特許第5652296号(P5652296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5652296-タイヤ用ゴム組成物 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5652296
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20141218BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20141218BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K3/04
   B60C1/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-75719(P2011-75719)
(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2012-207185(P2012-207185A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2014年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】亀田 慶寛
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−57434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 9/00
B60C 1/00
C08K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100重量部に対し、窒素吸着比表面積N2SAが55〜852/g、DBP吸収量が110〜160ml/100gのカーボンブラックを5〜120重量部を配合すると共に、前記カーボンブラックの凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dst(nm)と、前記N2SAとの関係を下記の式(1)
Dst=α(N2SA)-0.61 (1)
(ただし、Dstは凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径(nm)、N2SAは窒素吸着比表面積(m2/g)、αは係数である。)
で表わしたとき、係数αが1979以上であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記係数αが、1979≦α≦2450であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロイダル特性を制御したカーボンブラックを配合し発熱性を低減しながら、機械的特性を維持・向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気入りタイヤに対する要求性能として、地球環境問題への関心の高まりに伴い燃費性能が優れることが求められている。燃費性能を向上するためには転がり抵抗を低減することが知られている。このため空気入りタイヤを構成するゴム組成物の発熱を抑え、タイヤにしたときの転がり抵抗を小さくすることが行われている。ゴム組成物の発熱性の指標としては一般に動的粘弾性測定による60℃のtanδが用いられ、ゴム組成物のtanδ(60℃)が小さいほど発熱性が小さくなる。
【0003】
ゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくする方法として、例えばカーボンブラックの配合量を少なくしたり、カーボンブラックの粒径を大きくしたりすることが挙げられる。しかし、このような方法では、引張り破断強度、引張り破断伸び、ゴム硬度などの機械的特性が低下し、タイヤにしたとき操縦安定性、耐摩耗性、耐久性が低下するという問題がある。
【0004】
このため特許文献1は、主に比表面積(BET比表面積、CTAB比表面積、沃素吸着指数IA)、DBP構造値、ストークス直径dst等を調整したカーボンブラックを配合することにより、ゴム組成物を低発熱化することを提案している。しかし、このゴム組成物では、ゴム組成物の機械的強度を確保する効果が必ずしも十分ではなく更なる改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−519552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、コロイダル特性を制御したカーボンブラックを配合しtanδ(60℃)を小さくしながら、機械的特性を維持・向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100重量部に対し、窒素吸着比表面積N2SAが55〜852/g、DBP吸収量が110〜160ml/100gのカーボンブラックを5〜120重量部を配合すると共に、前記カーボンブラックの凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dst(nm)と、前記N2SAとの関係を下記の式(1)
Dst=α(N2SA)-0.61 (1)
(ただし、Dstはカーボンブラック凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径(nm)、N2SAは窒素吸着比表面積(m2/g)、αは係数である。)
で表わしたとき、係数αが1979以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100重量部に対し、窒素吸着比表面積N2SAが55〜852/g、DBP吸収量が110〜160ml/100g、かつ前記式(1)の関係で表わしたときの係数αが1979以上であるカーボンブラックを5〜120重量部配合するようにしたので、ゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくしながら、引張り破断強度、引張り破断伸び、ゴム硬度などの機械的特性を維持・向上することができる。
【0009】
前記係数αとしては、1979≦α≦2450の範囲であることが好ましく、上述した優れた特性を確保しながら生産コストを抑制することができる。
【0010】
本発明のタイヤ用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤは、転がり抵抗を小さくし燃費性能を改良しながら、従来レベル以上に操縦安定性、耐摩耗性、耐久性を維持・向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のタイヤ用ゴム組成物で使用するカーボンブラックのDstとN2SAの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ジエン系ゴムは、タイヤ用ゴム組成物に通常用いられる天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。なかでも天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。これらジエン系ゴムは、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0013】
本発明のタイヤ用ゴム組成物では、特定の窒素吸着比表面積N2SA及びDBP吸収量を有し、かつN2SAと凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dstとの関係を限定した新規のカーボンブラックを配合することにより、粒子径が大きいカーボンブラックを用いてゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくしながら、引張り破断強度、引張り破断伸び、ゴム硬度、耐摩耗性などの機械的特性を悪化させることがない。カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し5〜120重量部、好ましくは20〜100重量部にする。カーボンブラックの配合量が5重量部未満であると、ゴム組成物の引張り破断強度、ゴム硬度、耐摩耗性が悪化する。またカーボンブラックの配合量が120重量部を超えると、tanδ(60℃)が大きくなると共に、引張り破断伸びが低下する。また耐摩耗性が却って悪化する。
【0014】
本発明で使用するカーボンブラックは、窒素吸着比表面積N2SAが55〜85m2/gである。N2SAが55m2/g未満であると、ゴム組成物の引張り破断強度、ゴム硬度、耐摩耗性、動的弾性率との機械的特性が低下する。N2SAが852/gを超えると、tanδ(60℃)が大きくなる。N2SAは、JIS K6217−2に準拠して、測定するものとする。
【0015】
また、カーボンブラックのDBP吸収量は、110〜160ml/100gであり、好ましくは110〜150ml/100gである。DBP吸収量が110ml/100g未満であるとtanδ(60℃)が大きくなると共に、耐摩耗性が低下する。またゴム組成物の成形加工性が低下しカーボンブラックの分散性が悪化するのでカーボンブラックの補強性能が十分に得られない。DBP吸収量が160ml/100gを超えると、耐摩耗性が却って悪化する。また粘度の上昇により加工性が悪化する。DBP吸収量は、JIS K6217−4吸油量A法に準拠して、測定するものとする。
【0016】
本発明で使用するカーボンブラックは、上述したコロイダル特性を有すると共に、凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dstと窒素吸着比表面積N2SAとを下記の式(1)の関係式で表わしたとき、係数αが1979以上、好ましくは1979〜2450である。
Dst=α(N2SA)-0.61 (1)
(ただし、Dstは凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径(nm)、N2SAは窒素吸着比表面積(m2/g)、αは係数である。)
【0017】
カーボンブラックが上述したN2SA及びDBP吸収量を有し、かつ係数αを1979以上にすることにより、ゴム組成物のtanδ(60℃)を小さくしながら、引張り破断強度、引張り破断伸び、動的弾性率、耐摩耗性、ゴム硬度などの機械的特性を維持・向上することができる。また係数αの上限は特に限定されるものではないが、カーボンブラックの収率やコストなどの生産性の観点から2450以下にするとよい。本発明において、凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径Dstとは、カーボンブラックを遠心沈降させ、光学的に得た凝集体のストークス径の質量分布曲線における最大頻度のモード径をいう。本発明において、DstはJIS K6217−6ディスク遠心光沈降法による凝集体分布の求め方に準拠して、測定するものとする。
【0018】
図1は、本発明で使用するカーボンブラックのDstとN2SAの関係を示すグラフである。図1において、横軸はN2SA(m2/g)、縦軸はDst(nm)である。ASTM規格番号を有する代表的なカーボンブラックを四角印でプロットし、試作により得られたカーボンブラックを丸印及び三角印でプロットした。ここで各プロットに、後述する実施例及び比較例で使用したカーボンブラックCB1〜CB13をそれぞれ参照する数字1〜13を付している。図1に示す通り、従来の規格化されたカーボンブラックブラックのDstとN2SAは、概ね下記式(2)の関係を満たす。
Dst=1650×(N2SA)-0.61 (2)
(ただし、Dstは凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径(nm)、N2SAは窒素吸着比表面積(m2/g)を表わす。)
図1では、上記式(2)の関係を点線の曲線で表わした。
【0019】
これに対し、本発明で使用するカーボンブラックでは、Dst及びN2SAは、下記式(3)の曲線(実線)より右上にプロットされる。
Dst=1979×(N2SA)-0.61 (3)
(ただし、Dstは凝集体のストークス径の質量分布曲線におけるモード径(nm)、N2SAは窒素吸着比表面積(m2/g)を表わす。)
【0020】
すなわち本発明では、N2SAが55〜852/gの範囲において、Dstが従来のカーボンブラックのDstより大きくした新規のカーボンブラックを使用する。このようなカーボンブラックは、従来のカーボンブラックと比べ、N2SAが同レベルであっても、凝集体のストークス径が大きく、凝集体の形態が球形に近いことを意味する。これにより、ゴムに対する補強性能を高くするため、ゴム組成物の機械的特性を従来レベル以上に向上することができる。
【0021】
上述したコロイダル特性を有するカーボンブラックは、例えば、カーボンブラック製造炉における原料油導入条件、燃料油及び原料油の供給量、反応時間(最終原料油導入位置から反応停止までの燃焼ガスの滞留時間)などの製造条件を調整して製造することができる。
【0022】
本発明において、カーボンブラックとしては、上述した特定のコロイダル特性を有するカーボンブラックと、その他のカーボンブラックを共に使用することができる。このとき、特定のコロイダル特性を有するカーボンブラックが占める割合が50重量%を超えるものとし、カーボンブラックの合計をジエン系ゴム100重量部に対し、10〜120重量部にする。このようにその他のカーボンブラックを共に配合することにより、ゴム組成物のtanδと機械的特性とのバランスを調整することができる。
【0023】
タイヤ用ゴム組成物には、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、各種無機充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0024】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのキャップトレッド部、アンダートレッド部、サイドウォール部、ビードフィラー部、カーカス層、ベルト層、ベルトカバー層などのコード用被覆ゴム、ランフラットタイヤにおける断面三日月型のサイド補強ゴム層、リムクッション部などに好適に使用することができる。これらの部材に本発明のゴム組成物を使用した空気入りタイヤは、走行時の発熱性が小さくなるので、転がり抵抗を小さくし燃費性能を改良することができる。同時に、ゴム組成物の機械的特性の改良により、操縦安定性、耐摩耗性、耐久性を従来レベル以上に維持・向上することができる。
【0025】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
13種類のカーボンブラック(CB1〜CB13)を使用して18種類のゴム組成物(実施例1〜7、比較例1〜11)を調製した。このうち8種類のカーボンブラック(CB1,CB2,CB8〜CB13)は市販グレード、5種類のカーボンブラック(CB3〜CB7)は試作品であり、それぞれのコロイダル特性を表1,2に示した。また図1において、各カーボンブラックCB1〜CB13のDstとN2SAの関係をプロットすると共に、それぞれのカーボンブラックを参照する番号を付した。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
表1,2において、各略号はそれぞれ下記のコロイダル特性を表わす。
・N2SA:JIS K6217−2に基づいて測定された窒素吸着比表面積
・IA:JIS K6217−1に基づいて測定されたよう素吸着量
・CTAB:JIS K6217−3に基づいて測定されたCTAB吸着比表面積
・DBP:JIS K6217−4(非圧縮試料)に基づいて測定されたDBP吸収量
・24M4:JIS K6217−4(圧縮試料)に基づいて測定された24M4−DBP吸収量
・TINT:JIS K6217−5に基づいて測定された比着色力
・Dst:JIS K6217−6に基づいて測定されたディスク遠心光沈降法による凝集体のストークス径の質量分布曲線の最大値であるモード径
・△D50:JIS K6217−6に基づいて測定されたディスク遠心光沈降法による凝集体のストークス径の質量分布曲線において、その質量頻度が最大点の半分の高さのときの分布の幅(半値幅)
・α:Dst及びN2SAを上述した式(1)の関係に当てはめたときの係数α
【0030】
また表1,2において、カーボンブラックCB1,CB2,CB8〜CB13は、それぞれ以下の市販グレードを表わす。
・CB1:東海カーボン社製シーストKHP
・CB2:東海カーボン社製シーストKH
・CB8:東海カーボン社製シースト300
・CB9:キャボットジャパン社製ショウブラックN330T
・CB10:新日化カーボン社製ニテロン#10N
・CB11:東海カーボン社製シースト3
・CB12:東海カーボン社製シーストNH
・CB13:東海カーボン社製シースト6
【0031】
カーボンブラックCB3〜CB7の製造
円筒反応炉を使用して、表3に示すように全空気供給量、燃料油導入量、燃料油燃焼率、原料油導入量、反応時間を変えて、カーボンブラックCB3〜CB7を製造した。
【0032】
【表3】
【0033】
タイヤ用ゴム組成物の調製及び評価
上述した13種類のカーボンブラック(CB1〜CB13)を用いて、表4〜6に示す配合からなる18種類のゴム組成物(実施例1〜7、比較例1〜11)を調製するに当たり、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く成分を秤量し、55Lのニーダーで15分間混練した後、そのマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを55Lのニーダーに供し、硫黄及び加硫促進剤を加え、混合しタイヤ用ゴム組成物を得た。なお、表6において、SBRが油展品であるため、油展オイルを含むSBRの配合量を記載すると共に、その下の括弧内に油展オイル量を除いた正味のゴム成分の配合量を記載した。
【0034】
得られた18種類のゴム組成物を、それぞれ所定形状の金型中で、160℃、20分間加硫して試験片を作製し、下記に示す方法により引張り特性、動的粘弾性(60℃)及び耐摩耗性の評価を行った。
【0035】
引張り特性
得られた試験片から、JIS K6251に準拠してJIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、500mm/分の引張り速度で試験を行い、引張り破断強度及び引張り破断伸びを測定した。得られた結果は、表4,5では、比較例1のそれぞれの値を100とし、表6では比較例10のそれぞれの値を100とする指数として表4〜6の「破断強度」及び「破断伸び」の欄に示した。これら指数が大きいほど引張り破断強度及び引張り破断伸びが大きく機械的特性が優れることを意味する。
【0036】
動的粘弾性
得られた試験片をJIS K6394に準拠して、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件で、温度60℃における動的弾性率E′及び損失正接tanδを測定した。得られたE′の結果は、表4,5では、比較例1の値を100とし、表6では比較例10の値を100とする指数として表4〜6の「E′(60℃)」の欄に示した。また得られたtanδの結果は、表4,5では、比較例1の値の逆数を100とし、表6では比較例10の値の逆数を100とする指数として表4〜6の「tanδ(60℃)」の欄に示した。E′(60℃)の指数が大きいほど動的弾性率が大きく機械的特性が優れることを意味する。またtanδ(60℃)の指数が大きいほど発熱性が小さく、タイヤにしたとき転がり抵抗が小さく燃費性能が優れることを意味する。
【0037】
耐摩耗性
得られた試験片をJIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を使用して、温度20℃、荷重15N、スリップ率50%、時間10分の条件で摩耗量を測定した。得られた結果は、表4,5では、比較例1の値の逆数を100とし、表6では比較例10の値の逆数を100とする指数として表4〜6の「耐摩耗性」の欄に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性が優れていることを意味する。
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】
なお、表4〜6において使用した原材料の種類を下記に示す。
NR:天然ゴム、RSS#3
SBR:スチレン−ブタジエンゴム、LANXESS社製BUNA VSL5025−2、ゴム成分100重量部に対しオイル37.5重量部を配合した油展品。
BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220
CB1〜CB13:上述した表1,2に示したカーボンブラック
アロマオイル:ジャパンエナジー社製プロセスX−140
亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
ワックス:大内新興化学工業社製サンノック
老化防止剤:フレキシス社製SANTOFLEX6PPD
加硫促進剤1:大内新興化学工業社製ノクセラーNS−P
加硫促進剤2:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
硫黄:鶴見化学工業社製油処理硫黄
表4及び表6から明らかなように実施例1〜4及び実施例5〜7のタイヤ用ゴム組成物は、引張り破断強度、引張り破断伸び、動的弾性率E′(60℃)、tanδ(60℃)及び耐摩耗性が従来レベル以上に維持・向上することが確認された。
【0042】
表4から明らかなように、比較例1,2のゴム組成物は、カーボンブラックCB1,CB2の式(1)の係数αが1979未満であるため、実施例1〜4のタイヤ用ゴム組成物に比べtanδ(60℃)が劣る。比較例3のゴム組成物は、カーボンブラックCB3のDBP吸収量が160ml/100gを超えかつ係数αが1979未満であるため、引張り破断伸び及び耐摩耗性が低下する。
【0043】
表5から明らかなように、比較例4,5及び7のゴム組成物は、カーボンブラックCB8,CB9及びCB11のDBP吸収量が110ml/100g未満かつ係数αが1979未満であるため、tanδ(60℃)を小さくすることができず更に動的弾性率E′(60℃)、耐摩耗性の少なくとも一つが低下する。比較例6のゴム組成物は、カーボンブラックCB10のN2SAが55m2/g未満かつ係数αが1979未満であるため、引張り破断強度、動的弾性率E′(60℃)及び耐摩耗性が低下する。比較例8のゴム組成物は、係数αが1979未満であるため、動的弾性率E′(60℃)及び耐摩耗性が低下する。比較例9のゴム組成物は、カーボンブラックCB13のN2SAが852/gを超えかつ係数αが1979未満であるため、tanδ(60℃)を小さくすることができない。
【0044】
表6から明らかなように、比較例10のゴム組成物は、カーボンブラックCB1の係数αが1979未満であるため、実施例5,6のタイヤ用ゴム組成物に比べtanδ(60℃)が劣る。更に引張り破断強度、引張り破断伸び及び耐摩耗性が低下する。比較例11のゴム組成物は、カーボンブラックCB1及びCB2の係数αが1979未満であるため、実施例7のタイヤ用ゴム組成物に比べ引張り破断伸びが劣ると共にtanδ(60℃)を小さくすることができない。
図1