(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5651431
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】コンデンサ
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20141218BHJP
F28F 9/26 20060101ALI20141218BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20141218BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
F28F9/02 301Z
F28F9/26
F28F9/02 301D
F28D1/053 A
B60H1/32 613E
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-249466(P2010-249466)
(22)【出願日】2010年11月8日
(65)【公開番号】特開2012-102900(P2012-102900A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2013年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】512025676
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン・サーマル・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 新吾
(72)【発明者】
【氏名】鴇崎 和美
(72)【発明者】
【氏名】瀬野 善彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆行
【審査官】
仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−315501(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/047320(WO,A1)
【文献】
特開2009−121783(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0089559(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
B60H 1/32
F28D 1/053
F28F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に間隔をおいて並列状に配置された左右方向にのびる複数の熱交換管と、熱交換管の左右両端部が接続された上下方向にのびるヘッダタンクとを備え、上下に連続して並んだ複数の熱交換管からなる熱交換パスが上下に並んで3以上設けられ、左右いずれか一端部側に、下端の熱交換パスを含みかつ連続して並んだ少なくとも2つの熱交換パスを構成する第1の熱交換管が接続される第1ヘッダタンクと、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスよりも上方に設けられた熱交換パスを構成する第2の熱交換管が接続される第2ヘッダタンクとが設けられ、第1ヘッダタンクが、第2ヘッダタンクよりも左右方向外側に配置されるとともに、第1ヘッダタンクの上端が第2ヘッダタンクの下端よりも上方に位置しており、第1ヘッダタンクが重力を利用して気液を分離しかつ液を溜める機能を有し、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスのうちの上端の熱交換パスと、第2ヘッダタンクに接続された第2熱交換管からなる熱交換パスとが、冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスであり、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスのうち上端の熱交換パスを除いた熱交換パスが、冷媒を過冷却する冷媒過冷却パスであるコンデンサにおいて、
第1ヘッダタンク内における冷媒過冷却パスの第1熱交換管が接続された部分に、第1ヘッダタンクの内容積を減少させる内容積減少部が設けられ、第1ヘッダタンク内に冷媒通過用筒状体が配置され、冷媒通過用筒状体の下端部に冷媒侵入忌避部が設けられ、当該冷媒侵入忌避部によって、内容積減少部の一部が構成され、冷媒通過用筒状体の冷媒侵入忌避部の上下方向にのびる中心が、第1ヘッダタンクの上下方向にのびる中心に対して外側に偏心しており、下端の熱交換管が、冷媒通過用筒状体の冷媒侵入忌避部の上下方向の中間部に位置しているコンデンサ。
【請求項2】
第1ヘッダタンクの下端閉鎖部に内方突出部が設けられ、当該内方突出部の上面に凹所が設けられ、当該凹所内に冷媒通過用筒状体の下端部が嵌め入れられ、冷媒通過用筒状体における凹所内に嵌め入れられた被嵌入部および被嵌入部の上方に連なった部分に冷媒侵入忌避部が設けられ、第1ヘッダタンクの下端閉鎖部の内方突出部と冷媒通過用筒状体の冷媒侵入忌避部とにより内容積減少部の少なくとも一部が構成されている請求項1記載のコンデンサ。
【請求項3】
第1ヘッダタンク内に、第1ヘッダタンク内を上下に区画する仕切部が設けられ、仕切部に貫通穴が形成され、冷媒通過用筒状体が仕切部の貫通穴に通されている請求項1または2記載のコンデンサ。
【請求項4】
仕切部が、第1ヘッダタンク内を、第1ヘッダタンク内における冷媒凝縮パスの下方に隣接する冷媒過冷却パスの第1熱交換管が通じている第1部分と、第1部分よりも上方の第2部分とに区画しており、冷媒通過用筒状体の少なくとも一部分が、第1ヘッダタンク内の第1部分に位置し、冷媒通過用筒状体に第1ヘッダタンク内の第1部分に開口した第1連通口および第2部分に開口した第2連通口が形成され、第1および第2連通口のうち少なくともいずれか一方の連通口がフィルタにより塞がれている請求項3記載のコンデンサ。
【請求項5】
第1ヘッダタンクに2つの熱交換パスを構成する第1熱交換管が接続され、第2ヘッダタンクに少なくとも2つの熱交換パスを構成する第2熱交換管が接続されている請求項1〜4のうちのいずれかに記載のコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動車に搭載される冷凍サイクルであるカーエアコンに好適に用いられるコンデンサに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、
図1の上下、左右を上下、左右というものとする。
【背景技術】
【0003】
たとえばカーエアコンのコンデンサとして、設置スペースを小さくしうるコンデンサが要求されているが、このような要求に応える目的で、本出願人は、先に、上下方向に間隔をおいて並列状に配置された左右方向にのびる複数の熱交換管と、熱交換管の左右両端部が接続された上下方向にのびるヘッダタンクとを備え、上下に連続して並んだ複数の熱交換管からなる熱交換パスが上下に並んで3以上設けられ、各熱交換パスを構成する全ての熱交換管の冷媒流れ方向が同一となっているとともに、隣り合う2つの熱交換パスの熱交換管の冷媒流れ方向が異なっており、左右いずれか一端部側に、下端の熱交換パスを含みかつ連続して並んだ少なくとも2つの熱交換パスを構成する第1の熱交換管が接続される第1ヘッダタンクと、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスよりも上方に設けられた熱交換パスを構成する第2の熱交換管が接続される第2ヘッダタンクとが設けられ、第1ヘッダタンクが、第2ヘッダタンクよりも左右方向外側に配置されるとともに、第1ヘッダタンクの上端が第2ヘッダタンクの下端よりも上方に位置しており、第1ヘッダタンクが重力を利用して気液を分離しかつ液を溜める機能を有し、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスのうちの上端の熱交換パスと、第2ヘッダタンクに接続された第2熱交換管からなる熱交換パスとが、冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスであり、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスのうち上端の熱交換パスを除いた熱交換パスが、冷媒を過冷却する冷媒過冷却パスであるコンデンサを提案した(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、特許文献1記載のコンデンサにおいて、冷媒封入の際に、冷凍サイクルの冷媒封入量を、より早い段階で、過冷度が一定となる適正封入量とすることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/047320号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、上記要望を満たし、冷凍サイクルにおける冷媒封入量を早い段階で適正封入量とすることができるコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0008】
1)上下方向に間隔をおいて並列状に配置された左右方向にのびる複数の熱交換管と、熱交換管の左右両端部が接続された上下方向にのびるヘッダタンクとを備え、上下に連続して並んだ複数の熱交換管からなる熱交換パスが上下に並んで3以上設けられ、左右いずれか一端部側に、下端の熱交換パスを含みかつ連続して並んだ少なくとも2つの熱交換パスを構成する第1の熱交換管が接続される第1ヘッダタンクと、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスよりも上方に設けられた熱交換パスを構成する第2の熱交換管が接続される第2ヘッダタンクとが設けられ、第1ヘッダタンクが、第2ヘッダタンクよりも左右方向外側に配置されるとともに、第1ヘッダタンクの上端が第2ヘッダタンクの下端よりも上方に位置しており、第1ヘッダタンクが重力を利用して気液を分離しかつ液を溜める機能を有し、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスのうちの上端の熱交換パスと、第2ヘッダタンクに接続された第2熱交換管からなる熱交換パスとが、冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスであり、第1ヘッダタンクに接続された第1熱交換管からなる熱交換パスのうち上端の熱交換パスを除いた熱交換パスが、冷媒を過冷却する冷媒過冷却パスであるコンデンサにおいて、
1)第1ヘッダタンク内における冷媒過冷却パスの第1熱交換管が接続された部分に、第1ヘッダタンクの内容積を減少させる内容積減少部が設けられ
、第1ヘッダタンク内に冷媒通過用筒状体が配置され、冷媒通過用筒状体の下端部に冷媒侵入忌避部が設けられ、当該冷媒侵入忌避部によって、内容積減少部の一部が構成され、冷媒通過用筒状体の冷媒侵入忌避部の上下方向にのびる中心が、第1ヘッダタンクの上下方向にのびる中心に対して外側に偏心しており、下端の熱交換管が、冷媒通過用筒状体の冷媒侵入忌避部の上下方向の中間部に位置しているコンデンサ。
【0009】
2)第1ヘッダタンクの下端閉鎖部に内方突出部が設けられ、当該内方突出部の上面に凹所が設けられ、当該凹所内に冷媒通過用筒状体の下端部が嵌め入れられ、冷媒通過用筒状体における
凹所内に嵌め入れられた被嵌入部および被嵌入部の上方に連なった部分に冷媒侵入忌避部が設けられ、第1ヘッダタンクの下端閉鎖部の内方突出部と冷媒通過用筒状体の冷媒侵入忌避部とにより内容積減少部の少なくとも一部が構成されている上記
1)記載のコンデンサ。
【0010】
3)第1ヘッダタンク内に、第1ヘッダタンク内を上下に区画する仕切部が設けられ、仕切部に貫通穴が形成され、冷媒通過用筒状体が仕切部の貫通穴に通されている上記
1)または2)記載のコンデンサ。
【0011】
4)仕切部が、第1ヘッダタンク内を、第1ヘッダタンク内における冷媒凝縮パスの下方に隣接する冷媒過冷却パスの第1熱交換管が通じている第1部分と、第1部分よりも上方の第2部分とに区画しており、冷媒通過用筒状体の少なくとも一部分が、第1ヘッダタンク内の第1部分に位置し、冷媒通過用筒状体に第1ヘッダタンク内の第1部分に開口した第1連通口および第2部分に開口した第2連通口が形成され、第1および第2連通口のうち少なくともいずれか一方の連通口がフィルタにより塞がれている上記
3)記載のコンデンサ。
【0012】
5)第1ヘッダタンクに2つの熱交換パスを構成する第1熱交換管が接続され、第2ヘッダタンクに少なくとも2つの熱交換パスを構成する第2熱交換管が接続されている上記
1)〜4)のうちのいずれかに記載のコンデンサ。
【発明の効果】
【0013】
上記
1)〜5)のコンデンサによれば、第1ヘッダタンク内における冷媒過冷却パスの第1熱交換管が接続された部分に、第1ヘッダタンクの内容積を減少させる内容積減少部が設けられているので、冷媒封入の際に、液相冷媒が、第1ヘッダタンク内において冷媒凝縮パスの下側に隣接する冷媒過冷却パスの上端の第1熱交換管以上の高さ位置まで溜まり易くなる。したがって、冷媒封入の際に、冷媒過冷却パスの第1熱交換管内を早い段階で液相冷媒で満たすことができ、その結果冷凍サイクルにおける冷媒封入量を、早い段階で、過冷度が一定となる適正封入量とすることが可能になる。しかも、過冷度が一定となる安定化域の幅、すなわち過冷度が一定となる冷媒封入量の幅が広くなるので、負荷変動や冷媒洩れに対してより安定した過冷特性が得られる。
【0014】
上記
1)のコンデンサによれば、第1ヘッダタンク内に、内容積減少部を比較的簡単に設けることができる。
【0015】
上記
2)のコンデンサによれば、第1ヘッダタンク内に、内容積減少部を比較的簡単に設けることができるとともに、カーエアコンに用いた場合の自動車の振動や、冷媒の流動に起因する冷媒通過用筒状体の振動を抑制することができる。
【0016】
上記
3)のカーエアコンに用いた場合の自動車の振動や、冷媒の流動に起因する冷媒通過用筒状体の振動を効果的に抑制することができる。
【0017】
上記
4)のコンデンサによれば、フィルタの働きによって、第1ヘッダタンク内からの乾燥剤や異物の流出を防止することができる。
【0018】
上記
5)のコンデンサによれば、下端に位置する冷媒凝縮パスを構成する複数の熱交換管から第1ヘッダタンク内に冷媒が流入し、第1ヘッダタンク内で気液を分離するので、圧力降下の発生を抑制して液相冷媒の再気化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明によるコンデンサの全体構成を具体的に示す正面図である。
【
図2】
図1に示すコンデンサを模式的に示す正面図である。
【
図3】
図1に示すコンデンサの第1ヘッダタンクの部分を拡大して示す一部を省略した垂直断面図である。
【
図5】
図1に示すコンデンサの第1ヘッダタンクの一部と冷媒通過用筒状体とを示す分解斜視図である。
【
図6】
図1に示すコンデンサにおける冷媒封入量と過冷度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
以下の説明において、
図1の紙面裏側(
図4の上側)を前、これと反対側を後というものとする。
【0022】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0023】
図1はこの発明によるコンデンサの全体構成を具体的に示し、
図2はこの発明によるコンデンサを模式的に示す。
図2においては、個々の熱交換管の図示は省略されるとともに、コルゲートフィン、サイドプレート、冷媒入口部材および冷媒出口部材の図示も省略されている。また、
図3〜
図5は
図1のコンデンサの要部の構成を示す。
【0024】
図1において、コンデンサ(1)は、幅方向を前後方向に向けるとともに長さ方向を左右方向に向けた状態で上下方向に間隔をおいて配置された複数のアルミニウム製扁平状熱交換管(2A)(2B)と、熱交換管(2A)(2B)の左右両端部がろう付により接続された上下方向にのびる3つのアルミニウム製ヘッダタンク(3)(4)(5)と、隣り合う熱交換管(2A)(2B)どうしの間および上下両端の熱交換管(2A)(2B)の外側に配置されて熱交換管(2A)(2B)にろう付されたアルミニウム製コルゲートフィン(6A)(6B)と、上下両端のコルゲートフィン(6A)(6B)の外側に配置されてコルゲートフィン(6A)(6B)にろう付されたアルミニウム製サイドプレート(7)とを備えており、上下に連続して並んだ複数の熱交換管(2A)(2B)からなる熱交換パス(P1)(P2)(P3)(P4)が上下に並んで3以上、ここでは4つ設けられている。4つの熱交換パスを、上から順に第1〜第4熱交換パス(P1)(P2)(P3)(P4)というものとする。各熱交換パス(P1)(P2)(P3)(P4)を構成する全ての熱交換管(2A)(2B)の冷媒流れ方向が同一となっているとともに、隣り合う2つの熱交換パスの熱交換管(2A)(2B)の冷媒流れ方向が異なっている。熱交換管(2A)(2B)の左右両端部はヘッダタンク(3)(4)(5)に形成された管挿通穴(3a)(
図3〜
図5参照)に通された状態でヘッダタンク(3)(4)(5)にろう付されている。
【0025】
図1および
図2に示すように、コンデンサ(1)の左端側には、下端の熱交換パスを含みかつ連続して並んだ少なくとも2つの熱交換パス、ここでは第3および第4熱交換パス(P3)(P4)を構成する熱交換管(2A)がろう付により接続された第1ヘッダタンク(3)と、第1および第2熱交換パス(P1)(P2)を構成する熱交換管(2B)がろう付により接続された第2ヘッダタンク(4)とが別個に設けられている。ここで、第1ヘッダタンク(3)に接続された熱交換管(2A)が第1熱交換管であり、第2ヘッダタンク(4)に接続された熱交換管(2B)が第2熱交換管である。なお、隣り合う第1熱交換管(2A)どうしの間および下端の第1熱交換管(2A)と下側サイドプレート(7)との間に配置されたコルゲートフィン(6A)を第1コルゲートフィンといい、隣り合う第2熱交換管(2B)どうしの間および上端の第2熱交換管(2B)と上側サイドプレート(7)との間に配置されたコルゲートフィン(6B)を第2コルゲートフィンというものとする。
【0026】
第1ヘッダタンク(3)と第2ヘッダタンク(4)との前後方向の寸法はほぼ等しくなっているが、水平断面積は第1ヘッダタンク(3)の方が第2ヘッダタンク(4)よりも大きくなっている。第1ヘッダタンク(3)は第2ヘッダタンク(4)よりも左方(左右方向外側)に配置されており、第1ヘッダタンク(3)の左右方向の中心が第2ヘッダタンク(4)の左右方向の中心よりも左右方向外側に位置しているとともに、第1および第2ヘッダタンク(3)(4)の前後方向の中心は左右方向にのびる同一垂直平面上に位置している。したがって、第1ヘッダタンク(3)と第2ヘッダタンク(4)とは、平面から見て重なることなくずれている。また、第1ヘッダタンク(3)の上端は第2ヘッダタンク(4)の下端よりも上方、ここでは第2ヘッダタンク(4)の上端とほぼ同一高さ位置にあり、第1ヘッダタンク(3)が、重力を利用して気液を分離しかつ液を溜める受液部としての機能を有している。すなわち、第1ヘッダタンク(3)の内容積は、第1ヘッダタンク(3)内に流入した気液混相冷媒のうち液相主体混相冷媒が重力により第1ヘッダタンク(3)内の下部に溜まるとともに、気液混相冷媒のうちの気相成分が重力により第1ヘッダタンク(3)内の上部に溜まり、これにより第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内には液相主体混相冷媒が流入するような内容積となっている。
【0027】
コンデンサ(1)の右端部側には、第1〜第4熱交換パス(P1)〜(P4)を構成するすべての熱交換管(2A)(2B)が接続される第3ヘッダタンク(5)が配置されている。第3ヘッダタンク(5)の横断面形状は第2ヘッダタンク(4)と同一である。第3ヘッダタンク(5)内は、第1熱交換パス(P1)と第2熱交換パス(P2)との間の高さ位置、および第3熱交換パス(P3)と第4熱交換パス(P4)との間の高さ位置にそれぞれ設けられたアルミニウム製仕切板(8)(9)により上側ヘッダ部(11)と、中間ヘッダ部(12)と、下側ヘッダ部(13)とに区画されている。第1熱交換パス(P1)の第2熱交換管(2B)の左端部は第2ヘッダタンク(4)に、同右端部は第3ヘッダタンク(5)の上側ヘッダ部(11)にそれぞれ接続され、第2熱交換パス(P2)の第2熱交換管(2B)の左端部は第2ヘッダタンク(4)に、同右端部は第3ヘッダタンク(5)の中間ヘッダ部(12)にそれぞれ接続され、第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)の左端部は第1ヘッダタンク(3)に、同右端部は第3ヘッダタンク(5)の中間ヘッダ部(12)にそれぞれ接続され、第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)の左端部は第1ヘッダタンク(3)に、同右端部は第3ヘッダタンク(5)の下側ヘッダ部(13)にそれぞれ接続されている。
【0028】
そして、第2ヘッダタンク(4)、第1ヘッダタンク(3)における第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)が接続された部分、第3ヘッダタンク(5)の上側ヘッダ部(11)および中間ヘッダ部(12)、ならびに第1〜第3熱交換パス(P1)〜(P3)により冷媒を凝縮させる凝縮部(1A)が形成され、第1ヘッダタンク(3)における第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)が接続された部分、第3ヘッダタンク(5)の下側ヘッダ部(13)および第4熱交換パス(P4)により冷媒を過冷却する過冷却部(1B)が形成され、第1〜第3熱交換パス(P1)〜(P3)が冷媒を凝縮させる冷媒凝縮パスとなっているとともに、第4熱交換パス(P4)が冷媒を過冷却する冷媒過冷却パスとなっている。
【0029】
凝縮部(1A)を構成する第3ヘッダタンク(5)の上側ヘッダ部(11)に冷媒入口(14)が形成され、過冷却部(1B)を構成する第3ヘッダタンク(5)の下側ヘッダ部(13)に冷媒出口(15)が形成されている。そして、第3ヘッダタンク(5)に、冷媒入口(14)に通じる冷媒入口部材(16)および冷媒出口(15)に通じる冷媒出口部材(17)が接合されている。
【0030】
第1ヘッダタンク(3)は、上下両端が開口した円筒状体(21)と、円筒状体(21)の下端部にろう付されて円筒状体(21)の下端開口を閉鎖する下端閉鎖部材(22)(下端閉鎖部)と、円筒状体(21)の上端部に着脱自在に取り付けられて円筒状体(21)の上端開口を閉鎖する蓋(23)とにより構成されている。
図3に示すように、第1ヘッダタンク(3)の下端閉鎖部材(22)には、第1ヘッダタンク(3)の円筒状体(21)の周壁内周面に沿う円筒状部(24a)および円筒状部(24a)の上端に一体に形成された頂壁(24b)からなる内方突出部(24)が設けられている。内方突出部(24)の頂壁(24b)は、第4熱交換パス(P4)の下端の第1熱交換管(2A)よりも下方に位置している。また、内方突出部(24)の上面には、頂壁(24b)の一部分が下方に凹陥状に変形させられることによって、上方に開口しかつ内周面が下方に向かって縮径された円錐面となっている凹所(25)が設けられている。
【0031】
図3〜
図5に示すように、第1ヘッダタンク(3)の円筒状体(21)の周壁(21a)に、第1ヘッダタンク(3)内を、第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)が通じている第1部分(26)と、第1部分(26)よりも上方の第2部分(27)とに区画する仕切部となる板状体(28)が固定されている。板状体(28)は、第1ヘッダタンク(3)の円筒状体(21)の周壁(21a)に形成されたスリット(21b)に外側から挿入されて周壁(21a)にろう付されている。板状体(28)における中心よりも左右方向外側部分に円形の貫通穴(29)が形成されている。
【0032】
第1ヘッダタンク(3)内に、上端が開口するとともに下端が閉鎖された有底円筒状の合成樹脂製冷媒通過用筒状体(31)と、通液性を有する材料からなりかつ乾燥剤(図示略)が入れられた袋状の乾燥剤容器(35)とが、乾燥剤容器(35)が冷媒通過用筒状体(31)よりも上方に位置するように配置されている。
【0033】
冷媒通過用筒状体(31)は、上端が第2熱交換パス(P2)と第3熱交換パス(P3)との間に位置しているとともに、下端が第4熱交換パス(P4)の下端の第1熱交換管(2A)よりも下方に位置するように、板状体(28)の貫通穴(29)に上方から密に通され、その下端部が下端閉鎖部材(22)の内方突出部(25)の凹所(26)内に密に嵌め入れられている。冷媒通過用筒状体(31)の凹所(26)内に密に嵌め入れられた被嵌入部(31a)の外周面は、下方に向かって縮径された円錐面となっている。
【0034】
冷媒通過用筒状体(31)の周壁(32)における板状体(28)よりも上側部分(32a)の外径は、貫通穴(29)の内径よりも大きくなっている。また、冷媒通過用筒状体(31)の周壁(32)外周面における板状体(28)よりも下側の部分に、径方向外方に突出した複数の突起(33)が周方向に間隔をおいて一体に形成されている。そして、周壁(32)の上側部分(32a)の下端と突起(33)とにより板状体(28)が上下から挟着され、これにより冷媒通過用筒状体(31)の上下方向の移動が阻止さている。また、冷媒通過用筒状体(31)の上端部には、径方向の外方に張り出した複数の外方張り出し部(34)が周方向に間隔をおいて一体に形成されており、周壁(32)の上端および外方張り出し部(34)によって乾燥剤容器(35)が受けられている。
【0035】
冷媒通過用筒状体(31)は、少なくとも一部、ここでは下部が第4熱交換パス(P4)(下端の冷媒凝縮パスに隣接する冷媒過冷却パス)の第1熱交換管(2A)が通じている第1部分(26)に位置し、上部が第2部分(27)における第3熱交換パス(P3)(下端の冷媒凝縮パス)の第1熱交換管(2A)が通じている部分に位置している。
【0036】
冷媒通過用筒状体(31)の周壁(32)に、第1ヘッダタンク(3)内の板状体(28)よりも下方の第1部分(26)に開口した上下方向に長い第1連通口(36)、および板状体(28)よりも上方の第2部分(27)に開口した上下方向に長い第2連通口(37)が、周方向に間隔をおいて複数形成されており、第1連通口(36)がメッシュ状のフィルタ(38)により塞がれている。第1および第2連通口(36)(37)は、冷媒通過用筒状体(31)の周壁(32)の大部分を占めている。第1連通口(36)を塞ぐメッシュ状のフィルタ(38)の目の大きさは、1インチの長さ間に100以上の数の目が存在するような大きさであることが好ましい。フィルタ(38)は、冷媒通過用筒状体(31)の周壁(32)と一体に形成されていてもよいし、あるいは冷媒通過用筒状体(31)の周壁(32)とは別個に形成されたものが周壁(32)に固着されていてもよい。
【0037】
冷媒通過用筒状体(31)における下端閉鎖部材(22)の内方突出部(25)の凹所(26)内に密に嵌め入れられた被嵌入部(31a)および被嵌入部(31a)の上方に連なった部分は中実状となさっており、これにより冷媒通過用筒状体(31)の下端部に、第1部分(26)からの冷媒の侵入を忌避する冷媒侵入忌避部(39)が形成されている。そして、冷媒通過用筒状体(31)の下端部に形成された冷媒侵入忌避部(39)と、周壁(32)における板状体(28)よりも下方に存在する部分によって、第1ヘッダタンク(3)の第1部分(26)の内容積を減少させる内容積減少部(41)が構成され、これにより第1ヘッダタンク(3)における第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)が接続された第1部分(26)に、第1ヘッダタンク(3)の内容積を減少させる内容積減少部(41)が設けられている。なお、内容積減少部(41)を構成する冷媒通過用筒状体(31)の下端部の冷媒侵入忌避部(39)は中実状に限定されるものではなく、たとえば第1部分(26)と離隔された中空部を有するものであってもよい。
【0038】
コンデンサ(1)は、冷媒通過用筒状体(31)、乾燥剤容器(35)および蓋(23)を除く部品を一括してろう付した後、第1ヘッダタンク(3)の円筒状体(21)内に上方から冷媒通過用筒状体(31)および乾燥剤容器(35)を入れ、ついで蓋(23)を円筒状体(21)に取り付けることにより製造される。冷媒通過用筒状体(31)を円筒状体(21)内に入れる際に、冷媒通過用筒状体(31)の突起(33)は変形し板状体(28)の貫通穴(29)を通った後元の形状に戻る。
【0039】
コンデンサ(1)は、圧縮機、膨張弁(減圧器)およびエバポレータとともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両に搭載される。
【0040】
上述した構成のコンデンサ(1)において、圧縮機により圧縮された高温高圧の気相冷媒が、冷媒入口部材(16)および冷媒入口(14)を通って第3ヘッダタンク(5)の上側ヘッダ部(11)内に流入し、第1熱交換パス(P1)の第2熱交換管(2B)内を左方に流れる間に部分的に凝縮させられて第2ヘッダタンク(4)内に流入する。第2ヘッダタンク(4)内に流入した冷媒は、第2熱交換パス(P2)の第2熱交換管(2B)内を右方に流れる間に部分的に凝縮させられて第3ヘッダタンク(5)の中間ヘッダ部(12)内に流入する。第3ヘッダタンク(5)の中間ヘッダ部(12)内に流入した冷媒は第3熱交換パス(P3)の第1熱交換管(2A)内を左方に流れる間に部分的に凝縮させられて第1ヘッダタンク(3)内に流入する。
【0041】
第1ヘッダタンク(3)内に流入した冷媒は気液混相冷媒であり、当該気液混相冷媒のうち液相主体混相冷媒は重力により第1ヘッダタンク(3)内の下部に溜まり、第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内に入る。
【0042】
第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内に入った液相主体混相冷媒は第1熱交換管(2A)内を右方に流れる間に過冷却された後、第3ヘッダタンク(5)の下側ヘッダ部(13)内に入り、冷媒出口(15)および冷媒出口部材(17)を通って流出し、膨張弁を経て蒸発器に送られる。
【0043】
一方、第1ヘッダタンク(3)内に流入した気液混相冷媒のうちの気相成分は、第1ヘッダタンク(3)内の上部に溜まる。
【0044】
上述したカーエアコンに冷媒を封入する際には、冷媒通過用筒状体(31)における第1ヘッダタンク(3)の板状体(28)よりも下方の第1部分(26)に内容積減少部(41)が設けられているので、液相冷媒が、第1ヘッダタンク(3)の第1部分(26)内において冷媒凝縮パスである第3熱交換パス(P3)の下側に隣接する冷媒過冷却パスである第4熱交換パス(P4)の上端の第1熱交換管(2A)以上の高さ位置まで溜まり易くなる。したがって、冷媒封入の際に、第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内を速やかに液相冷媒で満たすことができる。その結果、冷凍サイクルにおける冷媒封入量を、早い段階で、過冷度が一定となる適正封入量とすることが可能になる。しかも、過冷度が一定となる安定化域の幅、すなわち過冷度が一定となる冷媒封入量の幅が広くなるので、負荷変動や冷媒洩れに対してより安定した過冷特性が得られる。
【0045】
すなわち、コンデンサ(1)、圧縮機、膨張弁およびエバポレータからなる冷凍サイクル内に最初に所定量の冷媒を入れて冷凍サイクルの運転を開始し、冷媒を継ぎ足しつつ種々の冷媒封入量における過冷度を調べてチャージグラフを作成した場合、
図6に示すように、A点がコンデンサ(1)から流出してきた冷媒の過冷却が開始された点であり、B点がコンデンサ(1)の第4熱交換パス(P4)の第1熱交換管(2A)内が液相冷媒で満たされた点であり、C点がコンデンサ(1)の第1ヘッダタンク(3)内が液相冷媒で満たされた点である。そして、冷凍サイクルにおける冷媒封入量を、早い段階で、過冷度が一定となる適正封入量とすることが可能になる。しかも、過冷度が一定となる安定化域の幅、すなわち過冷度が一定となる冷媒封入量の幅が広くなるので、負荷変動や冷媒洩れに対してより安定した過冷特性が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明によるコンデンサは、自動車に搭載されるカーエアコンに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0047】
(1):コンデンサ
(1A):凝縮部
(1B):過冷却部
(2A):第1熱交換管
(2B):第2熱交換管
(3):第1ヘッダタンク
(4):第2ヘッダタンク
(5):第3ヘッダタンク
(22):下端閉鎖部材(下端閉鎖部)
(24):内方突出部
(25):凹所
(26):第1部分
(27):第2部分
(28):板状体(仕切部)
(29):貫通穴
(31):冷媒通過用筒状体
(31a):被嵌入部
(39):冷媒侵入忌避部
(41):内容積減少部
(P1):第1熱交換パス
(P2):第2熱交換パス
(P3):第3熱交換パス
(P4):第4熱交換パス