、2種以上の異なる粒子径を有する共重合体ラテックスをブレンドすることでも達成可能である。
【0033】
また、得られた共重合体ラテックスのトルエンに対する不溶分(ゲル含有量)は、特に限定されないが、50〜100重量%が好ましい。さらに好ましくは、60〜99重量%である。ゲル含有量が50重量%未満であると、電極塗工層の結着力が低下する傾向や、電極塗工層の粘着力が増大して作業性が低下する傾向がある。
【0034】
そして、本発明の電池電極用組成物は、例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などの二次電池の電極を形成するために用いられる。
以下に、リチウムイオン二次電池における本発明の電池電極用組成物について、具体的に説明する。
リチウムイオン二次電池における本発明の電池電極用組成物は、正極活物質を配合することにより、電池の正極に用いられる正極用組成物が調製される。また、電池電極用組成物に負極構成材を配合することにより、電池の負極に用いられる負極用組成物が調製される。
【0035】
正極活物質としては、特に限定されないが、例えば、MnO2、MoO3、V2O5、V6O13、Fe2O3、Fe3O4などの遷移金属酸化物、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiXCoYSnZO2などのリチウムを含む複合酸化物、LiFePO4などのリチウムを含む複合金属酸化物、例えば、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、例えば、CuF2、NiF2などの金属フッ化物が挙げられ、1種あるいは2種以上用いることができる。
【0036】
負極構成材としては、特に限定されないが、非水電解液二次電池の場合、例えば、フッ化カーボン、黒鉛、炭素繊維、樹脂焼成炭素、リニア・グラファイト・ハイブリット、コークス、熱分解気層成長炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ系炭素、黒鉛ウィスカー、擬似等方性炭素、天然素材の焼成体、およびこれらの粉砕物などの導電性炭素質材料、例えば、ポリアセン系有機半導体、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子などが挙げられ、1種あるいは2種以上用いることができる。
【0037】
本発明の電池電極用組成物を調製する場合には、バインダー(B)を、正極活物質または負極構成材100重量部に対して、共重合体ラテックスの固形分が、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部となるように配合する。
正極活物質または負極構成材100重量部に対する共重合体ラテックスの固形分が、0.1重量部未満では、集電体などに対する良好な結着力が得られない傾向があり、10重量部を超えると、二次電池として組み立てた際に、過電圧が著しく上昇し、電池特性を低下させる傾向がある。
【0038】
本発明の電池電極用組成物に使用するポリアクリル酸またはポリアクリル酸塩(A)は、バインダー(B)100重量部に対して固形分換算で、例えば、0.01〜10重量部、好ましくは、0.05〜7重量部の割合で配合する。
なお、本発明の電池電極用組成物において、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸塩(A)とバインダー(B)の添加方法は特に制限されず、(A)と(B)を別々に添加しても良いし、あらかじめ(A)と(B)を混合してから活物質と配合しても良い。
【0039】
また、本発明の電池電極用組成物には、必要により、水溶性増粘剤、分散剤、安定化剤などの各種添加剤を添加することができる。水溶性増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、上記(A)よりも高分子量のポリアクリル酸(塩)、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼインなどが挙げられる。分散剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダなどが挙げられる。安定化剤としては、例えば、ノニオン性、アニオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0040】
本発明の電池電極用組成物に水溶性増粘剤を添加する場合には、例えば、水溶性増粘剤を、正極活物質または負極構成材100重量部に対して固形分換算で、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは、0.5〜5重量部の割合で配合する。
本発明の電池電極用組成物は、集電体に塗工、乾燥されることにより、集電体上に電極塗工層を形成し、電極シートを得る。得られた電極シートは、リチウムイオン二次電池の正極板または負極板として用いられる。
【0041】
集電体としては、正極用集電体として、例えば、アルミニウムなどの金属箔が挙げられ、負極用集電体として、例えば、銅やニッケルなどの金属箔が挙げられる。
電池電極用組成物を集電体に塗布する方法としては、リバースロール法、コンマバー法、グラビヤ法、エアーナイフ法などの公知の方法を用いることができ、乾燥には、放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが用いられる。乾燥温度は、通常、50℃以上である。
【0042】
このような本発明の電池電極用組成物によれば、分散が良好になることで、組成物の経時安定性に優れ集電体への塗工適性が良好となり、集電体や活物質との結着力に優れた電極塗工層を形成することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、配合割合を示す部および%は重量基準によるものである。
【0044】
1.共重合体ラテックスの合成
耐圧性の重合反応器に、純水90部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部、過硫酸カリウム1.0部を仕込み、十分攪拌した後、表1に示す1段目の各単量体およびシクロヘキセン2.0部を加えて70℃で重合を開始した。重合開始1.5時間後から重合温度を73℃に上げて保ち、表1に示す2段目の各単量体とその他の化合物およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1部と純水10部の混合物を7時間で連続的に添加した。次いで、表1に示す3段目の各単量体とその他の化合物を0.5時間で連続的に添加した後、温度を75℃に上げて保ち、重合転化率97%以上になったことを確認して重合を終了した。
次いで、水酸化リチウム水溶液を用いてpHを約7に調整した後、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、共重合体ラテックス(B−1)を得た。
また、表1および表2に示す条件を変更する以外は、共重合体ラテックス(B−1)と同様の方法にて、共重合体ラテックス(B−2)〜(B−7)を得た。さらに、共重合体ラテックス(B−3)については、2段目の重合の際に、表1に記載の量のシード粒子を添加した。
【0045】
2.共重合体ラテックスの物性の測定
(1)数平均粒子径及び重量平均粒子径の測定
共重合体ラテックスの数平均粒子径および重量平均粒子径は、MAtec Applied Sciences社のCHDF2000を用いて測定した。尚、測定は以下の条件にて行った。測定結果から共重合体ラテックス(B−1)〜(B−7)の重量平均粒子径と数平均粒子径の比(重量平均粒子径/数平均粒子径)を求めた。結果を表1および表2に示した。
(測定条件)
・
カラム温度35℃
・
キャリアー流量1.4ml/min
・
サンプル濃度0.5〜1.0重量%
(2)ゲル含量の測定
温度50℃、湿度85%の雰囲気にて各共重合体ラテックスのフィルムを作製した。作製したラテックスフィルムを約1g秤量し、これを400mlのトルエンに入れ48時間膨潤溶解させた。その後、これを300メッシュの金網で濾過し、金網に捕捉された不溶部を乾燥後、秤量した。ラテックスフィルムの重量に対する、トルエン不溶分の乾燥重量の百分率を算出した。測定結果を表1および表2に示した。
【0046】
3.電極用組成物の作成
(1)正極用組成物の作成
正極活物質としてLiCoO2を100部、導電剤としてアセチレンブラックを5部、結着剤として固形分換算で、ポリアクリル酸ナトリウム(A−1)水溶液0.2部、共重合体ラテックス(B−1)3部及びカルボキシメチルセルロース水溶液1部とを全固形分が40%となるように適量の水を加えて混練し、正極用組成物を調製した。
同様にして、表3に記載された組み合わせで、ポリアクリル酸ナトリウム(A−2)〜(A−4)と共重合体ラテックス(B−2)〜(B−7)を用いて実施例2〜5、比較例1〜5の正極用組成物を作成した。
実施例6は、あらかじめポリアクリル酸ナトリウム(A−1)水溶液と共重合体ラテックス(B−3)を混合した以外は、実施例3と同様の操作で正極用組成物を調製した。
また比較例6は、ポリアクリル酸ナトリウム(A−1)を添加しなかった以外は、実施例3と同様の操作で正極用組成物を調製した。
(2)負極用組成物の作成
導電性炭素質材料として平均粒子径が20μmの天然黒鉛を使用し、天然黒鉛100重量部に対して固形分換算で、ポリアクリル酸ナトリウム(A−1)水溶液0.2重量部、共重合体ラテックス(B−1)3部、カルボキシメチルセルロース水溶液1部とを、全固形分が40%となるように適量の水を加えて混練し、負極用組成物を調製した。
同様にして、表3に記載された組み合わせで、ポリアクリル酸ナトリウム(A−2)〜(A−4)と共重合体ラテックス(B−2)〜(B−7)を用いて実施例2〜5、比較例1〜5の負極用組成物を作成した。
実施例6は、あらかじめポリアクリル酸ナトリウム(A−1)水溶液と共重合体ラテックス(B−3)を混合した以外は、実施例3と同様の操作で負極用組成物を調製した。
また比較例6は、ポリアクリル酸ナトリウム(A−1)を添加しなかった以外は、実施例3と同様の操作で負極用組成物を調製した。
【0047】
4.電池電極用組成物の評価
(1)電池電極用組成物の粘度の経時変化(経時安定性)
上記にて得られた電池電極用組成物の作製直後の粘度と室温放置3時間後の粘度を測定し、下記のとおり評価した。評価結果については表3に示した。
R = |作製直後粘度−室温放置3時間後粘度|/作製直後粘度
○:0≦R≦0.5 :経時安定性が良好
△:0.5<R≦1 :経時安定性が悪い
×:R>1 :経時安定性が非常に悪い
【0048】
5.電極の作製
(1)正極の作成
各々の正極用組成物を、集電体となる厚さ20μmのアルニミウム箔の両面に塗布し、120℃で5分間乾燥し、熱プレスで圧縮成型して実施例1〜6および、比較例1〜6の正極をそれぞれ作成した。塗工層の厚みが80μm(片面あたり)の正極を得た。これらの評価内容については以下のとおりである。評価結果については表3に示した。
(2)負極の作成
各々の負極用組成物を、集電体となる厚さ20μmの銅箔の両面に塗布し、120℃で5分間乾燥し、熱プレスで圧縮成型して実施例1〜6および、比較例1〜6の負極をそれぞれ作成した。塗工層の厚みが80μm(片面あたり)の負極を得た。これらの評価内容については以下のとおりである。評価結果については表3に示した。
【0049】
6.電極の評価
(1)電極の結着力評価
上記の方法で得られた電極の表面に、ナイフを用いて塗工層から集電体に達する深さまでの切り込みを2mm間隔で縦横それぞれ6本入れ、25個(5個×5個)のマス目を有する碁盤目を形成した。この切り込みに粘着テープを貼り付けて直ちに引き剥がし、活物質の脱落の程度を目視判定で、下記の通り評価した。評価結果については表3に示した。
5点:脱落なし
4点:1〜3個のマス目が脱落
3点:4〜10個のマス目が脱落
2点:11〜19個のマス目が脱落
1点:20〜25個のマス目が脱落
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれるものである。