特許第5652181号(P5652181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

特許5652181回転角検出装置、トルク検出装置、及び電動パワーステアリング装置
<>
  • 特許5652181-回転角検出装置、トルク検出装置、及び電動パワーステアリング装置 図000002
  • 特許5652181-回転角検出装置、トルク検出装置、及び電動パワーステアリング装置 図000003
  • 特許5652181-回転角検出装置、トルク検出装置、及び電動パワーステアリング装置 図000004
  • 特許5652181-回転角検出装置、トルク検出装置、及び電動パワーステアリング装置 図000005
  • 特許5652181-回転角検出装置、トルク検出装置、及び電動パワーステアリング装置 図000006
  • 特許5652181-回転角検出装置、トルク検出装置、及び電動パワーステアリング装置 図000007
  • 特許5652181-回転角検出装置、トルク検出装置、及び電動パワーステアリング装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5652181
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】回転角検出装置、トルク検出装置、及び電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20141218BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20141218BHJP
   G01L 3/10 20060101ALI20141218BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   G01D5/244 J
   G01B7/30 H
   G01L3/10 317
   B62D5/04
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-276014(P2010-276014)
(22)【出願日】2010年12月10日
(65)【公開番号】特開2012-122963(P2012-122963A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2013年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】裏 則岳
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−304249(JP,A)
【文献】 特表2003−516534(JP,A)
【文献】 特開2002−303537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00− 5/62
B62D 5/04
G01B 7/00− 7/34
G01L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の回転角に応じて値が変化するとともに前記回転角に応じた信号変化の位相が均等にずれるように設定された三相以上のセンサ信号を出力する回転角センサと、前記各センサ信号に基づき前記回転角を検出する検出手段とを備えた回転角検出装置において、
前記各センサ信号は、相数の倍数に対応するn倍角成分(但し、nは整数)及び前記相数の非倍数に対応するm倍角成分(但し、mは整数)の合成波形を有し、
前記検出手段は、各センサ値から該各センサ値の平均値を減算して前記各センサ値に含まれる前記m倍角成分の値を抽出することによりm倍の軸倍角を有する電気角を検出するとともに、前記電気角に基づき推定されるm個の機械角推定値を前記n倍角成分の値に換算して前記平均値と比較することにより、前記検出対象の機械的な一回転を一周期とする機械角を検出すること、を特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転角検出装置において、
前記回転角センサは、周方向に沿ってn対の磁極が形成された第1磁極部及びm対の磁極が形成された第2磁極部を有する磁石回転子と、前記磁石回転子と同軸の円周上に均等角度間隔で配置された前記相数に対応する複数の磁気検出手段と、を備えてなること、
を特徴とする回転角検出装置。
【請求項3】
トーションバーを挟む二位置において回転軸の回転角を検出する一対の回転角検出装置を備えたトルク検出装置において、
前記各回転角検出装置は、請求項1又は請求項2に記載の回転角検出装置であること、
を特徴とするトルク検出装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の回転角検出装置、及び請求項3に記載のトルク検出装置の少なくとも何れかを備えた電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角検出装置、トルク検出装置、及び電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、モータレゾルバやトルクセンサ等、高精度の角度検出が要求される用途においては、その回転角センサに高い軸倍角(電気角倍率)が設定されている。例えば、軸倍角が6倍である場合(6X)、その回転角センサにより検出される回転角(電気角)の一周期(電気角360°)は、検出対象の機械的な一回転を一周期とする機械角に換算すると、「1/6(機械角60°)」となる。そして、これにより、高い角度分解能を確保する構成が一般的となっている。
【0003】
ところが、その軸倍角を高めることにより、検出される一の電気角に対して複数の機械角が対応することになる。例えば、上記のような「6X」の回転角センサに基づき検出される電機角が「60°」である場合、推定される機械角は、「10°」「70°」「130°」「190°」「250°」「310°」の6つとなる。このため、従来、こうした高い軸倍角を有する回転角センサを用いて機械角を検出しようとする場合には、その検出される電気角の増減をカウンタを用いて積算する、或いは二つの回転角センサを用いて両者により検出される各電気角を比較する等の手法が用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の電動パワーステアリング装置には、ステアリングシャフトに設けられたトーションバーの両端に一対のレゾルバを配置してなる所謂ツインレゾルバ型のトルクセンサが設けられている。そして、これら二つのレゾルバにより検出されるステアリング側及びラック側における回転角変化の差分、即ちトーションバーの捻れ角に基づき操舵トルクを検出するとともに、その軸倍角の異なる二つの電気角を比較することにより、そのステアリングシャフトの回転角、即ち機械角である操舵角を検出することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−147733号公報
【特許文献2】特開2010−48760号公報
【特許文献3】特開2007−51683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような二つのレゾルバを用いる構成は、装置が大型となることから、既存の構成を利用することが可能なツインレゾルバ型のトルクセンサを有するもの以外には適用し難い。そして、そのレゾルバ数の増加に伴う製造コストの上昇を考慮した場合、EPSのような汎用製品では、事実上、その多重化を図ることができない。
【0007】
尚、特許文献2には、レゾルバによるセンサ信号の出力数を三相以上に拡張する構成が開示されており、これにより、その異常検出性能を含めた信頼性の向上を図ることができる。しかし、各レゾルバの信頼性を向上させることは可能であっても、何れか一方が完全に故障した場合には、その機械角の検出ができなくなることに変わりはない。
【0008】
また、特許文献3には、転がり軸受の内輪に設けられた第1のロータ及び転動体の保持器に設けられた第2のロータ、並びに転がり軸受の外輪に設けられたステータを備えたレゾルバが開示されている。即ち、このように独立した二つのロータの回転により生ずる誘起電圧変化を一のステータで検知する構成を採用することで、装置の小型化を図ることができる。更に、その出力するセンサ信号は、各ロータの回転角に応じて変化する既知の二成分の合成波形を有する。従って、そのセンサ信号に基づいて、ステータに対する各ロータの相対的な回転角を検出することができる。そして、二つのロータの回転角を比較することにより、その第1のロータに設定された軸倍角を超えて、当該第1のロータと一体に回転する検出対象の回転角を検出することができる。
【0009】
しかしながら、この従来例に開示されたレゾルバは、あくまで複数回転に亘る検出対象の回転角(絶対回転角)を検出するためのものであり、高い軸倍角の設定による高精度の角度検出に適した構造にはなっていない。即ち、第2のロータが設けられた保持器は、ステータが設けられた外輪と第1のロータが設けられた内輪とが相対回転することにより回転する。そして、その外輪に対する相対的な保持器の回転角は、同じく外輪に対する相対的な内輪の回転角に依存する。ところが、その回転角変化の割合については、高い軸倍角の設定による高分解能化に応え得る程の厳密さをもって一定というわけではない。そして、その合成波形に基づく回転角の演算方法についてもまた、その検出誤差(例えば、温度特性や配線インピーダンス等)の影響を排除し得るものとはなっておらず、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、高い角度分解能を確保しつつ、一の回転角センサが出力するセンサ信号に基づいて検出対象の機械的な一回転を一周期とする機械角の検出が可能な回転角検出装置及びトルク検出装置、並びに電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、検出対象の回転角に応じて値が変化するとともに前記回転角に応じた信号変化の位相が均等にずれるように設定された三相以上のセンサ信号を出力する回転角センサと、前記各センサ信号に基づき前記回転角を検出する検出手段とを備えた回転角検出装置において、前記各センサ信号は、相数の倍数に対応するn倍角成分(但し、nは整数)及び前記相数の非倍数に対応するm倍角成分(但し、mは整数)の合成波形を有し、前記検出手段は、各センサ値から該各センサ値の平均値を減算して前記各センサ値に含まれる前記m倍角成分の値を抽出することによりm倍の軸倍角を有する電気角を検出するとともに、前記電気角に基づき推定されるm個の機械角推定値を前記n倍角成分の値に換算して前記平均値と比較することにより、前記検出対象の機械的な一回転を一周期とする機械角を検出すること、を要旨とする。
【0012】
即ち、信号変化の位相が均等にずれたn相のセンサ信号における各センサ値の平均値は、当該各センサ値に含まれたn倍角成分の値に等しい。従って、各センサ値から当該各センサ値の平均値を減算することにより、各センサ値に含まれたm倍角成分の値が抽出される。また、例えば、m倍の軸倍角を有する電気角が「X°」である場合に取りうる機械角の値、つまり機械角推定値は、「X°」、「X+(360/m)°」、…、「X+(m−2)×(360/m)°」「X+(m−1)×(360/m)°」のm個である。そして、これらm個の機械角推定値のうち、n倍角成分の基本式に代入することにより得られる値、即ちn倍角成分に換算した値が上記平均値に最も近いものが、実際の機械角に対応する。
【0013】
従って、上記構成によれば、高い角度分解能を確保しつつ、一の回転角センサが出力するセンサ信号に基づいて、検出対象の機械的な一回転を一周期とする機械角を検出することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記回転角センサは、周方向に沿ってn対の磁極が形成された第1磁極部及びm対の磁極が形成された第2磁極部を有する磁石回転子と、前記磁石回転子と同軸の円周上に均等角度間隔で配置された前記相数に対応する複数の磁気検出手段と、を備えてなること、
上記構成によれば、簡素な構成にて、n倍角成分及びm倍角成分の合成波形を有するとともに回転角に応じた信号変化の位相が均等にずれた三相以上のセンサ信号を出力させることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、トーションバーを挟む二位置において回転軸の回転角を検出する一対の回転角検出装置を備えたトルク検出装置において、前記各回転角検出装置は、請求項1又は請求項2に記載の回転角検出装置であること、
上記構成によれば、新たに専用の回転角センサを付加することなく、回転軸の機械角を検出することができる。そして、二つの回転角センサの一方に異常が発生した場合でも、他方側のセンサ信号に基づいて機械角の検出を継続することができる。その結果、簡素な構成にて、より高い信頼性を確保することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の回転角検出装置、及び請求項3に記載のトルク検出装置の少なくとも何れかを備えた電動パワーステアリング装置。
上記構成によれば、その回転角検出装置を用いて駆動源であるモータの回転角を検出する、或いは、そのトルク検出装置を用いてステアリングシャフトを伝達する操舵トルクを検出することにより、新たにステアリングセンサ等の回転角センサを付加することなく、ステアリングに生じた操舵角を検出することができる。そして、特に上記トルク検出装置を含め、直接又は間接的にステアリングシャフトの回転角を検出可能な複数の上記回転角検出装置を備える構成では、その何れか一方に異常が発生した場合であっても、他方側のセンサ信号に基づいて操舵角の検出を継続することができる。その結果、簡素な構成にて、より高い信頼性を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高い角度分解能を確保しつつ、一の回転角センサが出力するセンサ信号に基づいて検出対象の機械的な一回転を一周期とする機械角の検出が可能な回転角検出装置及びトルク検出装置、並びに電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
図2】EPSの制御ブロック図。
図3】回転角センサの概略構成図。
図4】(a)〜(c)回転角センサが出力するセンサ信号の波形図。
図5】回転角検出の処理手順を示すフローチャート。
図6】別例の回転角センサの概略構成図。
図7】別例の回転角センサが出力するセンサ信号の波形図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の電動パワーステアリング装置(EPS)1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。そして、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。尚、本実施形態のステアリングシャフト3は、コラムシャフト3a、インターミディエイトシャフト3b、及びピニオンシャフト3cを連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド6を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪7の舵角、即ち車両の進行方向が変更される。
【0020】
また、EPS1は、操舵系にアシスト力を付与する操舵力補助装置としてのEPSアクチュエータ10と、該EPSアクチュエータ10の作動を制御する制御手段としてのECU11とを備えている。
【0021】
詳述すると、本実施形態のEPSアクチュエータ10は、駆動源としてのモータ12と、ラック軸5に設けられたボール螺子装置13とを備えた所謂ラックアシスト型のEPSとして構成されている。尚、本実施形態では、中空状のモータ軸を有するブラシレスモータを採用することにより、モータ12は、ラック軸5と同軸に配置されている。そして、ボール螺子装置13は、ラック軸5の外周に螺子溝を螺刻することにより螺子軸を形成し、その螺子軸に複数のボールを介してボール螺子ナットを螺着する周知の構成を有している。
【0022】
また、本実施形態のモータ12は、上記ECU11が供給する三相(U,V,W)の駆動電力に基づき回転する。そして、本実施形態のEPSアクチュエータ10は、そのモータ12の回転をボール螺子装置13によりラック軸5の軸方向移動に変換する、即ちそのモータトルクを軸方向の押圧力に変換してラック軸5に伝達することにより、操舵系にアシスト力を付与する構成となっている。
【0023】
一方、ECU11は、トルクセンサ14の出力信号に基づいて、ステアリングシャフト3を介して伝達される操舵トルクτを検出する。本実施形態では、ステアリングシャフト3を構成するピニオンシャフト3cの途中に、トーションバー15が設けられている。そして、トルクセンサ14には、このトーションバー15の両端に一対の回転角センサ16(16A,16B)を配置してなる所謂ツインレゾルバ型のトルクセンサが採用されている。
【0024】
具体的には、本実施形態では、トルクセンサ14を構成する上記二つの各回転角センサ16A,16Bは、それぞれ、その検出対象となるステアリングシャフト3(ピニオンシャフト3c)におけるトーションバー15を挟んだ二位置P1,P2の回転角に応じて値が変化する三相のセンサ信号Sa,Sb,Scを出力するように構成されている。そして、ECU11は、各回転角センサ16A,16Bが出力する二系統のセンサ信号群S1,S2に基づいて、トーションバー15を挟む二位置P1,P2の回転角を検出し、その差分、即ちトーションバー15の捻れ角に基づいて、操舵トルクτを検出する。
【0025】
また、本実施形態のECU11には、車速センサ17により検出される車速Vが入力されるようになっており、同ECU11は、これら操舵トルクτ及び車速Vに基づいて、そのEPSアクチュエータ10に発生させるべきアシスト力の目標値(目標アシスト力)を演算する。そして、その目標アシスト力を発生させるべく、駆動源であるモータ12に駆動電力を供給することにより、同EPSアクチュエータ10の作動、即ち操舵系に付与するアシスト力を制御する構成となっている。
【0026】
次に、本実施形態のEPSにおけるアシスト制御の態様について説明する。
図2に示すように、ECU11は、モータ制御信号を出力するマイコン21と、そのモータ制御信号に基づいて、EPSアクチュエータ10の駆動源であるモータ12に駆動電力を供給する駆動回路22とを備えている。
【0027】
尚、以下に示す制御ブロックは、マイコン21が実行するコンピュータプログラムにより実現されるものである。そして、同マイコン21は、所定のサンプリング周期で上記各状態量を検出し、所定周期毎に以下の各制御ブロックに示される各演算処理を実行することにより、モータ制御信号を生成する。
【0028】
詳述すると、本実施形態のマイコン21には、上記トルクセンサ14を構成する二つの回転角センサ16A,16Bが出力する二系統のセンサ信号群S1,S2に基づいて、トーションバー15を挟んでステアリング2側及びラック軸5側における二位置P1,P2の各回転角を検出する二つの回転角検出部23(23A,23B)が設けられている。そして、これら各回転角検出部23(23A,23B)は、それぞれに対応したセンサ信号群S1,S2として入力される各センサ信号Sa,Sb,Scに基づいて、所定の軸倍角を有する電気角θel1,θel2、及びその検出対象となるステアリングシャフト3の機械的な一回転を一周期とした機械角θab1,θab2を検出する。
【0029】
また、マイコン21には、操舵トルク検出部24及び操舵角検出部25が設けられており、上記各回転角検出部23(23A,23B)により検出された各電気角θel1,θel2は、操舵トルク検出部24に入力され、各機械角θab1,θab2は、操舵角検出部25に入力される。そして、操舵トルク検出部24は、各電気角θel1,θel2の差分に基づきステアリングシャフト3を伝達する操舵トルクτを検出し、操舵角検出部25は、各機械角θab1,θab2に基づいて、そのステアリング2に発生した舵角、即ち操舵角θsを検出する。
【0030】
本実施形態のマイコン21では、上記モータ制御信号を生成するモータ制御部26には、これらの操舵トルクτ及び操舵角θsとともに、上記車速センサ17により検出される車速Vが入力される。そして、同モータ制御部26は、これら操舵トルクτ、操舵角θs及び車速Vに基づいて、そのEPSアクチュエータ10に発生させるべき目標アシスト力に対応した電流指令値を演算する。
【0031】
尚、モータ制御部26は、その検出される操舵トルクτ(の絶対値)が大きいほど、また車速Vが小さいほど、より大きなアシスト力が発生するような電流指令値の基礎成分を演算する。そして、その検出される操舵角θs(及び車速V等)に基づいて、当該電流指令値の補償成分を演算する(例えば、ステアリング中立位置への戻り性を改善するためのステアリング戻し制御等)。
【0032】
また、モータ制御部26には、電流センサ27により検出される実電流値I、及びモータレゾルバ(モータ回転角センサ)28により検出されるモータ回転角θmが入力される。そして、モータ制御部26は、その検出される実電流値Iを上記電流指令値に追従させるべく、電流フィードバック制御を実行することによりモータ制御信号を生成する。
【0033】
具体的には、本実施形態のマイコン21は、モータ12の実電流値Iとして三相(U,V,W)の相電流値Iu,Iv,Iwを検出する。また、モータ制御部26は、その検出されるモータ回転角θmに基づいて、上記相電流値Iu,Iv,Iwを二相回転座標系(d/q)のd軸電流値及びq軸電流値に変換する。そして、同モータ制御部26は、このd/q座標系において、その電流フィードバック制御演算を実行する構成となっている。
【0034】
尚、本実施形態では、上記各回転角検出部23(23A,23B)は、入力される各センサ信号Sa,Sb,Scの異常検知機能を備えている。そして、当該各センサ信号Sa,Sb,Scの異常を検知した場合には、それぞれ、その回転角検出を停止する。
【0035】
また、上記操舵角検出部25は、第1回転角検出部23Aが検出する機械角θab1、及び第2回転角検出部23Bが検出する機械角θab2の両方を取得可能な正常時には、第1回転角検出部23Aから入力されるトーションバー15よりもステアリング2側の位置(P1)における機械角θab1に基づいて操舵角θsを検出する。そして、第1回転角検出部23Aによる回転角検出が停止した場合には、第2回転角検出部23Bから入力されるトーションバー15よりもラック軸5側の位置(P2)における機械角θab2に基づいて操舵角θsを検出する。
【0036】
更に、上記操舵トルク検出部24は、第1回転角検出部23A又は第2回転角検出部23Bの何れかにおいて回転角検出が停止した場合には、その操舵トルクτの検出を停止する。そして、モータ制御部26は、このようなトルク検出異常の発生時において、第1回転角検出部23A又は第2回転角検出部23Bの何れか一方が正常である場合には、その正常な機械角に基づき検出される操舵角θsに基づいて、代替的なパワーアシスト制御を実行する構成となっている。
【0037】
(回転角センサ)
次に、本実施形態のトルクセンサを構成する一対の回転角センサの構成について説明する。
【0038】
図3に示すように、本実施形態では、回転角検出の対象となる回転軸としてのステアリングシャフト3(ピニオンシャフト3c)には、そのトーションバー15を挟むステアリング2側及びラック軸5側の二位置P1,P2(図2参照)において、同ステアリングシャフト3とともに一体回転する一対の磁石回転子31(31A,31B)が設けられている。そして、上記のようにトルクセンサ14を構成する本実施形態の各回転角センサ16(16A,16B)は、これら各磁石回転子31の回転により生ずる磁束変化に基づいて、その出力する各センサ信号Sa,Sb,Scの出力レベルが変化する磁気式の回転角センサとして構成されている。
【0039】
詳述すると、本実施形態の磁石回転子31は、所定の径方向幅を有して円環状に形成されるとともに、同磁石回転子31には、その周方向に沿って極性(N/S)の異なる磁極が交互に形成されている。そして、本実施形態の回転角センサ16(16A,16B)は、この磁石回転子31と同軸の円周上に均等角度間隔で3つの磁気検出素子32(32a,32b,32c)を配置することにより形成されている。
【0040】
具体的には、本実施形態の磁石回転子31は、その内周31aに沿って3対の磁極(合計6極)が形成された第1磁極部33、及びその外周31bに沿って7対の磁極(合計14極)が形成された第2磁極部34を有している。尚、上記各磁気検出素子32(32a,32b,32c)には、ホール素子が用いられている。また、本実施形態では、これら第1磁極部33及び第2磁極部34の径方向幅は、等しく設定されている。そして、これら各磁気検出素子32(32a,32b,32c)は、上記第1磁極部33及び第2磁極部34の境界部(同図中、円周L)と対向する軸方向位置に設けられている。
【0041】
即ち、本実施形態の回転角センサ16(16A,16B)において、センサ要素を構成する各磁気検出素子32(32a,32b,32c)は、その対応する磁石回転子31(31A,31B)の回転に伴い、第1磁極部33の磁界に基づく3倍角成分及び第2磁極部34の磁界に基づく7倍角成分の合成波形を有したセンサ信号Sa,Sb,Scを出力する。そして、本実施形態の回転角センサ16(16A,16B)は、これら各磁気検出素子32(32a,32b,32c)を、磁石回転子31と同軸の円周上に均等角度間隔で配置することにより、図4(a)〜(c)に示すように、その信号変化の位相が均等にずれた三相のセンサ信号Sa,Sb,Scを出力する構成となっている。
【0042】
(回転角検出)
次に、各回転角検出部による回転角検出の態様について説明する。
上記のように、本実施形態の回転角センサ16(16A,16B)が出力する三相のセンサ信号Sa,Sb,Scは、その相数に等しい3倍角成分及び相数の非倍数に対応する7倍角成分の合成波形を有する。また、各磁気検出素子32(32a,32b,32c)は、上記第1磁極部33及び第2磁極部34の境界部(同図中、円周L)と対向する軸方向位置に設けられていることから、これら3倍角成分及び7倍角成分は、略等しい振幅を有している。従って、各回転角検出部23(23A,23B)にセンサ信号群S1,S2として入力される各センサ信号Sa,Sb,Scの値(センサ値)を「a」「b」「c」とすると、その波形は、次の(1)〜(3)式に表すことができる。尚、「θ」は、回転角(電気角)である。
【0043】
a=sin3(θ)+sin7(θ) ・・・(1)
b=sin3(θ+120°)+sin7(θ+120°) ・・・(2)
c=sin3(θ+240°)+sin7(θ+240°) ・・・(3)
ここで、上記(1)〜(3)式は、次のように変形することができる。
【0044】
a=sin(3θ)+sin(7θ) ・・・(4)
b=sin(3θ+360°)+sin(7θ+840°) ・・・(5)
c=sin(3θ+720°)+sin(7θ+1680°) ・・・(6)
更に、「sin(360°)=0」から、次のように変形される。
【0045】
a=sin(3θ)+sin(7θ) ・・・(7)
b=sin(3θ)+sin(7θ+120°) ・・・(8)
c=sin(3θ)+sin(7θ+240°) ・・・(9)
そして、これら(7)〜(9)式を加算して、各センサ信号Sa,Sb,Scの相数である「3」で除することにより、次式を得る。
【0046】
(a+b+c)/3=sin(3θ) ・・・(10)
即ち、各センサ値a,b,cの平均値「(a+b+c)/3」は、当該各センサ値a,b,cに含まれた3倍角成分「sin(3θ)」の値に等しい。
【0047】
この点を踏まえ、検出手段としての各回転角検出部23(23A,23B)は、入力される各センサ値a,b,cから当該各センサ値a,b,cの平均値「(a+b+c)/3」を減算することにより、各センサ値a,b,cに含まれる7倍角成分の値を抽出する。具体的には、上記(7)〜(9)式から(10)式を減算することにより、次の各式を得る。
【0048】
a−(a+b+c)/3=sin(7θ) ・・・(11)
b−(a+b+c)/3=sin(7θ+120°) ・・・(12)
c−(a+b+c)/3=sin(7θ+240°) ・・・(13)
そして、各回転角検出部23(23A,23B)は、これら(11)〜(13)式に基づいて、各センサ信号Sa,Sb,Scにおける任意の二信号の組み合わせ数に対応した3つの回転角検出値θa,θb,θcを演算する。
【0049】
詳述すると、先ず、次の(14)〜(16)式に示すように、上記(11)〜(13)式の左辺、即ち各センサ値a,b,cから当該各センサ値a,b,cの平均値を減算した値を「α」「β」「γ」とする。
【0050】
α=a−(a+b+c)/3 ・・・(14)
β=b−(a+b+c)/3 ・・・(15)
γ=c−(a+b+c)/3 ・・・(16)
これにより、これら「α」「β」「γ」における任意の二値の組合せの比は、次の(17)〜(19)式に表すことができる。
【0051】
α/β=sin7θ/sin(7θ+120°) ・・・(17)
β/γ=sin(7θ+120°)/sin(7θ+240°) ・・・(18)
γ/α=sin(7θ+240°)/sin7θ ・・・(19)
そして、これら(17)〜(19)式を変形することで、次の各式を得る。
【0052】
tan7θ=α√3/(2β+α) ・・・(20)
tan7θ=(β+γ)√3/(γ−β) ・・・(21)
tan7θ=−α√3/(2γ+α) ・・・(22)
即ち、次の各式に示す正接逆関数(arctan:アークタンジェント)を用いることにより、各センサ値a,b,cから当該各センサ値a,b,cの平均値を減算した値α,β,γに基づいて、当該各センサ信号Sa,Sb,Scにおける任意の二信号の組み合わせ数に対応した3つの回転角検出値θa,θb,θcが得られる。
【0053】
θa=arctan(α√3/(2β+α))/7 ・・・(23)
θb=arctan((β+γ)√3/(γ−β))/7 ・・・(24)
θc=arctan(−α√3/(2γ+α))/7 ・・・(25)
そして、本実施形態の各回転角検出部23(23A,23B)は、次式に示すように、これら各回転角検出値θa,θb,θcの平均を求めることにより、7倍の軸倍角を有する電気角θel(θel1,θel2)を検出する。
【0054】
θel=(θa+θb+θc)/3 ・・・(26)
尚、上記(17)〜(25)式に示される回転角(電気角)検出の詳細については、例えば、特許文献2の記載等を参照されたい。
【0055】
次に、各回転角検出部23(23A,23B)は、このようにして検出された電気角θelに基づいて、7個の機械角推定値(θab_e)を演算する。
即ち、軸倍角が7倍であることから、例えば、その電気角θelが「X°」である場合に取りうる機械角の値、つまり機械角推定値(θab_e)は、「X°」「X+(360/7)°」「X+2×(360/7)°」「X+3×(360/7)°」「X+4×(360/7)°」「X+5×(360/7)°」「X+6×(360/7)°」の7個となる。
【0056】
本実施形態では、各回転角検出部23(23A,23B)は、これらの各機械角推定値(θab_e)を各センサ値a,b,cに含まれる3倍角成分の基本式に代入する(上記(10)式参照)。そして、これにより得られる各値、つまり各機械角推定値(θab_e)を3倍角成分に換算した値を上記平均値((a+b+c)/3)と比較して、最も値が近いもの(差分の絶対値が小さいもの)を機械角(θab1,θab2)として検出する。
【0057】
即ち、図5のフローチャートに示すように、各回転角検出部23(23A,23B)は、対応する回転角センサ16から三相のセンサ信号Sa,Sb,Scが入力されると(ステップ101)、先ず、その各センサ値a,b,cの平均値「(a+b+c)/3」を演算する(ステップ102、上記(1)〜(10)式参照)。続いて、各回転角検出部23(23A,23B)は、上記ステップ102において演算された平均値を各センサ値a,b,cから減算することにより、当該各センサ値a,b,cに含まれる7倍角成分を抽出する(非相倍数倍角成分:ステップ103、上記(11)〜(13)式参照)。そして、当該7倍角成分に基づいて、7倍の軸倍角を有する電気角θel(θel1,θel2)を検出し((17)〜(25)式参照)、当該電気角θelを上記操舵トルク検出部24に出力する(ステップ104)。
【0058】
次に、各回転角検出部23(23A,23B)は、上記ステップ104において演算された電気角θelに基づいて、その軸倍角に対応する7個の機械角推定値θab_e(θab_e1〜θab_e7)を演算する(ステップ105)。更に、これらの各機械角推定値θab_eを各センサ値a,b,cに含まれる3倍角成分の基本式に代入して得られる値を上記平均値と比較する(ステップ106、上記(10)式参照)。そして、その比較結果に基づいて、検出対象となるステアリングシャフト3の機械角θab(θab1,θab2)を検出し、操舵角検出部25に出力する(ステップ107)。
【0059】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)トルクセンサ14を構成する各回転角センサ16(16A,16B)は、3倍角成分及び7倍角成分の合成波形を有するとともに回転角に応じた信号変化の位相が均等にずれた三相のセンサ信号Sa,Sb,Scを出力する。一方、各回転角検出部23(23A,23B)は、各センサ値a,b,cから該各センサ値a,b,cの平均値を減算して各センサ値a,b,cに含まれる7倍角成分の値を抽出することにより7倍の軸倍角を有する電気角θel(θel1,θel2)を検出する。そして、その電気角θelに基づき推定される7個の機械角推定値θab_e(θab_e1〜θab_e7)を3倍角成分に換算して上記各センサ値a,b,cの平均値と比較することにより、検出対象であるステアリングシャフト3の機械角θab(θab1,θab2)を検出する。
【0060】
上記構成によれば、高い角度分解能を確保しつつ、一の回転角センサ16が出力するセンサ信号Sa,Sb,Scに基づいて、検出対象であるステアリングシャフト3の機械的な一回転を一周期とする機械角θab(θab1,θab2)を検出することができる。これにより、ステアリングセンサ等の回転角センサを付加することなく、ステアリング2に生じた操舵角θsを検出することができる。そして、各回転角センサ16(16A,16B)の一方に異常が発生した場合でも、他方側において検出される機械角を用いることにより、その操舵角θsの検出を継続することができる。その結果、簡素な構成にて、より高い信頼性を確保することができるようになる。
【0061】
(2)回転角センサ16は、周方向に沿って3対の磁極が形成された第1磁極部33及び7対の磁極が形成された第2磁極部34を有する磁石回転子31と、当該磁石回転子31と同軸の円周上に均等角度間隔で配置された3個の磁気検出素子32(32a,32b,32c)と、を備えてなる。
【0062】
上記構成によれば、簡素な構成にて、3倍角成分及び7倍角成分の合成波形を有するとともに回転角に応じた信号変化の位相が均等にずれた三相のセンサ信号Sa,Sb,Scを出力させることができる。
【0063】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、本発明を、EPS1において回転角検出装置を構成するECU11に具体化した。しかし、これに限らず、EPS以外の用途に用いられる回転角検出装置に具体化してもよい。
【0064】
・また、EPS用の回転角センサに具体化する場合においても、そのEPSの形式については、所謂コラム型に限らず、所謂ピニオン型やラックアシスト型であってもよい。
・更に、上記実施形態では、本発明を、トルクセンサ14を構成する各回転角センサ16(16A,16B)による回転角検出に適用してステアリングシャフト3の機械角を検出することとした。しかし、これに限らず、例えば、モータレゾルバ(モータ回転角センサ)28に適用して、EPSアクチュエータ10の駆動源であるモータ12の回転角(電気角:モータ回転角θm)を検出する。そして、モータ回転軸の機械角を検出し、当該機械角及びEPSアクチュエータ10の減速比に基づいて、ステアリング2に生じた操舵角θsを検出する構成としてもよい。更に、トルクセンサ14を構成する各回転角センサ16(16A,16B)によるステアリングシャフト3の回転角検出及びモータレゾルバ28によるモータ回転角検出の双方に、本発明の回転角検出装置を適用する構成であってもよい。そして、専用の回転角センサ(ステアリングセンサ)を用いて操舵角検出を行う構成についても同様に、本実施形態の回転角検出装置を適用してもよい。
【0065】
・上記実施形態では、各回転角センサ16(16A,16B)が出力する三相のセンサ信号Sa,Sb,Scは、その相数に等しい3倍角成分及び相数の非倍数に対応する7倍角成分の合成波形を有することとした。しかし、これに限らず、各センサ信号は、当該各センサ信号の相数の倍数に対応するn倍角成分(但し、nは整数)及びその相数の非倍数に対応するm倍角成分(但し、mは整数)の合成波形を有するものであればよい(sin(nθ)+sin(mθ))。
【0066】
具体的には、その相数の倍数に対応するn倍角成分を「相倍数倍角成分」、相数の非倍数に対応するm倍角成分を「非相倍数倍角成分」とすると、例えば、各センサ信号Sa,Sb,Scが、その「相倍数倍角成分」として相数の2倍に対応する6倍角成分を含む構成であってもよい。
【0067】
・また、「非相倍数倍角成分」は、「相倍数倍角成分」よりも小さくてもよい。具体的には、例えば、図6に示すように、各磁気検出素子32(32a,32b,32c)の個数、即ちセンサ信号の相数に等しい3対の磁極が形成された第1磁極部36、及び1対の磁極が形成された第2磁極部37を備えた回転角センサ38を用いる。即ち、同回転角センサ38は、3倍角成分(sin3θ)及び「非相倍数倍角成分」として1倍角成分の合成波形を有する三相のセンサ信号Sa,Sb,Sc、つまり図7に示されるような基本波形Sを有した各センサ信号Sa,Sb,Scを出力する。そして、このように、その検出される電気角の軸倍角(電気角倍率)を小さく設定することによって、その検出される電気角から推定される機械角の数を低減して当該機械角の検出に要する演算負荷を軽減することができる。特に、「非相倍数倍角成分」の軸倍角が「1」であることで、その機械角推定値の数は一つとなる。従って、このような場合には、その機械角推定値の演算、及び当該機械角推定値を「相倍数倍角成分」の基本式に代入して得られる値と上記平均値とを比較する工程(図5参照、ステップ105,106)を省略することができる。
【0068】
・更に、センサ信号の相数については、三相以上あれば何相あってもよい。
・上記実施形態では、各磁気検出素子32(32a,32b,32c)には、ホール素子を用いることとしたが、その他、磁気抵抗素子(GMR等)を用いる等の構成であってもよい。
【0069】
・上記実施形態では、各回転角センサ16(16A,16B)は、磁気検出素子32(32a,32b,32c)をセンサ要素とする磁気式の回転角センサとして構成されることとした。しかし、センサ要素として磁気検出手段を用いるものに限らず、励磁信号に基づくセンサ信号を出力するレゾルバを回転角センサに用いる構成であってもよい。尚、既知の二成分の合成波形を有したセンサ信号を出力するレゾルバについては、例えば、特開2008−157664号公報等に、その開示がある。
【0070】
・上記実施形態では、3倍角成分と7倍角成分の振幅は、略等しいこととしたが、「相倍数倍角成分」と「非相倍数倍角成分」との振幅比は、必ずしもこれに限るものではない。
【0071】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を記載する。
(イ)周方向に沿ってn対(但し、nは整数)の磁極が形成された第1磁極部及びm対(但し、mは整数)の磁極が形成された第2磁極部を有する磁石回転子と、前記磁石回転子と同軸の円周上に均等角度間隔で配置された前記相数に対応する複数の磁気検出手段と、を備えてなる回転角センサ。これにより、簡素な構成にて、m倍角成分及びn倍角成分の合成波形を有するとともに回転角に応じた信号変化の位相が均等にずれたn相のセンサ信号を出力させることができる。
【0072】
(ロ)検出対象の回転角に応じて値が変化するとともに前記回転角に応じた信号変化の位相が均等にずれるように設定された三相以上のセンサ信号に基づいて、前記回転角を検出する回転角の検出方法において、前記各センサ信号は、相数の倍数に対応するn倍角成分(但し、nは整数)及び前記相数の非倍数に対応するm倍角成分(但し、mは整数)の合成波形を有するものであって、各センサ値から該各センサ値の平均値を減算して前記各センサ値に含まれる前記m倍角成分の値を抽出することによりm倍の軸倍角を有する電気角を検出するとともに、前記電気角に基づき推定されるm個の機械角推定値を前記n倍角成分の値に換算して前記平均値と比較することにより、前記検出対象の機械的な一回転を一周期とする機械角を検出すること、を特徴とする回転角の検出方法。これにより、高い角度分解能を確保しつつ、一の回転角センサが出力するセンサ信号に基づいて、検出対象の機械的な一回転を一周期とする機械角を検出することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…電動パワーステアリング装置(EPS)、2…ステアリング、3…ステアリングシャフト、10…EPSアクチュエータ、11…ECU、12…モータ、14…トルクセンサ、15…トーションバー、16(16A,16B),38…回転角センサ、21…マイコン、23…回転角検出部、23A…第1回転角検出部、23B…第2回転角検出部、24…操舵トルク検出部、25…操舵角検出部、28…モータレゾルバ、31…磁石回転子、32(32a,32b,32c)…磁気検出素子、33,36…第1磁極部、34,37…第2磁極部、S1,S2…センサ信号群、Sa,Sb,Sc…センサ信号、a,b,c…センサ値、θa,θb,θc…回転角検出値、θel(θel1,θel2)…電気角、τ…操舵トルク、θab_e(θab_e1〜θab_e7)…機械角推定値、θab(θab1,θab2)…機械角、θs…操舵角、θm…モータ回転角。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7