【実施例】
【0037】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0038】
以下の例で用いた測定方法は次のとおりである。
[HPLC分析]
HPLC分析条件は以下のとおり。
測定装置:高速液体クロマトグラフ L−7000シリーズ 日立製作所製
カラム:ODS−80Ts 250mm×4.6mm
カラム温度:40℃
溶離液:MeOH/H
2O
流量:1ml/min
グラジエント:5/95(0−10min)→50/50(19−45min)
検出器:紫外吸光検出器
検出波長:254nm
この分析条件で、リテンションタイム5〜45分のピークをカウントした。例えばリテンションタイムが22〜24分付近にo−トリジンスルホンスルホン酸の異性体の複数のピーク、24〜28分付近にo−トリジンスルホンの異性体の複数のピークが得られた。
【0039】
[純度の算出]
o−トリジンスルホンの純度(%)とo−トリジンスルホンスルホン酸の含有量(%)は、HPLC分析結果(ピーク面積)から下式に従って計算した。
【0040】
【数1】
【0041】
【数2】
【0042】
[硫酸塩からなるウエット結晶のHPLC測定から収率(%)の算出]
前記の純度算出で純度が確認された高純度のo−トリジンスルホンを標準品として用い、標準品とo−トリジンスルホン硫酸塩のサンプルを、それぞれHPLC測定を行い、得られる両者のo−トリジンスルホンのピーク面積から、下式に従ってo−トリジンスルホン硫酸塩サンプルのo−トリジンスルホン純度を求めた。
【0043】
【数3】
算出したo−トリジンスルホン硫酸塩のo−トリジンスルホン純度とo−トリジンスルホン硫酸塩の質量より、o−トリジンスルホン硫酸塩として得られたo−トリジンスルホンのモル数を求め、下記算出式に従って収率(%)を算出した。
【0044】
【数4】
【0045】
[収率の算出]
収率(%)は下式に従って算出した。
【0046】
【数5】
【0047】
[金属の含有量]
金属成分の含有量(ppm)は、試料を硫酸と硝酸で加熱分解後、超純水で定容して検液とし、ICP−AES法により下記の測定装置を用いて分析を行った。単位は(μg/g)=(ppm)である。
測定装置:ICP−AES・エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SPS5100型
【0048】
〔実施例1〕
(工程1)温度計、還流冷却器、撹拌機を付けた内容量500mlの四つ口フラスコに、30質量%発煙硫酸350g(三酸化硫黄として1.31mоl)を入れ、内温を30℃から40℃に保ちながら、20質量%含水o−トリジン38.7g(o−トリジンとして31.0g、0.146mol)を発熱に注意しながら少しずつ添加した。水で分解する分を除いた三酸化硫黄とo−トリジンとのモル比(三酸化硫黄/o−トリジン)は6.0であった。その後、内温30℃で30分撹拌し、更に30分掛けて60℃に昇温し、同温度で1時間撹拌、更に30分掛けて80℃に昇温し、同温度で1.5時間撹拌した。
(工程2)この反応液を40℃まで冷却した後、約1000mlの氷水に注ぎ、析出したo−トリジンスルホン硫酸塩の薄い褐色の結晶を濾過してウエット結晶169.9gを得た。この硫酸塩結晶からなるウエット結晶をHPLCで分析したところo−トリジンスルホンの量は38.4g(0.140mol)であり、これは収率95.9%に相当した。また、このときの濾液の硫酸濃度は25.9質量%であった。
(工程3)得られた硫酸塩結晶からなるウエット結晶を水750mlに加え、更に40質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9にし、90℃に加温し、生じた遊離のo−トリジンスルホンの粗結晶を濾取した。
(工程4)この粗o−トリジンスルホンを水600mlに投入し、36質量%塩酸水溶液95gを加えて懸濁した状態で酸性にして加温し80℃で2時間撹拌した。この液を冷却し、室温で40質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを2に調整し析出した黄色結晶を濾取した。
(後処理)結晶を水及びエタノールで洗浄した後、減圧下110℃で乾燥して、o−トリジンスルホンの黄色結晶37.9g(0.138mоl)を収率94.5%で得た。得られた結晶のo−トリジンスルホン純度はHPLC分析で98.7%(三種類の異性体合計)であり、不純物o−トリジンスルホンスルホン酸の含有量は1.22%、ナトリウム含有量は82ppmで品質上問題はなかった。
前記一連の操作において、操作容量が大きいのは、反応液を氷水に注いだ工程2で約1300mlであり、粗o−トリジンスルホンを水に懸濁した状態で酸性にして処理し、次いでpHを調整することで精製する工程4で約900mlであった。
【0049】
〔比較例1〕
特許文献1の参考例に準じてo−トリジンスルホンの製造を試みた。
(工程1)温度計、還流冷却器、撹拌機を付けた内容量500mlの四つ口フラスコに、30質量%発煙硫酸356g(三酸化硫黄として1.33mоl)を入れ、内温を30℃から40℃に保ちながら、20質量%含水o−トリジン38.7g(o−トリジンとして31.0g、0.146mol)を発熱に注意しながら少しずつ添加した。水で分解する分を除いた三酸化硫黄とo−トリジンのモル比(三酸化硫黄/o−トリジン)は6.2であった。その後、内温30℃で30分撹拌し、更に30分掛けて60℃に昇温し、同温度で1時間撹拌、更に30分掛けて80℃に昇温し、同温度で1.5時間撹拌した。
(工程2)この反応液を40℃まで冷却した後、約1800mlの氷水に注ぎ、析出したo−トリジンスルホン硫酸塩の薄い褐色の結晶を濾過してウェット結晶を得た。濾液の硫酸濃度は16.4質量%だった。
(工程3)得られた硫酸塩結晶を水750mlに加え、更に40質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてアルカリ性にし、90℃に加温し、生じた遊離のo−トリジンスルホンの粗結晶を濾取した。
(工程4)この粗結晶を水1800mlに投入し、36質量%塩酸水溶液360gを加えて加温して80℃とし、塩酸塩として溶解させ2時間撹拌した。この液の不溶物を濾別後、液を冷却し、室温で40%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9に調整し析出した黄色結晶を濾取した。
(後処理)結晶を水及びエタノールで洗浄した後、減圧下110℃で乾燥して、o−トリジンスルホンの黄色結晶34.4g(0.125mоl)を収率85.6%で得た。得られた結晶のo−トリジンスルホン純度はHPLC分析で98.2%(三種類の異性体合計)であり、品質上問題なかった。
前記一連の操作において、操作容量が大きいのは、反応液を氷水に注いだ工程2で約2000mlであり、粗o−トリジンスルホンを水に懸濁した状態で酸性にして処理し、次いでpHを調整することで精製する工程4で約2600mlであったので、非常に大きな装置が必要になった。
【0050】
〔実施例2〕
(工程1)温度計、還流冷却器、撹拌機を付けた内容量100mlの四つ口フラスコに、30質量%発煙硫酸70g(三酸化硫黄として0.26mоl)を入れ、内温を30℃から40℃に保ちながら、36質量%含水o−トリジン8.71g(o−トリジンとして5.57g、0.0262mol)を発熱に注意しながら少しずつ添加した。水で分解する分を除いた三酸化硫黄とo−トリジンとのモル比(三酸化硫黄/o−トリジン)は3.3であった。その後、内温30℃で30分撹拌し、更に30分掛けて60℃に昇温し、同温度で1時間撹拌、更に30分掛けて80℃に昇温し、同温度で1.5時間撹拌した。
(工程2)この反応液を40℃まで冷却した後、約185mlの氷水に注ぎ、析出したo−トリジンスルホン硫酸塩の薄い褐色の結晶を濾過してウエット結晶を得た。このウエット結晶をHPLCで分析したところo−トリジンスルホンの量は5.77g(0.0210mol)であり、これは収率80.2%に相当した。また、このときの濾液の硫酸濃度は26.9質量%であった。
(工程3〜後処理)得られた硫酸塩結晶からなるウエット結晶を水150mlに加え、更に40質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9にし、90℃に加温し、生じた遊離のo−トリジンスルホンの粗結晶を濾取した。この粗o−トリジンスルホンを水120mlに投入し、36質量%塩酸水溶液19gを加えて懸濁した状態で酸性にして加温し80℃で2時間撹拌した。この液を冷却し、室温で40質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを2に調整し析出した黄色結晶を濾取した。結晶を水及びエタノールで洗浄した後、減圧下110℃で乾燥して、o−トリジンスルホンの黄色結晶5.70g(0.0208mоl)を収率79.1%で得た。
【0051】
〔実施例3〕
(工程1)温度計、還流冷却器、撹拌機を付けた内容量100mlの四つ口フラスコに、30質量%発煙硫酸78g(三酸化硫黄として0.29mоl)を入れ、内温を30℃から40℃に保ちながら、36質量%含水o−トリジン8.74g(o−トリジンとして5.59g、0.0263mol)を発熱に注意しながら少しずつ添加した。水で分解する分を除いた三酸化硫黄とo−トリジンとのモル比(三酸化硫黄/o−トリジン)は4.5であった。その後、内温30℃で30分撹拌し、更に30分掛けて60℃に昇温し、同温度で1時間撹拌、更に30分掛けて80℃に昇温し、同温度で1.5時間撹拌した。
(工程2)この反応液を40℃まで冷却した後、約210mlの氷水に注ぎ、析出したo−トリジンスルホン硫酸塩の薄い褐色の結晶を濾過してウエット結晶を得た。このウエット結晶をHPLCで分析したところo−トリジンスルホンの量は6.49g(0.0236mol)であり、これは収率89.7%に相当した。また、このときの濾液の硫酸濃度は26.6質量%であった。
(工程3〜後処理)得られた硫酸塩結晶からなるウエット結晶を水150mlに加え、更に40質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9にし、90℃に加温し、生じた遊離のo−トリジンスルホンの粗結晶を濾取した。この粗o−トリジンスルホンを水120mlに投入し、36質量%塩酸水溶液19gを加えて懸濁した状態で酸性にして加温し80℃で2時間撹拌した。この液を冷却し、室温で40質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを2に調整し析出した黄色結晶を濾取した。結晶を水及びエタノールで洗浄した後、減圧下110℃で乾燥して、o−トリジンスルホンの黄色結晶6.42g(0.0234mоl)を収率88.8%で得た。
【0052】
〔実施例4〕
(工程1)温度計、還流冷却器、撹拌機を付けた内容量100mlの四つ口フラスコに、30質量%発煙硫酸85g(三酸化硫黄として0.32mоl)を入れ、内温を30℃から40℃に保ちながら、36質量%含水o−トリジン8.73g(o−トリジンとして5.59g、0.0263mol)を発熱に注意しながら少しずつ添加した。水で分解する分を除いた三酸化硫黄とo−トリジンとのモル比(三酸化硫黄/o−トリジン)は5.5であった。その後、内温30℃で30分撹拌し、更に30分掛けて60℃に昇温し、同温度で1時間撹拌、更に30分掛けて80℃に昇温し、同温度で1.5時間撹拌した。
(工程2)この反応液を40℃まで冷却した後、約220mlの氷水に注ぎ、析出したo−トリジンスルホン硫酸塩の薄い褐色の結晶を濾過してウエット結晶を得た。このウエット結晶をHPLCで分析したところo−トリジンスルホンの量は6.82g(0.0249mol)であり、これは収率94.7%に相当した。また、このときの濾液の硫酸濃度は27.4質量%であった。
(工程3〜後処理)得られた硫酸塩結晶からなるウエット結晶を水150mlに加え、更に40質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9にし、90℃に加温し、生じた遊離のo−トリジンスルホンの粗結晶を濾取した。この粗o−トリジンスルホンを水120mlに投入し、36質量%塩酸水溶液19gを加えて懸濁した状態で酸性にして加温し80℃で2時間撹拌した。この液を冷却し、室温で40質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを2に調整し析出した黄色結晶を濾取した。結晶を水及びエタノールで洗浄した後、減圧下110℃で乾燥して、o−トリジンスルホンの黄色結晶6.73g(0.0245mоl)を収率93.2%で得た。
【0053】
〔実施例5〕
(工程1)温度計、還流冷却器、撹拌機を付けた内容量100mlの四つ口フラスコに、30質量%発煙硫酸103g(三酸化硫黄として0.39mоl)を入れ、内温を30℃から40℃に保ちながら、36質量%含水o−トリジン8.78g(o−トリジンとして5.62g、0.0265mol)を発熱に注意しながら少しずつ添加した。水で分解する分を除いた三酸化硫黄とo−トリジンとのモル比(三酸化硫黄/o−トリジン)は8.0であった。その後、内温30℃で30分撹拌し、更に30分掛けて60℃に昇温し、同温度で1時間撹拌、更に30分掛けて80℃に昇温し、同温度で1.5時間撹拌した。
(工程2)この反応液を40℃まで冷却した後、約300mlの氷水に注ぎ、析出したo−トリジンスルホン硫酸塩の薄い褐色の結晶を濾過してウエット結晶を得た。このウエット結晶をHPLCで分析したところo−トリジンスルホンの量は7.09g(0.0258mol)であり、これは収率97.4%に相当した。また、このときの濾液の硫酸濃度は25.2質量%であった。
(工程3〜後処理)得られた硫酸塩結晶からなるウエット結晶を水150mlに加え、更に40質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9にし、90℃に加温し、生じた遊離のo−トリジンスルホンの粗結晶を濾取した。この粗o−トリジンスルホンを水120mlに投入し、36質量%塩酸水溶液19gを加えて懸濁した状態で酸性にして加温し80℃で2時間撹拌した。この液を冷却し、室温で40質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを2に調整し析出した黄色結晶を濾取した。結晶を水及びエタノールで洗浄した後、減圧下110℃で乾燥して、o−トリジンスルホンの黄色結晶6.98g(0.0254mоl)を収率96.1%で得た。