(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施の形態の例につき、適宜図面に基づいて説明する。なお、当該形態は、下記の例に限定されない。
【0018】
[第1形態]
図1は第1形態に係る空気圧縮機排熱回収システム1の模式図であって、空気圧縮機排熱回収システム1は、工場に設置されており、外気Aを圧縮して圧縮空気C2とする空気圧縮機2と、圧縮空気C2を受け入れるエアレシーバー4と、各種媒体を冷却する冷却手段としてのクーリングタワー(CT)6,8と、温水を蓄える温水タンク10と、温水タンク10に対し供給量調節弁11を介して蒸気J(他熱)を供給可能に接続された図示しない蒸気発生手段(他熱源)と、当該温水を加熱利用のため導入可能な、空調装置,デシカント空調の再生,塗装・食品・接着剤・化学薬品等の乾燥,脱脂槽,洗浄槽,成型機等の金型,殺菌の内の少なくとも何れかとして例示される加熱負荷Hを備えている。なお、他熱源として、電気ヒーターやヒートポンプ(HP)、あるいはこれらの組合せ等を採用して良い。
【0019】
空気圧縮機2は、外気Aの導入口に設置されたエアーフィルター20と、導入された外気Aを圧縮して圧縮空気B1とする第1空気圧縮部22と、圧縮空気B1を冷却して圧縮空気B2とするインタークーラー24と、圧縮空気B2を圧縮して圧縮空気C1とする第2空気圧縮部26と、圧縮空気C1の通路に設置され加熱された圧縮空気C1との熱交換により温水を加熱する排熱回収器27と、排熱回収器27通過後の圧縮空気C1を冷却して圧縮空気C2とするアフタークーラー28を有する。なお、第1空気圧縮部22と第2空気圧縮部26は直列に接続されている。又、圧縮空気C1の通路(排熱回収器27の上流側)には逆止弁30が配置されている。更に、圧縮段数(空気圧縮部の数)は、1でも良いし、3以上であっても良い。加えて、1段目の圧縮空気の熱を活用するため、インタークーラー24の前に排熱回収器27を設置しても良い。
【0020】
CT6は、空気圧縮機2のインタークーラー24及びアフタークーラー28と、それぞれ冷水配管40,42により接続されており、それぞれから戻って来た冷水を冷却してそれぞれに供給する。
【0021】
温水タンク10には、空気圧縮機2の排熱回収器27により加熱された温水を受ける温水戻り配管50と、温水供給ポンプ(インバーター制御)52が介装される加熱負荷Hへの温水供給配管54が接続される。
【0022】
又、CT8は、冷却量調整手段としての三方弁60が介装された加熱負荷Hからの温水配管62から温水を受け、これを適宜冷却して、三方弁60の分岐管(温水配管)64が合流し排熱回収器27へ至る温水配管66へ供給する。
【0023】
なお、各種温度を測定する図示しない各種の温度センサが配置されると共に、これらと電気的に接続された、空気圧縮機排熱回収システム1を制御する図示しない制御手段が設置されている。当該制御手段は、別体の制御装置であっても良いし、CT8を始めとする何れかの装置の制御手段(CPU等)であっても良いし、互いに通信可能な各種装置の制御手段の組合せであっても良いし、これらの組合せであっても良い。
【0024】
このような空気圧縮機排熱回収システム1の動作例は、次の通りである。
【0025】
即ち、空気圧縮機2は、エアーフィルター20を介して導入した外気Aを、第1空気圧縮部22で圧縮して圧縮空気B1とし、インタークーラー24に通す。圧縮空気B1は、圧縮により150〜190℃に昇温されて排気される。インタークーラー24は、CT6で冷却された冷水(30℃)を、冷水配管40を通じて受けており、通過する圧縮空気B1を、当該冷水との熱交換により冷却して圧縮空気B2とする。当該冷水は、圧縮空気B1との熱交換により加温され(40℃)、CT6に戻って、冷却のうえで循環される。
【0026】
第2空気圧縮部26は、圧縮空気B2を導入して更に圧縮し、圧縮空気C1(150〜190℃)を生成して、逆止弁30を介し排熱回収器27へ送る。排熱回収器27は、受け入れている温水(60℃)を、圧縮空気C1との熱交換により加熱し(70℃)、温水戻り配管50を通じて温水タンク10へ案内する。なお、排熱回収器27を通過した圧縮空気C1の温度は、温水との熱交換により低下する。
【0027】
温水タンク10の温水は、インバーター制御された温水供給ポンプ52により、温水供給配管54を通じて加熱負荷Hへ供給され、加熱負荷Hで加熱に供され温度降下して戻って来た温水配管62の温水は、分岐管64や温水配管66を通じて排熱回収器27へ供給される。
【0028】
温水配管62に介装されたCT8は、三方弁60により分岐されない温水を適宜冷却し、温水配管66や排熱回収器27,温水戻り配管50等における温水が温度制限(80℃以下)を逸脱しないようにする。三方弁60は、温水配管62からの温水(61℃)を受け、適宜CT8の運転状況や温水温度(好ましくは排熱回収器27の温水出口温度)等を参照し、温水分岐量(CT8で冷却する温水の量あるいは熱量)を制御して、温水配管66における温水温度(排熱回収器27への導入温水温度)を所定(範囲内の)温度とする(60℃)。
【0029】
又、(温水タンク10内の)温水温度(排熱回収器27により回収された温水の温度,加熱負荷Hへ供給される温水温度)が所定値以下となると、蒸気発生手段が作動し、蒸気J(160℃)を生成して温水タンク10へ供給し、熱交換により温水を加熱して温水温度を上昇させる。温水の温度上昇量(熱交換に供される蒸気Jの熱量)は、供給量調節弁11により調節される。
【0030】
そして、排熱回収器27からの圧縮空気C1は、冷水配管42より冷水(30℃)が導入されたアフタークーラー28を通過し、冷水との熱交換により冷却されて圧縮空気C2となり、エアーレシーバー4へ向けて出力される。熱交換後の冷水(40℃)は、冷水配管42を介してCT6に戻り、冷却後再度アフタークーラー28へ供給される。
【0031】
この動作例につき主に
図2を用いて詳述すると、制御手段は、ステップS1(S1,以下同様)を実行し、空気圧縮機2が運転中であるか否か判断する。運転中でないと(No)、処理を終了し、運転中であると(Yes)、S2へ移行して、温水供給ポンプ52が運転中であるか否かを確認する。
【0032】
制御手段は、温水供給ポンプ52が運転中でなければ(No)、処理を終了し、運転中であると(Yes)、排熱回収器27から出た温水の温度(出口温度)が設定値(70℃)より特定値(5℃)だけ高い温度以下であるか否かを判断し(S3)、当該温度以下でなければ(No)、後述のループ2を実行し、当該温度以下であれば(Yes)、排熱回収器27出口温度が設定値より既定値(5℃,特定値と異なっても良い)だけ低い温度以下であるか否かを判断して(S4)、当該温度以下でなければ(No)、S3に戻り処理を繰り返す。
【0033】
一方、制御手段は、排熱回収器27出口温度が当該温度以下であれば、次に説明するループ1を実行する。即ち、制御手段は、CT8に係る三方弁60につき分岐管64側を徐々に開放し(S5)、温水タンク10内温度が設定温度(70℃)より所定値(8℃,特定値あるいは規定値と同じでも良い)だけ低い温度以下であるか否かを確認して(S6)、当該温度以下であると(Yes)、蒸気Jの供給量調節弁11を開放し、当該温度以下でないと(No)、供給量調節弁11を閉じる。制御手段は、ループ1の実行後、S3へ移行する。
【0034】
他方、制御手段は、上述のS3でNoとなると、次に説明するループ2を実行する。即ち、制御手段は、CT8に係る三方弁60につきCT8側を徐々に開放する(S9)。制御手段は、ループ2の実行後、S3へ移行する。
【0035】
以上の空気圧縮機排熱回収システム1では、圧縮空気C1の熱との熱交換により温水を加熱する排熱回収器27と、当該温水を加熱する蒸気発生手段と、当該蒸気発生手段及び/又は排熱回収器27により加熱された前記温水を使用する加熱負荷Hと、加熱負荷Hからの前記温水を排熱回収器27に導く温水配管62,64,66と、温水配管62における前記温水を冷却可能なCT8を備えている。
【0036】
従って、排熱回収器27による熱回収が少なく加熱負荷Hに供給する温水の温度が十分でない場合に、蒸気Jにより温水を加熱することで温水温度を所定温度(70℃)以上に安定して供給することができ、温水について加熱負荷Hに支障の生じない温度とすることができ、ボイラー給水加温は勿論、例えばワークの塗装における脱脂液の加温(40〜60℃)や洗浄液の加温(35〜50℃)等に用いることができるし、作動に特定温度(50℃)以上の温水を必要とするものの極めて省エネルギーで低環境負荷(二酸化炭素排出量の低減等)であるHP式蒸気発生装置を使用することもでき、化石燃料で作動する工場のボイラーと置き換えて省エネルギー性や環境性能を向上することが可能となる。
【0037】
又、排熱回収器27による熱回収が多い場合に、CT8を作動させて温水を冷却することで、温水温度が所定制限温度(80℃)を超える事態の発生を防止することができ、加熱負荷Hの所望する上限温度に合わせ安定させることができるし、温水戻り配管50や温水供給ポンプ52等に係る温水の制限温度(パッキンの使用可能温度等)を守ることができる。
【0038】
なお、蒸気Jに代えて、HPを設置して良い。即ち、温水タンク10の温度が工場空気使用量の減少や導入外気温度の低下、あるいは加熱負荷Hの増加等により下がった場合、当該HPによる加熱量を上げ、温水タンク10の温度が逆に上がった場合、当該HPによる加熱量を下げる。ここで、HPは、空冷式でも良いし、排熱回収型であっても良い。又、CT6の冷却水(40℃等)を熱源に排熱回収型HPで温水を加熱しても良いし、工場に冷却負荷がある場合に、冷水を供給しながら温水を供給しても良い。更に、排熱回収器27の出口温水温度を制御することに代えて、温水タンク10の温度を監視して三方弁60を制御しても良い。加えて、三方弁60による制御に代えて、CTに係るファン回転数の制御あるいはオンオフ制御を行うことができるし、CT8による冷却に代えて、CT6の冷却水や井戸水、あるいはヒートポンプによる冷却を採用しても良い。
【0039】
又、加熱負荷Hが排熱回収器27の回収熱量より大きい場合における動作等につき、次の通りに変更することが可能である。即ち、CT8・三方弁60・蒸気Jに代えて、温水配管54(温水ポンプ52の後)に配置され温水配管62へ分岐する三方弁(温度調節手段)を設け、排熱回収器27への温水温度を制御する。温水配管66における温水温度が設定値より低ければ、当該分岐の量を増やすことで加熱負荷Hとの熱交換量を少なくし、温水配管66における温水温度が上がれば、当該分岐量を減らすことで加熱負荷Hとの熱交換量を増やす。なお、加熱負荷Hへの供給熱量が不足する場合に、加熱負荷Hへ別の熱交換器により蒸気等を供給しても良い。
【0040】
[第2形態]
図3は第2形態に係る空気圧縮機排熱回収システム101の模式図であって、空気圧縮機排熱回収システム101は、第1形態と同様に成るが、加熱負荷Hから排熱回収器27への温水配管が異なる。
【0041】
即ち、加熱負荷Hからの温水配管62が、温水タンク110に接続されており、温水タンク110から排熱回収器27へ、温水配管66が延びていて、温水配管66にCTは無く、排熱回収器27への温水の供給量を調整する調節手段としての温水回収ポンプ102が介装されている。
【0042】
動作例としては、温水温度(排熱回収器27の出口温度)が設定値(70℃あるいはその±1℃等)になるように、温水回収ポンプ102につきインバーターによる流量制御を行い、温水温度が低い場合、温水流量を絞って(排熱回収量を減らして)温水温度を上昇させ、温水温度が高い場合、流量を増加して(排熱回収量を増やして)温水温度を下げる。
【0043】
この点主に
図4に基づいて詳細に説明すると、制御手段は、第1形態と同様にループ1又はループ2の実行の振り分けを行い、ループ1においては、第1形態に係る三方弁60の分岐側の開放(S5)に代えて、温水回収ポンプ102の流量の減少を行い(S21)、ループ2においては、第1形態に係る三方弁60のCT側の開放(S9)に代えて、温水回収ポンプ102の流量の増加を指令する(S22)。
【0044】
空気圧縮機排熱回収システム101では、インバーター制御される温水回収ポンプ102により、温水温度に応じて排熱回収器27への温水流量を調節するため、シンプルな構成において制限温度以下所望温度以上で安定した温水の供給を実現することができる。
【0045】
[第3形態]
図5は第3形態に係る空気圧縮機排熱回収システム201の模式図であって、空気圧縮機排熱回収システム201は、第2形態と同様に成るが、排熱回収型のHP202がCT6と温水タンク110の間に配置されている点で相違する。HP202は、図示しないHPサイクルにおける放熱部からの熱を温水に適用して温水を加熱すると共に、吸熱部からの冷熱を冷水に適用して冷水を冷却する。
【0046】
HP202の温水側には、温水タンク110へ温水を供給する温水往き管204、及び温水ポンプ206を有する温水タンク110からの温水戻り管208が接続されている。一方、HP202の冷水側には、インタークーラー24及び、アフタークーラー28への冷水配管40に合流する冷水往き管210、及びCT6へ戻る冷水配管40に介装された三方弁212の分岐管である冷水戻り管214が接続されている。
【0047】
動作例として、加熱負荷Hの増大や空気圧縮量の減少、あるいは導入外気吸入温度の低下等により温水温度が下がった場合、HP202を運転し、温水タンク110内の温水につき、温水ポンプ206の作動した温水戻り管208を通じ導入して加熱し、温水往き管204を介して温水タンク110に戻す。HP202は、温水の加熱に併せて冷水の冷却も行い、三方弁212により分岐冷水量(即ち冷水冷却量)を制御されて冷却された冷水は、冷水配管40へ戻される。なお、HP202による加熱によっても温水温度が(規定値以上に)上がらない場合、補助的に蒸気Jを供給して温水温度を上げ、蒸気Jによるバックアップを確保する。
【0048】
空気圧縮機排熱回収システム201では、空気圧縮機2の冷却水を熱源として稼働し温水を加熱して供給する排熱回収型のHP202を備えており、温水の加熱にHPサイクルの成り立つHP202を用いるため、蒸気J等による加熱に比べ省エネルギーで低環境負荷とすることができ、更に冷水の冷却も行えて、CT6の運転量を減少させ、より一層省エネルギーで低環境負荷とすることができる。
【0049】
[第4形態]
図6は第4形態に係る空気圧縮機排熱回収システム301の模式図であって、空気圧縮機排熱回収システム301は、第2形態と同様に成るが、空気圧縮機2が炉Fの有る工場に設置される点や、排熱回収器27に係る回路の点で相違する。
【0050】
即ち、空気圧縮機2に隣接して炉F(ここでは塗装の焼付け炉であるが乾燥炉等であっても良い)が配置されており、炉Fには、炉F内の一部の空気を排気Dとして排出する排気路302及び排気ブロワー304と、炉F内の他の一部の空気を循環させる循環路306及び循環ブロワー308と、排熱回収器27からの温風を受ける温風路310が接続されている。
【0051】
循環路306には、ヒーター312(他熱源)が介装されており、ヒーター312には、供給量調節弁314を介して都市ガスGが接続されていて、供給量を調整された都市ガスGにより発熱量を制御されて発熱するヒーター312が、熱交換により循環路306の空気を加熱する。なお、他熱源につき、下記基エアーや温風、あるいはこれらの組合せを加熱するものとして良い。
【0052】
一方、排熱回収器27には、ブース空調(工場空調)Tからのフレッシュエアーが案内される基エアー通路320が接続されており、基エアー通路320には、基エアーブロワー322と、炉Fに対する温風の温度(熱量)を調節する(排熱回収器27への基エアーの量,排熱回収器27における基エアーと圧縮空気C1の熱交換量,排熱回収器27における温風生成量を調整する)ための排熱交換量調整手段(温風温度調節手段)あるいは調節手段としての三方弁(ダンパー)324が介装されている。三方弁324には、温風路310に達する分岐路326も接続されている。
【0053】
三方弁324における排熱回収器27に対するエアーの供給量(ブース空調Tからの導入量と分岐量の差)は、図示しない温風温度センサにより把握した温風温度(あるいは炉Fの温度やこれらの組合せ等)に基づき制御される。なお、三方弁324に代えて、又はこれと共に、2つのブロワーを用いることも可能である。即ち、一方のブロワーを排熱回収器27側へ送風するように向け、他方のブロワーを分岐路326側へ送風するように向けて、それぞれのブロワーの送風量を制御手段により調整する。
【0054】
動作例として、フレッシュエアー(20℃)が三方弁324における調整のうえで排熱回収器27に導入され、圧縮空気C1(150〜190℃)との熱交換により加熱されて温風(150℃)となり、分岐路324からのフレッシュエアーと適宜混合されたうえで(140℃)、炉Fに供給される。炉F内の空気(温風)は、適宜ヒーター312から加熱を受けた循環空気を受けることで、所定要求温度(120℃,焼付け不足とならない下限温度)以上となる。又、一部の炉F内の空気は排気路302を介して大気へ排気D(120℃)として排出される。
【0055】
制御手段は、圧縮空気C2の工場使用量の変動等による空気圧縮機2の排熱量の変化に次のように対応する。即ち、排熱量が少なくて排熱回収量が少なくなった場合(工場における圧縮空気の使用量減少あるいは導入外気吸入温度の低下等)、温風供給温度が要求温度に照らし十分でない場合、三方弁324の分岐量を減らして排熱回収器27での熱交換量を増やし、それでも要求温度を満たせそうにないと、要求温度維持のためヒーター(他熱源)312の熱量が増加する。一方、排熱回収量が多く、温風供給温度(及び/又は炉Fの温度)が管理値(所定上限値,品質劣化等の焼付け不良を防止するため設定する上限温度)を超える場合、三方弁324の分岐量を増やして排熱回収器27での加熱量を減らして管理値以下の温風温度等を維持し、品質劣化等の不具合発生を防ぐ。
【0056】
この点主に
図7に基づき一例を詳述すると、制御手段は、ステップS41を実行し、空気圧縮機2が運転中でないと(No)、処理を終了する。又、制御手段は、S41でYesであると、炉Fが運転中であるか判断し(S42)、運転中でなければ処理を終了する(No)。
【0057】
一方、制御手段は、S42でYesであると、炉F内の温度が所定の設定値(120℃)から特定値(5℃)だけ高い温度(上限値)以下であるか否か確認し(S43)、Noであれば後述のループ2を実行し、Yesであれば更に炉F内の温度が所定の設定値から規定値(5℃,特定値と異なっても良い)だけ低い温度(下限値)以下であるか否か確認して(S44)、NoであればS43に移行する。
【0058】
制御手段は、S44でYesであれば、炉F内温度を設定値に向けて上昇させるためにループ1(S45〜S47)を実行する。即ち、まず三方弁324につき徐々に排熱回収器27側に開放して分岐側を閉める(S45)。次に、三方弁324につき排熱回収器27側に全開となったか否かを判断し(S46)、全開である場合(Yes)のみ、都市ガスGの供給量調節弁314を徐々に開いて(S47)、ヒーター312による加熱量を徐々に増やす。制御手段は、ループ1実行後、S43へ戻る。
【0059】
他方、上述のようにS43でNoである場合、制御手段は、炉F内温度を設定値に向けて下降させるためにループ2(S48〜S50)を実行する。即ち、都市ガスGの供給量調節弁314を閉止しているか否かを判断し(S48)、閉止していれば(Yes)、三方弁324につき徐々に排熱回収器27側を絞って分岐量を増やし(S49)、閉止していなければ(No)、都市ガスGの供給量調節弁314を徐々に絞ってヒーター312による加熱量を徐々に減らす(S50)。制御手段は、ループ2実行後、S43へ戻る。
【0060】
以上の空気圧縮機排熱回収システム301では、基エアーを排熱回収器27で温風として炉Fに導入し、回収排熱が少ない場合は、都市ガスGのヒーター312(他熱源)で炉Fの温度を維持し(バックアップ)、又排熱回収器27への基エアー導入量を増やし、回収排熱が多い場合は、ヒーター312を弱める。又、排熱回収器27への基エアー導入量を増減させるため、炉Fの温度を適切に維持しながら、都市ガスGの使用量を可及的に低減して省エネルギー性能や低環境負荷性能を極めて良好なものとすることができる。
【0061】
なお、三方弁324に代えて、HP(温風発生型や温水から温風を発生するもの,空冷式あるいは排熱回収型等)を配置し、排熱回収器27への送風温度(基エアー温度)を調整しても良い。即ち、ワーク投入量増加等により炉F内の温度が下がった場合、当該HPによる基エアーに対する加熱量を多くして基エアー温度を上げ、ワーク投入量減少等により炉F内の温度が上がった場合、当該HPによる基エアーに対する加熱量を少なくして基エアー温度を下げる。又、CT6の冷却水(40℃等)を熱源として排熱回収型HPで温風を生成して良いし、工場に冷却負荷が存在する場合等に当該冷却負荷のために冷水を供給しつつ温風を供給するようにして良い。
【0062】
[第5形態]
図8は第5形態に係る空気圧縮機排熱回収システム401の模式図であって、空気圧縮機排熱回収システム401は、第4形態と同様に成るが、HP202がCT6と基エアー通路320の間に配置されている点で相違する。
【0063】
基エアー通路320には温水により基エアーを加熱する熱交換器402が配置されており、熱交換器402にはHP202の温水往き管204と温水戻り管208が接続されている。又、HP202の冷水側は、第3形態と同様CT6の冷水回路に組み込まれて成る。
【0064】
動作例として、炉Fの温度が下がった場合、HP202を運転し、基エアーを加熱するため熱交換器402へ供給する温水につき、温水戻り管208を通じ導入して加熱し、温水ポンプ206の作動した温水往き管204を介して供給する。HP202は、温水の加熱に併せて冷水の冷却も行い、三方弁212により分岐冷水量を制御されて冷却された冷水は、冷水配管40へ戻される。なお、HP202による加熱によっても温水温度が(規定値以上に)上がらない場合でも、ヒーター312による追加的加熱により、炉Fの温度は維持される。
【0065】
空気圧縮機排熱回収システム401では、温水を介した基エアー(温風)の加熱にHP202を用いるため、ヒーター312による加熱量を低減して省エネルギーで低環境負荷とすることができ、更に冷水の冷却も行えて、CT6の運転量を減少させ、より一層省エネルギーで低環境負荷とすることができる。
【0066】
[第6形態]
図9は第6形態に係る空気圧縮機排熱回収システム501の模式図であって、空気圧縮機排熱回収システム501は、第4形態と同様に成り同様に制御されるが、基エアーないし温風の接続に関し変更される。
【0067】
即ち、ブース空調Tは基エアー通路320及び基エアーブロワー322を介して直接炉Fに接続されている。一方、循環路306に、循環ブロワー308と、三方弁324と、分岐路326と、排熱回収器27と、(温風路310と、)都市ガスGのヒーター312が配置されている。
【0068】
このような空気圧縮機排熱回収システム501における配置においても、第4形態と同様、炉Fの温度を適切に維持しながら、都市ガスGの使用量を可及的に低減して省エネルギー性能や低環境負荷性能を極めて良好なものとすることができる。
【0069】
なお、都市ガスGやヒーター312に代えて、HP(温風発生型や温水から温風を発生するもの,空冷式あるいは排熱回収型等)を設置して良い。即ち、ワーク投入増等による炉Fの温度低下時には、当該HPからの送風温度を上げ、ワーク投入減等による炉Fの温度上昇時には、当該HPからの送風温度を下げる。又、CT6の冷却水(40℃等)を熱源として排熱回収型HPで温風を生成して良いし、工場に冷却負荷が存在する場合等に当該冷却負荷のために冷水を供給しつつ温風を供給するようにして良い。
【0070】
[第7形態]
図10は第7形態に係る空気圧縮機排熱回収システム601の模式図であって、空気圧縮機排熱回収システム601は、第1形態と同様に成るが、排熱回収器27に係る温水回路等が異なる。
【0071】
即ち、排熱回収器27の温水配管66には、HP式蒸気発生装置602が接続されると共に温水タンク110が介装されており、HP式蒸気発生装置602には、発生した蒸気J2を工場の加熱負荷Hへ送る蒸気供給管604と、蒸気J2の基となる給水Wを受ける給水管606が接続されている。給水管606には、給水Wを軟水化する軟水装置608が介装されている。又、排熱回収器27により加熱された冷媒は、温水戻り配管50・温水タンク110・温水供給配管54を通じてHP式蒸気発生装置602へ戻る。なお、温水に代えて、フロンや二酸化炭素等の冷媒を用いても良く、この場合温水配管66・温水戻り配管50・温水タンク110・温水配管54・温水ポンプ52,102に代えて、HP式蒸気発生装置602から直接冷媒配管が排熱回収器27へ接続される。
【0072】
HP式蒸気発生装置602は、HPサイクルにおいて排温水を熱源に蒸気J2を生成する機械であり、十分な蒸気J2を作るには当該排温水として所定温度(例えば50℃)以上の排温水が大量に必要である。又、HP式蒸気発生装置602は、熱源である排温水の温度が高いほど、蒸気J2の発生量を多くすることができ、又COP(Coefficient of Performance、効率)を良好にすることができるものである。
【0073】
従来、所定温度以上の排温水を大量に排出し且つ蒸気使用先が近接する工場や業種は限られ、従って、HP式蒸気発生装置は、化石燃料を用いるボイラー等と比べて省エネルギーで低環境負荷であるものの、条件に合う箇所が限られており、その導入は進んでいない。又、空気圧縮機2の外部に至る排熱は所定温度に至ることが稀であり(40℃以下)、外部への排熱を用いるのでは現存のHP式蒸気発生装置を作動させることができないし、所定温度以下(40℃以下)で作動可能であるようにHP式蒸気発生装置を設計すると、蒸気生成の効率が犠牲になる。
【0074】
そこで、空気圧縮機2の内部に排熱回収器27を配置し、生成直後の圧縮空気C1の排熱を温水と熱交換することで、加熱された温水温度を所定温度以上とし、HP式蒸気発生装置602の作動を可能とし、又効率的に蒸気の生成を行うことを可能とする。特に、複数段の空気圧縮を行う空気圧縮機における2段目以降の圧縮空気C2の排熱を回収することで、十分に高温となった(十分な熱量を有する)圧縮空気C2により温水を加熱することができ、HP式蒸気発生装置602の作動が十分に可能となる。
【0075】
動作例として、圧縮空気C1(150〜190℃)との熱交換により排熱回収器27内の温水(80℃)が加熱され、加熱温水(90℃)となり、温水タンク110内の温水を加温する。一方、HP式蒸気発生装置602は、温水供給配管54を通じて温水を導入する。他方、CT6は、排熱回収器27通過後の圧縮空気C2をエアーレシーバー4の所望する温度に冷却する冷水につき、冷水配管42を通じて供給する。
【0076】
HP式蒸気発生装置602は、当該温水を熱源として給水Wから蒸気J2(120℃)を生成し、加熱負荷Hへ供給する。温水は、蒸気J2生成時に熱を奪われた後、温水タンク110へ送られる。
【0077】
このような空気圧縮機排熱回収システム601では、2段目以降の内部の圧縮空気C1の熱との熱交換により温水を加熱する排熱回収器27と、排熱回収器27により加熱された前記温水を熱源として蒸気を生成するHP式蒸気発生装置602を備えているため、HP式蒸気発生装置602を空気圧縮機2の排熱により作動させることができ、空気圧縮機2の排熱を有効活用することができ、又省エネルギーで低環境負荷であるHP式蒸気発生装置602を高効率状態で利用することが可能となる。
【0078】
なお、工場空気使用量の低下や導入外気温度低下等によって排熱回収器27との熱交換量が少なくなり、冷媒である温水温度が低下した場合、温水配管66の温水温度が低下し、所定の下限温度に下がると、HP式蒸気発生装置602が停止してしまう。そこで、対策として、HP(空冷式でも排熱回収型でも良い)で冷媒である温水を加熱し温度を上げ、HP式蒸気発生装置602の運転を継続させる。又、CT6の冷却水(40℃等)を熱源に排熱回収型HPで温水を加熱しても良いし、工場に冷却負荷がある場合に当該冷却負荷を賄う冷水を供給しながら温水を供給しても良い。一方、冷媒である温水の温度が上がりすぎた場合、CTを追加して冷媒温度が一定(90℃等)になるように温水を冷却するようにして良い。
【0079】
又、HP式蒸気発生装置602の運転を継続するための別の方式として、HP式蒸気発生装置602の出力を絞り、冷媒である温水の温度低下を防止する。即ち、蒸気供給管604に蒸気流量調節弁(蒸気熱量調節手段)を設け、工場空気使用量の低下や導入外気温度低下等によって排熱回収器27との熱交換量が少なくなり、冷媒である温水温度が低下した場合(55℃以下等)、当該蒸気流量調節弁を絞って蒸気発生量を少なくすることで、HP式蒸気発生装置602の出力が絞られ、温水配管66内の冷媒温度を上昇させることができる。一方、工場空気使用量の増加や導入外気温度上昇等により排熱回収器27との熱交換量が増え、温水配管66の温度が(60℃以上等に)上昇した場合、当該蒸気流量調節弁を元の開度に戻し、HP式蒸気発生装置602の出力を増加させる。
【0080】
加えて、蒸気流量調節弁によるHP式蒸気発生装置602の出力調整に代えて、蒸気供給圧力設定値の下げ(出力減)や上げ(出力増)をしたり、蒸気供給温度設定値の下げ(出力減)や上げ(出力増)をしたり、蒸気供給流量設定値の下げ(出力減)や上げ(出力増)をしたりすることができる。
【0081】
[第8形態]
図11は第8形態に係る空気圧縮機排熱回収システム701の模式図であって、空気圧縮機排熱回収システム701は、第7形態に第3形態のHP202等を組み合わせて成り、第7形態や第3形態と同様に動作する。即ち、HP202は、温水タンク110内の温水を加熱すると共に、CT6に係る冷水配管40,42の冷水を冷却する。
【0082】
又、空気圧縮機排熱回収システム701では、空気圧縮機2が複数設けられており、排熱回収器27が複数存在している。各排熱回収器27は、温水につき、HP式蒸気発生装置602から温水配管66を通じて受け取り、温水タンク110へ戻す。温水配管66には、温水タンク110は介装されず、CT702が介装される。CT702は、排熱回収器27への温水が所定温度以上にならないように(排熱回収後の温水温度が規定値以上とならないように)起動され温水冷却運転される。
【0083】
更に、HP式蒸気発生装置602は、蒸気J2と共に温水を生成可能なものとなっており、当該温水は、温水供給配管704を通じ温水負荷H2に対し供給され、温水ポンプ706を有する温水戻り配管708により温水負荷H2から戻される。
【0084】
空気圧縮機排熱回収システム701では、温水の加熱及び冷水の冷却に空気圧縮機2の冷却水を熱源として稼働するHP202を用い、又複数の排熱回収器27から排熱を回収するため、極めて省エネルギーで低環境負荷であるものとすることができる。
【0085】
[第9形態]
第9形態に係る空気圧縮機排熱回収システムは、第7形態と同様に成るが、第8形態と同様に、工場に空気圧縮機2が複数(合計3台)配置されており、それらの排熱回収器27が、それぞれ温水配管66又はその分岐管から温水を受け、適宜分岐管を経た温水戻り配管50を介して温水タンク110へ温水を戻す。温水タンク110は、温水戻り配管50と温水供給配管54にのみ接続されており、各排熱回収器27に共通する(分岐前のHP式蒸気発生装置602側の)温水配管66には、別個の図示しないCTが介装される。一方、CT6の冷水回路は、図示しないオイルクーラーの冷却を行い、その周囲にも配置されており、当該オイルクーラーを含む冷水回路は、第1空気圧縮部22や第2空気圧縮部26の冷却のため、それらの周囲を通過して循環するように配置されている。なお、加熱負荷Hは、ここでは乾燥炉であり、又HP式蒸気発生装置602は温水も生成して乾燥炉への基エアーの予熱のために循環加温回路へ供給する。加えて、温水タンク110を省略することができる。
【0086】
動作の具体例(特開平5−31417号公報の風量や温度を適宜参照)として、各空気圧縮機2は、30℃・2820立方メートル毎時(m
3/h)の外気Aを導入して、第1空気圧縮部22により160℃の圧縮空気B1を生成し、インタークーラー24を経て40℃の圧縮空気B2となり、第2空気圧縮部26により160℃の圧縮空気C1となり、排熱回収器を通過して85℃に温度低下し、アフタークーラー28を経て40℃の圧縮空気C2となり、エアーレシーバー4へ吐出される。なお、各空気圧縮機2は、ここでは互いに同型機で、常時ベース運転されるものとする。
【0087】
CT6は、38℃の冷水を受けて68キロワット(kW)の電力による冷却を行い、6℃の温度降下を施して32℃の冷水を供給し、インタークーラー24における圧縮空気B1の冷却(冷水加熱113kW・冷水供給12.2m
3/h・冷水加熱後40℃)と、アフタークーラー28における圧縮空気C1の冷却(冷水加熱42kW・冷水供給12m
3/h・冷水加熱後35℃)を行わせる。又、CT6は、オイルクーラー回路を介し、第2空気圧縮部26及び第1空気圧縮部22の合計26kWの冷却を行う(冷却水流量3m
3/h・冷却水加熱後40℃)。
【0088】
そして、HP式蒸気発生装置602は、熱源を得るための冷媒につき温水配管66を介して排熱回収器27へ供給し、温水配管66のCT702は、導入外気温度の変化による排熱回収器27の回収熱量変化(温水温度変化)に対応するため(冷媒が所定上限温度以上にならないようにするため)、排熱回収器27への冷媒が所定供給温度(80℃)となるように温度調整する(放熱18kW)。80℃で排熱回収器27へ到達した冷媒は、71kWの加熱を受け、6.1m
3/h・90℃で温水タンク110へ入る。他の空気圧縮機2に係る排熱回収器27も同様である。HP式蒸気発生装置602は、温水タンク110から195kW・18.3m
3/hの温水を受け(空気圧縮機2の排熱回収器27の3台分71kW×3からCT702の放熱18kWを減じた195kW)、これを熱源として運転し(消費電力23.2kW)、蒸気188キログラム毎時(kg/h)・給水25℃→蒸気110℃・12万キロカロリー毎時(kcal/h)・140kW/hと、温水40℃→95℃・852リットル毎時・4.7万kcal/h・54kW/hを生成する。なお、HP式蒸気発生装置602への冷媒温度が所定温度(50℃)以下となると、HP式蒸気発生装置602の運転を自動停止する。
【0089】
このような第9形態に係る空気圧縮機排熱回収システムと、従来例に係るシステムのエネルギー使用量について、次の[表1]に示す。ここで、従来例とは、都市ガスボイラーで加熱負荷Hを賄うボイラー給水25℃(ドレン未回収)のものである。又、CO
2排出係数は、都市ガスについて、地球温暖化対策の推進に関する法律施行令及び特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令を基に環境省が作成した「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」からの計算値(11000キロカロリー毎ノルマル立方メートル(kcal/Nm
3),2.3300キログラム(CO
2)毎ノルマル立方メートル(kg−CO
2/Nm
3))を用い、電気について、中部電力株式会社の08年度実績値(860キロカロリー毎キロワット時(kcal/kWh),0.4550kg−CO
2/kWh)を用いる。
【0091】
この[表1]によれば、第9形態においてCO
2排出量は従来例の毎年175トン(t/年)に比べ59.8t/年と66パーセント(%)も削減することができ、極めて環境負荷が低減されていることが分かる。又、第9形態においてエネルギー使用量は原油換算で従来例の89キロリットル(kl)に比べ33klと63%も削減することができ、極めて省エネルギーであることが分かる。