(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5651775
(24)【登録日】2014年11月21日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】車両用のパワーステアリングシステム
(51)【国際特許分類】
B62D 5/07 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
B62D5/07 B
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-521230(P2013-521230)
(86)(22)【出願日】2010年7月28日
(65)【公表番号】特表2013-532609(P2013-532609A)
(43)【公表日】2013年8月19日
(86)【国際出願番号】IB2010002174
(87)【国際公開番号】WO2012014004
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2013年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】506273102
【氏名又は名称】ルノー・トラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100173048
【弁理士】
【氏名又は名称】小椋 正幸
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(72)【発明者】
【氏名】ブロンド,ジャン−マルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴィロ,オリヴィエ
【審査官】
柳元 八大
(56)【参考文献】
【文献】
特表昭60−500805(JP,A)
【文献】
実開平04−106082(JP,U)
【文献】
特開2003−312500(JP,A)
【文献】
特開2009−190538(JP,A)
【文献】
実開平04−110664(JP,U)
【文献】
実開昭61−066062(JP,U)
【文献】
実開平02−038277(JP,U)
【文献】
特表平04−504396(JP,A)
【文献】
特開2001−048029(JP,A)
【文献】
特開平04−215564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のパワーステアリングシステム(6)であって、前記車両(1)は、ドライブライン(30)を介してホイール(5)を駆動するように設計されたトラクションエンジン(2)を備え、前記ドライブライン(30)は、前記エンジンと接続される上流部分及び前記駆動ホイールと永久に接続される下流部分とからなっており、流体タンク(8)及びステアリングアクチュエータ(9)を含む油圧回路(7)を備えている前記パワーステアリングシステム(6)において、
−前記ドライブライン(30)の前記下流部分からの機械動力によって駆動される第1の主ポンプ(10)と、
−電気モータ(20)によって駆動される第2の補助ポンプ(11)とを更に備えており、
前記第1の主ポンプ(10)及び前記第2の補助ポンプ(11)は、前記流体タンク(8)と前記ステアリングアクチュエータ(9)との間に平行に配設され、前記流体タンク(8)から前記ステアリングアクチュエータ(9)まで同時に流体を供給することが可能であり、
前記ステアリングアクチュエータ(9)に流体が供給されるときには、前記第2の補助ポンプ(11)は、前記ステアリングアクチュエータ(9)に入る全流体流量がほぼ一定であるように、駆動されることを特徴とする、
パワーステアリングシステム(6)。
【請求項2】
前記第2の補助ポンプ(11)を駆動する前記電気モータ(20)を制御することが可能な電子制御装置(21)を更に備えており、前記電子制御装置(21)は、低車速で、前記ステアリングアクチュエータ(9)への十分な流体供給を確保するために、前記第2の補助ポンプ(11)に、前記第1の主ポンプ(10)によって送給される低流体流量を補うのに十分なほど高い流体流量を送給させるように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載のパワーステアリングシステム。
【請求項3】
前記電子制御装置(21)は更に、高車速で、前記第1の主ポンプ(10)によって送給される主流体流量に加えて、前記第2の補助ポンプ(11)に補足流体流量を送給させるように設計されることを特徴とする、請求項2に記載のパワーステアリングシステム。
【請求項4】
前記電子制御装置(21)は更に、高車速で、前記第2の補助ポンプ(11)を停止するように設計されることを特徴とする、請求項2に記載のパワーステアリングシステム。
【請求項5】
前記油圧回路(7)は、前記ステアリングアクチュエータ入力の上流に位置するフローリミッタ(19)を更に備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のパワーステアリングシステム。
【請求項6】
前記第1の主ポンプ(10)は、低車速では比較的高い流体流量を、高車速では制限された流体流量を送給するように設計された可変容量ポンプであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のパワーステアリングシステム。
【請求項7】
前記第1のポンプ容量の変化を制御することが可能な電子制御装置(21)を備えることを特徴とする、請求項6に記載のパワーステアリングシステム。
【請求項8】
ポンプ容量を変化させることが可能な機械的手段を備えることを特徴とする、請求項6に記載のパワーステアリングシステム。
【請求項9】
前記第1の主ポンプ(10)及び前記第2の補助ポンプ(11)は一定容量ポンプであり、前記第1の主ポンプ(10)は低圧で最適効率が得られるように設計され、前記第2の補助ポンプ(11)は高圧で最適効率が得られるように設計されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のパワーステアリングシステム。
【請求項10】
ドライブライン(30)を介してホイール(5)を駆動するように設計されたトラクションエンジンであって、前記ドライブライン(30)は、前記エンジンと接続される上流部分及び前記駆動ホイールと永久に接続される下流部分とからなっているトラクションエンジンを備えている車両において、請求項1〜9のいずれかに記載のパワーステアリングシステム(6)を更に備えることを特徴とする、車両。
【請求項11】
前記ドライブライン(30)が前記車両の前記駆動ホイール(5)と永久に接続される出力軸を有するギアボックスアセンブリを含むことと、前記第1の主ポンプ(10)が前記ギアボックスアセンブリの出力軸と接続されることとを特徴とする、請求項10に記載の車両。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の車両(1)用のパワーステアリングシステムを制御する方法において、低車速で、前記ステアリングアクチュエータ(9)への十分な流体供給を確保するために、前記第2の補助ポンプ(11)が前記第1の主ポンプ(10)によって送給される低流体流量を補うのに十分なほど高い流体流量を送給するように、前記第1の主ポンプ(10)及び/又は前記第2の補助ポンプ(11)の作動を制御するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
高車速で、前記第2の補助ポンプ(11)に補足流体流量を送給させるように、又は前記第2の補助ポンプ(11)を停止するように、前記第2の補助ポンプ(11)を制御するステップを含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の主ポンプ(10)として可変容量ポンプを設けるステップと、ポンプ容量を低車速では高く、高車速では低くなるように制御するステップとを含むことを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に大型トラック等の産業車両用のパワーステアリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーステアリングシステムは、何年にもわたって、車両、特に産業車両における標準装備であった。そのようなシステムは、油圧ステアリングアクチュエータを介して、ホイールに力を加えることによって車両運転者をアシストする。従って、ステアリングホイールを回すときにほとんど運転者の労力を必要とせず、車両が操縦し易い。
【0003】
パワーステアリングシステムは、一般的に、ポンプを用いることによって、タンクからステアリングアクチュエータまで加圧流体−例えばオイル−を運ぶ油圧回路を備えている。
【0004】
多くのパワーステアリングシステムにおいて、ポンプは、車両燃焼エンジンによって駆動され、一般に、前記エンジンによってギア駆動又はベルト駆動される。
【0005】
特にハイブリッド車−即ち、燃焼エンジン及び電気エンジンの両方を有する車両−においては、電気駆動ポンプもまた設けられており、ハイブリッド車では前記ポンプが電気モータによって駆動される。この構成のおかげで、燃料を節約するために燃焼エンジンが切られた場合であっても、パワーステアリングシステムは作動することができる。電気駆動ポンプは、ノン・ハイブリッド車に設けることもできる。一致する利点は、ステアリングアシスタンスが必要ない場合に停止することができる油圧ポンプがあることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電気駆動ポンプを用いたパワーステアリングシステムには、電力供給の利用可能性及び/又は電気モータ又は電力供給システム等の電気部品の信頼性に関連するいくつかの欠点がある。
【0007】
従って、いくつかの観点から、パワーステアリングシステムには改善の余地があるように見える。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、ハイブリッド車においてだけではなく、電気駆動ポンプを有する従来のパワーステアリングシステムで遭遇する欠点を解決することができる、改良されたパワーステアリングシステムを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、信頼性が高いと同時に、高い性能も有するパワーステアリングシステムを提供することである。
【0010】
従って、本発明は車両用のパワーステアリングシステムであって、前記車両は、ドライブラインを介してホイールを駆動するように設計されたトラクションエンジンを備え、前記ドライブラインは、前記エンジンと接続される上流部分及び前記駆動ホイールと永久に接続される下流部分とからなっており、流体タンク及びステアリングアクチュエータを含む油圧回路を備えている前記パワーステアリングシステムに関する。
【0011】
本発明によれば、そのようなパワーステアリングシステムは、
−前記ドライブラインの前記下流部分からの機械動力によって駆動される第1のポンプと、
−電気モータによって駆動される第2のポンプとを更に備えており、
前記第1及び第2のポンプは、前記流体タンクと前記ステアリングアクチュエータとの間に平行に配設され、前記流体タンクから前記ステアリングアクチュエータまで同時に流体を供給することが可能である。
【0012】
従って、本発明によるパワーステアリングシステムでは、第1のポンプは車両が動くとすぐに作動中になり、それによって確実に、車両が動いている間は少なくとも最小のステアリング力が常に得られるようになる。特に、ハイブリッド車では、トラクションエンジンが切れているときに車両をステアリングすることができる。更に、車両がハイブリッド車かどうかに関係なく、電気モータ又は電力供給システムのどちらかの電気部品で問題が生じた場合、第2のポンプが停止することになるが、車両が動いている限り、第1のポンプのおかげで車両をそれまで通りステアリングすることができる。
【0013】
高車速、例えば時速約80km以上では、第1のポンプは単独で十分なステアリング力を提供することができる。
【0014】
低車速、例えば時速約10〜15km以下では、第1のポンプによって提供されるステアリング力が低くなる。しかし、例えば電気部品の故障により、第1のポンプが作動中の唯一のポンプである場合であっても、深刻な結果を招くことにはならないであろう。実際、低車速、例えば時速10〜15km未満では、たとえ車両のステアリングパワーシステムがフル稼働していなくても、安全性の危険はない。
【0015】
本発明の別の利点は、機械駆動される第1のポンプの効率が、電気駆動される第2のポンプの効率よりも高いことである。この結果、パワーステアリングシステム全体の効率が向上することになる。更に、本発明によるパワーステアリングシステムは、従来技術のシステムよりもより堅牢である。
【0016】
従って、本発明により、どんな運転条件でも、即ち、低車速でも、高車速でも、トラクションエンジンが切れていたり、電気駆動ポンプが適切に機能していなかったりする場合であっても、確実に車両が安全であることになる。
【0017】
注目すべきは、ホイールからの機械動力によって駆動されている第1のポンプが、トラクションエンジンから機能的に切り離されていることである。実際には、第1のポンプは、ギアボックスの出力軸に連結させて、ギアボックスハウジング上に取り付けることができる。
【0018】
第2のポンプに関しては、トラクションエンジンから独立している。改良実施形態において、前記第2のポンプは、専用の電気モータ、即ち、車両を動かすように設計された電気モータとは別の電気モータによって駆動することができる。
【0019】
本発明の好ましい実施態様によれば、パワーステアリングシステムは、第2のポンプを駆動する電気モータを制御することが可能な電子制御装置を更に備えており、前記電子制御装置は、低車速で、ステアリングアクチュエータへの十分な流体供給を確保するために、第2のポンプに、第1のポンプによって送給される低流体流量を補うのに十分なほど高い流体流量を送給させるように設計されている。
【0020】
電子制御装置は更に、高車速で、第1のポンプによって送給される主流体流量に加えて、第2のポンプに補足流体流量を送給させるように設計してもよい。
【0021】
或いは、電子制御装置は更に、高車速で、第2のポンプを停止するように設計してもよい。
【0022】
言い換えると、第1のポンプは主ポンプの役割を果たすのに対して、第2のポンプは低速で流体流量を補充するように設計された補助ポンプの役割を果たす。
【0023】
有利には、油圧回路はステアリングアクチュエータ入力の上流に位置するフローリミッタを更に備えてもよい。これにより、高車速でステアリングアクチュエータの流体流量が高くなり過ぎないようにすることが可能である。
【0024】
本発明の第1の実施形態によれば、第1のポンプは、オーバーフローを避けるために、低車速では比較的高い流体流量を、高車速では制限された流体流量を送給するように設計された可変容量ポンプであってよい。
【0025】
実際には、パワーステアリングシステムは、第1のポンプの容量の変化を制御することが可能な電子制御装置又は機械的手段を備えることができる。
【0026】
本発明の第2の実施形態によれば、第1のポンプ及び第2のポンプは一定容量ポンプであってよく、第1のポンプは低圧、例えば約50バールで最適効率が得られるように設計され、第2のポンプは高圧、例えば約200バールで最適効率が得られるように設計されている。前記実施形態は、より単純な構造及び/又はより小さなサイズのポンプでよいという点で有利である。流体圧力要求は、車速が低くなるにつれて一層高くなる。言い換えると、高圧は低車速に対応し、低圧は高車速に対応する。低圧(即ち、高車速)では、第2のポンプは停止してもよい。
【0027】
別の態様によれば、本発明は、ドライブラインを介してホイールを駆動するように設計されたトラクションエンジンであって、前記ドライブラインは、前記エンジンと接続される上流部分及び前記駆動ホイールと永久に接続される下流部分とからなっているトラクションエンジンと、前述のパワーステアリングシステムとを備えている車両に関する。
【0028】
ドライブラインは、車両の駆動ホイールと永久に接続される出力軸を有するギアボックスアセンブリを含んでもよく、第1のポンプはギアボックスアセンブリの出力軸と接続されている。
【0029】
更に別の態様によれば、本発明は、前述の車両用のパワーステアリングシステムを制御する方法に関し、前記方法は、低車速で、ステアリングアクチュエータへの十分な流体供給を確保するために、第2のポンプが第1のポンプによって送給される低流体流量を補うのに十分なほど高い流体流量を送給するように、第1のポンプ及び/又は第2のポンプの作動を制御するステップを含んでいる。
【0030】
本方法は、高車速で、第2のポンプに補足流体流量を送給させるように、又は第2のポンプを停止するように、第2のポンプを制御するステップを含んでもよい。この場合、第2のポンプは補足流体流量のみを送給し、即ち、主流体流量は第1のポンプから生じる。
【0031】
本方法はまた、第1のポンプとして可変容量ポンプを設けるステップと、ポンプ容量を低車速では高く、高車速では低くなるように制御するステップとを含んでもよい。
【0032】
これら及びその他の特徴及び利点は、本発明による車両の実施形態を非限定的な例として示す本明細書に添付の図面を考慮して以下の説明を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明のいくつかの実施形態の以下の詳細な説明は、添付図面と共に読むことによってより良く理解されるが、本発明は開示された特定の実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。
【
図1】本発明の第1の実施形態によるパワーステアリングシステムを示す車両の概略部分図である。
【
図2】パワーステアリングシステムの第1のポンプ及び第2のポンプの流量を車速に応じて図示する図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態によるパワーステアリングシステムを示す車両の概略部分図である。
【
図4】車速に応じた第1のポンプの流量と、車速に応じた車両のステアリングに必要な流体圧力とを図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1において概略的且つ部分的に図示されているように、トラック等の車両1は、ドライブライン30を介して車両の駆動ホイール5を駆動することが可能なトラクションエンジン2を備えている。多くの場合、
図1に示した従来のトラックのように、トラクションエンジン2は燃焼エンジンであり、ドライブライン30は主に、クラッチ31と、ギアボックス32と、推進軸33と、ディファレンシャル34と、各駆動ホイール5用の駆動軸35とを含む。そのような場合、クラッチ31が開いていることによってトラクションエンジンからギアボックスが外れたとしても、及び/又はギアボックスがニュートラルであっても、ドライブライン30の下流部分を駆動ホイール5と永久に接続される部分として定義することが可能である。そのような場合、ギアボックスの下流部分は、ギアボックスアセンブリの出力軸から始まるとみなすことができ、推進軸、ディファレンシャル、及び駆動軸も備えている。トラクションエンジンが電気モータである純電気自動車の場合、同様のドライブラインを使用することができるが、クラッチがない可能性がある。パラレルハイブリッドトラックでは、電気モータを従来のトラックのドライブライン、例えばギアボックスの上流に追加することができるが、そのような電気モータはギアボックスの下流に接続することもできる。シリーズハイブリッド車は、電気自動車の変形例とみなすことができ、トラクションエンジンが必要とする電力の少なくとも一部が燃焼エンジンによって駆動される発電機によって提供される。
【0035】
車両1は、車両1のステアリングで運転者をアシストするために、パワーステアリングシステム6を更に備えている。
【0036】
パワーステアリングシステム6は、流体、一般的にオイルが、流体タンク8からステアリングアクチュエータ9へと流れてから、流体タンク8に戻ることができる、閉油圧回路7を備えている。流体は、流体タンク8とステアリングアクチュエータ9との間に平行に配設された第1のポンプ10及び第2のポンプ11を用いることによって油圧回路7内で移動する。オイルタンク8の下流で、出口パイプ12は、前記第1のポンプ10からなる第1のパイプ13と前記第2のポンプ11からなる第2のパイプ14とに分けられる。第1及び第2のパイプ13,14は、各々が好ましくは、対応するポンプ10,11の下流に、逆止弁15,16をそれぞれ備えている。第1及び第2のパイプ13,14はそれから、ステアリングアクチュエータ9の上流で共通パイプ18になる。
【0037】
任意選択的に、共通パイプ18は、ステアリングアクチュエータ9の上流に、両ポンプ10,11によって送給される流量が流量要求よりも高い場合にステアリングアクチュエータ入力におけるオーバーフローを避けるように設計されたフローリミッタ19を備えている。これに加えて、又はこの変形例として、第1のポンプ10は、好ましくは、その車速依存により、前記ポンプ10によって超高流量が送給されるのを避けるためのフローリミッタを含む。
【0038】
第1のポンプ10は、ホイール5と永久に接続されたドライブライン30の下流部分からの機械動力によって駆動される。第1のポンプ10は、例えば、ギアボックス32の出力軸、又は前記出力軸に連結されたギアボックスの任意の内部軸に連結させて、ギアボックスハウジング上に取り付けることができる。
【0039】
第2のポンプ11は、エネルギー蓄積システム22に連結された電子制御装置21によって制御される電気モータ、好ましくは専用の電気モータ20によって駆動される。
【0040】
油圧回路7は、第1及び第2のポンプ10,11が流体タンク8からステアリングアクチュエータ9まで同時に流体を供給することが可能であるように設計される。
【0041】
第1のポンプ10は主ポンプの役割を果たす。第1のポンプ10は、ホイール5が速く回転する、即ち車速が高くなるにつれて一層高い流量を送給する。車両が停止していない限り、第1のポンプ10は、第2のポンプ11が機能しない場合であっても、例えば電気的問題が起こった場合に備えて、ステアリングアクチュエータ9内の少なくとも最小流量、即ち少なくとも最小のステアリングアシスタンス力を確保する。言い換えると、第1のポンプ10は、電気部品の故障の場合に運転者が車両1の制御を維持することができるように車両1を最低速度で安全にするので、安全ポンプとしての役割も果たす。ハイブリッド車の場合、第1のポンプ10によって、トラクションエンジン2が切れているときに車両1をステアリングすることも可能になる。また、言及すべきは、ほとんどの場合、機械駆動されるポンプは、電気損失を被ることがないので、最高の全体効率が得られることである。
【0042】
第2のポンプ11は、補助ポンプとみなすことができる。その機能は、補足流量のみを送給することである。従って、低車速では、第2のポンプ11は第1のパイプ13における流量不足を補うように駆動される。高車速では、第1のポンプ10内の制限された流量に応じて、第2のポンプ11は付加流量を供給するか、或いは停止することができる。
【0043】
図2は、油圧回路7内の流量Qを車速Vに応じて図示している。
【0044】
第1のポンプ10によって送給される流量Q10は車速Vと共に増加し、閾値Vth後は、前記流量Q10が第1のポンプ10に含まれるフローリミッタによって最大値に達する。第2のポンプ11によって送給される流量Q11に関しては、好ましくは第1のポンプの流量Q10の増加に実質的に比例して減少するように作られている。ステアリングアクチュエータに入る全流体流量QTは、場合によりフローリミッタ19によって制限されるため、ほぼ一定である。
【0045】
例えば一例を挙げると、ポンプ内の低流体流量とは約6リットル毎分であるのに対して、ポンプ内の高流体流量とは約15リットル毎分であることになる。
【0046】
図1に図示した本発明の第1の実施形態によれば、第1のポンプ10は、低車速では−第2のポンプによって送給される補足流量を制限するために−比較的高い流体流量を、高車速では−オーバーフロー及びエネルギー損失を避けるために−制限された流体流量を送給するように設計された可変容量ポンプである。
【0047】
第1のポンプ10の容量は、電子制御装置21を用いることによって、車速情報の機能に応じて変化させることができる。
【0048】
図3に示した本発明の第2の実施形態によれば、第1のポンプ10及び第2のポンプ11は一定容量ポンプである。油圧回路7に必要な最高圧力Pmaxは(車両をステアリングするのに必要な圧力は車速が低くなるにつれて一層重要になるという理由から)車速と関連しており、
図4に示すように、程なくして減少する。第1のポンプ10は車速依存でもあるので、低圧で(最高速度に適合した)最適効率が得られるように設計し、圧力制限弁によって保護することができる。そして、第2のポンプ11は、高圧で最適効率が得られるように設計することができる。
【0049】
そのような構成の1つの利点は、ポンプに対してより単純な技術を利用することが可能であること、更にはより小さなサイズのポンプが得られることである。
【0050】
当然ながら、電気ポンプと、機械ポンプが可変容量式である場合、機械ポンプとは、ステアリングアシスタンスを行なう必要性に影響を与える可能性がある、ステアリングホイールの角位置又は角速度等の他のパラメータに従って、又はその他のパラメータに従って、制御することもできる。例えば、一方のポンプの制御は、他方のポンプが故障していることが検出された場合に修正することができ、即ち、可変容量機械ポンプは、電気ポンプの電気エネルギーの利用可能性の機能に応じて制御することができる。
【0051】
当然ながら、本発明は、非限定的例として上述した実施形態に制限されるものではなく、むしろ、その全ての実施形態を包含するものである。