【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省電波資源拡大のための研究開発、「ミリ波帯ブロードバンド通信用超高速ベースバンド・高周波混載集積回路技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のミリ波帯無線送受信装置において、前記送信部及び受信部は、ダイレクトコンバージョン方式、スーパーヘテロダイン方式、又はスライディングIF方式の何れかであることを特徴とするミリ波帯無線送受信装置。
【背景技術】
【0002】
現在、無線送受信装置は、移動体通信等への需要が増大し、これまで以上に通信品質、信頼性の向上が望まれている。ミリ波帯(例えば60GHz帯)の無線送受信装置では、回路構成を簡略化及び低コスト化を図るために、60GHzから直接ベースバンドにダウンコンバート又はアップコンバートするダイレクトコンバージョン方式の無線送受信機が提案されている。このような無線送受信装置は、一般的に高周波信号を増幅するアンプやミキサ回路、局部発振器等で構成されている。これらのうち、搬送波信号を生成する局部発振器からの信号が、無線通信装置の特性を左右するものとなる。したがって、ミリ波帯における無線通信装置の実現にあたっては、局部発振器の位相雑音の改善が課題であった。
【0003】
さらに、デジタル変調方式を用いた無線通信装置では、局部発振器は位相が互いに90度ずれたI成分信号とQ成分信号の2相の正弦波出力が用いられる。例えばそれぞれを差動信号として動作させるときには、合計4相もの正弦波出力が必要となる。従来の4相正弦波出力の局部発振器の構成は、例えば出力周波数の2倍の周波数の信号を生成し、これを分周して4相出力とするものや、2相正弦波出力の発振器を2つ用意して組み合わせるもの、ポリフェーズフィルタを用いるもの等があった。これらはI/Q不整合の問題等、何れも技術的な難易度が高かった。
【0004】
また、発振器として、注入同期型発振器というものが存在する。例えば特許文献1には、注入された基準周波数信号に同期した整数倍の周波数で発振する注入同期型発振器が開示されている。基準周波数信号の位相雑音が低ければ、これに同期した整数倍の周波数の出力信号の位相雑音も低く抑えることが可能である。
【0005】
さらに、I成分信号とQ成分信号の不整合に対してキャリブレーションが不要なダイレクトコンバージョン方式の無線送受信機として、例えば特許文献2に開示のものがある。これは、送信機側及び受信器側にそれぞれ局部発振器が設けられ、送信機側でパイロット信号を付加した上で発信し、受信機側でパイロット信号を抽出し、予め用意されたテンプレートデータと比較して、誤差範囲内に納まるように90度シフト位相器のシフト調整を行って位相を調整することでI/Q不整合を補正するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のような注入同期型発振器を無線送受信機の局部発振器として用いる場合に、特にI/Q成分信号を用いる方式に適用しようとした場合には、I/Q不整合の問題は解消できなかった。即ち、局部発振器として注入同期型発振器を用いるに過ぎず、I/Q不整合の問題については何ら対処されるものではなかった。
【0008】
また、特許文献2に開示のものは、送信機側でパイロット信号を付加したり受信器側でパイロット信号を抽出したりしなければならず、また、予めテンプレートデータも用意しなければいけないものであった。さらに、特許文献2では、局部発振器については特に記載が無く、ミリ波帯のような高周波帯での位相雑音の低減といった観点にも欠けていた。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、位相雑音特性を改善でき、さらに、送信部及び受信部の各局部発振器をそれぞれ独立してキャリブレーションすることも可能なミリ波帯無線送受信装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明によるミリ波帯無線送受信装置は、注入同期型発振器からなる送信用局部発振器と、該送信用局部発振器からの信号と送信ベースバンド信号とを混合する送信用ミキサと、送信用ミキサから送信用アンテナへの信号を増幅する送信用アンプと、を有する送信部と、受信用アンテナからの信号を増幅する受信用アンプと、注入同期型発振器からなる受信用局部発振器と、該受信用局部発振器からの信号と受信用アンプからの信号とを混合し受信ベースバンド信号を出力する受信用ミキサと、を有する受信部と、送信用局部発振器及び受信用局部発振器に基準周波数信号を注入する基準周波数信号発生器と、を具備するものである。
【0011】
さらに、送信用局部発振器と受信用局部発振器とがそれぞれ基準周波数信号発生器からの基準周波数信号にロックするように、送信用局部発振器及び受信用局部発振器を個々に調整するためのキャリブレーション部を具備するものであっても良い。
【0012】
また、送信部は直交するI成分とQ成分による変調信号を送信し、受信部は直交するI成分とQ成分による変調信号を受信するものであっても良い。
【0013】
また送信部は、I/Q結合型の送信用直交発振器と、I成分用とQ成分用の2つの送信用ミキサを具備し、送信用直交発振器から2つの送信用ミキサまでの配線長が、I/Qミスマッチを軽減するためにそれぞれ等しく対称に配置され、受信部は、I/Q結合型の受信用直交発振器と、I成分用とQ成分用の2つの受信用ミキサを具備し、受信用直交発振器から2つの受信用ミキサまでの配線長が、I/Qミスマッチを軽減するためにそれぞれ等しく対称に配置されるものであっても良い。
【0014】
また、基準周波数信号発生器は、PLLを用いたものであっても良い。
【0015】
また、送信部及び受信部は、ダイレクトコンバージョン方式、スーパーヘテロダイン方式、又はスライディングIF方式の何れかであれば良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明のミリ波帯無線送受信装置には、位相雑音特性を改善でき、さらに、送信部及び受信部の各局部発振器をそれぞれ独立してキャリブレーションすることも可能であるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。
図1は、本発明のミリ波帯無線送受信装置の概略平面図である。図示の通り、本発明のミリ波帯無線送受信装置は、送信部10と、受信部20と、基準周波数信号発生器30とから主に構成されている。そして、基準周波数信号発生器30による基準周波数信号は、後述の送信部10の送信用局部発振器11及び受信部20の受信用局部発振器22のそれぞれに注入されている。なお、送信部10及び受信部20は、基本的に同じ回路構成を用いれば良く、以下の説明でも基本的に送信部10について詳細に説明し、受信部20については送信部10と異なる点を中心に説明する。また、以下の図示例では送信部10及び受信部20は、局部発振器の周波数と搬送波との周波数が略同一のダイレクトコンバージョン方式を用いた無線送受信装置を中心に説明するが、本発明はこれに限定されず、送信部及び受信部のそれぞれに注入同期型発振器からなる局部発振器を用いた構成であれば、中間周波数増幅段(IF段)を設けても良い。このIF段の方式はスーパーヘテロダイン方式やスライディングIF方式等を用いても良く、特定の方式に限定されるものでもない。さらに、
図1に示されるミリ波帯無線送受信装置では、送信ベースバンド信号や受信ベースバンド信号がそれぞれ1つしか示されていないが、本発明はこれに限定されず、送信部と受信部にそれぞれ局部発振器が設けられるものであれば、送信部10が例えば直交するI成分とQ成分による変調信号を送信し、受信部20が直交するI成分とQ成分による変調信号を受信するような構成としても良い。後述の具体的な局部発振器の回路構成においては、このようなI/Q成分信号を出力するI/Q結合型の直交発振器を例示した。
【0019】
さて、本発明のミリ波帯無線送受信装置において、送信部10は、送信用局部発振器11と、送信用ミキサ12と、送信用アンプ13とから主に構成されている。送信用局部発振器11は、注入同期型発振器(Injection Locked Oscillator)からなるものである。送信用局部発振器11を構成する注入同期型発振器は、後述の基準周波数信号発生器30から注入される基準周波数信号を逓倍して高周波を出力するものである。ダイレクトコンバージョン方式の場合には、送信用局部発振器11からの出力は、ミリ波帯の信号となる。
【0020】
図2に、送信用局部発振器11の回路構成の一例を示す。この例では、4相正弦波出力が可能な注入同期型発振器を示した。即ち、位相が互いに90度ずれたI成分信号とQ成分信号を発信するI/Q結合型の直交発振器であり、各信号それぞれを差動信号として動作させる場合の回路構成の一例である。なお、本発明のミリ波帯無線送受信装置においては、図示例のような4相正弦波出力が可能な注入同期型発振器には限定されず、注入同期型発振器を用いてミリ波帯の信号を出力できるものであれば、いかなる構成であっても良い。また、I/Q成分信号を出力する場合、I/Q結合型直交発振器にも限定されず、例えばI成分信号発振用の局部発振器とQ成分信号生成用の移相器とを組み合わせてI/Q成分信号を出力するものであっても良い。
【0021】
さて、図示の通り、送信用局部発振器11は、差動信号用にINJ
nとINJ
pの2つの注入端子を有しており、ここに基準周波数信号発生器30の出力が入力される。図示例の注入同期型発振器は、90度位相が異なるI成分信号とQ成分信号が出力されるI/Q結合型発振器である。このような構成の注入同期型発振器では、I成分信号とQ成分信号の2つの信号により全体の出力周波数が決まる。例えば製造上のばらつき等により、I成分信号用の発振器とQ成分信号用の発振器にミスマッチが生じた場合、それぞれの信号の発振周波数が変わり、I/Qの位相バランスにミスマッチが生じ得る。そこで、例えばI−Q間の結合を一旦切り、個々の発振器をそれぞれ発振させた上でI成分信号用の発振周波数とQ成分信号用の発振周波数を比べ、両者が等しくなるように周波数制御信号を調整することでI/Qの位相バランスのマッチングを図ることも可能である。この個々の発振周波数の調整には、例えばDAC(デジタル−アナログ変換器)を用い、デジタル制御信号により出力されるアナログ信号により発振器のバイアスを調整することで、発振周波数が調整されれば良い。
【0022】
このように構成される注入同期型発振器からなる送信用局部発振器11は、基準周波数信号発生器30からの出力を注入ロック信号として用いてN逓倍するものとなる。例えば基準周波数信号発生器30が20GHzの基準周波数信号を出力する場合、これを注入同期型発振器に注入すると、3逓倍して60GHzの信号を生成することが可能となる。この場合、送信用局部発振器11は、例えばアンロック状態で57GHz〜66GHzの周波数の信号を出力するように調整されれば良い。このように調整することで、基準周波数信号にロックした信号を出力することが可能となる。
【0023】
ここで、
図1に示されるように、送信用局部発振器11には、基準周波数信号発生器30からの基準周波数信号に送信用局部発振器11がロックするように調整するキャリブレーション部14が接続されていても良い。キャリブレーション部14は、例えばDAC(デジタル−アナログ変換器)で構成され、デジタル制御信号により出力されるアナログ信号により発振器のバイアスを調整することで、発振周波数が調整されれば良い。
【0024】
そして、送信部10の送信用ミキサ12は、送信用局部発振器11からの信号と送信ベースバンド信号とを混合するものである。送信用局部発振器11からの信号、即ち搬送波に、送信ベースバンド信号、即ち、送信したい情報を重畳(搬送波+送信情報)するために、送信用ミキサ12が用いられる。送信用ミキサ12は、一般的な回路構成のものであれば良く、特定のものに限定はされない。
【0025】
そして、送信用アンプ13は、送信用ミキサ12から送信用アンテナ15への信号を増幅するものである。これにより、送信部10の最終段で所定の送出電力を得るように構成している。送信用アンプ13についても、一般的な回路構成のものであれば良く、特定のものに限定はされない。
【0026】
このように構成された送信部10により、アップコンバージョンされた信号が送信用アンテナ15から放射される。
【0027】
そして、再度
図1を参照すると、受信部20は、受信用アンプ21と、受信用局部発振器22と、受信用ミキサ23とから主に構成されている。受信用アンプ21は、受信用アンテナ24からの信号を増幅するものである。受信用アンテナ24により受信された信号が微弱な場合に特に有効なものであるが、入力信号が十分に大きい場合等には、受信部20の初段でのアンプは省略可能である。受信用アンプ21についても送信用アンプ13と同様、一般的な回路構成のものであれば良く、特定のものに限定はされない。
【0028】
また、受信用局部発振器22は、基本的に送信用局部発振器11と同じ回路構成のものを用いれば良い。即ち、送信部10及び受信部20はそれぞれが対応した方式で構成されるため、送信用局部発振器11が例えば
図2に示されるような、4相正弦波出力が可能な注入同期型発振器であれば、受信用局部発振器22も
図2に示されるような、4相正弦波出力が可能な注入同期型発振器であれば良い。
【0029】
そして、受信用ミキサ23は、受信用局部発振器22からの信号と受信用アンプ21からの信号とを混合し、受信ベースバンド信号を出力するものである。送信用局部発振器11と受信用局部発振器22は、共に同じ基準周波数信号発生器30からの基準周波数信号が注入されているため、受信用ミキサ23を用いて、受信用アンプ21からの信号から、受信用局部発振器22からの信号、即ち搬送波を差分することで、送信された情報である受信ベースバンド信号のみを抽出することができる。
【0030】
ここで、
図1に示されるように、受信用局部発振器22にも、送信用局部発振器11と同様、基準周波数信号発生器30からの基準周波数信号に受信用局部発振器22がロックするように調整するキャリブレーション部25が接続されても良い。キャリブレーション部25は、例えばDAC(デジタル−アナログ変換器)で構成され、デジタル制御信号により出力されるアナログ信号により発振器のバイアスを調整することで発振周波数が調整されれば良い。
【0031】
このように構成された受信部20により、ダウンコンバージョンされた受信ベースバンド信号が受信される。
【0032】
ここで、送信用局部発振器11及び受信用局部発振器22に基準周波数信号を注入する基準周波数信号発生器30は、高安定なものが好ましい。基準周波数信号発生器30の位相雑音を低く抑えることで、送信用局部発振器11及び受信用局部発振器22についても位相雑音を低く抑えることが可能となるからである。例えば、基準周波数信号発生器30は、PLL(Phase Locked Loop)から構成されれば良い。PLLについては、一般的な回路構成のものであれば良く、特定のものに限定はされない。例えば、基準周波数信号として20GHz帯の信号をPLLから出力するために、例えば基準周波数として36MHzの信号を水晶発振器等からPLLへ入力し、これを540〜600逓倍することで、20GHz前後の基準周波数信号を出力することが可能となる。なお、本発明では、基準周波数信号発生器はPLLを用いたものに限定されるものではなく、高安定に基準周波数信号を出力可能なものであれば、いかなる構成であっても構わない。
【0033】
このように構成された本発明のミリ波帯無線送受信装置では、送信部10と受信部20のそれぞれに別個の注入同期型発振器(送信用局部発振器11、受信用局部発振器22)が設けられているため、これらの2つの注入同期型発振器をそれぞれ個々にキャリブレーションすることが可能となる。即ち、送信側と受信側で、基準周波数信号に注入同期型発振器がロックするように、それぞれの同期周波数範囲の調整が可能となる。さらに、I/Q成分信号を用いる構成であれば、送信側と受信側のそれぞれの発振器において、I/Qの位相バランスのマッチングを個々に図ることも可能となる。
【0034】
以下、
図3を用いて、本発明のミリ波帯無線送受信装置において、基準周波数信号にロックするようにキャリブレーションを行う際の流れについて説明する。
図3は、本発明のミリ波帯無線送受信装置のキャリブレーションの流れを説明するためのフロー図である。なお、キャリブレーションを行う場合には、送信部の出力はアンテナを介して受信部側に漏れるため、この状態で受信ベースバンド信号を観察しても良い。さらに、送信部の出力を直接受信部に入力しても良い。これは、例えば
図1に示されるような、直接接続用のスイッチ40を用いて、直接的に信号を入力するようにすれば良い。また、キャリブレーションを行う際には、送信ベースバンド信号として所定のDC成分信号を用いれば良い。これにより、送信側ミキサ12から送信用局部発振器11の正弦波信号が出力されるようになる。なお、I/Q成分信号を用いる構成であれば、基準周波数信号にロックするようにキャリブレーションを行う前に、予めI/Qの位相バランスのマッチングを行っておけば良い。
【0035】
図示の通り、まず、一方の局部発振器の発振周波数を上限又は下限に設定する(ステップS11)。具体的には、例えば受信用局部発振器22に接続されるキャリブレーション部25を用いて、受信用局部発振器22の発振周波数f
Rxを上限に設定する。この際には、受信用局部発振器22には基準周波数信号は注入せず、フリーランさせておいても良い。次に、他方の局部発振器の発振周波数を下限から上限までスイープし、ベースバンド周波数が一定となる発振周波数を検出する(ステップS12)。具体的には、送信用局部発振器11に基準周波数信号を注入した状態で、送信用局部発振器11に接続されるキャリブレーション部14を用いて、送信用局部発振器11の発振周波数f
Txを下限から上限までスイープし、ベースバンド周波数f
Δ=|f
Rx−f
Tx|を測定し、f
Δが一定となる範囲の送信用局部発振器11の発振周波数を検出する。発振周波数f
Txを下限から上限までスイープするには、キャリブレーション部14により発振周波数を制御する信号をスイープすれば良い。
図4は、送信用局部発振器11の発振周波数を下限から上限までスイープしたときの、受信ベースバンド周波数f
Δの変化の一例を表すグラフである。測定されたf
Δは、
図4に示されるように変化するが、f
Δが一定となる範囲が、送信用局部発振器11が基準周波数信号発生器30の基準周波数信号にロックしている状態である。次に、この一定の範囲の中心付近に他方の局部発振器の発振周波数を固定する(ステップS13)。具体的には、送信用局部発振器11の発振周波数をこの一定の範囲の中心付近に設定することで、送信側の注入同期型発振器が容易にロックするようになる。そして、今度は一方の局部発振器の発振周波数を下限から上限までスイープし、ベースバンド周波数が一定となる発振周波数を検出する(ステップS14)。具体的には、受信用局部発振器22に接続されるキャリブレーション部25を用いて、受信用局部発振器22の発振周波数f
Rxを下限から上限までスイープし、同様にf
Δが一定となる範囲の受信用局部発振器22の発振周波数を検出する。そして最後に、この一定の範囲の中心付近に一方の局部発振器の発振周波数を固定する(ステップS15)。具体的には、送信用局部発振器11と同様に、この一定の範囲の中心付近に受信用局部発振器22の発振周波数を設定することで、受信側の注入同期型発振器が容易にロックするようになる。
【0036】
なお、上述の具体例では、一方の局部発振器を受信用局部発振器22とし、他方の局部発振器を送信用局部発振器11として説明したが、本発明のミリ波帯無線送受信装置ではこれに限定されず、逆であっても勿論良い。また、ステップS14において、一方の局部発振器の発振周波数をスイープする際には、他方の局部発振器の発振周波数は上限又は下限に設定されても良いし、ステップS13において固定された発振周波数としても良い。
【0037】
このように、本発明のミリ波帯無線送受信装置では、局部発振器が送信側及び受信側にそれぞれ1個ずつあるため、その発振周波数の差であるf
Δ(ダウンコンバータ後のベースバンド周波数)を観察してキャリブレーションできるため、高周波を扱う必要がなく、安価なカウンタ等で容易に観察可能である。また、局部発振器として例えばI/Q結合型の直交発振器が用いられる場合にも有利となる。即ち、直交発振器では、I/Qの位相バランスのマッチングを図るが、この際、送信側と受信側のそれぞれの局部発振器の位相バランスを個々に調整し、その上で局部発振器がロックしやすいようにキャリブレーションできるようになるため、非常に柔軟な調整が可能となる。
【0038】
次に、本発明のミリ波帯無線送受信装置の回路基板上での配置について説明する。
図5は、本発明のミリ波帯無線送受信装置の各構成要素の回路基板上での配置を説明するための概略平面図である。なお、図示例では、回路基板の種々の詳細な配線パターンは省略し、また、各構成要素はブロックで簡略化して示している。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。この例は、局部発振器としてI/Q結合型直交発振器を用いた例であり、以下に説明する通り、配線長を揃えることで、I/Qの位相バランスのミスマッチの軽減を図るものである。即ち、図示例では、本発明のミリ波帯無線送受信装置は、回路基板50上に、送信部10が、I/Q結合型の送信用直交発振器51と、I成分用とQ成分用の2つの送信用ミキサ52,53を具備している。また、受信部20についても、I/Q結合型の受信用直交発振器61と、I成分用とQ成分用の2つの受信用ミキサ62,63を具備している。そして、送信用直交発振器51から2つの送信用ミキサ52,53までの配線長が、それぞれ等しく対称に配置されている。同様に、受信用直交発振器61から2つの受信用ミキサ62,63までの配線長が、それぞれ等しく対称に配置されている。このように、I成分用とQ成分用のミキサがそれぞれある場合には、配線長を揃えるように配置されることで、配線長の違いによるI/Qミスマッチを軽減することが可能となる。
【0039】
なお、本発明のミリ波帯無線送受信装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。