特許第5652231号(P5652231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5652231-船舶用ソナー装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5652231
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】船舶用ソナー装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/521 20060101AFI20141218BHJP
   G01S 15/89 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   G01S7/521 B
   G01S15/89 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-14150(P2011-14150)
(22)【出願日】2011年1月26日
(65)【公開番号】特開2012-154791(P2012-154791A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2014年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】田中 友輔
【審査官】 小川 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−327726(JP,A)
【文献】 特開2005−147799(JP,A)
【文献】 特開平04−050683(JP,A)
【文献】 実開平02−068594(JP,U)
【文献】 特開2001−016694(JP,A)
【文献】 特開2003−255043(JP,A)
【文献】 実開昭61−014391(JP,U)
【文献】 特開2007−150425(JP,A)
【文献】 特開2001−356165(JP,A)
【文献】 特開平10−153658(JP,A)
【文献】 特開平2−290580(JP,A)
【文献】 特開昭63−298184(JP,A)
【文献】 特表平1−503173(JP,A)
【文献】 米国特許第4333169(US,A)
【文献】 特開2007−145066(JP,A)
【文献】 特開昭62−190480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/521
G01S 15/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体側で支持され常時水中に位置するソナー装置支持台と、
前記ソナー装置支持台に配置されたソナー装置とを備え、
前記ソナー装置は、送受波器と、前記送受波器を覆うソナードームとを含んで構成され、
前記ソナードームは、防振材を介して前記ソナー装置支持台に取着され軸心を探索あるいは計測すべき特定の方向に向けた円筒部と、前記円筒部の先部に前記特定の方向に凸状の曲面で形成された曲面部とを有し、
前記円筒部の内部に防振材を介して支持されたフレームが設けられ、前記送受波器は前記フレームに搭載され、
前記ソナードームの前記円筒部寄りの端部を除いた前記曲面部の全域は、音響の透過を可能とした音響透過領域とされ残りのソナードームの全域は、音響を遮音する遮音領域とされ
前記ソナードームは、前記送受波器側に位置する内側部材と、前記内側部材の外側に位置する外側部材と、それら内側部材と外側部材とで挟まれたコア材とを含んで一体に成形され、
前記内側部材は、音響の透過を可能としかつ前記コア材を支持するに足る剛性を有する材料で形成され前記コア材を支持するフレームとして機能しており、
前記外側部材は、音響の透過を可能としかつ前記コア材の損傷を防止するに足る硬度を有する材料で形成され前記コア材の前記内側部材からの剥がれを阻止するカバーとして機能しており、
前記音響透過領域を構成する前記ソナードームの箇所は、前記コア材が音響の透過を可能とした粘弾性体で構成され、
前記遮音領域を構成する前記ソナードームの箇所は、前記コア材が音響を遮音する遮音材で構成されている、
ことを特徴とする船舶用ソナー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用ソナー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、小型高速船には喫水下の船首部にソナー装置が設けられ、安全に運航できるようにクジラや流木などのような前方の障害物を探索することが行われ、あるいは、漁船や海洋調査船では船底にソナー装置が設けられ、魚群探知や海底における各種計測が行われている。
【0003】
ソナー装置は、船体側で支持された送受波器と、この送受波器を覆うソナードームとを含んで構成され、ソナードームにより送受波器の保護が図られている。
そして、ソナードームに、音響の透過を可能とした音響透過領域と、音響を遮音する遮音領域とが設けられ、送受波器が探索あるいは計測すべき特定の方向においてのみ音響の送受を行なえ、また、砕波雑音などのような特定方向以外からの雑音の送受波器への到達を阻止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−50683
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来では、ソナードーム全体を音響の透過を可能とした材料で構成し、音響透過不能領域を、ソナードームに遮音材を接着材で貼り付けることで構成していた。
そのため、従来では、遮音材の貼り付け作業に手間取り、また、接着材を用いるため遮音材が運用中に剥がれる可能性もあり、さらに、遮音材の厚み分、ソナードームと送受波器との間隔が狭められ、送受波器の性能を向上する上で不利があった。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、効率よく製造でき、また、剥がれる可能性もなく、送受波器の性能を確保する上で有利な船舶用ソナー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本発明は、船体側で支持され常時水中に位置するソナー装置支持台と、前記ソナー装置支持台に配置されたソナー装置とを備え、前記ソナー装置は、送受波器と、前記送受波器を覆うソナードームとを含んで構成され、前記ソナードームは、防振材を介して前記ソナー装置支持台に取着され軸心を探索あるいは計測すべき特定の方向に向けた円筒部と、前記円筒部の先部に前記特定の方向に凸状の曲面で形成された曲面部とを有し、前記円筒部の内部に防振材を介して支持されたフレームが設けられ、前記送受波器は前記フレームに搭載され、前記ソナードームの前記円筒部寄りの端部を除いた前記曲面部の全域は、音響の透過を可能とした音響透過領域とされ残りの前記ソナードームの全域は、音響を遮音する遮音領域とされ、前記ソナードームは、前記送受波器側に位置する内側部材と、前記内側部材の外側に位置する外側部材と、それら内側部材と外側部材とで挟まれたコア材とを含んで一体に成形され、前記内側部材は、音響の透過を可能としかつ前記コア材を支持するに足る剛性を有する材料で形成され前記コア材を支持するフレームとして機能しており、前記外側部材は、音響の透過を可能としかつ前記コア材の損傷を防止するに足る硬度を有する材料で形成され前記コア材の前記内側部材からの剥がれを阻止するカバーとして機能しており、前記音響透過領域を構成する前記ソナードームの箇所は、前記コア材が音響の透過を可能とした粘弾性体で構成され、前記遮音領域を構成する前記ソナードームの箇所は、前記コア材が音響を遮音する遮音材で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一体成形されたソナードーム内部の一層のコア材により、音響透過領域と遮音領域とが区画されるので、面倒な遮音材の貼り付け作業を省略し、ソナードームを効率よく製造する上で有利となる。
また、コア材は外側部材により保護されているため、運用中にコア材が剥がれることもなく、耐久性に優れる。
また、遮音材を貼り付けることがないため、遮音材の厚み分、ソナードームと送受波器との間隔が狭められることもなく、送受波器の性能を確保する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ソナー装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、高速船の船首に適用された実施の形態について説明する。
高速船は、船体側で支持され前後方向に延在してソナー装置支持台10を有し、このソナー装置支持台10は、常時水中に位置している。
ソナー装置12はソナー装置支持台10の前端に配置され、ソナー装置12は、常時水中に位置している。
【0010】
ソナー装置12は、送受波器14とソナードーム16とを含んで構成されている。
送受波器14は、ソナードーム16の内部に防振材18を介して支持されたFRP(Fiber Reinforced Plastics)製のフレーム20に搭載され、水中翼船の前方に向けて配置されている。
【0011】
ソナードーム16は、送受波器14を保護するものであり、送受波器14を覆うように設けられ、ソナードーム16の内部には水が充填されている。
ソナードーム16は、円筒部16Aと、円筒部16Aの先部に前方に凸状の曲面で形成された曲面部16Bとを有している。
円筒部16Aの基部は防振材18を介してソナー装置支持台10の前端に取着されている。
送受波器14が搭載されたフレーム20は、円筒部16Aの内部で支持されている。
【0012】
ソナードーム16は、音響の透過を可能とした音響透過領域22と、音響を遮音する遮音領域24とを有している。
ソナードーム16は、送受波器14側に位置する内側部材30と、内側部材30の外側、すなわち送受波器14の反対側に位置する外側部材32と、それら内側部材30と外側部材32とで挟まれたコア材34とを含んで型により一体に成形されている。
【0013】
内側部材30は、音響の透過を可能とした材料で形成されコア材34を支持するフレームとして機能する。具体的には、内側部材30は、音響の透過を可能とし、かつ、コア材34を支持するに足る剛性を有する材料で形成されている。このような材料としてFRP(Fiber Reinforced Plastics)や、GFRP(Glass fiber Reinforced Plastics)、CFRP(Carbon fiber Reinforced Plastics)など従来公知の様々な材料が使用可能である。
【0014】
外側部材32は、音響の透過を可能とした材料で形成されコア材34の内側部材30からの剥がれを阻止するカバーとして機能する。具体的には、音響の透過を可能とし、かつ、コア材34の内側部材30からの剥がれを阻止し、また、コア材34の損傷を防止するに足る硬度を有する材料で形成されている。このような材料としてFRP(Fiber Reinforced Plastics)や、GFRP(Glass fiber Reinforced Plastics)、CFRP(Carbon fiber Reinforced Plastics)など従来公知の様々な材料が使用可能である。
【0015】
音響透過領域22を構成するソナードーム16の箇所は、コア材34が、音響の透過を可能とした粘弾性体34Aで構成されている。このような粘弾性体34Aとして、ゴムやポリウレタンなどの従来公知の様々な材料が使用可能である。
【0016】
また、遮音領域24を構成するソナードーム16の箇所は、コア材34が音響を遮音する(振動雑音の低減を含む)遮音材34Bで構成されている。このような遮音材34Bとして、気泡(ガラスマイクロバルーン)を混在させたゴムやポリウレタンなどの粘弾性体(気泡分散型遮音材)や、あるいは、小孔が多数貫設された薄肉のゴム板の両面を薄肉のゴム板で挟んだもの(気孔型遮音材)など、従来公知の様々な材料が使用可能である。
本実施の形態では、音響透過領域22は、円筒部16A寄りの端部を除いた曲面部16Bの全域となっており、図1に示す範囲θが、クジラや流木などのような前方の障害物を送受波器14により探索する範囲となっている。
【0017】
本実施の形態によれば、型により一体成形されたソナードーム16の一層のコア材34により、音響透過領域22と遮音領域24とが区画されるので、従来のように、面倒な遮音材34Bの貼り付け作業を省略し、ソナードーム16を効率よく製造する上で有利となる。
また、コア材34の外面は、外側部材32により保護されているため、航海中にコア材34が剥がれることもなく、耐久性に優れる。
また、遮音材34Bを貼り付けることがないため、遮音材34Bの厚み分、ソナードーム16と送受波器14との間隔が狭められることもなく、送受波器14の性能を確保する上で有利となる。
【符号の説明】
【0018】
12……ソナー装置、14……送受波器、16……ソナードーム、18……防振材、20……フレーム、22……音響透過領域、24……遮音領域、30……内側部材、32……外側部材、34……コア材。
図1