【実施例1】
【0021】
図2(a)は、本発明の実施例1に係る墜落防止ロープ1が示された正面図である。この墜落防止ロープ1は、ロープ11と、三つ目環(取付プレート)12と、2ケのフック13a,13bと、を備えている。
【0022】
図3は、本発明の実施例1に係る墜落防止ロープ1の三つ目環(取付プレート)12が示された正面図である。
図3に示すように、三つ目環12は2ケのフック連結孔121a,121bと、ロープ連結孔122を有している。このフック連結孔121a,121bは、中心軸Y−Yの両側に相対して設けられている。またロープ連結孔122は、その中心を中心軸Y−Y上として設けられている。
【0023】
図2(a)及び
図3に示すように、ロープ11の一端が三つ目環12のロープ連結孔122に編み込まれ、フック連結孔121a,121bにフック13a,13bがUシャクル14a,14bで並列して接続されている。また、ロープ11は、その他端が環状に編み込まれて、環状部15を形成している。
【0024】
前記ロープ11は、柱上安全帯を使用する作業者が主ランヤードの掛け替え時に使用する副ランヤードと同仕様のもので、通常、φ10〜12mmのナイロン製のロープであり、三つ目環12への編み込みは「さつま加工」と呼ばれる編み込み方法である。本実施例では繊維ロープを使用しているが、定められた強度(15.0kN以上の引張強度)を有するものであれば、ベルト製のストラップ等を使用して縫合してもよい。ここで「定められた強度」とは、「安全帯の規格」及び「安全帯構造指針」の規格値をいう。
【0025】
ここで、墜落防止ロープ1の長さは特に特定するものではないが、万が一の落下時における衝撃荷重を低く抑えるために、作業の支障にならない程度で出来る限り短いことが望ましい。具体的には、柱上安全帯に取り付ける副ランヤードのランヤード長さ(ロープ長さ+フック長さ)は、フックを掛ける掛止物が特定されないこともあり、標準で1.6〜1.7mであるが、本実施例では、
図1に示すように、墜落防止ロープ1のフックを掛ける掛止物であるチョーク台付ベルト2が、作業者の体の前で、腰から頭程度の高さ位置であるので、ランヤード長さを、1.0〜1.4mとすることができる。
【0026】
また、前記三つ目環12は、定められた強度(11.5kN以上の引張強度)を有するために、鉄製またはアルミ製で、板材の打ち抜き加工やレーザーカット加工、或いは鍛造で製作されている。この三つ目環12は3ケの孔を有しているが、孔の数は限定されず、ロープ11と2ケのフック13a,13bとが接続できればよい。具体的には、孔を1ケとし、その1ケの孔にロープ11とUシャクル14a,14bを全て連結してもよい。しかしながら、作業者がフックを係止する際に、フック13aとフック13bが混同しないように、別孔に接続されることが望ましい。
【0027】
また、三つ目環12とフック13a,13bとを接続するために、本実施例ではUシャクル14a,14bを使用しているが、三つ目環12と同様の定められた強度を有する手法であれば、その接続方法は限定されない。最もシンプルな接続方法としては、フック13a,13bの環部に直接ロープ11を編み込んで接続することも可能である。つまり、三つ目環12とUシャクル14a,14bは、墜落防止ロープ1を構成する必須要素ではない。しかしながら、製造時の組立性、作業時におけるフックの取扱い性を考えると、三つ目環12とUシャクル14a,14bを備えることが望ましい。
【0028】
図2(b)は、本発明の実施例1に係る墜落防止ロープ1の、安全帯3のD環33への取付図である。
図2(b)に示すように、ロープ11端部の環状部15をD環33に挿通した後、その環状部15に2ケのフック13a,13bを接続した三つ目環12を挿通し、環状部15の輪が締まる状態とすることにより、墜落防止ロープ1が柱上安全帯3のD環33に連結される。そのために、環状部15の輪の大きさは2ケのフック13a,13bを接続した三つ目環12が挿通出来る大きさである。本実施例では墜落防止ロープ1の他端に環状部15を設けたが、フックやカラビナを用いて柱上安全帯3のD環33と連結してもよい。
【0029】
図4(a)及び
図4(b)は、本発明の実施例1に係るチョーク台付ベルト2が示された正面図及び側面図である。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、チョーク台付ベルト2は、ベルト本体21の一端に墜落防止ロープ1のフック鉤部が係止可能な大きさの輪状に形成したアイ部22が設けられており、ベルト本体21の他端にアイ部22が挿入可能な大きさの輪状に形成した複数個の環部23、24、25が設けられている。
【0030】
アイ部22は、ベルト本体21の一端を折り返して、フック13a,13bの鉤部が樹上で容易に係止できる大きさ(φ50mm程度)の輪が形成され、折り返したベルト端部から所定の長さで縫合されている。この所定の長さとは、定められた強度(使用状態であるチョーク吊り状態で、11.5kN以上の引張強度)と、耐久性(通常の使用時における摩耗、紫外線等による劣化に耐える性能)を考慮して決定した縫合長さである。また、このアイ部22には金属製のフック13a,13bが係止されるので、輪状部分に摩耗防止のための保護部材である摩耗防止布221で覆われており、前記の縫合部には摩耗による縫い糸の劣化防止のために熱収縮チューブ222が被せられている。
【0031】
環部23は、ベルト本体21の他端をアイ部22と同様に折り返して、アイ部22が挿入可能な大きさ(φ50mm程度)の輪が形成され、アイ部22の縫合と同様に、折り返したベルト端部から所定の長さで縫合されている。
環部24、25は、別体で成るベルトが折り返されて、アイ部22が挿入可能な大きさ(φ50mm程度)の輪が形成され、折り返したベルト端部から所定の長さで、ベルト本体21に縫合されている。
これら縫合の所定長さはアイ部22の縫合と同じであり、縫合部には摩耗による縫い糸の劣化防止のために熱収縮チューブ222が被せられている。
【0032】
これらの環部23、24、25は、それぞれがほぼ同径の輪状に形成されており、ベルト本体21にほぼ等間隔で、重連的に設けられている。
図4(b)に示すように、環部23、24、25は、その輪状部と隣の環部の縫合部とが重ならない程度の位置に配置されている。これにより、チョーク吊りの如く絞って樹木に巻き付けるときに、樹木の径によって環部23、24、25の何れかを選択して、アイ部22を挿入することにより、様々な樹木の径に対応できる。当然のことながら、樹木はその大きさにより径が異なり、1本の樹木でもその高さ位置によって順次径が異なっている。そのために、チョーク台付ベルト2は、数種類の全長を有するものが用意されている。しかしながら、複数の重連の環部を設けることにより、1種類で樹の高さ位置による径の違いにほぼ対応できる。
また、本実施例では輪状部を環部23、24、25と3ケとしているが、輪状部の数はチョーク台付ベルト2の全長により適宜決定される。更に、輪状部の径が同径でなくとも、環部の配置位置が等間隔でなくとも、輪状部の径と環部の配置位置を組み合わせて、樹木の様々な径に対応してもよい。
【0033】
図5(a)、
図5(b)及び
図5(c)は、本発明の実施例1に係るチョーク台付ベルト2の変形例が示された側面図である。
図5(a)に示すように、環部23、24、25は、ベルト本体21の片面のみではなく、両面に適宜縫合されてもよい。
図5(b)に示すように、ベルト本体21を折り返されずに、環部23を別体で成るベルトで縫合してもよい。
図5(c)に示すように、環部24、25を別体で成るベルトで縫合せずに、ベルト本体21を折り返して縫合し、複数の輪状部を設けてもよい。
【0034】
本発明のチョーク台付ベルト2を構成するベルトは、樹木に巻き付け易いように可撓性を有する材料で形成されている。具体的には、ナイロン、ポリエステル、アラミド繊維等を用いることができる。幅、厚さは、定められた強度(15.0kN以上の引張強度)を有する範囲で、出来る限り軽量なものが選定されている。具体的には、20mm×3mm程度であれば扱い易い。
また、本実施例ではベルトを使用しているが、定められた強度を有するものであれば、繊維ロープ等を使用してもよい。
【0035】
図6は、樹木を昇降する作業者が使用する柱上安全帯3が示された正面図である。
図6に示すように、柱上安全帯3は主ランヤード31と胴ベルト32を備えている。この胴ベルト32にD環33が設けられている。
図2(b)に示すように、墜落防止ロープ1が柱上安全帯3のD環33に連結されている。
【0036】
昇降具であるステップ4及び柱上安全帯3を使用して樹木に昇降する方法については前述したが、ここで、墜落防止ロープ1とチョーク台付ベルト2とから成る樹木昇降補助具を使用して墜落を防止しながら安全に昇降する方法について説明する。
【0037】
先ず作業者は、自分の身長程度の高さ位置で、1本目のチョーク台付ベルト2A(第1チョーク台付ベルト)で樹木の幹を抱き込み、アイ部22を、環部23、24、25の何れかに挿入した後、チョーク吊りの如く絞って樹木に巻き付ける。その後、柱上安全帯3に連結された墜落防止ロープ1の一方のフック13aを、第1チョーク台付ベルトのアイ部22に係止する。続いて、第1ステップ4に昇る。このとき、第1チョーク台付ベルトに掛けられたフック13aの係止点は、作業者の腰より高い位置であり、万が一の落下した場合でも衝撃荷重が抑制される。
【0038】
次に作業者は、自分の身長程度の高さ位置で、2本目のチョーク台付ベルト2B(第2チョーク台付ベルト)を、第1チョーク台付ベルトと同様にして樹木に巻き付ける。そして、墜落防止ロープ1の他方のフック13bを、第2チョーク台付ベルトのアイ部22に係止した後、墜落防止ロープ1の一方のフック13aを、第1チョーク台付ベルトから取り外す。続いて、第2ステップ4に昇る。このとき、第2チョーク台付ベルトに掛けられたフック13bの係止点は、作業者の腰より高い位置であり、万が一の落下した場合でも衝撃荷重が抑制される。以後、この手順を繰り返して昇って行く。降りるときは、この逆手順を繰り返す。
【0039】
このように、墜落防止ロープ1のフック13a,13bの何れかが、作業者の腰より高い位置で、チョーク台付ベルト2に接続されている。枝等があって、柱上安全帯3の主ランヤード31のフックを掛け替えるときも、無胴綱状態が回避できる。
このチョーク台付ベルト2の樹木への取付方法はチョーク締付方式なので、樹木の曲りがあっても巻き付けることができる。また、巻き付けたい位置に枝があっても、取付点を変更して巻き付けることができる。従って、本発明の樹木昇降補助具は樹木の曲りや枝の位置に影響を受けることなく墜落が防止できる。具体的には、幹が極端に斜めになっていて、ステップ4が取付られないような不安定な状態が発生しても、本発明の樹木昇降補助具を取り付けることにより墜落が防止できる。
更に、特許文献1のように昇降用の足場と墜落防止具が一体のものでは、昇降・作業位置が限定されるが、本発明では幹の360°どの位置でも、墜落を防止しながらの昇降・作業ができる。具体的には、樹木を昇る時と降りる時のルートが幹を挟んで180°反対側の場合でも、チョーク台付ベルト2を緩めて、簡単に反転することが可能である。
【0040】
また、本発明は、チョーク台付ベルト2で樹木の幹を抱き込み、アイ部22を、環部23、24、25の何れかに挿入した後、チョーク吊りの如く絞って樹木に巻き付ける手法であるが、その他の手法として、バックルを用いて樹木の幹に取り付ける手法もある。しかしながら、この手法は、万が一の落下時等、大きな荷重が加わったときに、ベルトの伸びにバックルの滑りが加算されて、落下距離が長くなり衝撃荷重が大きくなる。一方、チョーク式はベルトの伸びのみの要因であり、落下距離が抑制される。
【0041】
作業者は、樹上で伐採等の作業を行うとき、柱上安全帯3の主ランヤード31に体重を預けて作業を行う。このときの墜落事故の要因の一つのとして、フックの掛け間違いがある。具体的には、本来フックを係止すべきD環に掛けず、工具吊り用の簡易フックや簡易カラビナに掛けてしまい、墜落してしまうことが多々ある。本発明では、墜落防止ロープ1のフック13a,13bの何れかが、作業者の腰より高い位置で、チョーク台付ベルト2に接続されているので、作業者は安心して両手で伐採作業ができる。
【0042】
本発明の墜落防止ロープ1は、従来の副ランヤードに三つ目環12とフック13bが付加されたのみであり、またチョーク台付ベルト2は繊維ベルト製であり、安全性を確保するものとしては非常に軽量である。装備的にも最低限の装備で済むため、作業性に優れている。従って、線下伐採の作業者も、山奥で作業する育林作業者も、作業能率を低下させることなく本発明の昇降補助具を使用できる。
【0043】
図7(a)から
図7(e)は、本発明の実施例1の樹木昇降方法1−1の工程が示された説明図である。
図7(a)に示すように、工程(a)で、作業者は、1本目のチョーク台付ベルト2Aを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ先端の一方のフック13aを1本目のチョーク台付ベルト2Aのアイ部22に係止する。
図7(b)に示すように、工程(b)で、作業者は、ステップ4Aを使用して1段昇る。このとき、1本目のチョーク台付ベルトは自分の腰より高い位置である。
図7(c)に示すように、工程(c)で、作業者は、別体の2本目のチョーク台付ベルト2Bを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ1の他方のフック13bを2本目のチョーク台付ベルト2Bのアイ部22に係止する。
図7(d)に示すように、工程(d)で、作業者は、フック13aを1本目のチョーク台付ベルト2Aのアイ部22から取り外し、1本目のチョーク台付ベルト2Aを樹木より取り外す。
図7(e)に示すように、工程(e)で、作業者は、ステップ4Bを使用して1段昇る。このとき、2本目のチョーク台付ベルトは自分の腰より高い位置である。
【0044】
これらの工程(a)から工程(e)を1サイクルとし、作業者は各工程を繰り返して樹木に昇る。また、逆手順を繰り返して樹木から降りる。これにより、樹木への昇降の開始から終了まで、作業者の腰より高い位置で、少なくとも1ケのフックが、いずれかのチョーク台付ベルトに接続されている。
【0045】
図8(a)から
図8(f)は、本発明の実施例1の樹木昇降方法1−2の工程が示された説明図である。
図8(a)に示すように、工程(a)で、作業者は、1本目のチョーク台付ベルト2Aを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ先端の一方のフック13aを1本目のチョーク台付ベルト2Aのアイ部22に係止する。
図8(b)に示すように、工程(b)で、作業者は、ステップ4Aを使用して1段昇る。このとき、1本目のチョーク台付ベルト2Aは自分の腰より高い位置である。
図8(c)に示すように、工程(c)で、作業者は、別体の2本目のチョーク台付ベルト2Bを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、墜落防止ロープ1の他方のフック13bを2本目のチョーク台付ベルト2Bのアイ部22に係止する。
図8(d)に示すように、工程(d)で、作業者は、フック13aを1本目のチョーク台付ベルト2Aのアイ部22から取り外す。
図8(e)に示すように、工程(e)で、作業者は、ステップ4Bを使用して1段昇る。このとき、2本目のチョーク台付ベルト2Bは自分の腰より高い位置である。
図8(f)に示すように、工程(f)で、作業者は、3本目のチョーク台付ベルト2Cを自分の身長程度の高さ位置になるよう樹木に巻き付け、1本目のチョーク台付ベルト2Aより取り外した墜落防止ロープ先端の一方のフック13aを、3本目のチョーク台付ベルト2Cのアイ部22に係止する。
【0046】
以下同様にして所定の位置まで昇る。このとき、複数のチョーク台付ベルト2は、ステップ4と同様に順次樹木に配置されている。降りるときは、最終設置のチョーク台付ベルトから順次撤去しながら、同様の逆手順を繰り返して昇降する。
これにより、樹木への昇降の開始から終了まで、作業者の腰より高い位置で、少なくとも1ケのフックが、いずれかのチョーク台付ベルトに接続されている。
【0047】
通常、樹木に昇降する作業者が使用する安全帯は、その胴ベルト32に胴綱と呼ばれる主ランヤード31が取り付けられている柱上安全帯3と呼ばれる安全帯である。しかし、胴綱が取り付けられていない、U字つり使用のできない1本つり専用のタイプのものであっても、昇降が目的であれば本発明の樹木昇降補助具が使用できる。
作業者が樹木に昇降する方法として、ステップ4を配置しながら昇降する方法で説明したが、一本梯子を使用して昇降する場合や、爪の付いた金具を両足に装着して昇降する場合でも、同様に本発明の樹木昇降補助具が使用できる。即ち、本発明の樹木昇降補助具は、線下伐採や枝打ちの作業者が一般的に使用している樹木昇降具と併用して使用できる。