(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溝部は、前記開口の前記サイプの壁面に直交する方向の長さが1mm以上3mm以下であり、かつ、前記開口の前記サイプの壁面に平行な方向の長さが1mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
前記溝部は、前記サイプの壁面に直交する方向の長さをWiとし、前記タイヤ径方向の外側端部から内側端部までの長さをWtとし、前記サイプの前記タイヤ径方向の外側端部から内側端部までの長さをStとした時、0.15≦Wi/St≦0.80かつ、0.50≦St/Wt≦1.00であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記溝部は、前記サイプの壁面に平行な面において、中心線と、タイヤ径方向の外側から内側に向かう方向とのなす角が、0°以上60°以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記溝部は、前記サイプの壁面に平行な面において、中心線と、タイヤ径方向の外側から内側に向かう方向とのなす角が、タイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って徐々に大きくなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0021】
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向を意味し、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう側、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から離れる側を意味する。タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸と直交する方向を意味し、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とは、タイヤ径方向において回転軸から離れる側を意味する。タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周方向を意味する。タイヤ赤道面とは、空気入りタイヤの回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤのタイヤ幅の中心を通る平面を意味する。
【0022】
図1は、空気入りタイヤの一例のトレッド面の概略構成を示す正面図である。
図1に示す空気入りタイヤ10は、トレッドTに、センター主溝1と、2本の外側主溝2と、複数本のラグ溝3と、複数本のラグ溝4と、複数のブロック5と、リブ6と、多数のサイプ7とを有する。
【0023】
センター主溝1は、タイヤ赤道E上に位置してタイヤ周方向に延在し、タイヤ周方向の全周に形成された溝である。また、2本の外側主溝2は、それぞれ、センター主溝1の両側に位置してタイヤ周方向に延在し、タイヤ周方向の全周に形成された溝である。複数本のラグ溝3は、空気入りタイヤ10のセンター主溝1と2本の外側主溝2との間、(つまり、センター部C)にそれぞれある陸部に、タイヤ周方向に間欠的に配置されている。ラグ溝3は、タイヤ周方向に対して斜めに形成され、一方の端部がセンター主溝1と連通し、他方の端部が外側主溝2と連通している。ラグ溝4は、外側主溝2より外側のショルダー部Sに、ショルダーエッジから外側主溝2に向けて外側主溝2に連結しない状態で、タイヤ周方向に間欠的に配置されている。また、複数のブロック5は、外側主溝2より内側のセンター部Cに、センター主溝1と、外側主溝2と、ラグ溝3により区画されて形成されている。なお、複数のブロック5は、センター主溝1と一方の外側主溝2と、ラグ溝3で区画された1列のブロックと、センター主溝1と他方の外側主溝2と、ラグ溝3で区画された1列のブロックと、2列のブロック列で構成されている。また、リブ6は、外側主溝2より外側のショルダー部Sのラグ溝4が形成されている部分以外の部分である。多数のサイプ7は、ブロック5及びリブ6の表面に、タイヤ幅方向に延びる状態で形成されている。
【0024】
次に、
図2−1から
図2−3を用いて、サイプについて詳細に説明する。ここで、
図2−1は、
図1の空気入りタイヤのサイプ及び溝部を拡大して示す正面図であり、
図2−2は、
図1の空気入りタイヤのサイプ及び溝部を拡大して示す斜視図であり、
図2−3は、
図1の空気入りタイヤの溝部を拡大して示す斜視図である。サイプ7は、
図2−1及び
図2−2に示すように、主部11と溝部12とで構成されている。主部11は、タイヤ表面に平行な断面が細長い四角形となる形状であり、タイヤ径方向に延在している。つまり、主部11は、板形状の空間で、かつ板の厚み方向がタイヤ表面に露出した向きで配置されている。また、サイプ7の主部11は、開口の長手方向がタイヤ周方向に対して一定角度傾斜した向きで配置されている。つまり、サイプ7の主部11は、タイヤ幅方向に横たわる(延在する)向きで配置されている。
【0025】
複数の溝部12は、
図2−1から
図2−3に示すように、主部11の長手方向の壁面(主部11の空間する壁面のうち、面積が最も大きい壁面)に連結して配置されている。複数の溝部12は、主部11の同じ壁面に、互いに一定間隔離れた位置に配置されている。溝部12は、タイヤ径方向に延在して配置されており、タイヤ径方向の外側から内側(つまりタイヤの中心)に向かうに従って、タイヤ径方向に直交する断面の開口面積が、徐々に大きくなる形状である。より具体的には、タイヤ径方向の外側から内側(つまりタイヤの中心)に向かうに従って、サイプ7の主部11の壁面に直交する方向の長さが徐々に長くなる形状である。また、溝部12は、主部11と対面している面の全面が主部11と連結している。なお、溝部12は、壁面に直交する方向の長さが最も長くなる位置が、溝の深さの全長に対して表面から15%から80%となる位置に形成されていることが好ましい。また、溝部12は、タイヤ径方向の内側の端部の形状を、本実施形態のように断面が曲線となる形状としても直線となる形状としてもよい。
【0026】
サイプ7は、以上のような形状であり、主部11で構成される溝のうち、溝部12と連結している部分が、他の部分よりも溝幅が大きくなっている。また、溝部12が、タイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って、タイヤ径方向に直交する断面の開口面積が大きくなっているため、サイプ7の開口面積も、タイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って大きくなる。
【0027】
空気入りタイヤ10は、このように、主部11と溝部12とで構成されたサイプ7を有することで、ブロック5の剛性を維持しつつ、氷上での除水効果を向上させることができる。具体的には、サイプ7の表面の開口形状の増加を抑制しつつ、サイプ7の体積(空間の体積)を大きくすることができ、ブロック5の剛性を維持しつつ、氷上での除水効果を向上させることができる。また、ブロック5の剛性を維持できることで、ドライ走行時の走行安定性を高く維持することができる。また、サイプ7(の溝部12)の形状を、剛性がより高い(つまり、開口を大きくしても剛性が低下しにくい)タイヤ径の中心側の開口面積をより大きい形状とすることで、サイプ7の空間の体積に対する剛性の低下を抑制することができる。また、サイプ7の空間の体積をより大きくすることができる。
【0028】
さらに、空気入りタイヤ10は、サイプ7を、タイヤ径方向において中心側の開口面積がより大きくなる形状とすることで、トレッドTが磨耗した場合でも、サイプ7の溝体積を一定以上とすることができ、サイプ7の開口面積をより大きくすることができる。これにより、エッジ効果による除水性能と、氷上性能を維持することができる。また、トレッドTが磨耗することで、サイプ7の径方向の長さは短くなるため、サイプ7の開口面積が大きくなってもブロック5の剛性を維持することができ、DRY走行時の走行安定性を高く維持することができる。
【0029】
ここで、溝部12は、
図2−3に示すように、開口のサイプ7(の主部11)の壁面に直交する方向(主部11の開口の短手方向)の長さ(以下「長さWo」ともいう。)が1mm以上3mm以下であり、かつ、開口のサイプ7(の主部11)の壁面に平行な方向(主部11の開口の長手方向)の長さ(以下「長さWk」ともいう。)が1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0030】
開口の長さWoを1mm以上とすることで除水効果を適切に得ることができ、氷上制動を向上させることができる。また、開口の長さWoが3mm以下とすることで、ブロック剛性を一定以上とすることができ、DRY制動の高い性能で維持することができる。
また、開口の長さWkを1mm以上とすることで除水効果を適切に得ることができ、氷上制動を向上させることができる。また、開口の長さWkを5mm以下とすることで、ブロック剛性を一定以上とすることができ、DRY制動の高い性能で維持することができる。また、開口の長さWkは、2mm以上4mm以下とすることがより好ましい。
【0031】
また、溝部12は、
図2−3に示すように、サイプ7(の主部11)の壁面に直交する方向の長さ(最大長さ)をWiとし、タイヤ径方向の外側端部から内側端部までの長さをWtとし、サイプ7のタイヤ径方向の外側端部から内側端部までの長さをStとした時、0.15≦Wi/St≦0.80かつ、0.50≦St/Wt≦1.00となる形状とすることが好ましい。
【0032】
Wi/Stを15%(0.15)以上とすることで除水効果を十分に得ることができ、氷上性能を向上させることができる。また、Wi/Stを80%以下とすることでブロック剛性を一定以上とすることができ、DRY制動の高い性能で維持することができる。なお、Wi/Stは、30%以上70%以下とすることがより好ましい。さらに、St/Wtを50%以上とすることで、タイヤが摩耗した場合でも除水効果を好適に得ることができ、氷上性能を高く維持することができる。なお、St/Wtは、60%以上100%以下とすることがより好ましい。
【0033】
ここで、溝部の断面形状(タイヤのトレッドTの表面からタイヤ中心に向いた方向に見た場合の形状)は、種々の形状とすることができる。以下、
図3を用いて説明する。ここで、
図3は、溝部の他の例を拡大して示す正面図である。また、
図3では、形状をわかりやすく示すため、溝部の開口の図示を省略し、溝部の主部の壁面に直交する厚みが最も厚くなる部分の断面形状を点線で示している。また、
図3には、溝部の4つの形状を示しているが、サイプは、
図3のように異なる形状の溝部を備えていても、
図3に示す溝部のうち、1つの種類の溝部を複数備えていてもよい。
【0034】
図3に示す溝部12は、
図2−1から
図2−3に示す形状と同様に、断面が楕円となる形状である。より具体的には、溝部12は、主部11の壁面に直交する方向が長軸となり、主部11の壁面に平行な方向が短軸となる楕円形状である。次に、溝部12aは、断面が主部11との連結面と、壁面とで三角形が形成される形状である。また、溝部12bは、断面が主部11との連結面が下底、壁面に直交する方向の最大長さWiの辺が上底となる台形形状である。なお、溝部12bは、主部11の壁面に直交する方向において、主部11から離れるにしたがって、主部11の壁面に平行な方向の長さが短くなる台形である。また、溝部12cは、断面が矩形形状である。
【0035】
溝部は、
図3に示すように種々の形状とすることができ、いずれの形状としても、上述したように、タイヤ径方向の外側から内側(つまりタイヤの中心)に向かうに従って、タイヤ径方向に直交する断面の開口面積を、徐々に大きくなる形状とすることで、上述した効果を得ることができる。
【0036】
次に、
図4−1及び
図4−2は、それぞれ溝部の他の例を拡大して示す断面図である。なお、
図4−1では、主部の形状を実線で示し、溝部の形状を点線で示す。また、溝部の主部側の端面は、主部と連結している。つまり、主部の溝部側の実線部分は、溝部の端部にもなる。
【0037】
図4−1に示す溝部12dは、タイヤ径方向の外側の端部が、未使用時の空気入りタイヤの表面よりもタイヤ径方向内側に形成されている。つまり、溝部12dは、未使用時の空気入りタイヤでは、トレッド表面に開口しない位置に形成されている。溝部12dのように、トレッド表面に開口しない位置に形成することでも、サイプの体積を大きくすることができ、サイプが保持できる水の量を多くすることができ、高い除水効果を得ることができる。また、トレッドが磨耗すると、溝部12dの一部がトレッド表面に露出し、開口となる。これにより、使用によりトレッドが磨耗した場合でも、エッジ効果を向上させることができるため、氷上性能を高く維持することができる。このように、空気入りタイヤは、溝部をトレッド表面に開口していない形状とすることができるが、
図2−1から
図2−3に示す溝部12のように、一部がトレッド表面に開口していることが好ましい。溝部を、一部がトレッド表面に開口している形状とすることで、空気入りタイヤの使用開始の初期から高い除水効果を得ることができる。
【0038】
次に、
図4−2に示すサイプは、いわゆる三次元サイプであり、壁面(面積が最も大きい面)の断面形状が直線とはならない形状である。具体的には、主部11aの壁面は、タイヤ径方向の外側の端部から内側の端部までの間に2箇所の屈折点が設けられている。また、主部11aの壁面は、トレッド表面に対して一定の角度傾斜している。
主部11aの短手方向の長さは一定であり、対面する2つの壁面は、平行に形成されている。
【0039】
溝部12eは、主部11aに沿って配置されており、かつ、タイヤ径方向の外側から内側(つまりタイヤの中心)に向かうに従って、主部11aの壁面に直交する方向の長さが徐々に長くなる形状である。なお、主部11aのように、壁面が傾斜しており、かつ、屈折している場合も、主部11aの壁面に直交する方向の長さは、Wi´や、Wiに示すように測定することができる。また、長さWiは、主部11aの壁面に直交する方向の最大長さとなる。
【0040】
このように、サイプの主部を3次元形状とした場合でも、上述した溝部を形成することで、上記と同様の効果を得ることができる。上記実施形態では、溝部の効果を好適に得ることができ、また、設計も容易になるため、いずれも主部を、短手方向の長さが一定となる形状としたが、つまり、壁面を平行にしたが、本発明はこれにも限定されない。また、主部は、開口の長手方向の辺の形状も直線には限定されず、曲線、屈曲点がある形状とすることもできる。
【0041】
次に、
図5−1から
図5−3を用いて、溝部の他の例について説明する。ここで、
図5−1は、溝部の他の例を拡大して示す断面図であり、
図5−2は、
図5−1のA−A線断面図であり、
図5−3は、
図5−1のB−B線断面図である。
図5−1から
図5−3に示す溝部14は、タイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って、サイプの壁面に平行かつ、タイヤ径方向に直交する方向の長さが徐々に長くなる形状である。また、溝部14は、タイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って、サイプの壁面に直交する方向の長さが徐々に長くなる形状である。したがって、溝部14は、
図5−2に示す断面(A−A線断面)よりも、タイヤ径方向のより内側の断面である、
図5−3に示す断面(B−B線断面)の方が、タイヤ径方向に直交する方向の長さも壁面に平行な方向の長さも長くなる。これにより、溝部14は、
図5−2に示す断面の開口面積よりも、
図5−3に示す断面の開口面積の方が大きくなる。
【0042】
このように、溝部をタイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って、サイプの壁面に平行かつ、タイヤ径方向に直交する方向の長さが徐々に長くなる形状とすることで、溝の体積をより大きくすることができる。また、上述したように、タイヤ径方向の内側の方がブロックの剛性が高いため、タイヤ径方向の内側の溝の長さを大きくしても、剛性の低下を抑制することができる。
【0043】
ここで、溝部14のように、前記サイプの壁面に平行かつ、タイヤ径方向に直交する方向における長さ(幅)が変化する形状の場合、溝部のサイプの壁面に平行かつタイヤ径方向に直交する方向における最大幅Mwは、サイプの壁面に平行かつタイヤ径方向に直交する方向における最小幅Maの1.1倍以上3倍以下となる形状とすることが好ましい。このように、最大幅Mwを最小幅Maの3倍以下とすることで、ブロック剛性を一定以上に維持することができ、DRY走行時の制動(DRY制動)をより適切な状態とすることができる。
【0044】
次に、
図6−1及び
図6−2を用いて、溝部の他の例を説明する。ここで、
図6−1は、溝部の他の例を拡大して示す斜視図であり、
図6−2は、
図6−1の溝部を拡大して示す断面図である。
図6−1及び
図6−2に示す溝部16は、サイプの主部の壁面に平行な面において、タイヤ径方向の外側から内側に向かう方向(つまり、タイヤ径方向)と、溝部16のタイヤ径方向に延びる中心線のなす角が角度θとなっている。なお、
図6−1及び
図6−2は、溝部16が、対象形状となっているため、溝部16の縁とタイヤ径方向とのなす角をθとして示す。このように、溝部をタイヤ径方向に対して一定角度傾斜させた形状としても、つまり、溝部をタイヤ径方向に平行な方向に伸びる溝ではない形状としても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0045】
なお、溝部は、サイプの壁面に平行な面において、中心線と、タイヤ径方向の外側から内側に向かう方向とのなす角θを、0度以上60°以下とすることが好ましい。なす角θを60°以下とすることで、ブロックが荷重を受けた場合(トレッドから荷重が負荷された場合)に生じる溝部の変形を好適に抑制することができ、ブロック剛性を高く維持することができる。なお、なす角θは、0°以上45°以下とすることがより好ましい。
【0046】
次に、
図7−1から
図7−3を用いて、溝部の他の例について説明する。ここで、
図7−1は、溝部の他の例を拡大して示す断面図であり、
図7−2は、
図7−1のC−C線断面図であり、
図7−3は、
図7−1のD−D線断面図である。
図7−1から
図7−3に示す溝部18は、サイプの主部の壁面に平行な面において、中心線と、タイヤ径方向の外側から内側に向かう方向とのなす角が、タイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って徐々に大きくなる形状である。これにより、溝部18は、
図7−1に示す開口との位置のずれ量が、タイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って大きくなる。また、溝部18は、タイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って、サイプの壁面に直交する方向の長さが徐々に長くなる形状である。したがって、溝部18は、
図7−2に示す断面(C−C線断面)よりも、タイヤ径方向のより内側の断面である、
図7−3に示す断面(D−D線断面)の方が、タイヤ径方向に直交する方向の長さが長くなる。このように、溝部の傾斜を徐々に大きくすることにより、タイヤが磨耗した際に出てくる開口部のエッジ量をより多くすることができる。これにより、氷上性能をより向上させることができる。
【0047】
さらに、溝部は、上述した各種形状を組み合わせてもよい。ここで、
図8は、溝部の他の例を拡大して示す断面図である。また、
図9−1は、溝部の他の例を拡大して示す断面図であり、
図9−2は、
図9−1のE−E線断面図であり、
図9−3は、
図9−1のF−F線断面図である。
【0048】
図8に示す溝部20は、タイヤ径方向に対して傾斜しており、かつサイプの壁面に平行かつ、タイヤ径方向に直交する方向の長さが徐々に長くなる形状である。つまり、溝部20は、サイプの主部の壁面に平行な面において、タイヤ径方向の外側から内側に向かう方向(つまり、タイヤ径方向)と、溝部20のタイヤ径方向に延びる中心線のなす角が一定の角度(0ではない角度)となっている。また、溝部20は、タイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って、サイプの壁面に平行かつ、タイヤ径方向に直交する方向の長さが徐々に長くなる形状である。
図8に示す溝部20の形状とすることでも、上述した各種効果を得ることができる。
【0049】
次に、
図9−1から
図9−3に示す溝部22は、サイプの主部の壁面に平行な面において、中心線と、タイヤ径方向の外側から内側に向かう方向とのなす角が、タイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って徐々に大きくなり、さらに、タイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って、サイプの壁面に平行かつ、タイヤ径方向に直交する方向の長さが徐々に長くなる形状である。また、溝部22は、タイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って、サイプの壁面に直交する方向の長さが徐々に長くなる形状である。これにより、溝部22は、
図9−1に示す開口との位置のずれ量が、タイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って大きくなる。さらに、溝部22は、
図9−2に示す断面(E−E線断面)よりも、タイヤ径方向のより内側の断面である、
図9−3に示す断面(F−F線断面)の方が、タイヤ径方向に直交する方向の長さも壁面に平行な方向の長さも長くなる。これにより、溝部22は、
図9−2に示す断面の開口面積よりも、
図9−3に示す断面の開口面積の方が大きくなる。このように、溝部の傾斜を徐々に大きくすることにより、タイヤが磨耗した際に出てくる開口部のエッジ量をより多くすることができる。さらに、開口面積を徐々に大きくすることで、上述する各種効果を得ることができる。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、上述した各種実施例を組み合わせた形状とすることができる。
【0051】
また、トレッドTに設ける周方向に延びる主溝の本数は、空気入りタイヤ10のように、センター主溝1と外側主溝2の3本に限定されるものではない。また、サイプ7の形状も、特に限定されるものではなく、タイヤ幅方向に延びるように形成されていればよい。
【0052】
また、センター部Cに設けたラグ溝3は、タイヤ周方向に対する傾斜角度が40°〜60°の範囲になるように配置され、かつタイヤ赤道Eに対して互いに反対側に傾斜している。ここで、傾斜角度はラグ溝3の溝幅中心線がタイヤ周方向に対してなす角度である。また、ラグ溝3は、センター主溝1に対して左右対称かつセンター主溝1の両側で周方向に半周期ずつずれるようになっている。また、ショルダー部Sに設けた有端のラグ溝4は、タイヤ周方向に対する傾斜角度が35°〜90°であり、かつタイヤ赤道Eに対して互いに反対方向に傾斜している。このように形成されたトレッドパターンはタイヤ回転方向が矢印R方向(
図1参照)に指定された方向性パターンになっている。なお、ラグ溝3、4の傾斜角度は、上記範囲とすることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。また、ラグ溝を設けない構成としてもよい。
【実施例】
【0053】
次に、実施例を用いて、空気入りタイヤについてより詳細に説明する。本測定では、タイヤサイズを195/65R15の空気入りタイヤを用いた。なお、空気入りタイヤは、サイプの形状を除いて他の構成、例えば、主溝の数、位置、ラグ溝の数、位置、サイプの数、形成位置等は、同じとした。また、測定では、DRY制動と、氷上制動、50%磨耗時氷上制動を評価対象とした。なお、50%磨耗時氷上制動では、タイヤのトレッドが磨耗し、タイヤ径方向において、使用可能な領域のうち50%分の長さのトレッドが磨耗した状態での氷上制動を評価した。また、DRY制動は、試験を行なう空気入りタイヤを装着した車両でDRY路面を走行し、初速100km/hで制動を開始した際における制動距離を測定することにより行なった結果に基づいて評価を行い、氷上制動は試験を行なう空気入りタイヤを装着した車両で氷上路面を走行し、初速40km/hで制動を開始した際における制動距離を測定することにより行なった結果に基づいて評価を行った。なお、評価結果は、従来例での評価結果を100とした指数で表す。なお、指数は、数が大きいほどよりよい、つまり制動性能が高い評価である。
【0054】
まず、従来例として、主部のみで構成され、溝部を備えてないサイプを有する空気入りタイヤについて、測定、評価を行った。また、比較例1として、主部と溝部を備えているサイプを有する空気入りタイヤについて、測定、評価を行った。なお、比較例1の溝部は、トレッド表面には、溝が開口しておらず、かつ、溝部の長さWtが2mm、つまり、Wtは、Stの33%となる形状である。なお、本測定では、サイプの主部の高さ(タイヤ径方向の長さ)Stは、6mmとした。
【0055】
また、実施例1として、
図4−1に示すように、タイヤ径方向の外側から内側(つまりタイヤの中心)に向かうに従って、サイプの主部の壁面に直交する方向の長さが徐々に長くなる形状であり、かつ、溝が開口していない形状のサイプを有するタイヤについて測定、評価を行った。なお、実施例1の空気入りタイヤは、長さWtが6mmである。
【0056】
また、実施例2から実施例4として、
図2−1から
図2−3に示すように、タイヤ径方向の外側から内側(つまりタイヤの中心)に向かうに従って、サイプの主部の壁面に直交する方向の長さが徐々に長くなる形状であり、かつ、溝が開口している形状のサイプを有するタイヤについて測定、評価を行った。なお、実施例2の空気入りタイヤは、長さWo(外側溝部深さ)が0.3mmであり、長さWi(内側溝部深さ)が6mmであり、Wi/Stが、1(100%)となる。また、実施例3の空気入りタイヤは、長さWoが4mmであり、長さWiが5mmであり、Wi/Stが、0.83(83%)となる。実施例4の空気入りタイヤは、長さWoが1mmであり、長さWiが3mmであり、Wi/Stが、0.5(50%)となる。従来例、比較例1、実施例1から実施例4の条件及び評価結果を下記表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
さらに、実施例5から実施例7として、
図5−1から
図5−3に示すように、タイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って、サイプの壁面に平行かつ、タイヤ径方向に直交する方向の長さが徐々に長くなる形状のサイプを有するタイヤについて測定、評価を行った。なお、実施例5の空気入りタイヤは、長さWkが4mmであり最小幅Maが2mmであり、最大幅Mwが4mmとなる。また、実施例6の空気入りタイヤは、長さWkが2mmであり、長さMaが2mmであり、長さMwが8mmとなる。実施例7の空気入りタイヤは、長さWkが2mmであり、長さMaが2mmであり、長さMwが4mmとなる。また、実施例8及び9として、
図6−1及び
図6−2に示すように、サイプの主部の壁面に平行な面において、タイヤ径方向の外側から内側に向かう方向(つまり、タイヤ径方向)と、溝部16のタイヤ径方向に延びる中心線のなす角が角度0ではない形状のサイプを有するタイヤについて測定、評価を行った。なお、実施例8では、なす角θを80°とし、実施例9では、なす角θを40°とした。実施例5から実施例9の条件及び評価結果を下記表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
従来例、比較例1と実施例1から実施例9に示すように、タイヤ径方向の外側から内側に向かうに従って、開口面積が徐々に大きくなる溝部を設けることで、DRY制動を維持しつつ、氷上制動を向上させ、かつ、50%磨耗時氷上制動を飛躍的に向上できることがわかる。
【0061】
さらに実施例1と実施例4に示すように、溝部をトレッド表面に開口させることで、使用開始時も氷上制動を向上できることがわかる。また、実施例2から実施例4に示すように、溝部を
図2−1から
図2−3に示すような形状とする場合は、上述した範囲を満たす実施例4の形状とすることで、氷上制動を好適に向上できることがわかる。
【0062】
さらに、実施例5から実施例7に示すように、溝部を
図5−1から
図5−3に示すような形状とする場合も、上述した範囲を満たす形状とすることで、DRY制動をより好適に維持しつつ、氷上制動を向上できることがわかる。
【0063】
さらに、実施例4、実施例8及び実施例9に示すように、溝部を
図6−1及び
図6−2に示すような形状とする場合も、上述した範囲を満たす形状とすることで、DRY制動をより好適に維持しつつ、氷上制動を向上できることがわかる。