【実施例】
【0026】
13種類のカーボンブラック(CB1〜CB13)を使用して18種類のゴム組成物(実施例1〜7、比較例1〜11)を調製した。このうち8種類のカーボンブラック(CB1,CB2,CB8〜CB13)は市販グレード、5種類のカーボンブラック(CB3〜CB7)は試作品であり、それぞれのコロイダル特性を表1,2に示した。また
図1において、各カーボンブラックCB1〜CB13のDstとN
2SAの関係をプロットすると共に、それぞれのカーボンブラックを参照する番号を付した。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
表1,2において、各略号はそれぞれ下記のコロイダル特性を表わす。
・N
2SA:JIS K6217−2に基づいて測定された窒素吸着比表面積
・IA:JIS K6217−1に基づいて測定されたよう素吸着量
・CTAB:JIS K6217−3に基づいて測定されたCTAB吸着比表面積
・DBP:JIS K6217−4(非圧縮試料)に基づいて測定されたDBP吸収量
・24M4:JIS K6217−4(圧縮試料)に基づいて測定された24M4−DBP吸収量
・TINT:JIS K6217−5に基づいて測定された比着色力
・Dst:JIS K6217−6に基づいて測定されたディスク遠心光沈降法による凝集体のストークス径の質量分布曲線の最大値であるモード径
・△D50:JIS K6217−6に基づいて測定されたディスク遠心光沈降法による凝集体のストークス径の質量分布曲線において、その質量頻度が最大点の半分の高さのときの分布の幅(半値幅)
・α:Dst及びN
2SAを上述した式(1)の関係に当てはめたときの係数α
【0030】
また表1,2において、カーボンブラックCB1,CB2,CB8〜CB13は、それぞれ以下の市販グレードを表わす。
・CB1:東海カーボン社製シーストKHP
・CB2:東海カーボン社製シーストKH
・CB8:東海カーボン社製シースト300
・CB9:キャボットジャパン社製ショウブラックN330T
・CB10:新日化カーボン社製ニテロン#10N
・CB11:東海カーボン社製シースト3
・CB12:東海カーボン社製シーストNH
・CB13:東海カーボン社製シースト6
【0031】
カーボンブラックCB3〜CB7の製造
円筒反応炉を使用して、表3に示すように全空気供給量、燃料油導入量、燃料油燃焼率、原料油導入量、反応時間を変えて、カーボンブラックCB3〜CB7を製造した。
【0032】
【表3】
【0033】
タイヤ用ゴム組成物の調製及び評価
上述した13種類のカーボンブラック(CB1〜CB13)を用いて、表4〜6に示す配合からなる18種類のゴム組成物(実施例1〜7、比較例1〜11)を調製するに当たり、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く成分を秤量し、55Lのニーダーで15分間混練した後、そのマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを55Lのニーダーに供し、硫黄及び加硫促進剤を加え、混合しタイヤ用ゴム組成物を得た。なお、表6において、SBRが油展品であるため、油展オイルを含むSBRの配合量を記載すると共に、その下の括弧内に油展オイル量を除いた正味のゴム成分の配合量を記載した。
【0034】
得られた18種類のゴム組成物を、それぞれ所定形状の金型中で、160℃、20分間加硫して試験片を作製し、下記に示す方法により引張り特性、動的粘弾性(60℃)及び耐摩耗性の評価を行った。
【0035】
引張り特性
得られた試験片から、JIS K6251に準拠してJIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、500mm/分の引張り速度で試験を行い、引張り破断強度及び引張り破断伸びを測定した。得られた結果は、表4,5では、比較例1のそれぞれの値を100とし、表6では比較例10のそれぞれの値を100とする指数として表4〜6の「破断強度」及び「破断伸び」の欄に示した。これら指数が大きいほど引張り破断強度及び引張り破断伸びが大きく機械的特性が優れることを意味する。
【0036】
動的粘弾性
得られた試験片をJIS K6394に準拠して、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件で、温度60℃における動的弾性率E′及び損失正接tanδを測定した。得られたE′の結果は、表4,5では、比較例1の値を100とし、表6では比較例10の値を100とする指数として表4〜6の「E′(60℃)」の欄に示した。また得られたtanδの結果は、表4,5では、比較例1の値の逆数を100とし、表6では比較例10の値の逆数を100とする指数として表4〜6の「tanδ(60℃)」の欄に示した。E′(60℃)の指数が大きいほど動的弾性率が大きく機械的特性が優れることを意味する。またtanδ(60℃)の指数が大きいほど発熱性が小さく、タイヤにしたとき転がり抵抗が小さく燃費性能が優れることを意味する。
【0037】
耐摩耗性
得られた試験片をJIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を使用して、温度20℃、荷重15N、スリップ率50%、時間10分の条件で摩耗量を測定した。得られた結果は、表4,5では、比較例1の値の逆数を100とし、表6では比較例10の値の逆数を100とする指数として表4〜6の「耐摩耗性」の欄に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性が優れていることを意味する。
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】
なお、表4〜6において使用した原材料の種類を下記に示す。
NR:天然ゴム、RSS#3
SBR:スチレン−ブタジエンゴム、LANXESS社製BUNA VSL5025−2、ゴム成分100重量部に対しオイル37.5重量部を配合した油展品。
BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220
CB1〜CB13:上述した表1,2に示したカーボンブラック
アロマオイル:ジャパンエナジー社製プロセスX−140
亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
ワックス:大内新興化学工業社製サンノック
老化防止剤:フレキシス社製SANTOFLEX6PPD
加硫促進剤1:大内新興化学工業社製ノクセラーNS−P
加硫促進剤2:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
硫黄:鶴見化学工業社製油処理硫黄
表4及び表6から明らかなように実施例1〜4及び実施例5〜7のタイヤ用ゴム組成物は、引張り破断強度、引張り破断伸び、動的弾性率E′(60℃)、tanδ(60℃)及び耐摩耗性が従来レベル以上に維持・向上することが確認された。
【0042】
表4から明らかなように、比較例1,2のゴム組成物は、カーボンブラックCB1,CB2の式(1)の係数αが1979未満であるため、実施例1〜4のタイヤ用ゴム組成物に比べtanδ(60℃)が劣る。比較例3のゴム組成物は、カーボンブラックCB3のDBP吸収量が160ml/100gを超えかつ係数αが1979未満であるため、引張り破断伸び及び耐摩耗性が低下する。
【0043】
表5から明らかなように、比較例4,5及び7のゴム組成物は、カーボンブラックCB8,CB9及びCB11のDBP吸収量が110ml/100g未満かつ係数αが1979未満であるため、tanδ(60℃)を小さくすることができず更に動的弾性率E′(60℃)、耐摩耗性の少なくとも一つが低下する。比較例6のゴム組成物は、カーボンブラックCB10のN
2SAが55m
2/g未満かつ係数αが1979未満であるため、引張り破断強度、動的弾性率E′(60℃)及び耐摩耗性が低下する。比較例8のゴム組成物は、係数αが1979未満であるため、動的弾性率E′(60℃)及び耐摩耗性が低下する。比較例9のゴム組成物は、カーボンブラックCB13のN
2SAが
85m
2/gを超えかつ係数αが1979未満であるため、tanδ(60℃)を小さくすることができない。
【0044】
表6から明らかなように、比較例10のゴム組成物は、カーボンブラックCB1の係数αが1979未満であるため、実施例5,6のタイヤ用ゴム組成物に比べtanδ(60℃)が劣る。更に引張り破断強度、引張り破断伸び及び耐摩耗性が低下する。比較例11のゴム組成物は、カーボンブラックCB1及びCB2の係数αが1979未満であるため、実施例7のタイヤ用ゴム組成物に比べ引張り破断伸びが劣ると共にtanδ(60℃)を小さくすることができない。