特許第5652217号(P5652217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5652217
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/18 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
   H02P6/02 371T
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-7867(P2011-7867)
(22)【出願日】2011年1月18日
(65)【公開番号】特開2012-151967(P2012-151967A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2013年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077931
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100110939
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100110940
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 高久
(74)【代理人】
【識別番号】100113262
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 祐二
(74)【代理人】
【識別番号】100117581
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 克也
(74)【代理人】
【識別番号】100117710
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智雄
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100124671
【弁理士】
【氏名又は名称】関 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100131060
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 靖也
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100131901
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 雅典
(74)【代理人】
【識別番号】100132012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩下 嗣也
(74)【代理人】
【識別番号】100141276
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 康二
(74)【代理人】
【識別番号】100143409
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100157093
【弁理士】
【氏名又は名称】間脇 八蔵
(74)【代理人】
【識別番号】100163186
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 裕吉
(74)【代理人】
【識別番号】100163197
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100163588
【弁理士】
【氏名又は名称】岡澤 祥平
(72)【発明者】
【氏名】谷口 智勇
(72)【発明者】
【氏名】関本 守満
(72)【発明者】
【氏名】日比野 寛
(72)【発明者】
【氏名】前田 敏行
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−008490(JP,A)
【文献】 特開2008−086076(JP,A)
【文献】 特開2003−299381(JP,A)
【文献】 特開2008−154335(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/040965(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/00− 6/24
H02P 21/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を備えて、交流電源(6)から供給された交流電力を所定の電圧及び周波数の交流電力に電力変換し、接続されたモータ(7)に供給する電力変換装置であって、
前記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングを制御する制御部(5)と、
前記スイッチングにより生じるリプルを平滑するコンデンサ(3a)とを備え、
前記制御部(5)は、前記モータ(7)の起動時に、起動時の最大運転周波数以上の周波数で且つ前記交流電源(6)の2倍以上の周波数であって該モータ(7)が駆動しない大きさの高周波電流を該モータ(7)に流して該モータ(7)の回転子(7a)の位置検出を行い、検出した位置に応じ、モータ電流(iu,iv,iw)の大きさを制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1の電力変換装置において、
入力交流を全波整流するコンバータ回路(2)を備え、
前記コンデンサ(3a)は、前記コンバータ回路(2)の出力間に並列接続されて直流リンク部(3)を構成し、脈動する直流電圧(vdc)を出力し、
前記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)は、インバータ回路(4)を構成して前記直流リンク部(3)の出力をスイッチングして交流に変換し、前記モータ(7)に供給することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記コンデンサ(3a)の電圧が過電圧とならないように前記モータ(7)のトルクを制限することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちの何れか1つの電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記モータ(7)の速度指令(ω*)が所定閾値(th)を超えた後は、前記モータ(7)の誘起電圧を検知して前記回転子(7a)の位置検出を行うことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4の電力変換装置において、
前記制御部(5)は、誘起電圧による位置検出に切替わった後は、前記モータ(7)のトルクの制限値を増加させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5のうちの何れか1つの電力変換装置において、
前記制御部(5)は、高周波電流による位置検出を行いつつ前記モータ(7)を起動した際に、該モータ(7)のトルクが制限値に到達して一定期間が経過しても該モータ(7)が回転しない場合には、モータ電流(iu,iv,iw)の位相を電気角で180度変更することを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された電力をスイッチングして所定の電力に変換する電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電力変換装置としてインバータ回路が知られている。インバータ回路は、スイッチング制御により、直流電力を可変周波数・可変電圧の交流電力に高効率変換する回路である。
【0003】
一般的に、インバータ回路は、ダイオード整流回路と平滑コンデンサとインバータとが接続されて構成されている。上記ダイオード整流回路は、複数のダイオードが接続されるブリッジ回路を有している。上記平滑コンデンサは、ダイオード整流回路の出力電圧リプルを除去するためのものである。上記インバータは、2つのスイッチング素子を直列に接続したものを3つ並列に接続して構成されている。
【0004】
ところで、上記インバータ回路では、平滑コンデンサとして大容量である電解コンデンサが使用されている。この電解コンデンサは、インバータ回路の構成部材の中では、比較的大型の部材であると共に高価であるため、インバータ回路がコストアップすると共に大型化してしまうという問題があった。また、インバータ回路の耐用期間は、電解コンデンサの耐用期間が短いことに伴って短くなるという問題があった。 このような問題に対して、電解コンデンサを用いない電力変換装置が種々提案されいる。例として、従来より必要とされていた大容量の平滑コンデンサに代えて、小容量の平滑コンデンサを用いると共に負荷側(例えばモータ等)を制御することで、電源側の力率低下問題や高調波問題を解消する、いわゆるコンデンサレスインバータ回路が提案されている。コンデンサレスインバータ回路は、ダイオード整流回路の出力側に、従来の大容量の平滑コンデンサに代えて、例えば数十μF程度の小容量に構成される平滑コンデンサを設けている(例えば特許文献1、2や非特許文献1を参照)。これらの例では、電力変換装置には、負荷としてモータが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−51589号公報
【特許文献2】特開2005−130666号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】芳賀、斎藤、高橋“単相ダイオード整流回路の電解コンデンサレス高力率インバータ制御法”、平成15年電気学会全国大会論文集4-069(平成15年3月)、P.99
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記文献の例では、直流リンク部のエネルギー蓄積要素(コンデンサ)が小さいので、力率が低い領域でモータを運転すると、モータに電力が向かう期間において直流リンク部の電圧が減少し、モータから電力が回生される期間において直流リンク部の電圧が上昇する。さらに、直流リンク部の電圧変動により入力リアクタと直流リンク部コンデンサの間に共振が発生し、直流リンク部の電圧変動が大きくなる。特に、同期引き込みによるモータ起動時には過電圧となる可能性がある。同期引き込みによるモータ起動では、予め定めた大きなモータ電流を用いるため、軽負荷においてはモータ駆動トルクに寄与しない電流が大半を占める。その為、モータ電流は力行と回生を繰り返し、直流リンク部に大きな電圧変動を発生させる。
【0008】
本発明は前記の問題に着目してなされたものであり、モータが接続される電力変換装置において、モータの起動時に、コンデンサ電圧の上昇を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため、第1の発明は、
スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を備えて、交流電源(6)から供給された交流電力を所定の電圧及び周波数の交流電力に電力変換し、接続されたモータ(7)に供給する電力変換装置であって、
前記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングを制御する制御部(5)と、
前記スイッチングにより生じるリプルを平滑するコンデンサ(3a)とを備え、
前記制御部(5)は、前記モータ(7)の起動時に、起動時の最大運転周波数以上の周波数で且つ前記交流電源(6)の2倍以上の周波数であって該モータ(7)が駆動しない大きさの高周波電流を該モータ(7)に流して該モータ(7)の回転子(7a)の位置検出を行い、検出した位置に応じ、モータ電流(iu,iv,iw)の大きさを制御することを特徴とする。
【0010】
この構成では、モータ(7)の起動時には、該モータ(7)に高周波電流が流される。これにより、モータ(7)の突極性を利用して回転子(7a)の位置を演算することができる。
【0011】
また、第2の発明は、
第1の発明の電力変換装置において、
入力交流を全波整流するコンバータ回路(2)を備え、
前記コンデンサ(3a)は、前記コンバータ回路(2)の出力間に並列接続されて直流リンク部(3)を構成し、脈動する直流電圧(vdc)を出力し、
前記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)は、インバータ回路(4)を構成して前記直流リンク部(3)の出力をスイッチングして交流に変換し、前記モータ(7)に供給することを特徴とする。
【0012】
この構成では、直流リンク部に直流平滑用の電解コンデンサを持たない電力変換装置(いわゆるコンデンサレスインバータ回路)において、モータ(7)の突極性を利用して回転子(7a)の位置を演算することができる。
【0013】
また、第3の発明は、
第1又は第2の発明の電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記コンデンサ(3a)の電圧が過電圧とならないように前記モータ(7)のトルクを制限することを特徴とする。
【0014】
この構成では、モータ駆動電流のみではなく、モータ駆動トルクに寄与しない高周波電流も考慮してモータ駆動トルクの制限を行う。
【0015】
また、第4の発明は、
第1から第3の発明のうちの何れか1つの電力変換装置において、
前記制御部(5)は、前記モータ(7)の速度指令(ω*)が所定閾値(th)を超えた後は、前記モータ(7)の誘起電圧を検知して前記回転子(7a)の位置検出を行うことを特徴とする。
【0016】
この構成では、高周波電流による位置検出と、モータ(7)の誘起電圧による位置検出を使い分けることができる。
【0017】
また、第5の発明は、
第4の発明の電力変換装置において、
前記制御部(5)は、誘起電圧による位置検出に切替わった後は、前記モータ(7)のトルクの制限値を増加させることを特徴とする。
【0018】
この構成では、高周波電流による位置検出を行うときに比べて、誘起電圧による位置検出を行うときのモータトルクの上限が増加する。
【0019】
また、第6の発明は、
第3から第5の発明のうちの何れか1つの電力変換装置において、
前記制御部(5)は、高周波電流による位置検出を行いつつ前記モータ(7)を起動した際に、該モータ(7)のトルクが制限値に到達して一定期間が経過しても該モータ(7)が回転しない場合には、モータ電流(iu,iv,iw)の位相を電気角で180度変更することを特徴とする。
【0020】
この構成では、モータ(7)が回転しない場合にモータ電流(iu,iv,iw)の位相が変更される。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、モータ(7)の起動時に回転子(7a)の位置を検出することができるので、誘起電圧が発生していない起動時においても、力率が最も高い動作点でモータ(7)を駆動することが可能になる。その結果、モータが接続される電力変換装置において、モータの起動時にコンデンサ電圧の上昇を抑制することが可能になる。
【0022】
また、第2の発明によれば、直流リンク部(3)に直流平滑用の電解コンデンサを持たない電力変換装置において上記の効果を得ることができる。
【0023】
また、第3の発明によれば、モータ駆動電流のみではなく、モータ駆動トルクに寄与しない高周波電流も考慮してモータ駆動トルクの制限を行う。その結果、モータ駆動電流と高周波電流を加算した電流により引き起こされるコンデンサ電圧の変動に対しても過電圧とならない起動が可能となる。
【0024】
また、第4の発明によれば、モータ(7)の速度が所定しきい値を越えた後は誘起電圧による回転子の位置検出を行う方法になるため、モータ駆動トルクに寄与しない高周波電流を流す必要がなくなる。その結果、電流をモータ駆動に有効に利用することができ、モータ運転範囲を拡大することが可能になる。
【0025】
また、第5の発明によれば、高周波電流による位置検出を行うときに比べて、誘起電圧による位置検出を行うときのモータトルクの上限を増加できるので、その結果、起動後のモータ運転範囲を拡大することが可能になる。
【0026】
また、第6の発明によれば、磁極の極性を間違っていた場合でも、モータ(7)を正しい方向に回転させることが可能になる。その結果、安定的にモータ(7)を起動することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態における制御部の構成を示すブロック図である。
図3図3は、モータ起動時の速度指令パターンを示すタイミングチャートである。
図4図4は、交流電源として三相交流を用いた場合の電力変換装置の構成例を示すブロック図である。
図5図5は、(A)がいわゆる単相マトリクスコンバータの構成例を示すブロック図であり、(B)が該単相マトリクスコンバータに用いるスイッチング素子の構成例である。
図6図6は、(A)がいわゆる三相マトリクスコンバータの構成例を示すブロック図であり、(B)が該三相マトリクスコンバータに用いるスイッチング素子の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0029】
《発明の実施形態》
《構成》
図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置(1)の構成を示すブロック図である。同図に示すように電力変換装置(1)は、コンバータ回路(2)、直流リンク部(3)、インバータ回路(4)、及び制御部(5)を備え、単相の交流電源(6)から供給された交流の電力を所定の周波数の電力に変換して、モータ(7)に供給するようになっている。なお、本実施形態のモータ(7)は、突極性を有した三相交流モータであり、空気調和機の冷媒回路に設けられた圧縮機を駆動するためのものである。
【0030】
〈コンバータ回路(2)〉
コンバータ回路(2)は、交流電源(6)に接続され、交流電源(6)が出力した交流を直流に全波整流する。この例では、コンバータ回路(2)は、複数(本実施形態では4つ)のダイオード(D1〜D4)がブリッジ状に結線されたダイオードブリッジ回路である。これらのダイオード(D1〜D4)は、交流電源(6)の交流電圧を全波整流して、直流電圧に変換する。
【0031】
〈直流リンク部(3)〉
直流リンク部(3)は、コンデンサ(3a)を備えている。コンデンサ(3a)は、コンバータ回路(2)の出力に並列接続され、該コンデンサ(3a)の両端に生じた直流電圧(直流リンク電圧(vdc))がインバータ回路(4)の入力ノードに接続されている。コンデンサ(3a)は、例えばフィルムコンデンサによって構成する。このコンデンサ(3a)は、インバータ回路(4)のスイッチング素子(後述)がスイッチング動作する際に、スイッチング周波数に対応して生じるリプル電圧(電圧変動)のみを平滑化可能な静電容量を有している。すなわち、コンデンサ(3a)は、コンバータ回路(2)によって整流された電圧(電源電圧に起因する電圧変動)を平滑化するような静電容量を有さない小容量のコンデンサである。そのため、直流リンク部(3)が出力する直流リンク電圧(vdc)は脈動し、通常の負荷状態における脈動では、最大電圧が最小電圧の2倍以上となる。この例では、交流電源(6)は単相交流電源なので、直流電圧(vdc)は、電源周波数(例えば50Hz)の2倍の周波数で脈動する。
【0032】
〈インバータ回路(4)〉
インバータ回路(4)は、入力ノードが直流リンク部(3)のコンデンサ(3a)に並列に接続され、直流リンク部(3)の出力をスイッチングして三相交流に変換し、接続されたモータ(7)に供給するようになっている。本実施形態のインバータ回路(4)は、複数のスイッチング素子がブリッジ結線されて構成されている。このインバータ回路(4)は、三相交流をモータ(7)に出力するので、6個のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を備えている。詳しくは、インバータ回路(4)は、2つのスイッチング素子を互いに直列接続してなる3つのスイッチングレグを備え、各スイッチングレグにおいて上アームのスイッチング素子(Su,Sv,Sw)と下アームのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)との中点が、それぞれモータ(7)の各相のコイル(図示は省略)に接続されている。また、各スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)には、還流ダイオード(Du,Dv,Dw,Dx,Dy,Dz)が逆並列に接続されている。そして、インバータ回路(4)は、これらのスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のオンオフ動作によって、直流リンク部(3)から入力された直流リンク電圧(vdc)をスイッチングして三相交流電圧に変換し、モータ(7)へ供給する。なお、このオンオフ動作の制御は、制御部(5)が行う。
【0033】
〈制御部(5)〉
図2は、本実施形態における制御部(5)の構成を示すブロック図である。制御部(5)は、モータ(7)に流れるU,V,W各相の電流(モータ電流(iu,iv,iw))が、直流リンク電圧(vdc)の脈動に同期して脈動するように、インバータ回路(4)におけるスイッチング(オンオフ動作)を制御する。この例では、制御部(5)は、速度制御部(50)、電流指令生成部(51)、電流制御部(52)、PWM変調部(53)、高周波電圧指令生成部(54)、加算器(55)、位置検出部(56)、速度演算部(57)、電流検出部(58)、電圧検出部(59)、ローパスフィルタ(60)(図2等ではLPFと略記)、切替部(61)、及び回転座標変換部(62)を備えている。
【0034】
−速度制御部(50)−
速度制御部(50)は、モータ(7)の機械角の回転角周波数(ω)(後述)と、機械角の速度指令(ω*)との偏差を求めるとともに、求めた偏差に比例・積分演算(PI演算)を行って、モータ(7)が出力すべきトルクを指示するトルク指令値(T*)を電流指令生成部(51)に出力する。この際、速度制御部(50)は、前記直流リンク部(3)の直流電圧(vdc)が過電圧とならないように前記モータ(7)のトルクを制限する。
【0035】
−電流指令生成部(51)−
電流指令生成部(51)は、入力交流の位相角(θin)、入力電流(iin)、及びトルク指令値(T*)が入力され、これらから、d軸電流指令値(id*)とq軸電流指令値(iq*)を求めて、電流制御部(52)に出力するようになっている。なお、以下ではd軸電流指令値(id*)及びq軸電流指令値(iq*)の両者を総括して、単に電流指令値(i*)と呼ぶ。
【0036】
−電流検出部(58)、電圧検出部(59)、回転座標変換部(62)、ローパスフィルタ(60)−
電流検出部(58)は、インバータ回路(4)からモータ電流(iu,iv,iw)を検出し、該モータ電流(iu,iv,iw)を三相/二相変換して得たα軸電流(iα)とβ軸電流(iβ)とを出力するようになっている。なお、以下ではα軸電流(iα)とβ軸電流(iβ)を総称して固定座標電流(iαβ)と呼ぶ。
【0037】
また、回転座標変換部(62)は、位置検出部(56)が求めた電気角(θ)を用いて、固定座標電流(iαβ)を座標変換したd軸電流(id)とq軸電流(iq)とを出力するようになっている。q軸電流(iq)がモータ駆動トルクに対応した電流となる。なお、以下ではd軸電流(id)とq軸電流(iq)を総称してモータ回転座標電流(i)と呼ぶ。
【0038】
また、電圧検出部(59)は、インバータ回路(4)の各相の出力電圧(Vu,Vv,Vw)を三相/二相変換して得たα軸電圧(vα)とβ軸電圧(vβ)とを出力するようになっている。以下ではα軸電圧(vα)とβ軸電圧(vβ)を総括して固定座標電圧(vαβ)と呼ぶ。
【0039】
また、ローパスフィルタ(60)は、回転座標変換部(62)が出力したモータ回転座標電流(i)から高周波成分を除去するフィルタである。
【0040】
−電流制御部(52)−
電流制御部(52)は、d軸電流及びq軸電流(id,iq)の指令値(id*,iq*)と実電流値との偏差が小さくなるように、d軸電圧指令値(vd*)及びq軸電圧指令値(vq*)を生成して加算器(55)に出力する。本実施形態では、電流制御部(52)には、比例制御器、積分制御器、及び微分制御器の3つの制御器を設けてある。なお、以下ではd軸電圧指令値(vd*)及びq軸電圧指令値(vq*)の両者を総括して、単に電圧指令値(v*)と呼ぶ。
【0041】
電流制御部(52)は、切替部(61)を介して、電流検出部(58)及びローパスフィルタ(60)に接続されている。切替部(61)を切り換えることで、電流制御部(52)には、回転座標変換部(62)が出力したモータ回転座標電流(i)、及びローパスフィルタ(60)を通過したモータ回転座標電流(i)の何れか一方が選択的に入力される。
【0042】
−高周波電圧指令生成部(54)、加算器(55)−
高周波電圧指令生成部(54)は、モータ(7)の起動時に、起動時の最大運転周波数以上の周波数で且つ該モータ(7)が駆動しない大きさの高周波電流が該モータ(7)に流れるように、前記電圧指令値(v*)を補正する高周波電圧指令値(vh*)を出力する。加算器(55)は、電圧指令値(v*)と高周波電圧指令値(vh*)を加算する。すなわち、電圧指令値(v*)を高周波電圧指令値(vh*)で補正しているのである。加算器(55)の加算結果(補正電圧指令値(v**))は、PWM変調部(53)に入力される。また、高周波電圧の周波数は、高周波電圧に起因して流れた電流成分のみを分離できるように、他の要因による電流変動の周波数を避けるように設定すれば良い。例えば、電源電圧を整流した電圧の脈動周波数以上としても良い。50Hz電源の場合、高周波電圧の周波数は100Hz以上に設定することになる。
【0043】
−PWM変調部(53)−
PWM変調部(53)は、直流リンク電圧(vdc)、補正電圧指令値(v**)、及び電気角(θ)が入力されており、これらの値に基づいて、各スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のオンオフ動作を制御するゲート信号(G)を生成する。具体的には、PWM変調部(53)は、直流リンク電圧(vdc)、補正電圧指令値(v**)、電気角(θ)の値等から、各相の上アーム側のスイッチング素子(Su,Sv,Sw)のオン時間τjを求める。そして、PWM変調部(53)は、キャリア周期(Tc)毎に、求めたオン時間τjに応じ、各相のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)をオンオフ動作させるゲート信号(G)をインバータ回路(4)に出力する。
【0044】
−位置検出部(56)、速度演算部(57)−
位置検出部(56)には、電流検出部(58)が出力した固定座標電流(iαβ)、及び電圧検出部(59)が出力した固定座標電圧(vαβ)が入力され、これらの値を用いて、回転子(7a)の位置を検知するようになっている。この例では、位置検出部(56)は、2つの方法で回転子(7a)の位置を検知できるようになっている。1つ目の検出方法(以下、説明の便宜のため誘起電圧法とよぶ)は、モータ(7)の誘起電圧を検知して回転子(7a)の位置を検出する方法である。もうひとつの方法(以下、説明の便宜のため高周波注入法とよぶ)は、モータ(7)の起動時及び低速時に、起動時の最大運転周波数以上の周波数で且つ該モータ(7)が駆動しない大きさの高周波電流を該モータ(7)に流して該モータ(7)の回転子(7a)の位置検出する方法である。この方法では、前記高周波電流を流した際の固定座標電流(iαβ)、固定座標電圧(vαβ)を用いて、界磁極位置(電気角(θ))を求める方法である。詳しくは、特開2005−160287に示されているように、モータ電流の高周波成分とモータ電圧の高周波成分およびモータ(7)の突極性を利用して回転子(7a)の位置を演算する。なお、高周波注入法による起動時にモータが逆回転した場合、及びモータ電流が制限値に到達し一定期間経過した場合は検出位置を電気角で約180度変更する。これにより、磁極の極性を間違えていた場合においても、正しい方向に回転子を回転させる電流を出力する。
【0045】
制御部(5)では、モータ(7)の速度指令(ω*)に応じて、位置検出に用いる方法を選択するようになっている。本実施形態では、起動時からモータ(7)の速度指令(ω*)が所定閾値(th)以下の場合は、前記高周波注入法で位置検出を行い、モータ(7)の速度指令(ω*)が所定閾値(th)を超えた後は、前記誘起電圧法で位置検出を行う。位置検出部(56)が求めた電気角(θ)は、PWM変調部(53)及び位置検出部(56)に入力されている。なお、閾値(th)は、例えばモータ(7)の仕様(特性)などに応じて適宜決定すればよい。
【0046】
なお、誘起電圧法に切替えた後は、再びモータ速度が所定閾値を下回った場合であっても誘起電圧法による位置検出を行う。これにより、位置検出方法により設定されるモータトルクの制限値は、誘起電圧法に対するものとなる。トルクの制限値は、高周波注入法よりも誘起電圧法の方が大きくできるため、起動後の所定閾値以下の速度における最大トルクの減少、つまりモータ運転エリアの減少を防止する。
【0047】
速度演算部(57)は、電気角(θ)を微分して、回転子(7a)の回転角周波数(ω)を求める。この回転角周波数(ω)は、速度制御部(50)に入力されている。
【0048】
〈電力変換装置(1)の動作〉
図3は、モータ(7)起動時の速度指令パターンを示すタイミングチャートである。この例では、モータ(7)の起動及び加速が3ステップで行われる。
【0049】
第1ステップ(図3における期間P1が対応)では、停止状態における回転子(7a)の位置を求める。このとき、位置検出部(56)は、前記高周波注入法で位置検出を行う。具体的には、モータ(7)が停止状態のときに、前記高周波電流のみがモータ(7)に流れるように、補正電圧指令値(v**)を生成する。また、高周波電圧指令生成部(54)は、モータ(7)が回転することのない周波数と振幅である高周波電圧指令値(vh*)を生成する。例えば、電源周波数50Hz、キャリア周波数5900Hzにおいて、高周波電圧指令は周波数560Hz、振幅40Vの交流信号を用いる。電流検出部(58)、電圧検出部(59)は、それらの高周波電圧指令値(vh*)に応じてインバータ回路(4)が出力した、モータ電流(iu,iv,iw)と出力電圧(Vu,Vv,Vw)より固定座標電流(iαβ)と固定座標電圧(vαβ)を求める。位置検出部(56)は、固定座標電流(iαβ)の高周波成分と固定座標電圧(vαβ)の高周波成分から、回転子(7a)の位置を演算する。これにより、停止状態における回転子(7a)の位置(界磁極位置(θ))が検出される。さらに、検出した磁極のNS極性判別を行うことで、回転開始時における回転子(7a)の逆転を防止する。PWM変調部(53)は、界磁極位置(θ)に応じ、力率が最も高い動作点でモータ(7)が駆動するように、ゲート信号(G)を生成する。これにより、インバータ回路(4)が電力をモータ(7)に供給し、モータ(7)の回転子(7a)が回転する。
【0050】
第2ステップ(図3の期間P2が対応)では、制御部(5)はモータ(7)を徐々に加速させる。具体的には、速度制御部(50)が速度(ω)と速度指令(ω*)との偏差が小さくなるように、トルク指令値(T*)を生成する。このトルク指令値(T*)を受けて、電流指令生成部(51)は、目標のトルクに対応した電流指令値(i*)を生成する。電流制御部(52)は、モータ回転座標電流(i)と電流指令値(i*)との偏差が小さくなるように電圧指令値(v*)を生成する。
【0051】
一方、高周波電圧指令生成部(54)は、所定の高周波電流を生成するための高周波電圧指令値(vh*)を生成する。電圧指令値(v*)と高周波電圧指令値(vh*)とは加算器(55)によって加算され、補正電圧指令値(v**)としてPWM変調部(53)に出力される。PWM変調部(53)は、補正電圧指令値(v**)に応じたゲート信号(G)を生成する。
【0052】
ここで、先のNS極性判別を間違えていた場合、モータ(7)の回転子(7a)は逆方向に回転を始める。回転子(7a)が逆転状態であるか否かは、位置検出を行っていれば認識可能である。よって、逆転時には検出している磁極位置を電気角で約180度変更する。これにより、モータ(7)には回転子(7a)を正転方向に回そうとする電流が出力され、モータ(7)が正転方向に動き始める。また、圧縮機のように逆回転時のトルクが大きい負荷においては、モータ電流(iu,iv,iw)がモータトルクの制限に対応した値に達しても回転子(7a)が動かない場合がある。このような場合は、モータ電流(iu,iv,iw)が制限値に到達して一定期間経過した後、検出した位置を電気角で約180度変更する。位置を変更することで、モータ電流(iu,iv,iw)の位相が約180度変更される。よって、モータ(7)には回転子(7a)を正転方向に回そうとする電流が出力され、モータ(7)が動き始める。
【0053】
前記モータトルクの制限は、起動時に直流リンク部(3)の直流電圧(vdc)が過電圧とならないように設定するのもである。さらに、モータトルクの制限は、電源電圧(Vin)と高周波電圧振幅に応じて設定するのが好ましい。例えば、電源電圧(Vin)が大きいほど、高周波電圧振幅つまり高周波電流振幅が大きいほど過電圧となり易いことから、このような場合は、モータトルクの制限値をより小さく設定すればよい。なお、q軸電流(iq)がモータ駆動トルクに対応した電流であることから、モータ(7)のトルク指令値(T*)またはq軸電流指令値(iq*)の何れを制限してもモータトルクの制限が行える。また、高周波電流を含めて電流の波高値が位置検出可能な範囲(例えば、モータ(7)の磁気飽和により位置検出が不可能となるまでの範囲)となるように設定するのが好ましい。
【0054】
前記一定期間については、起動に要する時間として問題とならない範囲に選定する。モータ電流(iu,iv,iw)がモータトルクの制限に対応した値に収束した直後、つまり、一定期間を0としてもよい。
【0055】
インバータ回路(4)は、補正電圧指令値(v**)に応じた交流電力をモータ(7)に出力する。このときインバータ回路(4)が出力するモータ電流(iu,iv,iw)及び出力電圧(Vu,Vv,Vw)の波形は、電圧指令値(v*)に対応した波形に、高周波電圧指令値(vh*)対応した波形が重畳された波形になる。モータ電流(iu,iv,iw)及び出力電圧(Vu,Vv,Vw)では、電圧指令値(v*)に関する周波数帯域と、高周波電圧指令値(vh*)に関する周波数帯域とが大きく離れている。それゆえ、電圧指令値(v*)に関する成分と、高周波電圧指令値(vh*)に関する成分とを、モータ電流(iu,iv,iw)や出力電圧(Vu,Vv,Vw)から分離できる。位置検出部(56)は、前記高周波注入法で位置検出を行う場合には、高周波電圧指令値(vh*)に関する成分を用いる。
【0056】
電流制御部(52)にとって、高周波成分はモータ(7)を駆動する上で外乱となる。そのため、高周波電圧を注入している期間は、モータ回転座標電流(i)をLPF(60)(ローパスフィルタ)に通し、高周波成分を除去したモータ回転座標電流(i)を用いる。
【0057】
第3ステップ(図3の期間P3が対応)では、位置検出方法の切替を行う。速度指令(ω*)が閾値(th)以上になると、位置検出部(56)は、誘起電圧法による位置検出を行う。
【0058】
速度指令(ω*)の閾値は、誘起電圧法による位置検出が安定して行える速度以上に選定する。さらに、電圧指令値(v*)と高周波電圧指令値(vh*)を加算した結果(補正電圧指令値(v**))が出力可能な速度以下に選定する。
【0059】
位置検出法の切替は一定回転数のもとで行い、切替途中におけるモータ運転用の位置は、高周波注入法により得られた位置から誘起電圧法により得られた位置へ時間と共に徐々に移行していく値とする。高周波注入法により得られた位置と誘起電圧法により得られた位置に対して、(切換残存時間/切換時間)と(切換経過時間/切換時間)を重みとして用いた加重平均としてもよい。
【0060】
切替後は、高周波電圧指令生成部(54)は、0Vの高周波電圧を示す高周波電圧指令値(vh*)を出力する。これにより、モータ電流(iu,iv,iw)や出力電圧(vu,vv,iw)には、高周波電流成分は含まれなくなる。そこで、位置検出部(56)は、モータ(7)の誘起電圧を用いて、回転子(7a)の位置を検出する。PWM変調部(53)は、回転子(7a)の位置に応じて、力率の高い動作点でモータ(7)が駆動するようにゲート信号(G)を生成する。さらに、モータ回転座標電流(i)をLPF(60)に通さないようにすることで、モータ駆動の制御性を向上させる。
【0061】
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態によれば、停止状態には前記高周波注入法で位置検出を行うようにしたので、誘起電圧が発生していない起動時においても力率の改善が可能になる。その結果、モータが接続される電力変換装置において、モータの起動時に直流リンク部の電圧上昇(すなわちコンデンサ電圧)を抑制することが可能になる。
【0062】
《その他の実施形態》
〈1〉なお、電力変換装置(1)は、三相交流を入力するように構成することも可能である。図4は、交流電源として三相の交流電源(6)を用いた場合の電力変換装置(1)の構成例を示すブロック図である。同図に示すように、コンバータ回路(2)は、6つのダイオード(D1〜D6)がブリッジ状に結線されたダイオードブリッジ回路である。これらのダイオード(D1〜D6)は、三相の交流電源(6)の交流電圧を全波整流して、直流電圧に変換する。このコンバータ回路(2)の構成では、直流リンク部(3)の電圧脈動の周波数が電源周波数の6倍になる。
【0063】
〈2〉また、本発明は、いわゆるマトリクスコンバータにも適用できる。
【0064】
例えば、図5は、(A)がいわゆる単相マトリクスコンバータの構成例を示すブロック図であり、(B)が該単相マトリクスコンバータに用いるスイッチング素子(S1,S2,…,S6)の構成例である。この電力変換装置(1)(単相マトリクスコンバータ)は、単相交流電圧をスイッチングすることで、異なる周波数と電圧をモータ(7)に印加する。この例では、三相の交流電源(6)と接続された6個のスイッチング素子(S1,S2,…,S6)で単相交流をスイッチングしてモータ(7)に三相交流を供給する。それぞれのスイッチング素子(S1,S2,…,S6)は、図5(B)のように構成された双方向スイッチを採用することができる。
【0065】
コンデンサ(3a)の容量は、キャリアリプルを除去できる程度の小容量である。この電力変換装置(1)では、モータ電力の力行と回生によりコンデンサ(3a)の電圧が変動すると、入力リアクタ(L)とコンデンサ(3a)の間で共振が発生する。
【0066】
また、図6は、(A)がいわゆる三相マトリクスコンバータの構成例を示すブロック図であり、(B)が該三相マトリクスコンバータに用いるスイッチング素子(S1,S2,…,S9)の構成例である。この電力変換装置(1)(三相マトリクスコンバータ)は、三相交流電圧をスイッチングすることで、異なる周波数と電圧をモータ(7)に印加する。この例では、三相の交流電源(6)と接続された9個のスイッチング素子(S1,S2,…,S9)で三相交流をスイッチングしてモータ(7)に三相交流を供給する。
【0067】
コンデンサ(3a)の容量は、キャリアリプルを除去できる程度の小容量である。この電力変換装置(1)では、モータ電力の力行と回生によりコンデンサ(3a)の電圧が変動すると、入力リアクタ(L)とコンデンサ(3a)の間で共振が発生する。
【0068】
これらのマトリクスコンバータにおいても、モータ(7)の起動時にコンデンサ(3a)の電圧上昇を抑制することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、入力された電力をスイッチングして所定の電力に変換する電力変換装置として有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 電力変換装置
2 コンバータ回路
3a コンデンサ
4 インバータ回路
5 制御部
7 モータ
7a 回転子
図1
図2
図3
図4
図5
図6