特許第5651605号(P5651605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5651605チップブレーカパターンを有する回転式切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5651605
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】チップブレーカパターンを有する回転式切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/10 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
   B23C5/10 Z
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-551129(P2011-551129)
(86)(22)【出願日】2010年2月11日
(65)【公表番号】特表2012-518550(P2012-518550A)
(43)【公表日】2012年8月16日
(86)【国際出願番号】US2010023882
(87)【国際公開番号】WO2010096328
(87)【国際公開日】20100826
【審査請求日】2013年2月8日
(31)【優先権主張番号】12/389,957
(32)【優先日】2009年2月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399031078
【氏名又は名称】ケンナメタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kennametal Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス、ダニー アール.
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特表平08−507724(JP,A)
【文献】 特開平02−256412(JP,A)
【文献】 特開2002−273612(JP,A)
【文献】 特開2001−054812(JP,A)
【文献】 米国特許第04770567(US,A)
【文献】 特開2006−000981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸(16)を有する回転式切削工具(10)であって、
シャンク部(12)と、
前記シャンク部から切削部先端(15)に延び、刃長と、前記刃長に沿って延び不均等に間隔をあけた溝(20)によって分離された複数の刃(18)とを有する切削部(14)であって、各刃は、前面、後面、前記前面と前記後面との間に延びるランド面、および前記前面と前記ランド面との間の交差部にある切れ刃を含む、切削部(14)と、
前記刃長に沿って延びるチップブレーカパターン(32)で各刃の前記ランド面に配置された複数の切り屑破断部(34)と、を有する回転式切削工具であって、
各切り屑破断部は、小半径部(R1)、大半径部(R2)、およびそれらの間のつなぎ半径部(R3)によって形成され、前記つなぎ半径部(R3)は前記大半径部より半径が短く、
前記チップブレーカパターンが、1つの刃の前記ランド面に配置された前記切り屑破断部が、直接隣接する刃の前記ランド面に配置された前記切り屑破断部間に配置される、回転式切削工具。
【請求項2】
前記小半径部は、前記大半径部よりも前記切削部先端に近い、請求項1に記載の回転式切削工具。
【請求項3】
各溝の深さ(D)は、前記長手軸沿いに前記切削部先端から前記シャンク部に向かって変化する、請求項1又は請求項2に記載の回転式切削工具。
【請求項4】
各溝の前記深さは、前記切削部先端に近い方が深い、請求項3に記載の回転式切削工具。
【請求項5】
各刃は、前記長手軸に対して約30°〜約45°の螺旋角(30)を形成する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転式切削工具。
【請求項6】
前記チップブレーカパターンは、前記複数の刃のうちの第1の刃に対して、前記切削部先端から第1の距離(d1)で始まり、前記チップブレーカパターンは、前記複数の刃のうちの1つおきの各刃に対して、前記第1の距離で繰り返され、および、前記チップブレーカパターンは、前記複数の刃のうちの第2の刃に対して、前記切削部先端から第2の異なる距離(d2)で始まり、前記チップブレーカパターンは、前記複数の刃のうちの1つおきの各刃に対して、前記第2の距離で繰り返される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回転式切削工具。
【請求項7】
前記切り屑破断部は互いから等距離にある、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の回転式切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式切削工具に関する。より詳細には、本発明は、1つの刃の各チップブレーカが、直接隣接する刃のそれぞれのチップブレーカ間に配置されるように、ずれたチップブレーカパターンを有するエンドミルに関する。
【背景技術】
【0002】
エンドミルなどの回転式切削工具は、通常、シャンク部および切削部を含む円筒状形状を有する。切削部は、シャンク部に隣接する切削部の第1の端部(すなわち「シャンク端」)から切削部の反対側の端部(すなわち「自由端」)に向かって延びる、螺旋に配置された複数の切削刃を含む。一部の実施形態では、螺旋刃の切れ刃は、工具の長手軸から実質的に一定の半径をなす部分に沿って配置される。通常「テーパ付き」切削工具と呼ばれる別の実施形態では、切削部が略円錐台形状である、すなわち、切れ刃が切削部のシャンク端から自由端に延びるにつれて、各刃の切れ刃は、工具の長手軸からの半径が一定に減少する。テーパ付きの回転式切削工具の刃の切れ刃は、切削部を通り、工具の長手軸に対して垂直な任意の平面では、工具の長手軸から同じ距離にある。通常「直線溝付き」回転式切削工具と呼ばれる、さらに別のエンドミルの実施形態では、刃の切れ刃は、工具の長手軸に対して平行に延びる。
【0003】
上記に説明した従来の回転式切削工具のいずれかを使用するに当たって、いくつかの本質的な問題がある。通常、これらの問題は、切れ刃の全長が工作物に同時に作用するという事実により、また、連続した切り屑が生成され、この切り屑が加工領域から十分に除去されないという事実により、過剰な摩耗、およびあまり十分とは言えない切削機能、またはその両方として顕在化する。そのような工具において、切削機能を改良し、摩耗を低減するための多くの試みがなされてきたが、これらの試みは通常、間隔をあけたパターンで切削刃に横方向に切られた比較的深い切欠きの形態、または各切削刃に沿って切れ刃を途切れさせる何らかの同様の形態の、いわゆる「チップブレーカ」の使用を含む。
【0004】
6枚刃エンドミル構造用の従来のチップブレーカパターンが図8に示されている。示すように、一般的なチップブレーカパターンは、特定の刃長(LOC)にわたって、1つの刃、例えば、刃#2のチップブレーカが、隣接する刃#1、#3のチップブレーカの真後ろにあるようにされる。刃が切欠きに再度移行する点Pは、形状的に危険な部分であり、通常、工具障害が発生する部分である。この移行点は、チップブレーカの真後ろにあるので、工具のこの危険な領域は、1つの刃当たりの設定された切り屑負荷の大きさが2倍であり、このため、この領域は障害がさらにいっそう起こりやすい。したがって、先行技術の欠点を解決する回転式切削工具を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様では、長手軸を有する回転式切削工具は、シャンク部と、シャンク部から切削部先端に延びる切削部と、複数の切り屑破断部とを含む。前記切削部は、刃長と、刃長に沿って延びる溝によって分離された複数の刃とを有し、各刃が、前面、後面、前面と後面との間に延びるランド面、および前面とランド面との間の交差部にある切れ刃を含む。前記複数の切り屑破断部は、刃長に沿って延びるチップブレーカパターンで各刃のランド面に配置される。チップブレーカパターンは、1つの刃のランド面に配置された切り屑破断部が、直接隣接する刃のランド面に配置された切り屑破断部間に配置される。
【0006】
本発明の別の態様では、長手軸を有する回転式切削工具は、シャンク部と、シャンク部から切削部先端に延びる切削部と、複数の切り屑破断部とを含む。前記切削部は、刃長と、刃長に沿って延びる溝によって分離された複数の刃とを有し、各刃が、前面、後面、前面と後面との間に延びるランド面、および前面とランド面との間の交差部にある切れ刃を含む。前記複数の切り屑破断部は、刃長に沿って延びるチップブレーカパターンで各刃のランド面に配置される。チップブレーカパターンは、複数の刃のうちの第1の刃に対して、切削部先端から第1の距離で始まり、チップブレーカパターンは、複数の刃のうちの1つおきの各刃に対して、第1の距離で繰り返される。チップブレーカパターンは、複数の刃のうちの第2の刃に対して、切削部先端から第2の異なる距離で始まり、チップブレーカパターンは、複数の刃のうちの1つおきの各刃に対して、第2の距離で繰り返される。
【0007】
本発明の別の態様では、長手軸を有する回転式切削工具は、シャンク部と、シャンク部から切削部先端に延びる切削部と、複数の切り屑破断部とを含む。前記切削部は、刃長と、刃長に沿って延びる溝によって分離された複数の刃とを有し、各刃が、前面、後面、前面と後面との間に延びるランド面、および前面とランド面との間の交差部にある切れ刃を含む。前記複数の切り屑破断部は、刃長に沿って延びるパターンで各刃のランド面に配置される。各切り屑破断部は、小半径部、大半径部、およびそれらの間のつなぎ半径部で形成される。
【0008】
本発明の様々な実施形態が示されるが、示した特定の実施形態が特許請求の範囲を限定すると解釈すべきでない。本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】チップブレーカパターンを有し、刃および溝間隔が不均等に割り出しされた、本発明の実施形態による回転式切削工具の斜視図である。
図2図1の回転式切削工具の切削部の端部斜視図である。
図3】不均等に割り出しされた刃および溝間隔を示す、本発明の実施形態による回転式切削工具の断面図である。
図4】本発明の実施形態による、偏心外周逃げ角を有する刃の拡大断面図である。
図5】本発明の実施形態による、テーパの付いた溝付きコア構造の平面図である。
図6】本発明の実施形態による切り屑破断部の拡大図である。
図7】切り屑破断部が、直接隣接する刃の切り屑破断部間に配置されたチップブレーカパターンを有する、本発明の実施形態による6枚刃回転式切削工具の概略図である。
図8】従来のチップブレーカパターンを有する6枚刃回転式切削工具の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1および図2を参照すると、シャンク部12、切削部先端15を有する切削部14、および長手軸16を含む回転式切削工具10が提示されている。切削部14の全体的な形状は、それに限定するものではないが、円筒形状、または円錐台形状とすることができる。切削部14は、切削部14の長さを延長する溝20によって分離された複数の刃18を含む。図示した実施形態では、回転式切削工具10は、合計6つの刃18および溝20を有する。ただし、当然のことながら、本発明は、刃および溝の数量で限定されるものではなく、本発明は、刃および溝の数量の多少にかかわらず実施することができる。例えば、本発明は、4つの刃および溝、8つの刃および溝などでも実施することができる。
【0011】
ここで、図3および図4を参照すると、各刃18は、前面22、後面24、および前面22と後面24とをつなぐランド面26を有する。前面22とランド面26との間の交差部は、それぞれの刃18用の切れ刃28を形成している。一部の実施形態では、切削部14の刃18および溝20は、長手軸16に対して約30°〜約45°の螺旋角30(図7)で切削部14内に螺旋状に延び、他の実施形態では、刃18および溝20は、長手軸16に対して平行に延びる「直線状の溝」である。図示した実施形態では、切削部14の刃18および溝20は、約38°の螺旋角30で切削部14内に螺旋状に延びている。
【0012】
図3に示すように、回転式切削工具10の半球部の一方にある溝20付き刃18間の角度のついた間隔は不均等である。言い換えると、2つの半球部の一方にある刃18の切れ刃28間の角度のついた間隔は、3つの異なる大きさを有するが、切れ刃28間の角度のついた間隔の合計は180°に等しい。図示した実施形態では、例えば、角度A1は約56°であり、角度A2は約60°であり、角度A3は約64°ある(56°+60°+64°=180°)。当然のことながら、半径方向に対向する半球部にある溝20付き刃18間の角度間隔は、他方の半球部の鏡像である。したがって、半径方向に対向する刃の切れ刃28は、半径方向において互いに整列している。
【0013】
本発明の原理は、偶数個の溝付き刃がある限り、異なる数量の溝付き刃を有する回転式切削工具に適用できることも当然のことである。例えば、本発明の原理は、1つの半球部の角度A1、A2が、合計で180°になる2つの異なる大きさを有する、4つの刃および溝がある回転式切削工具に適用することができる。同様に、本発明の原理は、1つの半球部の角度A1、A2、A3,A4が、合計で180°になる4つの異なる大きさを有する、8つの刃および溝がある回転式切削工具に適用することができる。
【0014】
図4に示すように、各刃18のランド面26は、長手軸16に対して垂直に延びる平面31内にアーチ状(凸形)に延びて(「偏心外周逃げ」と呼ばれることもある)、後面24に合流している。
【0015】
ここで図5を参照すると、切削部14の溝20の深さは、回転式切削工具10の長手軸16に沿って変化している。具体的には、切削部14の溝20の深さは、シャンク部12の近くでは比較的浅く、切削部先端15の近くでは比較的深くなっている。図示した実施形態では、例えば、溝20の深さは、シャンク部12の近くで切削径の約67%となるように(図5に実線で示す)、切削部先端15の近くで切削径の約56%となるように(図5に点線で示す)することができる。
【0016】
ここで、図1図2、および図6を参照すると、チップブレーカの形態の複数の切り屑破断部34が、各刃18のランド面26に配置されている。切り屑破断部34は、これがなければ連続する切れ刃28を途切れさせ、それによって、前面22とランド面26との交差部に幾何形状が変化する切れ刃28を形成している。加工時、切り屑破断部34は、配置された刃18内に正圧逃げ部を形成し、それによって、回転式切削工具10の切削性能を大幅に高める。
【0017】
各切り屑破断部34の外形は、小半径部R1と、小半径部R1よりも半径が大きい大半径部R2と、小半径部R1と大半径部R2との間のつなぎ半径部R3とを含む。図56に示すように、大半径部R2は、小半径部R1よりもシャンク部12に近い(シャンク部12の方向は図5に矢印で示されている)。言い換えると、小半径部R1は、大半径部R2よりも切削部先端15に近い。切り屑破断部34は、ランド面26内に幅Wおよび深さDを有する。深さDは、回転式切削工具10の切削径に比例する。ピッチPは、刃18のランド面26に沿った、直接隣接する2つの切り屑破断部34間の距離である。直接隣接する2つの切り屑破断部34間の長さLは、切り屑破断部34の幅W間の距離である。言い換えると、長さLは、切り屑破断部34が刃18上にないランド面26を画定する。
【0018】
ここで図7を参照すると、切り屑破断部34のパターンが、本発明の一態様に従って概略的に示されている。図7に示すパターンでは、特定の刃18の各切り屑破断部34は、長手軸16に交差する方向において直接隣接する刃18の切り屑破断部34の真後ろ(または真ん前)に配置されていない。言い換えると、特定の刃18の各切り屑破断部34は、直接隣接する刃18上の、長さLによって画定される2つの切り屑破断部34間に配置されている。なお、すべての刃18の切り屑破断部34も長さLだけ離れている。言い換えると、各刃18の切り屑破断部34は、互いから等距離にある。
【0019】
ここで図7を参照すると、6枚刃エンドミル構造の各刃18のチップブレーカパターン32が、本発明の実施形態に従って概略的に示されている。本発明の一態様では、チップブレーカパターンが始まる切削部先端からの距離は、1つおきの各刃で実質的に同一である。言い換えると、図示した6枚刃構造では、チップブレーカパターン32は、刃#1、#3、#5の切削部先端15から第1の距離d1で始まり、チップブレーカパターン32は、刃#2、#4、#6の切削部先端15から第2の距離d2で始まる。この独自のチップブレーカパターンにより、刃18が切欠きに再度移行する移行点Pは、直接隣接する刃18の切り屑破断部34の真後ろには存在しない。したがって、工具10のこの領域は、1つの刃当たりの設定された切り屑負荷が大きくなく、それによって、図8に示す従来の回転式切削工具と比べて、回転式切削工具10のこの領域での障害率が低くなる。
【0020】
本明細書で言及した特許および出版物は、参照により本明細書に援用するものとする。
【0021】
現時点での好ましい実施形態を説明したが、本発明は、添付した請求項の範囲内の別の方法で具現化することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8