(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された火葬炉の制御方法に用いられているバーナは、上下方向にしか移動しないので、バーナが設置された位置から離れた場所まで火炎を到達させることができない。そのため、作業者が遺体をバーナから放射される火炎が届く位置まで移動させることが必要になる。その結果、遺体の火葬に時間がかかってしまう。また、バーナから放射される火炎を強くすることによってバーナが設置された位置から離れた場所まで火炎が届くようにした場合、多くの燃料を消費することになり、コストがかかってしまう。こうした問題点は、上下左右にしかノズルを動かすことができない特許文献2に記載されているバーナ装置にも存在する。
【0011】
一方、特許文献3に記載のバーナの挿入位置を制御する装置は、バーナをその軸方向に移動させることができるように構成されているので、バーナの先端をバーナが設置されている位置から離れた場所まで移動させることができる。
【0012】
しかし、このバーナの挿入位置を制御する装置が備えるバーナは、溶錬用電気炉に使用されるバーナであり、火葬炉に用いるバーナではないので、そのまま火葬用バーナとして使用することはできない。また、このバーナの挿入位置を制御する装置は、バーナを上下方向に揺動する機構及びバーナをその軸方向に移動させるための機構しか備えていないので、バーナを左右方向に移動させることができない。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、バーナの先端を所望の位置まで自由に移動させることができる火葬用バーナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明に係る火葬用バーナ装置は、火葬炉の壁面からこの火葬炉の内部に先端側が挿入されるバーナ本体と、前記火葬炉の壁面に取り付けられ、前記バーナ本体を保持する保持機構と、を備え、前記保持機構は、この保持機構を中心にして前記バーナ本体を上下方向及び左右方向に回転可能に保持すると共に、このバーナ本体が延びる軸方向に前記バーナ本体をスライド可能に保持しており、前記バーナ本体を、前記保持機構を中心にして上下方向に回転移動させる上下駆動手段と、前記保持機構を中心にして左右方向に回転移動させる左右駆動手段と、前記軸方向に移動させるスライド駆動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、火葬用バーナ装置が備えるバーナ本体をその軸方向に移動させること、上下方向に回転移動させること及び左右方向に回転移動させることができるので、バーナ本体の先端を所望の位置に自由に移動させることができる。
【0016】
なお、本発明に係る火葬用バーナ装置において、前記保持機構を、前記バーナ本体を前記軸方向にスライド可能に保持する第1保持部と、この第1保持部を上下方向に回転可能に保持すると共に、当該保持機構の内部で左右方向に回転可能に構成された第2保持部とで構成するとよい。
【0017】
本発明に係る火葬用バーナ装置において、前記保持機構は、前記バーナ本体の先端側にシール部を備え、このシール部は、前記バーナ本体が上下方向に回転移動することに伴って摺動する前記第1保持部の摺動面をシールする第1シールと、前記バーナ本体が左右方向に回転移動することに伴って摺動する前記第2保持部の摺動面をシールする第2シールと、前記バーナ本体の外周面と前記第1保持部との間をシールする第3シールとを備えていることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、シール部が保持機構の各摺動面に異物が混入することを防止する。具体的には、第1シールが第1保持部の摺動面をシールするので、第1保持部の摺動面に異物が侵入することを防止する。また、第2シールが第2保持部の摺動面をシールするので第2保持部の摺動面に異物が侵入することを防止する。さらに、第3シールがバーナ本体と第1保持部との間をシールするので、バーナ本体と第1保持部との間に異物が侵入することを防止する。
【0019】
本発明に係る火葬用バーナ装置において、前記上下駆動手段、前記左右駆動手段及び前記スライド駆動手段は、サーボモータと、このサーボモータと前記バーナ本体とを直接的又は間接的に連結するリンク機構をそれぞれ備え、前記スライド駆動手段が備える前記リンク機構は、前記サーボモータの回転運動を前記バーナ本体の前記軸方向への往復直線運動に変換するポースリエのリンク機構であることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、バーナ本体の移動を上下駆動手段、左右駆動手段及びスライド駆動手段がそれぞれ備えるサーボモータが行うので、高精度でかつ迅速な制御を行うことができる。また、スライド駆動手段はポースリエのリンク機構を備えているので、サーボモータの回転運動を簡素かつ低廉な機構によってバーナ本体の直線運度に確実に変換することができる。
【0021】
この場合において、前記バーナ本体に、このバーナ本体を前記軸方向にスライド可能に保持するフレームと、このバーナ本体に固定されたホルダとを設け、前記スライド駆動手段の前記サーボモータを前記フレームに取り付け、前記ポースリエのリンク機構で前記サーボモータと前記ホルダとを連結するように構成するとよい。
【0022】
本発明に係る火葬用バーナ装置において、前記バーナ本体を前記フレームに対して支持することによって、前記バーナ本体の上下方向の回転移動を補助するダンパーを備えていることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、ダンパーがバーナ本体の上下方向の回転移動を補助するので、バーナ本体の先端側を容易に下側に回転移動させることができる。
【0024】
本発明に係る火葬用バーナ装置において、前記上下駆動手段及び前記左右駆動手段は、前記バーナ本体が向けられている角度を検知する角度検知手段と、この角度検知手段によって検知された角度を記憶する角度記憶手段とを備えていると共に、前記スライド駆動手段は、前記バーナ本体の前記軸方向の位置を検知する位置検知手段と、この位置検知手段によって検知された位置を記憶する位置記憶手段とを備えていることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、バーナ本体の上下方向の回転角度、バーナ本体の左右方向の回転角度及びバーナ本体の軸方向の移動位置を検知しながらバーナ本体の移動を制御することができ、バーナ本体の先端を所定の位置に迅速かつ正確に移動させることができる。また、バーナ本体の上下方向の回転角度、バーナ本体の左右方向の回転角度及びバーナ本体の軸方向の移動位置を記憶させることができるので、当該火葬用バーナ装置が故障したような場合でも、復旧後に再び元の位置から火葬を続けることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る火葬用バーナ装置によれば、火葬用バーナ装置が備えるバーナ本体をその軸方向に移動させること、上下方向に回転移動させること及び左右方向に回転移動させることができるので、バーナ本体の先端を所望の位置に自由に移動させることができる。その結果、棺桶の全体に火炎を届かせることでき、効率的に火葬を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0029】
最初に、本発明の火葬用バーナ装置1について説明する前に、
図1を参照して火葬用バーナ装置1が使用される火葬システムの一例を説明する。
【0030】
図1は本発明の火葬用バーナ装置1が使用される火葬システムの構成図を示している。この火葬システムは、棺桶151を載置するお別れ台240と、火葬用バーナ装置1を用いて遺体や副葬品、棺桶151などの燃焼を行う火葬炉を構成する主燃炉200と、主燃炉200からの排ガスを完全燃焼させるための再燃炉210と、前室220の内部に設けられ、棺桶151をお別れ台240の位置から主燃炉200に自動で納棺可能とする自動納棺装置230とを備えている。
【0031】
この火葬システムは、バイナリー発電システム270を備えており、再燃炉210とバイナリー発電システム270とが共通煙道261及び排気ダクト263によって連絡されている。主燃炉200から流出した排ガスは、再燃炉210、共通煙道261及び排気ダクト263を通って、バイナリー発電システム270に導かれる。このバイナリー発電システム270は、図示しない排ガス/温水熱交換器を備えており、排ガスと冷媒との間で熱交換を行っている。また、火葬システムは、排ガス補助冷却装置兼非常排気ダクト262を備えている。この排ガス補助冷却装置兼非常排気ダクト262は、共通煙道261から排出される排ガスを冷却すると共に、当該火葬システムに異常な燃焼などが生じた場合に備えて排ガスを外気に排出させている。
【0032】
火葬システムは、さらに、バイナリー発電システム270に接続された熱風回収熱交換器300と、排ガスの温度を下げるため吸気口310を介して熱風回収熱交換器300に接続された電気集塵機320と、電気集塵機320に接続された触媒装置330とを備えている。
【0033】
熱風回収熱交換器300は、熱風を主燃炉200に送る装置である。この熱風回収熱交換器300は、熱風回収路360によって主燃炉200に連絡されている。バイナリー発電システム270から排出された排ガスは熱風回収熱交換器300に流入し、熱風回収熱交換器300に流入した排ガスは、空気と熱交換する。そして、排気ガスにより熱せられた熱風が熱風回収路360を通って主燃炉200に導かれる。この熱風が熱風回収路360を通って主燃炉200に導かれる構成は、主燃炉200の燃焼効率を高めると共に、燃料の節減と燃焼時間の短縮させている。
【0034】
電気集塵機320は、排ガスに含まれるダスト除去する装置である。熱風回収熱交換器300から流出した排ガスは、排ガスの温度を下げるため吸気口310から取り入れた外気とともに電気集塵機320に流入し、ここで排ガス中に含まれるダストが除去される。次に電気集塵機320から流出した排ガスは触媒装置330に送られる。
【0035】
触媒装置330は、送り込まれた排ガス中に含まれる窒素酸化物、臭気成分、ポリ塩素化ジベンゾダイオキシンやポリ塩素化ジベンゾフラン等のダイオキシン類を除去している。そして、触媒装置330から流出した排出ガスは、排風機340により吸引され、排気筒350を介して大気中に排出される。
【0036】
以上のように、この火葬システムは、主燃炉200で生じた大量のダスト及びダイオキシン類などの有害物質を除去しクリーンな空気に再生して大気中に排気している。また、排ガスが有する高温の熱エネルギーを、バイナリー発電システム270を用いて発電し、発電した電力を火葬システムを構成する各装置に供給することにより、各装置で必要とする電力の一部又は全てをまかなうことが可能となり、火葬システム全体としての省エネルギー化を大幅に向上させている。
【0037】
[火葬用バーナ装置]
本発明に係る火葬用バーナ装置1は、こうした火葬システムを構成する主燃炉200に用いられる。
図2及び
図3は、本発明の一実施形態に係る火葬用バーナ装置1を示している。
【0038】
この火葬用バーナ装置1は、火葬炉である主燃炉200の壁面201に設置されて用いられるものである。火葬用バーナ装置1は、主燃炉200の壁面201からこの主燃炉200の内部に先端側が挿入されるバーナ本体10と、主燃炉200の壁面201に取り付けられ、バーナ本体10を保持する保持機構20と、を備えている。保持機構20は、ブラケット52,53等によって主燃炉200の壁面201の外側に取り付けられている。
【0039】
保持機構20は、この保持機構20を中心にしてバーナ本体10を上下方向及び左右方向に回転可能に保持すると共に、このバーナ本体10が延びる軸方向にバーナ本体10をスライド可能に保持している。また、火葬用バーナ装置1は、バーナ本体10を、保持機構20を中心にして上下方向に回転移動させる上下駆動手段と、保持機構20を中心にして左右方向に回転移動させる左右駆動手段と、バーナ本体10の軸方向に移動させるスライド駆動手段と、を備えている。以下、火葬用バーナ装置1を構成している各構成について詳細に説明する。
【0040】
〈バーナ本体〉
バーナ本体10は、細長い円筒状に形成されており、その軸方向の一端側をなす先端側が火炎を放射する燃焼部12であり、軸方向の他端側をなす後端側がバーナヘッド13である。燃焼部12及びバーナヘッド13の外径は、これらの間の部分11の外径よりもやや大きく形成されている。このバーナ本体10は、燃焼部12の内部に図示しない点火プラグを備えている。また、バーナ本体10は、バーナヘッド13に1つのガス流入部17と2つのエア流入部15,16とを備えている。ガス流入部17は、燃料ガスをバーナヘッド13を介してバーナ本体10に流入させる部位である。2つのエア流入部15,16のうち1つのエア流入部15は、燃料ガスの燃焼に必要なエアをバーナヘッド13を介してバーナ本体10に流入させるための部位であり、もう1つのエア流入部16は、バーナヘッド13を介してバーナ本体10にパージエアを流入させる部位である。
【0041】
バーナ本体10は、ガス流入部17からバーナヘッド13に流入された燃料ガスと、エア流入部15からバーナヘッド13に流入されたエアとを、バーナヘッド13から別々にバーナ本体10を流してバーナ本体10の先端側に設けられた燃焼部12まで運ぶ構造になっている。このバーナ本体10は、燃焼部12まで運ばれた燃料ガスと燃焼部12まで運ばれたエアとを燃焼部12で混合し、点火プラグによって点火して燃料ガスを燃焼するように構成されている。ただし、ガス流入部17から流入された燃料ガスとエア流入部15から流入されたエアとを混合して点火しただけでは、バーナ本体10の先端から火炎を放射させることができない。そのため、このバーナ本体10は、エア流入部16から流入された高圧のパージエアをバーナヘッド13からバーナ本体10の先端側に設けられた燃焼部12に向けて流し、パージエアの勢いを利用してバーナ本体10の先端から強い火炎を放射させている。
【0042】
こうしたバーナ本体10は磨きステンレス等が使用されており、その外周面は、凹凸のない滑らかな鏡面になっている。
【0043】
〈保持機構〉
保持機構20は、主燃炉200の壁面201に設置され、かつ、バーナ本体10を保持している。この保持機構20は、
図4及び
図5に示すように、バーナ本体10をその軸方向にスライド可能に保持する第1保持部21(
図5参照)と、この第1保持部21を上下方向に回転可能に保持すると共に、当該保持機構20の内部で左右方向に回転可能に構成された第2保持部22(
図4参照)とから構成されている。
【0044】
第1保持部21は、矢印の形のように形成されており、直方体状に形成された本体部21bと、本体部21bの一端側に形成された摺動部21aとから構成されている。なお、摺動部21aは、バーナ本体10の先端側に形成されている。第1保持部21は、その中心に穴を備えており、バーナ本体10をこの穴に挿入させてバーナ本体10を保持している。バーナ本体10の外周面と第1保持部21に形成された穴との間には、適度なクリアランスが形成されていて、第1保持部21は、バーナ本体10をその軸方向に往復移動させることができるようにバーナ本体10を保持している。摺動部21aの前面の中央部分は、平坦に形成されている。穴は、この中央部分に設けられている。摺動部21aの前面の中央部分よりも上側の部分と下側の部分とは、上下方向に湾曲する円弧状の曲面からなる摺動面になっている。この曲面に形成された摺動面が第2保持部22に対して円滑に摺動することによって、バーナ本体10を上下方向に回転移動させている。なお、ここでいう前面とは、バーナ本体10の先端側の面である。
【0045】
第2保持部22は、直方体状に形成されており、その内側に第1保持部21を保持している。第2保持部22の内面のうち、上下の面が第1保持部21を上下方向に回転させることができるように円弧状に形成され、左右の面が平坦に形成されている。一方、第2保持部22の外面のうち、左右両側の側面は、左右に湾曲する円弧状の曲面からなる摺動面22aになっている。上下の外面は平坦に形成されている。第2保持部22は、左右両側の摺動面22aが保持機構20の図示しないハウジングに対して円滑に摺動することによって、保持機構20の内部で保持機構20自体に対して左右方向に回転する。
【0046】
こうした保持機構20は、バーナ本体10の先端側にシール部を備えている。このシール部は、バーナ本体10が上下方向に回転移動することに伴って摺動する第1保持部21の摺動面をシールする第1シール31と、バーナ本体10が左右方向に回転移動することに伴って摺動する第2保持部22の摺動面をシールする第2シール32と、バーナ本体10の外周面と第1保持部21との間をシールする第3シール33とから構成されている。
【0047】
第1シール31は、長方形の輪郭に沿うように形成されたガスケットである。この第1シール31は、第2保持部22の前面に取り付けられており、第1シール31の内周部が第1保持部21の摺動面と摺動することによって、第1保持部21の摺動面と第2保持部22との間をシールしている。第2シール32部も、長方形の輪郭に沿うように形成されたガスケットである。この第2保持部22の外側に設けられており、第2シール32の内周部が第2保持部22の摺動面と摺動することによって、第2保持部22の摺動面をシールしている。第3シール33は、リング状に形成されたワイヤーブラシクリーナである。この第3シール33は、第1保持部21の前面のうち、平坦に形成された部分に取り付けられている。第3シール33の内周部は、バーナ本体10の外周と摺動しており、バーナ本体10と第1保持部21との間をシールしている。前述したように、バーナ本体10は、磨きステンレス等によって形成されており、外周面が凹凸のない滑らかな面であるので、バーナ本体10は、ワイヤーブラシクリーナによって確実にシールされる。
【0048】
こうした第1シール31、第2シール32及び第3シール33は、保持機構20の内部に異物が侵入することを防止するだけでなく、各摺動部21a部分に給脂することを不要にしている。なお、第1シール31、第2シール32及び第3シール33は、主燃炉200の内部から交換することができるようになっている。
【0049】
〈駆動手段〉
次に、バーナ本体10を移動するための駆動手段について説明する。保持機構20に保持されているバーナ本体10は、保持機構20を中心にしてバーナ本体10を上下方向に回転移動させる上下駆動手段と、保持機構20を中心にしてバーナ本体10を左右方向に回転移動させる左右駆動手段と、バーナ本体10をその軸方向に移動させるスライド駆動手段とによって駆動される。上下駆動手段、左右駆動手段及びスライド駆動手段は、サーボモータ40,60,70と、このサーボモータ40,60,70とバーナ本体10とを直接的又は間接的に連結するリンク機構41,46,65,75をそれぞれ備えている。
【0050】
(スライド駆動手段)
スライド駆動手段は、サーボモータ40と、サーボモータ40の駆動力をバーナ本体10に伝達させる2つのリンク機構41,46とから構成されている。火葬用バーナ装置1は、バーナ本体10をその軸方向にスライド可能に保持するフレーム50と、バーナ本体10に固定されたホルダ51とを備えている。フレーム50は、保持機構20に対して、保持機構20よりもバーナ本体10のバーナヘッド13側にやや距離を空けた位置で、バーナ本体10の下側に延びるようにして設けられている。ホルダ51は、バーナ本体10のバーナヘッド13よりもややバーナ本体10の先端側の位置でバーナ本体10に取り付けられている。スライド駆動手段のサーボモータ40は、フレーム50の下部に取り付けられている。回転駆動をバーナ本体10に伝達させる2つのリンク機構41,46は、サーボモータ40とホルダ51とを連結している。
【0051】
2つのリンク機構41,46のうち1つのリンク機構41は、回転運動を直線往復運動に変換するポースリエのリンク機構41であり、もう1つのリンク機構46は、サーボモータ40の回転駆動をポースリエのリンク機構41に伝達するためのものである。
【0052】
リンク機構46は2本のリンク47,48及びリンク47,48を相互に回転可能に連結するピンによって構成されている。リンク47の一端は、サーボモータ40の回転軸に連結されており、サーボモータ40の回転に伴ってサーボモータ40の回転軸を中心にして回転するように構成されている。リンク48の一端はポースリエのリンク機構41を構成しているリンク42同士を連結しているA点にピンで連結されている。リンク48の他端とリンク47の他端とは、ピンによって相互に回転することができるように連結されている。
【0053】
ポースリエのリンク機構41は、回転運動を直線状の往復運動に変換するためのリンク機構であり、バーナ本体10に固定されたホルダ51とフレーム50とを連結すると共に、リンク機構46に連結されている。
【0054】
こうしたスライド駆動手段によれば、
図6に示すように、バーナ本体10は、その軸方向に移動される。この際、バーナ本体10は、バーナ本体10から放射される火炎が主燃炉の内部に搬入された棺桶150,151と遺体全体に届く範囲を移動するように構成しても良い。すなわち、当該火葬用バーナ装置1が設けられた位置に最も近い棺桶150,151の端部に対し火炎を放射して棺桶150,151を燃焼させ、次に当該火葬用バーナ装置1に対して遺体の最も遠い箇所に火炎が届くように、バーナ本体10の先端をバーナ本体10の軸に沿ってスライド可能となるように構成する。なお、
図6に示されている棺桶151は、通常の大きさの棺桶であり、棺桶150は、棺桶151よりもやや大きく形成された棺桶である。
【0055】
なお、火葬用バーナ装置1は、スライド駆動手段を構成している2つのリンク機構41,46の左右両側に安全カバー101を備えていると共に、ポースリエのリンク機構41の後ろ側に安全カバー102を備えている。火葬用バーナ装置1のリンク機構41,46は、こうした安全カバー101,102によって周囲が囲まれているので、作業者は安全にバーナ本体10の移動作業を行うことができる。
【0056】
(ポースリエのリンク機構による効果)
上述したように、本発明による火葬用バーナ装置1は、ポースリエのリンク機構を実装することが大きな特徴の一つであるが、このポースリエのリンク機構を用いることにより、火葬バーナ装置1全体をコンパクトにすることが可能であり、設置面積が限られる都市型の火葬システムを実現するとともに、作業空間を十分確保することにより、作業性の改善を図ることができる。
【0057】
次に、ポースリエのリンク機構を用いることによる本発明の火葬用バーナ装置1の特徴について具体的に説明する。本発明による火葬バーナ装置1は、バーナ本体10の軸方向に、バーナヘッド13、バーナ本体10、保持機構20、燃焼部12が配列されており、スライド駆動手段と上下駆動手段は、バーナ本体10の下側にコンパクトに配置される。この構成を用いたことにより、バーナヘッド13の手前に駆動系は存在しなくなり、バーナヘッド13の手前側に立つ作業者の作業空間が十分確保されるという利点がある。すなわち、バーナヘッド13の手前に駆動系を設けた場合、作業者がバーナヘッド13の手前側に立って作業を行う際の作業空間が狭くなり作業性が著しく悪くなるが、本発明による火葬バーナ装置1は、ポースリエのリンク機構を用い、スライド駆動手段と上下駆動手段とをバーナ本体10の下部に設けることにより、この問題を解決している。
【0058】
また、バーナ本体10の側面側にも駆動系は存在しないので、作業者がバーナ本体10の側面側に立って、壁面201に設けられた窓から主燃炉200の内部を容易に観察することができる。
【0059】
またポースリエのリンク機構は、サーボモータ40により回転運動を並進運動に変換するので、サーボモータ40を制御することにより、バーナ本体10の軸方向の位置及び移動速度を任意に制御することが出来る。この為、サーボモータ40を駆動する駆動プログラムによりサーボモータ40を制御し、サーボモータ40の駆動力をリンク機構46,41を介してバーナ本体10に伝達することにより、火葬用バーナ装置1を自動運転することが可能である。
【0060】
(上下駆動手段)
上下駆動手段は、サーボモータ60とサーボモータ60の駆動力をバーナ本体10に伝達させるリンク機構65とから構成されている。サーボモータ60は、保持機構20の下側に取り付けられたブラケット61に固定されている。リンク機構65は、2本のリンク66,67により構成されており、サーボモータ60と、バーナ本体10をその軸方向にスライド可能に保持ししているフレーム50とを、連結している。リンク66の一端は、サーボモータ60の回転軸に接続されており、サーボモータ60の回転に伴ってサーボモータ60の回転軸を中心にして回転するように構成されている。一方、リンク67の一端は、バーナ本体10よりも下側でフレーム50に取り付けられている。リンク66の他端とリンク67の他端とは、ピンによって相互に回転可能に接続されている。なお、こうしたリンク機構65の左右両側は、安全カバー101によって覆われている。
【0061】
この上下駆動手段は、サーボモータ60の回転をリンク機構65及びフレーム50を介してバーナ本体10に伝達することによって、保持機構20を中心にしてバーナ本体10を上下方向に回転移動させている。
【0062】
この火葬用バーナ装置1は、
図3に示すように、バーナ本体10の上下方向の回転移動を補助するダンパーをさらに備えている。ダンパーは、例えば、ガススプリング80が使用される。ダンパーとして使用されるガススプリング80は、外殻をなす円筒状のシリンダチューブと、このシリンダチューブの内部に一端側が挿入され、シリンダチューブの軸方向に往復移動可能なシリンダロッドとから構成されている。シリンダチューブの内部には、窒素ガス等の不燃ガスが所定の圧力で封入されており、当該ガススプリング80が伸長する状態になるようにシリンダロッドをシリンダチューブの外側に付勢している。
【0063】
このガススプリング80は、バーナ本体10の左右両側にそれぞれ1つずつ設けられている。各ガススプリング80の一端側は、バーナ本体10から左右両側に張り出すブラケット55に取り付けられ、各ガススプリング80の他端側は、フレーム50に取り付けられている。なお、バーナ本体10から左右両側に張り出すブラケット55は、保持機構20とバーナヘッドの中間の位置に設けられており、ガススプリング80は、バーナ本体10の保持機構20とバーナヘッドの中間の位置をフレーム50に支持している。火葬用バーナ装置1は、ガススプリング80を備えることにより、サーボモータ60がバーナ本体10を上下方向の回転移動する際に、サーボモータ60の駆動を補助している。なお、ダンパーはガススプリングの他に、コイルばね等を使用してもよい。
【0064】
バーナ本体10は、サーボモータ60の駆動力が伝達されることによって上下方向に回転移動するが、バーナ本体10は重いため、サーボモータ60の駆動力だけでは、バーナ本体10を円滑に上下方向に回転移動させることが困難である。ガススプリング80は、バーナ本体10をフレーム50に対して支持することにより、バーナ本体10の保持機構20とバーナヘッドの中間の位置を常に上側に向けて付勢している。そのため、バーナ本体10の先端側を上側に向けるときには、バーナ本体10は、サーボモータ60の駆動力とガススプリング80が押し上げる力との相互作用によって迅速に移動する。
【0065】
こうした上下駆動手段によれば、火葬用バーナ装置1は、
図7に示すように、保持機構20を中心にして、バーナ本体10を上下方向に所定の範囲で回転移動させることができる。なお、
図7は、バーナ本体10がその軸方向の前方にスライド移動された状態でバーナ本体10を上下方向に回転移動した状態と、バーナ本体10がその軸方向の後方にスライド移動された状態でバーナ本体10を上下方向に回転移動した状態とを一緒に示している。バーナ本体10の先端は、主燃炉の内部に搬入された棺桶150,151の上部と下部とにバーナ本体10から放射される火炎が届く範囲を移動することができるように回転移動される。なお、棺桶150,151には、
図7に示すように、通常の大きさの棺桶151と、棺桶151よりもやや大きく形成された棺桶150とがある。当該火葬用バーナ装置1は、やや大きく形成された棺桶150の上部及び下部に火炎が届く範囲まで移動可能に構成されている。
【0066】
(左右駆動手段)
左右駆動手段は、サーボモータ70とサーボモータ70の駆動力をバーナ本体10に伝達させるリンク機構75とから構成されている。サーボモータ70は、保持機構20の上側に取り付けられたブラケット52に固定されている。リンク機構75は、3本のリンク76,77,78により構成されており、サーボモータ70とバーナ本体10とを連結している(
図8参照)。リンク76の一端は、サーボモータ70の回転軸に接続されており、サーボモータ70の回転に伴ってサーボモータ70の回転軸を中心にして回転するように構成されている。リンク78の一端は、バーナ本体10の上側に設けられた軸に取り付けられている。リンク76の他端とリンク78の他端は、もう1つのリンク77によって連結されている。なお、3つリンク76,77,78は、ピンによって相互に回転可能に接続されている。こうしたリンク機構75は、その周囲が安全カバー103によって覆われている。
【0067】
この左右駆動手段は、
図8に示すように、サーボモータ70の回転を、リンク機構75を介してバーナ本体10に伝達することによって、保持機構20を中心にしてバーナ本体10を左右方向に回転移動させている。なお、
図8は、バーナ本体10がその軸方向の前方にスライド移動された状態でバーナ本体10を左右方向に回転移動した状態と、バーナ本体10がその軸方向の後方にスライド移動された状態でバーナ本体10を左右方向に回転移動した状態とを一緒に示している。バーナ本体10は、バーナ本体10から放射された火炎が棺桶150,151の左右両側に届く範囲を移動することができるように構成されている。なお、上述したように、棺桶は、通常の大きさの棺桶151と、棺桶151よりもやや大きく形成された棺桶150がある。当該火葬用バーナ装置1は、棺桶150の左右両端まで火炎が届くようにバーナ本体10を移動させることができるように構成されている。
【0068】
この火葬用バーナ装置1は、スライド駆動手段、上下駆動手段及び左右駆動手段がそれぞれ独立して設けられているので、バーナ本体10の軸方向への移動、上下方向の回転移動及び左右方向の回転移動をそれぞれ独立して行わせることができる。そのため、スライド駆動手段、上下駆動手段及び左右駆動手段の中から選択された駆動手段を同時に駆動させることにより、バーナ本体10の先端を所望の位置に迅速に移動させることができる。そのため、火葬の対象である棺桶の温度が低い部位や未燃焼の部分にバーナ本体10の先端部を迅速に移動させ、棺桶の温度が低い部位や未燃焼の部分に向けてバーナ本体10から火炎を放射させることができる。
【0069】
さらに、この火葬用バーナ装置1は、スライド駆動手段、上下駆動手段及び左右駆動手段に、各サーボモータ40,60,70の回転量を検知するエンコーダ140,160,170をそれぞれ備えている(
図9参照)。スライド駆動手段に設けられたエンコーダ140は、サーボモータ40の回転量を検知することによって、バーナ本体10がその軸方向に移動した位置を検知する位置検知手段として機能する。上下駆動手段に設けられたエンコーダ160は、サーボモータ60の回転量を検知することによって、バーナ本体10の上下方向の回転角度を検知する角度検知手段として機能する。そして、左右駆動手段に設けられたエンコーダ170は、サーボモータ70の回転量を検知することによって、バーナ本体10の左右方向の回転角度を検知する角度検知手段として機能する。
【0070】
[火葬用バーナ装置の制御システム]
次に火葬用バーナ装置1を制御する火葬用バーナ装置1の制御システムの概要を説明する。
【0071】
図9は、火葬用バーナ装置1を制御するシステムの概要を示すブロック図である。この制御システムは、制御部120と、火葬用バーナ装置1の作業手順等を入力するための入力部121と、遺体や遺体が収容された棺桶などの被燃焼体の温度を検知する温度センサ123と、温度センサ123により検知された温度分布等を表示する表示部122とを備えている。また、この制御システムは、制御部120と、スライド駆動手段、上下駆動手段及び左右駆動手段がそれぞれ備えているサーボモータ40,60,70とが接続されており、サーボモータ40,60,70の駆動制御を行っている。この火葬用バーナ装置1は、スライド駆動手段、上下駆動手段及び左右駆動手段に、各サーボモータ40,60,70の回転量を検知するエンコーダ140,160,170をそれぞれ備えている。火葬用バーナ装置1は、エンコーダ140,160,170からの信号に基づいてバーナ本体10の軸方向の位置、上下方向の回転角度及び左右方向の回転角度等のバーナ本体10の状態に関する情報を記憶する記憶部124をさらに備えている。
【0072】
温度センサ123としては、例えば、被燃焼体の温度分布を測定することができるように赤外線カメラが使用される。また、エンコーダ140,160,170としては、例えば、アブソリュート方式のエンコーダが使用される。この制御システムは、温度センサ123が火葬の対象である棺桶151および遺体全体の温度を検知し、その温度分布を表示部122に表示する。制御部120は、検知された温度から温度の低い部分に火炎が放射されるように、スライド駆動手段、上下駆動手段及び左右駆動手段が備える各サーボモータ40,60,70に制御信号を出し、各サーボモータ40,60,70を駆動させる。この際、スライド駆動手段、上下駆動手段及び左右駆動手段にそれぞれ設けられたエンコーダ140,160,170からの信号に基づいて、バーナ本体10の軸方向の位置、バーナ本体10の上下方向の回転角度及びバーナ本体10の左右方向の回転角度を算出しながら各サーボモータ40,60,70を駆動させる。
【0073】
この制御システムは、こうした制御を行うことによって、スライド駆動手段、上下駆動手段及び左右駆動手段がバーナ本体10を移動させ、バーナ本体10から温度の低い部分に向けて火炎が放射されるように火葬用バーナ装置1の動作を制御する。ただし、バーナ本体10の移動は、作業者が表示部122に表示された温度分布を見て、作業者が入力部121から所定の命令を入力することによって、スライド駆動手段、上下駆動手段及び左右駆動手段が備える各サーボモータ40,60,70に制御信号を出し、各サーボモータ40,60,70を駆動させるようにすることもできる。
【0074】
具体的に説明すると、入力部121にタッチパネル式の制御パネル(図示せず)を設け、この制御パネルに水平方向にm本、垂直方向にn本の格子線を表示するように構成する。水平方向の格子線は、主燃炉200の平面図におけるX方向の位置を表し、垂直方向の格子線は、主燃炉200の平面図におけるY方向の位置を表わす。ここでX方向及びY方向は主燃炉200の外壁(図示せず)にそれぞれ沿った方向とするが、必ずしもこのように限定する必要はない。
【0075】
さらに、上記の格子領域の周辺に、pステップからなるストライプを表示させる。ここで各ステップは、バーナ本体10の軸方向(Z方向)におけるバーナ本体10の先端部の位置を表す。作業者はm×n個の格子点から指などをタッチパネルに触れることにより一つの格子点を選択し、同様な方法で、pステップから一つのステップを選択する。そして制御部120を用いて、火葬用バーナ装置1の動作を開始する。制御部120は、スライド駆動手段、上下駆動手段、及び左右駆動手段を同時並行的に又は直列的に順次駆動し、作業者が指定したX方向、Y方向、Z方向位置にバーナ本体10の先端部を移動させるように制御する。
【0076】
すなわち制御部120は、記憶部124に格納されたバーナ本体10の軸方向の位置、上下方向の回転角度、及び左右方向の回転角度の情報を参照してバーナ本体10の先端部における位置(x,y,z)を算出し、この位置(x,y,z)とタッチパネルから入力された位置情報(X0,Y0,Z0)とが一致するようにスライド駆動手段、上下駆動手段及び左右駆動手段をそれぞれ制御する。
【0077】
上述したように、バーナ本体10を作業者がレバーにより手動操作するのではなく、軽く指などでタッチパネルに触れることにより、バーナ本体10の先端部を主燃炉200の任意の位置に移動することが出来るので、バーナ本体10の操作性が各段に向上する。またタッチパネルを集中制御室などに設けることにより、作業者が複数のバーナ本体10を同時に制御することが可能となり、火葬用バーナ装置1の運転効率を向上することが可能である。
【0078】
なお上記において、バーナ本体10の先端部における位置(x,y,z)を指定するのに、タッチパネル式の制御パネル上に、x座標とy座標を示す各格子と、pステップからなるストライプを表示させるとして説明したが、各位置の座標を数値入力するようにしても良く、またタッチパネル式の代わりにマウスなどでバーナ本体10の先端部における位置を指定するようにしても良い。さらに、pステップからなるストライプをスライド式にして、一つの長方形の中の線を上下又は左右に移動させることにより、バーナ本体10の先端部におけるz座標を指定するようにしても良い。
【0079】
この火葬用バーナ装置1は、上述したエンコーダ140,160,170を使用することによって、各サーボモータ40,60,70の回転量を検知すると共に、その回転量を記憶部124に記憶させることによって、バーナ本体10の状態を検知すると共に、検知した状態を記憶させている。こうした構成は、例えば停電等により一時的に火葬が一時的に中断した場合や火葬用バーナ装置1が故障して火葬が一時的に中断した場合でも、バーナ本体10の状態が記憶部124に記憶されているので、その後に、バーナ本体10の状態を中断前の状態に移動させて、続きの作業を行うことができるようになっている。
【0080】
なお上記において、火葬作業が停電などにより一時停止した場合の再開作業として、バーナ本体10の状態を中断前の状態に移動させるとして説明したが、再開時にバーナ本体10を初期状態の位置に移動し、最初から火葬のシーケンスを自動、または半自動、若しくは手動の各操作方法により繰り返すように構成しても良い。このような作業シーケンスでは、作業中断までの作業シーケンスを繰り返すことになるため作業時間は余分にかかるが、異常状態に至る作業に関係無く、正常な作業シーケンスが完全に行われるため、安全かつ確実に火葬を実行することができる。
【0081】
なお、この制御システムは、上記の温度センサ123の他に主燃炉200にも図示しない温度センサを備えている。この温度センサは、主燃炉200内部の温度を測定しており、制御部120は、この温度センサが検知した温度に基づいて、主燃炉200内の温度が高くなったときにバーナ本体10から放射される火炎を弱め、温度が低くなったときに火炎を強めるように制御する。また、上記温度が高温設定温度(例えば、1000℃)に達すると、バーナ本体10から放射する火炎を自動停止して、上記温度が高温設定温度以上に上昇しないように制御し、上記温度が低温設定温度(例えば、950℃)に達すると、上記温度が低温設定温度以下に低下しないように、バーナ本体10から再び火炎を放射するように自動制御を行う。
【0082】
また、主燃炉200には、図示しない酸素濃度センサが設けられている。制御部120は、酸素濃度センサからの信号に基づいて、主燃炉200に供給される3次空気の量を増減させたり、バーナ本体10から放射される火炎の強さを調整したりする。次に表1を参照して具体的に説明する。表1に示すように、本発明による火葬システム(
図1)において、火葬は期間T1〜T5により順次行われる。各期間の酸素濃度(O2濃度)は、それぞれn1〜n4に設定され、主燃炉200の酸素濃度は設定された酸素濃度となるように、常時、酸素濃度センサからの信号を参照して制御される。ここで各酸素濃度は、n1>n2>n3>n4の関係にあり、初期段階では棺桶が効率的に燃焼するように酸素濃度を高くし、期間T2→T3→T4の順に酸素濃度が小さくなるように制御する。
【0084】
また、主燃炉200の酸素濃度が設定値(2〜5%)以下となると、主燃炉200内で不完全燃焼に伴う黒煙を発生する恐れがあり、この為、酸素濃度センサからの信号を常時モニタし、酸素濃度が設定値よりも下回った場合は酸素濃度の低下を報知するアラームを出力するとともに、2次および3次空気の流量を制御するダンパを全開とする。
【0085】
(バーナ本体の衝突防止対策)
本発明の火葬バーナ装置1は、自動運転、半自動運転、手動運転のいずれも可能なように構成され、かつ、前述したようにスライド駆動手段によりバーナ本体10をその軸方向に沿ってスライドすることが可能なように構成されており、この為複雑なシステム構成となっている。従って何らかのトラブルにより、棺桶などとバーナ本体10とが衝突しないように制御することが必要である。
【0086】
具体的に説明すると、バーナ本体10が前方(主燃炉側)にスライドした状態で棺桶が主燃炉200に搬入されると、棺桶がバーナ本体10に衝突する恐れがある。この為、制御部120は、棺桶を主燃炉に搬入する際の搬入信号を検知し、このタイミングにおけるバーナ本体10の位置情報を記憶部124から読み出し、バーナ本体10が前方にスライドしていると判断した場合は、異常状態である旨のアラームを出力し棺桶の主燃炉200への搬入を停止し、バーナ本体10を後退させて火葬炉200の初期状態に設定する。
【0087】
上記の制御を行うことにより、棺桶がバーナ本体10に衝突するという不具合を解消することが出来る。なお上記の説明において、棺桶が主燃炉200に搬入される場合について説明したが、この状況に限らず、制御部120は常時、棺桶又は遺体などの被燃焼体とバーナ本体10の先端部との距離を算出し、この距離が所定値よりも小さくなった場合にアラームを出力するとともに、バーナ本体10が被燃焼体により接近しないように制御してもよい。
【0088】
以上に説明した火葬用バーナ装置1及びその制御システムは、
図10に示す手順によって遺体が収容された棺桶等を主燃炉200で燃焼させる。
【0089】
火葬方法は大きく4つの段階に分けられ、初期段階、中期段階、後期段階、終了段階の順に進み、火葬開始から収骨まで約1時間を要する。初期段階(燃焼開始〜約10分)では、火葬用バーナ装置1の火炎を最大にして着火を促進するとともに、主燃炉200の壁面201から供給される2次空気、3次空気を多めに供給し主として棺を燃焼させる。このような燃焼方法により、棺桶は遺体の場合に比して急激に燃焼する。このため、排ガスの温度は急上昇し、また大量の排ガスが一時的に発生する。
【0090】
次に中期段階では燃焼する対象が棺桶151から遺体及び副葬品になり、遺体の脂肪の多寡により燃焼の仕方および排ガス流量が大きく変化する。脂肪の多い遺体の場合は激しく燃焼するので、火葬用バーナ装置1の火炎の大きさを極力小さくし、主燃炉200の壁面201からの2次空気、3次空気を最大にして供給し自燃による燃焼が暴走しないように制御する。このような燃焼方法により、排ガス流量は最大化する。一方、脂肪が少ない遺体の場合は脂肪の多い遺体の場合に比して燃焼が弱く、排ガス流量は脂肪の多い遺体を燃焼した場合と比して、およそ半分以下となることが経験上わかっている。
【0091】
次に後期段階では遺骨周りに残っている部分遺体を燃焼させるが、火葬用バーナ装置1の火炎が強すぎると遺骨が砕けて収骨することが困難となるので、火炎と主燃炉200の壁面からの2次空気と3次空気の供給をともに絞るように制御する。このような燃焼方法により、排ガス流量はピーク時の約1/2〜1/3に低減する。
【0092】
次に終了段階では、主燃炉200を空気冷却し骨受皿(図示せず)上の遺骨を前室、さらにお別れ台240に引き出し収骨が行われる。このとき排ガス流量は0レベルまで低下する。
【0093】
本発明の火葬用バーナ装置1は、こうした火葬の過程で、遺体等が収容された棺桶151や遺体などの被燃焼体の温度の低い部分や未燃焼の部分にバーナ本体10の先端を移動させ、温度の低い部分や未燃焼の部分に火炎を確実に放射させる。その結果、火葬を迅速かつ確実に行う。
【0094】
本発明による火葬用バーナ装置1の運転方法として、自動運転、半自動運転、作業者によるマニュアル運転の3つの運転方法を選択することが可能であるが、火葬の段階に応じて、これらの運転方法を適宜用いても良い。例えば、初期段階と中期段階においては、棺桶の種類や遺体に応じて好適の燃焼方法は異なるが、作業者の経験とスキルを生かしてこの段階ではマニュアル運転を行い、後期段階と終了段階では棺桶の種類や遺体により好適の燃焼方法はあまり変化しないので、自動運転でも十分対応可能である。
【0095】
火葬の全行程を全自動で行うのではなく、作業者の経験とスキルとを適宜生かして火葬の工程の一部を手動運転により行うことにより、遺体の尊厳性に対して最大限の配慮を払いながら、火葬を執り行うことが出来る。
バーナ本体(10)と、バーナ本体(10)を保持する保持機構(20)とを備え、保持機構(20)は、バーナ本体(10)を上下方向及び左右方向に回転可能に保持すると共にバーナ本体(10)を軸方向にスライド可能に保持しており、バーナ本体(10)を上下方向に回転移動させる上下駆動手段と、左右方向に回転移動させる左右駆動手段と、軸方向に移動させるスライド駆動手段と、を備えた火葬用バーナ装置。