【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、次の点に着目してなされている。すなわち、従来においては、上述したように、一枚の基板に複数のカレントトランスを実装しているため、換言すると、複数のカレントトランスが一枚の基板で連結された形態であるため、一部のカレントトランスに、電線による継続的な荷重もしくは一時的に大きな荷重が作用すると、その荷重が、前記一枚の基板を介して、いずれかのカレントトランスと基板との半田付け部分にも作用し、このカレントトランスと基板との半田付け部分にクラックが発生する。
【0016】
これを改善するために、本発明者においては、
図26に示すように、基板を、各カレントトランス2A〜2Dごとに分割した形態とする(分割形態の各基板を符号3A〜3Dで示す)ことを考えた。
【0017】
この場合、各カレントトランス2A〜2Dに通した電線9A〜9Dのいずれかに荷重がかかったとしても、各カレントトランス2A〜2Dの各基板3A〜3Dが相互に分離しているため、各カレントトランスにおける半田付け部分に上記荷重が波及することがない。
ところが、この構成の場合、基板3A〜3Dが分離しているため、カレントトランス2A〜2Dを一体物として取り扱うことができず、配置壁部1bへのこれらカレントトランス2A〜2Dの組付工数が増加してしまう不具合が生じる。
【0018】
上述した
図26の改善策では、カレントトランスと基板との半田付け部分にクラックが発生することを防止できる反面、組立工数が増加してしまう。
本発明者では、さらに、この点を改善するために、基板を分割した構成をベースに、これら基板3A〜3D間を柔軟性あるいは弾性変形可能な連結部材により連結することを考えた。最初に、柔軟性あるいは弾性変形可能な連結部材として一般的に想起されるゴム材を採用してみた。
【0019】
この構成を
図27に示す。この
図27において、ゴム材10A〜10Cを各基板3A〜3D間に接着する構成とする。このような構成とすれば、複数のカレントトランス2A〜2Dを一体物として取り扱うことができ、組立性も良い。そして、いずれかのカレントトランス2A〜2Dに前述した荷重が作用したとしても、カレントトランス間の荷重の伝達をなくすことができるから、A〜2Dと各基板3A〜3Dとの半田付け部分に荷重がかかることがなくてクラック発生を回避できる。
【0020】
しかし、プログラマブルコントローラの使用環境下では、当該プログラマブルコントローラ自体が発熱するため、当該熱による前記ゴム材10A〜10Cの劣化(弾性劣化)が予測され、カレントトランス間の荷重伝達軽減効果が低減してしまう。又この場合、前記基板3A〜3Dも熱を発生し、その熱の放熱がゴム材10A〜10Cにより阻害されてしまい、電流検出性能も低下する問題が発生する。
【0021】
上述の問題が発生しないようにするために、上述の連結部材として、柔軟性もしくは弾性があって熱劣化が少なく且つ放熱を阻害しない連結部材を検討してみた。その検討中において、ばね用線材からなるダンパが上述の要望を満たす連結部材として有力であることが判った。ここでダンパを調査したところ、特許文献1に記載される構成のダンパがあった。しかし、このダンパは、蓋などの閉塞の際に一気に閉塞しないようにするためにコイルばねを用いた構成に過ぎず、そのままでは、基板3A〜3D間の連結には使用できない。
【0022】
そこで、発明者は、ばね用線材を用いた基板連結用ダンパの構成として、
図28及び
図29に示すダンパ11A〜11Cを試作してみた。このダンパ11A〜11Cは、ばね用線材Sの途中部(ほぼ中間部)を逆V状に屈曲し、この屈曲部11aの両側の線部11b、11cの端部に、この逆V状をなす屈曲部11aの頂部を通る仮想中心線CKとほぼ平行な連結用線部11d、11eを延出した構成とした。この場合矢印A方向及びB方向に弾性変形可能である。
【0023】
この場合、プログラマブルコントローラに搭載するカレントトランス2A〜2D及び基板3A〜3Dの大きさが小さいことから、このダンパ11A〜11Cも、比較的小さく形成している。又、連結対象である基板3A〜3Dには、
図30に示すように、接続端子用スルーホール12の他に、ダンパ用スルーホール13、13を形成している。
【0024】
そして前記ダンパ11A〜11Cで前記各基板3A〜3Dを連結する場合、これらダンパ11A〜11Cを、基板3A〜3D各間に跨るように配置して各ダンパ11A〜11Cの連結用線部11d、11eを隣り合う基板のダンパ用スルーホール13に挿入し、挿入部分を半田付けすることで複数のカレントトランス2A〜2Dの基板3A〜3Dを連結し一体化する。
【0025】
ここで、上述のダンパ11A〜11Cの各連結用線部11d、11eを基板3A〜3Dの各ダンパ用スルーホール13に差し込む場合、作業者は、
図31(a)に示すように、ダンパ11A〜11Cを手の指で挟み持つが、このダンパ11A〜11C自体が小さいことから、前記連結用線部11d、11eが、指からほとんど出ない。このままでは、連結用線部11d、11eをダンパ用スルーホール13に差し込み難いため、
図13(b)に示すように、作業者は指でダンパ11A〜11Cを縮めることで、連結用線部11d、11eの先端を当該指から突出するように変形させる。
【0026】
しかし、これでも、連結用線部11d、11eが僅かにしか突出せず、ダンパ用スルーホール13への挿入がまだ行い難い。
この点を改善するために、さらに発明者は、上記ダンパ11A〜11Cに代わるダンパとして、
図32に示すように、大きなダンパ11A´〜11C´を形成した。これによれば、作業者が指でダンパ11A´〜11C´を、
図33(a)に示すように挟み持って、
図33(b)に示すように縮めるように変形させたときに、連結用線部11d、11eをある程度指から突出させることができ、その後のダンパ用スルーホール13への挿入も容易となり、ダンパ11A´〜11C´の組み付け作業が容易となる。
【0027】
しかしながら、この場合、
図34に示すように、ダンパ11A´〜11C´が基板3A〜3Dから高くなって電線挿通孔部22に近くなるため、電線9A〜9Dが引っ掛かるおそれがあるという新たな問題が発生する。
【0028】
そこで発明者は、さらなる改善を試みて、請求項1の構成を案出した。これによれば、以下に述べるように、複数のカレントトランスの配置面部への組み込みが容易で、しかも、カレントトランスと基板との半田付け部分にクラックが発生することを回避可能であり、さらに上述した新たな問題も解決できた。
【0029】
すなわち、請求項1においては、理解を容易にするために、
図6、
図13〜
図17を参照して説明すると、基板連結用ダンパ(50A〜50D)は、一本の金属製のばね用線材(55)から一体に形成され、このばね用線材(55)の中間部が直角以上で180度未満の開き角度(α1)をなして屈曲され、この屈曲部(55a)の両側にあって直線状に延び相互に次第に離間する第1の線部(55b)及び第2の線部(55c)を有し、これら第1の線部(55b)及び第2の線部(55c)の各延出端部から直角以下の開き角度(α2)で且つ相互に接近する方向へ延びるように屈曲され、この延び方向の途中で交差し、さらにその先の部分で相互に遠ざかる形態となる直線状の第3の線部(55d)及び第4の線部(55e)を有し、この第3の線部(55d)及び第4の線部(55e)の延出端部から前記屈曲部(55a)に対して遠ざかる方向で且つ相互に略平行となる向きに屈曲された直線状をなす第1の連結用線部(55f)及び第2の連結用線部(55g)を有する。
【0030】
この基板連結用ダンパ(50A〜50C)において、中央の前記屈曲部(55a)を中央屈曲部(55a)と称し、第1の線部(55b)と第3の線部(55d)とによる屈曲部を第1の屈曲部(K1)と称し、第2の線部(55c)と第4の線部(55e)とによる屈曲部を第2の屈曲部(K2)と称し、第4の線部(55e)と第1の連結用線部(55f)とによる屈曲部を第3の屈曲部(K3)と称し、第3の線部(55d)と第2の連結用線部(55g)とによる屈曲部を第4の屈曲部(K4)と称する。
【0031】
この基板連結用ダンパ(50A〜50C)は、作業者が、第1の屈曲部(K1)と、第2の屈曲部(K2)とを指で挟んで、相互に近づける方向(
図15の矢印C方向)へ変形させると、第1の連結用線部(55f)及び第2の連結用線部(55g)が相互に拡がる方向(矢印D方向)に変位しようとするが、この第1の連結用線部(55f)及び第2の連結用線部(55g)は、前記矢印C方向へ力を及ぼしている指により、拡がりが阻止される。このように第1の連結用線部(55f)及び第2の連結用線部(55g)の拡がりが阻止された状態で、第1の屈曲部(K1)及び第2の屈曲部(K2)がさらに矢印C方向へ押圧されると、中央屈曲部(55a)の屈曲角度(α1)が小さくなると共に、第1の屈曲部(K1)の屈曲角度(α2)及び第2の屈曲部(K2)の屈曲角度(α2)が大きくなる。すると、第1の連結用線部(55f)及び第2の連結用線部(55g)が両指よりも突出する。
【0032】
ここで、前述した
図32及び
図33のダンパ11A´〜11C´では、中央の屈曲角度α3が小さく(直角以下の角度)、しかも屈曲部が中央1か所しかない。この構成では、
図33(b)の突出長さLを得ようとすれば、全体高さを大きくするよりない。これに対して、請求項1の基板連結用ダンパ(50A〜50C)は、中央屈曲部(55a)の屈曲角度が、直角以上で180度未満の開き角度(α1)と大きくて、当該中央屈曲部(55a)はさらに閉じ方向に十分に屈曲可能である。しかも、中央屈曲部(55a)の他に、第1の屈曲部(K1)及び第2の屈曲部(K2)を有し、さらにこれら第1の屈曲部(K1)及び第2の屈曲部(K2)が、夫々直角以下の開き角度(α2)であるから、これら第1の屈曲部(K1)及び第2の屈曲部(K2)が、前記中央屈曲部(55a)の閉じ方向への屈曲に伴い、拡がる方向に十分屈曲可能である。
【0033】
この結果、第1の屈曲部(K1)及び第2の屈曲部(K2)を相互に近づけるように押圧した際に、当該中央屈曲部(55a)はさらに閉じ方向に十分に屈曲し、且つ第1の屈曲部(K1)及び第2の屈曲部(K2)が十分に拡がり、もって、第1の線部(55b)〜第4の線部(55e)が十分に伸長し、第1の連結用線部(55f)及び第2の連結用線部(55g)が大きく突出するようになる。もって、第1の連結用線部(55f)及び第2の連結用線部(55g)以外の部分の高さをさほど高くしなくとも、十分な突出長さを得ることができる。
【0034】
従って、この突出長を、
図33(b)と同様の突出長さにする場合には、この
図33のダンパ11A´〜11D´よりも高さを低くできる。この結果、本請求項1においては、これら複数のカレントトランス(48A〜48D)、基板(49A〜49D)及び基板連結用ダンパ(50A〜50C)が一体となったカレントトランスユニット(47)の状態では、基板連結用ダンパ50A〜50Cの基板49A〜49Dからの高さが低くなり、当該基板連結用ダンパ(50A〜50C)と電線挿通孔部(52)とが近くなることがなく、電線(9A〜9D)がこの基板連結用ダンパ(50A〜50C)に引っ掛かるおそれも回避できる。
【0035】
そして、上述した各カレントトランス(48A〜48D)及び各基板(49A〜49D)が一体化されたカレントトランスユニット(47)を前記配置壁部(43)に配置することで、各カレントトランス(48A〜48D)を各配置面部(46A〜46D)に一度に配置することができ、複数のカレントトランス(48A〜48D)の配置壁部(43)への組み込みが容易である。
上記カレントトランスユニット47において、各基板連結用ダンパ50A〜50Cの第1の連結用線部55fと第2の連結用線部55gとの間は、拡開及び縮小可能であり、つまり弾性変形可能である。
【0036】
さらに、各カレントトランス(48A〜48D)を搭載した基板(49A〜49D)が、上述の弾性変形可能な基板連結用ダンパ(50A〜50C)で連結されているため、いずれかのカレントトランス(48A〜48D)に電線(9A〜9D)による経年的な荷重もしくは作業者が電線(9A〜9D)にぶつかったこと等による瞬間的な衝撃(以下、これら荷重及び衝撃を外力と称する)が作用しても、この外力が他の基板への伝達することが軽減され、もって他の基板に外力が波及することを回避でき、もってカレントトランス(48A〜48D)と基板(49A〜49D)との半田付け部分にクラックが発生することを回避できる。なお、当該電線からの外力を直接受けているカレントトランス自体において当該カレントトランスを実装した基板の半田付け部分でクラックが発生することが懸念されるが、外力を直接受けているカレントトランスが、配置面部(46A〜46D)で若干動いたとしても各カレントトランスを実装した基板も追随するため、半田付け部分に外力が作用することがなくもしくは極めて小さく、クラックの発生を回避することが可能となる。
【0037】
さらには、基板(49A〜49D)のダンパ用スルーホール(53e、53f)への基板連結用ダンパ(50A〜50C)の挿入に際して、当該基板連結用ダンパ(50A〜50C)の連結用線部(55f、55g)を十分に突出させることができ、ダンパ用スルーホール(53e、53f)への挿入作業を簡単化を図ることが可能である。
【0038】
ところで、カレントトランス(48A〜48D)の接続ピン(51d〜51g)と基板(49A〜49D)の接続ピン用スルーホール(53a〜53d)との半田付けは、フロー半田によりなされる。ここで、請求項1では、基板(49A〜49D)にはダンパ用スルーホール(53e、53f)を形成し、基板連結用ダンパ(50A〜50C)の連結用線部(55f、55g)をこのダンパ用スルーホール(53e、53f)に挿入し半田付けするから、上述のカレントトランス(48A〜48D)と基板(49A〜49D)とのフロー半田工程においてこの基板連結用ダンパ(50A〜50C)及び基板(49A〜49D)も同時にフロー半田付けすることができ、基板連結用ダンパ(50A〜50C)の基板(49A〜49D)への取付け工程を別途設けずに済む。
【0039】
そして、この基板連結用ダンパ(50A〜50C)は金属製のばね用線材から構成されているため、基板(49A〜49D)の放熱にも寄与でき、さらにプログラマブルコントローラ41や基板(49A〜49D)の発熱により劣化することが少なく、10年〜30年と長期にわたって使用されるプログラマブルコントローラの使用寿命の長期化に寄与できる。
【0040】
このように請求項1によれば、上述した各カレントトランス(48A〜48D)及び各基板(49A〜49D)並びに基板連結用ダンパ(50A〜50)の一体物であるカレントトランスユニット(47)を前記配置壁部(43)に配置することで、各カレントトランス(48A〜48D)を各配置面部(46A〜46D)に一度に配置することができ、複数のカレントトランス(48A〜48D)の配置面部(46A〜46D)への組み込みが容易となる。
【0041】
しかも、カレントトランス(48A〜48D)と基板(49A〜49D)との半田付け部分にクラックが発生することを回避可能で、さらには、当該基板連結用ダンパ(50A〜50C)の基板(49A〜49D)のダンパ用スルーホール(53e、53f)への挿入作業性の容易化、及び、当該基板連結用ダンパ(50A〜50C)の基板(49A〜49D)への半田付け作業の容易化、基板連結用ダンパ(50A〜50C)に対する電線(9A〜9D)の引っ掛かりの低減化、放熱性の向上を図ることが可能となる。