【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用されたオーナメント10を有する車両用ドアトリム12の上端のショルダー部分(窓の下端部分)を示す概略図で、車両右側のドアの意匠面側すなわち室内側から見た正面図である。
図2は、
図1のオーナメント10を単独で示す図で、表層部材16の裏面に設けられた多数の微小突起20(
図6等参照)を意匠面側から透過して示した図であり、
図3は、オーナメント10の表層部材16を取り除いて基材14を示した図である。また、
図4は
図1におけるIV−IV矢視部分に相当するオーナメント10の断面図、
図5は
図1におけるV−V矢視部分に相当するオーナメント10の断面図である。
【0049】
上記オーナメント10は、板状の基材14と、その基材14の表面22に沿って略平行に重ね合わされるように配置された表層部材16とから成る重ね合わせ部品で、板状パネルに相当し、基材14の表面22は合わせ面に相当する。また、表層部材16は第2部材で、軟質ポリ塩化ビニル等の比較的軟質の弾性変形可能な合成樹脂材料にて一体成形されており、上記表面22と略平行な板状部18を有するとともに、その板状部18の裏面には基材14の表面22に向かって突き出す多数の微小突起20が一体に設けられている。そして、これ等の微小突起20により板状部18と表面22との間に空間24が形成されるとともに、微小突起20の先端が表面22に密着する状態で、板状部18の外周端末部26が基材14の外周縁部に巻き付けられることにより、表層部材16が基材14に一体的に取り付けられている。微小突起20は突起に相当する。
【0050】
基材14は第1部材に相当し、上記表層部材16よりも硬質のポリプロピレン等の合成樹脂材料にて一体成形されており、裏面の外周縁部に設けられた複数の掛止突起28に前記端末部26が掛け止められるようになっている。基材14の裏面にはまた、複数の取付係合部30が一体に設けられており、この取付係合部30を介して車両用ドアトリム12に一体的に取り付けられる。このように取付係合部30を介してオーナメント10が車両用ドアトリム12に一体的に取り付けられた状態で、車両用ドアトリム12に設けられた複数の押え部32により、前記端末部26が基材14の外周縁部に押圧され、その外周縁部に巻き付けられた状態に保持される。なお、端末部26を接着剤等の他の固定手段により基材14の周縁部に固定するようにしても良い。
【0051】
図6は、上記表層部材16の裏面に設けられた多数の微小突起20を説明する図で、(a) は実際の大きさに近い状態(直径φ=50mm)で示した平面図、(b) は(a) における
VIb部を拡大して示した平面図である。これ等の平面図は、何れも前記板状部18に対して垂直方向から見た状態である。また、
図7は
図6の(b) におけるVII −VII 矢視部分の拡大縦断面図、
図8は
図6の(b) におけるVIII−VIII矢視部分の拡大縦断面図である。これ等の図から明らかなように、多数の微小突起20は同一形状で、板状部18に対して垂直な方向から見た平面視(
図6の状態)において長手形状(この実施例では長方形)を成しており、同一形状の多数の多角形の各辺がそれぞれ隣接する多角形の辺と重なる格子模様34を形成するように、その多角形の各辺を構成する位置にその辺と長手方向とが略平行になる姿勢で設けられている。本実施例では、微小突起20の平面視の形状は、四隅が丸められた長方形で、その長手方向が多角形の各辺と一致する姿勢で配置されている。また、格子模様34は、
図6の(b) に二点鎖線で示すように、多角形として一定の大きさの正六角形が連続して繰り返すハニカム模様で、微小突起20は、その正六角形の各辺の中央部分に一つずつ設けられている。
【0052】
上記微小突起20は、
図7、
図8から明らかなように、先端側へ向かうに従って断面積が小さくなる緩やかな先細形状を成している。また、
図7に示す長手方向と直角な幅方向の縦断面形状、および
図8に示す長手方向の縦断面形状は、何れも板状部18に対して垂直な中立面に対して対称形状を成しており、先端周縁部(断面形状の両端部)には丸みが設けられている。この微小突起20について更に具体的に説明すると、格子模様34の正六角形の互いに平行な2辺の間隔であるピッチP、すなわちその2辺に設けられる微小突起20の中心距離は、4mm≦P≦7mmの範囲内で、本実施例では約5mmである。また、微小突起20の高さ寸法Hは、2mm≦H≦3.5mmの範囲内で、本実施例では約2.5mmである。微小突起20の幅寸法dは、1mm≦d≦2mmの範囲内で、本実施例では約1.2mmである。微小突起20の長さ寸法Lは、1.5mm≦L≦2.5mmの範囲内で幅寸法dよりも大きく、本実施例では約1.8mmである。微小突起20の幅方向両側の側壁の傾斜角度αは、2°≦α≦5°の範囲内で、本実施例では約3°である。微小突起20の長手方向の両端縁の傾斜角度βは、10°〜15°の範囲内で、本実施例では約13°である。板状部18の板厚tは1mm≦t≦2mmの範囲内で、本実施例では約1.5mmである。これ等の寸法や角度は、表層部材16の材質などを考慮して、所定の触感(ソフト感や剛性感など)や強度等が得られるように適宜定められる。
【0053】
そして、このようなオーナメント10においては、表層部材16の板状部18が指や手で押圧された場合、微小突起20の先端が基材14の表面22に押圧されて弾性変形させられることによりクッション性が付与され、所定の触感が得られる。本実施例では、多数の微小突起20が対称形状を成しているため、板状部18に対して垂直方向から押圧荷重が加えられた場合、基本的には微小突起20が
図7、
図8における上下方向へ圧縮変形させられることによりクッション性が付与され、板状部18に斜め方向から押圧荷重が加えられると、微小突起20は上下方向の圧縮変形に加えて長手方向と直角な方向(
図7における左右方向)へ撓み変形させられることによりクッション性が付与される。この微小突起20は、長手方向に対して直角な幅方向(
図7における左右方向)の曲げ剛性が、長手方向である
図8の左右方向に比較して小さくなり、圧縮荷重に対する曲げ剛性が軸まわりにおいて異方性を有する。
【0054】
このように、本実施例では、多数の微小突起20が板状部18に点在形成されているとともに、各微小突起20の圧縮荷重に対する曲げ剛性が軸まわりにおいて異方性を有するため、その異方性によって定まる特定方向へ撓み変形し易くなってソフト感が向上する。すなわち、本実施例の微小突起20は平面視において長手形状を成しているため、その長手方向と直角な幅方向へ撓み変形し易くなり、ソフト感が向上する。
【0055】
また、各微小突起20の撓み方向をコントロールできるため、微小突起20が弾性変形させられる際の変形態様(撓み方向など)が安定し、指や手で押圧した時の触感のばらつきが抑制される。
【0056】
また、多数の多角形が連続して隣り合う格子模様34を形成するように、その多角形の各辺を構成する位置に微小突起20が設けられるため、多数の微小突起20が一定の配置パターンで設けられるようになり、指や手で押圧した時の触感のばらつきが抑制される。
【0057】
また、格子模様34の各辺に対応して微小突起20の姿勢が所定角度(実施例では60°)ずつ変化しており、それに伴って各微小突起20の撓み方向が変化するため、互いに支え合うことによって適度な剛性感(柔らか過ぎない感じ)が得られるようになり、その微小突起20の弾性変形によって得られるソフト感と相まって一層優れた触感を設定することができる。
【0058】
また、上記格子模様34は、多角形として正六角形が連続して繰り返すハニカム模様であり、長手形状の微小突起20の姿勢が60°ずつ変化しているため、例えば90°ずつ変化する正方形の格子模様に比較して押圧荷重に対する弾性変形の異方性が抑制され、斜め方向からの押圧荷重に対しても均質な触感が得られるようになる。
【0059】
また、本実施例では基材14に表層部材16のみを重ね合わせて一体的に取り付けた2層構造であるため、オーナメント10を安価に製造できる。
【0060】
また、本実施例では多数の微小突起20の平面視の形状が単純な長方形であるため、その微小突起20を有する表層部材16を成形する成形金型の構造が単純になるなど、製造コストが低減されて安価に構成できる。
【0061】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0062】
図9は、前記
図6(b) に対応する拡大平面図で、この表層部材40は、前記表層部材16に比較して微小突起42の形状が相違する。また、
図10は
図9におけるX−X矢視部分の拡大縦断面図、
図11は
図9におけるXI−X1矢視部分の拡大縦断面図である。これ等の図から明らかなように、多数の微小突起42は、板状部18に対して垂直な方向から見た平面視(
図9の状態)において長手形状を成しているとともに、ハニカム模様の格子模様34における正六角形の各辺を構成する位置に設けられている点は前記実施例と同じである。また、
図11に示す長手方向の縦断面形状も対称形状を成していて前記微小突起20と同じであるが、
図10に示す幅方向の縦断面形状は、板状部18に対して垂直な中立面に対し非対称形状であり、この点が微小突起20と相違している。すなわち、幅方向の一方の側壁は、前記微小突起20と同じ傾斜角度αで形成されているが、他方の側壁は、その傾斜角度αよりも大きな傾斜角度γで微小突起20の中心軸側である内側へ傾斜する大傾斜面44を先端側部分に備えている。この傾斜角度γは、15°≦γ≦25°の範囲内で、本実施例では約20°である。他の寸法P、H、L、d、tや角度α、βは前記微小突起20と同じである。
【0063】
そして、このように幅方向の縦断面形状が非対称とされると、板状部18に対して垂直方向から押圧された場合に、微小突起42は幅方向の一方、すなわち大傾斜面44が設けられた側と反対側へ撓み変形し易くなる。
図12は、本実施例の微小突起42を示す斜視図で、
図13は前記
図9と同じ平面図であり、何れも細かい斜線を付した部分が大傾斜面44で、微小突起42は白抜き矢印で示すように大傾斜面44と反対方向へ撓み変形する。また、これ等の微小突起42は、格子模様34を構成している多角形すなわち正六角形の中心線まわりにおいて、撓み方向が交互に逆向きになる姿勢で設けられている。具体的には、正六角形を形成するように各辺に設けられる6つの微小突起42のうち、周方向において一つ置きに位置する3つの微小突起42は正六角形の内側へ撓み変形し、それ等の間に位置する残りの3つの微小突起42は正六角形の外側へ撓み変形する。また、格子模様34の全域において、正六角形を形成する6つの微小突起42が同じ変形態様で撓み変形させられる。
【0064】
本実施例においても、多数の微小突起42が平面視において長手形状を成しており、且つ、正六角形の格子模様34を構成するように設けられているため、指や手で押圧した時の触感のばらつきが抑制されるとともに優れた触感が得られるなど、前記実施例と同様の作用効果が得られる。
【0065】
また、本実施例の微小突起42は、軸まわりの特定位置すなわち長手方向に対して直角な幅方向の縦断面形状が非対称形状とされ、常に一定の撓み方向へ倒れるように弾性変形させられるため、触感のばらつきが抑制されて略同じ触感が安定して得られるようになる。
【0066】
また、微小突起42は大傾斜面44を備えているため、その大傾斜面44と反対方向へ撓み変形し易くなり、微小突起42の弾性変形によって得られるソフト感を一層向上させることができるとともに、その大傾斜面44の範囲や傾斜角度γにより微小突起42の撓み易さをコントロールすることにより、ソフト感の調整を適切に行うことができる。
【0067】
また、上記大傾斜面44を設ける位置により撓み方向をコントロールできるため、撓み変形時に互いに干渉しないように微小突起42を配置することにより、微小突起42をできるだけ密に設けて微小突起42の有無による触感のばらつきを抑制しつつ、その微小突起42の弾性変形による所定のソフト感が確実に得られるようにできる。
【0068】
また、微小突起42は、格子模様34を構成している正六角形の各辺に一つずつ配置されるとともに、撓み方向が交互に逆向きになる姿勢で設けられているため、一定方向への撓み変形に拘らず六角形を単位とした微小突起42の変形態様が全域で略同じになり、均質な触感が得られる。
【0069】
図14は、前記微小突起20を有する平坦な表層部材16、および上記微小突起42を有する平坦な表層部材40を試験片として用意し、反力とストロークとの関係を調べる際の試験方法を示す図である。表層部材16、40は、何れも60mm×60mmの大きさで、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)にて構成されており、微小突起20、42は上記実施例と同様にハニカム状の格子模様34を形成するように多数設けられている。そして、それ等の表層部材16、40を、微小突起20、42が下向きになる姿勢でアクリル製の基材上に載置し、先端の球面半径が15mmのアルミニウム製圧子を5mm/secの速度で押圧して、圧子に接続されたロードセルを用いて反力とストロークとの関係を計測した。
【0070】
図15は、上記押圧試験により得られた反力−ストローク特性を示す図で、実線は、大傾斜面44を有する微小突起42が設けられた表層部材40の特性で、一点鎖線は、大傾斜面44を備えていない微小突起20が設けられた表層部材16の特性である。これ等の特性から明らかなように、大傾斜面44を有する微小突起42が設けられた表層部材40は、大傾斜面44を備えていない対称形状の微小突起20が設けられた表層部材16に比較して、ストロークに対する反力の上昇が緩やかで、優れたソフト感が得られる。
【0071】
図16のオーナメント50は、前記オーナメント10に比較して、表層部材16の表面、すなわち板状部18の微小突起20が設けられた側と反対側の面に、表皮材52が一体的に固着されており、板状の基材14と合わせて全体として3層構造を成している場合である。表皮材52は、例えば織布や不織布、編布、塩化ビニル、軟質フィルムなどで構成されており、表層部材16と一体成形することにより、その表層部材16の成形と同時に成形されるとともに、その表層部材16の表面に一体的に固着される。また、表皮材52の外周端末部54が基材14の外周縁部に巻き付けられて、前記掛止突起28に掛け止められるとともに、オーナメント50が車両用ドアトリム12に一体的に取り付けられた状態で、前記押え部32により端末部54が基材14の外周縁部に押圧されるようになっており、これにより表層部材16が表皮材52と共に基材14に一体的に取り付けられる。なお、表層部材16の代わりに前記表層部材40が設けられる場合も、その表層部材40の表面に表皮材52を固着して3層構造とすることができる。
【0072】
このようなオーナメント50においても、前記オーナメント10と同様の作用効果が得られる。加えて、表層部材16が表皮材52によって被覆されるため、その表層部材16の板状部18の微小突起20と反対側の面にヒケや艶ムラ等が生じても外部に露出することが無いとともに、表層部材16の傷付きが防止される。このため、その表層部材16の樹脂材料の選択の幅が広くなるとともに、触感に関与する微小突起20の形状等の設計の自由度が高くなり、触感の調整を一層容易に且つ適切に行うことができる。
【0073】
図17のオーナメント60は、板状の基材62の表面に、多数の微小突起64を有するクッション部材66が設けられ、そのクッション部材66の微小突起64側に重ね合わされるように表層部材68が取り付けられている。基材62は、前記基材14と同様に比較的硬質の合成樹脂材料にて構成されているとともに、裏面側には前記掛止突起28や取付係合部30が一体に設けられている。クッション部材66は第2部材に相当し、前記表層部材16、40と同様に弾性変形可能な合成樹脂材料にて構成されているとともに、基材62の表面に密着するように一体的に固定される板状部70を有し、その板状部70に多数の微小突起64が一体に設けられている。微小突起64は、前記微小突起20或いは42と同様に構成されており、表層部材68の裏面72と板状部70との間に空間74が形成されるように、板状部70から表層部材68側へ向かって突き出すように突設され、先端が裏面72に密着させられている。裏面72は合わせ面に相当する。また、表層部材68は第1部材に相当し、本実施例では前記表層部材16、40と同様に比較的軟質の合成樹脂材料にて構成されている。そして、表層部材68の外周端末部76が基材62の外周縁部に巻き付けられ、図示しない掛止突起28に掛け止められるとともに、オーナメント60が車両用ドアトリム12に一体的に取り付けられた状態で、前記押え部32により端末部76が基材62の外周縁部に押圧されるようになっている。なお、この表層部材68に更に前記表皮材52が設けられても良い。
【0074】
このようなオーナメント60においては、表層部材68を指や手で押した場合に、その表層部材68の裏面72がクッション部材66に設けられた微小突起64の先端に押圧されることにより、その微小突起64の弾性変形で優れた触感が得られるなど、前記オーナメント10と同様の効果が得られる。また、微小突起64が設けられるクッション部材66は表層部材68によって被覆されるとともに、クッション部材66の板状部70は基材62に固定されるため、その板状部70の微小突起64と反対側の面にヒケや艶ムラ等が生じても外部に露出することが無く、クッション部材66の樹脂材料の選択の幅が広くなるとともに、触感に関与する微小突起64の形状等の設計の自由度が高くなり、触感の調整を一層容易に且つ適切に行うことができる。
【0075】
図18は、本発明の更に別の実施例を説明する図で、前記微小突起20、42とは形状が異なる微小突起80の三面図であり、
図19はその微小突起80の斜視図である。
図18の(a) は、前記
図6(b) や
図9と同様に板状部18に対して垂直方向から見た平面図で、(b) は(a) の右方向から見た側面図、(c) は(a) の下方から見た正面図である。この微小突起80は、
図18(a) の上下方向に長い長手形状を成しているとともに、その長手方向において滑らかに円弧状に湾曲した湾曲形状を成しており、右側面82は凹曲面で左側面84は凸曲面とされている。また、
図18(a) における左右方向である幅方向の断面は非対称形状で、先端近傍には、内側へ向かう傾斜角が反対側よりも大きい大傾斜面86が設けられており、白抜き矢印で示すように右側面82側へ撓み変形し易くなっている。
図18および
図19の細かい斜線を付した部分は大傾斜面86の範囲である。そして、このような微小突起80は、例えば前記微小突起42と同様に、多角形の格子模様34を構成するように配置されるとともに、その多角形の中心線まわりにおいて撓み方向が交互に逆向きになる姿勢で設けられる。これにより、前記微小突起42を有する実施例と同様の作用効果が得られる。また、湾曲形状により押圧荷重が加えられた際の剛性が高くなるため、ソフト感や剛性感のコントロール幅が広くなる。
【0076】
図20は、本発明の更に別の実施例を説明する図で、前記微小突起20、42とは形状が異なる微小突起90の三面図であり、
図21はその微小突起90の斜視図である。
図20の(a) は、前記
図6(b) や
図9と同様に板状部18に対して垂直方向から見た平面図で、(b) は(a) の右方向から見た側面図、(c) は(a) の下方から見た正面図である。この微小突起90は、
図20(a) の上下方向に長い長手形状を成しているとともに、その長手方向において滑らかにクランク状に曲げられた繭型形状を成している。また、
図20(a) における左右方向である幅方向の断面は、長手方向の中央部分では対称形状であるが、長手方向の端部では非対称形状とされており、内側へ向かう傾斜角が反対側よりも大きい一対の大傾斜面92、94が設けられている。これ等の大傾斜面92、94は左右反対側に設けられており、微小突起90は、白抜き矢印で示すように中心線まわりにねじれるように撓み変形させられる。
図20および
図21の細かい斜線を付した部分は大傾斜面92または94の範囲である。そして、このような微小突起90は、例えば前記微小突起20と同様に、多角形の格子模様34を構成するように配置される。これにより、前記微小突起20を有する実施例と同様の作用効果が得られる。また、本実施例の微小突起90は、一定の変形態様で弾性変形させられるため、触感のばらつきが抑制されて略同じ触感が安定して得られるとともに、大傾斜面92、94の範囲や傾斜角を変更して撓み易さをコントロールすることによりソフト感の調整を容易に行うことができる。
【0077】
図22および
図23は、本発明の更に別の実施例を説明する図で、前記微小突起20を3つずつ連結して構成した場合であり、
図22は一組の微小突起群100の三面図、
図23はその微小突起群100の斜視図である。このように3つの微小突起20が連結部102を介して互いに連結されることにより、3つの微小突起20が互いに支え合うようになるため、押圧荷重が加えられた際の剛性が高くなり、ソフト感や剛性感のコントロール幅が広くなる。なお、この実施例では微小突起20について説明したが、前記微小突起42等の他の微小突起についても同様に構成できる。一組の微小突起の数は必ずしも3つである必要はなく、適宜定められる。
【0078】
図24は、前記
図6(b) に対応する拡大平面図で、
図25は
図24における XXV−XXV 矢視部分の拡大縦断面図であり、前記表層部材16、40やクッション部材66として用いられる第2部材200の板状部201には多数の微小突起202が設けられている。微小突起202は、前記微小突起20に比較して、板状部201から立ち上がる根元部分のコーナー形状が相違する。すなわち、微小突起202が板状部201から突き出す部分は前記微小突起20と同じであるが、平面視において長方形を成す微小突起202の長手方向と直角な幅方向の一方の根元部分には、断面が半円形の溝204が長手方向の全長に亘って設けられており、幅方向(
図25の左右方向)のうち溝204が設けられた側の曲げ剛性が低くなって撓み変形し易くなる。
図24において細かい斜線を付した部分は溝204で、
図24および
図25の白抜き矢印は微小突起202の倒れ方向を表しており、
図9の実施例(
図13参照)と同様に、格子模様34を構成している正六角形の中心線まわりにおいて、撓み方向が交互に逆向きになる姿勢で設けられている。溝204の円弧の半径rは例えば0.5mm程度である。
【0079】
本実施例においても、微小突起202が格子模様34を構成している正六角形の各辺に一つずつ配置されるとともに、撓み方向が交互に逆向きになる姿勢で設けられているため、撓み変形時に互いに干渉しないように微小突起202をできるだけ密に配置することにより、触感のばらつきを抑制しつつ、その微小突起202の弾性変形による所定のソフト感が確実に得られる一方、六角形を単位とした微小突起202の変形態様が全域で略同じになり、均質な触感が得られるなど、前記
図9の実施例と同様の作用効果が得られる。
【0080】
また、微小突起202に沿って溝204を設けるだけで良いため、多数の微小突起202および溝204を有する第2部材200を成形するための成形金型が簡単且つ安価に構成されて製造コストが節減されるとともに、溝204の幅や深さによって微小突起202の撓み易さをコントロールできるため、ソフト感の調整を容易且つ適切に行うことができる。
【0081】
図26は、上記
図24に対応する拡大平面図で、
図27は
図26における XXVII−XXVII 矢視部分の拡大縦断面図であり、この第2部材210は、前記第2部材200に比較して微小突起212の根元部分のコーナー形状が相違する。すなわち、本実施例では前記溝204を設ける代わりに、その溝204と反対側に板状部211から比較的大きな半径rで滑らかに湾曲するR部214が設けられており、幅方向(
図27の左右方向)のうちR部214が設けられた側の曲げ剛性が高くなり、その反対方向へ撓み変形し易くなる。
図26において細かい斜線を付した部分はR部214で、
図26および
図27の白抜き矢印は微小突起212の倒れ方向を表しており、
図24の実施例と同様に、格子模様34を構成している正六角形の中心線まわりにおいて、撓み方向が交互に逆向きになる姿勢で設けられている。R部214の半径rは例えば0.5mm程度である。
【0082】
本実施例においても、微小突起212をできるだけ密に配置することにより、触感のばらつきを抑制しつつ、その微小突起212の弾性変形による所定のソフト感が確実に得られる一方、六角形を単位とした微小突起212の変形態様が全域で略同じになり、均質な触感が得られるなど、前記
図24の実施例と同様の作用効果が得られる。また、微小突起212に沿ってR部214を設けるだけで良いため、多数の微小突起212およびR部214を有する第2部材210を成形するための成形金型が簡単且つ安価に構成されて製造コストが節減されるとともに、R部214の半径rの大きさによって微小突起212の撓み易さをコントロールできるため、ソフト感の調整を容易且つ適切に行うことができる。
【0083】
図28は、前記
図24に対応する拡大平面図で、
図29は
図28におけるXXIX−XXIX矢視部分の拡大縦断面図であり、この第2部材220は、前記第2部材200に比較して微小突起222の構成が相違する。すなわち、本実施例では前記溝204を設ける代わりに、前記微小突起20と同一形状の微小突起222が長手方向と平行な分割面を挟んで2分割され、高硬度部225および低硬度部227によって構成されており、幅方向(
図29の左右方向)のうち高硬度部225が設けられた側の曲げ剛性が高くなり、その反対の低硬度部227側へ撓み変形し易くなる。高硬度部225は、板状部221の主要部を構成する高硬度材料224にて一体に構成されており、低硬度部227は、その高硬度材料224の表面側に積層された低硬度材料226と一体に構成されており、例えばインサート成形によって一体的に成形される。
図28において細かい斜線を付した部分は高硬度部225で、
図28および
図29の白抜き矢印は微小突起222の倒れ方向を表しており、
図24の実施例と同様に、格子模様34を構成している正六角形の中心線まわりにおいて、撓み方向が交互に逆向きになる姿勢で設けられている。
【0084】
上記高硬度材料224および低硬度材料226の硬度は相対的なもので、所定の曲げ剛性が得られるように適宜定められ、例えばJIS K6253に従って測定されるデュロA硬度において、高硬度材料224は80程度、低硬度材料226は40程度が適当であり、インサート成形により相互に融着する合成樹脂材料が好適に選択される。
【0085】
本実施例においても、撓み変形時に互いに干渉しないように微小突起222をできるだけ密に配置することにより、触感のばらつきを抑制しつつ、その微小突起222の弾性変形による所定のソフト感が確実に得られる一方、六角形を単位とした微小突起222の変形態様が全域で略同じになり、均質な触感が得られるなど、前記
図24の実施例と同様の作用効果が得られる。また、高硬度材料224、低硬度材料226の材質や分割面の位置を変更することにより微小突起222の撓み易さをコントロールできるため、ソフト感の調整を容易且つ適切に行うことができる。
【0086】
図30の第2部材230は、前記
図9の表層部材40に比較して、板状部231に設けられる微小突起232の配置姿勢が相違する。微小突起232は、前記微小突起42と同一形状であるが、格子模様34の六角形の辺に対して所定角度(例えば10°〜30°程度の範囲内で実施例では約20°)だけ傾斜している。
図9のように六角形の辺と平行に微小突起42を配置した場合、圧縮荷重によって微小突起42が撓み変形させられると、
図31の(a) に細かい斜線で示すように六角形の中心に向かって倒れるため、干渉を避けるためにその高さ寸法が制約される。これに対し、
図30に示すように傾斜させると、微小突起232の倒れ方向が、
図31の(b) に細かい斜線で示すように互いにずれるため、互いに干渉し難くなり、その分だけ高さ寸法を大きくしてソフト感を向上させることができる。前記微小突起202、212、222等の他の実施例の微小突起についても、このように傾斜配置することができる。
【0087】
図32は、
図9の微小突起42において高さHが2.5mmの場合と高さHが3.5mmの場合について、前記
図14に示す試験方法に従って反力−ストローク特性を調べた結果を示す図である。この
図32から明らかなように、高さHが3.5mmの場合には2.5mmに比較して反力が小さくなり、優れたソフト感が得られる。なお、高さH以外の各部の寸法P、L、d、tや角度α、βは同じである。
【0088】
図33は、アスペクト比を変更してソフト感を向上させる場合の例で、(a) は
図6の実施例の微小突起20の平面図で、(b) の微小突起240は、長さ寸法Lを同じに維持したまま幅寸法を半分のd/2にした。この場合、幅寸法が半分であるため、その幅方向へ一層撓み変形し易くなり、ソフト感が向上する。微小突起42等の他の微小突起についても、アスペクト比を変更してソフト感を調整することができる。
【0089】
図34の第2部材250は、板状部252に対して垂直な方向から見た平面視の形状が台形状の微小突起254を有する場合で、(a) は前記
図24に対応する拡大平面図、(b) は一つの微小突起254を拡大して示した平面図である。また、
図35は
図34の(b) におけるXXXV−XXXV矢視部分の縦断面図で、
図36は複数の微小突起254の斜視図である。この微小突起254は、台形状の長辺(下底)側に大傾斜面256が設けられて、反対側すなわち
図34(b) および
図35における左方向である短辺(上底)側への曲げ剛性が低くされ、その短辺側へ撓み変形し易くなっている。
図34の(b) および
図36において細かい斜線を付した部分は大傾斜面256で、
図34〜
図36の白抜き矢印は微小突起254の倒れ方向を表しており、
図24の実施例と同様に、格子模様34を構成している正六角形の中心線まわりにおいて、撓み方向が交互に逆向きになる姿勢で設けられている。台形状の寸法a、b、cはそれぞれ約1.8mm、0.9mm、1.8mmで、角部のコーナーRは約0.3mmである。また、高さH≒2.5mm、板厚t≒1.5mm、
図35の縦断面における両側の側壁の傾斜角度α≒10°、大傾斜面256の傾斜角度γ≒45°である。
【0090】
本実施例においても、微小突起254が格子模様34を構成している正六角形の各辺に一つずつ配置されるとともに、撓み方向が交互に逆向きになる姿勢で設けられているため、撓み変形時に互いに干渉しないように微小突起254をできるだけ密に配置することにより、触感のばらつきを抑制しつつ、その微小突起254の弾性変形による所定のソフト感が確実に得られる一方、六角形を単位とした微小突起254の変形態様が全域で略同じになり、均質な触感が得られるなど、前記
図9の実施例と同様の作用効果が得られる。
【0091】
一方、このように微小突起254の平面視の形状を台形状とした場合、正方形の場合に比較して曲げ剛性が低くなり、高いソフト感が得られるようになる。その場合、短辺の寸法bを長辺の寸法aの2/3以下にすることが望ましい。また、台形状の長辺側に大傾斜面256を設けたため、短辺側に大傾斜面を設ける場合に比較して高いソフト感が得られる。
【0092】
因に、上記実施例品(第2部材250)の他に、
図37〜
図40に示す〈変更例1〉、
図41〜
図43に示す〈変更例2〉、および
図44〜
図46に示す〈変更例3〉を用意し、前記
図14に示す試験方法に従って反力−ストローク特性を調べたところ、
図47に示す結果が得られた。
【0093】
図37〜
図40に示す〈変更例1〉の第2部材260は、板状部262に対して垂直な方向から見た平面視の形状が略正方形の微小突起264を有する場合で、
図37の(a) は前記
図24に対応する拡大平面図、(b) は一つの微小突起264を拡大して示した平面図である。
図38は
図37の(b) における XXXVIII−XXXVIII 矢視部分の縦断面図で、
図39は
図37の(b) における XXXIX−XXXIX 矢視部分の縦断面図、
図40は複数の微小突起264の斜視図である。この微小突起264の寸法a、bは何れも約1.8mmで、角部のコーナーRは約0.3mmである。また、高さH≒2.5mm、板厚t≒1.5mm、
図38の縦断面における両側の側壁の傾斜角度α≒10°、
図39の縦断面における両側の側壁の傾斜角度β≒5°である。この〈変更例1〉は、正方形の対角線方向へ撓み変形し難いとともに、傾斜角度αおよびβの相違から
図37(b) および
図38における左右方向へ比較的撓み変形し易く、曲げ剛性が軸まわりにおいて異方性を有する本発明の一実施例に相当する。
【0094】
図41〜
図43に示す〈変更例2〉の第2部材270は、板状部272に対して垂直な方向から見た平面視の形状が略正方形の微小突起274を有する場合で、
図41の(a) は前記
図24に対応する拡大平面図、(b) は一つの微小突起274を拡大して示した平面図である。
図42は
図41の(b) におけるXLII−XLII矢視部分の縦断面図で、
図43は
図41の(b) における XLIII−XLIII 矢視部分の縦断面図である。この微小突起274は、前記〈変更例1〉と略同じであるが、傾斜角度γの大傾斜面276が設けられ、その反対側すなわち
図41(b) および
図42における左方向への曲げ剛性が低くされ、その左方向へ撓み変形し易くなっている点が相違する。
図41の(b) において細かい斜線を付した部分は大傾斜面276で、
図41および
図42の白抜き矢印は微小突起274の倒れ方向を表しており、
図24の実施例と同様に、格子模様34を構成している正六角形の中心線まわりにおいて、撓み方向が交互に逆向きになる姿勢で設けられている。上記傾斜角度γは約45°で、それ以外の各部の寸法a、b、R、H、tや角度α、βは〈変更例1〉の微小突起264と同じである。この〈変更例2〉も、曲げ剛性が軸まわりにおいて異方性を有する本発明の一実施例に相当する。
【0095】
図44〜
図46に示す〈変更例3〉の第2部材280は、板状部282に対して垂直な方向から見た平面視の形状が台形状の微小突起284を有する場合で、
図44の(a) は前記
図24に対応する拡大平面図、(b) は一つの微小突起284を拡大して示した平面図である。
図45は
図44の(b) における XLV−XLV 矢視部分の縦断面図で、
図46は
図44の(b) におけるXLVI−XLVI矢視部分の縦断面図である。この微小突起284は、〈実施例品〉である第2部材250の微小突起254と略同じであるが、前記傾斜角度γの大傾斜面256が設けられず、
図45および
図46の縦断面が何れも中心線に対して対称形状を成している点が相違する。この場合でも、微小突起284は、台形状の短辺側である
図44(b) および
図45における左方向へ撓み変形し易い傾向があり、
図34の第2部材250と同様に、格子模様34を構成している正六角形の中心線まわりにおいて交互に逆向きになる姿勢で設けられている。各部の寸法a、b、c、R、H、tや角度αは、第2部材250の微小突起254と同じで、
図46の断面における両側の側壁の傾斜角度βは約5°である。β≒5°は、微小突起254も同じである。この〈変更例3〉も、曲げ剛性が軸まわりにおいて異方性を有する本発明の一実施例に相当する。
【0096】
図47の試験結果から明らかなように、
図34の〈実施例品〉、すなわち台形状で大傾斜面256を有する微小突起254が設けられた第2部材250によれば、正方形で大傾斜276を有する微小突起274が設けられた〈変更例2〉よりも反力(曲げ剛性)が低下し、優れたソフト感が得られる。また、台形状で大傾斜面を備えていない微小突起284が設けられた〈変更例3〉は、〈実施例品〉よりもソフト感が低いものの、〈変更例2〉よりも優れたソフト感が得られる。これ等の点から、平面視の形状を台形状にするだけでも、微小突起が撓み変形し易くなって反力が低下し、優れたソフト感が得られるようになると考えられる。〈実施例品〉と〈変更例3〉との反力の相違や、〈変更例2〉と〈変更例1〉との反力の相違は、大傾斜面256、276の有無によるもので、大傾斜面256、276が設けられることによって反力が低下し、ソフト感が向上することが分かる。
【0097】
図48の第2部材300は、板状部302に対して垂直な方向から見た平面視の形状が半円形状の微小突起304を有する場合で、(a) は前記
図24に対応する拡大平面図、(b) は一つの微小突起304を拡大して示した平面図である。また、
図49は
図48の(b) におけるXLIX−XLIX矢視部分の縦断面図で、
図50は複数の微小突起304の斜視図である。この微小突起304は、半円形状の直線部側に大傾斜面306が設けられて、反対側すなわち
図48(b) および
図49における左方向である円弧側への曲げ剛性が低くされ、その円弧側へ撓み変形し易くなっている。
図48の(b) および
図50において細かい斜線を付した部分は大傾斜面306で、
図48〜
図50の白抜き矢印は微小突起304の倒れ方向を表しており、
図24の実施例と同様に、格子模様34を構成している正六角形の中心線まわりにおいて、撓み方向が交互に逆向きになる姿勢で設けられている。半円形状の縦横寸法a、bは何れも約1.8mmで、半円弧の半径Rは約0.9mmである。また、高さH≒2.5mm、板厚t≒1.5mm、
図49の縦断面における大傾斜面306側すなわち直線部側の側壁の傾斜角度α1≒10°、反対の円弧側の傾斜角度α2≒5°、大傾斜面306の傾斜角度γ≒45°である。
【0098】
本実施例においても、微小突起304が格子模様34を構成している正六角形の各辺に一つずつ配置されるとともに、撓み方向が交互に逆向きになる姿勢で設けられているため、撓み変形時に互いに干渉しないように微小突起304をできるだけ密に配置することにより、触感のばらつきを抑制しつつ、その微小突起304の弾性変形による所定のソフト感が確実に得られる一方、六角形を単位とした微小突起304の変形態様が全域で略同じになり、均質な触感が得られるなど、前記
図9の実施例と同様の作用効果が得られる。
【0099】
一方、このように微小突起304の平面視の形状を半円形状とした場合、前記〈変更例2〉のような正方形の場合に比較して曲げ剛性が低くなり、高いソフト感が得られるようになる。また、半円形状の直線部側に大傾斜面306を設けたため、円弧側に大傾斜面を設ける場合に比較して高いソフト感が得られる。
【0100】
因に、上記実施例品(第2部材300)の他に、前記
図37〜
図40に示す〈変更例1〉、
図41〜
図43に示す〈変更例2〉、および
図51〜
図53に示す〈変更例4〉を用意し、前記
図14に示す試験方法に従って反力−ストローク特性を調べたところ、
図54に示す結果が得られた。
【0101】
図51〜
図53に示す〈変更例4〉の第2部材310は、板状部312に対して垂直な方向から見た平面視の形状が半円形の微小突起314を有する場合で、
図51の(a) は前記
図24に対応する拡大平面図、(b) は一つの微小突起314を拡大して示した平面図である。
図52は
図51の(b) における LII−LII 矢視部分の縦断面図で、
図53は複数の微小突起314の斜視図である。この微小突起314は、〈実施例品〉である第2部材300の微小突起304と略同じであるが、前記傾斜角度γの大傾斜面306が設けられず、
図52の縦断面における右側すなわち半円形状の直線部側の側壁が傾斜角度α1のまま先端部に達しており、先端に板状部312と平行な平坦面316が設けられている。この場合でも、微小突起314は、半円形状の円弧側である
図51(b) および
図52における左方向へ撓み変形し易い傾向があり、
図48の第2部材300と同様に、格子模様34を構成している正六角形の中心線まわりにおいて交互に逆向きになる姿勢で設けられている。各部の寸法a、b、R、H、tや傾斜角度α1、α2は、第2部材300の微小突起304と同じである。この〈変更例4〉も、曲げ剛性が軸まわりにおいて異方性を有する本発明の一実施例に相当する。
【0102】
図54の試験結果から明らかなように、
図48の〈実施例品〉、すなわち半円形状で大傾斜面306を有する微小突起304が設けられた第2部材300によれば、正方形で大傾斜276を有する微小突起274が設けられた〈変更例2〉よりも反力(曲げ剛性)が低下し、優れたソフト感が得られる。このことから、平面視の形状を半円形状にするだけでも、微小突起が撓み変形し易くなって反力が低下し、優れたソフト感が得られるようになると考えられる。〈実施例品〉と〈変更例4〉との反力の相違や、〈変更例2〉と〈変更例1〉との反力の相違は、大傾斜面276、306の有無によるもので、大傾斜面276、306が設けられることによって反力が低下し、ソフト感が向上することが分かる。〈変更例4〉の反力が〈変更例1〉よりも高いのは、〈変更例1〉は
図40から明らかなように微小突起264の先端が半円筒形状(かまぼこ型)で、基材との当接初期に基材と線接触させられるのに対し、〈変更例4〉は微小突起314の先端に平坦面316が設けられており、基材との当接初期から基材と面接触させられるため、倒れ難くなって反力が高くなったものと考えられる。
【0103】
図55の第2部材320は、板状部322に対して垂直な方向から見た平面視の形状が正方形の一辺を傾斜させた台形状の微小突起324を有する場合で、(a) は前記
図24に対応する拡大平面図、(b) は一つの微小突起324を拡大して示した平面図である。また、
図56は
図55の(b) における LVI−LVI 矢視部分の縦断面図で、
図57は複数の微小突起324の斜視図である。この微小突起324は、台形状の傾斜辺と反対側の側面に大傾斜面326が設けられて、その傾斜辺側すなわち
図55(b) および
図56における左方向への曲げ剛性が低くされ、その傾斜辺側へ撓み変形し易くなっている。
図55の(b) および
図57において細かい斜線を付した部分は大傾斜面326で、
図55〜
図57の白抜き矢印は微小突起324の倒れ方向を表しており、
図24の実施例と同様に、格子模様34を構成している正六角形の中心線まわりにおいて、撓み方向が交互に逆向きになる姿勢で設けられている。ここでは、台形状の傾斜辺が正六角形の各辺と平行になる姿勢で配置されている。台形状の各部の寸法a、b、cはそれぞれ約1.8mm、1.35mm、1.8mmである。また、高さH≒2.5mm、板厚t≒1.5mm、
図56の縦断面における両側の側壁の傾斜角度α≒10°、大傾斜面326の傾斜角度γ≒45°である。
【0104】
本実施例においても、微小突起324が格子模様34を構成している正六角形の各辺に一つずつ配置されるとともに、撓み方向が交互に逆向きになる姿勢で設けられているため、撓み変形時に互いに干渉しないように微小突起324をできるだけ密に配置することにより、触感のばらつきを抑制しつつ、その微小突起324の弾性変形による所定のソフト感が確実に得られる一方、六角形を単位とした微小突起324の変形態様が全域で略同じになり、均質な触感が得られるなど、前記
図9の実施例と同様の作用効果が得られる。
【0105】
一方、このように微小突起324の平面視の形状を台形状とした場合、前記〈変更例2〉のような正方形の場合に比較して曲げ剛性が低くなり、高いソフト感が得られるようになる。また、台形状の傾斜辺に対して垂直方向へ撓み変形し易くなるため、その傾斜辺の傾斜角度を調整することによりソフト感の向上と合わせて倒れ方向を容易にコントロールすることができる。
【0106】
図58は、前記
図9に比較して微小突起42の配置パターンが異なる場合で、多数の微小突起42を正方形の格子模様110を構成するように配置した場合である。微小突起42は、格子模様110を構成している正方形の各辺に一つずつ長手方向が各辺と平行になる姿勢で配置されるとともに、その正方形の中心線まわりにおいて撓み方向が交互に逆向きになる姿勢で設けられている。これにより、一定方向への撓み変形に拘らず正方形を単位とした微小突起42の変形態様が全域で略同じになり、均質な触感が得られるなど、
図9の実施例と同様の効果が得られる。なお、前記微小突起20等の他の微小突起についても、このように正方形の格子模様110を構成するように配置することができる。また、この実施例では、正方形の格子模様110について説明したが、菱形や長方形、平行四辺形の格子模様となるように微小突起42を配置することもできる。
【0107】
図59は、前記
図6に比較して微小突起20の配置が異なる場合で、多数の微小突起20を正三角形の格子模様112を構成するように配置した場合である。微小突起20は、格子模様112を構成している正三角形の各辺に一つずつ長手方向が各辺と平行になる姿勢で配置される。この場合も、格子模様112を構成するように設けられる多数の微小突起20は、その長手方向の向きが所定角度ずつ変化しているため、互いに支え合うことによって適度な剛性感が得られるようになり、その微小突起20の弾性変形によるソフト感と相まって優れた触感を設定することができるなど、前記
図6の実施例と同様の作用効果が得られる。なお、前記微小突起42等の他の微小突起についても、このように正三角形の格子模様112を構成するように配置することができる。
【0108】
上記
図59の格子模様112は、正六角形114が連続して繰り返す格子模様に書き換えることができる。その場合は、正六角形114の各辺に対して長手方向が直交になる姿勢で微小突起20が配置されることになる。前記
図6(b) の格子模様34についても、正三角形が連続して繰り返す格子模様に書き換えることができる。また、上記
図58の格子模様110についても、正方向の格子のピッチをそれぞれ半ピッチずらすことにより、正方向の各辺に長手方向が各辺と直交になる姿勢で微小突起42が配置される正方向の格子模様に書き換えることができる。
【0109】
図60の格子模様120は、四角形(図面では正方形)122、六角形(図面では正六角形)124、および八角形126の3種類の多角形を組み合わせたもので、このような態様も本発明の一実施態様である。この格子模様120は、3種類の多角形が同じパターンで規則的に繰り返しているが、複数種類の多角形が不規則に組み合わされる格子模様を構成するように微小突起20を設けることもできる。なお、微小突起20の代わりに前記微小突起42等の他の微小突起を用いることもできる。
【0110】
図61は、前記
図1における LXI−LXI 矢視断面に相当する断面図で、前記オーナメント10の基材14には一対の導入口130および排出口132が設けられている。そして、車両の空調装置134によって温度調節された熱媒体(空気)が矢印(→)で示すように配管136から導入口130を経てオーナメント10の空間24内に供給されるとともに、排出口132から排出されて配管138を経て車室内へ循環させられるようになっている。配管136は、インストルメントパネル140に設けられた車体側の配管142に対して接続離間可能とされており、ドアが閉じられた状態では図に示すようにシール部材を介して気密に接続される。この実施例では、表層部材16の端末部26は、基材14の外周縁部に接着剤等により気密に固着しておくことが望ましい。
【0111】
本実施例では、空調装置134によって温度調節された熱媒体(空気)がオーナメント10の空間24内に供給されるため、表層部材16の触感を一層向上させることができる。なお、表層部材40を備えているものなど他のオーナメントについても、同様に構成できる。
【0112】
上記
図61では、空間24内に熱媒体が供給されるが、空間24内に予め圧縮エア等の圧縮ガスを充填して密閉しておくだけでも良い。表層部材16は、その圧縮ガスのガス圧に応じて膨出するように付勢されるため、微小突起20以外の部分にも適度な剛性感を付与することが可能で触感を一層向上させることができる。他のオーナメントについても同様に構成できる。なお、前記各実施例では、空間24、74内が何れも大気圧で、気密に密閉する必要もない。
【0113】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。