特許第5652073号(P5652073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5652073
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/10 20060101AFI20141218BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   F02M37/10 G
   F02M37/00 301L
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-204622(P2010-204622)
(22)【出願日】2010年9月13日
(65)【公開番号】特開2012-57598(P2012-57598A)
(43)【公開日】2012年3月22日
【審査請求日】2013年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000161840
【氏名又は名称】京三電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】岡薗 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】大木 浩伸
【審査官】 安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−088814(JP,A)
【文献】 特開平01−159456(JP,A)
【文献】 特開平10−061519(JP,A)
【文献】 国際公開第02/016753(WO,A1)
【文献】 特開2002−256993(JP,A)
【文献】 特開2007−002696(JP,A)
【文献】 特開平10−141159(JP,A)
【文献】 実開平02−083368(JP,U)
【文献】 特開平10−288134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
F02M 37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の燃料を前記タンク外へ供給する燃料供給装置において、
回転部材を内包するポンプ室を有し、当該回転部材の回転により前記タンク外への供給燃料を吐出する燃料ポンプと、
前記タンク内に支持され、前記燃料ポンプの一部を収容するケースと、
前記タンク内において前記燃料ポンプの残部が内周側に挿入される有底筒状に形成され、当該残部のうち前記ポンプ室の外周側を側壁部により覆うポンプブラケットであって、前記回転部材の回転径方向において、相対変位可能に隙間をあけて前記ケースと結合されるポンプブラケットを、備え
前記ケースと前記ポンプブラケットとは、前記燃料ポンプの重心として前記ポンプ室よりも上方に設定される重心の外周側において、前記隙間をあけて重なっており、当該重なり箇所にて結合されることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記燃料ポンプは、前記タンク外への供給燃料を吐出する燃料吐出口を、有し、
前記ケースは、前記燃料吐出口との間に挟持される弾性体により、前記燃料ポンプと連結されることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記ケースと前記ポンプブラケットとは、弾性変形可能なクリップにより結合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記ケースと前記ポンプブラケットとは、前記隙間をあけて重なっており、当該重なり箇所に前記クリップが組み付けられることを特徴とする請求項に記載の燃料供給装置。
【請求項5】
前記ポンプブラケットは、前記ケースと結合されることにより、前記タンクの底部から離間した位置にフローティング保持されることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の燃料供給装置。
【請求項6】
前記ポンプブラケットの前記側壁部の外周側に環状に配置され、前記燃料ポンプが前記タンク内から吸入する燃料を濾過する濾材を、備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内の燃料を当該タンク外へ供給する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ポンプにおいて回転部材の回転により吐出される燃料を、タンク外へと供給するようにした燃料供給装置が、知られている。こうした燃料供給装置の一種として特許文献1には、タンク内に支持されて燃料ポンプを収容するポンプケースの設けられた装置が、開示されている。このようなポンプケースを設けることによれば、タンク内において燃料ポンプの位置決めが正確となり、当該燃料ポンプによる燃料吐出性能が安定することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−2696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の装置では、タンク内において燃料ポンプの全体がケースの内周側に収容されて嵌合しているため、燃料ポンプにおいて回転部材を内包するポンプ室は、当該ケースによって外周側から覆われているものと、考えられる。このような構成の場合、ポンプ室内における回転部材の回転に伴って主に回転径方向に発生する振動は、ケースに対して直接的に伝播し、さらにはケースを支持するタンクにまで伝播して異音を発生させるおそれがある。
【0005】
本発明は、以上説明した問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、異音を低減する燃料供給装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、タンク内の燃料をタンク外へ供給する燃料供給装置において、回転部材を内包するポンプ室を有し、当該回転部材の回転によりタンク外への供給燃料を吐出する燃料ポンプと、タンク内に支持され、燃料ポンプの一部を収容するケースと、タンク内において燃料ポンプの残部が内周側に挿入される有底筒状に形成され、当該残部のうちポンプ室の外周側を側壁部により覆うポンプブラケットであって、回転部材の回転径方向において、相対変位可能に隙間をあけてケースと結合されるポンプブラケットを、備え、ケースとポンプブラケットとは、燃料ポンプの重心としてポンプ室よりも上方に設定される重心の外周側において、隙間をあけて重なっており、当該重なり箇所にて結合される。
【0007】
この発明によると、タンク内に支持されるケースに一部の収容された燃料ポンプにおいて、有底筒状のポンプブラケットの内周側に挿入される残部のうち回転部材を内包するポンプ室の外周側は、当該ポンプブラケットの側壁部により覆われる。ここで、結合されるケースに対してポンプブラケットは、回転部材の回転径方向にあけた隙間分、相対変位を許容されることになるので、ポンプ室内における回転部材の回転に伴って主に回転径方向に発生する振動については、ケースへの伝播、さらにはケースを支持するタンクへの伝播が抑制され得る。これによれば、燃料ポンプからタンクへと振動伝播することにより発生する異音の低減が、可能となるのである。
【0008】
さらに、この発明では、ケースに対してポンプブラケットは、燃料ポンプの重心の外周側において隙間をあけた重なり箇所にて結合されることにより、燃料ポンプからの振動伝播によっては揺れ難くなる。これによれば、ケースに対してポンプブラケットが回転部材の回転径方向にあけた隙間分、相対変位を許容される作用と相俟って、燃料ポンプからの振動伝播により発生する異音の低減効果が、高められる。
【0009】
請求項に記載の発明によると、燃料ポンプは、タンク外への供給燃料を吐出する燃料吐出口を、有し、ケースは、燃料吐出口との間に挟持される弾性体により、燃料ポンプと連結される。この発明において、タンク外への供給燃料の吐出に伴って振動し易い燃料吐出口とケースとの間に挟持される弾性体は、当該燃料吐出口の振動を減衰可能な状態にて、ケースを燃料ポンプに連結支持させる。これによれば、ケースに対してポンプブラケットが回転部材の回転径方向にあけた隙間分、相対変位を許容される作用と相俟って、燃料ポンプからの振動伝播により発生する異音の低減効果が、高められる。
【0010】
請求項に記載の発明によると、ケースとポンプブラケットとは、弾性変形可能なクリップにより結合される。この発明においてケースとポンプブラケットとは、両者を結合するクリップの弾性変形により、隙間分の相対変位を回転部材の回転径方向にて許容され得る。しかも、こうしてケース及びポンプブラケット間を弾性結合することになるクリップによれば、当該クリップを通じて伝播する振動に対し、減衰効果をも発揮し得る。これらによれば、燃料ポンプからの振動伝播により発生する異音の低減効果が、高められる。
【0011】
請求項に記載の発明によると、ケースとポンプブラケットとは、隙間をあけて重なっており、当該重なり箇所にクリップが組み付けられる。この発明においてケースとポンプブラケットとは、隙間をあけた重なり箇所にクリップが組み付けられることにより、当該隙間分の相対変位を許容されることになるので、両者間での直接的な振動伝播が遮断され得る。これによれば、燃料ポンプからの振動伝播により発生する異音の低減効果が、高められる。
【0012】
請求項に記載の発明によると、ポンプブラケットは、ケースと結合されることにより、タンクの底部から離間した位置にフローティング保持される。この発明では、ケースと結合されることにより、タンクの底部からの離間位置にフローティング保持されるポンプブラケットは、内周側に配置される燃料ポンプから当該底部への振動伝播につき、遮断され得る。これによれば、ケースに対してポンプブラケットが回転部材の回転径方向にあけた隙間分、相対変位を許容される作用と相俟って、燃料ポンプからの振動伝播により発生する異音の低減効果が、高められる。
【0013】
請求項に記載の発明は、ポンプブラケットの側壁部の外周側に環状に配置され、燃料ポンプがタンク内から吸入する燃料を濾過する濾材を、備える。この発明によると、燃料ポンプ自体がポンプ室内の回転部材の回転に起因して発生する異音は、当該ポンプ室の外周側を覆うポンプブラケット側壁部に対して外周側に配置された環状濾材により、漏れ難くなる。ここで濾材は、燃料ポンプがタンク内から吸入する燃料の濾過機能も果たすので、コストの増大を抑えつつ異音の低減効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による燃料供給装置を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による燃料供給装置を示す断面図であって、図3のII−II線断面図である。
図3】本発明の一実施形態による燃料供給装置を示す上面図である。
図4】本発明の一実施形態による燃料供給装置のサブタンクを示す上面図である。
図5図2のV−V線断面図である。
図6図5のVI−VI線断面図である。
図7図6のVII−VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(基本構成)
図1,2は、本発明の一実施形態による燃料供給装置1を示している。燃料供給装置1は、車両の燃料タンク2に搭載されて燃料を当該燃料タンク2外へ供給する。燃料供給装置1は、フランジ10、サブタンク20、蓋部材30、調整機構40、ポンプユニット50、並びに残量検出器60を備えている。ここで、図2に示すように燃料供給装置1のフランジ10以外の要素20,30,40,50,60は、燃料タンク2内の所定位置に配置される。尚、図2の上下方向は、水平面上における車両の鉛直方向と実質的に一致している。
【0017】
図1〜3に示すようにフランジ10は、樹脂により円盤状に形成されている。フランジ10は、燃料タンク2の天板部2aを貫通する貫通孔2bに嵌合装着され、当該貫通孔2bを閉塞している。フランジ10には、燃料供給管11及び電気コネクタ12が設けられている。燃料供給管11は、ポンプユニット50から吐出される燃料を、燃料タンク2外へ供給する。電気コネクタ12は、ポンプユニット50及び残量検出器60と電気接続されている。これにより、電気コネクタ12を通じてポンプユニット50の燃料ポンプ52が電力供給を受けて駆動制御されるようになっていると共に、同電気コネクタ12を通じて残量検出器60の残量検出信号が出力されるようになっている。
【0018】
図1,2に示すようにサブタンク20は、樹脂により有底円筒状に形成されている。サブタンク20は、その中心軸Csがフランジ10の中心軸Cfからオフセットする位置(図3,5参照)にて燃料タンク2内に収容され、当該燃料タンク2の底部2c上に設置されている。サブタンク20の底部20aには、図1,4に示すようにジェットポンプ21が設けられている。ジェットポンプ21は、導入通路22及びジェットノズル23を有している。導入通路22は、燃料タンク2内とサブタンク20内とを連通している。ジェットノズル23は、ポンプユニット50のプレッシャレギュレータ54(図6参照)から排出される余剰燃料を、導入通路22内へ向かって噴射する。この燃料噴射により、大気圧よりも低い負圧が導入通路22内に発生することで、燃料タンク2内の燃料が当該導入通路22内へと吸引されてサブタンク20内にまで移送される。サブタンク20は、こうして移送された燃料を貯留する。
【0019】
図1,2,5に示すように蓋部材30は、樹脂により逆有底円筒状に形成されている。蓋部材30の下部開口31の周縁部31aは、サブタンク20の上部開口24の周縁部24aに同軸上に嵌合装着されている。これにより蓋部材30は、その中心軸Ccがフランジ10の中心軸Cfからオフセットする位置(図3,5参照)にて燃料タンク2内に収容され、サブタンク20の開口24を閉塞する形となっている。蓋部材30は、残量検出器60と共にポンプユニット50を、燃料タンク2内に保持している。
【0020】
調整機構40は、支柱41、中間部材42、並びに弾性部材43を有している。支柱41は、金属により円筒状に形成されている。支柱41は、フランジ10に同軸上に圧入固定されていると共に、互いに一体となっている要素20,30,50,60(以下では、これらの要素を単に「一体要素20,30,50,60」という)に中間部材42を介して結合されている。これにより、フランジ10と一体要素20,30,50,60とは、単独の支柱41で連結される形となっている。
【0021】
図2に示すように中間部材42は、支柱41の周方向には互いに相対回転不能且つ支柱41の軸方向には互いに相対変位可能な一対の樹脂製ブラケット44,45を、結合してなる。各ブラケット44,45がそれぞれ蓋部材30及び支柱41に組み付けられることによって中間部材42は、支柱41と一体要素20,30,50,60との相対位置変化を支柱41の軸方向には許容した状態で、当該相対位置変化を支柱41の周方向に規制する。
【0022】
弾性部材43は、本実施形態ではコイルスプリングからなり、中間部材42のうち支柱41と一体のブラケット45と、蓋部材30との間に介装されている。弾性部材43は、一体要素20,30,50,60を燃料タンク2の底部2c側に向かって押圧するように、復原力を支柱41の軸方向に沿って発生することで、サブタンク20の底部20aを燃料タンク2の底部2cに常に押し付ける。このような弾性部材43の機能と上記中間部材42の機能とにより本実施形態では、燃料タンク2内における一体要素20,30,50,60の配置位置が安定する。
【0023】
ポンプユニット50は、その下部においてサブタンク20内に収容されていると共に、上部において蓋部材30から突出している。図2,6に示すようにポンプユニット50は、サクションフィルタ51、燃料ポンプ52、燃料フィルタ53、並びにプレッシャレギュレータ54を有している。
【0024】
サクションフィルタ51は、ポンプユニット50の最下部に設けられている。サクションフィルタ51は燃料ポンプ52の燃料吸入口52aと接続され、当該燃料ポンプ52がサブタンク20内から吸入する燃料中の大きな異物を除去する。
【0025】
燃料ポンプ52は、ポンプユニット50においてサクションフィルタ51の上方に設けられ、燃料吸入口52a及び燃料吐出口52bをそれぞれ下方及び上方に向けている。燃料ポンプ52は、図6に示すように、ポンプケース52cと回転部材52dと電動モータ52eとを、ハウジング52f内に収容している。ポンプケース52cは、燃料吸入口52a及び燃料吐出口52bに連通するポンプ室52gを、形成している。回転部材52dは、本実施形態では、複数の羽根溝52hが回転周方向に並んでなる円盤状のインペラであり、回転軸方向が上下方向と実質的に一致する状態でポンプ室52gに内包されている。電動モータ52eは、電気コネクタ12(図2参照)を通じた電力供給下において、回転部材52dに同軸連結された駆動軸52iを回転駆動する。この駆動軸52iと共に回転部材52dが回転することにより、サブタンク20内の燃料は、サクションフィルタ51を通じて燃料吸入口52aに吸入され、回転部材52dの各羽根溝52hの働きによりポンプ室52g内で加圧されて、燃料吐出口52bから吐出される。
【0026】
図2,6に示すように燃料フィルタ53は、ポンプユニット50において燃料ポンプ52を外周側と上方とから覆うように、設けられている。燃料フィルタ53を構成するフィルタケース55は、樹脂により形成されて内外二重の筒部55a,55bを有しており、それらのうち内筒部55aの内周側の空間55cに燃料ポンプ52が同軸上に配置されている。また、燃料フィルタ53を構成するフィルタエレメント56は、例えばハニカム状濾材等からなり、内筒部55aと外筒部55bとの間の空間55dに収容されている。ここで、筒部55a,55b間の空間55dは、フィルタエレメント56を挟む燃料上流側と燃料下流側とで、それぞれ燃料ポンプ52の燃料吐出口52bと燃料フィルタ53の燃料出口59とに連通している。これにより、燃料吐出口52bから空間55dへと吐出された燃料は、フィルタエレメント56により微細な異物を除去された状態で、図1の一点鎖線の如く燃料出口59と接続される燃料供給管11に向かって供給される。
【0027】
図6に示すようにプレッシャレギュレータ54は、ポンプユニット50において燃料フィルタ53の側方に、隣接して設けられている。燃料フィルタ53の燃料出口59と接続されるプレッシャレギュレータ54には、タンク20,2外に配置された燃料供給管11へと供給する燃料の一部が流入する。これによりプレッシャレギュレータ54は、燃料供給管11に向かう燃料の圧力を調整し、当該調圧時の余剰燃料を、排出管54aを介してジェットポンプ21のジェットノズル23(図4参照)へ排出する。
【0028】
図1,3に示すように残量検出器60は、蓋部材30上に保持されることにより、サブタンク20外に配置されている。残量検出器60は、本実施形態ではセンダゲージであり、燃料タンク2内の燃料に対して浮くフロート61を保持するアーム62の回転角に基づき、当該燃料タンク2内の燃料残量を検出する。
【0029】
(特徴的構成)
以下、燃料供給装置1の特徴的構成について、詳細に説明する。既述の構成によってタンク20,2の双方内に支持された形となっているフィルタケース55は、図6に示すように、燃料ポンプ52の「一部」として燃料吐出口52bを形成する上側部分を、内筒部55aの内周側空間55cに収容している。さらにフィルタケース55は、小径円筒状の燃料吐出口52bが同軸上に遊挿される大径円筒状の連通筒部551を、内筒部55aの上部内周側に隣接して形成し且つフィルタエレメント56の収容空間55dと連通させている。そして、かかる連通筒部551と燃料吐出口52bとの間の周方向全域に、円環状のゴム製Oリングからなる弾性体500が挟持されることで、フィルタケース55と燃料ポンプ52とは、当該弾性体500を介して連結且つ両者間をシールされている。
【0030】
サクションフィルタ51は、ポンプブラケット510、クリップ511、並びにフィルタエレメント512を有している。ポンプブラケット510は、樹脂により有底円筒状に形成されている。図2の如くタンク20,2内にてフィルタケース55と結合されるポンプブラケット510の内周側には、燃料ポンプ52のうち図6の如く燃料吸入口52a及びポンプ室52gを形成する「残部」としての下側部分が、同軸上に挿入されている。ここで、特に本実施形態のポンプブラケット510には、内周側に配置された燃料吸入口52aと嵌合する嵌合孔510aが、設けられている。こうした構成によりポンプブラケット510の円筒状の側壁部516は、ポンプ室52gに内包される回転部材52dの回転周方向の全域にて、当該ポンプ室52gの外周側を覆う形となっている。
【0031】
図6,7に示すようにポンプブラケット510は、回転部材52dの回転軸方向(上下方向)に側壁部516を挟む円環板状の鍔状部514,515と、それらのうち鍔状部514から上方へ突出する円筒状の結合部513とを、有している。さらに、結合部513の内周側には、フィルタケース55のうち、内筒部55aから下方へ突出する円筒状の結合部552と、当該結合部552の下端部から外周側へ突出する円環板状の鍔状部553とが、同軸上に遊挿されている。これにより、回転部材52dの回転径方向においては、ポンプブラケット510の結合部513とフィルタケース55の各部552,553とが隙間501をあけていることにより、フィルタケース55に対してポンプブラケット510が当該回転径方向に相対変位可能となっている。
【0032】
図7に示すようにクリップ511は、金属により弾性変形可能に形成され、一対のクランプ部511aが接続部511bの両端部に接続されてなるU字棒状を、呈している。各クランプ部511aにおいて接続部511b側となる基端部511cは、ポンプブラケット510における結合部513の二箇所を回転部材52dの一回転径方向αに沿って貫通する結合孔513aのうち、それぞれ対応するものに挿入されている。また図6,7の如く、各クランプ部511aにおいて接続部511bとは反対側の先端部511dは、結合部513において結合孔513aとは別の二箇所を上記回転径方向αに対して斜めに貫通する結合孔513bのうち、それぞれ対応するものに挿入されている。さらに、各クランプ部511aにおいて両端部511c,511d間となる中間部511eは、隙間501に挿入されて、回転部材52dの任意の回転径方向のうち上記回転径方向αに直交する回転径方向βの両側から、フィルタケース55の結合部552を挟持している。
【0033】
このような構成によりクリップ511は、隙間501をあけて重なるポンプブラケット510及びフィルタケース55の各結合部513,552に対して、上記回転径方向αに沿って組み付けられることで、それら結合部513,552同士を弾性結合している。ここで、隙間501をあけた「重なり箇所」としての各結合部513,552は、本実施形態では、燃料ポンプ52おいてポンプ室52gよりも上方となる燃料吐出口52b側に設定の重心Cgに対して、その外周側に配置されている。したがって、本実施形態のクリップ511は、燃料ポンプ52の重心Cgの外周側にて互いに重なる各結合部513,552へと組み付けられて、ポンプブラケット510とフィルタケース55とを結合する形となっている。また、こうしてフィルタケース55に結合されるポンプブラケット510は、鍔状部514,553間に僅かなクリアランスをあけた状態で、図2の如くサブタンク20の底部20aから離間した位置にフローティング保持されることとなる。
【0034】
図6に示すフィルタエレメント512は、例えば不織布等からなる「濾材」である。フィルタエレメント512は、ポンプブラケット510のうち側壁部516の外周側空間517に配置されて、回転部材52dの回転周方向の全域に円環状に延伸している。ここで、フィルタエレメント512の配置空間517は、燃料吸入口52aと嵌合する嵌合孔510aと連通している。これによりフィルタエレメント512は、燃料ポンプ52がサブタンク20内から空間517を通じて燃料吸入口52aに吸入する燃料を、濾過可能となっている。
【0035】
以上説明したように燃料供給装置1では、燃料ポンプ52においてポンプブラケット510の内周側に挿入される下側部分のうち回転部材52dを内包するポンプ室52gの外周側は、当該ポンプブラケット510の側壁部516によって覆われている。ここで、結合されるフィルタケース55に対してポンプブラケット510は、回転部材52dの回転径方向にあけた隙間501分、相対変位を許容されることになる。故に、ポンプ室52g内での回転部材52dの回転に伴って主に回転径方向に発生する振動については、ポンプブラケット510からフィルタケース55への伝播、さらにはフィルタケース55を支持するタンク20,2への伝播が抑制され得るのである。
【0036】
また、ポンプブラケット510とフィルタケース55とは、隙間501をあけて重なる各結合部513,552にクリップ511が組み付けられることで、両者の隙間501分の相対変位がクリップ511の弾性変形により許容され得た状態で、結合されている。故に、ポンプブラケット510とフィルタケース55との間では、直接的な振動伝播が遮断され得るのみならず、それら両者510,55同士を弾性結合するクリップ511を通じて間接的に伝播する振動に対しては、減衰効果が発揮され得る。
【0037】
さらに、フィルタケース55に対してポンプブラケット510は、燃料ポンプ52の重心Cgの外周側において隙間501をあけた各結合部552,513の重なり箇所にて結合されているので、当該燃料ポンプ52からの振動伝播によっては揺れ難い。それと共に、フィルタケース55と結合されることにより、サブタンク20の底部20aからの離間位置にフローティング保持されているポンプブラケット510は、内周側に配置される燃料ポンプ52から当該底部20aへの振動伝播につき、遮断され得る。
【0038】
加えて、燃料ポンプ52とフィルタケース55とは、タンク20,2外への供給燃料の吐出に伴って振動し易い燃料吐出口52bと、連通筒部551との間に挟持された弾性体500により、連結されている。これによれば、燃料吐出口52bの振動を弾性体500により減衰可能な状態にて、燃料ポンプ52がフィルタケース55により支持され得るのである。
【0039】
これらのことから燃料供給装置1によると、燃料ポンプ52の振動がポンプブラケット510及びフィルタケース55を通じてタンク20,2へと伝播することにより発生する異音につき、確実に低減することができる。しかも、燃料ポンプ52自体がポンプ室52g内の回転部材52dの回転に起因して発生する異音は、ポンプブラケット510のうち当該ポンプ室52gを外周側から覆う側壁部516に対して外周側に環状配置されたフィルタエレメント512によって、漏れ難くなる。ここでフィルタエレメント512は、燃料ポンプ52がサブタンク20内から吸入する燃料の濾過機能も果たすので、コストの増大を抑えつつ異音の低減効果を高めることができるのである。
【0040】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、当該実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0041】
具体的には、フィルタケース55とポンプブラケット510との結合構造は、回転部材52dの回転径方向に隙間501をあけて両者55,510の相対変位を可能にする構造であればよく、例えばスナップフィットによる結合構造であってもよい。また、フィルタケース55とポンプブラケット510との結合は、燃料ポンプ52の重心Cgから外れた位置の外周側において、実現されていてもよい。さらに、燃料ポンプ52の「一部」を収容してポンプブラケット510と結合される「ケース」は、燃料フィルタ53を構成するフィルタケース55以外、例えば燃料ポンプ52をサブタンク20に支持させるために専用に設けられるケースであってもよい。またさらに、この場合には、専用ケースに燃料吐出口52bが連結されない構成を、採用してもよい。
【0042】
加えて、ポンプブラケット510は、側壁部516の外周側に環状のフィルタエレメント512が配置されてサクションフィルタ51を構成するもの以外、例えば燃料ポンプ52の「残部」を挿入するために専用に設けられるものであってもよい。また加えて、ポンプブラケット510は、サブタンク20の底部20a上に設置されていてもよい。さらに加えて、サブタンク20が設けられない構成に、本発明を適用してもよい。またさらに加えて、燃料ポンプ52がポンプ室52gに内包する回転部材52dについては、回転により燃料を加圧して吐出するポンプ機能を発揮可能なものであれば、羽根溝52hの設けられたインペラ以外であっても、勿論よいのである。
【符号の説明】
【0043】
1 燃料供給装置、2 燃料タンク(タンク)、2a 天板部、2b 貫通孔、2c 底部、10 フランジ、11 燃料供給管、12 電気コネクタ、20 サブタンク(タンク)、20a 底部、21 ジェットポンプ、22 導入通路、23 ジェットノズル、24 上部開口、24a 周縁部、30 蓋部材、31 下部開口、31a 周縁部、40 調整機構、41 支柱、42 中間部材、43 弾性部材、44,45 ブラケット、50 ポンプユニット、51 サクションフィルタ、52 燃料ポンプ、52a 燃料吸入口、52b 燃料吐出口、52c ポンプケース、52d 回転部材、52e 電動モータ、52f ハウジング、52g ポンプ室、52h 羽根溝、52i 駆動軸、53 燃料フィルタ、54 プレッシャレギュレータ、54a 排出管、55 フィルタケース(ケース)、55a 内筒部、55b 外筒部、55c,55d,517 空間、56 フィルタエレメント、59 燃料出口、60 残量検出器、61 フロート、62 アーム、500 弾性体、501 隙間、510 ポンプブラケット、510a 嵌合孔、511 クリップ、511a クランプ部、511b 接続部、511c 基端部、511d 先端部、511e 中間部、512 フィルタエレメント(濾材)、513,552 結合部(重なり箇所)、513a,513b 結合孔、514,515,553 鍔状部、516 側壁部、551 連通筒部、Cc,Cf,Cs 中心軸、Cg 重心、α,β 回転径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7