特許第5652196号(P5652196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5652196-パワーコンディショナ 図000002
  • 特許5652196-パワーコンディショナ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5652196
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】パワーコンディショナ
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20141218BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20141218BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20141218BHJP
【FI】
   H02J3/38 G
   H02J7/35 K
   H02M7/48 R
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-289184(P2010-289184)
(22)【出願日】2010年12月27日
(65)【公開番号】特開2012-139019(P2012-139019A)
(43)【公開日】2012年7月19日
【審査請求日】2013年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100099977
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 章吾
(74)【代理人】
【識別番号】100104259
【弁理士】
【氏名又は名称】寒川 潔
(72)【発明者】
【氏名】峠田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】土屋 友範
(72)【発明者】
【氏名】若山 義洋
(72)【発明者】
【氏名】市村 悟
(72)【発明者】
【氏名】濱谷 佳和
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−180467(JP,A)
【文献】 特開平06−133472(JP,A)
【文献】 特開2012−100395(JP,A)
【文献】 特開2006−351418(JP,A)
【文献】 特開2010−233408(JP,A)
【文献】 特開2009−284586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00− 7/12、 7/34− 7/36、
H02M 7/42− 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流発電設備から供給される直流電力を昇圧するコンバータと、昇圧された直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給するインバータと、蓄電部と、前記コンバータとインバータとの間のDCリンク部の電圧を前記蓄電部の電圧と変換する蓄電部用コンバータと、制御部とを備え、前記制御部は、電力系統の電圧が所定電圧を超えたときには前記インバータの出力電力を抑制する系統電圧上昇抑制制御を行うように構成されたパワーコンディショナであって、
前記制御部は、前記系統電圧上昇抑制制御を実行しているときに、前記蓄電部への蓄電を行うものにおいて、
前記蓄電部の充電空き容量を監視する充電空き容量監視手段を備えてなり、
前記制御部は、この充電空き容量監視手段から得られる情報に基づいて特定された蓄電部の充電空き容量が一定値未満となったときには前記蓄電部の電力を強制的に消費させる電力消費制御を行うとともに、前記系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミングを記憶し、この記憶に基づいて次に系統電圧上昇抑制制御が実行されるタイミングを予測して、当該予測される次の系統電圧上昇抑制制御の実行前に前記電力消費制御を実行することを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項2】
直流発電設備から供給される直流電力を昇圧するコンバータと、昇圧された直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給するインバータと、蓄電部と、前記コンバータとインバータとの間のDCリンク部の電圧を前記蓄電部の電圧と変換する蓄電部用コンバータと、制御部とを備え、前記制御部は、電力系統の電圧が所定電圧を超えたときには前記インバータの出力電力を抑制する系統電圧上昇抑制制御を行うように構成されたパワーコンディショナであって、
前記制御部は、前記系統電圧上昇抑制制御を実行しているときに、前記蓄電部への蓄電を行うものにおいて、
前記蓄電部の充電空き容量を監視する充電空き容量監視手段を備えてなり、
前記制御部は、この充電空き容量監視手段から得られる情報に基づいて特定された蓄電部の充電空き容量が一定値未満となったときには前記蓄電部の電力を強制的に消費させる電力消費制御を行うとともに、前記系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミングと、当該系統電圧上昇抑制制御を実行する直前における前記直流発電設備の発電量とを記憶し、これらの記憶に基づいて次に系統電圧上昇抑制制御が実行されるタイミングを予測して、当該予測される次の系統電圧上昇抑制制御の実行前に前記電力消費制御を実行することを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項3】
前記制御部が、次に系統電圧上昇抑制制御が実行されるタイミングを予測する際の基礎となる過去における系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミングのデータに、当該系統電圧上昇抑制制御を実行した曜日の情報が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載のパワーコンディショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はパワーコンディショナに関し、より詳細には、直流発電設備から供給される直流電力を電力系統に連系可能な交流電力に変換するパワーコンディショナにおいて、直流発電設備で発電された電力を有効に利用するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、太陽光発電設備などの直流発電設備を商用電源などの電力系統に接続する場合、これらの間にはパワーコンディショナが設けられている。
【0003】
この種のパワーコンディショナは、周知のとおり、直流発電設備から供給される直流電力を昇圧するコンバータと、昇圧された直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給するインバータと、該インバータと電力系統との間に直列に配設される開閉器(系統連系リレー)とを備えており、この開閉器を閉成することによって直流発電設備を電力系統に連系させる一方、開閉器を開成することによって直流発電設備を電力系統から解列できるように構成されている。
【0004】
ところで、直流発電設備を電力系統に連系させる場合、電力系統の電圧(系統電圧)が所定の電圧値(所定電圧)を超えて上昇すると、電力系統から電力供給を受ける機器(負荷)が故障するおそれがあることから、この種のパワーコンディショナにおいては、系統電圧の上昇を抑制するために、系統電圧が所定電圧を超えた場合には、出力電力を小さく抑制する制御(系統電圧上昇抑制制御)を行うものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−35640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のパワーコンディショナには以下のような問題があり、その改善が望まれていた。
【0007】
すなわち、系統電圧の上昇を抑制するために、出力電力を小さく抑制すると、パワーコンディショナが当該制御を行っている間は直流発電設備で発電された電力を電力系統に出力することができないので、発電された電力を有効に利用することができない。そのため、パワーコンディショナがかかる制御を行っている間は商用電源から購入する電力が増えることとなり、発電設備が発電しているにもかかわらず電力を購入する事態が発生し、発電設備を導入するコストメリットが得られないという問題があった。
【0008】
特に、一般家庭において直流発電設備(たとえば、太陽光発電設備)が普及しつつある現状においては、周辺の家庭に設置された太陽光発電設備からの逆潮流が増加すると、これに伴って系統電圧も上昇するので、上述したような事態(発電設備が発電しているにもかかわらず電力を購入する事態)が発生することが多くなると予想され、その問題解決が望まれていた。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、系統電圧が上昇した場合でも直流発電設備で発電された電力を有効に利用することができるパワーコンディショナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係るパワーコンディショナは、直流発電設備から供給される直流電力を昇圧するコンバータと、昇圧された直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給するインバータと、蓄電部と、上記コンバータとインバータとの間のDCリンク部の電圧を上記蓄電部の電圧と変換する蓄電部用コンバータと、制御部とを備え、上記制御部は、電力系統の電圧が所定電圧を超えたときには上記インバータの出力電力を抑制する系統電圧上昇抑制制御を行うように構成されたパワーコンディショナであって、上記制御部は、上記系統電圧上昇抑制制御を実行しているときに、上記蓄電部への蓄電を行うものにおいて、上記蓄電部の充電空き容量を監視する充電空き容量監視手段を備えてなり、上記制御部は、この充電空き容量監視手段から得られる情報に基づいて特定された蓄電部の充電空き容量が一定値未満となったときには上記蓄電部の電力を強制的に消費させる電力消費制御を行うとともに、上記系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミングを記憶し、この記憶に基づいて次に系統電圧上昇抑制制御が実行されるタイミングを予測して、当該予測される次の系統電圧上昇抑制制御の実行前に上記電力消費制御を実行することを特徴とする
【0011】
すなわち、この請求項1に係る発明は、パワーコンディショナに直流発電設備で発電された電力を蓄電する蓄電部を備えておき、系統電圧が所定電圧を超えることによってパワーコンディショナが出力電力を抑制する系統電圧上昇抑制制御を行う場合には、直流発電設備で発電された余剰電力を蓄電部に充電するようにして、発電された電力を有効に利用できるようにしている。
【0013】
また、パワーコンディショナに蓄電部の充電空き容量を監視する充電空き容量監視手段を備えることによって制御部が蓄電部の充電空き容量を把握できるようにしている。そして、この充電空き容量が一定値未満となったときには蓄電部の電力を強制的に消費させる電力消費制御を行っておき、系統電圧上昇抑制制御の実行に伴って蓄電部に充電するための充電空き容量を予め確保しておくようにしている。
【0015】
また、蓄電部の充電空き容量を増やす電力消費制御が系統電圧上昇抑制制御の実行前に行われるので、系統電圧上昇抑制制御の実行に伴って行われる蓄電部への充電時に充電空き容量が不足する事態が回避され、発電された電力を無駄なく充電することができる。
【0017】
そして、本発明の請求項1に係るパワーコンディショナでは、制御部が、これまでに系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミング(たとえば、当該制御を実行した時刻や時間帯など)に基づいて、次に系統電圧上昇抑制制御が実行されるタイミングを予測して電力消費制御を実行するので、系統電圧上昇抑制制御の実行に伴って行われる蓄電部への充電時に充電空き容量が不足する事態が効果的に回避されるようになり、発電された電力を無駄なく充電することができる。
【0018】
すなわち、たとえば、パワーコンディショナが設置される周辺に電力系統から大量の電力供給を受ける施設(たとえば、工場)などが存在する場合に、昼休み等の特定の時間帯に当該施設での電力消費が急激に低下し、それに伴って系統電圧が上昇する傾向が表れることがある。この請求項4に係るパワーコンディショナでは、このような時間帯による系統電圧の上昇に伴う系統電圧上昇抑制制御の実施タイミングが学習されることになり、当該時間帯の到来する前に蓄電部の電力を消費して充電空き容量を確保できるようになる。そのため、系統電圧上昇抑制制御の実施に際して充電空き容量が不足するのを的確に回避することができるようになる。
【0019】
本発明の請求項に係るパワーコンディショナは、直流発電設備から供給される直流電力を昇圧するコンバータと、昇圧された直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給するインバータと、蓄電部と、上記コンバータとインバータとの間のDCリンク部の電圧を上記蓄電部の電圧と変換する蓄電部用コンバータと、制御部とを備え、上記制御部は、電力系統の電圧が所定電圧を超えたときには上記インバータの出力電力を抑制する系統電圧上昇抑制制御を行うように構成されたパワーコンディショナであって、上記制御部は、上記系統電圧上昇抑制制御を実行しているときに、上記蓄電部への蓄電を行うものにおいて、上記蓄電部の充電空き容量を監視する充電空き容量監視手段を備えてなり、上記制御部は、この充電空き容量監視手段から得られる情報に基づいて特定された蓄電部の充電空き容量が一定値未満となったときには上記蓄電部の電力を強制的に消費させる電力消費制御を行うとともに、上記系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミングと、当該系統電圧上昇抑制制御を実行する直前における上記直流発電設備の発電量とを記憶し、これらの記憶に基づいて次に系統電圧上昇抑制制御が実行されるタイミングを予測して、当該予測される次の系統電圧上昇抑制制御の実行前に上記電力消費制御を実行することを特徴とする。
【0020】
この請求項に係るパワーコンディショナでは、制御部が、これまでに系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミング(たとえば、当該制御を実行した時刻や時間帯など)に加えて、これまでに系統電圧上昇抑制制御を実行した際の直前における直流発電設備の発電量に基づいて、次に系統電圧上昇抑制制御が実行されるタイミングを予測して電力消費制御を実行するので、系統電圧上昇抑制制御の実行に伴って行われる蓄電部への充電時に充電空き容量が不足する事態がより効果的に回避されるようになり、発電された電力を無駄なく充電することができる。
【0021】
すなわち、たとえば、周辺の多くの家庭に太陽光発電設備が設置されている場合、日射量が多くなると各太陽光発電設備の発電量が増加しこれらの太陽光発電設備から一斉に逆潮流が発生して系統電圧が上昇する傾向がある。この請求項5に係るパワーコンディショナは、過去に系統電圧上昇抑制制御を実行した際の直前における直流発電設備の発電量を学習することになるので、このような大量の逆潮流が発生する前に蓄電部の電力を消費して充電空き容量を確保できるようになる。そのため、系統電圧上昇抑制制御の実施に際して充電空き容量が不足するのを的確に回避することができるようになる。
【0022】
本発明の請求項に係るパワーコンディショナは、請求項1または2に記載のパワーコンディショナにおいて、上記制御部が、次に系統電圧上昇抑制制御が実行されるタイミングを予測する際の基礎となる過去における系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミングのデータに、当該系統電圧上昇抑制制御を実行した曜日の情報が含まれていることを特徴とする。
【0023】
この請求項に係るパワーコンディショナでは、過去に系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミングの学習にあたり、時刻等に加えて曜日の情報も用いられるので、たとえば、系統電圧の上昇が、特定の曜日にだけ電力系統から大量の電力供給を受ける施設での急激な電力消費の低下による場合などには、このような特定の曜日に発生する系統電圧上昇抑制制御の実施タイミングも学習されることになり、より実情に合わせて蓄電部の充電空き容量の確保ができるようになる。そのため、系統電圧上昇抑制制御の実施に際して充電空き容量が不足するのを的確に回避することができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、パワーコンディショナが直流発電設備で発電された電力を蓄電する蓄電部を備えており、系統電圧が所定電圧を超えることによって出力電力を抑制する系統電圧上昇抑制制御が行われる場合に、直流発電設備で発電された余剰電力を蓄電部に充電するので、直流発電設備で発電された電力を有効に利用できる。
【0025】
また、蓄電部の充電空き容量を監視する充電空き容量監視手段を備えさせるとともに、蓄電部の充電空き容量が一定値未満となったときには、制御部が蓄電部の電力を強制的に消費させるように構成することにより、系統電圧上昇抑制制御の実行に伴って蓄電部に充電するときの充電空き容量を確保しておくことができ、発電された電力を無駄なく有効に利用することができる。
【0026】
さらに、蓄電部の電力を強制的に消費させる制御が系統電圧上昇抑制制御の実行前に行われることにより、系統電圧上昇抑制制御の実行に伴って蓄電部への充電を行う時に充電空き容量が不足することが回避される。
【0027】
また、制御部が系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミングなどを記憶し、この記憶に基づいて次に系統電圧上昇抑制制御が実行されるタイミングを予測して、当該予測される次の系統電圧上昇抑制制御の実行前に蓄電部の電力を消費することにより、蓄電部への充電時に充電空き容量が不足する事態がより効果的に回避され、発電された電力を無駄なく利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係るパワーコンディショナの一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
図2】同パワーコンディショナの他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
実施形態1
図1は、本発明に係るパワーコンディショナの概略構成を示している。
図1に示すように、本発明に係るパワーコンディショナは、太陽光発電設備などの直流発電設備10で発電された直流電力を商用電源などの電力系統11に連系可能な交流電力に変換するパワーコンディショナであって、直流発電設備10から供給される直流電力を所定の電圧に昇圧するDC/DCコンバータ(以下、単に「コンバータ」と称する)1と、昇圧された直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給するDC/ACインバータ(以下、単に「インバータ」と称する)2と、上記直流発電設備10で発電された電力を充電するための蓄電池(蓄電部)3と、上記コンバータ1とインバータ2との間のDCリンク部の電圧を蓄電池3の電圧と変換するDC/DCコンバータ(以下、「蓄電部用コンバータ」と称する)4と、制御部5とを主要部として備えている。
【0030】
図1において、符号6は系統連系用の開閉器を示しており、この開閉器6の接点を閉成することによって直流発電設備10が電力系統11に連系される一方、開閉器6の接点を開成することによって直流発電設備10が電力系統11から解列されるように構成されている。
【0031】
制御部5は、マイコンを制御中枢とする制御手段であって、この制御部5によってパワーコンディショナの各部が制御されている。たとえば、この制御部5は、直流発電設備10を電力系統11に連系させる際には、上記開閉器6の接点を閉成させるとともに、コンバータ1やインバータ2を制御して、インバータ2の出力周波数や出力電圧が電力系統11に連系可能なものとなるように制御している。
【0032】
そして、この制御部5には、電力系統11の電圧(系統電圧)を検出する系統電圧検出手段(図示せず)が備えられており、系統電圧が所定電圧を超えた場合には、系統電圧の上昇を抑制して系統電圧が正常範囲に戻るように、インバータ2の出力電力を低下させて出力電力を抑制する制御(系統電圧上昇抑制制御)を行うように構成されている。
【0033】
本発明に係るパワーコンディショナは、このような系統電圧上昇抑制制御が行われたときに、直流発電設備10で発電された余剰電力(インバータ2から出力されない電力)を有効に利用するために、上記蓄電池3および蓄電部用コンバータ4を備えている。以下では、この蓄電池3への充電について説明する。
【0034】
すなわち、本実施形態に示すパワーコンディショナでは、制御部5は、直流発電設備10を電力系統11に連系させているときに、上記系統電圧検出手段によって検出される系統電圧を監視しており、この系統電圧が予め設定された所定電圧を超えて上昇すると、上述した系統電圧上昇抑制制御を実行する。
【0035】
系統電圧上昇抑制制御の実行によりパワーコンディショナの出力電力が低下すると直流発電設備10での発電電力に余剰電力が生じるので、制御部5は、系統電圧上昇抑制制御の実行に伴って上記蓄電部用コンバータ4を作動させてDCリンク部から蓄電池3への充電を開始する。この充電は、系統電圧が正常範囲にまで低下して上記系統電圧上昇抑制制御が解除されるまで行われる。
【0036】
そして、上記系統電圧上昇抑制制御が解除された場合には、制御部5は、パワーコンディショナの出力電力の抑制を止めて出力電力を増加させるので、その際に、上記蓄電池3に充電していた電力も電力系統11に供給する。
【0037】
このように、本実施形態に示すパワーコンディショナでは、系統電圧が所定電圧を超えることによってパワーコンディショナが系統電圧上昇抑制制御を行うときに、直流発電設備10で発電された余剰電力を蓄電池3に充電する一方、系統電圧上昇抑制制御が解除されると蓄電池3に充電しておいた電力を電力系統11に供給するので、直流発電設備10で発電された電力を無駄なく有効に利用することができる。
【0038】
ところで、このように直流発電設備10で発電された余剰電力を蓄電池3に充電する構成を採用する場合、蓄電池3の充電空き容量が重要である。すなわち、蓄電池3の充電空き容量が少なければ、上記系統電圧上昇抑制制御が実行され、蓄電池3への充電が開始されてもすぐに蓄電池3の充電容量が一杯になり直流発電設備10で発電された電力を充電することができなくなる。
【0039】
そのため、本実施形態に示すパワーコンディショナでは、このような事態を回避するために以下のような制御構成が好適に採用される。
【0040】
すなわち、蓄電池3に一定量の充電空き容量を確保するために、本実施形態に示すパワーコンディショナでは、蓄電池3の充電空き容量を監視する充電空き容量監視手段(図示せず)が備えられるとともに、制御部5は、この充電空き容量監視手段からの情報に基づいて特定された蓄電池3の充電空き容量が一定値未満となったときには、蓄電池3の電力を強制的に消費させる電力消費制御を行うように構成されている。
【0041】
ここで、この充電空き容量監視手段としては、たとえば、蓄電池3への充電量と蓄電池3からの放電量とを積算しながら、蓄電池3の充電容量から充電空き容量を演算するものが用いられるが、充電量と放電量の積算や充電空き容量の演算の全部または一部を制御部5で行うように構成していてもよい。要は、蓄電池3の充電空き容量が制御部5において特定可能な構成であれば、充電空き容量監視手段の具体的な構成は適宜変更することができる。
【0042】
また、充電空き容量が一定値未満の時に行う電力消費制御としては、たとえば、蓄電池3に充電されている電力を電力系統11に接続された負荷(図示せず)に供給して消費させる制御が採用される。つまり、電力系統11には図示しない分電盤を介して家庭内の照明器具や冷蔵庫などの電力負荷が接続されているので、本実施形態では蓄電池3に充電されている電力をこれら電力負荷に供給することによって蓄電池3の電力を強制的に消費させるようにしている。
【0043】
そのため、この電力消費制御は、制御部5が系統電圧上昇抑制制御を実行していないタイミングで行われる。そして好ましくは、この電力消費制御は、制御部5が上記系統電圧上昇抑制制御を実行する前(たとえば、系統電圧上昇抑制制御を実行する1時間程前のように系統電圧上昇抑制制御が実行される比較的直近の時点)に行われるようにされている。
【0044】
なお、充電空き容量監視手段からの情報に基づいて特定された蓄電池3の充電空き容量が一定値以上ある場合には、直流発電設備(たとえば、太陽光発電設備)10が発電を行っていないとき(たとえば、夜間など)に家庭内の電力負荷に電力を供給しているときを除き、上記系統電圧上昇抑制制御に合わせて蓄電池3への充電を行うようにしている。
【0045】
そこで、次に、上記制御部5が、上述した電力消費制御を実行するタイミングの設定方法について説明する。
【0046】
本実施形態に示すパワーコンディショナでは、上述した電力消費制御を実行するタイミングの設定に当たり、制御部5は、過去に系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミングなどを学習し、次に系統電圧上昇抑制制御が実行されるタイミングを予測して、当該予測される次の系統電圧上昇抑制制御の実行前に電力消費制御を実行するようにしている。
【0047】
具体的には、たとえば、制御部5は、系統電圧上昇抑制制御を実行すると、そのタイミング(たとえば、同制御を開始した時刻や同制御が行われた時間帯など)のデータを制御部5に設けられた記憶手段に記憶し、制御部5は、この記憶された過去の系統電圧上昇抑制制御の実行タイミングに基づいて、次に系統電圧上昇抑制制御が実行されるタイミングを予測するように構成される。たとえば、昨日の系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミング(同じ時刻や時間帯)に本日も系統電圧上昇抑制制御が行われると予測するようにされる。
【0048】
なお、このような系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミングに基づく予測は、予測の基礎になる過去のデータ(過去における系統電圧上昇抑制制御の実行タイミングのデータ)を多く集めて当該データを平均して予測結果を導いたり、あるいは、日照時間などとの関係で季節によって予測結果を修正する等の方法を採用することも可能である。
【0049】
このように、過去における系統電圧上昇抑制制御の実行タイミングに基づいて次に行われる系統電圧上昇抑制制御のタイミングを予測することにより、系統電圧の上昇がほぼ決まった時刻や時間帯に発生するような場合、たとえば、決った時刻や時間帯に電力系統11から大電力の供給を受ける工場などの施設が周辺にあるような場合には、系統電圧上昇抑制制御が実行されるタイミングを正確に予測することができ、同制御が実行される前に上記電力消費制御を行うことが可能になる。
【0050】
そして、この電力消費制御を実行するタイミングの設定(次の系統電圧上昇抑制制御の実行タイミングの予測)については、上述した過去における系統電圧上昇抑制制御の実行タイミングのデータに基づくだけでなく、たとえば、この実行タイミングのデータに加えて、過去において系統電圧上昇抑制制御を実行したときの直流発電設備10の発電量のデータも加味して行うこともできる。
【0051】
すなわち、この場合、制御部5は、過去に系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミングのデータと、当該系統電圧上昇抑制制御を実行する直前における直流発電設備10の発電量のデータとを記憶し、これらの記憶されたデータに基づいて、次に系統電圧上昇抑制制御が実行されるタイミングを予測するように構成される。
【0052】
具体的には、たとえば、制御部5は、系統電圧上昇抑制制御を実行すると、そのタイミング(同制御を開始した時刻や同制御が行われた時間帯など)のデータを上記記憶手段に記憶するとともに、系統電圧上昇抑制制御を開始する直前(具体的には、数十分から1時間程度前)の直流発電設備10の発電量のデータを上記記憶手段に記憶する。そして、現在(現時点)が、過去に系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミング(同じ時刻や時間帯)の直前に該当し、かつ、現時点での直流発電設備10の発電量が記憶手段に記憶された過去の発電量以上になっていれば、その時点で系統電圧上昇抑制制御が開始される直前であると予測する。
【0053】
ここで、次に系統電圧上昇抑制制御が実行されるタイミングの予測にあたり、過去に系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミングだけでなく、過去に系統電圧上昇抑制制御を実行したとき(その直前)の直流発電設備10の発電量も用いているのは、直流発電設備10が太陽光発電設備である場合には、時刻や時間帯だけでは発電の有無が判断できない(具体的には、タイミングは該当しても雨天などで発電されていない場合がある)からであり、発電量も予測材料に含めることで、より正確に次に系統電圧上昇抑制制御が行われるタイミングを予測できるようにしている。
【0054】
しかも、周辺に太陽光発電設備が多く存在する場合には、日射量が多くなると各太陽光発電設備の発電量が増加しこれらの太陽光発電設備から一斉に逆潮流が発生して系統電圧が上昇する傾向(換言すれば、系統電圧上昇抑制制御が実行される傾向)があるので、現時点での発電量が過去に系統電圧上昇抑制制御を実行した際の直前の発電量になっていれば系統電圧上昇抑制制御が実行される可能性が高く、この点でも次に系統電圧上昇抑制制御が行われるタイミングを正確に予測できるようにできる。
【0055】
そして、この電力消費制御を実行するタイミングの設定(次の系統電圧上昇抑制制御の実行タイミングの予測)については、さらなる改変例として、制御部5が、次に系統電圧上昇抑制制御が実行されるタイミングを予測する際の基礎としているデータ(具体的には、過去における系統電圧上昇抑制制御の実行したタイミングのデータ)に、当該系統電圧上昇抑制制御を実行した時刻等の情報に加えて、当該系統電圧上昇抑制制御を実行した曜日の情報を含めることができる。
【0056】
すなわち、この場合、制御部5は、系統電圧上昇抑制制御を実行すると、そのタイミング(同制御を開始した時刻や同制御が行われた時間帯に加えて同制御が行われた曜日)のデータを上記記憶手段に記憶する。また、その際に、系統電圧上昇抑制制御を開始する直前の直流発電設備10の発電量のデータも記憶手段に記憶する。そして、現在(現時点)が、過去に系統電圧上昇抑制制御を実行したときと同じ曜日に該当し、かつ、同じ時刻や時間帯の直前であり、さらに、現時点での直流発電設備10の発電量が記憶手段に記憶された過去の発電量以上になっていれば、その時点で系統電圧上昇抑制制御が開始される直前であると予測するように構成される。
【0057】
たとえば、1週間前の12時に系統電圧上昇抑制制御が実行されており、その直前に直流発電設備10が発電していた電力が3kWだとすると、制御部5は、12時になる一定時間前(たとえば、1時間前)から直流発電設備10の発電量を監視しはじめ、直流発電設備10の発電量が3kW(または、この値にマージンを設定した値、たとえば2.7kW)を超えると、その時点で、系統電圧上昇抑制制御が実行されそうであると判断(予測)する。その一方で、時刻が同じ11時であっても曜日が異なっていれば、制御部5は系統電圧上昇抑制制御が実行されるか否かの予測は行わない。
【0058】
そのため、このように過去における系統電圧上昇抑制制御を実行したタイミングのデータに曜日の情報を含めることで、特定の曜日にだけ発生する系統電圧上昇抑制制御についても学習されることになり、より実情に合わせて蓄電池3の充電空き容量を確保できるようになる。
【0059】
実施形態2
次に、本発明の他の実施形態を図2に基づいて説明する。
図2は、上述した実施形態1ではパワーコンディショナに内蔵されていた蓄電池3と蓄電部用コンバータ4を、パワーコンディショナとは別体のユニット(蓄電ユニット)に収容した場合を示している。なお、この図2に示すパワーコンディショナは、蓄電池3と蓄電部用コンバータ4とを別ユニットとして構成しているが、各部の基本的な構成や動作は上述した実施形態1と同様であるので共通する部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0060】
この図2に示すパワーコンディショナは、上述したように、蓄電池3と蓄電部用コンバータ4とを別ユニットとして構成したことから、これらが収容される蓄電ユニットにもマイコンを制御中枢とする制御部7が備えられている。
【0061】
そして、この蓄電ユニットの制御部7と本体ユニットの制御部5は通信線を介して通信可能に接続されており、これら制御部7,5間での通信によって上述した各種制御を分担して行うように構成されている。
【0062】
このように、蓄電池3と蓄電部用コンバータ4を本体ユニットと別体に構成することにより、蓄電池3に容積が大きい電池を用いる場合であっても、本体ユニットは小型に設計することができるので、設置場所を自由に設定することができる。
【0063】
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく発明の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 DC/DCコンバータ(コンバータ)
2 DC/ACインバータ(インバータ)
3 蓄電池(蓄電部)
4 DC/DCコンバータ(蓄電部用コンバータ)
5 制御部
6 開閉器
7 蓄電ユニットの制御部
10 直流発電設備
11 電力系統
図1
図2