(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5651987
(24)【登録日】2014年11月28日
    
      
        (45)【発行日】2015年1月14日
      
    (54)【発明の名称】空気浮上式ベルトコンベヤ
(51)【国際特許分類】
   B65G  15/60        20060101AFI20141218BHJP        
   B65G  15/08        20060101ALI20141218BHJP        
   B65G  15/42        20060101ALI20141218BHJP        
【FI】
   B65G15/60
   B65G15/08 A
   B65G15/42 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
      (21)【出願番号】特願2010-87529(P2010-87529)
(22)【出願日】2010年4月6日
    
      (65)【公開番号】特開2011-219190(P2011-219190A)
(43)【公開日】2011年11月4日
    【審査請求日】2013年4月3日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
          (74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
          (74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川  信一
          (74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口  賢照
          (74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤  謙二
          (74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間  孝良
          (74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井  功
          (74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤  正夫
          (74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下  和彦
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】鈴木  貴宏
              
            
        
      
    
      【審査官】
        大谷  光司
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特開2001−310810(JP,A)      
        
        【文献】
          実開平03−056712(JP,U)      
        
        【文献】
          西独国特許第01218937(DE,B)      
        
        【文献】
          特許第3461810(JP,B2)    
        
        【文献】
          米国特許第03630340(US,A)      
        
        【文献】
          米国特許第03545598(US,A)      
        
        【文献】
          特開2001−315934(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2004−292085(JP,A)      
        
        【文献】
          特開平10−194418(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G15/00−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  樋状又は円筒状のフレームの内側にコンベヤベルトを挿入し、該コンベヤベルトの下面側から圧縮空気を吹き付けて浮上させつつ、上面側に運搬物を載せて搬送する空気浮上式ベルトコンベヤにおいて、
  前記コンベヤベルトの下面に、ベルト幅方向の中心からベルト両端部へ延びるゴム組成物からなる突条を、ベルト長手方向に所定の間隔をおいて形成すると共に、前記突条の高さがベルト端部へ向かって徐々に低くなるようにしたことを特徴とする空気浮上式ベルトコンベヤ。
【請求項2】
  前記突条の先端がベルト端部よりも内側に位置するようにした請求項1に記載の空気浮上式ベルトコンベヤ。
【請求項3】
  前記突条が、前記コンベヤベルトの走行方向に対して凹となる湾曲形状である請求項1又は2に記載の空気浮上式ベルトコンベヤ。
【請求項4】
  前記突条間に形成される流路の幅を、ベルト端部へ向かって徐々に狭くなるようにした請求項1〜3のいずれかに記載の空気浮上式ベルトコンベヤ。
【請求項5】
  前記コンベヤベルトの下面に、ベルト長手方向へ延びる突条を設けた請求項1〜4のいずれかに記載の空気浮上式ベルトコンベヤ。
【請求項6】
  前記突条を形成するゴム組成物の耐摩耗性が、前記コンベヤベルトの下面を形成するゴム組成物よりも低くなるようにした請求項1〜5のいずれかに記載の空気浮上式ベルトコンベヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、空気浮上式ベルトコンベヤに関し、更に詳しくは、運搬物の搬送に支障をきたすことなく、コンベヤベルトの使用開始時からフレームとコンベヤベルトの接触を防止することができる空気浮上式ベルトコンベヤに関する。
 
【背景技術】
【0002】
  従来より、粉体や粒状体などの運搬物を搬送する手段の1つとして、樋状(円弧状)又は円筒状のフレームから空気圧により浮上した状態でコンベヤベルトを走行させる、いわゆる空気浮上式ベルトコンベヤが知られている。
【0003】
  この空気浮上式ベルトコンベヤでは、フレーム内を走行するコンベヤベルトは、フレームの下部内面に沿うように湾曲するが、ベルト幅方向の剛性が高いと、ベルト端部がフレーム内面と接触・摩耗して、コンベヤベルトが損傷したりベルトコンベヤの運転に悪影響を与えるおそれがある。特に、コンベヤベルトの使用開始の初期は、コンベヤベルトが運転環境に馴染んでおらず、製造直後の硬い状態であるため、このような問題が発生しやすくなる。
【0004】
  上記のような問題を解決するためには、特許文献1のように、コンベヤベルトの下面に長さ方向に沿って延びる凹条を、ベルト幅方向に間隔を設けて形成することにより、コンベヤベルトのベルト幅方向の可撓性を向上し、かつ凹条内の圧縮空気を空気ばねとしてコンベヤベルトの浮上力を向上させることが考えられる。
【0005】
  しかしながら、上記のようにコンベヤベルトの使用開始時からコンベヤベルトの可撓性を向上させると、コンベヤベルトが作業環境に馴染んだときには可撓性が非常に大きくなるため、運搬物の搬送に支障をきたすおそれがある。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−315934号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
  本発明の目的は、運搬物の搬送に支障をきたすことなく、コンベヤベルトの使用開始時からフレームとコンベヤベルトの接触を防止することができる空気浮上式ベルトコンベヤを提供することにある。
 
【課題を解決するための手段】
【0008】
  上記の目的を達成する本発明の空気浮上式ベルトコンベヤは、樋状又は円筒状のフレームの内側にコンベヤベルトを挿入し、該コンベヤベルトの下面側から圧縮空気を吹き付けて浮上させつつ、上面側に運搬物を載せて搬送する空気浮上式ベルトコンベヤにおいて、前記コンベヤベルトの下面に、ベルト幅方向の中心からベルト両端部へ延びるゴム組成物からなる突条を、ベルト長手方向に所定の間隔をおいて形成
すると共に、前記突条の高さがベルト端部へ向かって徐々に低くなるようにしたことを特徴とするものである。
 
【発明の効果】
【0009】
  本発明の空気浮上式ベルトコンベヤによれば、コンベヤベルトの下面に、ベルト幅方向の中心からベルト両端部へ延びるゴム組成物からなる突条を、ベルト長手方向に所定の間隔をおいて形成したので、コンベヤベルトの下面に吹き付けられた圧縮空気が、突条間に形成された流路を通じてベルト両端部へ均等に流れ、ベルト端部に十分な浮上力を与えるため、使用開始時からコンベヤベルトがフレームと接触することを防止することができる。また、コンベヤベルトの剛性は使用開始時においてわずかに大きくなるが、その後はプーリなどとの摩擦により突条が縮小又は消滅するので、運搬物の搬送に影響を与えることがない。
【0010】
  突条の先端は、ベルト端部よりも内側に位置することが望ましい。そのようにすることで、ベルト端部の剛性の増加を抑えて、浮上の効果を有効に利用することができる。
【0011】
  突条の高さは、ベルト端部へ向かって徐々に低くなるようにすることが
必要である。そのようにすることで、ベルト端部の剛性の増加を更に抑えることができる。
【0012】
  突条は、コンベヤベルトの走行方向に対して凹となる湾曲形状とするのが望ましい。そのようにすることで、圧縮空気がベルト走行方向と反対側へ流れ出るのを防いで、突条間の流路へ流れる圧縮空気の量を増加させて、ベルト端部の浮上力を増加することがことができる。
【0013】
  突条間に形成される流路の幅は、ベルト端部へ向かって徐々に狭くなるようにすることが望ましい。そのようにすることで、ベルト端部の浮上力をベルト幅方向の中心に比べて大きくすることができる。
【0014】
  上記のベルト幅方向へ延びる突条に加えて、ベルト長手方向へ延びる突条も設けることが望ましい。そのようにすることで、空気孔から吹き付ける圧縮空気をベルト幅方向へ均等に導くことができると共に、圧縮空気の一部が長手方向へ流れ出て、コンベヤベルトとフレームとの間の摩擦抵抗を低減することができる。
【0015】
  上述したベルト幅方向及びベルト長手方向へ延びる突条は、コンベヤベルトの下面を形成するゴム組成物よりも耐摩耗性が低いゴム組成物で形成することが望ましい。そのようにすることで、突条の部分のみが選択的に摩耗して縮小又は消滅するので、コンベヤベルト自体の強度に影響を与えないようにすることができる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態からなる空気式ベルトコンベヤの断面図である。
 
【
図2】コンベヤベルトの第1の例における下面の平面図である。
 
【
図3】
図2においてA−A矢視で示す断面図である。
 
【
図4】コンベヤベルトの第2の例における下面の平面図である。
 
【
図5】コンベヤベルトの第3の例における下面の平面図である。
 
【
図6】コンベヤベルトの第4の例における下面の平面図である。
 
【
図7】コンベヤベルトの第5の例における下面の平面図である。
 
【
図8】コンベヤベルトの第6の例における下面の平面図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0017】
  以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
 
【0018】
  図1は、本発明の実施形態からなる空気浮上式ベルトコンベヤを示す。
この空気浮上式ベルトコンベヤ(以下、単に「ベルトコンベヤ」という。)は、円筒状の金属製のフレーム1の内部を、無端状の空気浮上式コンベヤベルト(以下、単に「コンベヤベルト」という。)2がフレーム1に沿って浮上しつつ上面3に載置された運搬物(図示せず)を搬送するものである。フレーム1の下部には、長手方向に沿って多数の空気孔4が設けられており、図示しないコンプレッサーから圧縮空気5を空気ダクト6を通じて送風し、コンベヤベルト2の下面7の中心部に吹き付けることにより、コンベヤベルト2を浮上させるようになっている。コンベヤベルト2のベルト幅方向はフレーム1の下部内面に沿って湾曲しており、その長手方向は図示しない電動機により回転駆動される一対のプーリに掛け回されている。
 
【0019】
  このコンベヤベルト2の下面7には、
図2に示すように、ベルト幅方向の中心からベルト両端部8、8へ向かうゴム組成物からなる突条9が、ベルト長手方向に所定の間隔をおいて設けられている。なお、
図2以降のコンベヤベルト2の平面図は、ベルトを平坦な状態にした場合におけるものである。
 
【0020】
  このように、コンベヤベルトの下面に突条9を設けることにより、空気孔4からコンベヤベルト2の下面7に吹き付けられた圧縮空気5が、突条9間を流路としてベルト両端部8、8へ均等に流れ、ベルト端部8に十分な浮上力を与えるため、使用開始時からベルト端部8がフレーム1と接触することを防止することができる。また、コンベヤベルト2の剛性は使用開始時においてわずかに大きくなるが、その後は突条9がプーリなどとの摩擦により摩耗して縮小又は消滅するので、運搬物の搬送に影響を与えることはない。
 
【0021】
  突条9の先端は、ベルト端部8よりも内側に位置することが望ましい。このようにすることで、フレーム1に接触しやすいベルト端部8における剛性の増加を抑えることができる。
 
【0022】
  突条9の高さ及び幅は、特に限定するものではないが、コンベヤベルト2の使用開始時にプーリを乗り越えるときに異常な振動を発生させず、かつコンベヤベルト2が運転環境に馴染んだ頃に摩耗により縮小又は消滅するように、高さは0.1〜3.0mm、好ましくは0.3〜1.0mmとするのがよく、幅は0.5〜5.0mm、好ましくは1.0〜3.0mmとするのがよい。
 
【0023】
  また、突条9の高さについては、
図3に示すように、ベルト端部8へ向かうにつれて徐々に低くなるようにすることが好ましい。このようにすることで、ベルト端部8における剛性の増加を更に抑えることができる。
 
【0024】
  突条9の形状は、
図2に示すような、ベルト長手方向に対して垂直な直線形状とするよりも、
図4に示すように、ベルト走行方向(図中に矢印で示す)に対して凹となる湾曲形状にすることが望ましい。このようにすることで、圧縮空気5がベルト走行方向と反対側へ流れ出るのを防いで、流路10へ流れる圧縮空気5の量を増加させることができる。
 
【0025】
  突条9間に形成される流路10の幅は、ベルト端部8へ向かうにつれて徐々に狭くなるようにすることが望ましい。そのような突条9の例としては、ベルト端部8付近で突条9をベルト走行方向と反対側へ分岐させた形状(
図5を参照)や、ベルト端部8に向かうにつれて突条9の幅を、ベルト走行方向と反対側へ徐々に大きくしたりする形状(
図6を参照)が挙げられる。このようにすることで、ベルト端部8の浮上力を中心に比べて大きくすることができる。
 
【0026】
  上述したいずれの実施形態においても、例えば
図7、8に示すように、ベルト幅方向の中心部、つまりフレーム1の空気孔4に対向する位置に、長手方向に延びる突条11を設けるようにしてもよい。
 
【0027】
  このようにすることで、空気孔4から吹き付ける圧縮空気5をベルト幅方向へ均等に導くことができると共に、圧縮空気5の一部が長手方向へ流れ出て、コンベヤベルト2とフレーム1との間の摩擦抵抗を低減することができる。
 
【0028】
  また、上記の突条9、11を形成するゴム組成物は、コンベヤベルト2の下面7を形成するゴム組成物よりも耐摩耗性が低いことが望ましい。このようにすることで、突条9、11の部分のみが選択的に摩耗して縮小又は消滅するので、コンベヤベルト2自体の強度に影響を与えないようにすることができる。
 
 
【符号の説明】
【0029】
1  フレーム
2  コンベヤベルト
3  上面
4  空気孔
5  圧縮空気
6  空気ダクト
7  下面
8  ベルト端部
9  突条
10  流路
11  (ベルト長手方向の)突条