特許第5651483号(P5651483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5651483-芳香族アミノ化合物の製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5651483
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】芳香族アミノ化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 209/10 20060101AFI20141218BHJP
   C07C 211/54 20060101ALI20141218BHJP
   C07C 211/61 20060101ALI20141218BHJP
   C07D 209/82 20060101ALI20141218BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20141218BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20141218BHJP
【FI】
   C07C209/10
   C07C211/54
   C07C211/61
   C07D209/82
   C07D401/14
   !C07B61/00 300
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2010-549435(P2010-549435)
(86)(22)【出願日】2010年1月25日
(86)【国際出願番号】JP2010050922
(87)【国際公開番号】WO2010090094
(87)【国際公開日】20100812
【審査請求日】2012年10月25日
(31)【優先権主張番号】特願2009-27132(P2009-27132)
(32)【優先日】2009年2月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】横山 紀昌
(72)【発明者】
【氏名】長岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】富樫 和法
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−536798(JP,A)
【文献】 特開2005−350416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 209/10
C07C 211/54
C07D 209/86
C07D 249/08
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
R−NH−Ar (1)
式中、Rは水素原子または芳香族環基であり、
Arは芳香族環基である、
で表されるアミン化合物とハロゲン化芳香族化合物とを原料として使用し、該アミン化合物とハロゲン化芳香族化合物とを、銅触媒及び塩基の存在下で反応させて、該アミン化合物のアミノ基に該ハロゲン芳香族化合物に由来する芳香族環基がカップリングした構造を有する芳香族アミノ化合物を製造する方法において、
下記一般式(2):
【化1】
式中、R〜Rは、水素原子、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のア
ルキル基、炭素原子数5ないし8のシクロアルキル基、炭素原子数2ないし6
のアルケニル基、炭素原子数2ないし6のアルキニル基、炭素原子数1ないし
6のアルキルオキシ基、炭素原子数5ないし8のシクロアルキルオキシ基、炭
素原子数1ないし6のアルキル基または芳香族炭化水素基を、置換基として有
するジ置換アミノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、
ヒドロキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、フッ
素原子、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であって
、基R〜Rの少なくとも1つが、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは
分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし8のシクロアルキル基、芳香族炭化
水素基、芳香族複素環基、炭素原子数1ないし6のアルキルオキシ基またはフ
ッ素原子を表し、RとR、RとR、RとRが互いに結合して環を
形成しても良い、
で表される芳香族オキシカルボン酸が、前記銅触媒及び塩基と共存する条件下で、前記アミン化合物とハロゲン化芳香族化合物とを反応させることを特徴とする芳香族アミノ化合物の製造方法。
【請求項2】
前記ハロゲン化芳香族化合物のハロゲン原子がヨウ素、臭素、または塩素である請求項1に記載の芳香族アミノ化合物の製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化芳香族化合物がヨウ素化アリール、臭素化アリールまたは塩素化アリールである請求項2記載の芳香族アミノ化合物の製造方法。
【請求項4】
前記原料アミン化合物がモノアリールアミンまたはジアリールアミンである請求項1記載の芳香族アミノ化合物の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(2)において、基R〜Rの少なくとも1つが、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし8のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基である、請求項記載の芳香族アミノ化合物の製造方法。
【請求項6】
前記芳香族オキシカルボン酸が3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸である請求項記載の芳香族アミノ化合物の製造方法。
【請求項7】
カルバゾールとハロゲン化芳香族化合物とを原料として使用し、該カルバゾールとハロゲン化芳香族化合物とを、銅触媒及び塩基の存在下で反応させて、該カルバゾールのアミノ基に該ハロゲン芳香族化合物に由来する芳香族環基がカップリングした構造を有する芳香族アミノ化合物を製造する方法において、
下記一般式(2):
【化2】
式中、R〜Rは、水素原子、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のア
ルキル基、炭素原子数5ないし8のシクロアルキル基、炭素原子数2ないし6
のアルケニル基、炭素原子数2ないし6のアルキニル基、炭素原子数1ないし
6のアルキルオキシ基、炭素原子数5ないし8のシクロアルキルオキシ基、炭
素原子数1ないし6のアルキル基または芳香族炭化水素基を、置換基として有
するジ置換アミノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、
ヒドロキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、フッ
素原子、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であって
、基R〜Rの少なくとも1つが、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは
分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし8のシクロアルキル基、芳香族炭化
水素基、芳香族複素環基、炭素原子数1ないし6のアルキルオキシ基またはフ
ッ素原子を表し、RとR、RとR、RとRが互いに結合して環を
形成しても良い、
で表される芳香族オキシカルボン酸が、前記銅触媒及び塩基と共存する条件下で、前記カルバゾールとハロゲン化芳香族化合物とを反応させることを特徴とする芳香族アミノ化合物の製造方法。
【請求項8】
前記ハロゲン化芳香族化合物のハロゲン原子がヨウ素、臭素、または塩素である請求項7記載の芳香族アミノ化合物の製造方法。
【請求項9】
前記ハロゲン化芳香族化合物がヨウ素化アリール、臭素化アリールまたは塩素化アリールである請求項8記載の芳香族アミノ化合物の製造方法。
【請求項10】
前記一般式(2)において、基R〜Rの少なくとも1つが、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし8のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基である、請求項7記載の芳香族アミノ化合物の製造方法。
【請求項11】
前記芳香族オキシカルボン酸が3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸である請求項10記載の芳香族アミノ化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種有機材料またはその中間体として有用な芳香族アミノ化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリールアミンに代表される芳香族アミノ化合物、特にトリアリールアミンやジアリールアミンは、医農薬原料、有機機能性材料、それらの中間体として有用な材料である。近年では有機EL材料や有機導電性材料、またはそれらの中間体として用いられ、その重要性が増している。
トリアリールアミンやジアリールアミンを合成する方法としては、例えばハロゲン化アリールとモノアリールアミンとを銅触媒を用いて反応させる方法が知られており、このような反応は、ウルマン(Ullmann)反応として呼ばれている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながらウルマン反応では、高い反応温度を要するため、得られる芳香族アミノ化合物(例えば、トリアリールアミンやジアリールアミン)の着色が著しく、副生成物も多量に生成し、その収率が一般的に低いという欠点がある。また、得られた芳香族アミノ化合物の精製にも多大な労力を費やす必要があり、製造コストが高くなるという欠点があった。
【0003】
これらの改善のため、反応触媒の銅に配位するような化合物を添加して反応温度を下げ、純度良く目的物を得る試みがなされている。例えば、フェナントロリンやビピリジル、シクロヘキサンジアミンなどのジアミン系化合物を添加して110〜135℃という比較的低温での反応で目的の芳香族アミノ化合物を高収率で得る方法が報告されている(例えば、非特許文献2〜4参照)。
また、1,1’−ビナフチル−2,2’−ジオールを添加して反応を行う例も報告されている(例えば、非特許文献5参照)。
これらの例では、温和な条件で反応を行うことができる上に、目的物を収率良く得ることができる。しかしながら、添加する化合物が高価であり、製造方法としてコスト的な問題が残っているため、実用化への妨げとなっている。
また、クラウンエーテルを添加して反応系の塩基性度を上げて反応させる方法も知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、クラウンエーテルも高価な化合物であり、コスト的に有利な製造方法とはいえず実用性に乏しい。
【0004】
また、アルキルアミンとハロゲン化アリールとを銅触媒存在下に反応させて、アルキルアリールアミンを生成させるウルマン反応も知られており、このようなウルマン反応において、ヒドロキシ基とヒドロキシカルボニル基が互いに隣接する炭素に結合している芳香族オキシカルボン酸(具体的には、2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸)を使用した例が報告されている(非特許文献5参照)。しかしこの例では、目的物は全く得ることができず、このような芳香族オキシカルボン酸を使用しても効果は認められないというものであった。
【0005】
さらに、トリアルキルホスフィンを配位子として有するパラジウムホスフィン錯体を触媒として用いてのブッファルト−ハートヴィッヒ(Buchwald−Hartwig)反応によりアリールアミンを製造する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この製造方法ではパラジウム−ホスフィン錯体の活性を維持するために、厳密な不活性ガス雰囲気下で反応を実施する必要がある。加えて、配位子となるトリアルキルホスフィン自体が空気中で不安定であるため、その貯蔵・計量なども不活性ガス雰囲気下で実施する必要があり、実用化への妨げとなっている。またパラジウムは非常に高価であり、また配位子として用いるホスフィン化合物も高価なので、実用性に乏しいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−87061号公報
【特許文献2】特許第3161360号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chemishe Berichte.,36、2382(1903)
【非特許文献2】Angew.Chem.Int.Ed.,42、5400(2003)
【非特許文献3】J.Am.Chem.Soc.,124、11684(2002)
【非特許文献4】J.Org.Chem.,69、5578(2004)
【非特許文献5】J.Org.Chem.,72、672(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、一級または二級アミン化合物とハロゲン化芳香族化合物とを原料として用いてのウルマン反応により、芳香族アミノ化合物を製造する方法において、高純度の芳香族アミノ化合物を高収率で且つ安価に得ることが可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明によれば、カルバゾールまたは下記一般式(1):
R−NH−Ar (1)
式中、Rは水素原子または芳香族環基であり、
Arは芳香族環基である、
で表されるアミン化合物とハロゲン化芳香族化合物とを原料として使用し、前記カルバゾールまたは前記アミン化合物とハロゲン化芳香族化合物とを、銅触媒及び塩基の存在下で反応させて、前記カルバゾールまたは前記アミン化合物のアミノ基に該ハロゲン芳香族化合物に由来する芳香族環基がカップリングした構造を有する芳香族アミノ化合物を製造する方法において、
下記一般式(2):
【化1】
式中、R〜Rは、水素原子、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のア
ルキル基、炭素原子数5ないし8のシクロアルキル基、炭素原子数2ないし6
のアルケニル基、炭素原子数2ないし6のアルキニル基、炭素原子数1ないし
6のアルキルオキシ基、炭素原子数5ないし8のシクロアルキルオキシ基、炭
素原子数1ないし6のアルキル基または芳香族炭化水素基を、置換基として有
するジ置換アミノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、
ヒドロキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、フッ
素原子、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であって
、基R〜Rの少なくとも1つが、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは
分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし8のシクロアルキル基、芳香族炭化
水素基、芳香族複素環基、炭素原子数1ないし6のアルキルオキシ基またはフ
ッ素原子を表し、RとR、RとR、RとRが互いに結合して環を
形成しても良い、
で表される芳香族オキシカルボン酸が、前記銅触媒及び塩基と共存する条件下で、前記カルバゾールまたは前記アミン化合物とハロゲン化芳香族化合物とを反応させることを特徴とする芳香族アミノ化合物の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の製造方法においては、
(1)前記ハロゲン化芳香族化合物のハロゲン原子がヨウ素、臭素、また
は塩素であること、
(2)前記ハロゲン化芳香族化合物がヨウ素化アリール、臭素化アリール
または塩素化アリールであること、
(3)前記原料アミン化合物がモノアリールアミンまたはジアリールアミ
ンであること、
が好ましい。
【0011】
また、本発明において用いる前記芳香族オキシカルボン酸としては、
(4)前記一般式(2)において、基R〜Rの少なくとも1つが、炭素原子数1な
いし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし8のシクロアル
キル基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であること、
)3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸であること

が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、銅触媒及び塩基と共に、上記の芳香族オキシカルボン酸を共存させて、ウルマン反応を実行することによって、反応温度を低下させ、短時間で反応を終了させることができ、しかも、高収率、高純度で目的とする芳香族アミノ化合物を得ることができる。
【0013】
芳香族オキシカルボン酸の使用により、上記のような効果が達成されることは、多くの実験を行った結果、現象として見出されたものであり、その理由は正確に解明されてはいないが、本発明者らはこの芳香族オキシカルボン酸が反応触媒として使用された銅と相互作用し、銅の触媒活性が向上するためではないかと考えている。
【0014】
また、上記の芳香族オキシカルボン酸、例えば、2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸などは安価に入手可能であり、特別な操作や装置も必要とすることなく反応に使用することができるため製造コスト的にも有利である。従って、本発明の製造方法は工業的な実施に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1で合成した化合物の1H−NMRチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明においては、原料として前記一般式(1)で表されるアミン化合物とハロゲン化芳香族化合物とを使用してのウルマン反応により芳香族アミノ化合物を製造するが、この反応は例えば、以下の式で表される。
R−NH−Ar+ArX → Ar−N(R)−Ar
または、
R−NH−Ar+Ar → Ar−N(R)−Ar
−N(R)Ar
式中、R及びArは、前記式(1)に示したとおりであり、
Xは、前記ハロゲン化芳香族化合物に由来するハロゲン原子で
あり、
Arは、前記ハロゲン化芳香族化合物に由来する1価の芳香
族環基であり、
Arは、前記ハロゲン化芳香族化合物に由来する2価の芳香
族環基である。
上記の反応式は、原料のハロゲン化芳香族化合物として、ハロゲン原子を一個または二個有するものを用いた場合の例であるが、三個以上のハロゲン原子を有するハロゲン化芳香族化合物を用いた場合にも上記と同様に各ハロゲン原子にアミノ基が反応して、対応する芳香族アミノ化合物が得られることは容易に理解されよう。
尚、原料アミン化合物が有している基Rが水素原子である場合、例えばモノアリールアミンである場合には、上記の反応式によれば、ジアリールアミンが得られるが、このジアリールアミンは、NH基を有しているため、さらにウルマン反応を実行することにより、トリアリールアミンが合成されることとなる。
【0017】
上記のアミン化合物とハロゲン化芳香族化合物とのウルマン反応においては、銅触媒及び塩基の存在下で、ヒドロキシ基とヒドロキシカルボニル基とが互いに隣接する炭素原子に結合している芳香族オキシカルボン酸を用いることが重要である。以下、反応に用いる各化合物及び反応条件等について詳細に説明する。
【0018】
<原料化合物>
1.アミン化合物
本発明において、原料として用いられるアミン化合物は、
下記一般式(1):
R−NH−Ar (1)
式中、Rは水素原子または芳香族環基であり、
Arは芳香族環基である、
で表される。即ち、上記一般式(1)中の窒素原子に結合している水素原子がハロゲン化芳香族化合物のハロゲン原子と反応して脱離することにより、ハロゲン化芳香族化合物中の芳香族環基がカップリングするわけである。
上記一般式(1)において、R及びArが示す芳香族環基には、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基がある。
【0019】
芳香族炭化水素基(アリール基)の例としては、例えばフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、テトラキスフェニル基、スチリル基、ナフチル基、アントリル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基などを挙げることができる。
芳香族複素環基の例としては、ピリジル基、トリアジル基、ピリミジル基、フラニル基、ピロニル基、チオフェニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基などを挙げることができる。
【0020】
また、上記の芳香族炭化水素基や芳香族複素環基は、ウルマン反応を阻害しない限りにおいて、ハロゲン原子以外の種々の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、シアノ基、水酸基、ニトロ基、前記例示したような炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、前記例示したような炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、アミノ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントリル基、アラルキル基、フルオレニル基、インデニル基、ピリジル基、ピリミジル基、フラニル基、ピロニル基、チオフェニル基、キノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリル基、ベンゾオキサゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基などを挙げることができ、これらの置換基はさらに置換基を有していても良い。
【0021】
本発明において、好適に使用される原料アミン化合物は、モノアリールアミン(R=水素原子、Ar=芳香族炭化水素基)及びジアリールアミン(R=芳香族炭化水素基、Ar=芳香族炭化水素基)であり、ジアリールアミンが最も好適である。
【0022】
2.ハロゲン化芳香族化合物
上記のアミン化合物と反応させるハロゲン化芳香族化合物は芳香族環基に1または2以上のハロゲン原子が置換基として結合している化合物であり、このような芳香族環基には、前記一般式(1)と同様、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基がある。
【0023】
芳香族炭化水素基の例としては、例えばフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、テトラキスフェニル基、スチリル基、ナフチル基、アントリル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、及び結合しているハロゲン原子の数に応じてこれらの基に対応する2価、3価、4価などの多価の基を挙げることができる。
芳香族複素環基の例としては、例えばピリジル基、トリアジル基、ピリミジル基、フラニル基、ピロニル基、チオフェニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、及び結合しているハロゲン原子の数に応じてこれらの基に対応する2価、3価、4価などの多価の基を挙げることができる。
【0024】
また、上記の芳香族炭化水素基や芳香族複素環基も、ウルマン反応を阻害しない限りにおいて、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよく、このような置換基としては、シアノ基、水酸基、ニトロ基、前記例示したような炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、前記例示したような炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、アミノ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントリル基、アラルキル基、フルオレニル基、インデニル基、ピリジル基、ピリミジル基、フラニル基、ピロニル基、チオフェニル基、キノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリル基、ベンゾオキサゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基などを挙げることができ、これらの置換基はさらに置換基を有していても良い。
【0025】
上記の芳香族環基に結合しているハロゲン原子は、ヨウ素、臭素、塩素であり、フッ素は反応性の観点から除外される。また、異なる複数のハロゲン原子が芳香族環基に結合していてもよい。本発明に最も好適なハロゲン原子は、反応性の点でヨウ素、臭素である。
【0026】
本発明において、原料として用いるアミン化合物とハロゲン化芳香族化合物との量比は、目的とする芳香族アミノ化合物の種類、該ハロゲン化芳香族化合物が有するハロゲン原子の数、該アミン化合物が有するNH基の数などに応じて、製造コスト、反応収率等を考慮して定めればよい。例えば、アミン化合物としてモノアリールアミンを用いてジアリールアミンを製造する場合には、ハロゲン原子1当量に対してNH基が1ないし20当量、好ましくは1ないし10当量となるような量でアミン化合物とハロゲン化芳香族化合物とが使用される。また、トリアリールアミンを製造する場合には、ハロゲン原子1当量に対してNH基が0.05ないし0.5当量、好ましくは0.25ないし0.5当量となるようにアミン化合物とハロゲン化芳香族化合物とを使用すればよい。
【0027】
<銅触媒>
本発明において、銅触媒としては、特に限定されるものではなく、ウルマン反応に使用されている公知のものが使用できる。その具体例としては、銅粉、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化銅、酸化第一銅、酸化第二銅、硫酸銅、硝酸銅、炭酸銅、酢酸銅、水酸化銅などを挙げることができ、銅粉、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化銅などが特に好ましい。
【0028】
本発明において、銅触媒の量は、原料として用いるアミン化合物中のアミノ基がNHである場合(R=H)は、該アミン化合物1モルに対して0.02〜2倍モル、特に0.1〜1倍モルの範囲内であることが好ましい。また、原料として用いるアミン化合物中のアミノ基がNHである場合(R=芳香族環基)は、該アミン化合物1モルに対して0.01〜1倍モル、特に0.05〜0.5倍モルの範囲内で銅触媒を用いることが好ましい。
【0029】
<塩基>
塩基は脱ハロゲン化のために使用されるものであり、特に限定されるものではないが、例えば炭酸アルカリ金属塩類、リン酸アルカリ金属塩類、水酸化アルカリ金属類、水酸化アルカリ土類金属類、金属アルコキシドなどを使用することができる。
【0030】
炭酸アルカリ金属塩類の例としては、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
リン酸アルカリ金属塩類の例としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸セシウム、リン酸リチウムなどが挙げられる。
水酸化アルカリ金属類の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどが挙げられる。
水酸化アルカリ土類金属の例としては、水酸化バリウムなどが挙げられる。
金属アルコキシドの例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシドなどが挙げられる。
本発明においては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム、炭酸カリウムが特に好適に使用される。
【0031】
反応に用いられる塩基の量は、原料として用いるアミン化合物中のアミノ基がNHである場合(R=H)は、該アミン化合物1モルに対して2〜10倍モル、特に2.2〜6倍モルの範囲内であることが好ましい。また、原料として用いるアミン化合物中のアミノ基がNHである場合(R=芳香族環基)は、該アミン化合物1モルに対して1〜5倍モル、特に1.1〜3倍モルの範囲内で塩基を用いることが好ましい。
塩基の量が上記範囲よりも少ない場合には、得られる芳香族アミノ化合物の収率が低くなり、また、反応に用いられる塩基を大過剰に加えても、得られる芳香族アミノ化合物の収率に影響はないが、反応終了後の後処理操作が煩雑になり好ましくない。
【0032】
<芳香族オキシカルボン酸>
本発明においては、上述した銅触媒及び塩基と共に、ヒドロキシ基とヒドロキシカルボニル基とが互いに隣接する炭素原子に結合している芳香族オキシカルボン酸、例えば下記一般式(2)で表される芳香族オキシカルボン酸を共存させて、前記アミン化合物とハロゲン化芳香族化合物とを反応させる。
【0033】
【化2】
【0034】
上記一般式(2)において、R〜Rは、それぞれ、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、置換基としてアルキル基または芳香族炭化水素基を有するジ置換アミノ基、ヒドロキシ基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基を表しており、また、RとR、RとR、或いはRとRとは互いに結合して環を形成しても良い。
【0035】
上記のR〜Rにおいて、アルキル基は直鎖状及び分岐状の何れの形態を有していてもよく、その炭素原子数は1ないし6である。ジ置換アミノ基が置換基として有しているアルキル基も同様である。
これらのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、3−メチルブチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、エチルブチル基を例示することができる。
【0036】
また、上記シクロアルキル基の炭素原子数は5ないし8であり、その具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基を挙げることができる。
【0037】
上記のアルケニル基は直鎖状もしくは分岐状の何れの形態を有していてもよく、その炭素原子数は2ないし6である。その具体例としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、1,1−ジメチルアリル基、3−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、4−ペンテニル基、ヘキセニル基を挙げることができる。
【0038】
上記のアルキニル基は直鎖状もしくは分岐状の何れの形態を有していてもよく、その炭素原子数は2ないし6である。その具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、3−メチル−1−ブチニル基、1,1-ジメチル−2−ブチニル基などが挙げられる。
【0039】
上記アルキルオキシ基は直鎖状もしくは分岐状の何れの形態を有していてもよく、その炭素原子数は1ないし6である。その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、2−メチルブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、エチルブチルオキシ基などが挙げられる。
【0040】
上記シクロアルキルオキシ基の炭素原子数は5ないし8であり、その具体例としては、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、3−メチルシクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、4−エチルシクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0041】
上記アルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、2−メチルブチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、4−メチルペンチルオキシカルボニル基、3−メチルペンチルオキシカルボニル基、エチルブチルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0042】
上記アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、テトラキスフェニルオキシ基、スチリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、アセナフテニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、フェナントリルオキシ基、インデニルオキシ基、ピレニルオキシ基などが挙げられる。
【0043】
上記芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、テトラキスフェニル基、スチリル基、ナフチル基、アントリル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基などが挙げられる。ジ置換アミノ基が置換基として有している芳香族炭化水素基も同様である。
【0044】
また、上記芳香族複素環基の例としては、ピリジル基、ピリミジル基、フラニル基、ピロニル基、チオフェニル基、キノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基などが挙げられる。
【0045】
前記一般式(2)において、上述したアリールオキシ基、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、ウルマン反応を阻害しない限りにおいて、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、シアノ基、水酸基、ニトロ基、前記例示したようなアルキル基及びアルキルオキシ基を挙げることができ、更に、アミノ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントリル基、アラルキル基、フルオレニル基、インデニル基、ピリジル基、ピリミジル基、フラニル基、ピロニル基、チオフェニル基、キノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリル基、ベンゾオキサゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基等も置換基として例示することができる。
【0046】
前記一般式(2)で表される芳香族オキシカルボン酸において、R〜Rの少なくとも1つが炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし6のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基であることが好適である。
【0047】
本発明において、好適に使用される芳香族オキシカルボン酸の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
3−メチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
4−メチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−メチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
6−メチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
3,5−ジメチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−エチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−プロピル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−ブチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
3−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボ
ン酸
3−ヘキシル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−ヘキシル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−シクロヘキシル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
3,5−ジ−シクロヘキシル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−エテニル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−エチニル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−メトキシ−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−フェノキシ−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
4−ニトロ−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
4−フルオロ−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−トリフルオロメチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−シアノ−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
2,3−ジ−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
2,4−ジ−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
2,5−ジ−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
2,6−ジ−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
4−フェニル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−フェニル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−ビフェニリル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−(ピリジン−2−イル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
5−ナフチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
2−ヒドロキシナフタレン−1−カルボン酸
3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸
1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸
1−ヒドロキシフェナントレン−2−カルボン酸
1−ヒドロキシピレン−2−カルボン酸
【0048】
本発明において、最も好適に使用される芳香族オキシカルボン酸は一般式(2)におけるRおよびRがtert−ブチル基である化合物、即ち3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸である。
【0049】
上述した芳香族オキシカルボン酸は、一般に、銅触媒当り0.1〜10倍モル、特に0.5〜5倍モル、最も好ましくは0.8〜3倍モルの量で使用される。
【0050】
<その他の添加剤>
本発明においては、酸化物の副生を防止するため、必要に応じて亜硫酸塩化合物もしくはチオ硫酸塩化合物を添加することができる。
亜硫酸塩化合物の例としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸セシウム、亜硫酸バリウム、亜硫酸水素アンモニウムなどが挙げられる。
チオ硫酸塩化合物の例としては、チオ硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸アンモニウム、ピロ亜硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0051】
本発明において、亜硫酸塩化合物もしくはチオ硫酸塩化合物の量は、特に限定されるものではないが、原料として用いるアミン化合物中のアミノ基がNHである場合(R=H)は、該アミン化合物1モルに対して0.002〜20倍モル、特に0.02〜10倍モルの範囲内であることが好ましい。また、原料として用いるアミン化合物中のアミノ基がNHである場合(R=芳香族環基)は、該アミン化合物1モルに対して0.001〜10倍モル、特に0.01〜5倍モルの範囲内であることが好ましい。
【0052】
<反応(ウルマン反応)>
銅触媒、塩基及び芳香族オキシカルボン酸の共存下でのアミン化合物とハロゲン化芳香族化合物との反応は一般に溶媒中で行われるが、無溶媒下で反応を行うことも可能である。
上記の溶媒としては、反応を阻害しない限り特に限定されるものではないが、例えば脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒などが挙げられる。これらは、単独で使用しても2種類以上を混合して使用しても良い。原料であるアミン化合物、ハロゲン化芳香族化合物および本発明のヒドロキシ基とヒドロキシカルボニル基とが互いに隣接する炭素原子に結合している芳香族オキシカルボン酸を溶解する溶媒が好ましい。
【0053】
脂肪族炭化水素系溶媒の例としては、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカンなどが挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒の例としては、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ヘキシルベンゼン、オクチルベンゼン、ドデシルベンゼン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、ニトロベンゼンなどが挙げられる。
エーテル系溶媒の例としては、1,4−ジオキサン、アニソール、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。
アミド系溶媒の例としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドなどが挙げられる。
【0054】
本発明において、上記の溶媒の使用量は、反応に用いる原料などの種類にもよるが、一般に、原料アミン化合物1質量部当り、10質量部以下、好ましくは0.01〜10質量部、更に好ましくは0.05〜5質量部の範囲内であるのがよい。必要以上の量で溶媒を使用すると反応時間が長くなって副生成物が増える傾向にある。また、溶媒の使用量が少ないと、反応系が不均一となり、未反応物等が増加し、収率が低下することがある。
【0055】
本発明において、反応温度は50℃〜300℃、好ましくは80〜250℃、更に好ましくは100〜220℃の範囲内であるのがよい。反応温度が低いと、反応時間が長くなって副生成物が増え、反応温度が高いと、副反応が進行し副反応生成物が増える傾向がある。
反応時間は反応温度によるが、一般に、0.2〜72時間、特に1〜30時間の範囲内である。
【0056】
本発明において、反応は常圧下、加圧下、何れの条件でも実施でき、一般に、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で攪拌下に行われる。
【0057】
反応の終点は、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなど各種分析手段によって確認することができる。
反応終了後、溶媒抽出、ろ過、洗浄などの後処理を行い、次いで、精製を行うことにより、目的とする芳香族アミノ化合物、即ち原料アミン化合物のアミノ基(NH基)の部位にハロゲン化芳香族化合物に由来する芳香族環基がカップリングした構造の芳香族アミノ化合物が得られる。
尚、精製は、カラムクロマトグラフィー法、シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着分離法、再結晶ないし晶析法などにより行うことができる。
【0058】
上述した本発明の方法によれば、ヒドロキシ基とヒドロキシカルボニル基とが互いに隣接する炭素原子に結合している芳香族オキシカルボン酸を、銅触媒及び塩基と共存させて、原料アミン化合物とハロゲン化芳香族化合物とを反応させることにより、高収率で目的とする芳香族アミノ化合物が得られる。
この方法で用いる芳香族オキシカルボン酸、例えば2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸などは安価に入手可能であり、また、特別な操作や装置も必要とすることなく反応を実行することができるため、製造コスト的に有利であり、工業的実施の観点から極めて有用である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例をもって本発明を説明するが、これらは本発明をなんら制限するものではない。なお、実施例7は参考例である。
【0060】
実施例1
<4,4’−ビス{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}ビフェニルの合成>
窒素置換した反応容器に下記の化合物を添加混合した。
(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミン
8.50g(34.6ミリモル)
4,4’−ジヨードビフェニル 5.85g(14.4ミリモル)
銅粉 0.09g(1.44ミリモル)
3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン
酸 0.36g(1.44ミリモル)
炭酸カリウム 5.97g(43.2ミリモル)
亜硫酸水素ナトリウム 0.45g(4.32ミリモル)
ドデシルベンゼン 10ml
キシレン 20ml
【0061】
反応容器中に添加された上記混合物を、攪拌しながら加熱し、キシレンを留去しながら加熱を続け、210℃で11時間攪拌を行った。
反応終了後、得られた反応溶液をHPLC分析することによって反応の終点を確認した。HPLC分析装置としては以下の仕様のものを用いた。
HPLC分析装置:日立製L−7100型
カラム;ジーエルサイエンス製Inertsil ODS−3、
内径4.6mm、長さ250mm
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出波長:254nm
溶離液:アセトニトリル/THF=9/1(v/v)
【0062】
反応終点におけるHPLC分析結果は、HPLCのピーク面積比で示して、以下のとおりであった。
4,4’−ビス{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}
ビフェニル(目的物): 90.6%
4,4’−ジヨードビフェニル(原料): 0.64%
モノヨード体(中間体): 0.75%
【0063】
上記反応溶液を冷却し、トルエンを加えて不溶物をろ過によって除き、ろ液を濃縮して濃縮物を得た。
濃縮物にヘキサンを加えて、析出した結晶をろ過によって採取し、得られた粗結晶をトルエン/ヘキサンの混合溶媒を用いた晶析による精製を行い、目的とする4,4’−ビス{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}ビフェニル 8.46g(収率91.7%)の粉体を得た。
【0064】
得られた粉体についてNMR分析(1H−NMR)を行って、その構造を確認した。その分析チャートを図1に示した。
【0065】
実施例2
<N,N’−ビス(4−ジフェニルアミノ−ビフェニル−4’−イル)−N,N’−ジフェニル−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンの合成>
窒素置換した反応容器に下記の化合物を添加混合した。
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン
30.0g(52.6ミリモル)
4−(ジフェニルアミノ−ビフェニル−4’−イル)−
フェニルアミン 52.09g(126.3ミリモル)
銅粉 0.34g(5.35ミリモル)
3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン
酸 1.34g(5.35ミリモル)
炭酸カリウム 21.81g(157.8ミリモル)
亜硫酸水素ナトリウム 1.65g(15.8ミリモル)
ドデシルベンゼン 50ml
【0066】
反応容器中に添加された上記混合物を攪拌しながら加熱した。200℃で9時間攪拌を行った後、
銅粉 0.34g(5.35ミリモル)
炭酸カリウム 7.26g(52.5ミリモル)
を追加し、さらに200℃で6時間攪拌を行った。
反応終了後、得られた反応溶液をHPLC分析することによって反応の終点を確認した。HPLC分析装置としては以下の仕様のものを用いた。
HPLC分析装置:島津製LC−2010型
カラム;ジーエルサイエンス製Inertsil ODS−3、
内径4.6mm、長さ250mm
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出波長:254nm
溶離液:メタノール/THF=8/2(v/v)
【0067】
反応終点におけるHPLC分析結果は、HPLCのピーク面積比で示して、以下のとおりであった。
N,N’−ビス(4−ジフェニルアミノ−ビフェニル−4’−イル)
−N,N’−ジフェニル−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フル
オレン(目的物): 75.9%
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン(原料): 0%
モノヨード体(中間体): 0.3%
【0068】
実施例3
<9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレンの合成>
窒素置換した反応容器に下記の化合物を添加混合した。
ジフェニルアミン 17.8g(105ミリモル)
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン
25.0g(43.8ミリモル)
銅粉 0.28g(4.4ミリモル)
3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン
酸 1.10g(4.4ミリモル)
炭酸カリウム 18.1g(131ミリモル)
亜硫酸水素ナトリウム 1.37g(13.1ミリモル)
ドデシルベンゼン 20ml
【0069】
反応容器中に添加された上記混合物を、200℃で12時間攪拌しながら加熱した。
反応終了後、得られた反応溶液をHPLC分析することによって反応の終点を確認した。HPLC分析装置としては以下の仕様のものを用いた。
HLPC分析装置:島津製LC−10A型
カラム;ジーエルサイエンス製Inertsil ODS−3、
内径4.6mm、長さ250mm
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出波長:254nm
溶離液:メタノール/THF=9/1(v/v)
【0070】
反応終点におけるHPLC分析結果は、HPLCのピーク面積比で示して、以下のとおりであった。
9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレン
(目的物): 81.8%
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン(原料): 0%
モノヨード体(中間体): 0%
【0071】
実施例4
<9,9−ビス{4−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノフェニル}フルオレンの合成>
窒素置換した反応容器に下記の化合物を添加混合した。
ビス(ビフェニル−4−イル)アミン
20.30g(63.16ミリモル)
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン
15.00g(26.31ミリモル)
銅粉 0.17g(2.63ミリモル)
3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン
酸 0.66g(2.63ミリモル)
炭酸カリウム 10.91g(78.92ミリモル)
亜硫酸水素ナトリウム 0.83g(7.89ミリモル)
ドデシルベンゼン 30ml
【0072】
反応容器中に添加された上記混合物を、200℃で13時間攪拌しながら加熱した。
反応終了後、得られた反応溶液をHPLC分析することによって反応の終点を確認した。HPLC分析装置としては以下の仕様のものを用いた。
HPLC分析装置:島津製LC−6A型
カラム;ジーエルサイエンス製Inertsil ODS−3、
内径4.6mm、長さ250mm
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出波長:254nm
溶離液:メタノール/THF=85/15(v/v)
【0073】
反応終点におけるHPLC分析結果は、HPLCのピーク面積比で示して、以下のとおりであった。
9,9−ビス{4−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノフェニル}
フルオレン(目的物): 49.8%
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン(原料):
2.8%
モノヨード体(中間体): 0.9%
【0074】
実施例5
<N,N,N’,N’−テトラキス(ビフェニル−4−イル)−3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニルの合成>
窒素置換した反応容器に下記の化合物を添加混合した。
ビス(ビフェニル−4−イル)アミン
20.0g(62.2ミリモル)
3,3’−ジメチル−4,4’−ジヨードビフェニル
11.24g(25.9ミリモル)
銅粉 0.16g(2.59ミリモル)
3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン
酸 0.65g(2.59ミリモル)
炭酸カリウム 10.74g(77.7ミリモル)
亜硫酸水素ナトリウム 0.81g(7.77ミリモル)
ドデシルベンゼン 24ml
キシレン 48ml
【0075】
反応容器中に添加された上記混合物を、攪拌しながら加熱し、キシレンを留去しながら加熱を続け、210℃で7.5時間攪拌を行った後、
銅粉 0.16g(2.59ミリモル)
炭酸カリウム 3.58g(25.9ミリモル)
を追加し、さらに210℃で6時間攪拌を行った。
反応終了後、得られた反応溶液をHPLC分析することによって反応の終点を確認した。HPLC分析装置としては以下の仕様のものを用いた。
HPLC分析装置:日立製L−7100型
カラム;ジーエルサイエンス製Inertsil ODS−3、
内径4.6mm、長さ250mm
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出波長:254nm
溶離液:アセトニトリル/THF=85/15(v/v)
【0076】
反応終点におけるHPLC分析結果は、HPLCのピーク面積比で示して、以下のとおりであった。
N,N,N’,N’−テトラキス(ビフェニル−4−イル)−3,3’
−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(目的物): 78.8%
3,3’−ジメチル−4,4’−ジヨードビフェニル(原料):
2.1%
モノヨード体(中間体): 0.52%
【0077】
実施例6
<4,4’−ビス{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}−3,3’−ジメチルビフェニルの合成>
窒素置換した反応容器に下記の化合物を添加混合した。
(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミン
26.41g(107.6ミリモル)
3,3’−ジメチル−4,4’−ジヨードビフェニル
19.47g(44.85ミリモル)
銅粉 0.29g(4.49ミリモル)
4−メチル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸
0.68g(4.49ミリモル)
炭酸カリウム 18.60g(134.6ミリモル)
亜硫酸水素ナトリウム 1.41g(13.46ミリモル)
ドデシルベンゼン 39ml
【0078】
反応容器中に添加された上記混合物を、200℃で18時間攪拌しながら加熱した。
反応終了後、得られた反応溶液をHPLC分析することによって反応の終点を確認した。HPLC分析装置としては以下の仕様のものを用いた。
HPLC分析装置:日立製L−7100型
カラム;ジーエルサイエンス製Inertsil ODS−3、
内径4.6mm、長さ250mm
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出波長:254nm
溶離液:メタノール/THF=9/1(v/v)
【0079】
反応終点におけるHPLC分析結果は、HPLCのピーク面積比で示して、以下のとおりであった。
4,4’−ビス{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}−
3,3’−ジメチルビフェニル(目的物): 85.6%
3,3’−ジメチル−4,4’−ジヨードビフェニル
(原料): 4.5%
モノヨード体(中間体): 1.6%
【0080】
実施例7
<9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレンの合成>
実施例3において、3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸を2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸に代えた以外は、実施例3と同様の条件で反応を行った。
【0081】
反応終了後、得られた反応溶液を実施例3と同じ仕様のHPLC分析装置を用いて、反応の終点を確認した。HPLC分析結果は、HPLCのピーク面積比で示して、以下のとおりであった。
9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレン(目的物):
81.2%
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン(原料): 0%
モノヨード体(中間体): 0.2%
【0082】
実施例8
<9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレンの合成>
実施例3において、3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸を5−シクロヘキシル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸に代えた以外は、実施例3と同様の条件で反応を行った。
【0083】
反応終了後、得られた反応溶液を実施例3と同じ仕様のHPLC分析装置を用いて、反応の終点を確認した。HPLC分析結果は、HPLCのピーク面積比で示して、以下のとおりであった。
9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレン
(目的物): 81.0%
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン(原料): 0%
モノヨード体(中間体): 0.1%
【0084】
実施例9
<9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレンの合成>
実施例3において、3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸を5−メトキシ−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸に代えた以外は、実施例3と同様の条件で反応を行った。
【0085】
反応終了後、得られた反応溶液を実施例3と同じ仕様のHPLC分析装置を用いて、反応の終点を確認した。HPLC分析結果は、HPLCのピーク面積比で示して、以下のとおりであった。
9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレン
(目的物): 81.3%
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン(原料): 0%
モノヨード体(中間体): 0.1%
【0086】
実施例10
<9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレンの合成>
実施例3において、3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸を4−フルオロ−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸に代えた以外は、実施例3と同様の条件で反応を行った。
【0087】
反応終了後、得られた反応溶液を実施例3と同じ仕様のHPLC分析装置を用いて、反応の終点を確認した。HPLC分析結果は、HPLCのピーク面積比で示して、以下のとおりであった。
9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレン
(目的物): 81.5%
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン(原料): 0%
モノヨード体(中間体): 0%
【0088】
実施例11
<9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレンの合成>
実施例3において、3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸を4−フェニル−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸に代えた以外は、実施例3と同様の条件で反応を行った。
【0089】
反応終了後、得られた反応溶液を実施例3と同じ仕様のHPLC分析装置を用いて、反応の終点を確認した。HPLC分析結果は、HPLCのピーク面積比で示して、以下のとおりであった。
9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレン
(目的物): 80.9%
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン(原料): 0%
モノヨード体(中間体): 0.1%
【0090】
実施例12
<9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレンの合成>
実施例3において、3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸を5−(ピリジン−2−イル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸に代えた以外は、実施例3と同様の条件で反応を行った。
【0091】
反応終了後、得られた反応溶液を実施例3と同じ仕様のHPLC分析装置を用いて、反応の終点を確認した。HPLC分析結果は、HPLCのピーク面積比で示して、以下のとおりであった。
9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレン
(目的物): 80.4%
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン(原料): 0%
モノヨード体(中間体): 0.3%
【0092】
実施例13
<9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレンの合成>
実施例3において、3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸を1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸に代えた以外は、実施例3と同様の条件で反応を行った。
【0093】
反応終了後、得られた反応溶液を実施例3と同じ仕様のHPLC分析装置を用いて、反応の終点を確認した。HPLC分析結果は、HPLCのピーク面積比で示して、以下のとおりであった。
9,9−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)フルオレン
(目的物): 81.0%
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン(原料): 0%
モノヨード体(中間体): 0.1%
【0094】
実施例14
<9,9−ビス{4−(カルバゾリル−9−イル)−フェニル}フルオレンの合成>
窒素置換した反応容器に下記の化合物を添加混合した。
カルバゾール 19.3g(115ミリモル)
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン
29.9g(52.4ミリモル)
銅粉0.33g(5.2ミリモル)
3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン
酸 1.31g(5.2ミリモル)
炭酸カリウム 21.7g(157ミリモル)
亜硫酸水素ナトリウム 1.64g(15.7ミリモル)
ドデシルベンゼン 33ml
キシレン 66ml
【0095】
反応容器中に添加された上記混合物を、攪拌しながら加熱し、キシレンを留去しながら加熱を続け、195℃で4時間攪拌を行った後、
銅粉 0.33g(5.2ミリモル)
炭酸カリウム 0.72g(5.2ミリモル)
を追加し、さらに195℃で6時間攪拌を行った。
【0096】
反応終了後、得られた反応溶液をHPLC分析することによって反応の終点を確認した。HPLC分析装置としては以下の仕様のものを用いた。
HPLC分析装置:東ソー製CCPD型
カラム;ジーエルサイエンス製Inertsil ODS−3、
内径4.6mm、長さ250mm
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出波長:254nm
溶離液:メタノール/THF=9/1(v/v)
【0097】
反応終点におけるHPLC分析結果は、HPLCのピーク面積比で示して、以下のとおりであった。
9,9−ビス{4−(カルバゾリル−9−イル)−フェニル}
フルオレン(目的物): 72.4%
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン(原料):
1.0%
モノヨード体(中間体): 1.9%
【0098】
実施例15
<3,5−ビス[6−(カルバゾリル−9−イル)−ピリジン−2−イル]−4−フェニル−4H−[1,2,4]トリアゾールの合成>
窒素置換した反応容器に下記の化合物を添加混合した。
カルバゾール 16.9g(101ミリモル)
3,5−ビス(6−クロロピリジン−2−イル)−4−フェニル−
4H−[1,2,4]トリアゾール 14.3g(38.8ミリモル)
銅粉 0.25g(3.9ミリモル)
3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン
酸 0.97g(3.9ミリモル)
炭酸カリウム 16.1g(117ミリモル)
ドデシルベンゼン 40ml
【0099】
反応容器中に添加された上記混合物を、攪拌しながら加熱し、205〜215℃で4.5時間攪拌を行った後、
銅粉 0.25g(3.9ミリモル)
炭酸カリウム 5.4g(39ミリモル)
キシレン 20ml
を追加し、さらに攪拌しながら加熱し、キシレンを留去しながら加熱を続け、210℃で10時間攪拌を行った。
【0100】
反応終了後、得られた反応溶液をHPLC分析することによって反応の終点を確認した。HPLC分析装置としては以下の仕様のものを用いた。
HPLC分析装置:島津製LC−10A型
カラム;ジーエルサイエンス製Inertsil ODS−SP、
内径4.6mm、長さ250mm
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出波長:254nm
溶離液:メタノール/0.05%TFA水溶液=9/1(v/v)
【0101】
反応終点におけるHPLC分析結果は、HPLCのピーク面積比で示して、以下のとおりであった。
3,5−ビス[6−(カルバゾリル−9−イル)−ピリジン−
2−イル]−4−フェニル−4H−[1,2,4]トリアゾール
(目的物): 50.0%
3,5−ビス(6−クロロピリジン−2−イル)−4−フェニル−
4H−[1,2,4]トリアゾール(原料): 0%
モノクロロ体(中間体): 0.1%
カルバゾール: 34.2%
【比較例】
【0102】
比較例1
実施例1において、原料などの仕込み量をそれぞれ2倍とし、3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸を加えない以外は、実施例1と同様の条件で反応を行った。
【0103】
HPLC分析による反応の終点を確認したところ、反応の終点までに要した時間は20.5時間であった。
反応の終点における反応溶液について、実施例1と同一の測定条件でHPLC分析を行った。
【0104】
反応終点におけるHPLCのピーク面積比は、以下のとおりであった。
4,4’−ビス{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}
ビフェニル(目的物): 87.9%
4,4’−ジヨードビフェニル(原料): 0.55%
モノヨード体(中間体): 0.32%
【0105】
実施例1と同様の条件で、後処理および精製操作を行うことによって、目的物である4,4’−ビス{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}ビフェニル 16.84g(収率91.0%)の粉体を得た。
【0106】
比較例2
実施例2において、3,5−ジ(tert−ブチル)−2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸を加えない以外は、実施例2と同様の条件で反応を行った。
即ち、窒素置換した反応容器に以下の化合物を添加混合した。
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン
30.0g(52.6ミリモル)
4−(ジフェニルアミノ−ビフェニル−4’−イル)−
フェニルアミン 52.09g(126.3ミリモル)
銅粉 0.34g(5.35ミリモル)
炭酸カリウム 21.81g(157.8ミリモル)
亜硫酸水素ナトリウム 1.65g(15.8ミリモル)
ドデシルベンゼン 50ml
【0107】
反応容器中に添加された上記混合物を、攪拌しながら加熱し、210℃で16時間攪拌を行った後、
銅粉 0.34g(5.35ミリモル)
炭酸カリウム 7.26g(52.5ミリモル)
を追加し、さらに210℃で9時間攪拌を行った。反応の進行が遅いため、さらに、
銅粉 0.34g(5.35ミリモル)
炭酸カリウム 7.26g(52.5ミリモル)
を追加し、反応温度を225℃に上げて、引き続いて8時間攪拌を行った。反応の進行が遅いため、さらに、
銅粉 0.34g(5.35ミリモル)
炭酸カリウム 7.26g(52.5ミリモル)
を追加し、225℃で3.5時間攪拌を行った。
反応溶液について、実施例2と同様の測定条件でHPLC分析を行った。
【0108】
反応終点におけるHPLCのピーク面積比は、以下のとおりであった。
N,N’−ビス(4−ジフェニルアミノ−ビフェニル−4’−イル)
−N,N’−ジフェニル−9,9−ビス(4−アミノフェニル)フル
オレン(目的物): 72.0%
9,9−ビス(4−ヨードフェニル)フルオレン(原料): 0%
モノヨード体(中間体): 0%
【0109】
以上の実施例及び比較例の結果から、芳香族オキシカルボン酸(ヒドロキシ基とヒドロキシカルボニル基とが隣接する炭素原子に結合しているもの)を、銅触媒及び塩基と共に共存させることによって、銅触媒としての活性を向上させ、反応時間を2分の1以下に短縮することができ、さらに、比較的低い温度でもウルマン反応を進行させることができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明では、アミン化合物とハロゲン化芳香族化合物を原料とし、銅触媒及び塩基と溶媒の存在下で行うウルマン反応において、ヒドロキシ基とヒドロキシカルボニル基とが隣接する炭素原子に結合している芳香族オキシカルボン酸を共存させて反応を行うことによって、反応時間を短縮することができ、かつ反応温度を下げることができることができるので、各種有機材料またはその中間体として有用な芳香族アミノ化合物を、高収率、高純度、かつ低コストで製造することができる。
図1