(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記A成分として、ビスフェノールA型、ビスフェノールE型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、キレート変性型、ウレタン変性型、およびゴム変性型からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂が用いられることを特徴とする、
請求項1に記載の加熱硬化型導電性ペースト組成物。
前記B成分として、シクロヘキサンジメタノール型、ジシクロペンタジエンジメタノール型、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA型、およびキレート変性型からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂が用いられることを特徴とする、
請求項1または2に記載の加熱硬化型導電性ペースト組成物。
前記導電性粉末として、銀粉、銅粉、銀コート銅粉、銀コートニッケル粉、銀コートアルミ粉、および銀コートガラス粉からなる群より選択される少なくとも1種が用いられることを特徴とする、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の加熱硬化型導電性ペースト組成物。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る加熱硬化型導電性ペースト組成物は、成分として、導電性粉末と、熱硬化性成分と、硬化剤と、溶剤と、を含有しており、このうち前記熱硬化性成分は、A成分:エポキシ当量が160以上400以下であり、25℃における粘度が3,000mPa・s以上55,000mPa・s以下である、環状構造を有するエポキシ樹脂と、B成分:エポキシ当量が140以上300以下であり、25℃における粘度が30mPa・s以上3,000mPa・s未満である、環状構造を有するエポキシ樹脂と、C成分:ビスフェノール類およびエピクロルヒドリンを用いて重合され、25℃において固形状態にある樹脂との3成分から構成されている。これらA〜C成分は、質量比で、A成分+B成分とC成分とが50:50〜95:5の範囲内となり、かつ、B成分とA成分+C成分とが15:85〜75:25の範囲内となるように配合されている。また、固形分中における前記導電性粉末の比率が90〜98質量%の範囲内となっており、さらに、25℃における粘度が200〜500Pa・sの範囲内となっている。
【0028】
なお、以下の説明では、本発明に係る加熱硬化型導電性ペースト組成物を、単に導電性ペースト組成物と略記する。なお、ここでいう固形分とは、導電性粉末と熱硬化性成分との合計である。
【0029】
ここで、本発明に係る導電性ペースト組成物の各成分のうち、導電性粉末と熱硬化性成分とが固形分に相当する。なお、本発明においては、導電性粉末、熱硬化性成分、硬化剤および溶剤以外の他の成分を含んでいてもよく、当該他の成分としては、固形分に相当するものを用いることが可能であるが、本実施の形態では、組成の説明上、主たる成分である導電性粉末および熱硬化性成分のみを固形分とみなす。
【0030】
次に、本発明に係る導電性ペースト組成物の前記各成分、熱硬化性成分として用いられるA〜C成分、並びに、当該導電性ペースト組成物の製造および使用に関して、その好ましい実施の形態を以下に詳細に説明する。
【0031】
[導電性粉末]
本発明に係る導電性ペースト組成物に用いられる導電性粉末としては、良好な導電性を実現する観点から、フレーク状粉末および球状粉末が併用される。
【0032】
本発明におけるフレーク状粉末とは、部分的に凹凸があり変形が見られても、全体として見た場合に、平板または厚みの薄い直方体に近い形状の粉末であればよい。なお、フレーク状とは、薄片状または鱗片状と言い換えることができる。また、本発明における球状粉末とは、部分的に凹凸があり変形が見られても、全体として見た場合に、直方体よりは立方体に近い立体形状の粉末であればよい。なお、球状とは、粒状と言い換えることができる。
【0033】
本発明においては、導電性粉末としてフレーク状粉末および球状粉末が併用される。例えば、フレーク状粉末のみを用いる場合、導電性粉末同士の接触面積を大きくすることができるので、高い導電性を期待することができる。しかしながら、フレーク状粉末の製造過程では滑剤が使用されるため、フレーク状粉末のみが用いられると、接着性が低下するおそれがある。
【0034】
また、フレーク状粉末は、二次元的な広がりを有する形状であることから、フレーク状粉末のみが用いられると、その形状に起因して硬化物(電極や配線等)の厚みを大きくすることが困難となる傾向にある。それゆえ、例えば配線を形成した際には、当該配線の抵抗値が期待したほど低くならないことがある。また、フレーク状粉末は、その製造過程(後述)に起因して、球状粉末よりも製造コストが相対的に高くなるため、フレーク状粉末のみが用いられると、低コスト化を阻害する場合がある。
【0035】
あるいは、球状粉末のみを用いた場合、フレーク状粉末と比較して導電性粉末同士の接触面積が小さくなるので、比抵抗を十分に低下させることができない可能性がある。それゆえ、本発明においては、得られる導電性ペースト組成物の物性をより向上するとともに低コスト化の観点からも、フレーク状粉末と球状粉末とを併用する。
【0036】
フレーク状粉末および球状粉末の配合比は特に限定されないが、両者の合計を100質量部としたときに、フレーク状粉末が20〜80質量部の範囲内であり、球状粉末が80〜20質量部の範囲内であることが好ましく、フレーク状粉末が40〜60質量部の範囲内であり、球状粉末が60〜40質量部の範囲内であることがより好ましい。言い換えれば、フレーク状粉末と球状粉末とは、質量比で、20:80〜80:20の範囲内となるように配合されていることが好ましく、40:60〜60:40の範囲内となるように配合されていることがより好ましい。
【0037】
フレーク状粉末または球状粉末が80質量部を超えたり20質量部を下回ったりした場合には、両者を併用したことによる導電性の向上効果が十分に得られないおそれがあり、また、フィルム、基板、電子部品等の基材に対して優れた接着性が得られなくなるおそれもある。
【0038】
また、導電性粉末の固形分中の比率(含有量)は、90〜98質量%の範囲内であればよく、92〜97質量%の範囲内であることが好ましく、93〜97質量%の範囲内であることがより好ましい。ここでいう固形分は、前記の通り、導電性粉末と熱硬化性成分の合計である。
【0039】
導電性粉末の含有量が90質量%未満であれば、導電性粉末の接触密度が小さくなり、導電性粉末同士の接触不良により導電性が不充分となるため好ましくない。一方、導電性粉末の含有量が98質量%より多くなると、樹脂成分により導電性粉末を均一に分散できなくなるおそれがあるため好ましくない。導電性ペースト組成物中で導電性粉末が均一に分散できなければ、導体パターンがカスレたり不均一な導体パターンが形成されたりする等の問題が生じる。
【0040】
本発明における導電性粉末のうちフレーク状粉末の好ましい構成について具体的に説明する。フレーク状粉末の平均粒径D50は2〜20μmの範囲内であることが好ましく、BET比表面積は0.1〜1m
2 /gの範囲内であることが好ましく、タップ密度は3〜7g/cm
3 の範囲内であることが好ましく、アスペクト比は5〜15の範囲内であることが好ましい。
【0041】
より具体的には、フレーク状粉末の平均粒径D50は、前記の通り2〜20μmの範囲内が好ましいが、2〜12μmの範囲内であればより好ましく、6〜10μmの範囲内であればさらに好ましい。フレーク状粉末の平均粒径D50が2μmより小さければ、導電性粉末同士の接触抵抗が大きくなる傾向にあり、十分な導電性が得られなくなるおそれがある。一方、平均粒径D50が20μmより大きければ、導電性粉末同士の接触抵抗は小さくなるが、メッシュスクリーンを用いて導体パターンを印刷する場合、メッシュスクリーンの目詰まりが生じたり、微細配線の形成が困難となったりするおそれがある。
【0042】
また、フレーク状粉末のBET比表面積は、前記の通り0.1〜1m
2 /gの範囲内が好ましいが、0.2〜0.8m
2 /gの範囲内であればより好ましく、0.2〜0.5m
2 /gの範囲内であればさらに好ましい。フレーク状粉末のBET比表面積が0.1m
2 /gより小さければ、フレーク厚みが厚くなりすぎてフレーク状粉末の形状が球形に近くなるため、導電性粉末同士の接触面積が小さくなる傾向にあり、十分な導電性が得られなるおそれがある。一方、BET比表面積が1m
2 /gを超えれば、導電性粉末同士の接触面積は大きくなるが、ペースト粘度が高くなるため、高充填化が困難となる(すなわち、導電性ペースト組成物中の導電性粉末の含有量を向上することが困難となる)傾向にあるので、十分な導電性が得られないおそれがある。
【0043】
また、フレーク状粉末のタップ密度は、前記の通り3〜7g/cm
3 の範囲内が好ましいが、3〜6g/cm
3 の範囲内であればより好ましく、3.5〜5.5g/cm
3 の範囲内であればさらに好ましい。フレーク状粉末のタップ密度が3g/cm
3 未満であれば、フレーク状粉末が嵩高くなり、高充填化が困難となる傾向にあるので、十分な導電性が得られないおそれがある。一方、タップ密度が7g/cm
3 を超えれば、フレーク状粉末を工業的に生産することが通常困難となる。
【0044】
また、フレーク状粉末のアスペクト比は、前記の通り5〜15の範囲内が好ましいが、6〜12の範囲内であればより好ましく、6〜10の範囲内であればさらに好ましい。フレーク状粉末のアスペクト比が5未満であれば、フレーク化が不十分なため導電性粉末同士の接触面積が小さくなる傾向にあり、十分な導電性が得られないおそれがある。一方、アスペクト比が15を超えれば、導電性粉末同士の接触面積は大きくなるが、高充填化が困難となる傾向にあるので、十分な導電性が得られないおそれがある。
【0045】
前記フレーク状粉末の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、公知の方法で製造された球状粉末(後述)を元粉として、当該元粉に公知の機械的処理を施すことによりフレーク状粉末を製造することができる。元粉の粒径や凝集度等の物性は、導電性ペースト組成物の使用目的(電極や配線等の種類、あるいはこれら電極や配線等を備える電子部品または電子装置等の種類)に応じて適宜選択することができる。
【0046】
次に、本発明における導電性粉末のうち球状粉末の好ましい構成について具体的に説明する。球状粉末の平均粒径D50は0.1〜10μmの範囲内であることが好ましく、BET比表面積は0.5〜1.7m
2 /gの範囲内であることが好ましく、タップ密度は1.5〜5g/cm
3 であることが好ましく、凝集度D50/DSEMが2〜15の範囲内であることが好ましい。
【0047】
より具体的には、球状粉末の平均粒径D50は、前記の通り0.1〜10μmの範囲内が好ましいが、1〜5μmの範囲内であればより好ましく、1〜3μmの範囲内であればさらに好ましい。球状粉末の平均粒径D50が0.1μmより小さければ、導電性ペースト組成物が高粘度化して、ペースト化することが困難になるおそれがある。一方、平均粒径D50が10μmより大きければ、フレーク状粉末の場合と同様に、メッシュスクリーンを用いて導体パターンを印刷する場合、メッシュスクリーンの目詰まりが生じたり、微細配線の形成が困難となったりするおそれがある。
【0048】
また、球状粉末のBET比表面積は、前記の通り0.5〜1.7m
2 /gの範囲内が好ましいが、0.6〜1.6m
2 /gの範囲内であればより好ましく、0.9〜1.6m
2 /gの範囲内であればさらに好ましい。球状粉末のBET比表面積が0.5m
2 /gより小さければ、導電性粉末同士の接触面積が小さくなる傾向にあり、十分な導電性が得られないおそれがある。一方、BET比表面積が1.7m
2 /gを超えれば、導電性粉末同士の接触面積は大きくなるが、ペースト粘度が高くなり高充填化が困難となる傾向にあるので、十分な導電性が得られないおそれがある。
【0049】
また、球状粉末のタップ密度は、前記の通り1.5〜5g/cm
3 の範囲内が好ましいが、2〜5g/cm
3 の範囲内であればより好ましく、3〜4g/cm
3 の範囲内であればさらに好ましい。球状粉末のタップ密度が1.5g/cm
3 未満であれば、導電性粉末が嵩高くなり、高充填化が困難となる傾向にあるので、十分な導電性が得られないおそれがある。一方、タップ密度が5g/cm
3 を超えれば、球状粉末の分散性が良好になり過ぎ、導電性粉末の間に樹脂成分が回りこみ易くなるため、導電性粉末同士の界面抵抗が大きくなる傾向にあり、十分な導電性が得られないおそれがある。
【0050】
また、球状粉末の凝集度D50/DSEMは、前記の通り2〜15の範囲内が好ましいが、3〜11の範囲内であればより好ましく、3〜7.5の範囲内であればさらに好ましい。凝集度D50/DSEMが2より小さければ、球状粉末の分散性が良好になり過ぎ、導電性粉末の間に樹脂成分が回りこみ易くなるため、導電性粉末同士の界面抵抗が大きくなる傾向にあり、十分な導電性が得られないおそれがある。一方、凝集度D50/DSEMが15より大きければ、導電性粉末が嵩高くなり、高充填化が困難となる傾向にあるので、十分な導電性が得られないおそれがある。
【0051】
前記球状粉末の製造方法は特に限定されるものではなく、本実施の形態では、例えば、湿式還元法により製造したものを好適に用いることができるが、電解法やアトマイズ法等、公知の他の方法により製造した球状粉末も用いることができる。
【0052】
本発明で用いられる導電性粉末としては、前記フレーク状粉末および球状粉末のいずれであっても、相対的に低抵抗の金属を含有する粉末を用いることができる。具体的には、低抵抗の金属としては特に限定されないが、金、銀、銅、およびこれらの合金を好ましく用いることができる。また、具体的な粉末(粒子)の材料構成も特に限定されないが、代表的には、銀粉、銅粉、銀コート銅粉、銀コートニッケル粉、銀コートアルミ粉、または銀コートガラス粉等を挙げることができる。これら材料構成は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0053】
ここで、本発明においては、導電性粉末に含まれるアルカリ金属イオン量の上限が定められていることが好ましい。具体的には、導電性粉末に含まれるナトリウムイオン量およびカリウムイオン量はいずれも200ppm未満であることが好ましく、100ppm未満であることがより好ましく、10ppm未満であることがさらに好ましい。本発明では、少なくともナトリウムイオン量が200ppm未満であることが好ましい。これらイオン量が200ppmを超えれば、導電性ペースト組成物により電極や配線等を形成した電子部品または電子装置において、その電気特性や信頼性に問題が生じ易くなる。一方、これらイオンの下限は低ければ低い程良い。
【0054】
[熱硬化性成分]
本発明に係る導電性ペースト組成物に用いられる熱硬化性成分は、25℃において液状であり環状構造を有する2種類のエポキシ樹脂、並びに、25℃において固形状態にあり環状構造を有する1種類の樹脂(固形樹脂)である。これら2種類のエポキシ樹脂および1種類の固形樹脂は所定の配合比で配合されて用いられる。
【0055】
前記2種類のエポキシ樹脂の一方は、エポキシ当量が160以上400以下であり、25℃における粘度が3,000mPa・s以上55,000mPa・s以下である物性を有するものであり、他方は、エポキシ当量が140以上300以下であり、25℃における粘度が30mPa・s以上3,000mPa・s未満である物性を有するものである。また、前記固形樹脂は、ビスフェノール類およびエピクロルヒドリンを少なくとも用いて重合される樹脂である。説明の便宜上、前者のエポキシ樹脂をA成分と称し、後者のエポキシ樹脂をB成分と称し、前記固形樹脂をC成分と称する。
【0056】
なお、前記エポキシ当量は、JIS−K−7236に従って算出することができる。エポキシ当量の単位は、[g/eq]である。また、エポキシ樹脂の粘度は、本実施の形態では、東機産業株式会社製TV−33H粘度計により測定している。測定温度は25℃である。
【0057】
前記2種類のエポキシ樹脂(A成分およびB成分)は、いずれも前記物性を有するものであればよく、その具体的な構造は特に限定されないが、いずれも1分子中に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有する多価エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0058】
また、前記2種類のエポキシ樹脂は、いずれも環状構造を含んでいるが、この環状構造も特に限定されない。好ましい環状構造としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、シクロヘキサン環、ノルボニル環、アダマンチル環、ジシクロペンタン環、トリシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、ボルネン環、デカヒドロナフタレン環、ポリヒドロアントラセン環等を例示することができ、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環、ジシクロペンタン環等が挙げられる。
【0059】
前記2種類のエポキシ樹脂のうち一方のA成分の物性は、前記の通り、エポキシ当量が160以上400以下であり、25℃における粘度が3,000mPa・s以上55,000mPa・s以下であるが、より好ましくは、エポキシ当量が160以上320以下であり、25℃における粘度が3,000mPa・s以上55,000mPa・s以下である。このような物性を有し環状構造を含むエポキシ樹脂の具体的な種類は特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールE型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、キレート変性型、ウレタン変性型、またはゴム変性型のエポキシ樹脂を挙げることができる。これらエポキシ樹脂は、A成分として1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0060】
また、前記2種類のエポキシ樹脂のうち他方のB成分の物性は、前記の通り、エポキシ当量が140以上300以下であり、25℃における粘度が30mPa・s以上3,000mPa・s未満であるが、より好ましくは、エポキシ当量が140以上190以下であり、25℃における粘度が30mPa・s以上1,000mPa・s以下である。このような物性を有し環状構造を含むエポキシ樹脂の具体的な種類は特に限定されないが、例えば、シクロヘキサンジメタノール型、ジシクロペンタジエンジメタノール型、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA型、キレート変性型のエポキシ樹脂を挙げることができる。これらエポキシ樹脂は、B成分として1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0061】
本発明において熱硬化性成分として用いられるC成分の固形樹脂は、ビスフェノール類およびエピクロルヒドリンを少なくとも用いて重合される樹脂であって、前記A成分およびB成分のエポキシ樹脂と同様に環状構造を含んでいればよく、その具体的な種類は特に限定されない。
【0062】
代表的なC成分としては、前記A成分およびB成分と同様に、1分子中に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有する多価エポキシ樹脂またはフェノキシ樹脂を挙げることができ、エポキシ樹脂の場合は、エポキシ当量が1,500以上であることが好ましい。また、C成分に含まれる環状構造も特に限定されず、前記A成分およびB成分に関して説明した、好ましい環状構造を例示することができる。
【0063】
より具体的なC成分としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールB型、エポキシ樹脂、ビスフェノールC型、ビスフェノールD型、ビスフェノールE型、またはビスフェノールF型のエポキシ樹脂;ビスフェノールA型、ビスフェノールB型、エポキシ樹脂、ビスフェノールC型、ビスフェノールD型、ビスフェノールE型、またはビスフェノールF型のフェノキシ樹脂を挙げることができる。これらエポキシ樹脂またはフェノキシ樹脂は、C成分として1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0064】
本発明に係る導電性ペースト組成物では、熱硬化性成分として用いられるA〜C成分は、A成分およびB成分の総量(A成分+C成分)とC成分との質量比が所定の範囲内となり、かつ、B成分とA成分およびC成分の総量(A成分+C成分)との質量比が所定の範囲内となるように配合される。
【0065】
具体的には、A成分+C成分とC成分とは、質量比で、50:50〜95:5の範囲内で配合されればよく、50:50〜80:20の範囲内で配合されることがより好ましい。また、B成分とA成分+C成分とは、質量比で、15:85〜75:25の範囲内で配合されればよく、40:60〜60:40の範囲内で配合されることがより好ましい。
【0066】
A〜C成分の合計を100質量部とした場合に、A成分+B成分が50質量部未満であれば、すなわちC成分が50質量部を超えれば、得られる硬化物(電極や配線等)の強度および接着性が低下するので好ましくない。一方、A成分+B成分が95質量部を超えれば、すなわちC成分が5質量部未満であれば、C成分の硬化収縮による導電性粉末同士の接触を促進させる効果が小さくなり、導電性が低下するので好ましくない。また、B成分が15質量部未満であれば、すなわちA成分+C成分が85質量部を超えれば、得られる電極や配線等と他の導電体との接触抵抗が大きくなるので好ましくない。一方、B成分が75質量部を超えれば、すなわちA成分+C成分が25質量部未満であれば、得られる硬化膜の強度および接着性が低下するので好ましくない。
【0067】
本発明に係る導電性ペースト組成物においては、熱硬化性成分として、前記の通り、A成分のエポキシ樹脂と、B成分のエポキシ樹脂と、C成分の固形樹脂とを所定の含有割合で用いている。これら各成分のうち、A成分のエポキシ樹脂は、熱硬化性成分のベースとなる成分であるのに対して、B成分のエポキシ樹脂は、他の導電体に対する濡れ性を向上して前記接触抵抗の改善に寄与する成分であり、C成分の固形樹脂は、前記比抵抗を低減する成分である。
【0068】
これらのうちA成分およびC成分の所定割合の組合せによって良好な比抵抗を実現することができるが、さらにC成分によれば、接触抵抗を改善することが可能となる。しかも、熱硬化性成分としてB成分を所定割合で用いており、このB成分は前記の通り接触抵抗を向上できるだけでなく、比抵抗も改善することが可能となっている。それゆえ、熱硬化性成分としてA〜C成分を含有することにより、各成分の相乗的な作用によって比抵抗および接触抵抗をさらに一層良好なものとすることができる。
【0069】
[硬化剤]
本発明に係る導電性ペースト組成物に用いられる硬化剤は、前記A成分およびB成分のエポキシ樹脂を硬化させるものであれば特に限定されず、導電性ペースト組成物の分野で公知の各種化合物を挙げることができる。
【0070】
具体的には、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸等の酸無水物類;イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール類;ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノエチルアミン、メチルジデエシルアミン、メチルジオレイルアミン、トリアリルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、3−(ジブチルアミノ)プロピルアミン、トリ−n−オクチルアミン、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン等の第三級アミン類;三フッ化ホウ素エチルエーテル、三フッ化ホウ素フェノール、三フッ化ホウ素ピペリジン、酢酸三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素モノエチルアミン、三フッ化ホウ素トリエタノールアミン、三フッ化ホウ素モノエタノールアミン等のフッ化ホウ素を含むルイス酸あるいはその化合物;味の素ファインテクノ株式会社から市販されているアミキュアシリーズPN−23またはMY−24等、富士化成工業株式会社から市販されているフジキュアシリーズFXR−1020またはFXR−1030等のアミンアダクト類;ジシアンジアミド;等が挙げられる。これら化合物は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0071】
硬化剤の添加量は特に限定されないが、本実施の形態では、2種類のエポキシ樹脂(A成分+B成分)の総量を100質量部としたときに、エポキシ樹脂総量100質量部に対して3〜30質量部の範囲内であることが好ましく、3〜15質量部の範囲内であることがより好ましく、3〜10質量部の範囲内であることがさらに好ましい。硬化剤の添加量が3質量部未満であれば、エポキシ樹脂の硬化が不十分となるおそれがあり、また、硬化物(電極や配線等)に良好な導電性が得られないおそれがある。一方、30質量部を超えれば、ペースト粘度が高くなるおそれがあり、また、コスト的にも好ましくない。
【0072】
[溶剤およびペースト粘度]
本発明に係る導電性ペースト組成物に用いられる溶剤は特に限定されず、導電性ペースト組成物の分野で公知の各種溶剤を好適に用いることができる。
【0073】
具体的には、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;これらグリコールエーテル類の酢酸エステル;DBE、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートなどのエステル類;シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;ターピネオール、水添ターピネオール等のモノテルペンアルコール類;これらモノテルペンアルコール類の酢酸エステル;γ−ブチロラクトン;リモネン;等を挙げることができる。これら溶剤は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0074】
本発明に係る導電性ペースト組成物は、特に、スクリーン印刷によって導体パターンを形成する用途に好適に用いられる。そのため、スクリーン印刷の版の乾燥を抑制する観点から、当該導電性ペースト組成物に含有される溶剤の半量以上は、沸点が200℃以上の高沸点溶剤であることが好ましい。このような高沸点溶剤としては特に限定されないが、具体的には、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、ターピネオール等を好ましく用いることができる。なお、これら高沸点溶剤も1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0075】
ここで、本発明に係る導電性ペースト組成物のペースト粘度は、基材上に適切に印刷または塗布できる粘度であればよいが、特に、25℃におけるペースト粘度が200〜500Pa・sの範囲内であることが好ましく、200〜450Pa/sの範囲内であることがより好ましい。導電性ペースト組成物のペースト粘度をこのような所定範囲に設定することで、印刷により導体パターンを形成した後の形状保持性を良好とすることができるので、導体パターンの広がり(例えば導体パターンが配線であれば、配線だれや配線にじみ等)を抑制することができる。それゆえ、高精細な導体パターンを形成することが可能となり、例えば、導電性ペースト組成物を太陽電池の集電電極の形成に用いた場合には、当該太陽電池の受光面積の低下を抑制することができる。
【0076】
なお、ペースト粘度を測定する粘度計およびその条件は特に限定されないが、本実施の形態では、後述する実施例および比較例で用いているように、Brookfield社製DV−III粘度計を用い、1rpm回転時の測定条件でペースト粘度(η1rpm)を測定している。ここで、後述する実施例および比較例では、測定条件を5rpm回転時にした場合のペースト粘度も測定するとともに、1rpm回転時のペースト粘度を5rpm回転時のペースト粘度で除したTI値(η1rpm/η5rpm)も算出し、これらにより包括的にペースト粘度を評価している。5rpm回転時のペースト粘度は、70〜140Pa・sの範囲内であればよく、TI値は2.0〜5.0の範囲内であればよい。
【0077】
[導電性ペースト組成物の製造および使用]
本発明に係る導電性ペースト組成物の製造方法は特に限定されず、導電性ペースト組成物の分野で公知の方法を好適に用いることができる。代表的な一例としては、前述した各成分を所定の配合割合(質量基準)で配合し、公知の混練装置を用いてペースト化する方法が挙げられる。混練装置としては、例えば、3本ロールミル等を挙げることができる。
【0078】
なお、本発明に係る導電性ペースト組成物においては、必要に応じて、前述した各成分(導電性粉末、熱硬化性成分、硬化剤および溶剤)以外に、導電性ペースト組成物の分野で公知の各種添加剤を含有してもよい。当該添加剤としては特に限定されないが、具体的には、例えば、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、消泡剤、粘度調整剤等を挙げることができる。これら添加剤は本発明の作用効果を妨げない範囲において添加することができる。
【0079】
本発明に係る導電性ペースト組成物は、前記各成分を含み、熱硬化性成分として前記A〜C成分が所定の範囲内で配合されるとともに、固形分中の導電性粉末の含有量が好適な範囲内に調整されているので、高精細な電極や配線等の形成に広く利用することができる。具体的には、例えば、太陽電池セルの集電電極;チップ型電子部品の外部電極;RFID(Radio Frequency IDentification)、電磁波シールド、振動子接着、メンブレンスイッチ、またはエレクトロルミネセンス等に用いられる部品の電極または配線;等の用途に好適に用いることができる。これら用途の中でも特に好ましい用途の1つとして、太陽電池セルの集電電極を挙げることができる。
【0080】
本発明に係る導電性ペースト組成物を太陽電池の集電電極の形成に用いた場合には、当該集電電極をより高精細に形成することができるので、受光面積の低下を抑制することができる。そして、導電性ペースト組成物そのものを低コストで提供することが可能となるので、太陽電池の変換効率を低コストで向上することが可能となる。
【0081】
また、本発明に係る導電性ペーストを用いて形成される電極や配線等は、比抵抗を低くして高導電化が可能になるだけでなく、他の導電体に対する接触性も良好なものとして接触抵抗を小さくすることもできる。それゆえ、例えば、太陽電池の集電電極と、透明導電膜との接触性を向上させることも可能となる。
【0082】
本発明に係る導電性ペースト組成物で集電電極となる導体パターンを形成すると、当該導電性ペースト組成物は透明導電膜に対する濡れ性が良好であるので、加熱後に形成される集電電極と透明導電膜との親和性を改善することができる。その結果、集電電極中に含まれる導電性粉末と透明導電膜との間の接触性が向上され、接触抵抗を小さくすることができる。
【0083】
なお、透明導電膜の材質は特に限定されず、太陽電池の分野で公知の材質を好適に用いることができる。具体的には、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、FTO(Fluorine doped Tin Oxide)、ZnO(酸化亜鉛)、AZO(Aluminum Doped Zinc Oxide)、GZO(Gallium doped Zinc Oxide)、SnO
2 (酸化スズ(IV))等を挙げることができる。
【0084】
ここで、導電性ペースト組成物により形成される集電電極は導電性粉末等を含むことから不透明である。そのため、太陽電池セルの表面における集電電極の面積が大きくなる程、受光面積が低下し、発電効率も低下する。これに対して、本発明に係る導電性ペースト組成物は、前記各成分を含有するとともに、そのペースト粘度を好適な範囲内に調整しているため、高精細に集電電極を形成することができる。それゆえ、受光面積の低下を有効に抑制することができ、発電効率の低下を回避することが可能となる。
【0085】
本発明に係る導電性ペースト組成物の具体的な使用方法は特に限定されず、導電性ペースト組成物を基材上に所定の導体パターンで塗布または印刷するステップ(パターン形成ステップ)と、基材上の導体パターンを加熱硬化させるステップ(加熱硬化ステップ)とを含む方法であればよい。硬化した後の導体パターン(硬化膜)が基材上に形成された電極や配線となる。
【0086】
前記基材としては、前述した電子部品または電子機器に応じた公知のフィルム、基板、その他の基材を挙げることができる。これら基材の具体的な材質、形状、寸法、その他条件等は特に限定されず、電子部品や電子機器の種類に応じて適切なものを選択すればよい。また、パターン形成ステップでは、公知の種々の導体パターン形成方法(印刷方法または塗布方法)を用いることができるが、代表的には、メッシュスクリーンを用いたスクリーン印刷を挙げることができる。
【0087】
また、加熱硬化ステップにおいても加熱方法または加熱温度は特に限定されないが、加熱温度は、比較的低温である100〜250℃の範囲内であることが好ましい。加熱温度が100℃より低ければ、導電性ペースト組成物の硬化が不十分となるおそれがあり、250℃より高くなれば、熱硬化性成分の分解または基材から剥離等が生じるおそれがある。
【0088】
このように、本発明においては、A成分のエポキシ樹脂とC成分の固形樹脂とを併用しているので、良好な比抵抗を得ることができる。また、エポキシ樹脂としてB成分も用いているので、比抵抗を改善できることに加え、透明導電膜に対する濡れ性が良好であるので、接触抵抗を小さくすることができる。また、固形分中の導電性粉末の比率を90〜98質量%に調整しているので、導電性ペースト組成物中の導電性粉末の充填性を高めて、導電性粉末同士の接触面積を高め、比抵抗を低くすることができる。また、ペースト粘度を好適な範囲内に調整しているので、印刷による導体パターンの配線形状保持性が良好であり、太陽電池の集電電極に用いた際に、受光面積の低下が抑制される。加えて、導電性粉末としてフレーク状粉末と球状粉末とを併用すれば、導電性ペースト組成物のより一層の低コスト化を図ることもできる。
【実施例】
【0089】
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例および比較例における物性等の測定・評価は次に示すようにして行った。
【0090】
[導電性粉末の評価方法]
実施例および比較例では導電性粉末としてフレーク状銀粉末および球状銀粉末を用いた。このうち、フレーク状銀粉末については、平均粒径D50、最大粒径Dmax、アスペクト比、BET比表面積、タップ密度、およびナトリウムイオン量を評価した。また、球状銀粉末については、平均粒径D50、最大粒径Dmax、平均粒径DSEM、凝集度D50/DSEM、BET比表面積、タップ密度、およびナトリウムイオン量を評価した。以下、各評価の詳細について説明する。
【0091】
(1)平均粒径D50および最大粒径Dmaxの評価
フレーク状銀粉末および球状銀粉末の平均粒径D50および最大粒径Dmaxはレーザー回折法により評価した。フレーク状銀粉末または球状銀粉末の試料0.3gを50mlビーカーに秤量し、イソプロピルアルコール30mlを加えた後、超音波洗浄器(アズワン株式会社製USM−1)により5分間処理することで分散させ、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置9320−HRA X−100)を用いて、平均粒径D50および最大粒径Dmaxを測定して評価した。
【0092】
(2)平均粒径DSEMの評価
球状銀粉末を走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社製JSM−5500)により観察して、2万倍に拡大した画像から、100個の粒子を無作為に選択して、その粒径(画像上の長径)を計測した。そして、個々の粒子の粒径を個数平均することによってSEM粒径DSEMを算出して評価した。
【0093】
(3)アスペクト比の評価
フレーク状銀粉末を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM−5500)により観察して、2,000倍に拡大した画像から、10個の粒子を無作為に選択し、その粒径(外接円の直径)を計測し、個数平均することによりその長辺の長さを得た。また、同様に2,000倍に拡大した画像から、10個の粒子を無作為に選択して、その厚みを計測し、個数平均することにより厚みを得た。得られた長辺の長さを厚みで除することによりアスペクト比を算出して評価した。
【0094】
(4)BET比表面積の評価
フレーク状銀粉末または球状銀粉末のBET比表面積は、試料1gをモノソーブ(カウンタクローム(Quanta Chrome)社製)を用いて窒素吸着によるBET1点法で測定して評価した。なお、当該BET比表面積測定において、測定前の脱気条件は60℃にて10分間とした。
【0095】
(5)タップ密度の評価
フレーク状銀粉末または球状銀粉末のタップ密度は、タップ密度測定装置(株式会社柴山科学器械製作所製のカサ比重測定装置SS−DA−2)を使用し、試料15gを計量して20mlの試験管に入れ、落差20mmで1,000回タッピングし、次の式によりタップ密度を算出して評価した。
【0096】
タップ密度=試料質量(15g)/タッピング後の試料容積(cm
3 )
(6)ナトリウムイオン量の評価
フレーク状銀粉末または球状銀粉末のナトリウムイオン量は、試料1gを硝酸に溶解し、純水を添加して希釈した後、原子吸光法により測定して評価した。
【0097】
(7)凝集度D50/DSEMの評価
球状銀粉末の凝集度50D/DSEMは、レーザー回折法により得られる平均粒径D50を、走査型電子顕微鏡像(SEM、日本電子株式会社製JSM−5500)の画像観察から得られる一次粒子の平均粒径DSEMにより除することにより算出して評価した。
【0098】
[ペースト粘度の測定]
導電性ペースト組成物のペースト粘度は、Brookfield社製DV−III粘度計を用いて測定した。測定時のコーンとしてはCP−52を用い、1rpm回転時(ずり速度2s−1)のペースト粘度(η1rpm)と、5rpm回転時(ずり速度10s−1)のペースト粘度(η5rpm)とを測定するとともに、前者を後者で除したTI値(η1rpm/η5rpm)を算出した。
【0099】
[特性評価用サンプルの作製方法および評価方法]
実施例および比較例の導電性ペースト組成物を用いて、次のようにして特性評価用サンプルを作製した。
【0100】
(1)接触抵抗評価用サンプル
サンプルの基材としては、ITO膜付ガラス基板(ジオマテック株式会社製、表面抵抗6.6Ω/sq)を用いた。そして、
図1に示すように、このガラス基板21の表面に、実施例または比較例の導電性ペースト組成物を用いて、2mm×20mmの帯状の導体パターン11を、2つ平行となるように2mm間隔でスクリーン印刷した。なお、スクリーン印刷には、マイクロ・テック株式会社製スクリーン印刷機MT−320を使用した。その後、ガラス基板21を180℃の熱風乾燥機中で60分間加熱し、導体パターン11(導電性ペースト組成物)を硬化させた。これにより接触抵抗評価用サンプルを作製した。
【0101】
(2)比抵抗評価用サンプル
サンプルの基材としてはアルミナ基板を用いた。そして、
図2に示すように、このアルミナ基板の表面に、実施例または比較例の導電性ペースト組成物を用いて、両端に端子12aおよび12bを有し配線部分12cがつづら折り状となっている導体パターン12をスクリーン印刷した。その後、アルミナ基板を180℃の熱風乾燥機中で60分間加熱し、導体パターン12(導電性ペースト組成物)を硬化させた。これにより比抵抗評価用サンプルを作製した。
【0102】
(3)接触抵抗の評価
各実施例または比較例の接触抵抗評価用サンプルについて、導体パターン11,11のそれぞれの一端の間における電気抵抗をデジタルマルチメータ(株式会社アドバンテスト製R6551)で測定し、得られた抵抗値を用いて接触抵抗を評価した。
【0103】
接触抵抗の評価基準については、比較例1と実施例および他の比較例との対比から評価した。つまり、各実施例または各比較例で測定された抵抗値を、比較例1で測定した抵抗値で除することで接触抵抗を規格化した。以下の実施例および比較例では、接触抵抗が1.00以下であれば十分に接触抵抗が小さくなっていると評価し、接触抵抗が0.90以下であればより好ましいとして評価した。
【0104】
(4)比抵抗の評価
各実施例または比較例の比抵抗評価用サンプルについて、導体パターン12の膜厚を表面粗さ計(株式会社東京精密製サーフコム480A)で、電気抵抗をデジタルマルチメータ(株式会社アドバンテスト製R6551)で測定し、それら膜厚と電気抵抗と配線パターンのアスペクト比に基づいて比抵抗を算出して評価した。
【0105】
比抵抗の評価基準については、当該比抵抗の上限値を設定し、それ以下になるか否かにより評価した。配線(電極)の比抵抗が高ければ、同程度の配線抵抗を得るために膜厚を厚くする必要があるため、用いられる導電性ペースト組成物の塗布量も多く必要になる。それゆえ、電極や配線の比抵抗はできる限り低いことが好ましい。以下の実施例および比較例では、配線の比抵抗が10μΩ・cm以下であれば好ましく、9μΩ・cm以下であればより好ましく、8μΩ・cm以下であればさらに好ましいとして評価した。
【0106】
(5)導体パターン形成の評価
アルミナ基板上に、各実施例または比較例の導電性ペースト組成物を用いて、
図3に示すように線幅100μmの櫛状の導体パターンを印刷し、当該導体パターンを実体顕微鏡により観察した。このとき、配線だれ、配線にじみ、および配線かすれのいずれも認められないものを○と評価し、配線だれ、配線にじみ、および配線かすれの少なくとも1つ以上が認められるものを×として評価した。
【0107】
(実施例1)
表1に示す具体的な導電性粉末と、表2に示す具体的な熱硬化性成分と、表3の欄外に記載する具体的な硬化剤および溶剤とを用いて、これら成分を表3に示す組成(いずれも質量部)で配合し、3本ロールミルで混練してペースト化することにより、実施例1の導電性ペースト組成物を製造(調製)した。
【0108】
得られた導電性ペースト組成物のペースト粘度を測定するとともに、前述した接触抵抗評価用サンプルと比抵抗評価用サンプルとを作製し、導体パターン11,11間の接触抵抗、並びに導体パターン12の比抵抗を評価した。その結果を表3に示す。
【0109】
(実施例2〜4)
表3に示すように、B成分としてエポキシ樹脂B2(実施例2)、B3(実施例3)、またはB4(実施例4)(いずれのエポキシ樹脂も表2参照)を用いた以外は前記実施例1と同様にして、実施例2〜4の導電性ペースト組成物を製造した。得られた導電性ペースト組成物のペースト粘度を測定するとともに、前述したように導体パターン11の接触抵抗、導体パターン12の比抵抗、並びに導体パターン13の形成を評価した。その結果を表3に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
(実施例5、6)
表3に示すように、A成分としてエポキシ樹脂A2を表3の配合量で用い、かつ、B成分としてエポキシ樹脂B2を用いるか(実施例5)、エポキシ樹脂A3を表3の配合量で用い、かつ、エポキシ樹脂B1を表3の配合量で用いる(実施例6)とともに(いずれのエポキシ樹脂も表2参照)、溶剤の量を調整した以外は前記実施例1と同様にして、実施例5、6の導電性ペースト組成物を製造した。得られた導電性ペースト組成物のペースト粘度を測定するとともに、前述したように導体パターン11の接触抵抗、導体パターン12の比抵抗、並びに導体パターン13の形成を評価した。その結果を表3に示す。
【0114】
(実施例7、8)
表4に示すように、A成分としてエポキシ樹脂A4を表4の配合量で用い、かつ、エポキシ樹脂B1を表4の配合量で用い、さらにC成分としてエポキシ樹脂C1(固形樹脂)を表4の配合量で用いるか(実施例7)、A成分としてエポキシ樹脂A5を表4の配合量で用い、かつ、B成分としてエポキシ樹脂B2を表4の配合量で用いる(実施例8)とともに(いずれのエポキシ樹脂も表2参照)、硬化剤として硬化剤2を用い、溶剤の量を調整した以外は前記実施例1と同様にして、実施例7、8の導電性ペースト組成物を製造した。得られた導電性ペースト組成物のペースト粘度を測定するとともに、前述したように導体パターン11の接触抵抗、導体パターン12の比抵抗、並びに導体パターン13の形成を評価した。その結果を表4に示す。
【0115】
(実施例9〜11)
表4に示すように、A成分のエポキシ樹脂A1(表2参照)、B成分のエポキシ樹脂B2(表2参照)、およびC成分のエポキシ樹脂C1(固形樹脂、表2参照)をそれぞれ表4の配合量で用いるとともに、溶剤の配合量を調整した以外は前記実施例2と同様にして、実施例9〜11の導電性ペースト組成物を製造した。得られた導電性ペースト組成物のペースト粘度を測定するとともに、前述したように導体パターン11の接触抵抗、導体パターン12の比抵抗、並びに導体パターン13の形成を評価した。その結果を表4に示す。
【0116】
【表4】
【0117】
(比較例1)
表5に示すように、熱硬化性成分としてC成分のエポキシ樹脂C1のみを表5に示す配合量で用いてA成分およびB成分を用いず、溶剤の配合量を調整した以外は前記実施例1と同様にして、比較例1の導電性ペースト組成物を製造した。得られた導電性ペースト組成物のペースト粘度を測定するとともに、前述したように導体パターン11の接触抵抗、並びに導体パターン12の比抵抗を評価した。その結果を表5に示す。
【0118】
(比較例2、4、5)
表5に示すように、熱硬化性成分としてB成分のエポキシ樹脂B1とC成分のエポキシ樹脂C1とを表5に示す配合量で用いてA成分を用いないか(比較例2)、A成分のエポキシ樹脂A2とC成分のエポキシ樹脂C2とを表5に示す配合量で用いてB成分を用いないか(比較例4)、A成分のエポキシ樹脂A1とB成分のエポキシ樹脂B4とを表5に示す配合量で用いてC成分を用いない(比較例5)とともに、溶剤の配合量を調整した以外は前記実施例1と同様にして、比較例2、4、5の導電性ペースト組成物を製造した。得られた導電性ペースト組成物のペースト粘度を測定するとともに、前述したように導体パターン11の接触抵抗、導体パターン12の比抵抗、並びに導体パターン13の形成を評価した。その結果を表5に示す。
【0119】
(比較例3)
表5に示すように、導電性粉末として併用するフレーク状銀粉末および球状銀粉末2の合計量を89質量部とし、エポキシ樹脂A2およびB2、C成分のエポキシ樹脂C1、硬化剤1、並びに溶剤の配合量を調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の導電性ペースト組成物を製造した。得られた導電性ペースト組成物のペースト粘度を測定するとともに、前述したように導体パターン11の接触抵抗、導体パターン12の比抵抗、並びに導体パターン13の形成を評価した。その結果を表5に示す。
【0120】
【表5】
【0121】
[特性の評価結果]
実施例1〜11の導電性ペースト組成物は、いずれも良好な接触抵抗および比抵抗を実現することが可能となっている。
【0122】
一方、比較例1の導電性ペースト組成物は、熱硬化性成分としてC成分の固形樹脂しか含まないため、接触抵抗を小さくすることができず比抵抗も十分低くすることができない。また、比較例2の導電性ペースト組成物は、熱硬化性成分としてB成分のエポキシ樹脂とC成分の固形樹脂とを含むが、A成分を含まないため、接触抵抗はやや改善しているものの、比抵抗を十分が低くすることができない。
【0123】
また、比較例4の導電性ペースト組成物は、B成分を含まないため、ペースト粘度が高くなり比抵抗も十分改善できず、さらには導体パターンも良好に形成できない。また、比較例5の導電性ペースト組成物は、C成分を含まないため、ペースト粘度が低くなり導体パターンを良好に形成できない。
【0124】
また、実施例1〜11および比較例1〜5の結果から本発明に係る導電性ペースト組成物においては、熱硬化性成分の配合比としてA成分+B成分:C成分=50:50〜95:5の範囲内にあればよいこと、並びに、熱硬化性成分の配合比としてB成分:A成分+C成分=15:85〜75:25の範囲内にあればよいことが分かる。
【0125】
また、実施例1〜6、実施例8〜11、並びに比較例1、2、4、5では固形分中の導電性粉末が93質量%であり、実施例7では固形分中の導電性粉末が95質量%であり、比較例3では固形分中の導電性粉末が89質量%であり、当該比較例3の接触抵抗が最も高いことから明らかなように、本発明に係る導電性ペースト組成物においては、固形分中の導電性粉末は90〜98質量%の範囲内であればよいことが分かる。
【0126】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。