(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レンズディスクの前記レンズのうち一部のレンズに前記位相調整部を形成し、他のレンズに前記励起光および前記抑制光の強度を弱化させる減光フィルタを形成したこと
を特徴とする請求項1記載の顕微鏡装置。
【背景技術】
【0002】
蛍光色素や蛍光タンパク等を導入した試料に対して照明光を照射して蛍光を発生させ、発生した蛍光に基づいて試料の観察を行う顕微鏡装置が従来から用いられている。この顕微鏡として、特許文献1に開示されるSTED顕微鏡がある。この文献に開示されるSTED顕微鏡は、励起光と抑制光(STED光)との2つの異なる波長のレーザ光を用いている。
【0003】
励起光は試料を励起させる波長を持つレーザ光であり、抑制光は試料の蛍光発生を抑制する波長を持つレーザ光である。試料の焦点において励起光の周囲にリング状に抑制光を近接させる。抑制光の領域は蛍光を発しないが、励起光の領域は蛍光する。これにより、蛍光はリング状の中心の回折限界を超えた狭小な領域とすることができる。この蛍光する領域を狭くすることで、分解能を高くして、試料の画像の高解像度化を図っている。
【0004】
分解能を向上させる顕微鏡装置としては、他に非特許文献1に開示されるGSD方式の顕微鏡がある。GSD方式の顕微鏡はリング状の領域に強度の高いレーザ光を照射して蛍光分子の励起状態を枯渇させて、蛍光を抑制させる。これにより、リング状の領域の蛍光を抑制させて、中心の回折限界を超えた狭小な領域を蛍光させる。これにより、分解能を高くして、試料の画像の高解像度化を図っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のSTED顕微鏡および非特許文献1のGSD方式の顕微鏡は試料の1点に対して励起光および抑制光を照射して、蛍光を検出することで試料の画像生成を行っている。試料はXY方向(水平面方向)およびZ方向(垂直方向)に所定の領域を有しており、少なくともXY方向には励起光および抑制光を走査して蛍光を検出する必要がある。
【0008】
このために、通常は反射角度を微小にコントロールできるガルバノミラーを用いる。ガルバノミラーを用いて励起光および抑制光の反射角度をコントロールすることで、励起光および抑制光を走査する。従って、ガルバノミラーをコントロールして励起光および抑制光の1つの焦点を所定範囲に走査しているため、1枚の試料の画像化を行うのに長時間を要するようになる。
【0009】
そこで、本発明は、高分解能且つ高速に試料の画像生成を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、本発明の顕微鏡装置は、試料を励起させる励起光と前記試料の励起を抑制する抑制光とを同軸となるようにして射出する光源と、前記試料に前記励起光を照射したときに蛍光した戻り光を検出する検出部と、前記試料の焦点の範囲内の光を通過させるピンホールを複数配列したピンホールディスクと、前記ピンホールと同じパターンで配列され、前記ピンホールに前記励起光および前記抑制光を集光させる複数のレンズを配列したレンズディスクと、前記ピンホールディスクと前記レンズディスクとを一体的に回転させる回転部と、前記レンズに形成され、前記抑制光の位相を調整する位相調整部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
この顕微鏡装置によれば、レンズディスクとピンホールディスクとを回転させて走査していることで、高速な画像生成を行うことができる。レンズに位相調整部を形成することで、試料に照射される抑制光の領域の蛍光を抑制して、励起光の領域を限定することができる。これにより、高分解能の画像生成を行うことができる。
【0012】
また、前記レンズの前記位相調整部に形成され、前記抑制光を透過させて前記励起光を透過させない抑制光透過フィルタと、前記レンズの前記位相調整部以外の領域に形成され、前記励起光を透過させて前記抑制光を透過させない励起光透過フィルタと、を備えたことを特徴とする。
【0013】
レンズに抑制光透過フィルタと励起光透過フィルタとを形成することで、抑制光の透過領域と励起光の透過領域とを分けることができ、レンズを透過した後の光を励起光と抑制光とすることができる。
【0014】
また、前記位相調整部は、位相を0から2πまで連続的または段階的に変化させる調整を行うリング状の第1の位相調整部と、この第1の位相調整部の内側に形成され、中心の円形の領域と外側の領域との間の位相をπだけずらした第2の位相調整部と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
第1の位相調整部によりXY方向(水平面方向)の分解能を高くすることができ、第2の位相調整部によりZ方向(垂直方向)の分解能を高くすることができる。これにより、3次元に高い解像度の画像生成を行うことができる。
【0016】
また、前記第1の位相調整部はリング状に形成され、前記抑制光の位相を遅らせる位相物質の厚みを連続的または段階的に変化させ、前記第2の位相調整部は、中心の円形の領域に一定の厚みを持たせた位相物質を形成したことを特徴とする。
【0017】
第1の位相調整部としては位相物質の厚みを変化させ、第2の位相調整部としては中心の領域に厚みを持たせた位相物質を形成することで、3次元に高い解像度を得ることができるようになる。
【0018】
また、前記レンズディスクの前記レンズのうち一部のレンズに前記位相調整部を形成し、他のレンズに前記励起光および前記抑制光の強度を弱化させる減光フィルタを形成したことを特徴とする。
【0019】
レンズディスクのレンズから強い強度の抑制光および励起光を試料に照射して蛍光分子の基底状態を枯渇させて蛍光を抑制して、減光フィルタを通過した弱い強度の抑制光および励起光を試料に照射して蛍光の検出を行っている。これにより、単一の光源を用いて高い分解能の画像を得ることができるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、レンズディスクとピンホールディスクとを回転させて走査していることで、高速な画像生成を行うことができる。レンズに位相調整部を形成することで、試料に照射される抑制光の領域の蛍光を抑制して、励起光の領域を限定しているため、高分解能の画像生成を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の顕微鏡装置1を示している。この顕微鏡装置1は光源2とスキャナユニット3と顕微鏡4とステージ5とカメラ6とファイバ7とを備えている。光源2は、
図2に示すように、励起用レーザ光源11と抑制用レーザ光源12と第1のダイクロイックミラー13と光源レンズ14とを備えて構成している。
【0023】
励起用レーザ光源11は励起用のレーザ光(励起光EL)を発振する。励起光ELはステージ5に搭載されている試料Sに導入されている蛍光色素や蛍光タンパク等の蛍光物質を蛍光させる波長を有している。抑制用レーザ光源12は抑制用のレーザ光(抑制光RL)を発振する。抑制光RLは励起光ELよりも長い波長のレーザ光であり、試料Sに照射したときに蛍光の発生が抑制されるような波長を有している。
【0024】
第1のダイクロイックミラー13は励起光ELの波長の光を反射させ、抑制光の波長の光を透過させる特性を有する光学素子である。第1のダイクロイックミラー13で励起光ELが反射し、抑制光RLが透過することで、励起光ELと抑制光RLとの光軸が同軸になる。以下、励起光ELと抑制光RLとは同一の光路を辿るため、これらの光を照明光Lとする。
【0025】
第1のダイクロイックミラー13により光軸が同軸になった励起光ELおよび抑制光RLは照明光Lとして光源レンズ14に入射する。光源レンズ14は入射した照明光Lをファイバ7に入射させる。ファイバ7は光源2とスキャナユニット3との間を接続しており、照明光Lはスキャナユニット3に導光される。
【0026】
図1に示すように、スキャナユニット3はコリメートレンズ21とレンズディスク22とピンホールディスク23と連結ドラム24とモータ25とダイクロイックミラー26とカメラレンズ27とを備えて構成している。コリメートレンズ21はファイバ7により導光された照明光Lを平行光にする。
【0027】
レンズディスク22は、
図3に示すように、複数のレンズ(小型のレンズ:マイクロレンズ)30を配列して構成している。各レンズ30は球面レンズであり、励起光ELおよび抑制光RLを集光させるレンズ機能を有している。ピンホールディスク23は、同図に示すように、複数のピンホール31を配列して構成している。ピンホール31は照明光Lおよび後述する戻り光BLが通過する微小開口部であり、試料Sの焦点の範囲内の光のみが通過するようになっている。これにより、分解能が高い共焦点顕微鏡として顕微鏡装置1を用いることができる。
【0028】
レンズディスク22のレンズ30の配置パターンとピンホールディスク23のピンホール31の配置パターンとは同一にしている。つまり、1つのレンズ30に1つのピンホール31が対応した関係になる。よって、各レンズ30により照明光Lは異なる光線に分割されて、分割された各照明光Lに対応するピンホール31に集光する。
図2ではレンズ30およびピンホール31は4条の螺旋状のパターンになっているが、多条のパターンとしてもよい。
【0029】
レンズディスク22とピンホールディスク23とは円盤状の回転ディスクであり、両者の外形を同一形状とすることができる。レンズディスク22とピンホールディスク23とは連結ドラム24により連結されており、連結ドラム24はモータ25により回転力が付与される。よって、モータ25の回転力により連結ドラム24が回転することで、レンズディスク22とピンホールディスク23とは一体的に回転を行う。
【0030】
レンズ30とピンホール31との間には第2のダイクロイックミラー26が配置されている。ダイクロイックミラー26は照明光L(励起光ELおよび抑制光RL)の波長の光を透過させ、試料Sからの蛍光(戻り光BL)の波長の光を反射させる特性を持つ光学部品である。従って、照明光Lはダイクロイックミラー26を透過して、試料Sからの戻り光BLは反射する。
【0031】
ダイクロイックミラー26を透過した照明光Lはピンホール31に集光されて、試料Sの焦点近傍の光のみが通過する。通過した照明光Lは顕微鏡4に入射される。顕微鏡4は結像レンズ41と対物レンズ42とを有して構成される。ピンホール31を通過した照明光Lは結像レンズ41によって所定傾きの平行光に変換される。この平行光が対物レンズ42に入射する。対物レンズ42は平行光となった照明光Lを入射すると、その傾きに応じて試料Sの焦点に結像する。照明光Lが試料Sで焦点を結ぶことにより、試料Sが励起されて蛍光が発生して戻り光BLが発生する。なお、
図1では照明光Lの光路が2つ示されているが、このうち1つは光軸中心の照明光Lであり、もう1つは光軸中心からずれた照明光Lを示している。
【0032】
ステージ5は試料Sを搭載しており、照明光Lが照射される。照明光Lは励起光ELと抑制光RLとを有しており、このうち励起光ELにより試料Sに導入された蛍光色素や蛍光タンパク等が蛍光する。このときの蛍光が戻り光BLとなる。発生した戻り光BLは対物レンズ42、結像レンズ41を介してピンホール31を通過する。これにより、試料Sの焦点近傍で発生した蛍光のみがピンホール31を通過する。ピンホール31を通過した戻り光BLはダイクロイックミラー26に入射する。そして、ダイクロイックミラー26で反射して、カメラレンズ27に入射する。
【0033】
カメラレンズ27は戻り光BLを検出部としてのカメラ6に結像させる。カメラ6は結像された戻り光BLの光量に基づいて、図示しないコンピュータ等で試料Sの画像を生成する。戻り光BLはピンホール31を通過した光のみになるため、生成される画像は共焦点画像となる。なお、戻り光BLの光路においてカメラ6の前段側に蛍光成分のみを透過させる図示しない蛍光フィルタを配置することが望ましい。
【0034】
次に、レンズ30について説明する。
図4に示すように、レンズ30には位相調整部51が形成されている。位相調整部51は1つのレンズ30に対応して1つが設けられており、ここではレンズ30のピンホール31の対向する面(裏面とする)に位相調整部51を形成している。
【0035】
図5に示すように、位相調整部51はリング状の形状をしており、レンズ30の裏面に位相物質を形成している。位相物質は主に所定厚みのガラス素材であり、位相調整部51はリング状の所定位置を基準として、連続的或いは段階的に透過する光に与える位相を変化させている。ここでは、ある位置の位相を0(ゼロ)としたときに、連続的或いは段階的に与える位相が増加し、リング状を1周したときに与える位相が2π(つまり、位相がゼロになる)になるように設定する。従って、与える位相をゼロから2πまで変化させるために、位相物質の厚みを連続的或いは段階的に変化させている。
【0036】
位相調整部51はレンズ30に位相物質を接合するものであってもよいし、レンズ30と一体的に射出成形するものであってもよい。この位相調整部51には抑制光RLの波長域の光を透過し、励起光ELの波長域の光を透過させない抑制光透過フィルタ52が形成されている。
【0037】
ここでは、位相調整部51のピンホール31に対向する面に抑制光透過フィルタ52を形成しているが、位相調整部51の任意の位置に抑制光透過フィルタ52を形成してもよい。また、抑制光透過フィルタ52はフィルタを貼付するものであってもよいが、薄膜を蒸着させるものとする。
【0038】
一方、リング状の位相調整部51の内側の領域は励起光透過領域53となっている。励起光透過領域53は位相物質を格別に形成しているものではなく、レンズ30の裏面のままになっている。ただし、励起光透過領域53には励起光透過フィルタ54を形成している。励起光透過フィルタ54は励起光ELの波長域の光を透過し、抑制光RLの波長域の光を透過させないフィルタである。励起光透過フィルタ54もフィルタを貼付するものであってもよいが、薄膜を蒸着して形成している。
【0039】
従って、レンズ30により位相調整部51から位相が調整されたリング状の抑制光RLがピンホール31に集光する。また、リング状の中心の励起光透過領域53を透過した励起光ELもピンホール31に集光する。そして、顕微鏡4の対物レンズ42により試料Sで焦点を結ぶ。
【0040】
このときに、リング状の位相調整部51を透過した抑制光RLが相互に干渉して、試料Sの焦点においてはリング状の焦点形状となる。また、励起光透過領域53を透過した励起光ELはリング状の焦点に接するような内側の円形の領域となる。これにより、試料Sの焦点においては、リング状の内側の限定された領域のみに励起光ELを照射することができ、狭小な領域を蛍光させることができる。
【0041】
且つ、蛍光した領域の外周側の領域は抑制光RLが焦点を結ぶ領域であり、蛍光を発生することがない。これにより、限定的な狭小な領域のみを蛍光させることができるため、高い分解能で励起光ELを照射することができる。このときに、励起光ELにより蛍光した光が戻り光BLとなって、顕微鏡4に入射される。そして、最終的にカメラ6に結像される。
【0042】
従って、高分解能で励起光ELを照射して、その戻り光BLを検出することで、高解像度の画像を得ることができる。また、レンズディスク22とピンホールディスク23とをモータ25により一体的に回転させており、照明光Lが透過する位置を回転により高速に変化させている。これにより、試料Sにおける焦点位置が高速に変化し、走査速度を著しく高速にすることができる。従って、画像生成の速度を飛躍的に高速にすることができる。
【0043】
次に、変形例1について説明する。本変形例1の位相調整部は、第1の位相調整部61と第2の位相調整部62とを備えている。第1の位相調整部61はリング状の形状をしており、与える位相差が0から2πまで変化するものである。つまり、前述した位相調整部51と同じものである。
【0044】
第2の位相調整部62は第1の位相調整部61の内側の円形の領域に設けられている。この円形のうち中心の円形の領域には一定の厚みを有する位相物質63が円筒状に形成している。一方、第2の位相調整部62の内側であり位相物質63の外側の領域はリング状のレンズ領域64となっている。レンズ領域64は位相物質等が形成されておらず、レンズ30の裏面側の領域となっている。
【0045】
位相物質63は所定の厚みを有しており、位相物質63を透過した光とレンズ領域64を透過した光との間には位相差を生じる。ここでは、πの位相差を与えるものとする。このために、レンズ領域64は位相がゼロであり、位相物質63は位相がπとなっている。
【0046】
第1の位相調整部61および第2の位相調整部62は抑制光RLが透過する領域となる。このために、第1の位相調整部61および第2の位相調整部62に前述した抑制光透過フィルタ52を形成する。よって、第1の位相調整部61および第2の位相調整部62からは位相が調整された抑制光RLが透過する。
【0047】
一方、第1の位相調整部61の外側の領域はリング状の励起光透過領域65が形成されている。この励起光透過領域65には前述した励起光透過フィルタ54が形成されている。よって、励起光透過領域65から励起光ELが透過する。このため、レンズ30を透過する照明光Lは中心が円形の抑制光RLとなり、その外周にリング状の励起光ELが形成されている。
【0048】
第1の位相調整部61は前述した位相調整部51と同様の作用を及ぼし、抑制光RLは試料Sにおいてリング状の焦点を結ぶ。そして、対物レンズ42のレンズ効果により、励起光透過領域65を透過した励起光ELは、試料Sにおいて抑制光RLの内側の領域に焦点を結ぶ。これにより、回折限界を超えた狭小な領域に励起光ELの焦点を結ばせて蛍光させることができる。
【0049】
この第1の位相調整部61の作用により励起光ELの分解能が高くなるが、これは試料Sにおける水平面方向(XY方向)における分解能を向上させる。そして、第2の位相調整部62は位相物質63とレンズ領域64との間に生じる位相差がπになるため、試料Sにおける垂直方向(Z方向)においては、2つの焦点を構築することができる。
【0050】
従って、抑制光RLはZ方向において2つの焦点を結ぶため、これら2つの焦点の間の領域は励起光ELが焦点を結ぶ領域となる。これにより、Z方向においても回折限界を超えた狭小な領域に励起光ELの焦点を結ばせて蛍光させることができる。つまり、第1の位相調整部61によりXY方向の分解能を向上させ、第2の位相調整部62によりZ方向の分解能を向上させているため、3次元に分解能が高い高解像度の画像生成を行うことができる。且つ、レンズディスク22には多数のレンズ30を配列して回転させて走査していることで、高速に画像生成を行うことができる。
【0051】
次に、変形例2について説明する。
図8に示すレンズディスク22は多条のレンズ30を配置して構成している。なお、ピンホールディスク23におけるピンホール31の配置も同様に多条の配置構成となっている。多条配置のレンズ30のうち、半分の条の複数のレンズ30を第1のレンズ群71とし、残りの半分の条の複数のレンズ30を第2のレンズ群72とする。
【0052】
そして、第1のレンズ群71の各レンズ30に
図6で示した第2の位相調整部62を形成している。つまり、レンズ30の裏面の中心に円形の位相物質63を形成し、その周囲のリング状の領域をレンズ領域64としている。これにより、試料SにおいてはZ方向に2つの焦点が構築され、励起光ELの焦点を狭小化できる。従って、Z方向における分解能を高くしている。一方、第2のレンズ群72の各レンズ30の裏面には減光(ND)フィルタを形成している。これにより、第2のレンズ群72のレンズ30を透過する光の強度は弱化する。
【0053】
本変形例2の光源2は、
図1に示したように2つの光源(励起用レーザ光源11および抑制用レーザ光源12)を用いずに、単一の波長のレーザ光を発振する。つまり、抑制光RLは用いずに励起光ELだけを用い、光源2は励起光ELだけを発振するようにする。そして、光源2は試料Sの蛍光分子の基底状態を枯渇させて蛍光を抑制するような強い強度を持つ励起光ELを発振させる。
【0054】
これにより、強い強度を持つ励起光ELがレンズディスク22に入射する。第1のレンズ群71は第2の位相調整部62により位相が調整されて、強い強度の励起光ELが透過して、試料Sに入射する。第2の位相調整部62の作用により、励起光ELはZ方向において2箇所に焦点を結ぶ。励起光ELは蛍光分子の基底状態を枯渇させて蛍光を抑制する光になるため、抑制光RLと同じ機能を果たす。
【0055】
一方、第2のレンズ群72のレンズ30を透過した励起光ELは減光フィルタにより強度が弱化される。このときに、減光フィルタは励起光ELが試料Sの蛍光分子の基底状態を枯渇させない程度にまで弱化させるようにする。これにより、第2のレンズ群72のレンズ30を透過した励起光ELが試料Sに焦点を結んだときに、試料Sは蛍光が抑制されない。つまり、減光フィルタを透過した励起光ELはそのまま試料Sを励起させる機能を果たす。
【0056】
レンズディスク22は回転するため、第1のレンズ群71のレンズ30を透過した励起光ELによりZ方向に試料Sの蛍光が抑制されて、第2のレンズ群72のレンズ30を透過した励起光ELにより試料Sを蛍光させることができる。そして、蛍光した戻り光BLを検出することで、試料Sの画像を生成している。
【0057】
従って、単一の波長を持つレーザ光を用いて、Z方向における分解能を高くすることができる。つまり、レーザ光源の個数を2つ(励起用レーザ光源11および抑制用レーザ光源12)にすることなく、1つだけを用いればよいため、レーザ光源の個数を少なくすることができる。これにより、顕微鏡装置1の全体の構成が単純化する。
【0058】
また、レンズディスク22の第1のレンズ群71のレンズ30が抑制光RLの機能を果たし、第2のレンズ群72のレンズ30が励起光ELの機能を果たし、レンズディスク22を回転させている。これにより、試料Sにおける高速な走査を実現することができる。
【0059】
なお、本変形例2では、レンズディスク22の第1のレンズ群71と第2のレンズ群72とでレンズ30の個数を同数にし、交互に出現させるようにしたが、レンズディスク22の複数のレンズ30のうち一部に第2の位相調整部62を形成し、残りのレンズ30に減光フィルタを形成するようにしてもよい。これによっても、一部の強い励起光ELにより試料Sの蛍光を抑制し、残りの弱化した励起光ELにより試料Sを蛍光させることができる。これにより、高速に且つ高分解能に試料Sの画像生成を行うことができる。