(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のヒートポンプ式蒸気発生装置1の一実施例を示す概略図であり、1段のヒートポンプ2を用いた場合を示している。また、
図2から
図8は、本実施例のヒートポンプ式蒸気発生装置1の変形例を示す図であり、
図2から
図4は2段のヒートポンプ2(2A,2B)を用いた場合、
図5から
図8は3段のヒートポンプ2(2A,2B,2C)を用いた場合を示している。
【0061】
いずれのヒートポンプ式蒸気発生装置1も、蒸気圧縮式のヒートポンプ2を備える。このヒートポンプ2は、その段数を特に問わず、単段でも複数段でもよい。ヒートポンプ2が複数段の場合も、それを構成する各段のヒートポンプ2は、基本的には
図1に示される単段のヒートポンプ2と同様である。なお、複数段(多段)のヒートポンプには、
図3のような一元多段のヒートポンプの他、
図2のような複数元(多元)のヒートポンプ、あるいは
図6のような両者の組合せのヒートポンプが含まれる。
【0062】
図1に示すヒートポンプ式蒸気発生装置1は、1段(単段)のヒートポンプ2を備える。このヒートポンプ2は、圧縮機3、凝縮器4、膨張弁5および蒸発器6が順次環状に接続されて構成される。そして、圧縮機3は、ガス冷媒を圧縮して高温高圧にする。また、凝縮器4は、圧縮機3からのガス冷媒を凝縮液化する。さらに、膨張弁5は、凝縮器4からの液冷媒を通過させることで、冷媒の圧力と温度とを低下させる。そして、蒸発器6は、膨張弁5からの冷媒の蒸発を図る。
【0063】
従って、ヒートポンプ2は、蒸発器6において、冷媒が外部から熱を奪って気化する一方、凝縮器4において、冷媒が外部へ放熱して凝縮することになる。これを利用して、ヒートポンプ式蒸気発生装置1は、蒸発器6において、温水、空気(空気圧縮機からの吐出空気のように熱を持った空気を含む)、排ガスなどから熱をくみ上げ、凝縮器4において、水を加熱して蒸気を発生させる。
【0064】
図2に示すヒートポンプ式蒸気発生装置1は、上下2段のヒートポンプ2(2A,2B)を備える。そして、1段目(下段)のヒートポンプ2Aの圧縮機3Aからの冷媒と、2段目(上段)のヒートポンプ2Bの膨張弁5Bからの冷媒とを受けて、両冷媒を混ぜることなく熱交換する間接熱交換器7を備え、この間接熱交換器7が、1段目のヒートポンプ2Aの凝縮器4Aであると共に、2段目のヒートポンプ2Bの蒸発器6Bでもある。この場合、1段目のヒートポンプ2Aの凝縮器4Aと2段目のヒートポンプ2Bの蒸発器6Bとを兼ねる間接熱交換器7において、1段目のヒートポンプ2Aの冷媒と2段目のヒートポンプ2Bの冷媒とを熱交換して、1段目のヒートポンプ2Aの冷媒の凝縮と、2段目のヒートポンプ2Bの冷媒の気化とが図られる。
【0065】
図3に示すヒートポンプ式蒸気発生装置1は、上下2段のヒートポンプ2(2A,2B)を備える。そして、1段目のヒートポンプ2Aの圧縮機3Aからの冷媒と、2段目のヒートポンプ2Bの膨張弁5Bからの冷媒とを受けて、両冷媒を直接に接触させて熱交換する中間冷却器8を備え、この中間冷却器8が、1段目のヒートポンプ2Aの凝縮器4Aであると共に、2段目のヒートポンプ2Bの蒸発器6Bでもある。具体的には、中間冷却器8として中空タンクが用いられ、1段目のヒートポンプ2Aの圧縮機3Aからの冷媒と、2段目のヒートポンプ2Bの膨張弁5Bからの冷媒とを受け入れて、タンク内で直接に接触させることにより、1段目のヒートポンプ2Aの圧縮機3Aからの冷媒の凝縮と、2段目のヒートポンプ2Bの膨張弁5Bからの冷媒の気化とを図る。そして、それにより得られる液冷媒を1段目のヒートポンプ2Aの膨張弁5Aへ送る一方、ガス冷媒は2段目のヒートポンプ2Bの圧縮機3Bへ送ればよい。
【0066】
図4に示すヒートポンプ式蒸気発生装置1は、上下2段のヒートポンプ2(2A,2B)を備える。そして、1段目のヒートポンプ2Aの圧縮機3Aからの冷媒と、2段目のヒートポンプ2Bの膨張弁5Bからの冷媒とを受けて、両冷媒を直接に接触させて熱交換すると共に、この両冷媒と2段目のヒートポンプ2Bの凝縮器4Bから膨張弁5Bを介することなく供給される冷媒とを混ぜることなく熱交換する中間冷却器9を備える。具体的には、中間冷却器9として、第一領域10と第二領域11の各流体を混ぜることなく熱交換する間接熱交換器が用いられ、第一領域10において、1段目のヒートポンプ2Aの圧縮機3Aからの冷媒と2段目のヒートポンプ2Bの膨張弁5Bからの冷媒とが直接に熱交換される一方、第二領域11に、2段目のヒートポンプ2Bの凝縮器4Bから膨張弁5Bを介することなく冷媒を通せばよい。この場合、1段目のヒートポンプ2Aの圧縮機3Aからの冷媒は、中間冷却器9において2段目のヒートポンプ2Bの膨張弁5Bからの冷媒で中間冷却を図られた後、2段目のヒートポンプ2Bの圧縮機3Bにおいてさらに高圧高温のガス冷媒とされ、2段目のヒートポンプ2Bの凝縮器4Bにて凝縮される。そして、その液冷媒の一部は、2段目のヒートポンプ2Bの膨張弁5Bを介して、中間冷却器9の第一領域10へ送られる一方、残りの液冷媒は、中間冷却器9の第二領域11を介して、1段目のヒートポンプ2Aの膨張弁5Bで減圧され、1段目のヒートポンプ2Aの蒸発器6Aにおいて気化した後、再び1段目のヒートポンプ2Aの圧縮機3Aへ戻される。
【0067】
図5に示すヒートポンプ式蒸気発生装置1は、上下3段のヒートポンプ2(2A,2B,2C)を備える。ここでは、1段目のヒートポンプ2Aと2段目のヒートポンプ2Bとが
図2と同様の関係で接続されると共に、2段目のヒートポンプ2Bと3段目のヒートポンプ2Cとが
図2と同様の関係で接続されている。具体的には、1段目のヒートポンプ2Aの圧縮機3Aからの冷媒と、2段目のヒートポンプ2Bの膨張弁5Bからの冷媒とを受けて、両冷媒を混ぜることなく熱交換する間接熱交換器7を備え、この間接熱交換器7が、1段目のヒートポンプ2Aの凝縮器4Aであると共に、2段目のヒートポンプ2Bの蒸発器6Bでもある。また、2段目のヒートポンプ2Bの圧縮機3Bからの冷媒と、3段目のヒートポンプ2Cの膨張弁5Cからの冷媒とを受けて、両冷媒を混ぜることなく熱交換する間接熱交換器7を備え、この間接熱交換器7が、2段目のヒートポンプ2Bの凝縮器4Bであると共に、3段目のヒートポンプ2Cの蒸発器6Cでもある。
【0068】
図6に示すヒートポンプ式蒸気発生装置1は、上下3段のヒートポンプ2(2A,2B,2C)を備える。ここでは、1段目のヒートポンプ2Aと2段目のヒートポンプ2Bとが
図3と同様の関係で接続されると共に、2段目のヒートポンプ2Bと3段目のヒートポンプ2Cとが
図2と同様の関係で接続されている。具体的には、1段目のヒートポンプ2Aの圧縮機3Aからの冷媒と、2段目のヒートポンプ2Bの膨張弁5Bからの冷媒とを受けて、両冷媒を直接に接触させて熱交換する中間冷却器8を備え、この中間冷却器8が、1段目のヒートポンプ2Aの凝縮器4Aであると共に、2段目のヒートポンプ2Bの蒸発器6Bでもある。また、2段目のヒートポンプ2Bの圧縮機3Bからの冷媒と、3段目のヒートポンプ2Cの膨張弁5Cからの冷媒とを受けて、両冷媒を混ぜることなく熱交換する間接熱交換器7を備え、この間接熱交換器7が、2段目のヒートポンプ2Bの凝縮器4Bであると共に、3段目のヒートポンプ2Cの蒸発器6Cでもある。
【0069】
図7に示すヒートポンプ式蒸気発生装置1は、上下3段のヒートポンプ2(2A,2B,2C)を備える。ここでは、1段目のヒートポンプ2Aと2段目のヒートポンプ2Bとが
図2と同様の関係で接続されると共に、2段目のヒートポンプ2Bと3段目のヒートポンプ2Cとが
図3と同様の関係で接続されている。具体的には、1段目のヒートポンプ2Aの圧縮機3Aからの冷媒と、2段目のヒートポンプ2Bの膨張弁5Bからの冷媒とを受けて、両冷媒を混ぜることなく熱交換する間接熱交換器7を備え、この間接熱交換器7が、1段目のヒートポンプ2Aの凝縮器4Aであると共に、2段目のヒートポンプ2Bの蒸発器6Bでもある。また、2段目のヒートポンプ2Bの圧縮機3Bからの冷媒と、3段目のヒートポンプ2Cの膨張弁5Cからの冷媒とを受けて、両冷媒を直接に接触させて熱交換する中間冷却器8を備え、この中間冷却器8が、2段目のヒートポンプ2Bの凝縮器4Bであると共に、3段目のヒートポンプ2Cの蒸発器6Cでもある。
【0070】
図8に示すヒートポンプ式蒸気発生装置1は、上下3段のヒートポンプ2(2A,2B,2C)を備える。ここでは、1段目のヒートポンプ2Aと2段目のヒートポンプ2Bとが
図3と同様の関係で接続されると共に、2段目のヒートポンプ2Bと3段目のヒートポンプ2Cとが
図3と同様の関係で接続されている。具体的には、1段目のヒートポンプ2Aの圧縮機3Aからの冷媒と、2段目のヒートポンプ2Bの膨張弁5Bからの冷媒とを受けて、両冷媒を直接に接触させて熱交換する中間冷却器8を備え、この中間冷却器8が、1段目のヒートポンプ2Aの凝縮器4Aであると共に、2段目のヒートポンプ2Bの蒸発器6Bでもある。また、2段目のヒートポンプ2Bの圧縮機3Bからの冷媒と、3段目のヒートポンプ2Cの膨張弁5Cからの冷媒とを受けて、両冷媒を直接に接触させて熱交換する中間冷却器8を備え、この中間冷却器8が、2段目のヒートポンプ2Bの凝縮器4Bであると共に、3段目のヒートポンプ2Cの蒸発器6Cでもある。
【0071】
なお、
図6における1段目のヒートポンプ2Aと2段目のヒートポンプ2Bとの関係、
図7における2段目のヒートポンプ2Bと3段目のヒートポンプ2Cとの関係、および
図8における上下隣接する各ヒートポンプ2A,2B,2Cの関係は、それぞれ
図3と同様の関係としたが、
図4と同様の関係で接続してもよい。
【0072】
さらに、ここでは、ヒートポンプ式蒸気発生装置1は、3段までのヒートポンプ2を用いる例のみを示したが、4段以上のヒートポンプ2で構成してもよい。その際、上下隣接するヒートポンプ2同士は、
図2から
図4に示されるいずれの関係で接続してもよい。
【0073】
各ヒートポンプ2に用いる冷媒は、特に問わないが、炭素数が4以上のハイドロフルオロカーボン(HFC)またはこれに水および/または消火液を加えたもの、アルコール(たとえばエチルアルコールまたはメチルアルコール)またはこれに水および/または消火液を加えたもの、または水(たとえば純水または軟水)が好適に用いられる。これら冷媒を用いることで、効率よく、排温水などから熱をくみ上げて蒸気を発生させることができる。また、可燃性のあるHFCやアルコールの場合には、水および/または消火液を混ぜることにより、安全性を高めることができる。
【0074】
複数段のヒートポンプ2を用いる場合、隣接する上下のヒートポンプ2,2が
図2に示す関係で接続されることにより、上下のヒートポンプ2,2の冷媒同士が混ざらないのであれば、上下のヒートポンプ2,2で互いに異なる冷媒を用いてもよい。この際、下段ヒートポンプは、上段ヒートポンプよりも沸点の低い冷媒を用いるのが好ましい。仮に上下のヒートポンプ2,2に同一冷媒を用いる場合、下段ヒートポンプの方が低温になるので、冷媒の比容積が大きくなる。そのため、上下段の熱交換を行う熱交換器で上段冷媒の蒸発に必要な熱量を供給するために必要な下段冷媒の質量流量を作り出すためには、下段圧縮機の吸込み体積流量を大きくする必要があり、圧縮機が大型になる。ところが、複数段のヒートポンプにおいて、上段よりも下段の方が沸点の低い冷媒を用いることで、下段の冷媒の比容積を小さくできるので、圧縮機の大型化を防止することができる。
【0075】
単段または複数段の各ヒートポンプ2は、冷媒の液相および気相の2相域が用いられる。そのために、各ヒートポンプ2の冷媒は、その臨界温度が、凝縮器4における冷媒の圧力に対する冷媒の飽和温度よりも高いものが用いられる。液相から気相への相変化、および気相から液相への相変化を利用したヒートポンプ2とすることで、潜熱を用いることができる。本発明のようにヒートポンプ2で水を加熱して蒸気を発生させる場合、単に水を加熱して温水を製造する場合とは比較にならない大きな蒸発潜熱が必要であるから、冷媒の側も顕熱ではなく潜熱を利用するのである。
【0076】
いずれにしても、ヒートポンプ式蒸気発生装置1は、最下段のヒートポンプ(単段のヒートポンプを含む)2の蒸発器6Zにおいて、温水、空気、排ガスなどから熱をくみ上げる。たとえば、工場などから排出される排温水を用い、最下段のヒートポンプ2の蒸発器6Zにおいて、排温水による冷媒の加温と、冷媒の気化熱による排温水の冷却とが図られる。そして、最上段のヒートポンプ(単段のヒートポンプを含む)2の凝縮器4Zにおいて、水を加熱して蒸気を発生させる。蒸気発生用凝縮器4Zへの給水としては、凝縮器4Zを構成する熱交換器内へのスケール(水中の硬度分が析出したもの)の付着を防止するために、純水または軟水であるのが好ましい。
【0077】
最上段のヒートポンプ2の凝縮器4、つまり蒸気発生用凝縮器4Zは、冷媒と水とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器であれば、その具体的構成を特に問わない。たとえば、プレート式熱交換器を用いてもよいが、本実施例では
図9に示すように、シェルアンドチューブ式熱交換器12が用いられる。
【0078】
シェルアンドチューブ式熱交換器12は、中空容器状のシェル13内に複数のチューブ14が配置されて構成され、シェル13とチューブ14との内、一方に水が溜められ、他方に冷媒が通されることで、熱交換器12内で冷媒により水を加熱して蒸気化する。シェル13とチューブ14との内、いずれに水を溜め、いずれに冷媒を通すかは、適宜に設定される。
【0079】
各チューブ14を上下に向けた縦置きで用いる場合、シェル13とチューブ14との内、いずれに水を溜める場合でも、気泡が途中に溜まらない利点がある。また、一般に冷媒は水より熱伝達率が低い点、および、チューブ14は内周面よりも外周面の面積が大きくなる点を考慮すれば、チューブ14の内側に水を溜め、外側(つまりシェル13)に冷媒を通すのが好ましい。
【0080】
各チューブ14を左右に向けた横置きで用いる場合、前述したように、冷媒の熱伝達率が水よりも低い点を考慮すれば、伝熱面積が大きくなるチューブ14の外側(つまりシェル13)に冷媒を通すのがよい。この場合、ガス冷媒がチューブ14の外周面で凝縮して液滴となっても、その液滴をチューブ14から容易に脱落させることができる利点もある。但し、チューブ14内に気泡が溜まるおそれがあるので、ポンプで水を強制循環させるなどの工夫が必要となる。一方、シェル13に水を溜めれば、気泡が途中に溜まらない利点がある。
【0081】
図9は、蒸気発生用凝縮器4Zの具体的構成の一例を示す概略図であり、ボイラ15を併設した蒸気システムを示している。ここでは、蒸気発生用凝縮器4Zとして、シェルアンドチューブ式熱交換器12を縦にして用いている。
【0082】
シェルアンドチューブ式熱交換器12は、前述したように、中空容器状のシェル13内に複数のチューブ14が配置されて構成される。図示例では、円筒状のシェル13内に、シェル13の軸線と平行に複数のチューブ14が配置され、各チューブ14の両端部は、シェル13の軸方向両端部に配置された管寄せ16,17に開口している。そして、シェル13とチューブ14との内、一方に水を溜めておき、他方に冷媒を通すことで、熱交換器12内で冷媒により水を加熱して蒸気化する一方、ガス冷媒を水により冷却して凝縮させる。
【0083】
図9の場合、各チューブ14が上下方向へ沿うように、シェルアンドチューブ式熱交換器12は縦に設置されている。そして、ここでは、チューブ14に水が貯留され、シェル13に冷媒が通される。具体的には、下部管寄せ17を介して各チューブ14には、給水ポンプ18からの水が逆止弁19を介して供給可能とされる。給水路20に逆止弁19を設けておくことで、給水ポンプ18の停止時に、水が逆流するのを防止することができる。
【0084】
給水ポンプ18は、水位検出器(図示省略)の検出結果に基づき制御され、これにより、熱交換器12内の水位は設定範囲に維持される。具体的には、下限水位を下回ると給水ポンプ18を作動させ、上限水位を上回ると給水ポンプ18を停止させればよい。但し、給水制御の方法は、これに限らず、たとえば、水位に比例した信号を得ることができる静電容量式の水位検出器を用いて、給水ポンプ18をインバータ制御して、給水量を調整してもよい。また、給水ポンプ18をインバータ制御する代わりに、給水ポンプ18と逆止弁19との間に給水弁(図示省略)を設け、給水ポンプ18を作動させたまま、給水弁の開度を調整してもよい。
【0085】
圧縮機3からのガス冷媒は、シェル13の上方から供給され、チューブ14に接触することで凝縮し、液冷媒としてシェル13の下方から排出される。冷媒と水との熱交換を高めるには、チューブ14の表面から冷媒の凝縮液を速やかに脱落させるのが好ましい。そこで、シェル13内にはバッフル板21を斜めに配置して、このバッフル板21にチューブ14を貫通させた構成とするのがよい。この場合、チューブ14表面の冷媒の凝縮液は、バッフル板21を伝ってシェル13の壁面近くで、シェル13の下方へ落とされる。なお、チューブ14の内側および/または外側には、適宜、フィンや溝などを設けて、伝熱面積の拡大を図ってもよい。
【0086】
チューブ14内の水は、シェル13の冷媒との熱交換により加熱され、蒸気化される。その蒸気は、上部管寄せ16から所望により気水分離器22を介して、各種の蒸気使用設備(図示省略)へ送られる。図示例の気水分離器22は、上下方向へ沿って円筒状の胴23を有し、この胴23の周側壁に接線方向に接続された蒸気入口管24を介して、上部管寄せ16から蒸気が胴23内へ導入される。胴23内へ導入された蒸気は、胴23内で旋回し、その遠心力で水滴は胴23の周側壁に当たって下方へ脱落し、そのようにして乾き度を向上された蒸気が、胴23の上部に接続された蒸気出口管25から導出される。
【0087】
蒸気出口管25からの蒸気は、逆止弁26の他、所望により減圧弁や蒸気ヘッダなどを介して、各種の蒸気使用設備へ送られる。蒸気出口管25からの蒸気とボイラ(燃料焚きボイラまたは電気ボイラなど)15からの蒸気とを合流させる場合、ヒートポンプ式蒸気発生装置1の運転を止めた際に、ボイラ15からの蒸気が凝縮器4Zへ逆流するのを防止するために、蒸気出口管25には逆止弁26を設けておくのが好ましい。
【0088】
胴23の下部と凝縮器4Zの下部管寄せ17とは分離水戻し管27で接続されており、胴23内で遠心分離された水は、凝縮器4Zへ戻される。なお、二点鎖線で示すように、上部管寄せ16と下部管寄せ17とを、気水分離器22を介さずに降水管28で接続してもよい。胴23もしくは分離水戻し管27、または胴23と分離水戻し管27の両者に跨って、目視で水位を確認できる水面計29が設けられる。降水管28を設ける場合には、降水管28に水面計29を設けてもよい。なお、前述したとおり、凝縮器4Zには、電極式や静電容量式などの水位検出器が設置される。
【0089】
分離水戻し管27の下部には、排水管30が分岐するよう接続され、この排水管30には排水弁31が設けられる。ヒートポンプ式蒸気発生装置1の運転に伴い、蒸気発生用凝縮器4Z内の水が濃縮するので、適宜、この排水弁31を開けて排水(ブロー)し、凝縮器4Z内の水の一部または全部が入れ替えられる。この排水のタイミングは、電気伝導度センサにより水の濃縮度を検知してもよいが、圧縮機3(最上段のヒートポンプ2の圧縮機3がよい)の積算回転数(ヒートポンプ式蒸気発生装置1の設置からの総回転数)を利用するのが簡易である。具体的には、直前のブローからの圧縮機3の積算回転数で、次回のブローのタイミングを決定することができる。発生させた蒸気量で濃縮度が変化すること、および蒸気量は圧縮機3の回転数に比例することを考慮したものである。
【0090】
蒸気発生用凝縮器4Zの上部管寄せ16、またはそこから逆止弁26までの適宜の箇所には、真空破壊弁32が設けられる。ヒートポンプ式蒸気発生装置1の運転を停止した後、蒸気発生用凝縮器4Z内の蒸気が凝縮することで、蒸気発生用凝縮器4Z内が負圧になろうとすると、真空破壊弁32が外気を導入してそれを防止する。
【0091】
図10は、
図9の変形例を示す概略図である。
図9では、蒸気発生用凝縮器4Zは、各チューブ14が上下方向へ沿うよう配置されたが、
図10では、蒸気発生用凝縮器4Zは斜めに配置される。この場合、バッフル板21は、チューブ14の長手方向と直交する方向に設けておけば足りる。また、
図10では、シェル13の軸方向中央部から冷媒を入れる例を示している。この場合、シェル13内に導入された冷媒は、バッフル板21により適宜分散してシェル13内を通過し、チューブ14内の水を加熱すると共に、自らは凝縮してシェル13の下部から排出される。なお、上部管寄せ16から気水分離器22への蒸気入口管24の接続は、実線で示すように上部管寄せ16の中央に接続してもよいし、二点鎖線で示すように左右いずれかに寄せた位置としてもよい。
【0092】
ヒートポンプ式蒸気発生装置1は、蒸気発生用凝縮器4Zにて発生させた蒸気の圧力に基づき、圧縮機3が制御される。具体的には、蒸気発生用凝縮器4Zからの蒸気圧を検出するために、蒸気発生用凝縮器4Zの上部管寄せ16またはそこからの蒸気路33(蒸気入口管24や蒸気出口管25など)には圧力センサ(圧力スイッチを含む)34が設けられ、この圧力センサ34の検出信号に基づきヒートポンプ2の圧縮機3が制御される。
【0093】
圧縮機3は、圧縮機本体とその駆動装置とを備え、駆動装置はエンジン(典型的にはガスエンジンまたはディーゼルエンジン)および/またはモータから構成される。圧縮機3の制御の具体的態様としては、たとえば、駆動装置がオンオフ制御される。あるいは、圧縮機本体と駆動装置との間に、駆動装置から圧縮機本体への動力伝達装置(クラッチおよび/または変速機)を設けておき、駆動装置から圧縮機本体への動力伝達の有無や量を変更するように、動力伝達装置が制御される。あるいは、駆動装置を構成するモータをインバータで制御して、モータの回転数(回転速度ともいえる)を変える。あるいは、駆動装置を構成するエンジンのアクセルを制御して、エンジンの出力を変える。あるいは、圧縮機本体の冷媒吐出流量(吸込側を調整することにより吐出流量を変える場合も含む)を機械的に調整するために、圧縮機本体が制御される。これらの内、複数のものを組み合わせて、圧縮機3を制御してもよい。
【0094】
また、ヒートポンプ式蒸気発生装置1は、圧縮機3入口(
図1のa部)の過熱度を所望に維持するように、膨張弁5の開度が調整される。具体的には、圧縮機3入口(蒸発器6出口)における冷媒の圧力と温度とから冷媒の過熱度を求め、この過熱度を所望に維持するように膨張弁5の開度が調整される。なお、後述する液ガス熱交換器35を設置する場合も、圧縮機3入口(液ガス熱交換器35出口)における冷媒の圧力と温度とから冷媒の過熱度を求め、所望の過熱度に維持するように膨張弁の開度を調整すればよい。
【0095】
ヒートポンプ式蒸気発生装置1が複数段のヒートポンプ2を備える場合には、最上段のヒートポンプ2の圧縮機3は、蒸気発生用凝縮器4Zからの蒸気圧に基づき制御され、それより下段の各ヒートポンプ2の圧縮機3は、それぞれ対応する段のヒートポンプ2の凝縮器4における冷媒(または一つ上段のヒートポンプ2の蒸発器6における冷媒)の圧力または温度に基づき制御されるのがよい。また、各段の膨張弁5は、対応する段の圧縮機3入口における冷媒の過熱度を所望に維持するように開度調整される。
【0096】
たとえば、
図2に示すヒートポンプ式蒸気発生装置1では、2段目のヒートポンプ2Bにおいては、凝縮器4Bにて発生させた蒸気の圧力に基づき圧縮機3Bが制御され、1段目のヒートポンプ2Aにおいては、1段目のヒートポンプ2Aの凝縮器4Aと2段目のヒートポンプ2Bの蒸発器6Bを兼ねた間接熱交換器7における冷媒(1段目のヒートポンプ2Aの冷媒であるが、場合により2段目のヒートポンプ2Bの冷媒でもよい)の圧力または温度に基づき圧縮機3Aが制御される。また、各段のヒートポンプ2において、圧縮機3入口の過熱度を所望に維持するように膨張弁5の開度が調整される。
【0097】
また、
図3に示すヒートポンプ式蒸気発生装置1では、2段目のヒートポンプ2Bにおいては、凝縮器4Bにて発生させた蒸気の圧力に基づき圧縮機3Bが制御され、1段目のヒートポンプ2Aにおいては、中間冷却器8内の圧力に基づき圧縮機3Aが制御される。また、各段のヒートポンプ2において、圧縮機3入口の過熱度を所望に維持するように膨張弁5の開度が調整される。但し、2段目のヒートポンプ2Bの膨張弁5Bについては、中間冷却器8(または2段目のヒートポンプ2Bの膨張弁5B手前に受液器を設ける場合にはその受液器でもよい)の液冷媒の液位を所望に維持するように、開度を調整するのがよい。
【0098】
また、
図4に示すヒートポンプ式蒸気発生装置1では、2段目のヒートポンプ2Bにおいては、凝縮器4Bにて発生させた蒸気の圧力に基づき圧縮機3Bが制御され、1段目のヒートポンプ2Aにおいては、中間冷却器9内の圧力(1段目のヒートポンプ2Aの圧縮機3Aからの冷媒と2段目のヒートポンプ2Bの膨張弁5Bからの冷媒との混合冷媒の圧力)に基づき圧縮機3Aが制御される。また、各段のヒートポンプ2において、圧縮機3入口の過熱度を所望に維持するように膨張弁5の開度が調整される。
【0099】
3段以上のヒートポンプ2を備える場合も同様に、最上段のヒートポンプ2の圧縮機3は、蒸気発生用凝縮器4Zからの蒸気圧に基づき制御され、それより下段の各ヒートポンプ2の圧縮機3は、それぞれ対応する段のヒートポンプ2の凝縮器4における冷媒の圧力または温度に基づき制御すればよい。また、各段の膨張弁5は、基本的には、対応する段の圧縮機3入口における冷媒の過熱度を所望に維持するように開度調整すればよく、例外的に、
図3に基づき説明したように、液位に基づく制御を行ってもよい。
【0100】
本実施例のヒートポンプ式蒸気発生装置1によれば、蒸気発生用凝縮器4Zからの蒸気圧に基づき圧縮機(前述したように直接的には最上段の圧縮機)3を制御することで、所望の蒸気圧の蒸気を得ることができる。典型的には、蒸気発生用凝縮器4Zからの蒸気圧を、所望に設定された所定圧力に維持するようにヒートポンプ2を運転して、所定圧力の蒸気を蒸気使用設備へ安定して供給することができる。
【0101】
たとえば、蒸気使用設備における蒸気の使用量が増えて、圧力センサ34の検出圧力が所定圧力未満となると、圧縮機3を作動させて蒸気を発生させ、逆に、蒸気使用設備における蒸気の使用量が減るか無くなり、圧力センサ34の検出圧力が所定圧力以上となると、圧縮機3を停止させればよい。この際、蒸気圧の上昇時と下降時とで圧縮機3をオンオフする圧力にディファレンシャル(動作隙間)を設けてもよいことは言うまでもない。また、圧縮機3をオンオフ制御する以外に、圧力センサ34の検出圧力が所定圧力になるように、圧縮機3を駆動するモータをインバータ制御したりしてもよい。
【0102】
図9および
図10に示すように、ヒートポンプ式蒸気発生装置1は、ボイラ15が併設されてもよい。このボイラ15は、典型的には燃料焚きボイラまたは電気ボイラである。燃料焚きボイラは、燃料の燃焼により水を蒸気化する装置であり、缶体内の蒸気圧を所望に維持するように、燃焼の有無や量が調整される。また、電気ボイラは、電気ヒータにより水を蒸気化する装置であり、缶体内の蒸気圧を所望に維持するように、電気ヒータへの電力供給の有無や量が調整される。但し、ボイラ15は、燃料焚きボイラまたは電気ボイラに限らず、廃熱ボイラなどであってもよい。廃熱ボイラの場合、その熱源は特に問わず、たとえば、エンジンなどからの排ガス、またはSOFC(固体酸化物形燃料電池)からの廃熱を用いることができる。
【0103】
蒸気発生用凝縮器4Zから蒸気使用設備への蒸気路33には、ボイラ15からの蒸気路36が接続される。この接続は、蒸気ヘッダにて行うこともできる。ボイラ15からの蒸気路36には、減圧弁37が設けられる。この減圧弁37の設定圧力は、前記圧縮機制御用の所定圧力よりも低く設定しておくのがよい。
【0104】
また、ヒートポンプ2(具体的にはその凝縮器4)からの蒸気とボイラ15からの蒸気との合流蒸気の圧力を検出可能な位置には、圧力センサ34が設けられる。図示例では、凝縮器4およびボイラ15からの蒸気が合流された後の蒸気路に、圧力センサ34が設けられているが、ヒートポンプ2からの蒸気とボイラ15からの蒸気とを蒸気ヘッダで合流させる場合、その蒸気ヘッダに圧力センサ34を設けてもよい。また、合流蒸気の圧力を検出可能であれば、凝縮器4からの蒸気路であって合流部よりも上流側でもよいし、ボイラ15からの蒸気路であって合流部よりも上流側で且つ減圧弁37より下流側に設けてもよい。但し、逆止弁26を設ける場合には、逆止弁26より下流側に設けられる。
【0105】
図11は、圧力センサ34の検出圧力、減圧弁37の開閉状態、および最上段の圧縮機3の動作状態を示す概略図である。ここでは、圧縮機3が第一設定圧力(=前記「所定圧力」)P1でオンオフされ、減圧弁37が第二設定圧力P2で開閉される例について説明する。
【0106】
圧力センサ34の検出圧力が第二設定圧力P2未満であると、圧縮機3が駆動されると共に減圧弁37は開放している。これにより、ヒートポンプ2およびボイラ15からの蒸気が蒸気使用設備へ供給される。そして、第二設定圧力P2以上になると、減圧弁37が閉鎖し、ボイラ15からの蒸気供給は停止され、ヒートポンプ2から蒸気供給される。圧力センサ34の検出圧力が第一設定圧力P1以上になると、圧縮機3が停止し、ヒートポンプ2からの蒸気供給も停止される。そして、圧力センサ34の検出圧力が第一設定圧力P1未満になると、圧縮機3が駆動され、ヒートポンプ2による蒸気だけでは賄い切れず、第二設定圧力P2未満になると、減圧弁37が開いてボイラ15からも蒸気が供給される。
【0107】
なお、第一設定圧力P1および第二設定圧力P2には、所望によりそれぞれディファレンシャル(動作隙間)が設定されるのは言うまでもない。また、圧縮機3は、オンオフ制御だけでなく、比例制御やPID制御されてもよいし、減圧弁37に代えて電動弁(モータバルブまたは比例制御弁など)を設置して、圧力センサ34の検出圧力を第二設定圧力P2に維持するように電動弁を制御してもよい。
【0108】
これらの場合について、
図12に基づき説明する。なお、
図12では、第一設定圧力P1のディファレンシャル(または比例帯)P1H〜P1Lと、第二設定圧力P2のディファレンシャル(または比例帯)P2H〜P2Lとはオーバーラップしていないが、一部をオーバーラップさせてもよい。つまり、第二上限圧力P2Hは、第一下限圧力P1Lよりも高圧に設定されてもよい。
【0109】
まず、第一設定圧力P1および第二設定圧力P2に、それぞれディファレンシャルが設定されたオンオフ制御を説明する。この場合、第一設定圧力P1については、第一上限圧力P1Hと第一下限圧力P1Lとが設定され、圧力上昇時、圧力センサ34の検出圧力が第一上限圧力P1H以上になると圧縮機3が停止し、圧力下降時、圧力センサ34の検出圧力が第一下限圧力P1L未満になると圧縮機3が駆動する。また、第二設定圧力P2については、第二上限圧力P2Hと第二下限圧力P2Lとが設定され、圧力上昇時、第二上限圧力P2H以上になると減圧弁37(自力式減圧弁または電磁弁)が閉じ、圧力下降時、第二下限圧力P2L未満になると減圧弁37が開く。
【0110】
次に、圧縮機3と電動弁(減圧弁37に代えて設置される電動弁)を比例制御する場合の一例について説明する。この場合、圧力センサ34の検出圧力に基づき、第一上限圧力P1Hと第一下限圧力P1Lとの範囲で、且つその第一上限圧力P1Hを設定値(目標値)として圧縮機3を比例制御する。典型的には圧縮機3の回転数を変える。また、圧力センサ34の検出圧力に基づき、第二上限圧力P2Hと第二下限圧力P2Lとの範囲で、且つその第二上限圧力P2Hを設定値(目標値)として電動弁を比例制御する。つまり、電動弁の開度を調整する。ここで、第一上限圧力P1H以上では、圧縮機3は停止し、第一下限圧力P1L未満では、圧縮機3は全負荷運転する。また、第二上限圧力P2H以上では、電動弁は全閉し、第二下限圧力P2L未満では、電動弁は全開する。なお、比例制御ではなくPID制御を行ってもよい。
【0111】
いずれの場合も、後述する温度センサ39により蒸発器6の出口側の水温を監視し、この温度が下限値未満になると、ヒートポンプ2を運転しても所望の蒸気を得られないとして、圧縮機3を停止させてもよい。
【0112】
いずれにしても、第二設定圧力P2を第一設定圧力P1よりも低く設定しておくことで、ヒートポンプ2の運転を優先しつつ、蒸気使用設備へ蒸気を安定して供給することができる。この際、特に、減圧弁37を用いることで、ボイラ15からの蒸気供給の有無を自力で切り替えて、ヒートポンプ2の運転を優先させつつ、それでは足りない場合にボイラ15からの蒸気を蒸気使用設備へ送ることができる。
【0113】
ところで、本実施例のヒートポンプ式蒸気発生装置1は、蒸気発生用凝縮器4Zからの蒸気圧に基づき圧縮機3を制御する以外に、温水冷却用蒸発器(最下段のヒートポンプの蒸発器)6Zを通された後の水温に基づき圧縮機3を制御してもよい(
図1)。具体的には、温水冷却用蒸発器6Zにて冷却後の水温を検出するために、温水冷却用蒸発器6Zまたはそこからの排水路38には温度センサ39が設けられ、この温度センサ39の検出信号に基づきヒートポンプ2の圧縮機3が制御される。このような構成の場合、温水冷却用蒸発器6Zにおいて、所望温度まで確実に温水を冷却することができる。
【0114】
なお、複数段のヒートポンプ2を備える蒸気発生装置1において、温水冷却用蒸発器6Zを通された後の水温に基づき圧縮機3を制御する場合は、最下段のヒートポンプ2の圧縮機3は、温水冷却用蒸発器6Zを通された後の水温に基づき制御され、それより上段の各ヒートポンプ2の圧縮機3は、それぞれ対応する段のヒートポンプ2の蒸発器6(または一つ下段のヒートポンプ2の凝縮器4)における冷媒の圧力または温度に基づき制御すればよい。
【0115】
温水冷却用蒸発器6Zを通された後の水温に基づき圧縮機3を制御する場合、蒸気発生用凝縮器4Zにて発生させる蒸気量を直接には制御できないが、前述したようにヒートポンプ式蒸気発生装置1にボイラ15を併設しておくことで、蒸気使用設備へは安定して蒸気を供給することができる。
【0116】
図13は、温水冷却用蒸発器6Zを通された後の水温に基づき圧縮機3を制御する場合の蒸気システムの構成例を示す図である。ここでは、構成を簡素化して示しているが、ヒートポンプ2を複数段にできる他、後述する液ガス熱交換器35やサブクーラ40などを設けてもよいことは言うまでもない。
【0117】
図13の場合、蒸発器6への給水路41と蒸発器6からの排水路38とがバイパス路42で接続され、排水路38には、バイパス路42との合流部より上流側に温度センサ39が設けられる。この温度センサ39により、蒸発器6の出口側の水温が監視される。
【0118】
また、蒸発器6を介することなくバイパス路42を介して排水路38へ流すバイパス流量を調整可能に構成される。具体的には、図示例の場合、給水路41とバイパス路42との分岐部に、三方弁からなるバイパス弁43が設けられる。但し、分岐部に三方弁を設置する代わりに、分岐部より下流の給水路41および/またはバイパス路42に弁を設けて、バイパス流量を調整可能としてもよい。いずれにしても、バイパス流量を調整することで、蒸発器6を通す流量が調整される。
【0119】
図13の場合、バイパス流量(前述したとおり蒸発器6への給水量ということもできる)は、温度センサ39の検出温度を第一設定温度T1に維持するよう制御される。また、圧縮機3は、温度センサ39の検出温度を第二設定温度T2に維持するよう制御される。そして、第二設定温度T2は、第一設定温度T1よりも低く設定される(
図14)。
【0120】
図14は、温度センサ39の検出温度、バイパス弁43の開閉状態、および圧縮機3の動作状態を示す概略図である。ここでは、バイパス弁43が第一設定温度T1で開閉され、圧縮機3が第二設定温度T2でオンオフされる例について説明する。なお、バイパス弁43をオンオフ制御する場合、バイパス弁43が閉鎖されると、バイパス路42への給水が完全に停止される一方、バイパス弁43が開放されると、バイパス路42への給水が開始される。この際、蒸発器6とバイパス路42とに所定割合で給水してもよいし、蒸発器6への給水は停止してもよい。
【0121】
温度センサ39の検出温度が第二設定温度T2未満であると、ヒートポンプ2を運転しても所望の蒸気を得られないとして、圧縮機3が停止されると共にバイパス弁43は閉鎖している。この状態では、ボイラ15からの蒸気が蒸気使用設備へ供給される。そして、第二設定温度T2以上になると、圧縮機3が作動し、ヒートポンプ2から蒸気が供給される。温度センサ39の検出温度が第一設定温度T1以上になると、バイパス弁43が開放し、ヒートポンプ2の保護が図られる。なお、温度センサ39の検出温度がさらに上昇して上限値TH以上になると、圧縮機3を強制停止するのがよい。
【0122】
なお、第一設定温度T1および第二設定温度T2には、所望によりそれぞれディファレンシャル(動作隙間)が設定されるのは言うまでもない。また、圧縮機3およびバイパス弁43は、オンオフ制御だけでなく、比例制御されてもよい。
【0123】
これらの場合について、
図15に基づき説明する。なお、
図15では、第一設定温度T1のディファレンシャル(または比例帯)T1H〜T1Lと、第二設定温度T2のディファレンシャル(または比例帯)T2H〜T2Lとはオーバーラップしていないが、一部をオーバーラップさせてもよい。つまり、第二上限温度T2Hは、第一下限温度T1Lよりも高温に設定されてもよい。
【0124】
まず、第一設定温度T1および第二設定温度T2に、それぞれディファレンシャルが設定されたオンオフ制御を説明する。この場合、第一設定温度T1については、第一上限温度T1Hと第一下限温度T1Lとが設定され、温度上昇時、温度センサ39の検出温度が第一上限温度T1H以上になるとバイパス弁43が開き、温度下降時、温度センサ39の検出温度が第一下限温度T1L未満になるとバイパス弁43が閉じる。また、第二設定温度T2については、第二上限温度T2Hと第二下限温度T2Lとが設定され、温度上昇時、第二上限温度T2H以上になると圧縮機3が作動し、温度下降時、第二下限温度T2L未満になると圧縮機3が停止する。
【0125】
次に、圧縮機3とバイパス弁43を比例制御する場合の一例について説明する。この場合、温度センサ39の検出温度に基づき、第一上限温度T1Hと第一下限温度T1Lとの範囲で、且つその第一下限温度T1Lを設定値(目標値)としてバイパス弁43を比例制御する。また、温度センサ39の検出温度に基づき、第二上限温度T2Hと第二下限温度T2Lとの範囲で、且つその第二下限温度T2Lを設定値(目標値)として圧縮機3を比例制御する。ここで、第一下限温度T1L未満では、バイパス弁43は全閉し、第一上限温度T1H以上では、バイパス弁43は全開する。また、第二下限温度T2L未満では、圧縮機3は停止し、第二上限温度T2H以上では、圧縮機3は全負荷運転する。なお、比例制御ではなくPID制御を行ってもよい。
【0126】
いずれの場合も、前述した圧力センサ34により蒸気圧を監視し、この圧力が上限値以上になると、ヒートポンプ2を運転して蒸気を発生させる必要はないので、圧縮機3を停止させるのがよい。また、バイパス弁43は、温度センサ39の検出温度に基づき制御される以外に、この制御と同様に開閉される自力式の温調弁とされてもよい。
【0127】
これまで述べたように、圧縮機3は、圧力センサ34の検出圧力に基づき制御される(
図11,
図12)他、これに代えて温度センサ39の検出温度に基づき制御される(
図14,
図15)。但し、圧縮機3は、圧力センサ34と温度センサ39の双方に基づき、制御されてもよい。その一例について、次に説明する。これは、
図12による制御と、
図15による制御との組合せといえる。
【0128】
まず、圧縮機3は、圧力センサ34の検出圧力に基づき、第一上限圧力P1Hと第一下限圧力P1Lとの範囲で、且つその第一上限圧力P1Hを設定値として比例制御可能とされる。また、圧縮機3は、温度センサ39の検出温度に基づき、第二上限温度T2Hと第二下限温度T2Lとの範囲で、且つその第二下限温度T2Lを設定値として比例制御可能とされる。そして、設定タイミング(たとえば設定時間ごと)で、次式により第一偏差率η1と第二偏差率η2とを求め、圧力センサ34による制御と温度センサ39による制御との内、偏差率の小さい方の制御に切り替えて、圧縮機3を制御すればよい。具体的には、η1<η2の関係にある場合、圧力センサ34の検出圧力に基づき圧縮機3を比例制御すればよく、η1>η2の関係にある場合、温度センサ39の検出温度に基づき圧縮機3を比例制御すればよい。なお、現在圧力Pとは、圧力センサ34による検出圧力であり、現在温度Tとは、温度センサ39による検出温度である。
【0129】
第一偏差率η1=(第一上限圧力P1H−現在圧力P)/(第一上限圧力P1H−第一下限圧力P1L)
第二偏差率η2=(現在温度T−第二下限温度T2L)/(第二上限温度T2H−第二下限温度T2L)
【0130】
偏差率が小さいほど、目標値に近いので、圧縮機3の操作量は小さくなる。仮に、偏差率が大きい方、つまり操作量が大きい方で圧縮機3を制御しようとすると、偏差率が小さい方、つまり操作量が小さい方は目標値にすぐに到達してしまうことになる。ところが、偏差率の小さい方の制御に適宜切り替えて制御することで、圧縮機3が停止する頻度を少なくすることができる。また、停止するにしても、停止状態へ緩やかに移行することができる。さらに、圧力制御か温度制御かを手動設定する必要もない。
【0131】
この制御中、温度センサ39の検出温度が下限値未満になったり、温度センサ39の検出温度が上限値以上になったり、圧力センサ34の検出圧力が上限値以上になったりすると、圧縮機3を強制停止させるのがよい。なお、比例制御ではなくPID制御を行ってもよい。
【0132】
圧力センサ34による制御と温度センサ39による制御とは、上述したように偏差率に基づき切り替える以外に、圧縮機3の操作量に基づき切り替えてもよい。この場合も、圧縮機3は、圧力センサ34の検出圧力に基づき、第一上限圧力P1Hと第一下限圧力P1Lとの範囲で、且つその第一上限圧力P1Hを設定値として比例制御またはPID制御可能とされる。また、圧縮機3は、温度センサ39の検出温度に基づき、第二上限温度T2Hと第二下限温度T2Lとの範囲で、且つその第二下限温度T2Lを設定値として比例制御またはPID制御可能とされる。そして、設定タイミング(たとえば設定時間ごと)で、圧力センサ34による制御における圧縮機3の操作量と、温度センサ39による制御における圧縮機3の操作量とを求め、圧力センサ34による制御と温度センサ39による制御との内、操作量の小さい方で圧縮機3を制御すればよい。たとえば、圧力センサ34による制御では操作量Xとする必要がある一方、温度センサ39による制御では操作量Yとする必要がある場合において、X<Yの関係にある場合、圧力センサ34の検出圧力に基づき圧縮機3を制御すればよく、X>Yの関係にある場合、温度センサ39の検出温度に基づき圧縮機3を制御すればよい。
【0133】
圧力センサ34による制御と温度センサ39による制御とを、偏差率または操作量に基づき切替制御する場合において、
図16に示すように、ヒートポンプ2は複数段であってもよい。なお、
図16では、2段のヒートポンプ2A,2Bを示しているが、3段以上も同様に制御可能である。また、
図16では、液ガス熱交換器35やサブクーラ40などを設けていないが、これらを設けてもよいことは言うまでもない。
【0134】
この場合、最上段のヒートポンプ2Bの圧縮機3Bは、圧力センサ34の検出圧力に基づき、第一上限圧力P1Hと第一下限圧力P1Lとの範囲で、且つその第一上限圧力P1Hを設定値として比例制御またはPID制御可能とされる。また、最下段のヒートポンプ2Aの圧縮機3Aは、温度センサ39の検出温度に基づき、第二上限温度T2Hと第二下限温度T2Lとの範囲で、且つその第二下限温度T2Lを設定値として比例制御またはPID制御可能とされる。
【0135】
そして、破線で示すように、圧力センサ34の検出圧力に基づき最上段のヒートポンプ2Bの圧縮機3Bを制御する場合、それより下段の各ヒートポンプ2Aの圧縮機3Aは、その段の凝縮器4Aまたは一つ上段の蒸発器6Bの冷媒の圧力(冷媒圧センサ44の検出圧力)に基づき制御される。また、一点鎖線で示すように、温度センサ39の検出温度に基づき最下段のヒートポンプ2Aの圧縮機3Aを制御する場合、それより上段の各ヒートポンプ2Bの圧縮機3Bは、その段の蒸発器6Bまたは一つ下段の凝縮器4Aの冷媒の圧力(冷媒圧センサ44の検出圧力)に基づき制御される。なお、凝縮器4の冷媒の圧力は、圧縮機3出口から膨張弁5入口までのいずれの箇所で検出してもよく、蒸発器6の冷媒の圧力は、膨張弁5出口から圧縮機3入口までのいずれの箇所で検出してもよい。
【0136】
そして、偏差率に基づき切替制御する場合、設定タイミングで、上述したのと同様に第一偏差率η1と第二偏差率η2とを求め、圧力センサ34による制御と温度センサ39による制御との内、偏差率の小さい方の制御に切り替えればよい。
【0137】
あるいは、操作量に基づき切替制御する場合、設定タイミングで、圧力センサ34による制御における最上段の圧縮機3Bの操作量(第一操作量y1)と、温度センサ39による制御における最下段の圧縮機3Aの操作量(第二操作量y2)とから、第一操作量y1の第二操作量y2に対する比の値y1/y2を求め、この値が予め設定された定数未満なら、圧力センサ34による制御を行う一方、前記定数以上なら温度センサ39による制御を行えばよい。
【0138】
ところで、単段のヒートポンプ2、または複数段のヒートポンプ2の内の一部または全部のヒートポンプ2において、
図1から
図8において二点鎖線で示すように、液ガス熱交換器35を設置してもよい。この液ガス熱交換器35では、凝縮器4から膨張弁5への冷媒と蒸発器6から圧縮機3への冷媒とを混ぜることなく熱交換する。これにより、蒸発器6から圧縮機3への冷媒は、液ガス熱交換器35により、凝縮器4から膨張弁5への冷媒で過熱される。これにより、圧縮機3の入口側のエンタルピを高めて、そしてそれにより圧縮機3の出口側のエンタルピも高めることで、ヒートポンプ2の成績係数(COP)を高めることができる。しかも、圧縮機3へ液冷媒が供給される不都合も防止できる。
【0139】
但し、複数段のヒートポンプ2の場合、最上段のヒートポンプ2には液ガス熱交換器35を設けない方が好ましい。高温高圧となる最上段のヒートポンプ2には液ガス熱交換器35を設けないことで、圧縮機の出口側の温度上昇を防止することができ、圧縮機3の潤滑油の劣化を防止することができる。
【0140】
また、蒸気発生用凝縮器4Zから膨張弁5への冷媒を、蒸気発生用凝縮器4Zへの給水で冷却するサブクーラ40を設けてもよい。この場合、サブクーラ40により、凝縮器4から膨張弁5への冷媒を過冷却することができると共に、凝縮器4への給水の加温を図ることができる。また、冷媒と水との熱交換は、顕熱による熱交換部としてのサブクーラ40と、主として潜熱による熱交換部としての凝縮器4とに分けられるので、伝熱効率がよい。なお、液ガス熱交換器35とサブクーラ40との双方を設ける場合、図示例の二点鎖線では、サブクーラ40の出口側の冷媒を液ガス熱交換器35に通しているが、
図1(
図2以降も図示は省略するが同様)において一点鎖線で示すように、凝縮器4とサブクーラ40との間から冷媒を液ガス熱交換器35に通してもよい。この際、凝縮器4とサブクーラ40との間から冷媒を液ガス熱交換器35に通した後、サブクーラ40の入口側へ戻すのではなく、サブクーラ40の出口側へ戻してもよい。つまり、凝縮器4からの冷媒を、液ガス熱交換器35とサブクーラ40とに並列に供給し、液ガス熱交換器35とサブクーラ40とからの各冷媒を合流して膨張弁5へ送るように構成してもよい。
【0141】
その他、蒸気発生用凝縮器4Zは、断熱材で囲ってもなお放熱があるので、この放熱を用いて加温した水を、蒸気発生用凝縮器4Zにおいて蒸気化してもよい。
【0142】
また、圧縮機3からも放熱があるので、この放熱を用いて加温した水を、蒸蒸気発生用凝縮器4Zへ供給して蒸気化してもよい。蒸気発生用凝縮器4Zへの給水で圧縮機3を冷却するには、圧縮機本体のケーシングに設けた水冷壁に水を通せばよい。
【0143】
さらに、単段または最下段のヒートポンプ2の蒸発器6Zへは、蒸気発生用凝縮器4Zおよび/または圧縮機3の熱で加温された水を供給してもよい。
【0144】
ヒートポンプ式蒸気発生装置1が複数段のヒートポンプ2を備える場合、ヒートポンプ式蒸気発生装置1は複数の圧縮機3を備えることになる。その他、複数の圧縮機3を備える場合として、単段または複数段の各ヒートポンプ2の蒸発器6と凝縮器4との間に、圧縮機3を並列に複数台設置する場合もある。また、複数のヒートポンプ式蒸気発生装置1を並列に複数設置する場合もある。いずれの場合も、複数の圧縮機3は、それぞれ圧縮機本体とその駆動装置とから構成し、複数の圧縮機本体をベルト伝動装置などにより共通の駆動装置で駆動してもよい。
【0145】
また、複数の圧縮機3は、共通の制御器および/または個別の制御器で制御することができる。この際、ヒートポンプ2の蒸発器6と凝縮器4との間に複数の圧縮機3を並列に設置している場合、または複数のヒートポンプ式蒸気発生装置1を並列に設置して蒸気を合流させる場合、蒸気発生用凝縮器4Zにて発生させた蒸気圧、および/または温水冷却用蒸発器6Zを通された後の水温に基づき、複数の圧縮機3の内の運転台数を変更してもよい。
【0146】
たとえば、2台の圧縮機3の台数制御の場合、
図11を参照して、第二設定圧力P2未満では2台とも運転させ、第二設定圧力P2以上第一設定圧力P1未満では1台のみ運転させ、第一設定圧力P1以上では2台とも停止させればよい。この際、いずれか1台を停止させる際には、稼働時間の長い圧縮機3を停止させ、いずれか1台を駆動する際には、稼働時間の短い圧縮機3を駆動するのがよい。なお、稼働時間として、各圧縮機3の積算回転数を用いてもよい。
【0147】
また、蒸気発生用凝縮器4Zにて発生させた蒸気圧、または温水冷却用蒸発器6Zを通された後の水温に基づき、複数の圧縮機3の内、少なくとも一の圧縮機3について、冷媒の吐出流量を調整してもよい。少なくとも一台の圧縮機3で、冷媒の吐出流量を調整すれば、例えば運転台数の変更を滑らかに行うことができる。なお、冷媒の吐出流量の調整は、たとえば、圧縮機本体を駆動するモータをインバータ制御することで実現できる。
【0148】
また、圧縮機3の駆動装置として、エンジンおよびモータの双方を備える場合、このエンジンおよびモータの内、いずれを用いて圧縮機3を運転するか、または双方を用いて圧縮機3を運転するかを、蒸気発生用凝縮器4Zにて発生させた蒸気圧、または温水冷却用蒸発器6Zを通された後の水温に基づき変更してもよい。なお、エンジンとモータとを備え、圧縮機3の制御をクラッチで行う場合、クラッチを切り離した状態でもエンジンは駆動したままであるから、その間はエンジンにより発電機で発電するのに適する。
【0149】
さらに、蒸気発生用凝縮器4Zにて発生させた蒸気圧は、前述したように設定範囲内に維持されるが、万一、その範囲を超えて設定上限値に達すると、各ヒートポンプ2の圧縮機3を強制停止させるよう構成しておけば、安全性を高めることができる。なお、水側の蒸気圧ではなく、冷媒側の蒸気圧を監視してもよい。その他、蒸発器6の入口または出口における被冷却流体(排温水など)の温度、またはヒートポンプサイクル内の冷媒の圧力または温度(たとえば、圧縮機3、膨張弁5または中間冷却器8,9の入口または出口における冷媒の圧力または温度)を監視して、それが上限値を超えるとヒートポンプ2の運転にインターロックをかけるよう構成してもよい。
【0150】
本発明のヒートポンプ式蒸気発生装置1は、前記各実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、単段または複数段の各ヒートポンプ2は、
図1から
図8に基づき説明した構成に限らず、適宜に変更可能である。たとえば、蒸発器6を並列に設置したり、膨張弁5と蒸発器6とのセットを並列に設置したりしてもよい。また、圧縮機3の出口側に油分離器を設置したり、凝縮器4の出口側に受液器を設置したりしてもよい。さらに、圧縮機3の入口側にアキュムレータを設置してもよい。
【0151】
また、前記実施例では、温水から熱をくみ上げて蒸気を発生させる例について説明したが、温水に代えて、空気や排ガスなどを用いてもよい。
【0152】
さらに、工場などから排出される排温水、圧縮機3の冷却水として用いた水、エンジン(圧縮機3の駆動装置)のオイルクーラにおいて冷却水として用いた水、エンジンのジャケットの冷却水として用いた水、および、ボイラ15からの排ガスの冷却水として用いた水の内、一または複数を用いて、凝縮器4への給水の加温、蒸発器6への給水の加温、またはボイラ15への給水の加温ができる他、前記各冷却水として用いた水自体を凝縮器4やボイラ15への給水に用いたり、蒸発器6に通したりしてもよい。たとえば、凝縮器4への給水路20(給水路20にサブクーラ40を設ける場合にはそれより上流側)に、間接熱交換器を設置して、工場などからの排温水またはオイルクーラなどを通過後の水で、凝縮器4への給水の加温を図ることができる。
【0153】
また、
図13では、蒸発器6への給水路41と蒸発器6からの排水路38とをバイパス路42で接続し、給水路41とバイパス路42との分岐部に設けたバイパス弁43により蒸発器6に通す給水量を調整する構成としたが、蒸発器6を通過する水量を調整可能であれば適宜に変更可能である。たとえば、蒸発器6への給水路41に三方弁を設けて、給水の一部を分岐させる点は
図13と同じであるが、その分岐水を排水路38に合流させずに、別系統としたり、クーリングタワーに戻したり、あるいはそのまま排水したりしてもよい。あるいは、
図13において、バイパス路42およびバイパス弁43の設置を省略する代わりに、給水路41に弁を設けて、その弁の開閉または開度を調整してもよい。なお、いずれの場合も、排水路38からの排水は、そのまま捨てられるか、クーリングタワーなどに戻されるか、あるいは蒸発器6にて冷却された水なら設備へ戻してもよい。